【文献】
CHENG, Y. et al.,Biochem Pharmacol,1973年,Vol.22,p.3099-108
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
血液脳関門(BBB)を通過して化合物を輸送するための薬剤であって、化合物に結合してトランスフェリン受容体(TfR)に20nMから10μMの低親和性で結合する抗体を含み、該抗体は免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含み、血液脳関門が該薬剤に曝された場合に、該抗体がそれに結合した化合物を血液脳関門を通過して輸送する、薬剤。
哺乳動物における神経障害を治療するための薬剤であって、トランスフェリン受容体(TfR)に結合し、かつ化合物に結合している抗体を含み、該抗体は、免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含み、かつTfRに対して20nMから10μMの低い親和性を有するように選択され、それによって該抗体及び結合した化合物のCNSの取り込みを改善する、薬剤。
血液脳関門(BBB)を通過して化合物を輸送するための薬剤であって、化合物に結合してトランスフェリン受容体(TfR)に100nMから100μMのIC50で結合する抗体を含み、血液脳関門が該薬剤に曝された場合に、該抗体がそれに結合した化合物を血液脳関門を通過して輸送し、該IC50が、競合阻害に基づいており、抗TfR競合ELISAアッセイにより測定される、薬剤。
哺乳動物における神経障害を治療するための薬剤であって、トランスフェリン受容体(TfR)に結合し、かつ化合物に結合している抗体を含み、該抗体は、免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含み、かつTfRに対して100nMから100μMのIC50を有するように選択され、それによって該抗体及び結合した化合物のCNSの取り込みを改善し、該IC50が、競合阻害に基づいており、抗TfR競合ELISAアッセイにより測定される、薬剤。
神経障害が、アルツハイマー病(AD)、脳卒中、認知症、筋ジストロフィー(MD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、嚢胞性線維症、アンジェルマン症候群、リドル症候群、パーキンソン病、ピック病、パジェット病、癌、および外傷性脳損傷からなる群から選択される、請求項11に記載の薬剤。
脳の抗原が、β−セクレターゼ1(BACE1)、Abeta、上皮増殖因子受容体(EGFR)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、タウ、アポリポタンパク質E4(ApoE4)、α−シヌクレイン、CD20、ハンチンチン、プリオンタンパク質(PrP)、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)、パーキン、プレセニリン1、プレセニリン2、ガンマセクレターゼ、細胞死受容体6(DR6)、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、p75ニューロトロフィン受容体(p75NTR)、及びカスパーゼ6からなる群から選択される、請求項18に記載の薬剤。
第一の抗原結合部位と第二の抗原結合部位と免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部とを含む抗体であって、第一の抗原結合部位がトランスフェリン受容体(TfR)に20nMから10μMの低親和性で結合し、第二の抗原結合部位が脳の抗原に結合する、抗体。
第一の抗原結合部位と第二の抗原結合部位とを含む抗体であって、第一の抗原結合部位がトランスフェリン受容体(TfR)に100nMから100μMのIC50で結合し、第二の抗原結合部位が脳の抗原に結合し、該IC50が、競合阻害に基づいており、抗TfR競合ELISAアッセイにより測定される、抗体。
脳の抗原が、β−セクレターゼ1(BACE1)、Abeta、上皮増殖因子受容体(EGFR)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、タウ、アポリポタンパク質E4(ApoE4)、α−シヌクレイン、CD20、ハンチンチン、プリオンタンパク質(PrP)、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)、パーキン、プレセニリン1、プレセニリン2、ガンマセクレターゼ、細胞死受容体6(DR6)、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、p75ニューロトロフィン受容体(p75NTR)、及びカスパーゼ6からなる群から選択される、請求項22から27の何れか一項に記載の抗体。
【発明の概要】
【0004】
モノクローナル抗体は神経性疾患又は中枢神経系(CNS)疾患の治療のために膨大な治療的可能性を有するが、脳へのそれらの通路は、血液脳関門(BBB)によって制限されている。過去の研究では、血流中を循環するIgGのほんの一部(約0.1%)がBBBを通してCNSへ通過することが示されているが(Felgenhauer, Klin. Wschr. 52: 1158-1164 (1974))、ここで抗体のCNS濃度は、強い効果を可能にするためには不十分であり得る。本発明の方法及び組成物は、CNSへ分配する抗体の割合を向上させ、それ故より容易にCNSにおける治療抗体濃度を得るための方法を提供する。
【0005】
本明細書では、マウスで1回の全身注射後に、微量用量及び治療的に適切な用量の両方でBBBを通過する抗体と小分子を含む治療薬を送達することができるトランスフェリン受容体(TfR)に対する抗体の群が記述される。抗体の分布は、注入後24時間で血管からニューロンへと変化し、有意な量の抗体が脳内皮細胞を介して経細胞質輸送し、実質に到達したたことを示している。CNSへの抗体取り込みと分布の大きさは、試験される抗TfR変異体におけるTfRへのその結合親和性に逆に相関している。BBB輸送の証明は、TfRおよびアミロイド前駆体タンパク質(APP)切断酵素、β−セクレターゼ(BACE1)の両方に結合する二重特異性抗体を用いて達成された。本発明の方法論を用いて操作された二重特異性抗TfR/BACE1抗体の単一の全身投与量は、単一特異的抗BACE1単独と比較して、脳における著しい抗体の取り込みをもたらしたのみならず、劇的に脳のAβ
1−40のレベルを減少させている、BBB透過が、抗BACE1の効力に影響を及ぼすことを示唆している。同様に、TfRとアミロイドβの両方に結合する二重特異性抗体(すなわち、アミロイド斑の主要な構成要素の1つであるAPPのBACE1開裂から生じるAPPの一部分)が、本発明の方法を用いて脳に容易に取り込まれることが示された。本明細書に記述されたデータ及び実験は、低親和性抗体アプローチを用いたCNSへの抗体の取り込みを増加させる背後にある、幾つかの原因となるメカニズムを強調している。
【0006】
第一に、高親和性抗BBB受容体(BBB−R)抗体(例えば、抗TfR
A)が、脳血管系においてBBB−Rを急速に飽和させることにより、脳の取り込みを制限し、従って、脳内に取り込まれた抗体の総量を減少させ、また血管系への分布を制限する。驚くべきことに、BBB−Rに対する親和性を低下させると、CNS内に分布するニューロン及び関連する神経網への血管系からの局在下で観察される強固な移動を伴い、脳の取り込みと分布を改善する。第二に、BBB−Rに対する抗体の低い親和性は、BBB−Rに対する抗体の全体的な親和性が低く、BBBのCNS側の抗体の局所濃度が、CNS区画への抗体の急速な分散に起因して非飽和であるため、膜のCNS側からBBB−Rを介してBBBの血管側に戻る抗体の能力を損なうと提唱されている。第三に、インビボで、TfR系で観察されるように、BBB−Rに対して低親和性の抗体は、BBB−Rに対して高親和性の抗体と同様には効率良く系から排除されず、従ってそれらのより高い親和性のカウンターパートよりも高い循環濃度で残っている。このことは、低親和性抗体の循環抗体レベルは、より高親和性抗体よりも長期間にわたって治療的レベルに維持され、これは、結果的に長期間にわたって脳内の抗体の取り込みを改善するので有利である。更に、血漿及び脳の両方の曝露における改善は、クリニックにおける投与頻度を減少させ得、このことは患者のコンプライアンスと利便性のためだけでなく、抗体及び/又はそれに結合した治療化合物の任意の潜在的な副作用又は非特異的作用の軽減においても、潜在的な利益を有するあろう。抗TfR/BACE1及び抗TfR/Abetaは各々が、アルツハイマー病の治療において有望で新規な治療的候補である。更に、受容体媒介性輸送(RMT)に基づく二重特異性ターゲティング技術は、CNS疾患に対する潜在的な治療薬の広い範囲に対して扉を開いている。本発明はBBBを通過する輸送及びその治療薬のCNS分布を大きく改善するBBB透過治療薬を操作する方法を提供する。
【0007】
従って、第一の実施態様において、本発明は、抗体がそれに結合した化合物を血液脳関門を通過して輸送するように、化合物に結合して血液脳関門受容体(BBB−R)に低親和性で結合する抗体を血液脳関門に曝すことを含む、血液脳関門を横切る化合物を輸送する方法を提供する。一態様において、化合物は、神経障害薬である。別の態様において、化合物は造影剤である。別の態様において、化合物は、標識されている。別の態様において、抗体は、標識されている。別の態様において、抗体は、一以上のその天然リガンドに対するBBB−Rの結合を阻害しない。別のそのような態様において、抗体は、トランスフェリンへのTfRの結合を阻害しないようにTfRに特異的に結合する。別の態様において、BBBは哺乳動物にある。別のそのような態様において、哺乳動物はヒトである。別のそのような態様において、哺乳動物は神経障害を有する。別のそのような態様において、神経障害は、アルツハイマー病(AD)、脳卒中、認知症、筋ジストロフィー(MD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、嚢胞性線維症、アンジェルマン症候群、リドル症候群、パーキンソン病、ピック病、パジェット病、癌、および外傷性脳損傷からなる群から選択される。別の態様において、BBBはヒトにある。
【0008】
別の態様において、抗体は、約1nMから約100μMのBBB−Rに対するIC50を有する。別のそのような態様において、IC50は約5nMから約100μMである。別のそのような態様において、IC50は約50nMから約100μMである。別のそのような態様において、IC50は約100nMから約100μMである。別の態様において、抗体は、約5nMから約10μMのBBB−Rに対する親和性を有する。別のそのような態様において、抗体は、化合物に結合すると、約30nMから約1μMのBBB−Rに対する親和性を有する。別のそのような態様において、抗体は、化合物に結合すると、約50nMから約1μMのBBB−Rに対する親和性を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
A/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらの親和性の間でTfRに対する親和性を有する。
【0009】
別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
D/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらの親和性の間でTfRに対する親和性を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
A/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらのIC50の間でTfRに対するIC50を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
D/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらのIC50の間でTfRに対するIC50を有する。一態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性がスキャッチャード解析を用いて測定される。別の態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性がBIACORE解析を用いて測定される。別の態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性が競合ELISAを用いて測定される。
【0010】
別の態様において、BBB−Rは、トランスフェリン受容体(TfR)、インスリン受容体、インスリン様増殖因子受容体(IGF受容体)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(LRP8)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)、及びヘパリン結合上皮細胞増殖因子様増殖因子(HB−EGF)からなる群から選択される。別のそのような態様において、BBB−Rは、ヒトBBB−Rである。そのような態様の一つにおいて、BBB−RはTfRである。別のそのような態様において、BBB−RはTfRであり、抗体はTfR活性を阻害しない。別のそのような態様において、BBB−RはTfRであり、抗体はTfRのトランスフェリンに対する結合を阻害しない。別の態様において、化合物結合抗体は治療的用量で投与される。そのような態様の一つにおいて、治療的用量は、抗体が特異的に結合するBBB−Rを飽和する用量である。
【0011】
別の態様において、化合物は、抗体に共有結合している。そのような態様の一つにおいて、化合物は、リンカーによって抗体に連結されている。そのような態様の一つにおいて、リンカーは切断可能である。別のそのような態様において、リンカーは切断可能ではない。別のそのような態様において、化合物は、抗体に直接結合している。そのような態様の一つにおいて、抗体は多重特異性抗体であり、化合物は多重特異性抗体の一部を形成している。別のそのような態様において、多重特異抗体はBBB−Rに結合する第一の抗原結合部位と脳の抗原に結合する第二の抗原結合部位を含む。別のそのような態様において、脳の抗原は、β−セクレターゼ1(BACE1)、Abeta、上皮増殖因子受容体(EGFR)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、タウ、アポリポタンパク質E4(ApoE4)、α−シヌクレイン、CD20、ハンチンチン、プリオンタンパク質(PrP)、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)、パーキン、プレセニリン1、プレセニリン2、ガンマセクレターゼ、細胞死受容体6(DR6)、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、p75ニューロトロフィン受容体(p75NTR)、及びカスパーゼ6からなる群から選択される。別のそのような態様において、多重特異性抗体はTfR及びBACE1の両方に結合する。別のそのような態様において、多重特異性抗体はTfR及びAbetaの両方に結合する。別のそのような態様において、多重特異性抗体は、標識されている。別の態様において、化合物は、化合物がBBB輸送と同時か又はその後で抗体から遊離されるように、可逆的に抗体に結合している。
【0012】
別の実施態様において、本発明は化合物へのCNSの曝露を増やす方法を提供し、ここでは化合物がBBB−Rに低親和性で結合する抗体に結合し、これによってCNSの化合物への曝露を増加させる。一態様において、化合物は、神経障害薬である。別の態様において、化合物は造影剤である。別の態様において、化合物は、標識されている。別の態様において、抗体は、標識されている。別の態様において、抗体は、一以上のその天然リガンドに対するBBB−Rの結合を阻害しない。別のそのような態様において、抗体は、トランスフェリンへのTfRの結合を阻害しないようにTfRに特異的に結合する。別の態様において、抗体結合化合物が哺乳動物に投与される。別のそのような態様において、哺乳動物はヒトである。別のそのような態様において、哺乳動物は神経障害を有する。別のそのような態様において、神経障害は、アルツハイマー病(AD)、脳卒中、認知症、筋ジストロフィー(MD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、嚢胞性線維症、アンジェルマン症候群、リドル症候群、パーキンソン病、ピック病、パジェット病、癌、および外傷性脳損傷からなる群から選択される。
【0013】
その他の態様において、化合物へのCNSの曝露の増加は、BBB−Rに対して低下した親和性を有しない典型的な抗体と結合した化合物のCNSへの曝露と比較して測定される。その他の態様にて、化合物へのCNSの曝露の増加は、投与後に血清に見いだされる量に対してCNSで見いだされる化合物の量の比率として測定される。別のそのような態様において、CNSへの曝露の増加は0.1%を超える比率をもたらす。別の態様において、化合物のCNSへの曝露の増加は、結合抗体の欠如のもとで化合物のCNSへの曝露に対して測定される。別の態様において、化合物のCNSへの曝露の増加は撮像することによって測定される。別の態様において、化合物のCNSへの曝露の増加は、一以上の生理学的症状の修飾など間接的な読み取りにより測定される。
【0014】
別の態様において、抗体は、約1nMから約100μMのBBB−Rに対するIC50を有する。別のそのような態様において、IC50は約5nMから約100μMである。別のそのような態様において、IC50は約50nMから約100μMである。別のそのような態様において、IC50は約100nMから約100μMである。別の態様において、抗体は、約5nMから約10μMのBBB−Rに対する親和性を有する。別のそのような態様において、抗体は、化合物に結合すると、約30nMから約1μMのBBB−Rに対する親和性を有する。別のそのような態様において、抗体は、化合物に結合すると、約50nMから約1μMのBBB−Rに対する親和性を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
A/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらの親和性の間でTfRに対する親和性を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
D/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらの親和性の間でTfRに対する親和性を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
A/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらのIC50の間でTfRに対するIC50を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
D/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらのIC50の間でTfRに対するIC50を有する。一態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性がスキャッチャード解析を用いて測定される。別の態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性がBIACORE解析を用いて測定される。別の態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性が競合ELISAを用いて測定される。
【0015】
別の態様において、BBB−Rは、トランスフェリン受容体(TfR)、インスリン受容体、インスリン様増殖因子受容体(IGF受容体)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(LRP8)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)、及びヘパリン結合上皮細胞増殖因子様増殖因子(HB−EGF)からなる群から選択される。別のそのような態様において、BBB−Rは、ヒトBBB−Rである。そのような態様の一つにおいて、BBB−RはTfRである。別のそのような態様において、BBB−RはTfRであり、抗体はTfR活性を阻害しない。別のそのような態様において、BBB−RはTfRであり、抗体はTfRのトランスフェリンに対する結合を阻害しない。別の態様において、化合物結合抗体は治療的用量で投与される。そのような態様の一つにおいて、治療的用量は、抗体が特異的に結合するBBB−Rを飽和する用量である。
【0016】
別の態様において、化合物は、抗体に共有結合している。そのような態様の一つにおいて、化合物は、リンカーによって抗体に連結されている。そのような態様の一つにおいて、リンカーは切断可能である。別のそのような態様において、リンカーは切断可能ではない。別のそのような態様において、化合物は、抗体に直接結合している。そのような態様の一つにおいて、抗体は多重特異性抗体であり、化合物は多重特異性抗体の一部を形成している。別のそのような態様において、多重特異抗体はBBB−Rに結合する第一の抗原結合部位と脳の抗原に結合する第二の抗原結合部位を含む。別のそのような態様において、脳の抗原は、β−セクレターゼ1(BACE1)、Abeta、上皮増殖因子受容体(EGFR)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、タウ、アポリポタンパク質E4(ApoE4)、α−シヌクレイン、CD20、ハンチンチン、プリオンタンパク質(PrP)、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)、パーキン、プレセニリン1、プレセニリン2、ガンマセクレターゼ、細胞死受容体6(DR6)、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、p75ニューロトロフィン受容体(p75NTR)、及びカスパーゼ6からなる群から選択される。別のそのような態様において、多重特異性抗体はTfR及びBACE1の両方に結合する。別のそのような態様において、多重特異性抗体はTfR及びAbetaの両方に結合する。別のそのような態様において、多重特異性抗体は、標識されている。別の態様において、化合物は、化合物がBBB輸送と同時か又はその後で抗体から遊離されるように、可逆的に抗体に結合している。
【0017】
別の実施態様において、本発明は被験体に投与された化合物のクリアランスを減らす方法を提供し、ここでは化合物がBBB−Rに低親和性で結合する抗体に結合し、これによって化合物のクリアランスが減少する。一態様において、化合物は、神経障害薬である。別の態様において、化合物は造影剤である。別の態様において、化合物は、標識されている。別の態様において、抗体は、標識されている。別の態様において、抗体は、一以上のその天然リガンドに対するBBB−Rの結合を阻害しない。別のそのような態様において、抗体は、トランスフェリンへのTfRの結合を阻害しないようにTfRに特異的に結合する。別の態様において、被験体は哺乳動物である。別のそのような態様において、哺乳動物はヒトである。別のそのような態様において、哺乳動物は神経障害を有する。別のそのような態様において、神経障害は、アルツハイマー病(AD)、脳卒中、認知症、筋ジストロフィー(MD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、嚢胞性線維症、アンジェルマン症候群、リドル症候群、パーキンソン病、ピック病、パジェット病、癌、および外傷性脳損傷からなる群から選択される。
【0018】
その他の態様において、化合物のクリアランスの減少は、BBB−Rに対して低下した親和性を有しない典型的な抗体と結合した化合物のクリアランスと比較して測定される。その他の態様にて、化合物のクリアランスの減少は、結合抗体の欠如における化合物のクリアランスに対して測定される。
【0019】
別の態様において、抗体は、約1nMから約100μMのBBB−Rに対するIC50を有する。別のそのような態様において、IC50は約5nMから約100μMである。別のそのような態様において、IC50は約50nMから約100μMである。別のそのような態様において、IC50は約100nMから約100μMである。別の態様において、抗体は、約5nMから約10μMのBBB−Rに対する親和性を有する。別のそのような態様において、抗体は、化合物に結合すると、約30nMから約1μMのBBB−Rに対する親和性を有する。別のそのような態様において、抗体は、化合物に結合すると、約50nMから約1μMのBBB−Rに対する親和性を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
A/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらの親和性の間でTfRに対する親和性を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
D/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらの親和性の間でTfRに対する親和性を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
A/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらのIC50の間でTfRに対するIC50を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
D/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらのIC50の間でTfRに対するIC50を有する。一態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性がスキャッチャード解析を用いて測定される。別の態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性がBIACORE解析を用いて測定される。別の態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性が競合ELISAを用いて測定される。
【0020】
別の態様において、BBB−Rは、トランスフェリン受容体(TfR)、インスリン受容体、インスリン様増殖因子受容体(IGF受容体)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(LRP8)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)、及びヘパリン結合上皮細胞増殖因子様増殖因子(HB−EGF)からなる群から選択される。別のそのような態様において、BBB−Rは、ヒトBBB−Rである。そのような態様の一つにおいて、BBB−RはTfRである。別のそのような態様において、BBB−RはTfRであり、抗体はTfR活性を阻害しない。別のそのような態様において、BBB−RはTfRであり、抗体はTfRのトランスフェリンに対する結合を阻害しない。別の態様において、化合物結合抗体は治療的用量で投与される。そのような態様の一つにおいて、治療的用量は、抗体が特異的に結合するBBB−Rを飽和する用量である。
【0021】
別の態様において、化合物は、抗体に共有結合している。そのような態様の一つにおいて、化合物は、リンカーによって抗体に連結されている。そのような態様の一つにおいて、リンカーは切断可能である。別のそのような態様において、リンカーは切断可能ではない。別のそのような態様において、化合物は、抗体に直接結合している。そのような態様の一つにおいて、抗体は多重特異性抗体であり、化合物は多重特異性抗体の一部を形成している。別のそのような態様において、多重特異抗体はBBB−Rに結合する第一の抗原結合部位と脳の抗原に結合する第二の抗原結合部位を含む。別のそのような態様において、脳の抗原は、β−セクレターゼ1(BACE1)、Abeta、上皮増殖因子受容体(EGFR)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、タウ、アポリポタンパク質E4(ApoE4)、α−シヌクレイン、CD20、ハンチンチン、プリオンタンパク質(PrP)、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)、パーキン、プレセニリン1、プレセニリン2、ガンマセクレターゼ、細胞死受容体6(DR6)、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、p75ニューロトロフィン受容体(p75NTR)、及びカスパーゼ6からなる群から選択される。別のそのような態様において、多重特異性抗体はTfR及びBACE1の両方に結合する。別のそのような態様において、多重特異性抗体はTfR及びAbetaの両方に結合する。別のそのような態様において、多重特異性抗体は、標識されている。別の態様において、化合物は、化合物がBBB輸送と同時か又はその後で抗体から遊離されるように、可逆的に抗体に結合している。
【0022】
被験体に投与された化合物のCNSにおける保持を増やす方法であって、その化合物がBBB−Rに低親和性で結合する抗体に結合し、これによって化合物のCNSにおける保持が増加する。一態様において、化合物は、神経障害薬である。別の態様において、化合物は造影剤である。別の態様において、化合物は、標識されている。別の態様において、抗体は、標識されている。別の態様において、抗体は、一以上のその天然リガンドに対するBBB−Rの結合を阻害しない。別のそのような態様において、抗体は、トランスフェリンへのTfRの結合を阻害しないようにTfRに特異的に結合する。別の態様において、化合物が哺乳動物に投与される。別のそのような態様において、哺乳動物はヒトである。別のそのような態様において、哺乳動物は神経障害を有する。別のそのような態様において、神経障害は、アルツハイマー病(AD)、脳卒中、認知症、筋ジストロフィー(MD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、嚢胞性線維症、アンジェルマン症候群、リドル症候群、パーキンソン病、ピック病、パジェット病、癌、および外傷性脳損傷からなる群から選択される。
【0023】
その他の態様において、化合物のCNSでの保持の増加は、BBB−Rに対して低下した親和性を有しない典型的な抗体と結合した化合物のCNSでの保持と比較して測定される。その他の態様にて、化合物のCNSでの保持の増加は、投与後に一以上の時点で血清に見いだされる量に対してCNSで見いだされる化合物の量の比率として測定される。別のそのような態様において、CNSでの保持の増加は、投与後に一以上の時点において0.1%を超える比率をもたらす。別の態様において、化合物のCNSでの保持の増加は、結合抗体の欠如のもとで化合物のCNSでの保持に対して測定される。別の態様において、化合物のCNSでの保持の増加は撮像することによって測定される。別の態様において、化合物のCNSでの保持の増加は、一以上の生理学的症状の修飾など間接的な読み取りにより測定される。
【0024】
別の態様において、抗体は、約1nMから約100μMのBBB−Rに対するIC50を有する。別のそのような態様において、IC50は約5nMから約100μMである。別のそのような態様において、IC50は約50nMから約100μMである。別のそのような態様において、IC50は約100nMから約100μMである。別の態様において、抗体は、約5nMから約10μMのBBB−Rに対する親和性を有する。別のそのような態様において、抗体は、化合物に結合すると、約30nMから約1μMのBBB−Rに対する親和性を有する。別のそのような態様において、抗体は、化合物に結合すると、約50nMから約1μMのBBB−Rに対する親和性を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
A/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらの親和性の間でTfRに対する親和性を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
D/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらの親和性の間でTfRに対する親和性を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
A/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらのIC50の間でTfRに対するIC50を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
D/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらのIC50の間でTfRに対するIC50を有する。一態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性がスキャッチャード解析を用いて測定される。別の態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性がBIACORE解析を用いて測定される。別の態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性が競合ELISAを用いて測定される。
【0025】
別の態様において、BBB−Rは、トランスフェリン受容体(TfR)、インスリン受容体、インスリン様増殖因子受容体(IGF受容体)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(LRP8)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)、及びヘパリン結合上皮細胞増殖因子様増殖因子(HB−EGF)からなる群から選択される。別のそのような態様において、BBB−Rは、ヒトBBB−Rである。そのような態様の一つにおいて、BBB−RはTfRである。別のそのような態様において、BBB−RはTfRであり、抗体はTfR活性を阻害しない。別のそのような態様において、BBB−RはTfRであり、抗体はTfRのトランスフェリンに対する結合を阻害しない。別の態様において、化合物結合抗体は治療的用量で投与される。そのような態様の一つにおいて、治療的用量は、抗体が特異的に結合するBBB−Rを飽和する用量である。
【0026】
別の態様において、化合物は、抗体に共有結合している。そのような態様の一つにおいて、化合物は、リンカーによって抗体に連結されている。そのような態様の一つにおいて、リンカーは切断可能である。別のそのような態様において、リンカーは切断可能ではない。別のそのような態様において、化合物は、抗体に直接結合している。そのような態様の一つにおいて、抗体は多重特異性抗体であり、化合物は多重特異性抗体の一部を形成している。別のそのような態様において、多重特異抗体はBBB−Rに結合する第一の抗原結合部位と脳の抗原に結合する第二の抗原結合部位を含む。別のそのような態様において、脳の抗原は、β−セクレターゼ1(BACE1)、Abeta、上皮増殖因子受容体(EGFR)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、タウ、アポリポタンパク質E4(ApoE4)、α−シヌクレイン、CD20、ハンチンチン、プリオンタンパク質(PrP)、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)、パーキン、プレセニリン1、プレセニリン2、ガンマセクレターゼ、細胞死受容体6(DR6)、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、p75ニューロトロフィン受容体(p75NTR)、及びカスパーゼ6からなる群から選択される。別のそのような態様において、多重特異性抗体はTfR及びBACE1の両方に結合する。別のそのような態様において、多重特異性抗体はTfR及びAbetaの両方に結合する。別のそのような態様において、多重特異性抗体は、標識されている。別の態様において、化合物は、化合物がBBB輸送と同時か又はその後で抗体から遊離されるように、可逆的に抗体に結合している。
【0027】
別の実施態様において、本発明は、被検体のCNSにおいて有効であるべき化合物の薬物動態及び/又は薬力学を最適化する方法を提供し、ここでその化合物は、BBB−Rに低親和性で結合する抗体に結合されており、その抗体は、化合物に結合後にBBB−Rに対するその親和性が、BBBを通過する化合物に結合した抗体の搬送量を生じるように選択され、CNSにおける化合物の薬物動態及び/又は薬力学を最適化する。一態様において、化合物は、神経障害薬である。別の態様において、化合物は造影剤である。別の態様において、化合物は、標識されている。別の態様において、抗体は、標識されている。別の態様において、抗体は、一以上のその天然リガンドに対するBBB−Rの結合を阻害しない。別のそのような態様において、抗体は、トランスフェリンへのTfRの結合を阻害しないようにTfRに特異的に結合する。別の態様において、BBBは哺乳動物にある。別のそのような態様において、哺乳動物はヒトである。別のそのような態様において、哺乳動物は神経障害を有する。別のそのような態様において、神経障害は、アルツハイマー病(AD)、脳卒中、認知症、筋ジストロフィー(MD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、嚢胞性線維症、アンジェルマン症候群、リドル症候群、パーキンソン病、ピック病、パジェット病、癌、および外傷性脳損傷からなる群から選択される。別の態様において、BBBはヒトにある。
【0028】
一態様において、最適化は、各抗体がBBB−Rに対して異なる親和性を有する抗体−化合物複合体の一連の生成、及びCNSにおける各々の薬物動態及び/又は薬力学を評価することを含み得る。その他の態様において、最適化とは、限定はされないが、CNSに直接導入されるか又は結合抗BBB−R抗体の欠如のもとで被験体に導入されるときに、化合物の薬物動態及び/又は薬力学など、既知の標準に相対的であり得る。
【0029】
別の態様において、抗体は、約1nMから約100μMのBBB−Rに対するIC50を有する。別のそのような態様において、IC50は約5nMから約100μMである。別のそのような態様において、IC50は約50nMから約100μMである。別のそのような態様において、IC50は約100nMから約100μMである。別の態様において、抗体は、約5nMから約10μMのBBB−Rに対する親和性を有する。別のそのような態様において、抗体は、化合物に結合すると、約30nMから約1μMのBBB−Rに対する親和性を有する。別のそのような態様において、抗体は、化合物に結合すると、約50nMから約1μMのBBB−Rに対する親和性を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
A/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらの親和性の間でTfRに対する親和性を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
D/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらの親和性の間でTfRに対する親和性を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
A/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらのIC50の間でTfRに対するIC50を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
D/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらのIC50の間でTfRに対するIC50を有する。一態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性がスキャッチャード解析を用いて測定される。別の態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性がBIACORE解析を用いて測定される。別の態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性が競合ELISAを用いて測定される。
【0030】
別の態様において、BBB−Rは、トランスフェリン受容体(TfR)、インスリン受容体、インスリン様増殖因子受容体(IGF受容体)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(LRP8)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)、及びヘパリン結合上皮細胞増殖因子様増殖因子(HB−EGF)からなる群から選択される。別のそのような態様において、BBB−Rは、ヒトBBB−Rである。そのような態様の一つにおいて、BBB−RはTfRである。別のそのような態様において、BBB−RはTfRであり、抗体はTfR活性を阻害しない。別のそのような態様において、BBB−RはTfRであり、抗体はTfRのトランスフェリンに対する結合を阻害しない。別の態様において、化合物結合抗体は治療的用量で投与される。そのような態様の一つにおいて、治療的用量は、抗体が特異的に結合するBBB−Rを飽和する用量である。
【0031】
別の態様において、化合物は、抗体に共有結合している。そのような態様の一つにおいて、化合物は、リンカーによって抗体に連結されている。そのような態様の一つにおいて、リンカーは切断可能である。別のそのような態様において、リンカーは切断可能ではない。別のそのような態様において、化合物は、抗体に直接結合している。そのような態様の一つにおいて、抗体は多重特異性抗体であり、化合物は多重特異性抗体の一部を形成している。別のそのような態様において、多重特異抗体はBBB−Rに結合する第一の抗原結合部位と脳の抗原に結合する第二の抗原結合部位を含む。別のそのような態様において、脳の抗原は、β−セクレターゼ1(BACE1)、Abeta、上皮増殖因子受容体(EGFR)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、タウ、アポリポタンパク質E4(ApoE4)、α−シヌクレイン、CD20、ハンチンチン、プリオンタンパク質(PrP)、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)、パーキン、プレセニリン1、プレセニリン2、ガンマセクレターゼ、細胞死受容体6(DR6)、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、p75ニューロトロフィン受容体(p75NTR)、及びカスパーゼ6からなる群から選択される。別のそのような態様において、多重特異性抗体はTfR及びBACE1の両方に結合する。別のそのような態様において、多重特異性抗体はTfR及びAbetaの両方に結合する。別のそのような態様において、多重特異性抗体は、標識されている。別の態様において、化合物は、化合物がBBB輸送と同時か又はその後で抗体から遊離されるように、可逆的に抗体に結合している。
【0032】
他の実施態様において、本発明は、BBB−Rに結合し、かつ化合物に結合している抗体により哺乳動物を治療することを含む哺乳動物における神経障害を治療する方法を提供し、ここでその抗体は、BBB−Rに対して低い親和性を有するように選択され、それによって抗体及び結合した化合物のCNSへの取り込みを改善する。一態様において、化合物は、神経障害薬である。別の態様において、化合物は造影剤である。別の態様において、化合物は、標識されている。別の態様において、抗体は、標識されている。別の態様において、抗体は、一以上のその天然リガンドに対するBBB−Rの結合を阻害しない。別のそのような態様において、抗体は、トランスフェリンへのTfRの結合を阻害しないようにTfRに特異的に結合する。一態様において、哺乳動物はヒトである。別のそのような態様において、哺乳動物は神経障害を有する。別のそのような態様において、神経障害は、アルツハイマー病(AD)、脳卒中、認知症、筋ジストロフィー(MD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、嚢胞性線維症、アンジェルマン症候群、リドル症候群、パーキンソン病、ピック病、パジェット病、癌、および外傷性脳損傷からなる群から選択される。
【0033】
一態様において、治療は障害の症状を和らげたり又は消失をもたらす。別の態様において、治療は神経障害の寛解をもたらす。
【0034】
別の態様において、抗体は、約1nMから約100μMのBBB−Rに対するIC50を有する。別のそのような態様において、IC50は約5nMから約100μMである。別のそのような態様において、IC50は約50nMから約100μMである。別のそのような態様において、IC50は約100nMから約100μMである。別の態様において、抗体は、約5nMから約10μMのBBB−Rに対する親和性を有する。別のそのような態様において、抗体は、化合物に結合すると、約30nMから約1μMのBBB−Rに対する親和性を有する。別のそのような態様において、抗体は、化合物に結合すると、約50nMから約1μMのBBB−Rに対する親和性を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
A/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらの親和性の間でTfRに対する親和性を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
D/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらの親和性の間でTfRに対する親和性を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
A/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらのIC50の間でTfRに対するIC50を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
D/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらのIC50の間でTfRに対するIC50を有する。一態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性がスキャッチャード解析を用いて測定される。別の態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性がBIACORE解析を用いて測定される。別の態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性が競合ELISAを用いて測定される。
【0035】
別の態様において、BBB−Rは、トランスフェリン受容体(TfR)、インスリン受容体、インスリン様増殖因子受容体(IGF受容体)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(LRP8)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)、及びヘパリン結合上皮細胞増殖因子様増殖因子(HB−EGF)からなる群から選択される。別のそのような態様において、BBB−Rは、ヒトBBB−Rである。そのような態様の一つにおいて、BBB−RはTfRである。別のそのような態様において、BBB−RはTfRであり、抗体はTfR活性を阻害しない。別のそのような態様において、BBB−RはTfRであり、抗体はTfRのトランスフェリンに対する結合を阻害しない。別の態様において、化合物結合抗体は治療的用量で投与される。そのような態様の一つにおいて、治療的用量は、抗体が特異的に結合するBBB−Rを飽和する用量である。
【0036】
別の態様において、化合物は、抗体に共有結合している。そのような態様の一つにおいて、化合物は、リンカーによって抗体に連結されている。そのような態様の一つにおいて、リンカーは切断可能である。別のそのような態様において、リンカーは切断可能ではない。別のそのような態様において、化合物は、抗体に直接結合している。そのような態様の一つにおいて、抗体は多重特異性抗体であり、化合物は多重特異性抗体の一部を形成している。別のそのような態様において、多重特異抗体はBBB−Rに結合する第一の抗原結合部位と脳の抗原に結合する第二の抗原結合部位を含む。別のそのような態様において、脳の抗原は、β−セクレターゼ1(BACE1)、Abeta、上皮増殖因子受容体(EGFR)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、タウ、アポリポタンパク質E4(ApoE4)、α−シヌクレイン、CD20、ハンチンチン、プリオンタンパク質(PrP)、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)、パーキン、プレセニリン1、プレセニリン2、ガンマセクレターゼ、細胞死受容体6(DR6)、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、p75ニューロトロフィン受容体(p75NTR)、及びカスパーゼ6からなる群から選択される。別のそのような態様において、多重特異性抗体はTfR及びBACE1の両方に結合する。別のそのような態様において、多重特異性抗体はTfR及びAbetaの両方に結合する。別のそのような態様において、多重特異性抗体は、標識されている。別の態様において、化合物は、化合物がBBB輸送と同時か又はその後で抗体から遊離されるように、可逆的に抗体に結合している。
【0037】
別の実施態様において、本発明は、血液脳関門受容体(BBB−R)に特異的な抗体を選択することを含む、BBBを通過して化合物を輸送するために有用な抗体の作成方法を提供し、その理由はそれがBBB−Rに対して望ましく低い親和性を有するためである。
【0038】
一態様において、抗体は、選択された抗体の親和性に基づいて抗体のパネルから選択される。別の態様において、抗体は親和性を有するように操作される。そのような態様の一つにおいて、抗体は、限定されないが、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、ランダム突然変異誘発、及び部位特異的突然変異誘発を含む、任意の既知のタンパク質工学の手法を用いて生成される。
【0039】
一態様において、化合物は、神経障害薬である。別の態様において、化合物は造影剤である。別の態様において、化合物は、標識されている。別の態様において、抗体は、標識されている。別の態様において、抗体は、一以上のその天然リガンドに対するBBB−Rの結合を阻害しない。別のそのような態様において、抗体は、トランスフェリンへのTfRの結合を阻害しないようにTfRに特異的に結合する。別の態様において、BBBは哺乳動物にある。別のそのような態様において、哺乳動物はヒトである。別のそのような態様において、哺乳動物は神経障害を有する。別のそのような態様において、神経障害は、アルツハイマー病(AD)、脳卒中、認知症、筋ジストロフィー(MD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、嚢胞性線維症、アンジェルマン症候群、リドル症候群、パーキンソン病、ピック病、パジェット病、癌、および外傷性脳損傷からなる群から選択される。別の態様において、BBBはヒトにある。
【0040】
別の態様において、抗体は、約1nMから約100μMのBBB−Rに対するIC50を有する。別のそのような態様において、IC50は約5nMから約100μMである。別のそのような態様において、IC50は約50nMから約100μMである。別のそのような態様において、IC50は約100nMから約100μMである。別の態様において、抗体は、約5nMから約10μMのBBB−Rに対する親和性を有する。別のそのような態様において、抗体は、化合物に結合すると、約30nMから約1μMのBBB−Rに対する親和性を有する。別のそのような態様において、抗体は、化合物に結合すると、約50nMから約1μMのBBB−Rに対する親和性を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
A/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらの親和性の間でTfRに対する親和性を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
D/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらの親和性の間でTfRに対する親和性を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
A/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらのIC50の間でTfRに対するIC50を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
D/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらのIC50の間でTfRに対するIC50を有する。一態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性がスキャッチャード解析を用いて測定される。別の態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性がBIACORE解析を用いて測定される。別の態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性が競合ELISAを用いて測定される。
【0041】
別の態様において、BBB−Rは、トランスフェリン受容体(TfR)、インスリン受容体、インスリン様増殖因子受容体(IGF受容体)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(LRP8)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)、及びヘパリン結合上皮細胞増殖因子様増殖因子(HB−EGF)からなる群から選択される。別のそのような態様において、BBB−Rは、ヒトBBB−Rである。そのような態様の一つにおいて、BBB−RはTfRである。別のそのような態様において、BBB−RはTfRであり、抗体はTfR活性を阻害しない。別のそのような態様において、BBB−RはTfRであり、抗体はTfRのトランスフェリンに対する結合を阻害しない。別の態様において、化合物結合抗体は治療的用量で投与される。そのような態様の一つにおいて、治療的用量は、抗体が特異的に結合するBBB−Rを飽和する用量である。
【0042】
別の態様において、化合物は、抗体に共有結合している。そのような態様の一つにおいて、化合物は、リンカーによって抗体に連結されている。そのような態様の一つにおいて、リンカーは切断可能である。別のそのような態様において、リンカーは切断可能ではない。別のそのような態様において、化合物は、抗体に直接結合している。そのような態様の一つにおいて、抗体は多重特異性抗体であり、化合物は多重特異性抗体の一部を形成している。別のそのような態様において、多重特異抗体はBBB−Rに結合する第一の抗原結合部位と脳の抗原に結合する第二の抗原結合部位を含む。別のそのような態様において、脳の抗原は、β−セクレターゼ1(BACE1)、Abeta、上皮増殖因子受容体(EGFR)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、タウ、アポリポタンパク質E4(ApoE4)、α−シヌクレイン、CD20、ハンチンチン、プリオンタンパク質(PrP)、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)、パーキン、プレセニリン1、プレセニリン2、ガンマセクレターゼ、細胞死受容体6(DR6)、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、p75ニューロトロフィン受容体(p75NTR)、及びカスパーゼ6からなる群から選択される。別のそのような態様において、多重特異性抗体はTfR及びBACE1の両方に結合する。別のそのような態様において、多重特異性抗体はTfR及びAbetaの両方に結合する。別のそのような態様において、多重特異性抗体は、標識されている。別の態様において、化合物は、化合物がBBB輸送と同時か又はその後で抗体から遊離されるように、可逆的に抗体に結合している。
【0043】
別の実施態様において、本発明は、低い親和性で血液脳関門受容体(BBB−R)に結合する抗体を提供する。一態様において、BBB−Rに対する抗体の親和性は、約5nMから約10μMである。別の態様において、BBB−Rに対する抗体の親和性は、約20nMから約1μMである。別の態様において、抗体は、約1nMから約100μMのBBB−Rに対するIC50を有する。別のそのような態様において、IC50は約5nMから約100μMである。別のそのような態様において、IC50は約50nMから約100μMである。別のそのような態様において、IC50は約100nMから約100μMである。別のそのような態様において、抗体は、化合物に結合すると、約50nMから約1μMのBBB−Rに対する親和性を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
A/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらの親和性の間でTfRに対する親和性を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
D/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらの親和性の間でTfRに対する親和性を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
A/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらのIC50の間でTfRに対するIC50を有する。別のそのような態様において、化合物結合抗体は、TfRと特異的に結合し、抗TfR
D/BACE1抗体と抗TfR
E/BACE1抗体について観察されたそれらのIC50の間でTfRに対するIC50を有する。一態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性がスキャッチャード解析を用いて測定される。別の態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性がBIACORE解析を用いて測定される。別の態様において、BBB−Rに対する抗BBB−R又は抗BBB−R/化合物の親和性が競合ELISAを用いて測定される。
【0044】
別の態様において、BBB−Rは、トランスフェリン受容体(TfR)、インスリン受容体、インスリン様増殖因子受容体(IGF受容体)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(LRP8)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)、及びヘパリン結合上皮細胞増殖因子様増殖因子(HB−EGF)からなる群から選択される。そのような態様の一つにおいて、BBB−RはTfRである。別のそのような態様において、BBB−RはTfRであり、抗体はTfR活性を阻害しない。別のそのような態様において、BBB−RはTfRであり、抗体はTfRのトランスフェリンに対する結合を阻害しない。別のそのような態様において、BBB−RはヒトBBB−Rである。
【0045】
別の態様において、抗体は化合物に結合している。一態様において、化合物は、神経障害薬である。別の態様において、化合物は造影剤である。別の態様において、化合物は、標識されている。別の態様において、抗体は、標識されている。別の態様において、抗体は、一以上のその天然リガンドに対するBBB−Rの結合を阻害しない。別のそのような態様において、抗体は、トランスフェリンへのTfRの結合を阻害しないようにTfRに特異的に結合する。
【0046】
別の態様において、化合物は、抗体に共有結合している。そのような態様の一つにおいて、化合物は、リンカーによって抗体に連結されている。そのような態様の一つにおいて、リンカーは切断可能である。別のそのような態様において、リンカーは切断可能ではない。別のそのような態様において、化合物は、抗体に直接結合している。そのような態様の一つにおいて、抗体は多重特異性抗体であり、化合物は多重特異性抗体の一部を形成している。別のそのような態様において、多重特異抗体はBBB−Rに結合する第一の抗原結合部位と脳の抗原に結合する第二の抗原結合部位を含む。別のそのような態様において、脳の抗原は、β−セクレターゼ1(BACE1)、Abeta、上皮増殖因子受容体(EGFR)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、タウ、アポリポタンパク質E4(ApoE4)、α−シヌクレイン、CD20、ハンチンチン、プリオンタンパク質(PrP)、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)、パーキン、プレセニリン1、プレセニリン2、ガンマセクレターゼ、細胞死受容体6(DR6)、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、p75ニューロトロフィン受容体(p75NTR)、及びカスパーゼ6からなる群から選択される。別のそのような態様において、多重特異性抗体はTfR及びBACE1の両方に結合する。別のそのような態様において、多重特異性抗体はTfR及びAbetaの両方に結合する。別のそのような態様において、多重特異性抗体は、標識されている。別の態様において、化合物は、化合物がBBB輸送と同時か又はその後で抗体から遊離されるように、可逆的に抗体に結合している。
【0047】
別の態様において、抗体は、限定されないが、Fab,Fab’,F(ab’)
2,及びFvを含に、BBB−Rに結合する抗原結合部位を持つ抗体断片である。別の態様では、抗体は、完全長抗体である。
【0048】
別の実施態様において、本発明は、神経障害を治療するための医薬の製造のために、BBB−Rに対して低親和性で結合する抗体の使用を提供する。上記の低親和性抗BBB−R抗体の何れか又は本明細書に記載の低親和性抗BBB−R抗体の何れかが、本方法において用いられ得る。
【0049】
別の実施態様において、本発明は、神経障害を治療するために、BBB−Rに対して低親和性で結合する抗体を提供する。上記の低親和性抗BBB−R抗体の何れか又は本明細書に記載の低親和性抗BBB−R抗体の何れかが、本方法において用いられ得る。従って、第一態様において、本発明は血液脳関門受容体(BBB−R)に結合する抗体を提供し、ここでその抗体のBBB−Rに対する親和性は約5nMから約10nM(例えば、約20nMから約1μM)である。任意で、BBB−Rは、トランスフェリン受容体(TfR)、インスリン受容体、インスリン様増殖因子受容体(IGF受容体)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(LRP8)、及びヘパリン結合上皮細胞増殖因子様増殖因子(HB−EGF)からなる群から選択される。任意で、抗体は、例えば、神経障害薬などの治療化合物と結合される。一実施態様において、抗体は、BBB−Rに結合する第一の抗原結合部位と脳の抗原に結合する第二の抗原結合部位を含む多重特異性抗体であり、例えばここでは、脳の抗原は、β−セクレターゼ1(BACE1)、Abeta、上皮増殖因子受容体(EGFR)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、タウ、アポリポタンパク質A3(ApoA3)、アポリポタンパク質E4(ApoE4)α−シヌクレイン、CD20、ハンチンチン、プリオンタンパク質(PrP)、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)、パーキン、プレセニリン1、プレセニリン2、ガンマセクレターゼ、細胞死受容体6(DR6)、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、p75ニューロトロフィン受容体(p75NTR)、及びカスパーゼ6からなる群から選択される。抗体(例えば多重特異性抗体)は、抗体断片及び完全長の抗体が含まれる。
【0050】
別の実施態様において、本発明は、抗体が血液脳関門を通過してそれに結合した神経障害薬を輸送するように、神経障害薬と結合した抗BBB−R抗体を血液脳関門へ曝露することを含む、神経障害薬などの治療化合物を血液脳関門を通過させて輸送する方法を提供する。この方法における血液脳関門は、例えば、神経障害を有するものなど哺乳動物であってもよく、その例としては:アルツハイマー病(AD)(限定されないが、軽度認知障害及び前駆症状のADを含む)、脳卒中、認知症、筋ジストロフィー(MD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、嚢胞性線維症、アンジェルマン症候群、リドル症候群、パーキンソン病、ピック病、パジェット病、癌(例えば、CNS又は脳に影響を与える癌)、及び外傷性脳損傷が挙げられる。
【0051】
本発明はさらに、抗体が約5nMから約10μMであるBBB−Rに対する親和性を有するので、血液脳関門受容体(BBB−R)に対する抗体を選択することを含む、血液脳関門を通過する神経障害薬などの治療化合物を輸送するために有用な抗体の作成方法に関する。一実施態様において、抗体は、抗体のパネルから選択されるが、その理由はそれが所望の親和性を有するからである。別法で又は追加として、抗体は所望の親和性を有するように操作される。本方法は、任意で、抗体を、神経障害薬などの治療化合物と結合させることを更に含む。例えば、本方法は、BBB−Rに結合する第一の抗原結合部位と脳の抗原に結合する第二の抗原結合部位を含む多重特異性抗体を作成することを含む。
【0052】
本発明は、血液脳関門受容体(BBB−R)と脳の抗原の両方に結合する多重特異性抗体により哺乳動物を治療することを含む哺乳動物における神経障害を治療する方法を提供し、ここでその抗BBB−R抗体は、BBB−Rに対して低い親和性を有するように選択されており、それによって抗脳抗原抗体の取り込みを改善する。任意で、多重特異性抗体はトランスフェリン受容体(TfR)とBACE1の両方又はAbetaに結合する。
【0053】
前述の方法の何れかと本発明の組成物をお互いに及び/又は本明細書に記載の発明の更なる態様と組み合わせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の実施態様の詳細な記述
定義
「血液脳関門」又は「BBB」は、脳毛細血管内皮原形質膜内の密着結合によって形成され、脳内への分子の輸送を、尿素(60ダルトン)などの非常に小さな分子さえも、制限する強固な障壁を作りだす末梢循環と脳及び脊髄の間の生理的障壁を指す。脳内の血液脳関門、脊髄内の血液脊髄関門、及び網膜内の血液網膜関門は、CNS内における連続的な毛細血管障壁であり、ここに総称して血液脳関門又はBBBと呼ばれる。BBBはまた、障壁が毛細血管内皮細胞よりむしろ上衣細胞で構成される、血液脳脊髄液関門を(脈絡叢)をも包含する。
【0057】
「中枢神経系」又は「CNS」は、身体機能を制御する神経組織の複合体を意味し、脳と脊髄が含まれる。
【0058】
「血液脳関門受容体」(ここでは「BBB−R」と略す)は、血液脳関門を通して分子を輸送することができる脳内皮細胞に発現される膜貫通受容体である。本明細書におけるBBB−Rの例としては、トランスフェリン受容体(TfR)、インスリン受容体、インスリン様増殖因子受容体(IGF−R)、限定されないが、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)及び低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(LRP8)を含む低密度リポタンパク質受容体及びヘパリン結合上皮細胞増殖因子様増殖因子(HB−EGF)を含む。本明細書における典型的なBBB−Rはトランスフェリン受容体(TfR)である。
【0059】
「トランスフェリン受容体」(「TfR」)は、脊椎動物における鉄の取り込みに関与する2つのジスルフィド結合サブユニット(各々約90,00の見かけの分子量)からなる膜貫通糖タンパク質(分子量が約180,000)である。一実施態様において、本明細書におけるTfRは、例えば、Schneider et al. Nature 311: 675 - 678 (1984)にあるようなアミノ酸配列を含む。
【0060】
本明細書で使用する「神経障害」とは、CNSに影響を与え、及び/又はCNSにおける病因を有する疾患又は障害を指す。典型的なCNSの疾患又は障害は、限定されるものではないが、神経障害、アミロイドーシス、癌、眼の疾患又は障害、ウイルス又は細菌感染、炎症、虚血、神経変性疾患、発作、行動障害、及びリソソーム蓄積症を含む。この用途の目的のために、CNSは、通常、血液網膜関門によって身体の他の部分から隔離される眼を含むことが理解されるであろう。神経疾患の具体的な例としては、限定されないが、神経変性疾患(レビー小体病、ポリオ後症候群症候群、シャイ・ドレーゲル症候群、オリーブ橋小脳萎縮症、パーキンソン病、多系統萎縮症、線条体黒質変性症、タウオパチー(アルツハイマー病および性核上性麻痺を含むが、これらに限定されない)、プリオン病(牛海綿状脳症、スクレイピー、クロイツフェルト・ヤコブ症候群、クールー、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー病、慢性消耗病、および致死性家族性不眠症を含むが、これらに限定されない)、球麻痺、運動ニューロン疾患、神経系ヘテロ変性疾患(カナバン病、ハンチントン病、神経セロイドリポフスチン・フス、アレキサンダー病、トゥレット症候群、メンケス変態毛症候群、コケイン症候群は、ハレルフォルデン−スパッツ症候群、ラフォラ疾患、レット症候群、肝レンズ核変性症、レッシュナイハン症候群、及びウンフェルリヒト−ボルグ症候群を含むが、これらに限定されない)、痴呆(ピック病、および脊髄小脳変性症を含むが、これらに限定されない)、癌(体の他の部分の癌に起因する脳転移を含めCNSおよび/または脳の)を含む。
【0061】
「神経障害薬」は、一以上の神経障害を治療する薬物又は治療薬剤である。本発明の神経障害薬は、限定されないが、抗体、ペプチド、タンパク質、一つ以上の中枢神経系の標的の天然リガンド、一つ以上の中枢神経系の標的の天然リガンドの修飾型、アプタマー、抑制性核酸(即ち、小さな抑制性RNA(siRNA)や短いヘアピンRNA(shRNA))、リボザイム、及び小分子、又は上記のいずれかの活性断片を含む。本発明の典型的な神経障害薬は本明細書に記載され、限定されないが、抗体、アプタマー、タンパク質、ペプチド、抑制性核酸および小分子、および前述のいずれかの活性断片を含み、いずれもそれ自身であるか、又はCNS抗原又は標的分子、例えば限定されないが、アミロイド前駆体タンパク質又はその部分、アミロイドベータ、ベータ−セクレターゼ、ガンマ−セクレターゼ、タウ、アルファ−シヌクレイン、パーキン、ハンチンチン、DR6、プレセニリン、ApoE、グリオーマ又は他のCNSの癌マーカー、及びニューロトロフィンを特異的に認識するか及び/又は作用する(すなわち、阻害する、活性化する、又は検出する)。神経障害薬及びそれらが治療に用いられ得る障害の非限定的な例は以下の表1に与えられる。
【0063】
「造影剤」は、その存在及び/又は直接または間接的に検出される配置を可能にする一又は複数の特性を有する化合物である。このような造影剤の例としては、検出を可能に標識された部分を組み込んだタンパク質及び小分子化合物が挙げられる。
【0064】
「CNS抗原」又は「脳抗原」は、抗体または小分子により標的とすることができる脳を含むCNSで発現される抗原である。そうした抗原の例としては、限定されないが、β−セクレターゼ1(BACE1)、アミロイドβ(Abeta)、上皮増殖因子受容体(EGFR)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、タウ、アポリポタンパク質E4(ApoE4)、α−シヌクレイン、CD20、ハンチンチン、プリオンタンパク質(PrP)、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)、パーキン、プレセニリン1、プレセニリン2、ガンマセクレターゼ、細胞死受容体6(DR6)、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、p75ニューロトロフィン受容体(p75NTR)、及びカスパーゼ6を含む。一実施態様において、抗原はBACE1である。
【0065】
本明細書で使用される用語「BACE1」は、特に明記しない限り、霊長類(例えばヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物起源由来の任意の天然のβ−セクレターゼ1(アミロイド前駆体タンパク質βサイト切断酵素1、膜関連アスパラギン酸プロテアーゼ2、メマプシン2、アスパルチルプロテアーゼ2又はAsp2とも呼ばれる)を指す。その用語は、「完全長」、未処理のBACE1並びに細胞内でのプロセシングから生じた任意の形態のBACE1を含む。その用語はまた、天然に存在するBACE1の変異体、例えば、スプライス変異体又は対立遺伝子変異体を包含する。典型的なBACE1ポリペプチドのアミノ酸配列は、Vassar et al., Science 286:735-741 (1999)に報告されたヒトBACE1、アイソフォームAの配列であり、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ヒトBACE1の幾つか別のアイソフォームは、アイソフォームB、C、及びDを含み存在する。UniProtKB/Swiss−Prot Entry P56817を参照いただき、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0066】
用語「抗β−セクレターゼ抗体」、「抗BACE1抗体」及び「β−セクレターゼに結合する抗体」及び「BACE1に結合する抗体」は、抗体がBACE1を標的とし、診断薬剤及び/又は治療的薬剤として有用であるように十分な親和性でBACE1に結合することができる抗体を指す。一実施態様において、抗BACE1抗体の無関係な、非BACE1タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される場合、抗体のBACE1への結合の約10%未満である。ある実施態様において、BACE1へ結合する抗体は、解離定数(Kd)が、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば、10−
8M未満、例えば、10−
8Mから10−
13M、例えば、10−
9Mから10−
13M)。ある実施態様において、抗BACE1抗体は、異なる種由来のBACE1間で保存されているBACE1のエピトープに結合する。一実施態様において、抗BACE1抗体のYW412.8.31が結合したBACE1のエピトープに結合する抗体が与えられる。別の実施態様において、BACE1の触媒ドメインに位置するBACE1内の非活性部位に結合する抗体が与えられる。一実施態様において、Kornacker et al., Biochem. 44:11567-11573 (2005)で同定されたペプチドと競合する抗体が与えられ、それは、BACE1への結合において参照によりその全体が本明細書に組み込まれる(即ち、ペプチドの1,2,3,1−11,1−10,1−9,1−8,1−7,1−6,2−12,3−12,4−12,5−12,6−12,7−12,8−12,9−12,10−12,4,5,6,5−10,5−9,暗号化して、Y5A,P6A,Y7A,F8A,I9A,P10A及びL11A)。典型的なBACE1抗体配列は
図5A−B及び
図6A−Bに示されている。本明細書の一つの典型的な抗体は抗体YW412.8.31の可変ドメインを含む(例えば
図5A−Bにあるように)。
【0067】
本明細書における「天然配列」タンパク質は、タンパク質の天然に生じる変異体を含み、天然に見出されるタンパク質のアミノ酸配列を含むタンパク質を言う。本明細書で使用される用語は、天然源から単離されるか又は組換えにより生産されるタンパク質を含む。
本明細書における用語「抗体」は、最も広範な意味で用いられ、具体的には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも二つのインタクトな抗体から形成される多重特異性抗体(たとえば二重特異性抗体)、所望の生物学的活性を示す限りにおいて抗体断片を網羅する。
【0068】
本明細書における「抗体断片」は、抗原に結合する能力を保持するインタクトな抗体の一部を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)
2及びFv断片、ダイアボディ、直鎖抗体、単鎖抗体分子、および抗体断片から形成される多重特異性抗体を含む。
【0069】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味し、すなわち、モノクローナル抗体製剤の製造時に生じ得る可能性のある変異体であって、一般的に少量で存在している変異体を除き、集団を構成する個々の抗体は同一であり、及び/又は同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが、他の免疫グロブリンにより汚染されていない点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集団から得られる抗体の特徴を示し、いずれかの特定の方法による抗体の生産を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って用いるべきモノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ方法によって作成されてもよく、あるいは組換えDNA方法(例えば、米国特許第4,816,567号参照)によって作成されてもよい。「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991)およびMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581-597(1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。本明細書におけるモノクローナル抗体の具体的な例としては、キメラ抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体を、それらの抗原結合断片を含み、包含する。
【0070】
本発明のモノクローナル抗体は、具体的には、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が特定の種に由来する又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一又は相同であるが、その(それらの)鎖の残部は別の種に由来する又は別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一又は相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、並びにそのような抗体の断片(但し、それらが所望の生物学的活性を示すことを条件とする)であり得る(米国特許第4816567号;Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984))。本明細書における対象のキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば旧世界ザル、例えばヒヒ、アカゲザル又はカニクイザルなど)及びヒト定常領域配列に由来する可変ドメイン抗原結合配列を含む「プリミタイズド(primitized)」抗体が含まれる(米国特許第5,693,780号)。
【0071】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形態とは、非ヒト免疫グロブリンから得られた最小配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、受容体の超可変領域からの残基が、望まれる特異性、親和性、および力価を有するマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類ようなヒト以外の種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基によって置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例においては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非−ヒト残基によって置き換えられている。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体にも見出されない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体の性能をさらに改良するためになされる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも一つ、典型的には2つの可変ドメインの全てを実質的に含み、超可変領域の全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FRの全て又は実質的に全てが、上記のFRの置換(複数可)を除いて、ヒト免疫グロブリン配列のものであるヒト化抗体は、任意で、免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部、典型的には、ヒト免疫グロブリンのそれをやはり含むであろう。更なる詳細については、Jones et al.,Nature,321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature,332:323-329(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593-596(1992)を参照。
【0072】
本明細書において「ヒト抗体」は、ヒトB細胞から得ることが可能な抗体のアミノ酸配列構造に対応し、ヒト抗体の抗原結合断片を含むアミノ酸配列構造を包含するものである。そうした抗体は、様々な技術により同定され又は作成することができ、限定されないが、免疫感作時に、内在性免疫グロブリン産生の欠失下でヒト抗体を産生することが可能なトランスジェニック動物(例えば、マウス)の生産(例えばJakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993); Jakobovits et al., Nature, 362:255-258 (1993); Bruggermann et al., Year in Immuno., 7:33 (1993);及び米国特許第5,591,669号、第5,589,369号及び第5,545,807号を参照));ヒト抗体又はヒト抗体断片を発現するファージディスプレイライブラリーからの選択(例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-553 (1990); Johnson et al., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571 (1993); Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991); Griffith et al., EMBO J. 12:725-734 (1993);米国特許第5,565,332号及び第5,573,905号);インビトロで活性化されたB細胞を介する生成(米国特許第5,567,610号及び第5,229,275号);及びヒト抗体産生ハイブリドーマからの単離を含む。
【0073】
本明細書において「多重特異性抗体」は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。典型的な多重特異性抗体は、BBB−Rと脳抗原の両方に結合することができる。多重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab’)
2二重特異性抗体)として調製することができる。2つ、3つまたはそれ以上(例えば4つ)の機能的な抗原結合部位を有する操作された抗体もまた考慮される(例えば米国特許出願公開第2002/0004587A1号、Miller et al.を参照)。多重特異性抗体は、全長抗体又は抗体断片として調製することができる。
【0074】
本明細書における抗体は、改変された抗原結合または生物学的活性を有する「アミノ酸配列変異体」を含む。そのようなアミノ酸の変化としては、例えば、抗原に対する親和性が増強された抗体(例えば、「親和性成熟」抗体)、及び改変されたFc領域を有する抗体、もし存在する場合には、例えば、改変された(増加した又は減少した)抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)を持つ抗体(例えば国際公開第00/42072号,Presta,L.及び国際公開第99/51642号,Iduosogie et al.);及び/又は血清の半減期が増加又は減少した抗体を包含する。
【0075】
「親和性修飾変異体」は、親和性を変更する(増加または減少させる)親抗体(親のキメラ、ヒト化又はヒト抗体など)の一つまたは複数の置換された超可変領域又はフレームワーク残基を有する。
【0076】
一実施態様において、更なる開発のために選択される得られた変異体は、本発明に係るBBB−Rに対する親和性が低下しているであろう。そのような置換変異体を生成するための便利な方法は、ファージディスプレイを使用する。簡潔には、幾つかの超可変領域部位(例えば6−7部位)が各部位における全ての可能なアミノ酸置換を生成するために変異される。こうして生成された抗体変異体は、各粒子内にパッケージされたM13の遺伝子III産物への融合体として、繊維状ファージ粒子から一価の様式で提示される。ファージディスプレイされる変異体は、その後、それらの生物学的活性(例えば結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾のための候補となる超可変領域部位を同定するために、アラニンスキャニング変異誘発が、抗原結合に有意に寄与する超可変領域の残基を同定するために行うことができる。代わりに、又は更に、抗体とその標的との接触点を同定するために抗原抗体複合体の結晶構造を解析することは有益である。そのような接触残基及び隣接残基は、本明細書で述べた技術に従う置換の候補である。そのような変異体が生成されると、変異体のパネルはスクリーニングに供され、改変された親和性を有する抗体が更なる開発のために選択され得る。
【0077】
本明細書における抗体は、例えば半減期または安定性を向上させるか、あるいは抗体を改善するために、「異種分子」とコンジュゲートされてもよい。例えば、抗体は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、又はポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体などの様々な非タンパク質ポリマーの1つに連結することができる。1つ以上のPEG分子に連結される、例えばFab’などの抗体断片は、本発明の典型的な実施態様である。
【0078】
本明細書における抗体は、存在する場合には、Fc領域に付着する任意の糖が変更される「グリコシル化変異体」であっても良い。例えば、抗体のFc領域に付着するFc領域を欠く成熟した糖鎖構造を有する抗体が、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta,L.)に記載されている。米国特許出願公開第2004/0093621号(協和発酵工業株式会社)も参照。抗体のFc領域に付着した糖鎖において二分するN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)を有する抗体が、国際公開第2003/011878号,Jean-Mairet et al. 及び米国特許第6,602,684号、Umana et al.で参照されている。抗体のFc領域に付着されているオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体が、国際公開第1997/30087号、Patel et al.に報告されている。Fc領域に付着した改変された糖を持つ抗体に関して、国際公開第1998/58964号(Raju,S.)及び国際公開第1999/22764号(Raju,S.)も参照。修飾されたグリコシル化を有する抗体を記載する米国特許出願公開第2005/0123546号(Umana et al.)も参照。
【0079】
本明細書で使用する用語「超可変領域」は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を言う。超可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基24−34(L1),50−56(L2)及び89−97(L3)、及び重鎖可変ドメインの残基31−35(H1),50−65(H2)及び95−102(H3);Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))及び/又は「超可変ループ」からのアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基26−32(L1),50−52(L2)及び91−96(L3)及び重鎖可変ドメインの残基26−32(H1),53−55(H2)及び96−101(H3); Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))を含む。「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書で定義される超可変領域の残基以外の可変ドメイン残基である。
【0080】
「完全長抗体」は、抗原結合可変領域並びに軽鎖定常ドメイン(CL)及び重鎖定常ドメイン、CH1、CH2及びCH3を含むものである。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体であり得る。
ネイキッド抗体は、細胞傷害性部分、ポリマー、又は放射性標識などの異種分子にコンジュゲートされていない抗体(本明細書で定義される)である。
【0081】
抗体「エフェクター機能」は抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰因するそれらの生物学的活性を言う。抗体エフェクター機能の例は、C1q結合は、補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞介在性細胞傷害活性(ADCC)を含む。一実施態様では、本明細書における抗体は、本質的にエフェクター機能を欠いている。
【0082】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、完全長抗体は、種々のクラスに割り当てることができる。完全長抗体の5つの主要なクラスがあり:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、そしてこれらのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IGA、及びIgA2に分けることができる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元構成はよく知られている。
【0083】
用語「組換え抗体」は、本明細書で使用される場合、抗体をコードする核酸を含む組換え宿主細胞により発現される抗体(例えばキメラ、ヒト化、又がヒト抗体或いはその抗原結合断片など)を指す。組換え抗体を産生するための「宿主細胞」の例は、(1)哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、COS、骨髄腫細胞(Y0細胞とNS0細胞を含む)、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、HeLa細胞及びベロ細胞;(2)昆虫細胞、例えば、SF9、SF21及びTn5;(3)植物細胞、例えばタバコ属(例えば、ニコチアナタバクム)に属する植物;(4)酵母細胞、例えば、サッカロミセス属(例えば、出芽酵母)、又はアスペルギルス属(例えば、クロコウジカビ);(5)細菌細胞、例えば大腸菌細胞又は枯草菌細胞などを含む。
【0084】
本明細書で使用される「特異的に結合」又は「特異的に結合する」とは、抗体の抗原に対する選択的又は優先的結合を意味する。結合親和性は、一般に、スキャッチャード分析又は表面プラズモン共鳴技術などの標準的アッセイを用いて(例えば、BIACORE(登録商標)を使用して)決定される。
【0085】
参照抗体として「同一のエピトープに結合する抗体」とは、競合アッセイにおいて50%以上、参照抗体のその抗原への結合をブロックする抗体、逆に競合アッセイにおいて50%以上、その抗体のその抗原への結合をブロックするその参照抗体を指す。一実施態様において、抗BACE1抗体はYW412.8.31によって結合されたBACE1エピトープに結合する。
【0086】
本明細書で用いられる「細胞傷害性薬物」という用語は、細胞の機能を阻害又は阻止し及び/又は細胞死又は破壊を生ずる物質を指す。細胞傷害性薬物は、限定されないが、放射性同位体(例えば、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212及びLuの放射性同位体):化学療法剤又は薬物(例えば、メトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシンまたは他の挿入剤)、成長阻害剤、酵素及びその断片、例えば核酸分解酵素など、抗生物質、小分子毒素などの毒素、又は細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素(それらの断片及び/又はその変異体を含む)を包含する。
【0087】
薬剤、例えば、薬学的製剤の「有効量」とは、所望の治療的又予防的結果を達成するために必要な用量及び期間での、有効な量を指す。
【0088】
用語「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。その用語は、天然配列Fc領域と変異体Fc領域を含む。一実施態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226又はPro230から重鎖のカルボキシル末端まで伸長する。しかし、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は存在しているか、又は存在していない場合がある。本明細書に明記されていない限り、Fc領域又は定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991に記載されるように、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従う。
【0089】
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に4つのFRのドメイン、FR1、FR2、FR3、及びFR4からなる。従って、HVR及びFR配列は一般にVH(又はVL)の以下の配列に現れる:FR1−H1(L1)−FR2−H2(L2)−FR3−H3(L3)−FR4。
【0090】
「イムノコンジュゲート」は、1つ以上の異種分子にコンジュゲートした抗体であり、限定されないが、標識又は細胞傷害性薬物を含む。必要に応じてこのようなコンジュゲーションはリンカーを介してである。
【0091】
本明細書で使用する「リンカー」は、抗BBB−R抗体を異種分子に共有結合又は非共有結合で連結する構造を指す。所定の実施態様において、リンカーはペプチドである。他の実施態様において、リンカーは化学的リンカーである。
【0092】
「標識」は、本明細書の抗体と結合し、検出又はイメージングのために使用されるマーカーである。このような標識の例には、放射性標識、フルオロフォア、発色団、またはアフィニティータグが挙げられる。一実施態様において、標識は、例えばtc99m又はI123、又は核磁気共鳴(NMR)画像化(磁気共鳴画像法、mriとしても知られている)のためのスピン標識、例えば再び、ヨウ素−123、ヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウム、マンガン又は鉄などの医療画像に使われる放射標識である。
【0093】
「個体」又は「被検体」は、哺乳動物である。哺乳動物は、限定されないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、サルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含む。所定の実施態様において、個体又は被検体はヒトである。
【0094】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から分離されたものである。幾つかの実施態様において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS−PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)により決定されるように、95%以上または99%の純度に精製される。抗体純度の評価法の総説としては、例えばFlatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 (2007)を参照のこと。
【0095】
用語「パッケージ挿入物」は、効能、用法、用量、投与、併用療法、禁忌についての情報、及び/又はそのような治療用製品の使用に関する警告を含む、治療用製品の商用パッケージに慣習的に含まれている説明書を指すために使用される。
【0096】
用語「薬学的製剤」は、その中に有効で含有される活性成分の生物学的活性を許容するような形態であって、製剤を投与する被検体にとって許容できない毒性である他の成分を含まない調製物を指す。
【0097】
「薬学的に許容される担体」は、被検体に非毒性であり、有効成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体は、限定されないが、緩衝剤、賦形剤、安定剤、又は保存剤を含む。
【0098】
本明細書で用いられるように、「治療」(及び「治療する(treat)」または「治療している(treating)」など文法上の変形)は、治療されている個体の自然経過を変えようと試みる臨床的介入を指し、予防のために、または臨床病理の過程においてのいずれかで実行できる。治療の望ましい効果は、限定されないが、疾患の発症又は再発を予防すること、症状の緩和、疾患の直接的または間接的な病理学的帰結の縮小、転移を予防すること、疾患の進行の速度を遅らせること、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善を含む。幾つかの実施態様において、本発明の抗体は、疾患の発症を遅延させるか又は疾患の進行を遅くするために使用される。
【0099】
組成物及び方法
II.抗BBB−R抗体とそのコンジュゲートの産生
本発明の方法及び製造品は、BBB−Rに結合する抗体を用いるか又は組み込む。抗体の産生又はスクリーニングに使用されるBBB−R抗原は、所望のエピトープを含む可溶性形態またはその一部(例えば、細胞外ドメイン)であってもよい。あるいは、又は追加として、それらの細胞表面でBBB−Rを発現する細胞が、抗体を生成する又はスクリーニングするために使用することができる。抗体を生成するために有用なBBB−Rの他の形態は当業者には明らかであろう。本明細書におけるBBB−Rの別は、トランスフェリン受容体(TfR)、インスリン受容体、インスリン様増殖因子受容体(IGF−R)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)及びLRP8など、及びヘパリン結合上皮細胞増殖因子様増殖因子(HB−EGF)を含む。
【0100】
本発明によれば、「低親和性」抗BBB−R(例えば抗TfR)抗体は、その抗体が改善されたCNS(例えば、脳)の取り込みを提示することを実証する本明細書のデータに基づいて選択される。このような低親和性抗体を同定するために、限定されないが、スキャッチャードアッセイ及び表面プラズモン共鳴技術(例えば、BIACORE(登録商標)を使用する)を含む、抗体親和性を測定するための様々なアッセイが利用できる。本発明の一実施態様によれば、抗体は、BBB−R抗原に対して(例えばTfRに対して)、約5nMから、又は約20nMから、又は約100nmから、約10μMまで、又は約1μMまで、又は約500nMまでの親和性を有する。従って、親和性は、例えばスキャッチャード分析又はBIACORE(登録商標)によって測定される場合、約5nMから約10μMの範囲内、又は約20nMから約1μMの範囲内、又は約20nMから約1μMの範囲内、又は約100nMから約500nMの範囲内であってもよい。
【0101】
従って、本発明は、血液脳関門受容体(BBB−R)に対する抗体のパネルから抗体を選択することを含む血液脳関門を横切って神経障害薬を輸送するために有用な抗体の製造方法を提供するが、その理由はそれが約5nMから、又は約20nMから、又は約100nMから、約10μMまで、又は約1μMまで、又は約500mMまでの範囲でBBB−Rに対する親和性を有するためである。従って、親和性は、例えばスキャッチャード分析又はBIACORE(登録商標)によって測定される場合、約5nMから約10μMの範囲内、又は約20nMから約1μMの範囲内、又は約20nMから約1μMの範囲内、又は約100nMから約500nMの範囲内であってもよい。当業者によって理解されるように、抗体が、抗体の元のターゲットとは異なる抗原に結合する一以上のアームを持つ多重特異的に作成される場合、例えば、一つの結合アームの立体障害又は排除が原因で、抗体に異種分子/化合物をコンジュゲートさせることは、多くの場合、その標的に対する抗体の親和性を減少させる。一実施態様において、BACE1にコンジュゲートしたTfRに特異的な本発明の低親和性抗体は、BIACOREによって測定される場合TfRに対するKdがおよそ30nMであった。別の実施態様において、BACE1にコンジュゲートしたTfRに特異的な本発明の低親和性抗体は、BIACOREによって測定される場合TfRに対するKdがおよそ600nMであった。
【0102】
抗体親和性を評価するための一つの典型的なアッセイはスキャッチャード分析による。例えば、目的の抗BBB−R抗体はラクトペルオキシダーゼ法(Bennett and Horuk, Methods in Enzymology 288 pg.134-148 (1997))を用いてヨウ素化することができる。放射性標識抗BBB−R抗体はNAP−5カラム用いたゲルろ過によって遊離の
125I−Naから精製され、その比放射能が測定される。ヨウ素化抗体の一定濃度と段階希釈された非標識抗体の減少する濃度を含有する50μLの競合反応混合物を96ウェルプレート中に配置する。BBB−Rを一時的に発現する細胞が、10%FBS、2mMのLグルタミンと1×ペニシリン−ストレプトマイシンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Genentech)からなる増殖培地で、37℃で5%のCO
2中で培養される。細胞は、シグマ細胞解離溶液を使用して、皿から剥離し、結合緩衝液(1%ウシ血清アルブミン、50mMのHEPESを、pH7.2、及び0.2%アジ化ナトリウムを有するDMEM)で洗浄する。洗浄した細胞を、50μLの競合反応混合物を含有する96ウェルプレートに結合緩衝液0.2mL中およそ20万細胞の密度で添加する。細胞との競合反応物の非標識抗体の最終濃度は、1000nMで開始し、次いで10の濃度に対して1:2培希釈により減少させ、無添加の緩衝液のみのサンプルを含み、変化させる。非標識抗体の各濃度について細胞との競争反応を3回アッセイする。細胞との競合反応物を室温で2時間インキュベートする。2時間のインキュベーション後に、競争反応は、フィルタープレートに移し、結合したヨウ素化抗体から解放し分離するために結合緩衝液で4回洗浄する。フィルターは、ガンマカウンターでカウントされ、結合データは、抗体の結合親和性を決定するためにMunsonとRodbard(1980)のフィッティングアルゴリズムを用いて評価される。
【0103】
本発明による組成物を用いる典型的なスキャッチャード分析は以下の通りである。抗TFR
Aはラクトペルオキシダーゼ法を用いてヨウ素化した(Bennett and Horuk, Methods in Enzymology 288 pg.134-148 (1997))。放射標識された抗TFR
AはNAP−5カラムを使用してゲル濾過により遊離の
125I−Naから精製され;精製された抗TFRAは比放射能が19.82Ci/μgであった。ヨウ素化抗体の一定濃度と段階希釈された非標識抗体の減少する濃度を含有する50μLの競合反応混合物が96ウェルプレート中に配置された。マウスTfRを一時的に発現する293細胞が、10%FBS、2mMのLグルタミンと1×ペニシリン−ストレプトマイシンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Genentech)からなる増殖培地で、37℃で5%のCO
2中で培養される。細胞は、シグマ細胞解離溶液を使用して、皿から剥離し、結合緩衝液(1%ウシ血清アルブミン、50mMのHEPESを、pH7.2、及び0.2%アジ化ナトリウムを有するDMEM)で洗浄した。洗浄した細胞を、50μLの競合反応混合物を含有する96ウェルプレートに結合緩衝液0.2mL中およそ20万細胞の密度で添加した。細胞との各競合反応物中のヨウ素化抗体の最終濃度は100pMであった(0.25mLあたり134000pcm)。細胞との競合反応物の非標識抗体の最終濃度は、1000nMで開始し、次いで10の濃度に対して1:2培希釈により減少させ、無添加の緩衝液のみのサンプルを含み、変化させた。非標識抗体の各濃度について細胞との競争反応を3回アッセイした。細胞との競合反応物を室温で2時間インキュベートした。2時間のインキュベーション後に、競争反応は、フィルタープレートに移され、結合したヨウ素化抗体から解放し分離するために結合緩衝液で4回洗浄した。フィルターを、Wallacウィザード1470ガンマカウンター上でカウントした(PerkinElmer Life and Analytical Sciences;Waltham,MA)。結合データは、抗体の結合親和性を決定するためにMunsonとRodbard(1980)のフィッティングアルゴリズムを用いる、新規リガンドソフトウェア(Genentech)を用いて評価した。
【0104】
本発明による組成物を用いる典型的なBIACORE(登録商標)分析は以下の通りである。Kdは、抗ヒトFcキット(BiAcore Inc.,Piscataway,NJ)を用いて25℃でBIACORE(登録商標)−2000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を用いた表面プラズモン共鳴アッセイを用いて測定した。簡単に言うと、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5,BIACORE Inc.)を、提供者の指示書に従ってN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシニミド(NHS)で活性化した。抗ヒトFc抗体を10mM酢酸ナトリウム(pH4.8)で50μg/mlに希釈し、結合したタンパク質のおよそ10000反応単位(RU)を達成するために5μl/分の流速で注入された。抗体の注入後、反応しない群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入した。動力学測定では、抗TfR抗体変異体を、約220RU程度に達するようにHBS−Pに注入し、次いでMuTfR−His(0.61nMから157nM)の二倍段階希釈を約30μlの/分の流速で25℃でHBS−Pに注入した。会合センサーグラム及び解離センサーグラムを同時にフィットさせることによる単純一対一ラングミュア結合モデル(simple one−to−one Langmuir binding model)(BIACORE(登録商標)Evaluationソフトウェアバージョン3.2)を用いて、会合速度(kon)と解離速度(koff)を算出した。平衡解離定数(Kd)をkoff/konの比として計算した。例えば、 Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881 (1999)を参照。
【0105】
別の実施態様によれば、Kdは、抗ヒトFcキット(BiAcore Inc.,Piscataway,NJ)を用いて25℃でBIACORE(登録商標)−2000装置(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)による表面プラズモン共鳴アッセイを用いて測定される。簡単に言うと、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5,BIACORE Inc.)を、提供者の指示書に従ってN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシニミド(NHS)で活性化する。抗ヒトFc抗体を10mM酢酸ナトリウム(pH4.8)で50μg/mlに希釈し、結合したタンパク質のおよそ10000反応単位(RU)を達成するために5μl/分の流速で注入する。抗体の注入後、反応しない群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入する。動力学測定では、抗BBB−R抗体変異体が、約220RU程度に達するようにHBS−Pに注入され、次いでBBB−R−His(0.61nMから157nM)の二倍段階希釈を約30μlの/分の流速で25℃でHBS−Pに注入する。会合センサーグラム及び解離センサーグラムを同時にフィットさせることによる単純一対一ラングミュア結合モデル(simple one−to−one Langmuir binding model)(BIACORE(登録商標)Evaluationソフトウェアバージョン3.2)を用いて、会合速度(kon)と解離速度(koff)を算出する。平衡解離定数(Kd)をkoff/kon比として算出する。例えば、 Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881 (1999)を参照。
【0106】
BBB−Rに対する一以上の抗体の親和性の代替測定は、既知のBBB−RリガンドのBBB−Rへの結合を阻害するためにどの程度の抗体が必要とされるかの尺度である、最大半量阻害濃度(IC50)である。所与の化合物についてIC50を決定するいくつかの方法が当該技術分野で知られており;一般的な方法は、例えば本明細書の実施例に記載されるもの、即ち
図2Aに関連して、競合結合アッセイを行うことである。一般に、高いIC50とは、より多くの抗体が既知のリガンドの結合を阻害するために必要であり、従ってそのリガンドに対する抗体の親和性は比較的低いことを示している。一般に、低いIC50とは、より少ない抗体が既知のリガンドの結合を阻害するために必要であり、従ってそのリガンドに対する抗体の親和性は比較的高いことを示している。
【0107】
IC50を測定する典型的な競合ELISAアッセイは、抗TfR又は抗TfR/脳抗原(即ち、抗TfR/BACE1、抗TfR/Abetaなど)変異体抗体の濃度を増加させることがTfRへの結合のためにビオチン化TfRAに対して競合することに用いられるものである。抗TfR競合ELISAは、PBS中で2.5μg/mlの精製されたマウスTfR細胞外ドメインにより4℃で一晩被覆されたMaxisorpプレート(Neptune,N.J.)で実行された。プレートはPBS/0.05% Tween 20で洗浄され、PBS中でスーパーブロック(Superblock)ブロッキングバッファーを使用してブロックした(Thermo Scientific,Hudson,NH)。個々の抗TfR又は抗TfR/脳抗原の各々(即ち抗TfR/BACE1又は抗TfR/Abeta)の希釈(1:3段階希釈)がビオチン化抗TfR
Aと組み合わされ(0.5nMの最終濃度)、室温で1時間プレートへ添加された。プレートはPBS/0.05% Tween 20で洗浄され、HRP−ストレプトアビジン(Southern Biotech,Birmingham)がプレートに加えられ、室温で1時間インキュベートした。プレートはPBS/0.05% Tween 20で洗浄され、プレートに結合したビオチン化抗TfR
AがTMB基質を用いて検出された(BioFX Laboratories,Owings Mills)。
【0108】
一実施態様において、本明細書における低親和性抗BBB−Rは、より効率的に標識及び/又は薬剤又は造影剤をBBBを通過して輸送するために、標識及び/又は神経障害薬又は造影剤と結合している。そのような結合は、化学的架橋剤によって、または融合タンパク質等を生成することによって達成することができる。
【0109】
共有結合は、直接またはリンカーを介してすることができる。所定の実施態様において、直接コンジュゲーションは、タンパク質融合(すなわち、BBB−R抗体と神経障害薬をコードする2つの遺伝子の遺伝子融合、及び単一タンパク質としての発現による)構築による。所定の実施態様において、直接コンジュゲーションは、抗BBB−R抗体の2つの部分の片方の反応基と神経薬の対応する基またはアクセプターとの間の共有結合を形成することによる。所定の実施態様において、直接コンジュゲーションは、適切な条件下でコンジュゲートすべき他の分子に共有結合を形成する反応性基を(非限定的な例として、スルフヒドリル基またはカルボキシル基など)を含めるために、コンジュゲートすべき2分子の一方の改変(すなわち、遺伝子組み換え)によるものである。非限定的な例としては、所望の反応基(すなわち、システイン残基)を有する分子(すなわち、アミノ酸)を、抗BBB−R抗体中に導入することができ、ジスルフィド結合が神経薬と形成される。タンパク質に対して核酸を共有結合するための方法もまた、当技術分野で知られている(すなわち光架橋、例えばZatsepin et al(2005) Russ. Chem. Rev. 74: 77-95 (2005)を参照)。非共有結合は、当業者によって容易に理解されるように、疎水結合、イオン結合、静電相互作用などを含む、任意の非共有結合法によるものである。コンジュゲーションはまたさまざまなリンカーを使って行うことができる。例えば、抗BBB−R抗体と神経薬は、様々な二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの2官能性誘導体(例えばジメチルアジピミデートHCl)、活性エステル(例えばジスクシンイミジルズベレート)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えばビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビスジアゾニウム誘導体(例えばビス(p−ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えばトルエン2,6−ジイソシアネート)及びビス活性フッ素化合物(例えば1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)などを使ってコンジュゲートされ得る。ペプチド結合により連結した1から20個のアミノ酸から成るペプチドリンカーもまた使用することができる。所定の実施態様において、アミノ酸は20個の天然に存在するアミノ酸から選択される。所定の他のこのような実施態様では、アミノ酸の1つ以上が、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミンおよびリジンから選ばれる。リンカーは、脳への送達の際に神経薬の放出を容易にする「切断可能なリンカー」であって良い。例えば、酸に不安定なリンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光解離性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al., Cancer Res. 52:127-131 (1992);米国特許第5,208,020号)が使用され得る。
【0110】
本明細書の発明は、限定されないが、市販の(例えばPierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aからの)、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC−SMCC、MBS MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ−EMCS、スルホ−GMBS、スルホ−KMUS、スルホ−MBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMPB、及びスルホ−SMPB、SVSB(スクシンイミジル(4−ビニルスルホン)ベンゾエート)を含むクロスリンカー試薬を用いて調製されるコンジュゲートを明示的に熟慮している。
【0111】
神経障害性障害については、神経薬は、限定されないが、オピオイド/麻薬性鎮痛薬(すなわち、モルヒネ、フェンタニル、ヒドロコドン、メペリジン、メタドン、オキシモルフォン、ペンタゾシン、プロポキシフェン、トラマドール、コデイン、オキシコドン)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(すなわち、イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、ケトロラク、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、およびトルメチン)、コルチコステロイド(すなわち、コーチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロンやトリアムシノロン)、抗片頭痛剤(すなわち、スマトリプタン、アルモトリプタン、フロバトリプタン、スマトリプタン、リザトリプタン、エレトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタンとエルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン)、アセトアミノフェン、サリチル酸塩(すなわち、アスピリン、サリチル酸コリン、サリチル酸マグネシウム、ジフルニサル、そしてサルサラート)抗痙攣(すなわち、カルバマゼピン、クロナゼパム、ガバペンチン、ラモトリジン、プレガバリン、チアガビン、およびトピラマート)、麻酔薬(すなわち、イソフルラン、トリクロロエチレン、ハロタン、セボフルラン、ベンゾカイン、クロロ、コカイン、シクロメチカイン、ジメトカイン、プロポキシカイン、プロカイン、ノボカイン、プロパラカイン、テトラカイン、アルチカイン、ブピバカイン、アルチカイン、シンコカイン、エチドカイン、レボブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、ピペロカイン、プリロカイン、ロピバカイン、トリメカイン、サキシトキシンとテトロドトキシン)、及びCOX−2阻害剤(すなわち、セレコキシブ、ロフェコキシブ、およびバルデコキシブ)を含む鎮痛剤から選択することができる。めまいの併発を伴う神経障害性障害については、神経薬は、限定されないが、メクリジン、ジフェンヒドラミン、プロメタジン、ジアゼパムを含む、抗めまい剤から選択してもよい。吐き気の併発を伴う神経障害性障害については、神経薬は、限定されないが、プロメタジン、クロルプロマジン、プロクロルペラジン、トリメトベンズアミド、及びメトクロプラミドを含む抗吐き気剤から選択してもよい。神経変性疾患において、神経薬は、成長ホルモンや神経栄養因子から選択することができ、例としては、限定されなが、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン−4/5、線維芽細胞増殖因子(FGF)−2および他のFGF、ニューロトロフィン(NT)−3、エリスロポエチン(EPO)、肝細胞増殖因子(HGF)、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)−α、TGF−β、血管内皮増殖因子(VEGF)、インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、血小板由来増殖因子(PDGF)、ヘレグリン、ニューレグリン、アルテミン、ペルセフィン、インターロイキン、グリア細胞株由来神経栄養因子(GFR)、顆粒球コロニー刺激因子(CSF)、顆粒球−マクロファージ−CSF、ネトリン、カルジオトロフィン、ヘッジホッグ、白血病抑制因子(LIF)、ミッドカイン、プレイオトロフィン、骨形成タンパク質(BMP)、ネトリン、サポシン、セマフォリン、および幹細胞因子(SCF)を含む。
【0112】
癌については、神経薬は化学療法剤から選択されてもよい。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホルアミド(triethiylenethiophosphoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);デルタ−9−テトラヒドロカナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標);βラパチョーネ;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトセシン(合成アナログトポテカン(HYCAMTIN(登録商標)、CPT−11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)及び9−アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;ドゥオカルマイシン(合成アナログ、KW−2189及びCB1−TM1を含む);エロイテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンギスタチン;クロランブシル、クロロナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロスレアス(nitrosureas);抗生物質、例えばエネジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンωI1(例えばAgnew Chem Intl. Ed. Engl. 33:183-186(1994)を参照);ダイネマイシン(dynemicin)Aを含むダイネマイシン;エスペラマイシン;並びにネオカルチノスタチン発色団及び関連する色素タンパクエネジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン類(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorbicin)、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCのようなマイトマイシン、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート及び5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸アナログ、例えばデノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate);プリンアナログ、例えばフルダラビン(fludarabine)、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6−アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine);アンドロゲン類、例えばカルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone);抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸リプレニッシャー(replenisher)、例えばフロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);メイタンシノイド(maytansinoid)類、例えばメイタンシン(maytansine)及びアンサミトシン(ansamitocine);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特にT−2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジン(roridine)A及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカーバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);チオテパ;タキソイド類、例えばTAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol−Myers Squibb Oncology,Princeton,NJ)、ABRAXANETMパクリタキセルのクレモフォー無添加アルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Illinois)、及びTAXOTERE(登録商標)ドキセタキセル(Rhone−Poulenc Rorer,Antony,France);クロランブシル;ゲムシタビン(gemcitabine)(GEMZAR(登録商標));6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;プラチナアナログ、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));プラチナ;エトポシド(VP−16);イホスファミド;マイトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボビン(leucovovin);ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン(novantrone);エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロナート(ibandronate);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸のようなレチノイド;カペシタビン(capecitabine)(XELODA(登録商標);上述したもののいずれかの薬学的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体:並びに上記のうち2以上の組み合わせ、例えば、シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニソロン併用療法の略称であるCHOP、及び5−FU及びロイコボビン(leucovovin)とオキサリプラチン(ELOXATINTM)を組み合わせた治療法の略称であるFOLFOXが含まれる。
【0113】
また化学療法剤の定義に含まれるものには、癌の成長を助けるホルモンの作用を調節、低減、遮断又は阻害するように働き、多くの場合全身処置の形態で使用される抗ホルモン剤がある。それらはそれ自体がホルモンであってもよい。例として、抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体調節物質(SERM)を含み、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、EVISTA(登録商標)ラロキシフェン(raloxifene)、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びFARESTON(登録商標)トレミフェン;抗プロゲステロン;エストロゲンレセプター下方調節剤(ERD);卵巣を抑止又は停止させる機能がある作用剤、例えばLUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標)酢酸ロイプロリド等の黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、酢酸ゴセレリン、酢酸ブセレリン及びトリプテレリン(tripterelin);その他抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド;並びに副腎のエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、フォルメスタニー(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾールが挙げられる。加えて、このような化学療法剤の定義には、クロドロネート(例えばBONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、DIDROCAL(登録商標)エチドロン酸、NE−58095、ZOMETA(登録商標)ゾレドロン酸/ゾレドロネート、FOSAMAX(登録商標)アレンドロネート、AREDIA(登録商標)パミドロン酸、SKELID(登録商標)チルドロン酸、又はACTONEL(登録商標)リセドロン酸、並びにトロキサシタビン(troxacitabine)(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に接着細胞の増殖に結びつくシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えばPKC−α、Raf、及びH−Ras、及び上皮成長因子レセプター(EGF−R);THERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子治療ワクチン等のワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;ラパチニブ(lapatinib ditosylate)(GW572016としても知られるErbB−2及びEGFR二重チロシンキナーゼ小分子阻害剤)及び上記のもののいずれかの製薬的に許容される塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
【0114】
癌の治療又は予防のための神経薬として選択することができる化合物の別の群は、抗癌免疫グロブリン(限定されないが、トラスツズマブ、ベバシズマブ、アレムツズマブ、セツキシマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イブリツモマブチウキセタン、パニツムマブ、リツキシマブを含む)である。幾つかの場合、有毒な標識と併用した抗体が、所望の細胞(すなわち、癌細胞)を標的とし、死滅させるために使用され得、限定しないが、
131I放射性標識を持つトシツモマブが含まれる。
【0115】
眼疾患または障害について、神経薬は、抗血管新生点眼剤(すなわち、ベバシズマブ、ラニビズマブ及びペガプタニブ)、緑内障点眼剤(トラボプロストとラタノプロストすなわち、カルバコール、エピネフリン、臭化デメカリウム、アプラクロニジン、ブリモニジン、brinzolamide、レボブノロール、チモロール、ベタキソロール、ドルゾラミド、ビマトプロスト、カルテオロール、メチプラノロール、ジピベフリン)、炭酸脱水酵素阻害剤(すなわち、メタゾラミド及びアセタゾラミド)、眼科用抗ヒスタミン薬(すなわち、ナファゾリン、フェニレフリンとテトラヒドロゾリン)、眼潤滑剤、眼科用ステロイド(すなわち、フルオロメトロン、プレドニゾロン、ロテプレドノール、デキサメタゾン、ジフルプレドナート、リメキソロン、フルオシノロンアセトニド、メドリゾン及びトリアムシノロン)、点眼麻酔薬(すなわち、リドカイン、テトラカイン及びプロパラカイン)、眼科用抗感染薬(すなわち、レボフロキサシン、ガチフロキサシン、シプロフロキサシン、モキシフロキサシン、クロラムフェニコール、バシトラシン/ポリミキシンb、スルファセタミド、トブラマイシン、アジスロマイシン、ベシフロキサシン、ノルフロキサシン、スルフイソキサゾール、ゲンタマイシン、イドクスウリジン、エリスロマイシン、ナタマイシン、グラミシジン、ネオマイシン、オフロキサシン、トリフルリジン、ガンシクロビル、ビダラビン)、眼科用抗炎症剤(すなわち、ネパフェナク、ケトロラク、フルルビプロフェン、スプロフェン、シクロスポリン、トリアムシノロン、ジクロフェナクとブロムフェナク)、及び眼科用抗ヒスタミン剤又は充血除去剤(すなわち、ケトチフェン、オロパタジン、エピナスチン、ナファゾリン、クロモリン、テトラヒドロゾリン、ペミロラスト、ベポタスチン、ナファゾリン、フェニレフリン、ネドクロミル、ロドキサミド、フェニレフリン、エメダスチン及びアゼラスチン)から選択することができる。
【0116】
発作性疾患については、CNS活性化合物は、抗けいれん薬又は抗てんかん薬から選択され得、限定されないが、バルビツレート系抗けいれん薬(すなわち、プリミドン、メタルビタール、メホバルビタール、アロバルビタール、アモバルビタール、アプロバルビタール、アルフェナール、バルビタール、ブラロバルビタール及びフェノバルビタール)、ベンゾジアゼピン系抗けいれん薬(すなわち、ジアゼパム、クロナゼパム、およびロラゼパム)、カルバメート抗けいれん薬(すなわちフェルバメート)、炭酸脱水酵素阻害薬の抗けいれん薬(すなわち、アセタゾラミド、トピラマートとゾニサミド)、ジベンズアゼピン抗けいれん薬(すなわち、ルフィナマイド、カルバマゼピン、そしてオクスカルバゼピン)、脂肪酸誘導体の抗痙攣薬(すなわち、ジバルプロックスとバルプロ酸)、γ−アミノ酪酸類似体(すなわち、プレガバリン、ガバペンチンおよびビガバトリン)、γ−アミノ酪酸再取り込み阻害剤(すなわち、チアガビン)、γ−アミノ酪酸トランスアミナーゼ阻害剤(すなわち、ビガバトリン)、ヒダントイン抗けいれん薬(例えば、フェニトイン、エトトイン、ホスフェニトイン及びメフェニトイン)、その他の抗けいれん薬(すなわち、ラコサミド、硫酸マグネシウム)、プロゲスチン(すなわち、プロゲステロン)、オキサゾリジンの抗けいれん薬(すなわち、パラメタジオン及びトリメタジオン)、ピロリジン抗けいれん薬(すなわち、レベチラセタム)、スクシンイミド抗けいれん薬(すなわち、エトスクシミド及びメトスクシミド)、トリアジン抗けいれん薬(すなわち、ラモトリジン)、及び尿素抗けいれん薬(すなわち、フェナセミド及びフェネトライド)を含む。
【0117】
リソソーム蓄積症について、神経薬は、それ自体が又は別の方法で、病気で損なわれている酵素の活性を模倣するものが選択され得る。リソソーム蓄積症の治療のための例示的な組換え酵素は、限定されないが、例えば、米国特許出願公開第2005/0142141号に記載されるもの(即ち、α−L−イズロニダーゼ、イズロン酸−2−スルファターゼ、N−スルファターゼ、α−N−アセチルグルコサミニダーゼ、N−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、アリールスルファターゼB、β−グルクロニダーゼ、酸性α−グルコシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−ガラクトシダーゼA、ヘキソサミニダーゼA、酸性スフィンゴミエリナーゼ、β−ガラクトセレブロシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アリールスルファターゼA、酸性セラミダーゼ、アスパルトアシラーゼ、パルミトイル−プロテインチオエステラーゼ1、及びトリペプチジルアミノペプチダーゼ1)を含む。
【0118】
アミロイドーシスについては、神経薬を選択することができ、限定されないが、抗体、又は、βセクレターゼ、タウ、プレセニリン、そのアミロイド前駆体タンパク質またはその部分、アミロイドβペプチドまたはそれらのオリゴマーまたは線維、細胞死受容体6(DR6)、糖化最終産物に対する受容体(RAGE)、パーキン、そしてチンチン、コリンエステラーゼ阻害剤(すなわち、ガランタミン、ドネペジル、リバスチグミン及びタクリン);NMDA受容体拮抗薬(すなわち、メマンチン)、モノアミン枯渇薬(すなわち、テトラベナジン);メシル酸エルゴロイド、抗コリン抗パーキンソン剤(すなわち、プロシクリジン、ジフェンヒドラミン、トリヘキシフェニジル、ベンズトロピン、ビペリデン及びトリヘキシフェニジル);ドーパミン作動性抗パーキンソン剤(すなわち、エンタカポン、セレギリン、プラミペキソール、ブロモクリプチン、ロチゴチン、セレギリン、ロピニロール、ラサギリン、アポモルフィン、カルビドパ、レボドパ、ペルゴリド、トルカポンとアマンタジン);テトラベナジン;抗炎症薬(限定されないが、非ステロイド性抗炎症薬(すなわち、インドメタシン及び上記の他の化合物)を含む;ホルモン(すなわち、エストロゲン、プロゲステロン及びロイプロリド);ビタミン(すなわち、葉酸、ニコチンアミド);ジメボリン;ホモタウリン(すなわち、3−アミノプロパンスルホン酸;3APS);セロトニン受容体活性のモジュレーター(すなわち、キサリプロデン);インターフェロン、及びグルココルチコイド、から選択される標的に特異的に結合する他の結合分子(限定されないが、小分子、ペプチド、アプタマー、または他の蛋白質結合を含む)を含む。
【0119】
ウイルス性疾患または微生物病については、神経薬が選択され、限定されないが、抗ウイルス化合物(限定されないが、アダマンタン抗ウイルス(すなわち、リマンタジン及びアマンタジン)、抗ウイルス薬インターフェロン(すなわち、ペグインターフェロンアルファ−2b);ケモカイン受容体拮抗薬(すなわち、マラビロク);インテグラーゼ鎖移転阻害剤(すなわち、ラルテグラビル);ノイラミニダーゼ阻害剤(すなわち、オセルタミビルとザナミビル);非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(すなわち、エファビレンツ、エトラビリン、デラビルジン及びネビラピン);ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(テノホビル、アバカビル、ラミブジン、ジドブジン、スタブジン、エンテカビル、エムトリシタビン、アデフォビル、ザルシタビン、テルビブジンとジダノシン);プロテアーゼ阻害剤(すなわち、ダルナビル、アタザナビル、ホスアンプレナビル、チプラナビル、リトナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、インジナビル及びサキナビル);プリンヌクレオシド(すなわち、バラシクロビル、ファムシクロビル、バルガンシクロビル、ガンシクロビル、リバビリン、アシクロビル及びシドフォビル);及びその他の抗ウイルス(すなわち、エンフビルチド、ホスカルネット、パリビズマブ及びホミビルセン)を含む);抗生物質(限定されないが、アミノペニシリン(すなわち、アモキシシリン、アンピシリン、オキサシリン、ナフシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、テモ、アズロシリン、カルベニシリン、チカルシリン、メズロシリン、ピペラシリンとバカンピシリン);セファロスポリン(すなわち、セファゾリン、セファレキシン、セファロチン、セファマンドール、セフトリアキソン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セファドロキシル、セフラジンロラカルベフ、セフォテタン、セフロキシム、セフプロジル、セファクロル、およびセフォキシチン)、カルバペネム/ペネム(すなわち、イミペネム、メロペネム、エルタペネム、ファロペネム及びドリペネム):モノバクタム(すなわち、アズトレオナム、チゲモナム、ノカルディシンA及びタブトキシニン−β−ラクタム:他のβ−ラクタム系抗生物質と併用したβ−ラクタマーゼ阻害剤(すなわち、クラブラン酸、スルバクタム及びタゾバクタム);アミノグリコシド(すなわち、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、及びパロモマイシン);アンサマイシン(すなわち、ゲルダナマイシンおよびハービマイシン):カルバセフェム(すなわち、ロラカルベフ);糖ペプチド(すなわち、テイコプラニンとバンコマイシン);マクロライド系(すなわち、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スペクチノマイシン):モノバクタム(すなわち、アズトレオナム);キノロン(例えば、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、グレパフロキサシン、スパルフロキサシンとテマフロキサシン);スルホンアミド(すなわち、マフェニド、スルホンアミドクリソイジン、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファメチゾール、スルファニルアミド、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム、トリメトプリムとスルファメトキサゾール);テトラサイクリン(すなわち、テトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン);抗腫瘍性抗生物質または細胞傷害性抗生物質(すなわち、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、プリカマイシン、マイトマイシン、ペントスタチン及びバルルビシン);およびその他の抗菌性化合物(すなわち、バシトラシン、コリスチンおよびポリミキシンB)を含む)、抗真菌剤(すなわち、メトロニダゾール、ニタゾキサニド、チニダゾール、クロロキン、ヨードキノールとパロモマイシン);及び駆虫薬(限定されないが、キニーネ、クロロキン、アモジアキン、ピリメタミン、スルファドキシン、プログアニル、メフロキン、アトバコン、プリマキン、アルテミシニン、ハロファントリン、ドキシサイクリン、クリンダマイシン、メベンダゾール、パモ酸ピランテル、チアベンダゾール、ジエチルカルバマジン、イベルメクチン、リファンピシン、アムホテリシンB、メラルソプロール、エフロルニチン及びアルベンダゾールを含む)を含む。
【0120】
虚血については、神経薬は、限定されないが、血栓溶解剤(すなわち、ウロキナーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼとテネクテプラーゼ)、血小板凝集阻害剤(例えば、アスピリン、シロスタゾール、クロピドグレル、プラスグレルとジピリダモール)、スタチン(すなわち、ロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、セリバスタチンおよびピタバスタチン)、血流や血管の柔軟性を向上させるための化合物、例えば血圧の薬を含むものから選択され得る。
【0121】
行動障害については、神経薬は、限定されないが、非定型抗精神薬(すなわち、リスペリドン、オランザピン、アリピプラゾール、クエチアピン、パリペリドン、アセナピン、クロザピン、イロペリドンおよびジプラシドン)、フェノチアジン系抗精神病薬(すなわち、プロクロルペラジン、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、トリフルオ、チオリダジン及びメソリダジン)、チオキサンテン(すなわち、チオチキセン)、その他の抗精神病薬(すなわち、ピモジド、リチウム、モリンドン、ハロペリドールとロキサピン)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(すなわち、シタロプラム、エスシタロプラム、パロキセチン、フルオキセチンやセルトラリン)、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害薬、抗うつ薬(すなわち、デュロキセチン、ベンラファキシン、デスベンラファキシン、三環系(すなわち、ドキセピン、クロミプラミン、アモキサピン、ノルトリプチリン、アミトリプチリン、トリミプラミン、イミプラミン、プロトリプチリンとデシプラミン)、四環系抗うつ薬(すなわち、ミルタザピン及びマプロチリン)、抗うつフェニルピペラジン(すなわち、トラゾドンとネファゾドン)、モノアミン酸化酵素阻害薬(すなわち、イソカルボキサジド、フェネルジン、セレギリンおよびトラニルシプロミン)、ベンゾジアゼピン(すなわち、フルラゼパム、クロナゼパム、ロラゼパム、ジアゼパム、エスタゾラム、アルプラゾラム)、ノルエピネフリンドーパミン再取り込み阻害剤(すなわち、ブプロピオン)、中枢神経系の興奮剤(すなわち、フェンテルミン、ジエチル、メタンフェタミン、デキストロアンフェタミン、アンフェタミン、メチルフェニデート、デクスメチルフェニデート、リスデキサンフェタミン、モダフィニル、ペモリン、フェンジメトラジン、ベンズフェタミン、フェンジメトラジン、アルモダフィニル、ジエチルプロピオン、カフェイン、アトモキセチン、ドキサプラム、及びマジンドール)、鎮静剤/抗不安薬/催眠薬(限定されないが、バルビツレート(すなわち、セコバルビタール、フェノバルビタールとメホバルビタール)、ベンゾジアゼピン(前述のとおり)、およびその他の鎮静剤/抗不安薬/催眠薬(つまりジフェンヒドラミン、ナトリウムオキシベート、ザレプロン、ヒドロキシジン、抱水クロラール、ゾルピデム、ブスピロン、ドキセピン、ゾピクロン、ラメルテオン、メプロバメートとエトクロルビノール)を含む)、セクレチン(例えば、Ratliff-Schaub et al. Autism 9: 256-265 (2005)を参照)、オピオイドペプチド(例えば、Cowen et al., J. Neurochem. 89:273-285 (2004)を参照)、及び神経ペプチド(例えば、Hethwa et al. Am. J. Physiol. 289: E301-305 (2005)を参照)を含む行動改質化合物から選択することができる。
【0122】
CNS炎症については、神経薬は、炎症そのものを解決すること(すなわち、イブプロフェンやナプロキセンなどの非ステロイド性抗炎症薬)、または炎症の根本的な原因を扱うもの(すなわち、抗ウイルスや抗がん剤)を選択することができる。
【0123】
本発明の一実施形態によれば、「結合(coupling)」は多重特異性抗体(二重特異性抗体など)を生成することによって達成される。多重特異性抗体は、少なくとも二つの異なる部位に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体である。一実施態様において、多重特異性抗体は、BBB−Rに結合する第一の抗原結合部位及び脳抗原、例えばβ−セクレターゼ1(BACE1)又はAbetaなど、及び本明細書に開示される他の脳抗原に結合する第二の抗原結合部位を含む。
【0124】
そのような二重特異性/多重特異性抗体によって結合される典型的な脳抗原はBACE1であり、それに結合する典型的な抗体は本明細書の
図5a−bのYW412.8.31抗体である。
【0125】
別の実施態様において、脳抗原はAbetaであり、典型的なそのような抗体は国際公開第2007068412号,国際公開第2008011348号,国際公開第20080156622号及び国際公開第2008156621号に記載されており、
図7aと7bのそれぞれの重鎖アミノ酸配列と軽鎖アミノ酸配列を含むIgG4 MABT5102A抗体を含む典型的なAbeta抗体とともに、参照により本明細書に明確に援用される。
【0126】
多重特異性抗体を作製するための技術は、限定されないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の組換え共発現(Milstein and Cuello, Nature 305: 537 (1983))、国際公開第93/08829号、及びTraunecker et al., EMBO J. 10: 3655 (1991)を参照)及び“knob−in−hole”エンジニアリング(例えば、米国特許第5,731,168号を参照)を含む。多重特異抗体はまた、抗体のFc−ヘテロ2量体分子を作製するための静電ステアリング効果を操作すること(国際公開第2009/089004A1号)、2つ以上の抗体又は断片を架橋すること(例えば米国特許第4,676,980号、及びBrennan et al., Science, 229: 81 (1985)を参照)、2重特異性抗体を生成するためにロイシンジッパーを使用すること(例えば、Kostelny et al., J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)を参照)、二重特異性抗体フラグメントを作製するため、”ダイアボディ”技術を使用すること(例えば、Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)を参照)、単鎖Fv(sFv)ダイマーを使用すること(例えば、Gruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994)を参照)、及び、例えばTutt et al. J. Immunol. 147: 60 (1991)に記載されているように、三重特異性抗体を調製することによって作成することができる。
【0127】
「オクトパス抗体」又は「二重可変ドメイン免疫グロブリン」(DVD)を含む、3つ以上の機能性抗原結合部位を持つ改変抗体もまた本明細書に含まれる(例えば、米国特許出願公開第2006/0025576A1号及びWu et al. Nature Biotechnology (2007)を参照)。
【0128】
本明細書中の抗体又は断片はまた、BBB−R(例えばTfR)並びに脳抗原(例えばBACE1)(例えば米国特許出願公開第2008/0069820号参照)に結合する抗原結合部位を含む、「2重作用(Dual Acting)FAb」又は「DAF」を含む。
【0129】
一実施態様において、抗体は、抗体断片、上記に開示される様々なそうした断片である。
【0130】
その他の実施態様において、抗体はインタクトな完全長抗体である。それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、インタクトな抗体は、種々のクラスに割り当てることができる。インタクトな抗体の5つの主要なクラスがあり:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、そしてこれらのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IGA、及びIgA2に分けることができる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元構成はよく知られている。一実施態様において、インタクトな抗体はエフェクター機能を欠失している。
【0131】
抗体を作製するための技術は知られており、その例は、この文書の上記定義の節に与えられている。一実施態様において、抗体はキメラ、ヒト化、又はヒト抗体又はその抗原結合断片である。
【0132】
様々な技術が、BBB−Rへの抗体の結合を決定するために利用可能である。一つのそうしたアッセイは、ヒトのBBB−R(と脳抗原)に結合する能力を確認するための酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)である。このアッセイによれば、抗原(例えば組換えsBBB−R)でコーティングされたプレートが抗BBB−R抗体を含むサンプルと共にインキュベートされ、目的の抗原への抗体の結合が決定される。
【0133】
一態様において、本発明の抗体は、例えばELISA、ウエスタンブロット法など公知の方法により、その抗原結合活性について試験される。
【0134】
全身投与された抗体の取り込み及び抗体の他の生物学的活性を評価するためのアッセイを、本実施例に開示されるように又は目的の抗脳抗原抗体について知られているように行うことができる。
【0135】
多重特異抗体がBACE1に結合する代表的アッセイを説明しなければならない。
【0136】
BACE1への結合について、本明細書に記載の抗体またはFabのいずれか、例えば、YW412.8,YW412.8.31,YW412.8.30,YW412.8.2,YW412.8.29,YW412.8.51,Fab12,LC6,LC9,LC10と競合する抗体を同定するために、競合アッセイを用いることができる。
【0137】
ある実施態様において、その競合する抗体は、本明細書に記載の抗体又はFab、例えば、YW412.8,YW412.8.31,YW412.8.30,YW412.8.2,YW412.8.29,YW412.8.51,Fab12,LC6,LC9,LC10の何れかに結合される同一のエピトープ(例えば、直線状又は立体構造エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な典型的な方法が、Morris (1996) “Epitope Mapping Protocols," in Methods in Molecular Biology vol. 66 (Humana Press, Totowa, NJ)に提供されている。
【0138】
典型的な競合アッセイにおいて、固定化BACE1は、BACE1に結合する第一の標識された抗体(例えば、YW412.8,YW412.8.31,YW412.8.30,YW412.8.2,YW412.8.29,YW412.8.51,Fab12,LC6,LC9,LC10)、及びBACE1へ結合について第一の抗体と競合する能力について試験された第二の未標識抗体を含む溶液中でインキュベートされる。第二抗体はハイブリドーマ上清中に存在してもよい。コントロールとして、固定化BACE1が、第二の未標識の抗体でなく、第一の標識された抗体を含む溶液中でインキュベートされる。第一の抗体のBACE1への結合を許容する条件下でインキュベートした後、過剰の未結合の抗体が除去され、固定されたBACE1に結合した標識の量が測定される。もし、固定化BACE1に結合した標識の量が、コントロールサンプルと比較して試験サンプル中で実質的に減少している場合、それは、第二抗体が、BACE1への結合に対して、第一の抗体と競合していることを示している。Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual ch.14 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)を参照。
【0139】
一態様において、アッセイは、生物学的活性を有するそれらの抗BACE抗体を同定するために与えられる。生物活性は、例えば、BACE1のアスパルチルプロテアーゼ活性の阻害を含むことができる。例えば、均一時間分解蛍光HTRFアッセイ又は合成基質ペプチドを用いるマイクロ流体キャピラリー電気泳動(MCE)アッセイによって、あるいはAPPなどのBACE1基質を発現する細胞株においてインビボで評価される場合に、インビボ及び/又はインビトロでそうした生物活性を持つ抗体も与えられる。
【0140】
本明細書の抗体(多重抗体を含む)は任意で組換えにより、その重鎖および軽鎖をコードする核酸配列で形質転換された宿主細胞内で産生される(例えば、その宿主細胞が一以上ベクターによりその中の核酸と形質転換される)。宿主細胞は、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞である。
【0141】
III.薬学的製剤
本明細書に従って使用される抗体の治療製剤は、所望の程度の純度を有する抗体と任意の薬学的に許容される担体、賦形剤又は安定剤(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed.: Williams and Wilkins PA, USA (1980))とを、凍結乾燥製剤または水性溶液の形態で混合することによって調製される。許容される担体、賦形剤又は安定剤は、使用される投薬量および濃度でレシピエントに毒性でなく、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチオルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリジン;マンノサッカライド、ジサッカライド、およびグルコース、マンノースまたはデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム、金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);及び/又はTWEEN、PLURONICS又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0142】
また、本明細書における製剤は、必要な一以上の活性な化合物、任意でお互い悪影響を及ぼさない相補的活性を有する化合物を含んでよい。そうした医薬のタイプ及び有効量は、例えば、製剤に存在する抗体の量、及び被験体の臨床パラメーターに依存する。典型的なそうした医薬が以下に議論される。
【0143】
また、活性成分は、例としてコアセルベーション技術または界面重合法により調製したマイクロカプセル、例として、それぞれ、コロイド薬物送達系(例えばリポソーム、アルブミン微小球体、ミクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)における又はマクロエマルジョンにおける、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセル及びポリ−(メチルメタクリラート)マイクロカプセルに包含してよい。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に開示される。
【0144】
徐放性製剤が調製されてもよい。徐放性製剤の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリックスが成形品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形をしている。除放性マトリクスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸及びγ−エチル−L−グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOT
TM(乳酸−グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドの注射可能な小球)などの分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、ポリ−(D)−3−ヒドロキシブチル酸を含む。
【0145】
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通して濾過することにより容易に達成することができる。
【0146】
一実施態様において、製剤は、等張性である。
【0147】
IV.抗BBB−R抗体の治療用途
抗BBB−R抗体(それらを構成する多重特異性抗体を含む)は、様々なインビトロの方法で利用することができる。例えば、本発明は、抗体がBBBを通過してそれに結合した治療化合物を輸送するように、治療化合物に結合した抗BBB−R抗体(BBB−Rと脳抗原の両方を結合する多重特異性抗体など)をBBBへ曝露することを含む、血液脳関門を通過する治療用化合物を輸送する方法を提供する。別の実施例において、本発明は、抗体がBBBを通過してそれに結合した神経障害薬を輸送するように、神経障害薬に結合した抗BBB−R抗体(BBB−Rと脳抗原の両方を結合する多重特異性抗体など)をBBBへ曝露することを含む、血液脳関門を通過する神経障害薬を輸送する方法を提供する。一実施態様において、本明細書においてBBBは、哺乳動物(例えばヒト)、例えば神経障害を有するものであり、限定されないが、アルツハイマー病(AD)、脳卒中、認知症、筋ジストロフィー(MD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、嚢胞性線維症、アンジェルマン症候群、リドル症候群、パーキンソン病、ピック病、パジェット病、癌、外傷性脳損傷などを含む。
【0148】
一実施態様において、神経障害は、神経障害、アミロイドーシス、癌(例えばCNS又脳を含む)、眼疾患又は障害、ウイルス又は細菌感染、炎症(例えばCNS又は脳の)、虚血、神経変性疾患、発作、行動障害、リソソーム蓄積症などから選択される。
【0149】
神経障害性疾患は、不適切または制御されていない神経シグナル伝達またはそれらの欠如を特徴とする神経系の疾患や異常であり、限定されないが、慢性疼痛(侵害受容性疼痛)、がん性疼痛を含む体組織への損傷によって引き起こされる痛み、神経因性疼痛(神経、脊髄や脳の異常によって引き起こされる痛み)、及び心因性の痛み(完全に、または大部分が心理的障害に関連する)、頭痛、片頭痛、神経障害、及びしばしばめまいや吐き気などの神経障害障害を伴う症状や症候群を含む。
【0150】
アミロイドーシスは、CNSにおける細胞外タンパク性沈着に関連する疾患および障害のグループであり、限定されないが、続発性アミロイドーシス、加齢に伴うアミロイドーシス、アルツハイマー病(AD)、軽度認知障害(MCI)、レビー小体型認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);パーキンソン認知症症候群、脳アミロイド血管症、ハンチントン病、進行性核上性麻痺、多発性硬化症、クロイツフェルトヤコブ病、パーキンソン病、伝達性海綿状脳症、HIV関連認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、封入体筋炎(IBM)、およびβ−アミロイド沈着(に関連する眼疾患(すなわち、黄斑変性症、ドルーゼ関連視神経症、白内障)を含む。
【0151】
CNSの癌は、一つ以上のCNSの細胞(すなわち、神経細胞)の異常増殖によって特徴づけられ、限定されないが、神経膠腫、多形性膠芽腫、髄膜腫、星状細胞腫、聴神経腫、軟骨腫、乏突起膠腫、髄芽腫、神経節膠腫、神経鞘腫、神経線維腫、神経芽細胞腫、および硬膜外、硬膜内髄内または腫瘍を含む。
【0152】
眼疾患又は障害は、眼の疾患または障害であり、本明細書における目的においてBBBの影響を受けるCNSの器官と見なされる。眼疾患又は障害は、限定されないが、強膜、角膜、虹彩、毛様体(すなわち、強膜炎、角膜炎、角膜潰瘍、角膜上皮剥離、雪眼炎、アーク目、タイゲソン点状表層角膜炎、角膜血管新生、フックス角膜内皮変性症、円錐角膜、乾性角結膜炎、虹彩炎やブドウ膜炎)の障害、レンズの障害(すなわち、白内障)、脈絡膜と網膜の障害(すなわち、網膜剥離、網膜分離症、高血圧性網膜症、糖尿病性網膜症、網膜症、未熟児網膜症、加齢黄斑変性症、黄斑変性症(湿式または乾式)、網膜上の障害膜、網膜色素変性症や黄斑浮腫)、緑内障、飛蚊症、視神経や視覚経路の障害(すなわち、レーバー遺伝性視神経症と視神経乳頭ドルーゼン)、眼筋/両眼運動調節/屈折(すなわち、斜視、眼麻痺、進行性外眼筋麻痺、内斜視、外斜視、遠視、近視、乱視、不同視、老眼や眼筋麻痺)の障害、視覚障害及び失明(すなわち、弱視、レーバー先天性黒内障、暗点、色覚異常、色覚異常、夜盲、失明、河川盲目症と小眼球症/コロボーマ)、赤目、アーガイル・ロバートソン瞳孔、角膜真菌症、眼球乾燥症及び無こう彩を含む。
【0153】
CNSのウイルスまたは微生物感染は、限定されないが、ウイルス(即ち、インフルエンザ、HIV、ポリオ、風疹、)、細菌(例えば、ナイセリア属、レンサ球菌属、シュードモナス属、プロテウス属、大腸菌、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌属、髄膜炎菌属、ヘモフィルス属、および結核菌)、真菌(すなわち、酵母、クリプトコックス・ネオフォルマンス)、寄生虫(すなわち、トキソプラズマ原虫)などの他の微生物、又は、限定されないが、急性または慢性であり得る髄膜炎、脳炎、脊髄炎、血管炎、膿瘍を含むCNSの病態生理を生じるアメーバによる感染症を含む。
【0154】
CNSの炎症はCNSへの損傷によって引き起こされる炎症であり、物理的な損傷(すなわち、事故、手術、脳外傷、脊髄損傷、脳震盪により)、又は、CNSの一つ以上の他の疾患または障害(すなわち、膿瘍、癌、ウイルスや細菌感染)に起因するか又は関連する傷害であり得る。
【0155】
CNSの虚血は、本明細書で使用される場合、異常な血流や脳内の血管の挙動又はその原因に関連する疾患群を指し、従って、局所脳虚血、全脳虚血、脳卒中(すなわち、くも膜下出血や脳内出血)及び動脈瘤を含むが、これらに限定されない。
【0156】
神経変性疾患はCNS内の神経細胞の機能の喪失及び死に関連する疾患および障害のグループであり、限定されないが、副腎白質ジストロフィー、アレキサンダー病、アルパーズ症候群、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、バッテン病、コケーン症候群、大脳皮質基底核変性症、アミロイドーシスに起因するか又は関連付けられている変性、フリードライヒ失調症、前頭側頭葉変性症、ケネディ病、多系統萎縮症、多発性硬化症、原発性側索硬化症、進行性核上性麻痺、脊髄性筋萎縮症、横断性脊髄炎、レフサム病、脊髄小脳失調を含む。
【0157】
CNSの発作性疾患および障害は、CNSにおいて不適切及び/又は異常な電気伝導を伴い、限定されないが、てんかん(すなわち、欠神発作、脱力発作、良性ローランドてんかん、小児欠、間代発作、複雑部分発作、前頭葉てんかん、熱性けいれん、乳児痙攣、若年性ミオクロニーてんかん、若年欠神てんかん、レノックス・ガストー症候群、ランダウKleffner症候群、Dravet(ドラベ)症候群、大田原症候、ウエスト症候群、ミオクロニー発作、ミトコンドリア病、進行性ミオクローヌスてんかん、心因性発作、反射てんかん、ラスムッセン症候群、単純部分発作、二次性全般化発作、側頭葉てんかん、強直間代発作、強直発作、精神運動発作、辺縁系てんかん、部分てんかん発作、全身てんかん発作、てんかん重積状態、腹部てんかん、無動発作、自律神経発作、重度の両側性ミオクローヌス、月経随伴性てんかん、くず折れ発作、感情的な発作、焦点発作、笑い発作、ジャクソンマーチ、ラフォラ病、運動発作、多発性発作、夜間発作、感光性発作、擬似発作、感覚発作、微妙な発作、シルヴァン発作、離脱性痙攣、および視覚反射発作)を含む。
【0158】
行動障害とは、罹患している被験者の一部の異常な行動によって特徴づけられるCNSの障害であり、限定されないが、睡眠障害(すなわち、不眠、睡眠時随伴症、夜驚症、概日リズム睡眠障害、ナルコレプシー)、気分障害(すなわち、うつ病、自殺、うつ病、不安、慢性的な情動障害、恐怖症、パニック発作、強迫性障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、慢性疲労症候群、広場恐怖症、心的外傷後ストレス障害、双極性障害)、摂食障害(すなわち、食欲不振や過食症)、精神病、発達行動障害(すなわち、自閉症、レット症候群、アスペルガー症候群)、人格障害及び精神病性障害(すなわち、統合失調症、妄想性障害など)を含む。
【0159】
リソソーム蓄積症は、幾つかの場合ではCNSに関連し、又はCNS特有の症状を有する代謝性疾患であり、そのような障害は、限定されないが、テイサックス病、ゴーシェ病、ファブリー病、ムコ多糖症(タイプI、II、III、IV、V、VI及びVII)、糖原病、GM1−ガングリオシドーシス、異染性白質ジストロフィー、ファーバー病、カナバンの白質ジストロフィー、およびニューロンセロイド脂褐素症1型および2型、ニーマンピック病、ポンペ病、クラッベ病を含む。
【0160】
一態様において、抗体は、症状の発症前に神経障害を検出するために、及び/又は疾患または障害の重症度または期間を評価するために使用される。一態様において、抗体は、X線撮影、断層撮影、磁気共鳴イメージング(MRI)による撮像を含む、神経障害の検出及び/又は画像化を可能にする。
【0161】
一態様では、医薬として使用するための低親和性抗BBB−R抗体が提供される。更なる態様において、神経疾患又は障害(例えば、アルツハイマー病)の治療に使用のための低親和性抗BBB−R抗体が提供される。ある実施態様において、治療の方法に使用される低親和性抗BBB−R抗体が提供される。ある実施態様において、本発明は、個体に(任意で神経障害薬に結合した)抗BBB−R抗体の有効量を投与することを含む、神経疾患又は障害を有する個体を治療する方法における使用のための低親和性抗BBB−R抗体を提供する。一つのそのような実施態様において、本方法は、少なくとも1つのさらなる治療剤の有効量を個体に投与することを更に含む。更なる実施態様において、本発明は、神経疾患又は障害(例えばアルツハイマー病)のリスクにあるか又は罹患した患者におけるアミロイドプラーク形成を減少させるか又は阻害することに使用するための抗BBB−R抗体を提供する。上記実施態様のいずれかに記載の「個体」は、任意でヒトである。ある実施態様において、本発明の方法で使用のための抗BBB−R抗体は、それが結合した神経障害薬の取り込みを改善する。
【0162】
更なる態様にて、本発明は、医薬の製造又は調製における低親和性抗BBB−R抗体の使用を提供する。一実施態様において、本医薬は神経疾患または障害の治療のためのものである。更なる実施態様において、本医薬は、神経疾患または障害を有する個体に、医薬の有効量を投与することを含む、神経疾患または障害を治療する方法で使用するためのものである。一つのそのような実施態様において、本方法は、少なくとも1つのさらなる治療剤の有効量を個体に投与することを更に含む。
【0163】
更なる態様にて、本発明は、アルツハイマー病を治療する方法を提供する。一実施態様において、本発明はBACE1とTfRの両方に結合する多重特異性抗体の有効量をアルツハイマー病に罹患した個体に投与することを含む。一つのそのような実施態様において、本方法は、少なくとも1つのさらなる治療剤の有効量を個体に投与することを更に含む。上記実施態様の何れかに記載の「個体」は、ヒトであり得る。
【0164】
本発明の抗BBB−R抗体は、治療において、単独で、または他の薬剤と組み合わせて使用することができる。例えば、本発明の抗BBB−R抗体は少なくとも1つの更なる治療剤と同時投与され得る。ある実施態様において、抗BBB−R抗体が治療に使用される場合、追加の治療剤は、同一又は異なる神経障害の治療に有効な治療剤である。例示的な追加の治療剤としては、限定されないが、上述した種々の神経薬、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、およびタクリンなど)、NMDA受容体アンタゴニスト(例えばメマンチン)、アミロイドβペプチドの凝集阻害剤、酸化防止剤、γ−セクレターゼモジュレーター、神経成長因子(NGF)模倣物またはNGF遺伝子治療、PPARγアゴニスト、HMS−CoA還元酵素阻害剤(スタチン)、アンパカイン、カルシウムチャネル遮断薬、GABA受容体拮抗薬、グリコーゲン合成酵素キナーゼ阻害剤、静脈注射用免疫グロブリン、ムスカリン受容体アゴニスト、ニコチン受容体モジュレーター、能動的または受動的アミロイドβペプチド免疫化、ホスホジエステラーゼ阻害剤、セロトニン受容体拮抗薬及び抗アミロイドβペプチド抗体を含む。ある実施態様において、神経薬の一つまたはそれ以上の副作用を軽減する能力に関して、少なくとも1つのさらなる治療剤が選択される。
【0165】
上記のこうした併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が、同一または別々の製剤に含まれている)、及び、本発明の抗体の投与が、追加の治療剤及び/又はアジュバントの投与の前、同時、及び/又はその後に起きうる分離投与を包含する。本発明の抗体はまた、他の介入的治療法、限定されないが、例えば、放射線療法、行動療法、又は当技術分野で公知の他の治療法と組み合わせて使用することができ、治療される又は予防されるべき神経疾患又は障害に対して適切である。
【0166】
本発明の抗BBB−R抗体(および任意の追加の治療剤)は、任意の適切な手段によって投与することができ、経口、肺内、および鼻腔内、及び局所治療が所望される場合、病巣内投与が含まれる。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与が含まれる。投薬は、その投与が短期間か又は長期であるかどうかに部分的に依存し、任意の適切な経路、例えば、静脈内または皮下注射などの注射により行うことができる。限定されないが、様々な時間点にわたる、単一または複数回投与、ボーラス投与、パルス注入を含む様々な投与スケジュールが本明細書で考えられている。
【0167】
血液脳関門を横切って抗体又はその断片を輸送する、脂質に基づいた方法は、限定されないが、血液脳関門の血管内皮細胞上の受容体に結合する抗体結合断片に結合されているリポソーム中に抗体又はその断片を封入すること(例えば、米国特許出願公開第20020025313号を参照)、及び低密度リポソーム粒子(例えば、米国特許出願公開第20040204354号を参照)で、又はアポリポタンパク質E(例えば、米国特許出願公開第 20040131692号を参照)で抗体又はその断片をコーティングすることを含む。
【0168】
本発明の抗体は良好な医療行為に合致した方法で処方され、投与され、投薬される。この観点において考慮すべき要因は、治療すべき特定の障害、治療すべき特定の哺乳類、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤送達部位、投与方法、投与日程及び医療従事者が知る他の要因を包含する。抗体は、必要ではないが任意で、問題となる障害の予防又は治療のために、現在使用中の一又は複数の薬剤ともに処方される。そのような他の薬剤の有効量は製剤中に存在する抗体の量、障害又は治療の種類及び上記した他の要因に依存する。これらは一般的には本明細書に記載されるのと同じ用量及び投与経路において、又は、本明細書に記載された用量の1%から99%で、又は経験的に/臨床的に妥当であると決定された任意の用量及び任意の経路により使用される。
【0169】
疾患の予防又は治療のためには、本発明の抗体の適切な用量(単独で使用されるか、又は、一以上の更なる治療的薬剤との組み合わされる場合)は治療すべき疾患の種類、抗体の種類、疾患の重症度及び経過、抗体を予防又は治療目的のいずれにおいて投与するか、以前の治療、患者の臨床的履歴及び抗体に対する応答性、及び担当医の判断に依存する。抗体は、患者に対して、単回、又は一連の治療にわたって適切に投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、例えば一回以上の別個の投与によるか、連続注入によるかに関わらず、抗体約1μg/kgから15mg/kg(例えば0.1mg/kgから10mg/kg)が患者への投与のための初期候補用量となり得る。1つの典型的な一日当たり用量は上記した要因に応じて約1μg/kgから100mg/kg又はそれ以上の範囲である。数日間以上に渡る反復投与の場合には、状態に応じて、治療は疾患症状の望まれる抑制が起こるまで持続するであろう。1つの例示される抗体用量は約0.05mg/kgから約10mg/kgの範囲である。従って、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kgの1つ以上の用量(又はこれらの何れかの組み合わせ)を患者に投与してよい。このような用量は断続的に、例えば毎週又は3週毎(例えば患者が約2から約20、例えば抗体の約6投与量を受けるように)投与してよい。初期の高負荷用量の後、1つ以上の低用量を投与してよい。しかしながら、他の用量用法も使用してよい。この治療法の進行は従来の手法及び試験により容易にモニタリングされる。
【0170】
上記の製剤または治療方法のいずれかが、抗BBB−R抗体の代わりか又は抗Axl抗体に加えて、本発明のイムノコンジュゲートを用いて行うことができることが理解される。
【0171】
製造品
本発明の他の実施態様において、上述した障害の治療、予防、及び/又は診断に有用な物質を含む製造品が提供される。製造品は、容器とラベルまたは容器上にあるまたは容器に付属するパッケージ挿入物を含む。好適な容器は、例としてボトル、バイアル、シリンジ、IV輸液バッグ等を含む。容器はガラス又はプラスチックなどの様々な物質から形成されうる。容器は、疾患の治療、予防、及び/又は診断に有効である、それ自体か、又はその他の組成物と併用される化合物を収容し、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針による穴あきストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも一の活性剤は本発明の抗体である。ラベルまたはパッケージ挿入物は、組成物が特定の症状の治療のために使用されることを示している。更に、製造品は、(a)組成物が本発明の抗体を包含する組成物を含む第一の容器;および(b)組成物が更なる細胞障害性又はその他の治療的薬剤を包含する組成物を含む第2の容器を含み得る。本発明の本実施態様における製造品は、組成物が特定の疾患を治療することに用いることができることを示すパッケージ挿入物をさらに含んでいてもよい。別法として、または加えて、製造品は、薬学的に許容されるバッファー、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化塩水、リンガー溶液およびデキストロース溶液を含む第二(または第三)の容器をさらに含んでもよい。これは、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジを含む、商業的およびユーザーの立場から望まれる他の物質のさらに含んでもよい。
【0172】
上記の製造品のいずれかは、抗BBB−R抗体の代わりか又はそれに加えて、本発明のイムノコンジュゲートを含み得ることが理解される。
【0173】
製造品は任意で更に、被験体の神経障害を治療するための説明書を含むパッケージ挿入物を含有し、ここでその説明書は本明細書に開示された抗体による治療が神経障害を治療することを表示しており、かつ任意でその抗体が、BBB−Rに対するその低親和性に起因し、BBBを通過しての取り込みを改善していることを表示している。
【実施例】
【0174】
この実施例では、ホロトランスフェリン複合体を介する鉄の脳内輸送を媒介するトランスフェリン受容体(TfR)を評価した(Skarlatos et al. Brain Res 683: 164-171 (1995))。TfRに対する内因性トランスフェリンの結合と競合しないヒトキメラ抗マウストランスフェリン受容体(抗TfRA)抗体を、野生型マウスの脳における取り込みについての二重標識実験におけるヒトコントロールIgGと比較した。[
131I]抗TfR
A及び[
125I]コントロールのIgGの単回の微量用量(約50μg/kg)が野生型マウスに静脈内注射され、脳の取り込みが5分、0.5、1、4、24、48、及び72時間で測定された。脳のグラムあたりの注入された用量の割合として測定される、脳における[
131I]抗TfR
Aの取り込みの有意な減少が、全ての時点で測定された(
図1A)。そのピークにおいて、注射後1時間で、[
125I]コントロールのIgGに比べた場合[
131I]抗TfR
Aの脳への蓄積に11培以上の相違があった(n=6)。もし、非標識の抗TfR
A(4mg/kg体重)も共投与された場合、[
131I]抗TfR
Aの脳の蓄積はコントロールのIgGのレベルにまでほぼ減少し、特異的な標的駆動型の取り込みを示している。
【0175】
また脳における有意な抗体取り込みが治療的投与量レベルで生じるかを評価するために、野生型のマウスに抗TfR
A又はコントロールのIgGを20mg/kgで静脈内投与した。皮質および血清中のヒト抗体濃度を、ヒトFcサンドイッチELISAを用いて注射後1時間と24時間に測定した。簡潔には、投与の示された時間の後に、マウスを、2ml/分の速度で8分間、D−PBSで潅流した。脳を抽出し、皮質と海馬を分離し、完全ミニEDTAフリープロテアーゼインヒビターカクテル錠(Roche Diagnostics)を含有するPBS中で1%NP−40(Cal−Biochem)でホモジナイズした。ホモジナイズされた脳サンプルは4℃で1時間回転され、14000rpmで20分間遠心分離した。上清を脳抗体測定のために単離した。血清分離マイクロコンテナチューブ(BD Diagnostics)で灌流する前に全血を回収し、少なくとも30分間凝固させ、90秒間5,000xgで遠沈した。上清を血清抗体測定のために単離した。マウスの血清および脳サンプル中の抗体濃度をELISAにより測定した。NUNC384穴のマキシソープイムノプレート(Neptune,NJ)を、ロバ抗ヒトIgGのF(ab’)2断片、Fc断片特異的ポリクローナル抗体(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA)により一晩4℃で被覆した。プレートを0.5%のBSAを含有するPBSで1時間25℃でブロックした。各抗体は、それぞれの抗体濃度を定量化するための内部標準物質として使用した。プレートはマイクロプレートウォッシャーを用いて0.05%のTween−20を含有するPBSで洗浄した。標準物質とサンプルを0.5%BSA、0.35MのNaCl、0.25%CHAPS、5mMのEDTA、0.05%のTween−20および15のppmプロクリンを含有するPBSで希釈し、25℃で2時間マイクロプレートに添加した。結合した抗体を、3,3’、5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)(KPL,Inc.,Gaithersburg,MD)を用いて開発された、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合F(ab’)2ヤギ抗ヒトIgG、Fc−特異的ポリクローナル抗体(Jackson ImmunoResearch)で検出し、吸光度をMultiskan Ascentリーダー(Thermo Scientific,Hudson,NH)で450nmで測定した。濃度は、4つのパラメーターの非線形回帰プログラムを使用して標準曲線から決定した。アッセイは血清中では3.12ng/ml及び脳では15.6pg/gという定量下限(LLOQ)値を持っていた。実験群間の差の統計的分析は、両側不対t検定を用いて行った。
【0176】
コントロールのIgGに比べると、抗TfR
Aの濃度は、抗体投与後24時間で脳において有意に高くなった(
図1B、p=0.0002、n=10)。更に、脳におけるヒトIgGの濃度は、24時間でのコントロールのIgGと比較した抗TfR
Aにおいて、血清と比較して2.5倍以上高かった(
図1C、p=0.003、n=10)。放射性標識追跡データと併せて、これらの結果は全身的に投与された抗TfR
Aは脳に蓄積することができるが、脳における抗体の組織分布はまだ理解されていない。
【0177】
脳における全身投与抗体の分布に取り組むため、野生型マウスに20mg/kgの抗TfR
A又はコントロールIgGの何れかを静脈注射し、残りの循環抗体を流し出すためにPBSで灌流し、脳切片を、抗体の局在を決定するために、蛍光抗ヒト二次IgGで染色した。1時間の循環後に、抗TfR
Aは、基底膜マーカーの抗コラーゲンIVとの共局在によって示されるように顕著に血管に分布していた(
図1D、左の列)。それほど顕著ではないが、コントロールIgGもまた血管系に局在しており、曝露の1時間後に、全身投与されたIgGの治療用量レベルは血管分布を維持することを示している(
図1E、左列)。しかし、注射後24時間で抗体の局在の著しい違いがあった。抗TfR
A分布はもはや血管に排他的ではなく、代わりに適度な実質の染色を示した(
図1D、右列)。これに対して、コントロールのIgG抗体は注射後24時間で脳においては大部分は消失していた(
図1E、右列)。これらの結果は、治療的に意義のあるレベルで投与したとき、抗TfR
Aは、適度な実質染色によって証明されるようにBBBを貫通し得ることを示すが、脳蓄積抗体の大部分はBBBの内皮細胞に大きく限定されていた。
【0178】
実質への蓄積は、脳内皮細胞上に発現した表面TfRへの結合、並びにRMTに続く受容体からの解離を必要とする。いかなる理論にも束縛されることなく、TfRに対する親和性の減少はRMT後に解離を促進し、実質での蓄積の強化を可能にすることができる。更に、減少した親和性を持つ抗TfRはあまり効率的には捕捉されず、抗TfR濃度が低い脳のように、濃度が制限された環境に輸送されると考えれた。臨床の場では、しかし、抗TfR治療薬の血清レベルは、血管腔における受容体の飽和を維持するために依然として十分に高いであろう。
【0179】
この予測を試験するために、TfRに対する結合親和性が異なる抗TfR
A変異体を生成した。これらの変異体は競合ELISAアッセイで試験した(
図2A);抗TfR
Aは、TfRに対して試験された抗体の何れかのうちで、最強の親和性と最低のIC50を持っており、そして抗TfR
B,C,Dの各々は連続的に低い親和性と高いIC50を持っていた。その後、変異体抗TfR
Eが生成され、抗TfR
A,B,C,D変異体とともに同じアッセイで試験され;
図2Aに示すように、それは他の試験された抗TfR抗体の何れよりもTfRへの結合ついて実質的にあまり競合することができず、かつ対応する高いIC50値を持っていた(表2)。
【0180】
【0181】
これらの変異体は非TfR飽和(微量投与)とTfR飽和(治療的投与)の両方の環境で試験された。[
125I]抗TfR
A,[
125I]抗TfR
B,[
125I]抗TfR
C,[
125I]抗TfR
D及び[
125I]抗TfR
Eの微量レベル(TfRについての親和性の点で異なり、抗TfR
Aの親和性>抗TfR
Bの親和性>抗TfR
Cの親和性>抗TfR
Dの親和性>抗TfR
Eの親和性)がマウスに静脈内注射され、脳の取り込みが注射後1時間、4時間、又は24時間で測定された。このアッセイは元々は
125I]抗TfR
A,[
125I]抗TfR
B,[
125I]抗TfR
C,及び[
125I]抗TfR
Dで実施され、その後[
125I]anti−TfR
Eの構築の際に繰り返され、その結果を
図2Bに示す。提唱モデルと一致して、低親和性抗TfR抗体の微量用量レベルは、より高い親和性の変異体に比較して、脳での取り込みは少なかった(
図2B)。微量投与とは顕著に対照的に、治療用投与(1時間と24時間で評価され20mg/kg)でのこれらの同じ低親和性の変異体の脳の取り込みは、親和性が下がる24時間で脳の取り込みの増加を示したが、一方1時間では取り込みの有意な違いは示さなかった(
図2C)。これらのデータは、低親和性RMT抗体は限界濃度下で輸送の減少を示し、一方飽和濃度下で輸送は影響を受けないであろうとする仮説を支持する。
【0182】
従って、次のモデルが提唱される:高親和性抗体と比較すると、非飽和濃度下で脈管構造の腔側で少数の低親和性抗体が受容体に結合し、低い内皮取り込みをもたらす(
図2D、右のパネル)。しかし、より高い治療的投与量では、腔の受容体は親和性に関係なく飽和され、その結果同様の内皮取り込みをもたらす(
図2D、右パネル)。これらの条件下で、低親和性RMT抗体は、1)RMT標的からの解離を最大化し脳内への放出を促進し、2)濃度がBBBの実質側に限られる場合脳からの流出の可能性を低減することで、より大きな脳での蓄積を達成することができる。従って治療用の設定では、RMT標的に対する低親和性抗体は、実質での蓄積において驚くほど有利である。
【0183】
脳の取り込みの増大を示すこれらの変異体の局在化を評価するために、マウスは高親和性抗TfR
A又は低親和性変異体抗TfR
B,C,Dの何れかの20mg/kgを静脈内投与した。24時間後、動物はPBS灌流され、脳切片がヒトIgG及びニューロンマーカーNeuNに対して共染色された(
図2E)。以前に観察されたように、高親和性抗TfRAで処置した動物は、低レベルの実質のシグナルによる血管の染色をほとんどが有していた。しかし、低親和性抗TfR
B,C,Dは、皮質の血管を示していない目に見えるより明白な細胞の染色を有していた(
図2E、抗TfR
B,C,Dについてのデータ)。更に、NeuNによる共局在化染色は、血管系からのニューロンへの抗体の再分布を示した。これは、抗TfR
D変異体の代表的な高倍率画像において特に顕著である。脳の取り込みのデータと共に、これらの結果は、抗体の有意に高い脳の取り込みを、TfRに対する抗TfRの親和性を低下させることにより達成することができ、かつ抗TfR
Dなどの低親和性抗体が神経に選択的に分布され得ることを示している。
【0184】
BBBを通過する抗TfR抗体の輸送は、TfRとアミロイド前駆体タンパク質(APP)開裂酵素、βセクレターゼ(BACE1)の両方に結合する二重特異性抗体(抗TfR
A/BACE1)を評価するときに更に確立することができる(
図3A)。高親和性抗TfR
Aが、標準的な「ノブインホール(knob in hole)」二重特異性抗体の構築技術を用いて二重特異性抗体のTfR結合アームを操作するために用いられた(例えばRidgway et al., Protein Eng. (1996) 9(7): 617-621を参照)。抗TfR(ホール)と抗BACE1(ノブ)に対するFcのノブ及びホール変異に加えて、抗体の抗TfRアームは、グリコシル化を抑制するFc領域の変異(N297G)を含んでいた。ノブとホールの半抗体は別々に精製され、非グリコシル化二重特異性IgGをインビトロで生成するためにアニールされた。TfRに対する抗TfRA/BACE1抗体の結合親和性は、二価結合の喪失に起因して、親の抗TfR
Aに比べてかなり減少した(
図3B)。BACE1は主に中枢神経系のニューロンに発現しており、APP切断を介したベータアミロイド形成の主要な寄与体(Aβ1−40)であると考えられている(Vassar et al., Science 286:735-741 (1999))。BACE1に対する抗体は、BACE1活性を阻害する効果的な手段として説明されており、インビボにおけるAβ
1−40の産生を減少させることができる。抗TfR/BACE1によるBACE1の阻害を、APPを安定に発現するHEK293細胞株において調査した。抗BACE1に比べて、二重特異性抗体は、Aβ
1−40の生産を阻害することにおいて類似した有効性と作用強度の両方を持っており、抗TfR/BACE1はBACE1活性の、完全に機能的な大分子阻害剤であることを示唆している。
【0185】
このモデルに基づいて、この低親和性の二重特異性は、抗TfR単独と比較して、取り込みを増加させるためのより好ましい候補であると期待される。二重特異性抗体の脳での蓄積を探査するために、[
125I]抗TfR
A/BACE1の微量用量を[
125I]抗TfR
A及び[
125I]抗BACE1に対して比較し、脳の取り込みを静脈内注射後30分、6時間、24時間、及び48時間で評価した。全ての時点において、著しく高い脳の取り込みが、[
125I]抗BACE1と比較して[
125I]抗TfR/BACE1で観察された。親和性仮説と一致して、[
125I]抗TfR
Aのこの非飽和微量用量の脳の取り込みは、低親和性[
125I]抗TfR
A/BACE1のそれよりもはるかに大きかった。治療用量レベルでの抗体蓄積を評価するために、マウスに抗TfR
A/BACE1又は抗BACE1を20mg/kgで静脈内注射し、抗体の脳の取り込みを1時間後、12時間後、24時間後及び48時間後に決定した。単一特異性抗BACE1に比較して、二重特異性抗TfR
A/BACE1の投与は全時点において有意に高い脳の取り込みをもたらした(
図3E)。親和性モデルにより予測されるように、取り込みの程度は、より高親和性の抗TfR
A単独よりも有意に大きかった(
図3Eを1Bと比較せよ)。蓄積のピークは注射後24時間で達成され、約20nMの濃度に到達し、抗体の末梢レベルが1時間にその濃度が約12%まで除かれたとしても、注射後48時間は上昇したままであった。二重特異性による増強した取り込みは、脳における抗体の平均割合を血清のそれと比較するときに、劇的に明らかである(
図3F)。
【0186】
全身投与後に抗TfR
A/BACE1の局在化を決定するために、マウスは注射後24時間PBSで灌流し、抗体の分布を抗ヒト蛍光二次抗体で視覚化した(
図3G)。低親和性抗TfR抗体の局在化に類似して、血管の染色に加えて実質のかなりの染色があった。NeuNによる実質の共局在は、これらの抗体はニューロンの集団に局在していたことを示した。対照的に、コントロールのIgGを注射された動物は、血管と実質の染色の両方の完全な欠損を示した。まとめると、これらのデータは、二重特異性抗TfR
A/BACE1がBBBを通過して横断し、脳の実質に著しく蓄積することができることを示している。
【0187】
インビボのAβ1−40の産生における抗TfR
A/BACE1抗体の有効性を評価するために、野生型マウスにコントロールのIgG、抗BACE1又は抗TfR/BACE1の25mg/kg又は50mg/kgの単一用量が投与された。脳の抗体取り込みが注射後24時間で最大に達するという観察に基づいて(
図3E)、脳と血清のAβ
1−
40のレベルが静脈内への抗体投与の24時間後と48時間後に決定された。25mg/kgにて、抗TfR
A/BACE1が、注射後24時間(p=0.001,n=10)及び48時間(p=0.0003,n=10)の両方で、コントロールのIgGと比較して、脳のAβ
1−
40のレベルを有意に減少させることができた一方、抗BACE1はAβ
1−
40の減少には影響を持たなかった(
図4A)。50mg/kgにて、抗TfR
A/BACE1は、コントロールのIgGと比較して、両方の時点でAβ
1−
40を減少させることにおいてさらに大きく劇的な影響を持っていた(
図3B、24時間と48時間の両方においてp<0.0001,n=10)。この用量での抗BACE1の投与はまた、コントロールに比較して、二重特異性抗TfR
A/BACE1よりも著しく少ない程度ではあるが(24時間及び48時間の両方に対してp<0.0001,n=10)、脳のAβ
1−
40のレベルを有意に減少させた(24時間に対してp<0.0001,n=10;48時間に対してp=0.006,n=10)。特に、Aβ
1−40を減少させる二重特異性の能力は、測定された全ての時点及び用量において、抗BACE1よりも2倍から3倍大きかった。抗TfR
A/BACE1の最大の効果は50mg/kgでの注射後48時間で、コントロールのIgGに比較して脳のAβ
1−40が50.0±1.9%減少し達成された。末梢のAβ
1−40の有意な減少もまた抗TfR
A/BACE1についての投与量及び時点の両方で観察された(
図4C−D)。抗BACE1による処置は24時間の時点においてのみ末梢のAβ
1−40の減少をもたらした(25mg/kgに対してp=0.01,50mg/kgに対してp=0.002;各々に対してn=10)。これらのデータは、BBBを通過するように設計された抗体は薬力学的に有効であることを確認する。更に、二重特異性抗体の脳の取り込みの増加は、脳のAβ
1−40のレベルを著しく減少させることにより、それをより強力なBACE1阻害薬とする。
【0188】
しかし、20mg/kgの治療的投与量で、BBB浸透度及びCNSの非血管部分への移行が、抗TfR
A処置動物又は抗TfR
D処置動物に比べてTfR
E処置動物で増強された(
図8B)。特記すべきは、抗TfR
Dは脳においてより高い初期濃度を達成し、第2日の後着実に減少し;他方では、抗TfR
Eは試験された8日間にわたり脳曝露の常に高いレベルを維持した。関連して、血清中の抗TfR
E濃度は評価期間、全ての抗TfR抗体のうちでほとんど減少しなかった(
図8A)。全てにおいて、このデータは、一般的にTfRに対する低親和性は驚くほど血清クリアランスを減少させ、脳曝露を増加させるが、幾つかの閾値では低い親和性は、その抗体で得られる最大の脳曝露を損ない始めることを示している。この例において、最適は、トランスフェリン受容体に対する抗体である抗TfR
D及び抗TfR
Eの親和性の間に見いだされるように見える。
【0189】
重要なことに、これらのデータは低親和性抗体アプローチを用いたCNSへの抗体の取り込みを増加させる背後にある、幾つかの原因となるメカニズムを強調している。第一に、高親和性抗TfR抗体(例えば、抗TfR
A,
図1D)が、脳血管系においてTfRを急速に飽和させることにより、脳の取り込みを制限し、従って、脳内に取り込まれた抗体の総量を減少させ、また血管系への分布を制限する。驚くべきことに、親和性を低下させると(例えば、抗TfR
B−E,及び抗TfR
A,D,E/BACE1,
図2C,2E,2F,3E−G及び9C)脳の取り込みと分布を改善し、ニューロンと関連する神経網への血管系からの局在化において強力な移行が観察される。第二に、TfRに対する抗体の低い親和性は、TfRに対する抗体の全体的な親和性が低く、BBBのCNS側の抗体の局所濃度が、CNS区画への抗体の急速な分散に起因して非飽和であるため、膜のCNS側からTfRを介してBBBの血管側に戻る抗体の能力を損なうと提唱されている(例えば
図1D、2E及び2Fを参照)。第三に、TfRに対して低親和性の抗体は、TfRに対して高親和性の抗体と同様には効率良く系から排除されず(
図8A及び9B)、従ってそれらのより高い親和性のカウンターパートよりも高い循環濃度で残っている。このことは、低親和性抗体の循環抗体レベルは、より高親和性抗体よりも長期間にわたって治療的レベルに維持され、これは続いて長期間にわたって脳内の抗体の取り込みを改善するので有利である(
図9Cにおいて抗TfR
A/BACE1を抗TfR
D/BACE1に対して比較)。更に、血漿及び脳の両方の曝露における改善は、クリニックにおける投与頻度を減少させ得、このことは患者のコンプライアンスと利便性のためだけでなく、抗体及び/又はそれに結合した治療化合物の任意の潜在的な副作用又は非特異的作用の軽減においても、潜在的な利益を有するあろう。
【0190】
更なる研究が、二重特異性抗TfR
A/BACE1抗体の親和性を更に小さくすると、そのBBBと実質の浸透度を更に向上させることができるかどうかを評価するために実施された。2つの更なる二重特異性抗体である抗TfR
D/BACE1及び抗TfR
E/BACE1が、抗TfR
A/BACE1抗体で採用されたのと同じ構築方法を用いて構築された。競合ELISAアッセイが実施され(
図9A)得らえたIC50は以下の通りである:
【0191】
【0192】
各二重特異性抗体とTfRの間の結合に関してKdの表面プラズモン共鳴測定も行われた。表3のBIACORE(登録商標)分析は以下のように実施された。Kdは、ペンタ−His Ab キャプチャ(Qiagen,Valencia,CA)を用いて25℃でBIACORE(登録商標)−T−100(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を用いた表面プラズモン共鳴アッセイを用いて測定した。簡単に言うと、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5,BIACORE Inc.)を、提供者の指示書に従ってN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシニミド(NHS)で活性化した。ペンタ−His抗体を100mM酢酸ナトリウム(pH4.8)で50μg/mlに希釈し、結合したタンパク質のおよそ10000反応単位(RU)を達成するために5μl/分の流速で注入された。抗体の注入後、反応しない群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入した。動力学測定では、MuTfR−Hisを、約50RUに達するようにHBS−Pに注入し、次いで抗TfR
A/BACE1(1.95nMから1000nM)又は抗TfR
D/BACE1(9.75nMから5000nM)の二倍段階希釈を約30μlの/分の流速で25℃でHBS−Pに注入した。会合センサーグラム及び解離センサーグラムを同時にフィットさせることによる単純一対一ラングミュア結合モデル(simple one−to−one Langmuir binding model)(BIACORE(登録商標)Evaluationソフトウェアバージョン3.2)を用いて、会合速度(kon)と解離速度(koff)を算出した。平衡解離定数(Kd)をkoff/konの比として計算した。例えば、 Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881 (1999)を参照。抗TfR
E/BACE1の親和性は、非常に弱く、表面プラズモン共鳴によって決定することはできなかった。
【0193】
図9Aと表2と3に示されるように、二重特異性抗TfR
A/BACE1及び抗TfR
D/BACE1は、対応する単一特異性抗TfR
A及び抗TfR
Dよりも際だってほとんどTfRに結合しなかった(
図9Aを2Aと比較)。抗TfR
E/BACE1において、二重特異性及び単一特異性に関する部分的結合曲線は、二重特異性抗TfR
E/BACE1が対応する単一特異性抗TfR
Eよりもはるかに高いIC50を有していることをも示唆している。
【0194】
これらの抗体は、上述した同一のインビボでのAβ
1−40産生アッセイで試験した。簡単にいうと、6〜8週齢の野生型C57Bl/6マウスに、コントロールのIgG、単一特異性抗BACE1又は抗TfR
A/BACE1、抗TfR
D/BACE1、又は抗TfR
E/BACE1を50mg/kgの単一用量を尾静脈注射により投与し、時点ごとの抗体処置につき6マウス、全180匹のマウスに対して処置された。脳と血清のAβ
1−
40のレベルは、静脈内の抗体投与後1日、2日、4日、6日、8日及び10日にて決定された(
図9B−9E)。早い時点で脳で見出された二重特異性抗体の濃度は、抗TfR
A/BACE1及び抗TfR
D/BACE1に関して最大であり、その各々は1日の時点で抗TfR
E/BACE1により達成された濃度の2倍以上の濃度を有していた。しかし、抗TfR
A/BACE1の脳の濃度のレベルは6日までにコントロールのレベルに戻り、かつ抗TfR
D/BACE1のレベルも10日までにそうなった。対照的に、最も低い親和性の二重特異性抗体である抗TfR
E/BACE1は、抗TfR
A/BACE1と抗TfR
D/BACE1に比べて、脳の抗体濃度においてはるかに低い相対的な減少を有しており、抗TfRに対する低親和性が、実質空間から排出されるべき抗体の能力の低下へと導くことを提案したモデルに調和している。脳のAbeta1−40のレベル(
図9E)は、脳において二重特異性抗体の観察される濃度により期待されるのと大まかに同じ割合で減少した:抗TfR
A/BACE1及び抗TfR
D/BACE1は早期の時点で(1〜2日)、観察された脳のAbeta1−40のレベルが同様に減少し、次の時点で急速に増加したか(抗TfR
A/BACE1)又は次の時点でより穏やかに増加し(抗TfR
D/BACE1)、これらの抗体の各々の脳の濃度で観察された減少と一致している(
図9C)。特記すべきは、抗TfR
E/BACE1抗体処置は脳のAbeta1−40のレベルにおいて、他の二重特異性抗体で観察されたものよりも比較的より控えめな減少をもたらし、この減少は全ての時点において一致していた(
図9E)。
【0195】
血漿測定では(
図9B)、抗TfR
A/BACE1は4日目まででクリアされたが、一方抗TfR
D/BACE1は全ての時点にわたって比較的低いレベルで持続され、抗TfR
E/BACE1のレベルは、全ての時点にわたってコントロールと同様に推移した。この知見に一致して、観測された血漿Abeta1−40のレベル(
図9D)は全ての時点で、抗TfR
D/BACE1、抗TfRE/BACE1及び抗BACE1の各々と同様に、コントロールの抗gDレベルから減少した。抗TfR
A/BACE1は、第1日、2日、及び4日の時点で類似の減少を示し、血漿からの抗体の観測された消失に合わせて後の時点で急速にコントロールのレベルに戻った。
【0196】
これらの結果は、二重特異性抗TfR/BACE1抗体は効果的にBBBを通過し、インビボ系で哺乳動物におけるBACE1活性を阻害することを再び実証している。それらはまた、抗TFR
D/BACE1及び抗TfR
E/BACE1の間のTfRに対する親和性は、実質/脳内における持続と活性の最適な組み合わせを与えうることを示唆している。しかしながら、各脳の標的において、その標的に対して特異的な二重特異性アームの効力は、どれくらいの抗TfR/標的二重特異性抗体が、所望の結果を達成するために、BBBのCNS側に存在しなければならないか、そしてそれ故に、TfRに対する抗TfRのどの程度の親和性が、その濃度を得るために、二重特異性抗体で用いられる必要があるかを決定するであろうことに留意されたい。本発明は、BBBの特権の無い側での投与後に、CNSにおけるそうした標的のレベルを達成するために、二重特異性抗体を決定し設計する方法を提供する。
【0197】
これらの結果は確認され、TfRとアミロイドβの両方に結合する別の抗TfR二重特異性抗体、抗TfR/Abetaを用いて確認され拡張された。3つの二重特異性変異体、抗TfR
A/Abeta、抗TfR
D/Abeta及び抗TfR
E/Abetaを上記抗TfR/BACE1二重特異性抗体の調製のために用いたのと同じ方法を用いて、調製した。Abetaは、ADの発症に関与すると考えられているアミロイドプラークの主要な置換成分である。Abetaの結合および除去によるプラーク形成の抑制は、遊離またはオリゴマー状態の何れかで、ADの発症または進行を阻害し得る。これらの二重特異性抗体の各々の薬物動態学的特性を評価した。
【0198】
コントロールのIgG、単一特異的抗Abeta抗体、又は各二重特異性抗体の単一50mg/kg用量が、8〜16週齢の野生型C57BL/6Jマウス又はヒトプレセニリン2およびヒトアミロイド前駆体タンパク質(PS2APP)の両方を発現するマウスに腹腔内注射された。トランスジェニック動物の数が限られているため、二重特異性変異体(抗TfR
D/Abeta及び抗TfRE/Abeta)の2つだけをPS2APPマウスでアッセイした。各治療群において4〜6匹の複製マウスが投与された。マウスを24時間後に屠殺し、薬物レベルは、抗TfR/BACE1二重特異性の研究と同様に、脳と血漿の両方で測定された。屠殺に先立ち、血漿抗体濃度の初期評価のために、血液が投与後6時間で採取された。抗体濃度の血漿測定(
図10Aおよび11A)は、全ての抗体は、投与後6時間後で同様のレベルで存在することを示した。しかしながら、コントロールの単一特異性抗Abetaのレベルは24時間までにコントロールのIgGと比較して減少した。これは、この抗Abeta分子に対する以前の観察と同様である。24時間で、抗TfR
A/Abetaは、末梢において抗Abetaに類似した抗体レベルを示したが、抗TfR
D/Abetaと抗TfR
E/Abetaは、抗AbetaとコントロールのIgGの中間でわずかに上昇したレベルを示した。
【0199】
脳で見出された二重特異性抗体の濃度は、コントロールのIgG及び抗Abetaの両方と比較して増加した(
図10Bおよび11B)。抗Abetaに比較すると、抗TfR
A/Abetaは、12倍高い濃度を有し、抗TfR
D/Abetaは、8〜15倍高い濃度を有し、抗TfR
E/Abetaは、4〜5倍高い濃度を有していた。抗Abetaと比較した抗TfR
A,D,E/Abeta抗体の脳の取り込みの増加は、抗BACE1と比較した抗TfR
A,D,E/BACE二重特異性抗体において見られた増加よりもいっそう大きかった。このことは、投与後24時間でコントロールのIgGと比較して抗Abetaの末梢での曝露の減少に起因する可能性があり、コントロールのIgGと比較した場合脳における抗Abetaのレベルを低下をもたらした。
【0200】
これらの知見は、これらの知見は、治療に意義ある用量で投与した大分子抗体がBBBを通過し、有意でかつ持続性の脳への取り込みを生み出すができることの初の実証である。更に、これらの結果は、抗体親和性と脳の取り込みの程度との間の反比例の関係が、RMTダイナミックスの理解を増進することを実証している。この新規な見識は、様々な他の潜在的なRMT標的の様々に適用することができ、CNSへの抗体薬物送達におけるより効果的な戦略を提供する。更に、インビボでのこれらの結果は、二重特異性抗体が、標的抗体薬物の脳の浸透率を著しく増加させることによって、有望な抗アミロイド形成性治療薬の効力を向上させることができることを実証している。増強された薬物送達が、必要な治療的投与の減少に起因するため、潜在的な副作用の減少へとつながるので、これは非常に有利である可能性がある。より一般的に、この技術は、CNS疾患の広い範囲の治療に適用される大きな可能性を有しており、より安全な抗体医薬を提供するための改善されたアプローチを表している。
【0201】
前述の発明は、理解を明確にする目的のために例示および実施例によってある程度詳細に説明してきたが、説明や例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。すべての特許および本明細書に引用される科学文献の開示は、参照によりその全体が援用される。