(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
貯水槽と水道本管との間に介設されて前記貯水槽への給水動作と止水動作を行なう作動弁と、前記水道本管の水圧に応じて前記作動弁に給水動作と止水動作を切り換えさせるパイロット弁と、前記作動弁の給水動作と止水動作とを行なうために前記作動弁と前記パイロット弁とを連結する連結水管群と、から構成され、
前記作動弁は、
前記水道本管の水道水が導入される一端とつながる水道側第1室、前記水道本管の別端とつながる水道側第2室、前記貯水槽の一端とつながる貯水側第1室、および前記貯水槽の別端とつながる貯水側第2室を有し、前記水道側第1室と前記貯水側第1室とが第1弁座を介して連通し、前記水道側第1室と前記水道側第2室とが第2弁座を介して連通し、前記水道側第2室と前記貯水側第2室とが第3弁座を介して連通して形成された弁箱と、
前記弁箱内に移動自在に配備された弁棒に固定されていて前記第1弁座または前記第2弁座を開閉する第1弁体と、
前記弁棒に固定されていて前記第3弁座を開閉する第2弁体と、
前記弁箱に付設された弁駆動用箱と、
前記弁駆動用箱内に突出した前記弁棒の一端側に固定されて前記弁駆動用箱内を摺動自在の駆動用弁体と、
前記弁駆動用箱内に配備されていて前記駆動用弁体を押して前記第1弁体および前記第2弁体を前記第1弁座および前記第3弁座に向けて付勢する弾性部材と、を備えて成り、
前記パイロット弁は、
前記水道本管の一端とつながるパイロット第1室、前記作動弁の弁駆動用箱内とつながるパイロット第2室、大気に開放されるパイロット第3室、および前記水道本管の一端とつながるパイロット第4室を有して成り、前記パイロット第1室と前記パイロット第2室とが第1パイロット弁座を介して連通し、前記パイロット第2室と前記パイロット第3室とが第2パイロット弁座を介して連通して形成されたパイロット箱と、
パイロット弁棒の一端側に固定されていて前記第1パイロット弁座または前記第2パイロット弁座の一方を開閉し他方を閉開するパイロット弁体と、
前記パイロット第4室の内周壁に固着されるとともにパイロット弁棒の他端側に取り付けられたダイヤフラムと、
前記パイロット第4室内に配備されていて前記ダイヤフラムを押して前記パイロット弁体を前記第1パイロット弁座に向けて付勢するパイロット弾性部材と、を備えて成り、
前記連結水管群は、
前記作動弁の水道側第1室と前記パイロット弁のパイロット第1室とを連結する主駆動用水管と、
前記パイロット弁のパイロット第1室と前記作動弁の弁駆動用箱内とを連結する副駆動用水管と、
前記主駆動用水管から分岐して前記パイロット弁のパイロット第4室とつながる切換用水管と、を備えて成り、
更に、前記主駆動用水管に介設された三方切換弁を備え、前記三方切換弁の第1口と第2口には、前記主駆動用水管が連結され、前記三方切換弁の第3口には、前記作動弁の貯水側第1室に一端をつながれた手動復帰用水管の他端が連結され、前記三方切換弁は、前記作動弁の水道側第1室から前記パイロット弁のパイロット第1室への流路を、前記手動復帰用水管から前記パイロット弁のパイロット第1室への流路に切り換える構成にされていることを特徴とする緊急作動弁装置。
前記弁箱の水道側第1室に、前記水道本管の一端の換わりに前記水道本管の別端がつなげられ、前記弁箱の水道側第2室に、前記水道本管の別端の換わりに前記水道本管の一端がつなげられている請求項1に記載の緊急作動弁装置。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の緊急作動弁装置としては、例えば下記の特許文献1に記載されているような装置が知られている。この緊急作動弁装置は、水道本管と貯水槽の間に配備されるものであって、作動弁と、作動弁を駆動させるパイロット弁と、作動弁とパイロット弁をつなぐいくつかの水管と、から構成されている。この緊急作動弁装置では、水道本管の水圧によりパイロット弁が作動する。すなわち、水道本管の定常時には作動弁の弁箱内の流路を水道本管の一端から貯水槽へ導通させる一方、非常時には貯水槽の水入出口を遮断して水道本管の一端からの水をそのまま水道本管の別端へ流出させるようになっている。作動弁内の流路変更は弁箱内の弁体の作動により行なわれるが、弁体が取り付けられている弁棒の一端部が延長棒として弁箱から外部に出没自在に露出している。そして、作動弁の水道側入口とパイロット弁のパイロット箱とは主駆動用水管で連結されている。
【0003】
そこで、
図5(a)に示した緊急作動弁装置の作動弁100では、主駆動用水管65にロッキング弁が配備され、ロッキング弁の弁軸104と一体のレバー103の先端には、リンク106が枢支軸105を介して揺動自在に支持されている。リンク106に形成された長孔109には、固定板108のピン107が孔内移動自在に装着されている。また、主駆動用水管65にはバイパス管(図外)が並列接続されていて、このバイパス管に復帰開閉弁(図外)が介設されている。
図5(a)の状態は、作動弁における弁駆動用箱8の上面8Aの軸受8Bから延長棒23が最も突出した状態を示しており、水道本管の水圧が定常状態のときである。
【0004】
そうして、水道本管が非常状態になると、作動弁100の弁棒とともに延長棒23が下降し(1点鎖線矢印G方向)、ピン107が長孔109内を移動したのち、
図5(b)のごとく最下位置に到達するとともに、リンク106などを介してロッキング弁の弁軸104が回されて閉弁する。この閉弁によって主駆動用水管65が閉止される。従って、水道本管27の水圧が上昇して設定水圧に戻ったとしても、並列の復帰開閉弁も閉じているので、その水圧は作動弁100の弁箱内空間に印加されない。このため、この緊急作動弁装置は貯水槽への止水状態を維持するという、自己保持モードが実行される。一方、復帰開閉弁を開放しておけば、ロッキング弁の開閉に関係なく水道本管の水圧がパイロット弁に印加されて、自動復帰モードが実行されるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記した従来の緊急作動弁装置では、枢支軸105を介するレバー103とリンク106や、リンク106の長孔109と固定板108のピン107といったような機械的可動部分が存在するので、部品点数が多くならざるを得ない。そのために、部品コストが嵩み、組立・分解作業に手間がかかり保守点検も容易でないという問題があった。一方、非常状態に陥るケースは稀なのであるが、この作動弁100は公園など屋外で塵埃の多い設置環境に配備されることが多い。すなわち、定常状態が続き長期間一定姿勢のままでいるから、前記の機械的可動部分に錆が発生したり塵埃などが堆積したりしやすくなる。そのようになると、いざというときに弁体の動作に支障を生じて貯水槽への流路の遮断ができなくなるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、簡素な構成により安価に実現でき、弁体動作不良も生じることのない緊急作動弁装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る緊急作動弁装置は、貯水槽と水道本管との間に介設されて前記貯水槽への給水動作と止水動作を行なう作動弁と、前記水道本管の水圧に応じて前記作動弁に給水動作と止水動作を切り換えさせるパイロット弁と、前記作動弁の給水動作と止水動作とを行なうために前記作動弁と前記パイロット弁とを連結する連結水管群と、から構成され、前記作動弁は、前記水道本管の
水道水が導入される一端とつながる水道側第1室、前記水道本管の別端とつながる水道側第2室、前記貯水槽の一端とつながる貯水側第1室、および前記貯水槽の別端とつながる貯水側第2室を有し、前記水道側第1室と前記貯水側第1室とが第1弁座を介して連通し、前記水道側第1室と前記水道側第2室とが第2弁座を介して連通し、前記水道側第2室と前記貯水側第2室とが第3弁座を介して連通して形成された弁箱と、前記弁箱内に移動自在に配備された弁棒に固定されていて前記第1弁座または前記第2弁座を開閉する第1弁体と、前記弁棒に固定されていて前記第3弁座を開閉する第2弁体と、前記弁箱に付設された弁駆動用箱と、前記弁駆動用箱内に突出した前記弁棒の一端側に固定されて前記弁駆動用箱内を摺動自在の駆動用弁体と、前記弁駆動用箱内に配備されていて前記駆動用弁体を押して前記第1弁体および前記第2弁体を前記第1弁座および前記第3弁座に向けて付勢する弾性部材と、を備えて成り、前記パイロット弁は、前記水道本管の一端とつながるパイロット第1室、前記作動弁の弁駆動用箱内とつながるパイロット第2室、大気に開放されるパイロット第3室、および前記水道本管の一端とつながるパイロット第4室を有して成り、前記パイロット第1室と前記パイロット第2室とが第1パイロット弁座を介して連通し、前記パイロット第2室と前記パイロット第3室とが第2パイロット弁座を介して連通して形成されたパイロット箱と、パイロット弁棒の一端側に固定されていて前記第1パイロット弁座または前記第2パイロット弁座の一方を開閉し他方を閉開するパイロット弁体と、前記パイロット第4室の内周壁に固着されるとともにパイロット弁棒の他端側に取り付けられたダイヤフラムと、前記パイロット第4室内に配備されていて前記ダイヤフラムを押して前記パイロット弁体を前記第1パイロット弁座に向けて付勢するパイロット弾性部材と、を備えて成り、前記連結水管群は、前記作動弁の水道側第1室と前記パイロット弁のパイロット第1室とを連結する主駆動用水管と、前記パイロット弁のパイロット第1室と前記作動弁の弁駆動用箱内とを連結する副駆動用水管と、前記主駆動用水管から分岐して前記パイロット弁のパイロット第4室とつながる切換用水管と、を備えて成り、更に、前記主駆動用水管に介設された三方切換弁
を備え、前記三方切換弁の第1口と第2口には、前記主駆動用水管が連結され、前記三方切換弁の第3口には、前記作動弁の貯水側第1室に一端をつながれた手動復帰用水管の他端が連結され
、前記三方切換弁は、前記作動弁の水道側第1室から前記パイロット弁のパイロット第1室への流路を、前記手動復帰用水管から前記パイロット弁のパイロット第1室への流路に切り換える構成にされていることを特徴とするものである。
【0009】
また、前記構成において、前記弁箱の水道側第1室に、前記水道本管の一端の換わりに前記水道本管の別端がつなげられ、前記弁箱の水道側第2室に、前記水道本管の別端の換わりに前記水道本管の一端がつなげられているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る緊急作動弁装置によれば、主駆動用水管に介設された三方切換弁の第1口と第2口に主駆動用水管を連結し、作動弁の貯水側第1室に一端をつながれた手動復帰用水管の他端を三方切換弁の第3口に連結した構造なので、作動弁およびパイロット弁により通水運転と止水運転を行なう際の自動復帰モードと自己保持モードに切り換える構成を、極めて簡素で安価に実現できたのである。加えて、自動復帰モードと自己保持モードの切換えは、三方切換弁の手動操作や電動操作による流路変更により簡単に行なうことができる。また、機械的可動部分が外部に露出していないので、機械的可動部分に対する錆発生や塵埃堆積の懸念がなく、これらによる弁体動作不良を生じるおそれもない。
【0011】
また、弁箱の水道側第1室に水道本管の別端がつなげられ、弁箱の水道側第2室に水道本管の一端がつなげられているものでは、請求項1に係る作動弁と比べて、作動弁および貯水槽における水路の水流方向を逆にできる。これにより、現地における設置環境に臨機応変に対応して、水道本管への取付け工事を容易に行なうことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。ここに、
図1は本発明の一実施形態に係る緊急作動弁装置の定常時の概略断面を含む構成図、
図2は前記緊急作動弁装置を示す正面図、
図3は前記緊急作動弁装置を示す図であって、(a)は側面図、(b)は平面図である。但し、
図5に示した従来の緊急作動弁装置と同一の構成要素には、同一の符号を付すとともにその詳細な説明を省略することがある。
図1〜
図3において、この実施形態に係る緊急作動弁装置1は、貯水槽9と水道本管27との間に介設されて貯水槽9への給水動作と止水動作を行なう作動弁2と、水道本管27内の水圧に応じて作動弁2に給水動作と止水動作を切り換えさせるパイロット弁3と、作動弁2の給水動作と止水動作とを行なうために作動弁2とパイロット弁3とを連結する複数の水管から成る連結水管群4と、から構成されている。
【0014】
上記の作動弁2は、弁箱5、弁箱5内に格納された第1弁体26と第2弁体25、弁箱5に付設された弁駆動用箱8、弁駆動用箱8内に格納された駆動用弁体32、および、弁駆動用箱8内で駆動用弁体32を弾性付勢する弾性部材33などで構成されている。前記の弁箱5は、水道本管27の一端29とつながる水道側第1室16、水道本管27の別端28とつながる水道側第2室15、貯水槽9の一端31とつながる
接続口13を備えた貯水側第1室17、および貯水槽9の別端30とつながる
接続口12を備えた貯水側第2室14を有し、水道側第1室16と貯水側第1室17とが第1弁座21の開口部20を介して連通し、水道側第1室16と水道側第2室15とが第2弁座95
の開口部96を介して連通し、水道側第2室15と貯水側第2室14とが第3弁座19の開口部18を介して連通して形成されている。そして、弁箱5と弁駆動用箱8の間は蓋板7で仕切られている。蓋板7は、弁棒22を摺動自在に支持するスラスト軸受35を有している。弁箱5の下面開口は底板6で封止されている。
【0015】
弁駆動用箱8の上面8Aには、弁棒22の先端に延設された延長棒23を摺動自在に支持する軸受8Bが設けられている。延長棒23には、弁体25,26の開閉状態を外部から視認するための開閉指標24が設けられている。弁
棒22の他端部は、第1弁座21の開口部20に架け渡されたスラスト軸受68に摺動自在に支持されている。そして、水道側第2室15に開口した接続口36には、開閉弁37を有する放出管38が連結されている。貯水側第1室17に開口した接続口39には、開閉弁40を有する放出管41が連結されている。弁駆動用箱8の箱内空間34に開口した接続口42には、開閉弁43を有する放出管44が連結されている。
【0016】
第1弁体26および第2弁体25は共通の弁棒22に固定されている。第1弁体26は第1弁座21を開閉するようになっており、これと同時に第2弁体25が第3弁座19を開閉するようになっている。駆動用弁体32は、弁駆動用箱8の箱内空間34内に突出した弁棒22の一端側に固定されていて箱内空間34内を摺動自在に移動できるようになっている。弾性部材33は、箱内空間34内に配備されていて駆動用弁体32を押して第1弁体26および第2弁体25を第1弁座21および第3弁座19に向けるように常に弾性付勢している。
【0017】
上記のパイロット弁3は、パイロット箱70、パイロット箱70内に格納されたパイロット弁体80とダイヤフラム72および、パイロット箱70内でダイヤフラム72を弾性付勢するパイロット弾性部材73などで構成されている。前記のパイロット箱70は、水道本管27の一端29とつながるパイロット第1室85、作動弁
2の弁駆動用箱8内とつながるパイロット第2室83、大気に開放されるパイロット第3室75、および、水道本管27の一端29とつながるパイロット第4室71を有して成り、パイロット第1室85とパイロット第2室83とが第1パイロット弁座82の開口部81を介して連通し、パイロット第2室83とパイロット第3室75とが第2パイロット弁座79の開口部78を介して連通して形成されている。パイロット第3室75とパイロット第4室71との間は隔壁87で仕切られている。
【0018】
パイロット弁体80は、パイロット弁棒74の一端側に固定されていて第1パイロット弁座82または第2パイロット弁座79の一方を開閉し他方を閉開するようになっている。ダイヤフラム72は、パイロット第4室71の内周壁に固着されるとともにパイロット弁棒74の他端側に連結されている。パイロット弾性部材73は、パイロット第4室内71に配備されていてダイヤフラム72を押してパイロット弁体80を第1パイロット弁座82に向けて付勢するようになっている。このパイロット弾性部材73は、パイロット箱70の一端部に設けられた水圧設定ネジ67が回動操作されることにより、ダイヤフラム72を隔壁87側へ押す付勢力が調整されるようになっている。これにより、作動弁2を給水動作から止水動作へ切り換えるための水道本管27における設定水圧が変えられるようになっている。
【0019】
そして、主駆動用水管64からの主駆動用水管65は、パイロット第1室85の接続口86に連結されている。切換用水管66は、主駆動用水管64から分岐してパイロット弁3のパイロット第4室71の接続口77とつながっている。一方、開閉弁46を有する副駆動用水管47は、パイロット弁3のパイロット第2室83の接続口84と作動弁2の箱内空間34の接続口45とを連結している。そして、開閉弁89を有する放出管90はパイロット第3室75の接続口88に連結されている。コック91を有する放出管92は、パイロット第4室71の接続口76に連結されている。
【0020】
上記の連結水管群4は、主駆動用水管49,59,64,65、副駆動用水管47、および、切換用水管66などで構成されている。前記の主駆動用水管49は水道側第1室16に開口した接続口48に連結されており途中に水圧計58を有している。主駆動用水管59の途中には開閉弁60が設けられ、主駆動用水管59の先端部には開閉弁62を有する放出管61が連結されている。放出管61手前の主駆動用水管59には、水圧計63を有する主駆動用水管64が連結されている。
【0021】
そして、主駆動用水管49と主駆動用水管59には三方切換弁52が介設されている。この場合、三方切換弁52の第1口55に主駆動用水管49が連結され、三方切換弁52の第2口57には主駆動用水管59が連結されている。三方切換弁52の第3口56には、作動弁2の貯水側第1室17の接続口50に一端をつながれた手動復帰用水管51の他端が連結されている。すなわち、三方切換弁52は、弁ケース53と、弁ケース53内に回動自在に装着されて主駆動用水管49から主駆動用水管59へ向かう水路と手動復帰用水管51から主駆動用水管59へ向かう水路とに選択的に切り換える流路変更部54と、から構成されている。
【0022】
上記のように構成された緊急作動弁装置1の作用を引き続き説明する。ここでは、水道本管27の一端29からの水道水の導入により、作動弁2の弁箱5内、パイロット弁3のパイロット箱70内、および全ての水管内から空気が排出されて水道水に置き換えられるとともに貯水槽9内が満水にされたのちに、開閉弁37,40,43,62およびコック91が閉じられ、開閉弁60,46、89が開かれたままであって、三方切換弁52の流路が主駆動用水管49から主駆動用水管59に向かう流路に設定されているという、「自動復帰モード」が選択された状態から述べる。
【0023】
この状態では、パイロット弁3のダイヤフラム72に、水道本管27からの水道圧が印加されているが、その水圧がパイロット弾性部材73による設定水圧より高い場合には、その水圧によってダイヤフラム72が上方に撓むとともにパイロット弁棒74も上昇して、パイロット弁体80は第2パイロット弁座79に圧接し、開口部81と接続口84が開放し、開口部78と接続口88が閉じている。そして、パイロット第2室83からの水道水は副駆動用水管47を経て作動弁2の箱内空間34内に入って駆動用弁体32を押し上げる。それに伴って、第1弁体26が第2弁座95に圧接して第1弁座21の開口部20を開くとともに、第2弁体25が第3弁座19から離れて開口部18を開く。これにより、水道本管27の一端29からの水道水が、
図1の弁箱5中の広幅矢印Dのように水道側第1室16から貯水側第1室17を経て貯水槽9に流入し、更に、広幅矢印Eのように貯水側第2室14から水道側第2室15を経て水道本管27の別端28に戻る。
【0024】
そして、地震などの非常時になると、例えば水道本管27内の水圧が低下する。その水圧がパイロット弾性部材73の設定圧よりも低くなると、パイロット弾性部材73の弾性力によりダイヤフラム72が下方に撓んでパイロット弁棒74が下降し、パイロット弁体80は第2パイロット弁座79から離れて第1パイロット弁座82に圧接して、開口部81と接続口84を閉じるとともに、開口部78と接続口88を開放する。この開放により、弁駆動用箱8の箱内空間34内は、副駆動用水管47、パイロット第2室83、パイロット第3室75および放出管90を介して大気中に放出される。
【0025】
これにより、
図4に示すように、パイロット弁3および副駆動用水管47を介して弁駆動用箱8の箱内空間34内に水圧が印加されなくなり、駆動用弁体32は弾性部材33の弾性力により下方に動いて弁棒22を下方に押し下げ、第1弁体26が第2弁座95から離れて第1弁座21に当接するとともに第2弁体25が第3弁座19に当接する。この状態は、水道側第1室16と水道側第2室15とが連通し、貯水側第2室14および貯水側第1室17は水道側第1室16および水道側第2室15から遮断された状態であり、水道本管27の一端29からの水は、
図4の弁箱5中の1点鎖線の広幅矢印Fで示すように流れるので、貯水槽9内に水が流入したり流出したりすることはない。
【0026】
その後、水道本管27が定常状態に戻り水道本管27の水圧が再び上昇してパイロット弁3の設定水圧に復帰すると、パイロット弁3を介して弁駆動用箱8の箱内空間34内にその水圧が印加され、それにより駆動用弁体32が上方に動いて
図1に示した状態に復帰する。すなわち、水道本管27内の水圧が何らかの原因によって一時的に低下し貯水槽9への流入が遮断されたとしても、水道本管27が定常状態に戻って水圧が上がると、貯水槽9への水流入状態に自動的に復帰するのである。
【0027】
一方、
図1の状態から、三方切換弁52の流路変更部54のレバーを手で回して主駆動用水管49から主駆動用水管59への流路を手動復帰用水管51から主駆動用水管59への流路に切り換えると(
図4中の円A内に示した三方切換弁52の状態)、「自己保持モード」が設定される。このモードにおいても、平常時は
図1の状態が維持されて、水道本管27からの水が
図1の弁箱5中の広幅矢印D,Eのように流れ貯水槽9内を通過して水道本管27に戻る。
【0028】
一方、非常時には、前記した自動復帰モードの場合と同様に、水道本管27内の水圧低下により、弾性部材33によって、第1弁体26と第2弁体25が第1弁座21と第3弁座19に圧接して、水道本管27からの水は
図4の弁箱5中の1点鎖線で示す広幅矢印Fのように流れる。その後、水道本管27が定常状態に戻り水道本管27の水圧が再び上昇してパイロット弁3の設定値に復帰しても、主駆動用水管49は三方切換弁52で遮断されており、また第1弁体26の閉止により貯水側第1室17が密閉されているので、主駆動用水管59,64,65、パイロット弁3、および副駆動用水管47を経て作動弁2の箱内空間34に導入される水圧は変化がない。従って、
図4に示した閉止状態をそのまま保持するという「自己保持モード」が実行される。
【0029】
そうして、自己保持モードの解除は、水道本管27が平常に戻った状態で、三方切換弁52を手で操作することにより行われる。すなわち、三方切換弁52の流路変更部54のレバーを手で回して手動復帰用水管51から主駆動用水管59への流路を主駆動用水管49から主駆動用水管59への流路に切り換える。これにより、弁箱5の水道側第1室16の水圧が主駆動用水管59、主駆動用水管65、パイロット弁3および副駆動用水管47を通して、作動弁2の箱内空間34に印加される。すると、駆動用弁体32が上げられて、第1弁体26および第2弁体25が第1弁座21および第3弁座19から離れ、第1弁体26が第2弁座95に圧接する。それにより、作動弁2が
図1のような水流路配置に戻って、平常運転が行なわれるのである。
【0030】
上記したように、この実施形態の緊急作動弁装置1によれば、水道本管と貯水槽との間で定常時の通水運転と非常時の止水運転および水迂回運転を行なう際に、「自動復帰モード」と「自己保持モード」を切り換える構成を、弁箱5の水道側第1室16からパイロット弁3へつながる主駆動用水管49,59に三方切換弁52を介設するとともに、貯水側第1室17からの手動復帰用水管51を三方切換弁52の残口に連結したという、簡素で安価な構成により実現できたのである。また、自動復帰モードと自己保持モードの切換えは、三方切換弁52の流路変更部54の回転操作で流路を変えることにより、簡単に行なうことができる。また、機械的可動部分が外部に露出していないので、機械的可動部分に対する錆発生や塵埃堆積の懸念がなく、これらによる弁体動作不良のおそれもない。
【0031】
尚、上記の実施形態では、定常状態において、弁箱5の水道側第1室16の接続口11を水の入り口とし、水道本管27の一端29からの水を接続口11に流入(
図1中の矢印D)させて、水道側第2室15の接続口10から水道本管27の別端28に流出(
図1中の矢印E)させるようにしたが、本発明はそれに限定されるものでない。それとは逆に、例えば水道本管27の別端28からの水を接続口10に流入(
図1中の1点鎖線矢印EA)させて、水道側第1室16の接続口11から水道本管27の一端29に流出(
図1中の1点鎖線矢印DA)させるようにすることも可能である。そのような構成を採用した場合でも、三方切換弁52の操作による自動復帰モードと自己保持モードとの切換えができ、貯水槽9への水の流通と遮断を行なうことができる。また、現地の設置環境に応じて水道本管への取付け工事を容易に行なうことができる。