(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490730
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】ワイパーブレード用結合部材
(51)【国際特許分類】
B60S 1/40 20060101AFI20190318BHJP
【FI】
B60S1/40 B
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-57300(P2017-57300)
(22)【出願日】2017年3月23日
(65)【公開番号】特開2018-158663(P2018-158663A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230515
【氏名又は名称】日本ワイパブレード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕太
【審査官】
鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−051654(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02557002(EP,A1)
【文献】
特開2016−210419(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0236656(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパーアームの連結部に装着されてワイパーブレードとワイパーアームを結合するワイパーブレード用結合部材において、
結合部材本体と、前記結合部材本体に設けられた弾性変形可能な係止片とを備え、
前記係止片は、前記ワイパーアームの被係止部に係合する係止部を有する係止片本体と、前記係止片本体から屈曲する方向に延び出す基端部とを備え、前記基端部において前記結合部材本体に連結しており、
前記結合部材本体は、前記基端部と隣接して配置された支持部を備え、
前記基端部は、前記支持部から前記係止片本体まで、前記係止部の前記被係止部への係合方向に延びており、
前記係止片本体は、前記基端部から前記支持部と反対方向に屈曲して前記結合部材の前記連結部への装着方向に沿って延びており、
前記結合部材が前記連結部から取り外される方向に動こうとしたときに、前記基端部が前記支持部に当接して支持される結果、前記係止片の変形が制限され、前記係止部が前記被係止部から外れることが防止されるようになっているワイパーブレード用結合部材。
【請求項2】
前記基端部は、前記結合部材の前記連結部への装着方向に直交する方向に延びている請求項1に記載のワイパーブレード用結合部材。
【請求項3】
前記基端部は、前記結合部材本体の前記支持部である後端壁の下端に連結され、前記後端壁の上端側に向けて延びており、
前記係止片本体は、前記基端部の上端から延び出しており、
前記係止部は、前記係止片本体の上面に設けられ、前記結合部材本体の上側に配置された被係止部に係合するようになっている請求項1又は請求項2に記載のワイパーブレード用結合部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパー組み立て体におけるワイパーブレードとワイパーアームの結合に用いられるワイパーブレード用結合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のガラス面等の払拭に用いられるワイパー組み立て体は、一般に、駆動機構と連係するワイパーアームに対して、ワイパーブレードを回動可能に結合して構成される。このようなワイパー組み立て体におけるワイパーアームとワイパーブレードとの結合構造としては、ワイパーブレード側に設けられた結合部材を、ワイパーアーム側の箱型の連結部内に、ワイパーブレードの長手方向にスライドさせて収容する構成(スロット型の結合構造)が採用されることがある。例えば、特表2008−509034(特許文献1)には、ワイパーブレード側の結合部材(継手部)を、ワイパーアーム(振動アーム)先端のU字型断面の連結部内に長手方向から嵌合させて、ワイパーアームとワイパーブレードを結合する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−509034
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のスロット型の結合構造において、結合部材の連結部への係止(固定)は、連結部に設けた嵌合穴に、結合部材側の係止部(ロックボタン)を嵌合させることによりなされることがある。この場合、結合部材に設けた係止片(例えば、特許文献1におけるタング)にロックボタンを設け、この係止片を撓ませることにより、嵌合穴へのロックボタンの着脱がなされるようになっている。
【0005】
しかしながら、このような構成において、係止片に十分な強度を確保しつつ、係止片(ロックボタン)の可動域を十分に確保するためには、係止片を長くする必要がある。このため、係止片を長くした分、結合部材や連結部が大型化してしまっていた。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、係合片に設けた係止部をワイパーアームの連結部の被係止部に係合させることにより連結部に対する係止がなされるワイパーブレード用結合部材において、小型化を図り得るワイパーブレード用結合部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ワイパーアームの連結部に装着されてワイパーブレードとワイパーアームを結合するワイパーブレード用結合部材において、結合部材本体と、前記結合部材本体に設けられた弾性変形可能な係止片とを備え、前記係止片は、前記ワイパーアームの被係止部に係合する係止部を有する係止片本体と、前記係止片本体から屈曲する方向に延び出す基端部とを備え、前記基端部において前記結合部材本体に連結しており、
前記結合部材本体は、前記基端部と隣接して配置された支持部を備え、前記基端部は、前記
支持部から前記係止片本体まで、前記係止部の前記被係止部への係合方向に延びて
おり、前記係止片本体は、前記基端部から前記支持部と反対方向に屈曲して前記結合部材の前記連結部への装着方向に沿って延びており、前記結合部材が前記連結部から取り外される方向に動こうとしたときに、前記基端部が前記支持部に当接して支持される結果、前記係止片の変形が制限され、前記係止部が前記被係止部から外れることが防止されるようになっている。
【0008】
前記基端部は、前記結合部材の前記連結部への装着方向に直交する方向に延びていてもよい。
【0009】
前記基端部は、前記結合部材本体の
前記支持部である後端壁の下端に連結され、前
記後端壁の上端側に向けて延びており、前記係止片本体は、前記基端部の上端か
ら延び出しており、前記係止部は、前記係止片本体の上面に設けられ、前記結合部材本体の上側に配置された被係止部に係合するようになっていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、結合部材(例えばクリップ3)の係止片(例えば係止片40)は、連結部(例えば連結部21)の被係止部(例えば係止穴24)に係合する係止部(例えばロックボタン43)が設けられた係止片本体(例えば係止片本体42)と、係止片本体から屈曲する方向に延び出す基端部(例えば基端部41)とを備えているので、係止片本体だけを備えた係止片に比較して大きく撓むことができる。したがって、短い係止片本体でも十分な撓み量を得ることができるので、係止片本体の長さを短くすることが可能となり、結合部材を小型化することができる。
【0011】
また、連結部から結合部材が取り外される方向に動こうとしたときに、基端部と隣接して配置された支持部(例えば後端壁34)によって基端部が支持されるようにすれば、係合片の大きな変形が制限されるので、係止部が被係止部から外れることはなく、結合部材の連結部からの脱落が適切に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態のクリップ(結合部材)を備えたワイパー組み立て体の一部を示す斜視図であり、ワイパーブレードとワイパーアームが結合されていない状態を示す。
【
図2】同じくワイパー組み立て体の一部を示す斜視図であり、ワイパーブレードとワイパーアームが結合された状態を示す
【
図3】本発明の実施形態のクリップ(結合部材)を示す斜視図である。
【
図6】同じくクリップを示す断面図であり、係止片が押し下げられた状態を示す。
【
図7】同じくクリップを示す断面図であり、係止片の基端部が後端壁により支持された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
図1及び
図2には、ワイパーブレード1とワイパーアーム2からなるワイパー組み立て体の一部(スロット型の結合構造部分)を示す。
図1には、ワイパーブレード1とワイパーアーム2が結合される前の状態が、
図2には、ワイパーブレード1とワイパーアーム2が本発明の実施形態の結合部材であるクリップ3によって結合された状態が、それぞれ示されている。
【0014】
図示されるように、ワイパーブレード1は、長尺の払拭部材であるブレード本体11と、ブレード本体11上に設けられたクリップホルダ12とを備えている。クリップ3は、クリップホルダ12に対して回動可能に取り付けられている。なお、クリップホルダ12は、クリップ3が載置される本体部12Aと、本体部12Aの前端側から上方に延びる前端部12Bとを備えている。
【0015】
ワイパーアーム2は、ワイパーブレード1を保持する長尺部材であり、図示されない基端側において、ワイパー装置の駆動機構(図示せず)に連係している一方で、先端側が、クリップ3に連結される連結部21となっている。なお、ワイパーアーム2は、例えば金属から形成されている。
【0016】
連結部21は、天壁22と、天壁22の両側の側壁23(図には一方の側壁のみを示す)からなる断面コの字型の部材であり、天壁22と両側側壁23により囲まれた空間(収容部)にクリップ3が嵌合することにより、クリップ3を介してワイパーブレード1に連結されるようになっている。この場合、クリップ3は、連結部21の先端21Aの開口部から収容部内に導入され、連結部21をワイパーブレード1の長手方向にスライドさせることにより、クリップ3の連結部21への完全な嵌合(連結部21の先端21Aがクリップホルダ12の前端部12Bに当接する位置までの嵌合)がなされるようになっている。
【0017】
連結部21の天壁22には、クリップ3のロックボタン43が嵌合するための係止穴24が形成されている。また、連結部21の両側側壁23の下端縁には、クリップ3を下方から抱えて保持するための爪部25が設けられている。
【0018】
クリップ3は、例えば樹脂の一体形成により形成される部材であり、
図3から
図7によく示されるように、後端側(連結部21への導入側)の本体部31と、本体部31の両側から前方に延び出す一対の腕部32を備えている。各腕部32の内向き面32Aには、クリップホルダ12への取り付けのための回動軸部33が突設されている。クリップ3は、クリップホルダ12に対して回動軸部33を中心に回動可能に取り付けられるようになっている。
【0019】
本体部31は、後端壁34と前端部35と両側の側部36を備えており、これら後端壁34、前端部35、両側部36に囲まれた空間内に、係止片40が配置されている。
【0020】
係止片40は、後端壁34に隣接して配置された板状の基端部41と、基端部41の上端から略直角に屈曲して後端壁34と反対側に延び出す板状の係止片本体42とからなる断面L字型の部分である。
【0021】
基端部41は、後端壁34に対して、わずかな間隔をもって略平行に配設されており、基端部41の下端は、後端壁34の下端に対して一体に連結されている。係止片本体42は、ワイパーブレード1の長手方向(連結部21とクリップ3の結合方向)に沿って延びている。
【0022】
係止片本体42の上面には、連結部21の係止穴24に嵌合する係止部(突起部)であるロックボタン43が形成されている。ロックボタン43は、連結部21に対してクリップ3を装着したとき(連結部21の先端21Aがクリップホルダ12の前端部12Bに当接する位置まで、連結部21をスライドさせたとき)、ちょうど係止穴24に嵌合する位置に設けられている。このようなロックボタン43の係止穴24への嵌合により、クリップ3と連結部21のスライド方向の動きが規制され、クリップ3の連結部21からの脱落が防止されるようになっている。
【0023】
係止片40は、全体に弾性変形可能に形成されており、ワイパーアーム2の連結部21へのクリップ3の装着時には、ロックボタン43を下方に押し込むことにより、
図6に示されるように、全体として下方に撓み得るようになっている。
【0024】
この場合、係止部40は、基端部41と係止片本体42とからなる断面L字型の構成をしているので、基端部41を有する分、係止片本体42だけが撓む場合よりも大きく撓むことができる。したがって、係止片40の十分な強度とロックボタン34の十分な可動域を確保しつつ、係止片本体42の長さを短くすることが可能となるので、クリップ3及び連結部21の小型化を図ることができる。
【0025】
また、クリップ3に対して連結部21が脱落方向(各図の右方向)に引っ張られた場合、
図7に示すように、係止部40の基端部41が後端壁34に当接するため、係止部40は大きく撓むことはない。したがって、ワイパー組み立て体の使用時に、ワイパーブレード1がワイパーアーム2から脱落する方向に力がかかったとしても、ロックボタン34が係止穴24から外れてしまうことがないので、連結部21からのクリップ3の脱落(ワイパーブレード1とワイパーアーム2の結合が外れてしまうこと)が適切に防止される。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこのような形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲で変更可能なものである。例えば、上記実施形態においては、クリップ3の基端部41は係止片本体42に対して略直交する方向に延びるものとしたが、本発明はこのような形態に限られるものではなく、結合部材の係止片本体と基端部の間の屈曲角度は、様々な角度に設定し得る。
【0027】
また、上記実施形態においては、結合部材として、クリップホルダ12を介してワイパーブレード1に取り付けられるクリップ3を例にとり説明をしたが、本発明はこのような形態に限られるものではなく、本発明は、例えばワイパーブレードに直接取り付けられる結合部材等、任意の形態の結合部材に対して適用可能なものである。また、結合部材は、ワイパーブレードの一部としてワイパーブレード本体と一体に形成されたものとしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 ワイパーブレード
2 ワイパーアーム
3 クリップ(結合部材)
11 ワイパーブレード本体
12 クリップホルダ
21 連結部
22 連結部の天壁
23 連結部の側壁
24 係止穴
31 結合部材本体
32 腕部
33 回動軸部
34 結合部材本体の後端壁
35 結合部材本体の前端部
36 結合部材本体の側部
40 係止片
41 係止片の基端部
42 係止片本体
43 ロックボタン(係止部)