特許第6490774号(P6490774)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6490774有機性廃水の処理方法及び固定化微生物製剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6490774
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】有機性廃水の処理方法及び固定化微生物製剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20060101AFI20190318BHJP
   C02F 3/34 20060101ALI20190318BHJP
   C02F 3/00 20060101ALI20190318BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   C02F3/12 B
   C02F3/12 M
   C02F3/12 D
   C02F3/34 Z
   C02F3/00 G
   C02F3/00 D
   C12N1/20 C
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-200081(P2017-200081)
(22)【出願日】2017年10月16日
【審査請求日】2017年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000156581
【氏名又は名称】日鉄住金環境株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】山本 一郎
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−192132(JP,A)
【文献】 特開2001−314848(JP,A)
【文献】 特公昭56−048235(JP,B1)
【文献】 特開2010−158649(JP,A)
【文献】 特開2003−251394(JP,A)
【文献】 特開2015−127034(JP,A)
【文献】 特開2008−126169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00− 3/34
C02F 1/00
C12N 1/00− 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性汚濁成分を含む被処理水を第1処理槽に導入し、該第1処理槽内で原生動物の実質的不存在下で細菌処理し、被処理水中に含まれる有機性汚濁成分を酸化分解するとともに非凝集性細菌に変換した後、前記第1処理槽からの非凝集性細菌を含む被処理水を活性汚泥が存在する第2処理槽に導入し、該第2処理槽内で、非固着性原生動物の実質的不存在下、固着性原生動物処理して前記非凝集性細菌を固着性原生動物に捕食除去させる2相活性汚泥法によって処理する有機性廃水の処理方法において、
前記第1処理槽に、シュウドモナス(Pseudomonas)属に属する菌株、アエロモナス(Aeromonas)属に属する菌株、アシネトバクター(Acinetobacter)属に属する菌株、レインヘイメラ(Rheinheimera)属に属する菌株、フラボバクテリウム(Flavobacteriumu)属に属する菌株及びバチルス(Bacillus)属に属する菌株からなる群より選ばれる有用微生物を2種以上投入し、さらに、イオウ(S)、マグネシウム(Mg)又は鉄(Fe)の少なくともいずれかの元素を、被処理水のBOD濃度の0.01%以上の添加濃度となるように添加することを特徴とする有機性廃水の処理方法。
【請求項2】
前記有用微生物を投入することで、前記第1処理槽内の有用微生物の濃度が10〜500mg/Lとなるようにする請求項1に記載の有機性廃水の処理方法。
【請求項3】
前記第1処理槽に投入する微生物として、前記菌株からなる群より選ばれる有用微生物を2種以上含む微生物体の脱水乾燥物である、水分含有率が85%以下の固定化微生物製剤を用いる請求項1又は2に記載の有機性廃水の処理方法。
【請求項4】
前記有用微生物を2種以上含む微生物体が、乳製品製造廃水を2相活性汚泥法で処理する廃水処理設備からの余剰汚泥である請求項3に記載の有機性廃水の処理方法。
【請求項5】
シュウドモナス(Pseudomonas)属に属する菌株、アエロモナス(Aeromonas)属に属する菌株、アシネトバクター(Acinetobacter)属に属する菌株、レインヘイメラ(Rheinheimera)属に属する菌株、フラボバクテリウム(Flavobacteriumu)属に属する菌株及びバチルス(Bacillus)属に属する菌株からなる群より選ばれるいずれか1種以上の有用微生物を含む、人工的な微生物の培養物又は活性汚泥からなる微生物体を、70℃以下の温度で通風して風力乾燥して脱水し、固形形状のまま乾燥し、水分含有率を85〜70%に調整した脱水乾燥物とした後、前記通風を止めて、前記脱水乾燥物を、空気との接触を妨げない状態に置いて、又は、空気との接触を図って、酸素の存在する雰囲気に24時間以上おいた後、さらに70℃以下の温度で通風して風力乾燥することを特徴とする固定化微生物製剤の製造方法。
【請求項6】
前記活性汚泥が、乳製品製造廃水を処理する2相活性汚泥法の廃水処理設備からの余剰汚泥である請求項5に記載の固定化微生物製剤の製造方法。
【請求項7】
さらに、固定化微生物製剤に、イオウ(S)、マグネシウム(Mg)又は鉄(Fe)の少なくともいずれかの元素が添加されるように構成する請求項5又は6に記載の固定化微生物製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性汚濁成分を含む被処理水(以下、有機性廃水又は原水とも呼ぶ)を2相活性汚泥方式で処理する有機性廃水の処理方法及び該処理方法に用いる固定化微生物製剤に関する。さらに詳しくは、有機性汚濁成分を含む被処理水を活性汚泥方式で処理した場合に、処理液の水質の悪化を生じさせることなく、処理効率が著しく改善され、しかも余剰汚泥の格段の減量化が、経済的に且つ確実に達成される有機性廃水の処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
有機性廃水を、好気性微生物を含む活性汚泥により処理する活性汚泥法は、浄化能力が高く、比較的に処理経費が少なくて済む等の利点があるため、活性汚泥法を利用した種々の水処理方法が提案され、下水処理や産業廃水処理等において広く一般に利用されている。上記活性汚泥法では、処理対象となる各種の有機性廃水をエアレーションタンク(曝気槽)へと導き、この曝気槽で、活性汚泥によりBODで示される廃水中の有機汚濁成分を分解させて浄化処理をしている。しかし、特定の生物負荷条件、すなわち、BOD負荷量で0.5〜0.8kg/m3・day程度の状態でしか運転ができないため、大量の処理を行なうには、広い敷地面積を要する大型の曝気槽が必要となる等、設備が大掛かりになる傾向がある。
【0003】
さらに、活性汚泥処理方法では、下記のように、大量の余剰汚泥の処理が常に問題となる。すなわち、分解したBODのうちの50〜70%は微生物の維持エネルギーとして消費されるが、残りの30〜50%は菌体の増殖に使用されるので、活性汚泥の量が次第に増加していく。このため、通常、曝気槽で処理された廃水を沈澱槽へと導き、沈殿した活性汚泥の中から有機性廃水の浄化処理に必要な量だけ返送汚泥として曝気槽内へと戻し、それ以外の活性汚泥を余剰汚泥として取り除く必要がある。
【0004】
これに対し、特許文献1で提案された、有機性廃水(原水)を、非凝集性細菌処理(主に分散菌による細菌処理)して廃水中の有機物を酸化分解すると共に非凝集性細菌に変換させた後、さらに、増殖した非凝集性細菌を固着性原生動物処理して捕食除去させることによって、生物処理効率を向上させる、いわゆる2相活性汚泥法が実施されている。そして、この処理方法を用いると、高負荷状態での運転が可能となり、活性汚泥法による処理効率が格段に向上し、さらに、生物処理の効率向上が図れると同時に余剰汚泥の生成量を減少できる、といった効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭56−48235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した2相活性汚泥法は、従来の活性汚泥法に比べて優れたものであるものの、従来の活性汚泥法で用いられている多様な微生物を機能分離し、第1処理槽と第2処理槽でそれぞれに微生物処理することを基本構成としたものであることから、本発明者は、より安定して上記した高い効果を実現するためには、さらなる詳細な検討が必要であるとの認識をもつに至った。2相活性汚泥法を用いて有機性廃水の処理を行う場合において重要なことは、特に第1処理槽における処理であり、第1処理槽で、増殖速度の速い有用微生物(分散性細菌)が有効に機能する構成となっているか否かについて、さらなる検討を行った。
【0007】
従って、本発明の目的は、2相活性汚泥法を利用した有機性廃水の処理方法において、効果的な処理をより安定してできるようになる新たな構成を見出すことにある。さらに、本発明の目的は、2相活性汚泥法を利用した新規な有機性廃水の処理方法の実施をより簡便にできる、固定化微生物製剤の提供を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、有機性汚濁成分を含む被処理水を第1処理槽に導入し、該第1処理槽内で原生動物の実質的不存在下で細菌処理し、被処理水中に含まれる有機性汚濁成分を酸化分解するとともに非凝集性細菌に変換した後、前記第1処理槽からの非凝集性細菌を含む被処理水を活性汚泥が存在する第2処理槽に導入し、該第2処理槽内で、非固着性原生動物の実質的不存在下、固着性原生動物処理して前記非凝集性細菌を固着性原生動物に捕食除去させる2相活性汚泥法によって処理する有機性廃水の処理方法において、
前記第1処理槽に、シュウドモナス(Pseudomonas)属に属する菌株、アエロモナス(Aeromonas)属に属する菌株、アシネトバクター(Acinetobacter)属に属する菌株、レインヘイメラ(Rheinheimera)属に属する菌株、フラボバクテリウム(Flavobacteriumu)属に属する菌株及びバチルス(Bacillus)属に属する菌株からなる群より選ばれる有用微生物を2種以上投入することを特徴とする有機性廃水の処理方法を提供する。
【0009】
上記有機性廃水の処理方法の好ましい形態としては、前記有用微生物を投入することで、前記第1処理槽内の有用微生物の濃度が10〜500mg/Lとなるようにすること;前記第1処理槽に投入する微生物が、前記菌株からなる群より選ばれる微生物の培養物、或いは、前記菌株からなる群より選ばれる微生物を含む微生物体、或いは、前記菌株からなる群より選ばれる微生物を含む微生物体の脱水乾燥物である、水分含有率が85%以下の固定化微生物製剤の少なくともいずれかであること;前記第1処理槽に、さらに、イオウ(S)、マグネシウム(Mg)又は鉄(Fe)の少なくともいずれかの元素を添加することが挙げられる。
【0010】
本発明は、別の実施形態として、上記有機性廃水の処理方法に好適に用いることができる固定化微生物製剤の製造方法を提供する。
【0011】
本発明は、シュウドモナス(Pseudomonas)属に属する菌株、アエロモナス(Aeromonas)属に属する菌株、アシネトバクター(Acinetobacter)属に属する菌株、レインヘイメラ(Rheinheimera)属に属する菌株、フラボバクテリウム(Flavobacteriumu)属に属する菌株及びバチルス(Bacillus)属に属する菌株からなる群より選ばれるいずれか1種以上の有用微生物を含む、人工的な微生物の培養物又は活性汚泥からなる微生物体を、70℃以下の温度で脱水し、固形形状のまま乾燥し、水分含有率を85%以下に調整することを特徴とする固定化微生物製剤の製造方法を提供する。
【0012】
本発明は、シュウドモナス(Pseudomonas)属に属する菌株、アエロモナス(Aeromonas)属に属する菌株、アシネトバクター(Acinetobacter)属に属する菌株、レインヘイメラ(Rheinheimera)属に属する菌株、フラボバクテリウム(Flavobacteriumu)属に属する菌株及びバチルス(Bacillus)属に属する菌株からなる群より選ばれるいずれか1種以上の有用微生物を含む、人工的な微生物の培養物又は活性汚泥からなる微生物体を、70℃以下の温度で脱水し、固形形状のまま乾燥し、水分含有率を85〜70%に調整した後、酸素の存在する雰囲気に24時間以上おいた後、必要に応じてさらに70℃以下の温度で乾燥することを特徴とする固定化微生物製剤の製造方法を提供する。
【0013】
上記固定化微生物製剤の製造方法の好ましい形態としては、さらに、固定化微生物製剤に、イオウ(S)、マグネシウム(Mg)又は鉄(Fe)の少なくともいずれかの元素が添加されるように構成することが挙げられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、効果的な処理が安定してできる2相活性汚泥法を利用した有機性廃水の処理方法が提供される。すなわち、本発明によれば、2相活性汚泥法を利用した有機性廃水の処理方法で、処理開始から短期間で汚泥の馴養ができ、速やかに安定且つ高度な処理水質を得ることができる有機性廃水の処理方法が提供される。さらに、本発明によれば、本発明の2相活性汚泥法を利用した新規な有機性廃水の処理方法の実施をより簡便にできる、固定化微生物製剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の有機性廃水の処理方法の処理フローを説明するための図である。
図2】本発明の有機性廃水の処理方法の一例を説明するための概略図である。
図3】本発明の実施例と比較例の結果を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に好ましい発明の実施の形態を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。
先に述べたように、本発明者は、2相活性汚泥法を用いた有機性廃水の処理において重要となる第1処理槽における処理について、第1処理槽内で増殖速度の速い有用微生物(分散性細菌)が有効に機能する状態となっているか否かについて詳細な検討を行った。その結果、下記の知見を得た。
【0017】
2相活性汚泥法を利用して有機性廃水の処理を実施する場合、廃水処理を開始する際に、第1処理槽に一般的な活性汚泥を種菌として投入することが行われている。これに対し、2相活性汚泥法における微生物の機能分離の観点からは、本来、第1処理槽における処理は、原生動物の実質的不存在下で細菌処理(主に分散性細菌による細菌処理)が行われるはずである。しかし、一般的な活性汚泥を種菌として投入した場合は、第1処理槽における処理に必要な有用微生物(分散性細菌)が十分に確保できない場合があることを見出した。第1処理槽の処理に必要な有用微生物(分散性細菌)が確保できない場合は、被処理水中に含まれる有機性汚濁成分を酸化分解して非凝集性細菌への変換(すなわち分散性細菌の増殖)が不安定になる。そして、非凝集性細菌への変換が不安定になると、2相活性汚泥法を利用して有機性廃水の処理をすることによって得られる、(1)高負荷状態での運転が可能、(2)活性汚泥法による処理効率が格段に向上、さらに、(3)生物処理の効率向上が図れると同時に余剰汚泥の生成量の減少、といった効果を実現するために多くの時間を必要とすることが生じている。
【0018】
本発明者は、実際の2相活性汚泥法を利用して有機性廃水の処理において生じている上記した状況に対し、下記の点を改善する必要があると考えた。原生動物を実質的不存在下とした第1処理槽に種菌として投入している一般的な活性汚泥は、そもそも、比較的増殖速度の遅い非分散性(凝集性)の細菌が主流を占めており、必ずしも第1処理槽での処理に適した有用微生物(分散性細菌)が存在しない場合があり、このことに起因して、効果を得るために処理に時間がかかることが生じたものではないかと考えた。
【0019】
上記の知見に対し、本発明者は、2相活性汚泥法を構成する第1処理槽で求められている機能をより効果的に果たす増殖速度の速い有用微生物(分散性細菌)を見出し、このような有用微生物を第1処理槽に投入して、第1処理槽内に、有用微生物が安定的に、維持、定着するように構成することが有効であると考えた。このような考えの下、本発明者は、経済的且つ高効率で安定性の高い生物反応方法を開発することを目的として、水処理技術をベースに、2相活性汚泥法を構成する第1処理槽における処理速度を、従来法に比較して飛躍的に高める有用微生物の種類を特定し、この有用微生物の第1処理槽への投入方法、さらに、有用微生物の投入をより簡便化することを可能にするための有用微生物を含む微生物群の微生物製剤化(高濃度固定化法)について鋭意研究を進めた。
【0020】
その結果、本発明者は、まず、第1処理槽における処理速度を飛躍的に高めることのできる有用微生物(分散性細菌)として、シュウドモナス(Pseudomonas)属に属する菌株、アエロモナス(Aeromonas)属に属する菌株、アシネトバクター(Acinetobacter)属に属する菌株、レインヘイメラ(Rheinheimera)属に属する菌株、フラボバクテリウム(Flavobacteriumu)属に属する菌株及びバチルス(Bacillus)属に属する菌株を見出し、第1処理槽に、これらの菌株からなる群より選ばれる2種以上の微生物を投入することで、本発明の目的が達成できることを見出した。
【0021】
また、本発明者は、上記した有用微生物を第1処理槽に投入する際に、第1処理槽に、イオウ(S)、マグネシウム(Mg)又は鉄(Fe)の少なくともいずれかの元素を添加すると、投入した有用微生物の増殖を助け、短期間に、第1処理槽における有機物分解能を高めることができることを見出した。
【0022】
上記に挙げた本発明で規定する有用微生物(分散性細菌)の第1処理槽への投入方法としては、下記に挙げるような形態で投入することが好ましい。例えば、有用微生物を培養した培養液(培養物)、或いは、有用微生物を含有する微生物体である活性汚泥を、直接、第1処理槽に投入することで実施できる。投入量は、第1処理槽内の有用微生物の濃度が、10〜500mg/Lとなるようにすることが好ましい。ここで、上記した第1処理槽への投入方法を実施し、長期間安定した処理を継続している廃水処理設備の場合には、第2処理槽内の活性汚泥中に、先に示した本発明で規定する有用微生物が多量に生息しているので、第1処理槽に有用微生物を投入する場合の微生物として有効に使用できる。この場合の添加量は、添加した活性汚泥の濃度で、200〜1000mg/L程度とすることが好ましい。
【0023】
さらに、本発明者は、上記した有用微生物の培養液(培養物)にしても、活性汚泥にしても長期間の保存は困難であり、また輸送、貯留等も手数がかかり、あまり実用的ではない点に注目し、これらの課題を解決できる実用性に富む方法を見出すことが有用であると認識した。そこで、本発明者は、これらの問題を解決すべく鋭意研究した結果、有用微生物を固定化してなり、しかも、その活性を保持できる微生物の粉末製剤化を実現する方法を見出した。
【0024】
本発明者は、検討の過程で、本発明で規定する有用微生物を含む、人工的な微生物の培養物もしくは有用微生物が生息することが確認された活性汚泥等の混合微生物群を、約70℃以下の温度で、固形形状のまま乾燥することで、細胞間隙の水分を実質的に排除した状態にして、その際における菌の様子を調べた。その結果、菌体同士が固着結合した状態になっており、固着された菌体は、被処理水と接触し水分を吸収して膨潤しても、膨潤後の固着形態は崩れることなく、さらに、菌体の活性も維持(保持)されることを見出した。
【0025】
本発明者は、さらなる検討をした結果、本発明で規定する前記菌株からなる群より選ばれる微生物を含む微生物体を、70℃以下の温度で脱水し、固形形状のまま乾燥し、水分含有率を85〜70%に調整した後、酸素の存在する雰囲気に24時間以上おいた後、必要に応じてさらに70℃以下の温度で乾燥する方法を用いることで、有用微生物の長期間の保存性(活性度の維持)を高め得ることを見出した。
【0026】
すなわち、下記に挙げるようにすることで、有機性廃水の処理方法を容易に安定して実施することを可能にするための固定化微生物製剤を容易に得ることができる。原料としては、前記した本発明で規定する菌株からなる群より選ばれる1種以上の有用微生物を含む、人工的な微生物の培養物もしくは有用微生物が生息することが確認された活性汚泥等の混合微生物群を用いることができる。本発明の固定化微生物製剤を得る第1の製造方法では、このような原料を、約70℃以下の温度で脱水し、固形形状のまま乾燥し、水分含有率を85%以下に調整することで製造する。また、本発明の固定化微生物製剤を得る第2の製造方法では、前記原料を、約70℃以下の温度で脱水し、固形形状のまま乾燥し、水分含有率を85〜70%に調整した後、酸素の存在する雰囲気に24時間以上おいた後、必要に応じてさらに70℃以下の温度で乾燥することで製造する。第2の製造方法における「酸素の存在する雰囲気」の意味するところは、例えば、空気中で、対象とする微生物の乾燥物の堆積層高が0.5m程度以下となるようにして、空気との接触を妨げない状態に置くようにすることでよい。或いは、定期的に、微生物の乾燥物の堆積層を切り返して空気との接触を図ったり、堆積層にブロワ等で通気することも有効である。
【0027】
先に述べたように、有用微生物を第1処理槽に投入する際に、第1処理槽に、イオウ(S)、マグネシウム(Mg)又は鉄(Fe)のいずれかの元素を添加することが好ましいことから、上記したようにして得られる固定化微生物製剤に、イオウ(S)、マグネシウム(Mg)及び鉄(Fe)の内の1種以上の元素を混合することも好ましい形態である。
【0028】
上記したように、本発明者は、有用微生物を第1処理槽に投入する際に、第1処理槽に、イオウ(S)、マグネシウム(Mg)又は鉄(Fe)のいずれかの元素を添加することが好ましいことを見出したが、この点について以下に説明する。本発明の有機性廃水の処理方法で利用する2相活性汚泥法では、第1処理槽での微生物(分散性細菌)の増殖速度がきわめて早いため、一般の活性汚泥処理に比べ栄養元素類の要求濃度が高いことを見出した。通常の活性汚泥処理でも、多くの場合不足しがちな元素として、窒素とリンを添加して処理を行うケースはあり、一般的である。しかし、その他の栄養元素類が不足することはごくまれである。これに対し、本発明者は、本発明の処理方法で利用する2相活性汚泥法によって各種の工場廃水等の処理を進める中で、第1処理槽での有用微生物の増殖速度が、処理する廃水の種類によって大きく変化することを見出した。
【0029】
本発明者は、この原因を見出すべく鋭意研究した結果、処理する廃水の種類によって生じる栄養元素類濃度の不足によることが判明した。そして、微生物の必須栄養元素類のうち特に、イオウ(S)、マグネシウム(Mg)及び鉄(Fe)の不足の影響が顕著であることが判明した。また、第1処理槽で有用微生物が高い増殖速度を維持するのに必要な、イオウ(S)、マグネシウム(Mg)及び鉄(Fe)の濃度は、被処理液のBOD濃度の0.01%以上であることが明らかとなった。栄養元素類濃度の不足をより安定に抑制するためには、いずれの元素も0.1%以上存在するように構成することが好ましい。
【0030】
上記に挙げた各元素を添加する場合の好ましい形態としては、下記に挙げる化合物を用いればよい。イオウ(S)分の添加材料としては、イオウ含有化合物、硫酸或いはその塩、チオ硫酸或いはその塩、亜硫酸塩、スルファミン酸或いはその塩、システイン、メチオニン、アルキルチオール、チオエステル類、チオエーテル類及びチオグリコール類からなる群から選ばれる少なくともいずれかが挙げられる。また、マグネシウム分の添加材料としては、水中でマグネシウムイオンを生じ得る化合物である、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、マグネシウム有機塩として酢酸マグネシウム等からなる群から選ばれる少なくともいずれかが挙げられる。例えば、MgSO4であれば、イオウ(S)分の添加材料としての硫黄含有化合物と、水中でマグネシウムイオンを生じ得る化合物のいずれの役割も果たすので、有用微生物を第1処理槽に投入する際に、第1処理槽にイオウ(S)やマグネシウム(Mg)添加する態様の本発明においての有用な材料となり得る。鉄(Fe)分の添加材料としては、鉄イオンを生じ得る、金属鉄、塩化第1鉄、塩化第2鉄、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄、硝酸第2鉄、各種酸化鉄化合物、水酸化第1鉄、水酸化第2鉄等からなる群から選ばれる少なくともいずれかが挙げられる。
【0031】
上記したような化合物に限らず、有機性廃棄物を焼却して得られた焼却灰も、イオウ、マグネシウム、鉄を豊富に含んでおり、上記焼却灰も、第1処理槽に添加するイオウ(S)、マグネシウム(Mg)又は鉄(Fe)の少なくともいずれかの元素として使用できる。例えば、下水汚泥、産業廃水の生物処理から発生する余剰汚泥、厨芥、食品残渣、農業廃棄物、家畜・家禽糞尿、畜産廃棄物、水産廃棄物及び林産廃棄物からなる群から選択される少なくともいずれかを含む有機性廃棄物を焼却して得られた焼却灰は、いずれも使用可能である。
【0032】
本発明の固定化微生物製剤の製造方法において有用微生物の固定化処理は、70℃以下の温度で脱水し、固形形状のまま乾燥処理することにより行われる。この温度での処理は、有用微生物を含む微生物体を脱水して乾燥を促進させるためのものであるので、使用する温度は、目的とする有用微生物の温度耐性に応じて適宜に決定することが好ましい。例えば、耐熱性に優れたバチルス属の細菌では高い処理温度でも活性の維持が可能である。しかし、この場合においても約70℃以下であることが望ましい。
【0033】
固定化微生物製剤を製造する場合、上記した温度で行う脱水、乾燥、粒子化、粉末化は、適宜の方法で行うことができる。例えば、沈降濃縮微生物或いは活性汚泥をフィルタープレス等で脱水した後、固形形状のまま70℃以下の温度で乾燥し、その後に粉砕し、必要に応じて篩い等で分級することで、粒径の整った粒子状の固定化微生物製剤を得ることができる。また、例えば、脱水物を適度に固形形状のまま半乾燥させた後、カッター等により裁断し粒子化した後、固定化した微生物製剤の強度を増加させるために、さらに乾燥することができる。固定化した微生物製剤の強度を高める上では、処理された菌体の水分含量は、細胞間隙の水分がなくなるまで十分に乾燥させることが望ましい。そのためには、水分含有率が85%以下になるように乾燥し、細胞間隙の水分を減少させ、菌体同士が、固着固定化するまで乾燥する。本発明者の検討によれば、菌体同士の固着固定は、微生物の水分含有率を固形形状のまま85%以下程度に調整することが有効である。このようにすることで、有用微生物等が生育中に菌体外に産生した多種多様な物質、特に、多糖、蛋白、糖蛋白などの高分子物質が脱水、乾燥されると共に変性され、細胞間の結合強度が増加することで、菌体同士の固着固定が良好なものになったと考えられる。
【0034】
固定化微生物製剤を製造する場合、上記したように、微生物の菌体外生成物が一種のバインダーとなることにより菌体同士が固着固定化された後、固定化菌体を裁断もしくは粉砕することよって粒子サイズを整える。粒子サイズは、反応の条件により任意に選択できるが、粒径が極端に大きくなると、固定化微生物製剤を第1処理槽に有用微生物として投入した際に、拡散抵抗により反応速度が低下するので好ましくない。すなわち、粒径が極端に大きくなると、処理対象となる有機物分子の拡散、溶存酸素の拡散が阻害され、結果として汚濁物質処理の反応速度が低下することが生じる場合がある。従って、固定化微生物製剤の粒径は、通常、膨潤後の粒径が0.1mm〜5mm程度となるようにすることが望ましい。本発明者の検討によれば、このような粒径であれば、固定化微生物製剤内にいったん固定化された菌体は、被処理水と接触し膨潤しても十分な強度を有し、一般的な通気や撹拌の手段を伴っても微細化することなく、第1処理槽内で行われる有機物の酸化分解反応に供することが可能である。
【0035】
本発明の有機性廃水の処理方法においては、先述したように、第1処理槽で、第1処理槽に投入された本発明で規定する有用微生物(分散性細菌)による処理が行なわれた、第1処理槽から排出されてくる廃水(第1処理水)は、第1処理槽内に十分な量で生息する細菌によって被処理水中の溶解性有機物が酸化分解され、これと共に細菌自体は有機物を栄養源として増殖する。従って、第1処理槽における細菌処理による現象のみをみれば、廃水中の溶解性有機物が細菌に変換したと言うこともできる。本発明者の検討によれば、第1処理槽内の有用微生物(分散性細菌)の濃度(量)を十分確保して、この細菌相での細菌処理が最適にできれば、第1処理槽における溶解性有機物の除去率を95〜98%という高い値にすることができる。これを、有機物の細菌への変換率といった点からみると、質量比で約40〜50%程度であり、従って、有機物100質量部は、約40〜50質量部の分散性のよい細菌に変換されると言える。この結果、次の第2処理槽での処理効率が向上すると共に、汚泥の発生量も減少する。これに対し、第1処理槽に存在する有用微生物(分散性細菌)の濃度(量)が不足すると、溶解性有機物の細菌への変換率の低下が生じ、上記の優れた効果が損なわれてしまう。このため、本発明の有機性廃水の処理方法では、本発明で規定する有用微生物を投入することで、第1処理槽内の有用微生物の濃度が10〜500mg/Lとなるようにすることが好ましい。
【0036】
本発明の有機性廃水の処理方法では、上記の第1処理槽における細菌処理を原生動物の実質的不存在下で行う。この結果、第1処理槽で処理された廃水中に含まれる増殖した大量の細菌は非凝集性のものとなり、廃水中に、細菌凝集塊、所謂汚泥を生じることが有効に防止される。このため、本発明の有機性廃水の処理方法を構成する第1処理槽で行われる細菌処理の結果得られる第1処理水は、汚泥を実質上含まずに、有機物が変換した微細な粒子状に分散した細菌を含んだものとなる。このような分散状の細菌は、原生動物の好む食物となるものであるので、次に行なう原生動物を含む活性汚泥相で構成する第2処理槽における原生動物処理において、その処理効率が著しく高められる。逆に、上記した第1処理槽で行なわれる細菌処理において、原生動物が共存していた場合には、細菌相において、原生動物に捕食され易い細菌が捕食されてしまうため、捕食されにくい細菌が主に増殖することになり、細菌相で細菌凝集塊が生じ易くなってしまう。この細菌凝集塊は、原生動物によって捕食されにくいので、活性汚泥が存在する第2処理槽で、細菌凝集塊を含む第1処理水の処理を行なった場合には、これらが原生動物処理過程を通過してしまうことが生じ、原生動物処理における処理効率が損なわれる原因になる。なお、本発明における“原生動物の実質的不存在下”とは、原生動物の増殖が抑制され、その結果、細菌処理過程中に殆ど原生動物の新たな出現が見られない状態を意味する。
【0037】
本発明の有機性廃水の処理方法の第1処理槽における細菌処理の過程において、原生動物の増殖を抑制し、原生動物が実質的に不存在の状態とする具体的な方法としては、細菌と原生動物との性状の差異を利用する下記に挙げる方法が使用できる。本発明で規定する有用微生物(分散性細菌)と原生動物との間には、その増殖速度に大きな差異があり、有用微生物の増殖速度は原生動物のそれに比して極めて高い。この増殖速度の差を利用すれば、第1処理槽での細菌処理過程における原生動物の出現を制止することができる。すなわち、この原理に従えば、被処理水を、原生動物の最大比増殖速度以上及び細菌の最大比増殖速度以下の処理時間(希釈率)で細菌処理過程を通過させることによって、原生動物の出現を制止した状態で細菌処理を達成することができる。本発明においては、例えば、第1処理槽での細菌処理過程における被処理水の処理時間(希釈率)を、原生動物の最大比増殖速度以上及び細菌の最大比増殖速度以下、例えば、1〜12hr.の範囲に調節することによって、原生動物が実質的に存在しない状態で細菌処理を行なうことが可能となる。
【0038】
また、細菌処理過程における原生動物の出現の制止は、温度、pH等の環境条件を調節することによっても達成することができる。すなわち、細菌は広い範囲の環境条件で増殖できるが、原生動物の生育し得る環境条件は、細菌に比較して狭い範囲に限定される。例えば、原生動物は、温度40℃以上ではその増殖が著しく抑制されるので、細菌処理過程の温度を40℃以上に保持すれば、原生動物の出現を制止することができる。また、原生動物は、pH4以下又はpH10以上ではその増殖が抑制されることから、処理過程のpH値を4以下又は10以上の範囲に保持すれば、原生動物の出現を制止させることが可能となる。
【0039】
本発明の有機性廃水の処理方法では、以上で説明したように、第1処理槽内本発明で規定する有用微生物(分散性細菌)を投入したことで、第1処理槽で効率のよい細菌処理が行われ、廃水中に含有されている溶解性有機物を、100%近い割合で微細な粒子状態で分散した細菌に変換し、その後、第1処理槽からの第1処理水を活性汚泥が存在する第2処理槽で原生動物処理することで、これらの細菌を原生動物によって効率よく捕食除去する。本発明の有機性廃水の処理方法では、さらに、この第2処理槽内での原生動物処理過程において、細菌を捕食した原生動物を容易に分離できるようにするため、第2処理槽中には固液分離性のよい固着性原生動物を存在させ、固液分離性の悪い非固着性原生動物が実質的に不存在の状態で処理を行なう。
【0040】
本発明でいう固着性原生動物とは、固体粒子や固体物質に対して固着し易い性質を持った原生動物、或いは原生動物相互が固着凝集し易い性質を持った原生動物を意味する。このようなものとしては、例えば、ボルチセラ、エピステイリス、オペルクラリア、カルケシウム、ズータニウム等、有柄固着型の繊毛虫類が挙げられるが、固体表面をホフクするようなアスピデスカ、ユープロテス等も、汚泥と共に沈降し易いことから利用し得る。一方、本発明で言う非固着性原生動物とは、上記のような性質を有しない原生動物を意味する。
【0041】
本発明の有機性廃水の処理方法において、活性汚泥が存在する第2処理槽で、第1処理水に行なう固着性原生動物処理は、上記で述べたように、非固着性原生動物の増殖を制止し、非固着性原生動物が実質的に不存在となる状態で行なう。このような状態は、原生動物の固着性と非固着性を利用して形成することができる。すなわち、固着性原生動物は、処理系内に固着するための担体となり得る適当な固体物質が存在していると、この固体物質に固着して集殖するようになる。これに対し、非固着性原生動物にはこのような特性はない。このため、原生動物処理において、被処理水を固着性原生動物用の担体の存在下、原生動物の最大比増殖速度以上の処理時間(希釈率)で処理過程を通過させれば、非固着性(自由遊泳性)の原生動物を処理系外へと流去させる一方、固着性の原生動物を処理系内に滞留させ増殖させることが可能となる。本発明の有機性廃水の処理方法では、第1処理槽に、本発明で規定する有用微生物を投入するために、前記したようにして得た固定化微生物製剤を添加することが好ましい。固定化微生物製剤は、第1処理槽で有用微生物(分散性細菌)の供給源となった後、第2処理槽に流入することになる。本発明者の検討によれば、固定化微生物製剤は、第2処理槽で、原生動物処理を活性汚泥の存在下で処理するにあたって、固着性原生動物のための担体として機能し、非固着性原生動物が実質的に不存在となる状態を容易に形成することを促進する機能を有するので、この点でも有用である。
【0042】
本発明の有機性廃水の処理方法では、さらに、第2処理槽内に、例えば、砂、石等の固体粒子や、板状体、布状物、濾紙等を担体として併存させ、固着性原生動物がより固着し易い環境としてもよい。本発明の有機性廃水の処理方法では、上記した固着性原生動物処理を行なう第2処理槽に、従来から活性汚泥処理方法に用いられている曝気槽を用いればよい。
【0043】
本発明の有機性廃水の処理方法では、以上述べたように、細菌処理が終了した第1処理水を、非固着性原生動物の不存在下、固着性原生動物処理し、廃水中に含まれる細菌を原生動物によって捕食除去させる。この結果、第2処理槽内には、細菌を栄養源として増殖した固着性原生動物が汚泥として存在することになる。第2処理槽で生じる現象のみをみれば、固着性原生動物処理によって、被処理水中の細菌が固着性原生動物に変換され、汚泥を形成したとも言える。先に述べたように、第1処理槽内での細菌処理によって廃水中の有機物が細菌に変換され、その細菌は、非凝集性の微粒子状のものであって廃水中に個々の菌体に分散した状態で存在しているため、原生動物によって極めて捕食され易くなっている。このため、第2処理槽における原生動物による細菌除去率は、約95〜97%という極めて高い値が得られる。また、原生動物処理における細菌の原生動物への変換という点からみると、細菌の約30〜40%が原生動物に変換される。
【0044】
本発明の有機性廃水の処理方法では、第1処理槽での有機物の細菌への変換が理想的に行なわれるように、第1処理槽に有用微生物(分散性細菌)を投入する。このため、先述したように、本発明の処理方法では、第1処理槽での有機物の細菌への変換率は約40〜50%程度になる。このことを勘案すると、本発明では、100質量部あった有機物は、第1処理槽で、約40〜50質量部の細菌に変換して減量化され、さらに、上記で説明した第2処理槽での変換率から、約12〜20質量部の原生動物(汚泥)に変換し、さらに減量化される。上記したように、本発明で利用する2相活性汚泥処理によれば、同じ量の有機物を処理した場合に、従来の活性汚泥法と比較して汚泥の発生量を減少させることができるが、本発明の処理方法では、第1処理槽での有機物の細菌への変換率の向上によってさらなる減量化が可能になる。
【0045】
さらに、本発明で利用する2相活性汚泥処理によれば、第2処理槽において行なわれる原生動物処理によって得られる廃水(以下、単に、第2処理水と呼ぶ)は、上記したように、増殖した固着性原生動物を汚泥として含む。従って、この汚泥は、活性汚泥等の固体粒子や固体物質に対して固着し易い性質を有し、分離性に非常に優れ、沈殿槽や沈殿池等の慣用の固液分離手段によって廃水中から容易に分離することが可能である。この結果、固液分離後に得られる最終処理水は、有機物及び原生動物を含まない濁りのない極めて清浄なものとなる。
【0046】
本発明の有機性廃水の処理方法では、第1処理槽に、本発明で規定する有用微生物(分散性細菌)を投入することで、第1処理槽で処理されて第2処理槽へと導入される第1処理水中の細菌濃度の変動も抑制される。このため、上記の第2処理槽における処理も安定した状態で行なわれる。
【0047】
先に述べたように、第1処理槽での微生物(分散性細菌)の増殖速はきわめて早いため、一般の活性汚泥処理に比べ栄養元素類の要求濃度の高いことが明らかになっている。これに対し、本発明の好ましい形態では、第1処理槽に、本発明で規定する有用微生物(分散性細菌)を投入する際に、さらに、イオウ(S)、マグネシウム(Mg)又は鉄(Fe)の少なくともいずれかの元素を添加する。このように構成することで、廃水の種類によって生じることのあった栄養元素類濃度の不足を原因とする、第1処理槽での有用微生物の増殖速度が廃水の種類によって大きく変化するという課題を解決することができる。第1処理槽で有用微生物が高い増殖速度を維持するに必要な、これらの元素の濃度は、被処理液のBOD濃度の0.01%以上、より好ましくは、いずれも0.1%以上存在させるように添加するとよい。
【0048】
第1処理槽への有用微生物(分散性細菌)の投入は、本発明の有機性廃水の処理方法における基本構成を実施するための廃水処理設備の運転を開始する際に、或いは、何らかのトラブル等で、第1処理槽内の有用微生物(分散性細菌)の濃度が極端に下がった場合に追加投入する。なお、廃水処理が安定して行われていれば、有用微生物(分散性細菌)は処理系内で自然に増殖するため、運転開始時に添加すればよく、追加で投入しなくてもよいケースも多い。
【0049】
一方、イオウ、マグネシウム、鉄の添加は、有用微生物(分散性細菌)の投入時は必ず実施する必要があると言っても過言ではないが、有用微生物(分散性細菌)が水処理系内で自然増殖をはじめた後も、イオウ、マグネシウム、鉄の無機元素の投入を継続することが好ましい。本発明者の検討によれば、そのようにしないと、水処理系内での有用微生物(分散性細菌)の増殖速度が低下して、第1処理槽内の有用微生物(分散性細菌)の必要濃度が維持できなくなる可能性があり、本発明を実施するための水処理設備の性能を維持できなくなる場合がある。イオウ、マグネシウム、鉄の栄養元素の添加濃度は、被処理水のBOD濃度の0.01%以上、好ましくは0.1%以上である。
【0050】
第1処理槽における有用微生物(分散性細菌)の濃度は、被処理水のBOD濃度に対し質量比で10〜100%が好ましい。ただ、有用微生物(分散性細菌)の正確な濃度を求めることは非常に繁雑な作業が必要となるため、一般には、第1処理槽流出水を、0.45μmのフィルターで濾別される固形物の乾燥重量で代用している。
【0051】
以下、本発明の有機性廃水の処理方法について、図1に示した処理フローに基づいて説明する。本発明の有機性廃水の処理方法は、通常の活性汚泥法における活性汚泥処理を、2相の過程に分けて行なう点に特徴がある。
【0052】
図1に示したように、本発明の有機性廃水の処理方法では、有機性汚濁成分を含む被処理水を細菌処理する第1処理槽と、これに続く固着性原生動物処理及び活性汚泥処理を行なう第2処理槽とで2相活性汚泥処理を行なう。現状の活性汚泥処理による有機廃水の処理フローに大きな変更を加えずに、簡便に本発明の有機性廃水の処理方法を組み入れるには、従来の曝気槽を第2処理槽として使用し、別に、細菌処理をするための第1処理槽を設けることが好ましい。勿論、図2に示したように、一体の槽で構成してもよい。
【0053】
この際に使用する第1処理槽としては、従来の生物処理で使用されている、空気又は酸素通気用の曝気管を備えたものを用いることができる。また、固着性原生動物処理に供される活性汚泥が存在する第2処理槽としては、標準型曝気槽、固定床や回転円板型の曝気槽等、従来の活性汚泥処理に用いられている処理槽をいずれも使用できる。
【0054】
本発明において、上記したような第1処理槽への被処理水の供給速度としては、原生動物の出現を制止するため、その処理時間(希釈率)が原生動物の最大比増殖速度以上、通常、1〜12hr.になるように選定することが好ましい。さらに、処理時間(希釈率)によらず、被処理水の温度やpH等の他の因子により原生動物の出現を制止してもよい。また、第1処理槽における細菌処理に続く第2処理槽においては、沈殿槽等から返送されてくる固着性原生動物凝集体からなる汚泥の存在下、曝気処理される。しかし、上記のいずれの場合も、最適処理時間(希釈率)等は、被処理水の種類や処理条件によって変化し、一義的には定めることができないので、適宜に予備実験を行なって定めることが好ましい。さらに、例えば、処理する廃水中の有機物の濃度が比較的高く、所定の処理時間(希釈率)で運転すると、第2処理槽へ導入されてくる細菌の負荷が高くなり過ぎる場合には、所望の処理時間(希釈率)を得るために、外部から希釈水を第2処理槽内に導入することができるように構成してもよい。
【実施例】
【0055】
次に、固定化微生物製剤の製造方法についての検討例、本発明の有機性廃水の処理方法の実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。以下、%とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0056】
<固定化微生物製剤の調製方法>
下記のようにして、本発明で規定する有用微生物を活性を有する良好な状態で固定化する方法について検討を行い、その結果、本発明の固定化微生物製剤の製造方法を見出した。本発明の固定化微生物製剤の製造方法では、有用微生物(分散性細菌)の培養液もしくは有用微生物(分散性細菌)が生息している活性汚泥のいずれについても、固定化の原料(対象物)とすることが可能である。製造例では、固定化の原料(対象物)として、本発明で規定した有用微生物(分散性細菌)が生息している下記の活性汚泥を用いた。
【0057】
製造例の原料には、本発明で規定した有用微生物(分散性細菌)が生息している活性汚泥として、乳製品製造廃水を、2相活性汚泥法の廃水処理設備で長年処理している設備の余剰汚泥を用いた。すなわち、この活性汚泥に生息する微生物の遺伝子解析を実施した結果、シュウドモナス(Pseudomonas)属に属する菌株、アエロモナス(Aeromonas)属に属する菌株、アシネトバクター(Acinetobacter)属に属する菌株、レインヘイメラ(Rheinheimera)属に属する菌株、フラボバクテリウム(Flavobacteriumu)属に属する菌株及びバチルス(Bacillus)属に属する菌株のいずれもが存在することが確認できた。
【0058】
[検討例1]
(水分含有率と膨潤後の固定化強度との関係について)
濃度5000mg/Lの活性汚泥混合液1Lを、濾紙で脱水した後、脱水汚泥の厚みを約5mmに濾紙上に塗り広げ、温度25℃で風力乾燥した。そして、下記のようにして、水分含有率がそれぞれに異なるものを得、下記のようにして試験用試料を得た。
【0059】
25℃の乾燥汚泥について、水分含有率と膨潤後の固定化強度との関係を検討し、表1に得られた結果を示した。この場合、水分含有率が50%以上の汚泥については、カッターで0.5mm〜2mm程度に裁断し、これをそれぞれ試験用試料とした。また、水分含有率が10%及び6%と少ない乾燥汚泥についての評価は、水分含有率が50%程度の汚泥をカッターで0.5mm〜1mmに裁断した後、これを、所定の水分含有率となるまで、それぞれ25℃で風力乾燥して試験用試料にした。なお、汚泥の裁断、粉砕は、半乾燥状態で行ってから乾燥しても、乾燥した後で行ってもいずれでもよい。以上のようにして調製した、表1に示した水分含有率がそれぞれに異なる試験用の試料群を、試料1−aと呼ぶ。
【0060】
また、下記のようにして試料1−bを調製した。上記と同様に、濃度5000mg/Lの活性汚泥混合液1Lを濾紙で脱水した後、脱水汚泥の厚みを約5mmに濾紙上に塗り広げ、脱水汚泥を25℃で風力乾燥した。そして、水分含有率が75%となった時点で通風を止めて、そのまま24時間放置した。その後、さらに、25℃の温度で風力乾燥し、試料1−aで行った試料調製と同様に、表1に示した水分含有率がそれぞれに異なる試験用の試料群を得、これを試料1−bとした。
【0061】
上記のようにして調製した水分含有率が異なる試験用の各試料について、水道水で膨潤させ、膨潤後の試料を用いて下記の基準で固定化強度を評価した。得られた結果を表1に示した。
(評価基準)
××:固定化できず
×:膨潤後、撹拌により分散
△:膨潤後、緩速撹拌では安定しているが、通気に対しては不安定
○:膨潤後、撹拌通気に対しても安定
◎:膨潤後、撹拌通気に対してきわめて安定
【0062】
【0063】
表1に示したように、水分含有率が85%よりも多い汚泥では、脱水による固定化の効果は現れなかった。しかし、水分含有率を85%以下にすることにより、乾燥による固定化の効果が現れるようになった。さらに、水分含有率が50%以下では、表1に示したように、極めて安定な固定化物が得られることが確認された。
【0064】
また、上記で試料を調製する際の条件について、得られる固定化物の固定化強度に及ぼす乾燥処理時の温度の影響について検討した。検討にあたり、25℃、50℃、70℃、100℃のそれぞれの温度で、水分含有率が6%以下になるように乾燥して固定化物を得、得られた固定化物をそれぞれ水道水で膨潤させた。いずれの乾燥汚泥(固定化物)も、通気撹拌に対し十分な固定化強度を有していた。このことから、乾燥処理時の温度は、得られる固定化物の強度に対してはほとんど影響しないことがわかった。この結果は、試料1−aも試料1−bのいずれの場合も同様であった。
【0065】
[検討例2]
<固定化微生物の活性度>
検討例1と同様に、濃度5000mg/Lの活性汚泥混合液1Lを、濾紙で脱水した後、脱水汚泥の厚みを約5mmに濾紙上に塗り広げ、25℃、50℃、70℃、100℃の温度でそれぞれ風力乾燥した。そして、最終的に、水分含有率が5%以下になるまで風力乾燥した。表2に示した試験用の試料群を、試料2−aと呼ぶ。
【0066】
また、下記のようにして試料2−bを調製した。試料2−aの調製と同様に、濃度5000mg/Lの活性汚泥混合液1Lを濾紙で脱水した後、脱水汚泥の厚みを約5mmに濾紙上に塗り広げ、脱水汚泥を、25℃、50℃、70℃、100℃の各温度で風力乾燥した。試料2−aの調製では、水分含有率が75%となった時点で通風を止めて、そのまま24時間放置し、その後、さらに、それぞれ当初と同じ温度で風力乾燥し、水分含有率が5%以下まで風力乾燥した。
【0067】
上記で調製した固定化微生物である試料2−a及び試料2−bをそれぞれ水道水で膨潤させ、膨潤後の粒子径で2mm以下になるように、裁断、粉砕した。この膨潤させて粉砕して得た固定化物をそれぞれ使用して、原料に用いた活性汚泥を採取した廃水処理設備の乳業加工廃水に対する生物処理活性について検討を行い、その結果を表2に示した。
【0068】
表2に示したように、100℃で乾燥し、固定化した活性汚泥は完全に活性を失っていた。しかし、25℃で乾燥した固定化汚泥は、乾燥後の水分含有率がわずか5%にまで低下しているにもかかわらず、膨潤後にもとの活性の50%程度の活性を保持していることがわかった。この場合の乾燥した固定化汚泥の膨潤後のみかけの汚泥濃度は150,000mg/lと、もとの活性汚泥の濃度(10,000mg/L)の15倍を示すことから反応容積当たりの最大処理活性は、7倍以上となる。また、表2に示したように、50℃で乾燥処理した場合には活性の低下が大きく、もとの汚泥の20%程度、70℃では10%程度となってしまう。しかし、それでも汚泥濃度を高くとれることから、固定化汚泥の最大処理活性は通常の汚泥の1.5〜3倍以上となる。
【0069】
以上の結果から、固定化汚泥の活性を良好に保持させるためには、乾燥処理温度は少なくとも70℃以下で行う必要があること、好ましくは、25℃程度の比較的低い温度で行ったほうがよいことが確認できた。また、0℃以下で凍結乾燥することも、微生物の活性度を低下させない方法として有効である。上記のことは、試料2−aについても試料2−bについても同様の傾向を示した。しかし、表2に示したように、TOC除去活性度は、再乾燥を行った試料2−bの方が高く、良好な結果となった。表2中のTOC除去活性度(%)は、固定化処理を行っていない活性汚泥のTOC除去速度に対する固定化汚泥のTOC除去速度の比率である。
【0070】
【0071】
次に、乾燥工程が異なる試料2−a及び試料2−bの固定化汚泥について、下記のようにして、TOC除去活性度の経日変化を比較した。具体的には、試料2−a及び試料2−bともに、乾燥温度が50℃、乾燥後の含水率が3%の固定化汚泥を使用した。TOC除去活性度の経日的な変化を180日間にわたって調査した。保存は、スリ蓋付き広口ガラス瓶に固定化微生物を入れ、蓋をして室温(15〜25℃)の暗所にて保管した。結果を表3に示した。
【0072】
【0073】
表3に示したように、180日後のTOC除去活性度は、試料2−aでは9%、試料2−bでは15%となり、再乾燥を行った試料2−bの方が保存安定性の高いことがわかった。
【0074】
[実施例1〜5]
図1に示したフローに従って建設した、500リットル/day規模のパイロットプラントを使用して、原水である有機性汚濁成分を含む被処理水の活性汚泥処理を行った。下記の表4に、原水(第1処理槽へ導入された被処理水)の性状を示した。原水には、有機汚濁成分濃度の変動が著しい乳製品加工工場からの有機性廃水を用いた。
【0075】
【0076】
そして、細菌処理を行なう第1処理槽として、実容量が100リットルの大きさの空気の曝気管を備えたものを用い、また、溶存酸素が1.5mg/Lとなるようにエアレーションを行なって稼働させた。また、第1処理槽への被処理水の供給速度は、処理時間(希釈率)が4時間になるようにし、その際の処理温度を20℃とした。
【0077】
そして、実施例1では、第1処理槽へ、シュウドモナス(Pseudomonas)属に属する菌株を含んでいることが確認されている活性汚泥を乾燥重量換算で50g添加した。実施例2では、第1処理槽へ、先に説明した試料2−aにおいて、50℃で乾燥して作製した有用微生物の固定化微生物製剤である固定化汚泥を50g添加した。実施例3では、第1処理槽へ、実施例2で添加した固定化汚泥40gに加えて、表5に元素組成を示す下水処理場汚泥の焼却灰を10g添加した。実施例4では、第1処理槽へ、実施例3で使用した下水処理場汚泥の焼却灰に変えて、表5に示す下水処理場汚泥の焼却灰と、マグネシウム、イオウ、鉄の含有量が同じになるように硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化第1鉄、を混合して調整した水懸濁溶液を添加した。実施例5では、第1処理槽へ、再乾燥をする試料2−bにおいて50℃で乾燥して作製した有用微生物の固定化微生物製剤である固定化汚泥を40gと、表5に元素組成を示した下水処理場汚泥の焼却灰を10g添加した。
【0078】
実施例1〜5では、上記したように第1処理槽へ有用微生物等をそれぞれ投入した以外は、図1に示したフローに従って有機性廃水の処理を行った。実施例における運転では、第1処理槽へ導入する被処理水中のBODで示される有機汚濁成分濃度が、800〜3,500mg/Lの間で変動し、平均2,500mg/Lであった。
【0079】
【0080】
実施例における運転では、上記した第1処理槽で細菌処理された第1処理水を導入し、固着性原生動物処理する第2処理槽として、実容量400リットルの大きさの曝気槽を用い、処理した。また、この第2処理槽には、原生動物用支持担体として、活性汚泥を3,000mg/Lを添加した。そして、上記の第1及び第2処理槽の構成の2相活性汚泥処理試験を開始した。試験は、図1に示したように、第2処理槽で処理されて得られた第2処理水を沈殿槽に導入して固液分離し、その上澄み水を処理水として採集した。得られた結果を表6及び図3に示した。
【0081】
[比較例1、2]
比較例では、実施例と同じ500リットル/day規模の2相活性汚泥法のパイロットプラントを使用して、実施例と同様の運転条件にて、原水には実施例と同様の表4に示す乳製品加工工場からの有機性廃水を用いて、有機性廃水の処理を行った。比較例1では、第1処理槽へ、バチルス(Bacillus)属に属する菌株のみを主成分として構成する市販の微生物製剤(日鉄住金環境社製、商品名:バイオコアOF−10)を50g添加した。また、比較例2では、第1処理槽へ、比較例1と同じ微生物製剤を40gに加え、前記した表5に元素組成を示した下水処理場汚泥の焼却灰を10g添加した。
【0082】
第2処理槽の運転条件は実施例と全く同じ条件とし、第1処理槽に投入する微生物製剤の種類以外は実施例と同様にして、2相活性汚泥処理試験を行った。得られた結果を、表6及び図3に示した。
【0083】
【0084】
表6及び図3に示したとおり、処理水の水質は、実施例1〜5とも、比較例1及び2の処理で得た処理水と比べて、はっきりと水質の向上が認められた。特に、実施例3と4、さらに実施例5の処理では、処理の立ち上がりの早さが顕著で、良好な処理性が認められた。このような実施例と比べ、比較例1、2の処理では、微生物の馴養に時間を要し、処理の立ち上がりが遅く且つ処理水の水質が劣った結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、2相活性汚泥法を利用した有機性廃水の処理方法で、処理開始から短期間で汚泥の馴養ができ、速やかに安定且つ高度な処理水質を得ることができる有機性廃水の処理方法が提供される。
【要約】
【課題】2相活性汚泥法を利用した有機性廃水の処理方法において、効果的な処理をより安定してできるようになる新たな構成を見出すこと、その際に利用できる有用な固定化微生物製剤の提供。
【解決手段】第1処理槽と第2処理槽とを用いて処理する2相活性汚泥法を利用し、第1処理槽に、シュウドモナス(Pseudomonas)属に属する菌株、アエロモナス(Aeromonas)属に属する菌株、アシネトバクター(Acinetobacter)属に属する菌株、レインヘイメラ(Rheinheimera)属に属する菌株、フラボバクテリウム(Flavobacteriumu)属に属する菌株及びバチルス(Bacillus)属に属する菌株からなる群より選ばれる有用微生物を2種以上投入することを特徴とする有機性廃水の処理方法。
【選択図】なし
図1
図2
図3