(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スポット形状が細長形状である前記レーザ光の前記スポット形状の短手方向の長さに対する長手方向の長さの割合は、4〜1000である、請求項1〜請求項5の何れか1つに記載の積層造形装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0019】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る積層造形装置は、不活性ガスが充満されるチャンバ1内に粉体層形成装置3が設けられる。
【0020】
粉体層形成装置3は、造形領域Rを有するベース台4と、ベース台4上に配置され且つ水平1軸方向(矢印B方向)に移動可能に構成されたリコータヘッド11とを備える。造形領域Rには、上下方向(
図1の矢印A方向)に移動可能な造形テーブル5が設けられる。積層造形装置の使用時には、造形テーブル5上に造形プレート7が配置され、その上に材料粉体層8が形成される。また、所定の照射領域は、造形領域R内に存在し、所望の三次元造形物の輪郭形状で囲繞される領域とおおよそ一致する。
【0021】
造形テーブル5の周りには、粉体保持壁26が設けられる。粉体保持壁26と造形テーブル5とによって囲まれる粉体保持空間には、未焼結の材料粉体が保持される。
図1においては不図示であるが、粉体保持壁26の下側には、粉体保持空間内の材料粉体を排出可能な粉体排出部が設けられてもよい。かかる場合、積層造形の完了後に造形テーブル5を降下させることによって、未焼結の材料粉体が粉体排出部から排出される。排出された材料粉体は、シューターガイドによってシューターに案内され、シューターを通じてバケットに収容されることになる。
【0022】
リコータヘッド11は、
図2〜
図4に示すように、材料収容部11aと材料供給部11bと材料排出部11cとを有する。
材料収容部11aは材料粉体を収容する。なお、材料粉体は、例えば金属粉(例:鉄粉)であり、例えば平均粒径20μmの球形である。材料供給部11bは、材料収容部11aの上面に設けられ、不図示の材料供給装置から材料収容部11aに供給される材料粉体の受口となる。材料排出部11cは、材料収容部11aの底面に設けられ、材料収容部11a内の材料粉体を排出する。なお、材料排出部11cは、リコータヘッド11の移動方向(矢印B方向)に直交する水平1軸方向(矢印C方向)に延びるスリット形状である。
【0023】
また、リコータヘッド11の両側面には、ブレード11fb、11rbとリコータヘッド供給口11fsとリコータヘッド排出口11rsとが設けられる。ブレード11fb、11rbは、材料排出部11cから排出された材料粉体を平坦化させて材料粉体層8を形成する。リコータヘッド供給口11fs及びリコータヘッド排出口11rsは、リコータヘッド11の移動方向(矢印B方向)に直交する水平1軸方向(矢印C方向)に沿ってそれぞれ設けられ、不活性ガスの供給及び排出を行う(詳細は後述)。本明細書において、「不活性ガス」とは、材料粉体と実質的に反応しないガスであり、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が例示される。
【0024】
チャンバ1の上方にはレーザ光源42が設けられる。
図1、
図5に示すように、レーザ光源42は、光ケーブル42aを通じ光コネクタ43aを介してホルダ43と接続されている。光コネクタ43aの先端からレーザ光Lが射出されるので、
図5では光コネクタ43aの先端をレーザ光射出端43bとして表記している。
【0025】
ホルダ43は、その内部においてレーザ光Lがコリメータ44と光学処理ユニット45と保護ガラス45aとカバーユニット70における不活性ガス供給カバー71とを通り、造形領域R上に撒布された材料粉体層8を焼結するように、チャンバ1内の上部から造形領域Rに向かって延びるように構成される。ホルダ43は駆動装置65により、造形領域R上の任意の位置に移動可能である。コリメータ44は、レーザ光Lを平行光にする。光学処理ユニット45は、レーザ光Lの照射スポットの形状等を制御する。光学処理ユニット45及びカバーユニット70については後に詳述するものとする。
【0026】
以上のような構成によれば、レーザ光Lはホルダ43の直下方向に照射される。そのため、ホルダ43を駆動装置65によって所望の位置に移動させることで、所望の位置にレーザ光Lを照射することができる。すなわち、ホルダ43及び駆動装置65は、レーザ光Lを走査する走査部として機能する。
【0027】
レーザ光Lは、材料粉体を焼結可能なものであればその種類は限定されず、例えば、CO
2レーザ、ファイバーレーザ、YAGレーザなどである。
【0028】
ホルダ43の下側にはカバーユニット70が設けられる。ホルダ43の高さを制御することで、カバーユニット70の先端が造形領域Rに近接可能に構成され、当該先端は開口している。カバーユニット70は、不活性ガス供給カバー71とヒューム吸引カバー72から成る2つのカバーを有し、それらの開口部73(それぞれ吐出口71b及び吸引口72bと称する。)が略隣接するように構成される。
図5に示す例においては、不活性ガス供給カバー71とヒューム吸引カバー72とが一体となって構成されている。
【0029】
不活性ガス供給カバー71は、その内部に不活性ガスを供給する供給口としてカバーユニット供給口71aを有する。カバーユニット供給口71aは、後述する不活性ガス供給装置15と接続され、清浄な不活性ガスが不活性ガス供給カバー71の内部に細孔71cを介して流れ込むように構成される。不活性ガス供給カバー71の内部は、光学処理ユニット45と保護ガラス45aを介して空間的に隔てられており、保護ガラス45aは、レーザ光Lを透過させつつもヒュームを含んだ不活性ガスの上部への流入を防止する。例えば、レーザ光Lがファイバーレーザ又はYAGレーザの場合、保護ガラス45aは石英ガラスで構成可能である。
【0030】
ヒューム吸引カバー72は、その吸引口72bが不活性ガス供給カバー71における吐出口71bと略隣接するように設けられている。また、ヒューム吸引カバー72は、その内部がホルダ43の側面へと向かうように設けられ、当該側面にはカバーユニット排出口72aが設けられている。カバーユニット排出口72aは、ダクトボックス21を介して後述するヒュームコレクタ19と接続され、ヒュームを含んだ不活性ガスがヒューム吸引カバー72の内部に流れ込むように構成される。
【0031】
次に、不活性ガス給排系統について説明する。不活性ガス給排系統は、チャンバ1に設けられる複数の不活性ガスの供給口及び排出口と、各供給口及び各排出口と不活性ガス供給装置15及びヒュームコレクタ19とを接続する配管を含む。本実施形態では、リコータヘッド供給口11fs、チャンバ供給口1b、副供給口1e、及びカバーユニット供給口71aを含む供給口と、チャンバ排出口1c、リコータヘッド排出口11rs、及びカバーユニット排出口72aとを含む排出口とを備える。
【0032】
リコータヘッド供給口11fsは、チャンバ排出口1cの設置位置に対応してチャンバ排出口1cに対面するように設けられる。好ましくは、リコータヘッド供給口11fsは、リコータヘッド11が不図示の材料供給装置の設置位置に対して所定の照射領域を挟んで反対側に位置しているときにチャンバ排出口1cと対面するように、矢印C方向に沿ってリコータヘッド11の片面に設けられる。
【0033】
チャンバ排出口1cは、チャンバ1の側板にリコータヘッド供給口11fsに対面するように所定の照射領域から所定距離離れて設けられる。また、チャンバ排出口1cに接続するように不図示の吸引装置が設けられるとよい。当該吸引装置は、レーザ光Lの照射経路からヒュームを効率よく排除することを助ける。また、吸引装置によってチャンバ排出口1cにおいて、より多くの量のヒュームを排出することができ、造形空間1d内にヒュームが拡散しにくくなる。
【0034】
チャンバ供給口1bは、ベース台4の端上に所定の照射領域を間に置いてチャンバ排出口1cに対面するように設けられる。チャンバ供給口1bは、リコータヘッド11が所定の照射領域を通過してリコータヘッド供給口11fsが所定の照射領域を間に置かずにチャンバ排出口1cに直面する位置にあるとき、リコータヘッド供給口11fsからチャンバ供給口1bに選択的に切り換えられて開放される。そのため、チャンバ供給口1bは、リコータヘッド供給口11fsから供給される不活性ガスと同じ所定の圧力と流量の不活性ガスをチャンバ排出口1cに向けて供給するので、常に同じ方向に不活性ガスの流れを作り出し、安定した焼結を行える点で有利である。
【0035】
リコータヘッド排出口11rsは、リコータヘッド11のリコータヘッド供給口11fsが設けられている片面に対して反対側の側面に、矢印C方向に沿って設けられる。リコータヘッド供給口11fsから不活性ガスを供給できないとき、換言すれば、チャンバ供給口1bから不活性ガスを供給するときに、所定の照射領域のより近くで不活性ガスの流れを作り出していくらかのヒュームを排出するので、ヒュームをより効率よくレーザ光Lの照射経路から排除することができる。
【0036】
また、本実施形態の不活性ガス給排系統は、チャンバ排出口1cに対面するようにチャンバ1の側板に設けられヒュームコレクタ19から送給されるヒュームが除去された清浄な不活性ガスを造形空間1dに供給する副供給口1eと、カバーユニット70における不活性ガス供給カバー71の内部に不活性ガスを供給するカバーユニット供給口71aと、ヒューム吸引カバー72を介してヒュームを多く含む不活性ガスを排出するカバーユニット排出口72aとを備える。
【0037】
チャンバ1への不活性ガス供給系統には、不活性ガス供給装置15と、ヒュームコレクタ19が接続されている。不活性ガス供給装置15は、不活性ガスを供給する機能を有し、例えば、周囲の空気から窒素ガスを取り出す膜式窒素セパレータを備える装置である。本実施形態では、
図1に示すように、リコータヘッド供給口11fs、チャンバ供給口1b、及びカバーユニット供給口71aと接続される。
【0038】
ヒュームコレクタ19は、その上流側及び下流側にそれぞれダクトボックス21、23を有する。チャンバ1から排出されたヒュームを含む不活性ガスは、ダクトボックス21を通じてヒュームコレクタ19に送られ、ヒュームコレクタ19においてヒュームが除去された清浄な不活性ガスがダクトボックス23を通じてチャンバ1の副供給口1eへ送られる。このような構成により、不活性ガスの再利用が可能になっている。
【0039】
ヒューム排出系統として、
図1に示すように、チャンバ排出口1c、リコータヘッド排出口11rs及びカバーユニット排出口72aとヒュームコレクタ19とがダクトボックス21を通じてそれぞれ接続される。ヒュームコレクタ19においてヒュームが取り除かれた後の清浄な不活性ガスは、チャンバ1へと返送され再利用される。
【0040】
なお、上記不活性ガス給排系統はあくまでも例示でありこれに限るものではないが、特に、不活性ガス供給系統がホルダ43に設けられるカバーユニット70において不活性ガス供給カバー71が備えるカバーユニット供給口71aと接続されており、ヒューム排出系統はホルダ43に設けられるカバーユニット70において不活性ガス供給カバー71が備えるカバーユニット排出口72aと接続されている。
【0041】
図5に示すように、カバーユニット供給口71aに不活性ガスを供給することによって、不活性ガスは、不活性ガス供給カバー71を通り吐出口71bから造形空間1d(特に造形領域R)に向けて吐出される。これによって不活性ガス供給カバー71の内部をヒュームの無い清浄な状態に保つことができる。その結果、不活性ガス供給カバー71の内部を通過するレーザ光Lがヒュームに遮断されることなく材料粉体層8に照射されることとなる。好ましくは、カバーユニット供給口71aに供給される不活性ガスは、他の供給口から供給される不活性ガスの圧力よりも若干高い(例えば5%以上高い)圧力に設定されるとよい。これにより、不活性ガス供給カバー71の内部から造形空間1dへ向かう気流が形成されやすくなる。また、不活性ガス供給カバー71の内部を特に清浄に保つために、吐出口71bへ向かう気流の流速を材料粉体を巻き上げない程度に速めることが好ましい。そのために、不活性ガス供給カバー71の断面が上部から下部に向かって断面が小さくなる構造であることが好ましい。加えて、吐出口71bの径は、細長形状のレーザ光Lのスポット形状の長手方向の長さの2〜20倍程度の大きさであることが好ましい。なお、
図5に示すホルダ43及びカバーユニット70の断面の形状及び構成はあくまでも例示でありこの限りではない。
【0042】
本実施形態では、ヒュームコレクタ19からの不活性ガスが副供給口1eに送られ、不活性ガス供給装置15からの不活性ガスがリコータヘッド供給口11fs、チャンバ供給口1b、及びカバーユニット供給口71aに送られるように構成されている。ヒュームコレクタ19からの不活性ガス中には除去しきれなかったヒュームが残留するおそれがあるが、本実施形態の構成では、ヒュームコレクタ19からの不活性ガスが特に高い清純度が要求される空間(不活性ガス供給カバー71の内部及び造形領域R近傍の空間)に供給されないので、残留ヒュームの影響を最小限にすることができる。また、不活性ガス供給装置15からの不活性ガスの供給圧力を、ヒュームコレクタ19からの不活性ガスの供給圧力よりも高くすることによって、ヒュームコレクタ19からの不活性ガスが不活性ガス供給カバー71の内部及び造形領域R近傍の空間に近づくことが抑制され、残留ヒュームの影響が更に効果的に抑制される。
【0043】
上述の通り、不活性ガス供給カバー71の内部にレーザ光Lの照射経路があり、かかるレーザ光Lの照射により材料粉体層8が焼結され焼結層8fが形成される。このときにヒュームが発生する。本実施形態では、不活性ガス供給カバー71における吐出口71b及びヒューム吸引カバー72の吸引口72bは略隣接しており、且つ駆動装置65によってホルダ43を下降させヒューム吸引カバー72の吸引口72bを造形領域Rに極力近接させることができる。これによって、レーザ光Lの照射に伴い発生したヒュームを従来技術に比しても明らかに近い位置で吸引することができる構成となっている。
【0044】
更に、
図5に示すように、不活性ガス供給カバー71の吐出口71bは、カバーユニット70の造形方向側に設けられ、ヒューム吸引カバー72の吸込口72bは、カバーユニット70の反造形方向側に設けられることが好ましい。かかる構成であれば、造形方向と逆方向に気流が形成されるため、吐出口71bから吐出され発生したヒュームを回収し吸引口72bへと運ぶ不活性ガスの気流がより効果的に形成できる。さらには、造形中に吸込口72bが既にレーザ光Lが照射された焼結層の上に位置することになるため、吸引口72bから不用意に材料粉体が吸引されることを防止することができる。このような構成にするために、カバーユニット70が固設される場合は、造形方向を一定にすればよい。或いは、カバーユニット70を回転可能に構成し、造形方向に応じて吐出口71b、吸込口72bの位置を変更してもよい。
【0045】
ここで、造形方向について説明する。レーザ光Lによる焼結層の形成にあたっては、
図6(a)に示すように、各材料粉体層8毎の照射領域を所定の長さ毎に分割し、分割された各分割領域毎にレーザ光Lをラスタ走査させ焼結層を形成することを繰り返し、照射領域と対応する所望の焼結層を形成する。ここでは、照射領域を各分割領域に分割する幅を分割幅、分割幅に係る方向に直交し各分割領域において徐々に焼結層が形成されていく方向を造形方向と呼ぶ。なお、
図6(a)における矢印はある分割領域におけるレーザ光Lの照射経路の一例を示している。
【0046】
図7には、各分割領域毎のレーザ光Lの照射経路が例示される。
図7(a)は、長手方向が分割幅の長さと一致する横長形状(本例では角丸長方形状)のスポット形状を有するレーザ光Lを利用した例で、造形方向がレーザ光Lの走査方向と一致している。
図7(b)及び
図7(c)は、略円状のスポット形状を有するレーザ光Lを利用した例であり、分割幅と同じ長さの直線走査経路が並列に配列され、造形方向に沿って各直線走査を連続的に行う。かかる場合は、造形方向と各直線走査の方向とが直交する。なお、
図7に示すレーザ光Lの照射経路において、実線部はレーザ光Lの照射がONの状態であることを、点線部はレーザ光Lの照射がOFFの状態であることをそれぞれ示す。
【0047】
ある照射領域に係る焼結層の形成を同じ造形時間で行うにあたって、
図7(a)に示されるように細長形状のスポット形状を有するレーザ光Lを用いた場合と、
図7(b)及び
図7(c)に示されるように略円形状のスポット形状を有するレーザ光Lを用いた場合とでは、前者の方が走査速度は低速でよい。換言すれば、
図7(b)及び
図7(c)に示されるような略円形状のスポット形状を有するレーザ光Lを用いた積層造形方法における各直線走査は、背景技術においても述べたように造形時間を短くするために可能な限り高速で走査されることが望ましく、一般にガルバノスキャナに代表される高速走査が可能である光偏向器によってレーザ光Lが走査される。一方、
図7(a)に示されるように細長形状のレーザ光Lを造形方向に沿って走査させる場合は、従来の構成に比して走査速度は低速でよいため、一般に高価であるガルバノスキャナに代表される高速走査可能なレーザ光走査装置が不要である。そこで、本実施形態では、細長形状のレーザ光Lを用い、レーザ光射出端43bを駆動装置65によって所望の照射位置に移動させることでレーザ光Lの照射を行う。これについては、光学処理ユニット45の説明において再度詳細に説明する。また、細長形状のスポット形状を有するレーザ光Lを用いれば、比較的低エネルギ密度のレーザ光Lによって時間をかけて材料粉体を焼結させることができるので、異常焼結部や鬆等の発生を抑制し、安定した造形を行うことができる。
【0048】
なお、焼結層の形成にあたっては、各分割領域を造形方向に沿ってさらに分割してもよい。ここでは例として、
図6(b)に示すように、ある分割領域を分割領域α、分割領域β、分割領域γに分割する。このとき、更に分割された分割領域の焼結は、例えば分割領域α、分割領域γ、分割領域βの順に行われる等、隣接した各分割領域の焼結は必ずしも連続して行われなくてもよい。また、照射領域の周縁部はベクトル走査により焼結層を形成してもよい。なお、ベクトル走査を行うときは例外的に走査方向と造形方向は同一方向であると定義する。
【0049】
図5に示すように、光学処理ユニット45は、スポット形状変換光学系45bとスポット形状変換光学系45bを回転させるスポット形状回転機構とを有する。スポット形状変換光学系45bとしては、例えば、マイクロレンズアレイや回折格子を用いればよい。マイクロレンズアレイとは、レンズがアレイ状に配列した光学素子であり、入射したレーザ光Lがアレイの数だけ分割され且つそれぞれの光が重ね合わさることで略一様な強度分布を有するレーザ光Lを形成することができる。回折格子を用いても同様に入射したレーザ光Lが分割され、それぞれの光が重ね合わさることで略一様な強度分布を有するレーザ光Lを形成することができる。スポット形状回転機構は、例えばダイレクトドライブ式の回転機構であってもよいし、ベルト等を介して回転させる機構であってもよい。
図8にスポット形状回転機構によりスポット形状を回転させた場合の概略を示す。このように、例えば回転角のステップは45度である。これに限らず、回転角のステップを例えば、5、10、15、30、60、90度等として実施してもよい。
【0050】
また、
図9に示すように、スポット形状変換光学系45bが複数種類用意され、これらを選択することができるような照射ヘッド45dが構成されている。
図9(a)においては照射ヘッド45dが並進移動することによりスポット形状変換光学系45bが選択される。或いは、
図9(b)に示すように、回転によりスポット形状変換光学系45bが選択される構成でもよい。またこれらに限定されるものではなく、不図示ではあるが、所定の交換用アームが設けられ、これによりスポット形状変換光学系45bが照射ヘッド45dとともに交換されるような構成であってもよい。後に例を用いて説明するが、これらスポット形状は、照射位置の形状等によって使い分けることが好ましい。
【0051】
スポット形状変換光学系45bの1つは、レーザ光射出端43bより射出され且つコリメータ44により平行光となった略円形状のスポット形状を有するレーザ光L(以後、第1レーザ光L1と称する。)を、そのスポット形状が細長形状(本例では角丸長方形状であるが、長手方向に亘って略一様な強度分布を有するものであればよく、例えば長方形状でもよい。)であるレーザ光L(以後、第2レーザ光L2と称する。)に変換する。
図10に、かかるスポット形状を示す。短手方向の長さaに対する長手方向の長さbの割合は、好ましくは4〜1000であり、より好ましくは30〜200である。このような範囲であれば、
図5(a)に示すような走査をするにあたり、造形の際に生じる鬆等の低品質の原因を極力抑制しより高品質な造形を実現することができる。
【0052】
高品質な造形を実現させるために、スポット形状に関して、
図10に示すように、材料粉体を焼結する程度のエネルギを有しつつ強度分布が長手方向に亘って略一様であるように実施される。一方、短手方向の強度分布は、略一様でなくとも対称性があるものならばよく、例えばガウシアン分布でよい。なお、本願発明において略一様な強度分布を有するレーザ光Lとは、単にエネルギの大きさが均一なレーザ光Lのみではなく、照射位置の材料粉体の温度上昇が実質的に一様になるよう構成されたレーザ光Lを含んでいう。
【0053】
図11に、本実施形態の積層造形装置によるレーザ光Lの走査方法の例を示す。
図11(a)、
図11(b)及び
図11(c)には、照射領域の周縁部(分割幅方向の両端)においては第2レーザ光L2をベクトル走査し、残りの照射領域に対しては、先に説明した通り、所定の分割幅に分割された分割領域毎に第2レーザ光L2を一定の方向にラスタ走査し帯状に材料粉体層8を焼結させることを繰り返し、所望の焼結層を形成する態様が順に示されている。このような構成であれば、レーザ光Lのスポットの重なりを極力少なくして造形することができるため焼結状態が安定し、より高品質の造形物を得ることができる。また、
図11(d)、
図11(e)及び
図11(f)には、
図11(a)、
図11(b)及び
図11(c)とは別方向に走査を行う態様が順に示されている。このように、照射領域の形状等に応じて第2レーザ光L2の造形方向(走査方向)は任意に決定される。そのため、造形方向に対し、第2レーザ光L2のスポット形状の長手方向が垂直になるよう、造形方向に応じてスポット形状回転機構によってスポット形状の向きが調整される。
【0054】
また
図11(d)、
図11(e)及び
図11(f)では、第2レーザ光L2での造形に適さない狭隘部、すなわち第2レーザ光L2のスポット形状に比して焼結すべき形状が小さい又は微細である部分に対しては、第2レーザ光L2を他のスポット形状を有するレーザ光L(ここでは略円形状のスポット形状を有する第1レーザ光L1)に切り替えて照射していることが示されている。このように照射位置の形状等によってスポット形状を使い分けることで、より高品質な造形を実現することができる。なお、レーザ光Lの切替に応じてそれぞれのレーザ光Lによる造形に適したレーザ強度に設定されることが望ましい。
【0055】
また、レーザ光Lの走査方法の他の例として、下記のような走査も可能である。まず、
図6(b)で説明したように、各分割領域を造形方向に沿って所定の長さ毎にさらに分割し、碁盤目状の分割領域を設定する。そして、縦、横方向に隣接する分割領域に対する照射を連続して行わないように走査する。例えば、
図12(a)に示すように、造形方向に対して斜め一方向に隣接する分割領域を順に第2レーザ光L2で焼結する。そして、
図12(b)に示すように、先に焼結された分割領域の続きを焼結するように、造形方向に対して斜め一方向に隣接する分割領域を順に第2レーザ光L2で焼結することを繰り返す。このようにレーザ光Lを走査すると、焼結後の冷却時に焼結層に発生する応力を緩和しながら造形することとなるので、造形物に反りが生じることを抑制することができる。また、焼結に際して生じた熱が周囲に伝播し材料粉体層8が焼結時に過剰に加熱されていると、鬆や異常焼結部等の焼結不良の発生、品質の低下、ヒュームの発生等の諸問題が起こりやすくなる。このようなレーザ光Lの走査では、焼結による熱が伝播しやすい縦、横方向に隣接する分割領域に対して連続して照射を行わないので、熱の影響による諸問題を抑制することができる。なお、分割領域毎の造形方向は一致していなくてもよい。例えば、ある分割領域における造形方向と該分割領域と縦、横方向に隣接する分割領域における造形方向とが、垂直に交わるよう設定されてもよい。
【0056】
なお、
図11、
図12においてはレーザ光Lのスポット形状を連続的に並べることで、レーザ光Lの照射経路や、照射位置に応じた使い分けを概略的に示している。実際は、レーザ光Lは造形方向に走査されながら連綿と照射されている。
【0057】
本発明に係るレーザ光Lの走査方法は以上に示した例に限定されるものではない。例えば、造形領域の周縁部においては第1レーザ光L1をベクトル走査し、残りの造形領域において第2レーザ光L2をラスタ走査してもよい。また、複数方向の造形方向の走査を組み合わせて1層の焼結層を形成してもよい。或いは、焼結層毎に造形方向を変えてもよい。具体的に例示した以外にも本発明の意義を損ねない範囲で種々の走査方法が採用可能であり、当然以上に示した例は互いに組み合わせ可能である。
【0058】
更に、レーザ光Lは、パルスレーザであることが好ましい。すなわち、レーザ光Lは焼結層の形成にあたり所定のパルス幅で高速にオン/オフを切り替えられながら走査される。好適には、パルス幅(オン時間)は1m秒から10m秒、オフ時間は0.1m秒から50m秒の範囲に設定される。これにより、熱的影響を抑えた造形ができ、材料粉体層8の焼結状態を安定させることができる。もちろんこれに限定されるものではなく、レーザ光Lは連続波レーザであってもよい。
【0059】
次に、
図1及び
図13〜
図16を用いて、上記の積層造形装置を用いた積層造形方法について説明する。なお、
図13〜
図16では、視認性を考慮して
図1においては図示した構成要素の一部を省略している。
【0060】
まず、造形テーブル5上に造形プレート7を載置した状態で造形テーブル5の高さを適切な位置に調整する(
図13)。この状態で材料収容部11a内に材料粉体が充填されているリコータヘッド11を
図1の矢印B方向に造形領域Rの左側から右側に移動させることによって、造形プレート7上に1層目の材料粉体層8を形成する(
図14)。なお、
図13、
図14に示すように、リコータヘッド11を移動させる際は、リコータヘッド11とホルダ43との物理的干渉を防止するために、ホルダ43を退避位置(図中右上)に退避させている。
【0061】
続いて、
図15に示すように、ホルダ43が退避位置から照射位置に移動し、材料粉体層8中の所定部位にレーザ光Lを照射して材料粉体層8のレーザ光照射部位を焼結させることによって、1層目の焼結層81fを得る。この焼結の際に発生するヒュームは、主に、ヒューム吸引カバー72の吸引口72bから吸引され、カバーユニット排出口72aを通じて排出される。
【0062】
続いて、造形テーブル5の高さを材料粉体層8の1層分下げ、リコータヘッド11を造形領域Rの右側から左側に移動させることによって、焼結層81f上に2層目の材料粉体層8を形成する。リコータヘッド11の移動中もリコータヘッド排出口11rsでヒュームが吸引される。この際のヒューム吸引は、ヒューム発生部位に非常に近い位置で行われるので特に効果的である。
【0063】
続いて、材料粉体層8中の所定部位にレーザ光Lを照射することによって材料粉体層8のレーザ光照射部位を焼結させることによって、
図16に示すように、2層目の焼結層82fを得る。この焼結の際に発生するヒュームは、主に、ヒューム吸引カバー72の吸引口72bから吸引され、カバーユニット排出口72aを通じて排出される。
【0064】
以上の工程を繰り返すことによって、3層目以降の焼結層が形成される。隣接する焼結層は、互いに強く固着される。
【0065】
必要数の焼結層を形成した後、未焼結の材料粉体を除去することによって、造形した焼結体を得ることができる。この焼結体は、例えば樹脂成形用の金型として利用可能である。
【0066】
本発明は、以下の態様でも実施可能である。
第1に、チャンバ1内にスピンドルを有する加工ヘッドを備えてもよい。かかる場合、所定数(例:10層)の焼結層を形成する度に造形物に対して切削加工を行うことができる。なお、加工ヘッドの駆動軸はホルダ43の駆動装置65の駆動軸と一部又は全部が共通であってもよいし、別個に設けてもよい。或いは、ホルダ43が加工ヘッドの機能を兼ねてもよい。
【0067】
第2に、リコータヘッド11に代えて、ホルダ43が材料供給装置及び材料粉体を均すブレードを備えてもよい。かかる場合、リコータヘッド11とホルダ43との物理的な干渉を考慮する必要がない。
【0068】
第3に、ホルダ43及び駆動装置65に代えて、例えば回転式の単軸ミラーを走査部として用いてもよい。本願発明ではレーザ光Lの走査に高速性が要求されないので、種々の走査装置を採用可能である。
【0069】
第4に、スポット形状変換光学系45bを用いずに直接スポット形状が細長形状のレーザ光Lを照射するように実施してもよい。