特許第6490787号(P6490787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6490787ガス絶縁された器具を備える電気装置、特にガス絶縁されたトランスまたはリアクタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490787
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】ガス絶縁された器具を備える電気装置、特にガス絶縁されたトランスまたはリアクタ
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/20 20060101AFI20190318BHJP
   H01F 27/12 20060101ALI20190318BHJP
   H01F 27/08 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   H01F27/20
   H01F27/12 Z
   H01F27/08 153
【請求項の数】26
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-500979(P2017-500979)
(86)(22)【出願日】2014年7月10日
(65)【公表番号】特表2017-523608(P2017-523608A)
(43)【公表日】2017年8月17日
(86)【国際出願番号】EP2014064869
(87)【国際公開番号】WO2016004999
(87)【国際公開日】20160114
【審査請求日】2017年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルグスブロム,マレナ
(72)【発明者】
【氏名】プラドハン,マノジ
(72)【発明者】
【氏名】ザンノル,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】シングハ,サンタヌ
(72)【発明者】
【氏名】シュネツ,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】シュタインメッツ,トルステン
(72)【発明者】
【氏名】バンダパレ,ベンカテスル
【審査官】 五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−135338(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/053661(WO,A1)
【文献】 特開昭61−180406(JP,A)
【文献】 特開昭57−152111(JP,A)
【文献】 特開平4−76276(JP,A)
【文献】 特表2014−506376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/20
H01F 27/08
H01F 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気装置(1)であって、
内部空間(14)を囲むハウジング(12)を備える、ガス絶縁、特にガス絶縁されたトランス(101)またはガス絶縁されたリアクタを含む電気器具(10)を備え、少なくとも前記内部空間(14)の部分は、有機フッ素化合物を備える誘電絶縁流体を含有する絶縁空間(16)を規定し、前記電気器具(10)はさらに、前記絶縁空間(16)内に配置される、前記絶縁流体に囲まれる電気部品(18)を備え、前記電気部品(18)は、少なくとも1つの巻線(20、22)を備え、前記電気装置(1)はさらに、
前記少なくとも1つの巻線(20、22)のうちの1つまたは複数を電力グリッドに接続することによって、前記電気器具(10)を非動作状態から動作状態にもたらす、電気コネクタ(32)を備え、
前記電気装置(1)は、前記電気器具(10)が前記非動作状態にあるときに、前記少なくとも1つの巻線(20、22)のうちの1つまたは複数によって接続可能な補助電源(34)をさらに備え、
前記補助電源(34)は、補助交流電流電源(341)であり、特に前記補助交流電流電源(341)は、前記電気器具(10)の定格負荷損失とほぼ同じ電力定格を有する、電気装置(1)。
【請求項2】
前記電気器具(10)は、ガス絶縁されたトランス(101)、具体的にはガス絶縁された電力トランスであり、その前記電気部品(18)は、一次巻線(20)および二次巻線(22)を位相ごとに含む少なくとも2つの巻線(20、22)を位相ごとに備え、さらに磁気コア(24)を備え、前記電気コネクタ(32)は、前記一次巻線(20)を前記電力グリッドに接続することによって、前記トランス(101)を非動作状態から動作状態にもたらすために設計されている、請求項1に記載の電気装置(1)。
【請求項3】
前記補助電源(34)は、前記少なくとも1つの巻線(20、22)内、特に前記補助電源(34)に接続された、一次巻線(20)または二次巻線(22)内で、前記電気器具(10)の前記非動作状態中に、特に開始位相で、熱を生成するように設計されている、請求項1または請求項2に記載の電気装置(1)。
【請求項4】
前記補助電源(34)は、前記電気器具(10)の動作閾値絶縁耐力値を超えて前記誘電絶縁流体の気相の絶縁耐力を増やすために、前記誘電絶縁流体を少なくとも部分的にまたは完全に蒸発させる熱を生成するように設計されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電気装置(1)。
【請求項5】
前記電気器具(10)がオフグリッドであるとき、特に、電気器具(10)がその二次側で前記グリッドから分離されるときに、前記補助電源(34)、具体的には補助交流電源(341)に接続されない少なくとも1つの巻線(22、20)、特に二次巻線(22)または一次巻線(20)を短絡させるための手段(36;361;41a、41b;42a、42b、42c)をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電気装置(1)。
【請求項6】
前記短絡させるための手段(36;361;41a、41b;42a、42b、42c)は、電気器具(10)を遮断しオフグリッドにして維持するための、特に電気器具(10)をその二次側で遮断し、その二次側で前記グリッドからの遮断して維持するための回路ブレーカ(CB2、42a、42b、42c)を備える、請求項5に記載の電気装置(1)。
【請求項7】
前記補助交流電源(341)は、前記少なくとも1つの巻線(20)、特に前記補助交流電源(341)に接続された一次巻線(20)に電圧を誘導するように定格化され、前記少なくとも1つの短絡された巻線(22)内の、特に二次巻線(22)内の前記定格電流の200%以下、好ましくは150%以下、より好ましくは前記定格電流の100%以下が生成される、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電気装置(1)。
【請求項8】
前記補助電源(34)は、高周波電源である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電気装置(1)。
【請求項9】
前記補助電源(34)は、前記ガス絶縁されたトランス(101)の前記非動作状態中に、特に開始位相で、前記ガス絶縁されたトランス(101)の前記磁気コア(24)内の高周波数磁気損失を生成するための高周波電源である、請求項2または、請求項2に従属する請求項3から請求項4のいずれか1項に記載の電気装置(1)。
【請求項10】
前記電気コネクタ(32)は、前記少なくとも1つの巻線(20、22)を前記電力グリッドに接続された状態から前記補助電源(34)に接続された状態に切り替えるための電気スイッチ(321)である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電気装置(1)。
【請求項11】
前記電気コネクタ(32)は、前記電気器具(10)を遮断しオフグリッドにして維持するための、特に前記電気器具(10)の遮断された前記一次側をグリッドから遮断し、
遮断して維持するための、特にアイソレータと組み合わされる回路ブレーカ(CB1;38a、38b、38c、38d)を備え、前記電気器具(10)はさらに、前記電気器具(10)がオフグリッドであるとき、特に前記電気器具(10)がその一次側で前記グリッドから分離されるときに、前記少なくとも1つの巻線(20、22)のうちの少なくとも1つを前記補助電源(34)に接続するための接触手段(40a、40b、40c)を備える、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電気装置(1)。
【請求項12】
前記補助電源(34)はさらに、少なくとも1つのファン(50)および/または前記電気器具(10)にある少なくとも1つの追加的熱要素(48)に電力を供給するように設計されている、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の電気装置(1)。
【請求項13】
前記有機フッ素化合物は、フルオロエーテル、特にハイドロフルオロモノエーテルと、フルオロケトンと、フルオロオレフィン、特にハイドロフルオロオレフィンと、それらの混合物とからなる群から選択される、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の電気装置(1)。
【請求項14】
前記絶縁流体は、少なくとも3つの炭素原子を含有するハイドロフルオロモノエーテルを備える、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の電気装置(1)。
【請求項15】
前記絶縁流体は、4から12の炭素原子を含有するフルオロケトン、好ましくはちょうど5つの炭素原子またはちょうど6つの炭素原子またはそれらの混合物を含有する、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の電気装置(1)。
【請求項16】
前記絶縁流体は、特に空気、空気成分、窒素、酸素、二酸化炭素、窒素酸化物、およびその混合物からなる群から選択されるバックグラウンドガスをさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の電気装置(1)。
【請求項17】
電気器具(10)は、ガス絶縁、特に請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の電気装置(1)で使用されるものを含み、前記器具(10)は、熱を前記内部空間(14)から前記電気器具(10)の外に転送するためのラジエーター(52)を備え、前記ラジエーター(52)は、前記電気器具(10)の少なくとも1つの巻線(20、22)のいずれかおよび/または前記電気器具(10)の磁気コア(24)内で生成される熱を運ぶ熱伝達流体によって通過するように設計され、前記熱伝達流体の前記流れは、熱伝達流体路(54)を規定し、
前記電気器具(10)は、前記熱伝達流体の少なくとも部分が前記ラジエーター(52)をバイパス可能であるように、前記ラジエーター(52)の上流で前記熱伝達流体路(54)から分岐する前記熱伝達流体のためのバイパスチャネル(56)をさらに備える、電気器具(10)。
【請求項18】
前記電気器具(10)は、ガス絶縁されたトランス(101)またはガス絶縁されたリアクタ、特にガス絶縁されたトランス(101)、より具体的にガス絶縁された電力トランスである、請求項17に記載の電気器具(10)。
【請求項19】
前記バイパスチャネル(56)の分岐の下流で、前記熱伝達流体路(54)は、ラジエータ入口チャネル(58)を形成し、前記バイパスチャネル(56)の分岐において、バルブ(60)は、少なくとも前記バイパスチャネル(56)および前記ラジエータ入口チャネル(58)をそれぞれ部分的に開閉するように配置される、請求項17または請求項18に記載の電気器具(10)。
【請求項20】
前記ラジエーター(52)に直接的に隣接しかつ下流において、前記熱伝達流体路(54)は、ラジエータ出口チャネル(62)を形成し、前記バイパスチャネル(56)は、前記ラジエーター(52)から所定の距離離れて、前記ラジエータ出口チャネル(62)へと開く、請求項17から請求項19のいずれか1項に記載の電気器具(10)。
【請求項21】
さらに、前記熱伝達流体の流れ、特に前記バイパスチャネル(56)からの流れおよび/または前記ラジエータ出口チャネル(62)から前記絶縁空間(16)への流れを生成し、および/または前記熱伝達流体に含有される流体要素を均一的に混合するための、ファン(50)を備える、請求項20に記載の電気器具(10)。
【請求項22】
さらに前記絶縁流体の凝縮液を回収するための、回収タンク(46)を備える、請求項17から請求項21のいずれか1項に記載の電気器具(10)。
【請求項23】
凝縮液、特に前記回収タンク(46)に含有される凝縮液を揮発させる、追加的熱要素(48)を備える、請求項22に記載の電気器具(10)。
【請求項24】
前記追加的熱要素(48)は、電源用の前記補助電源(34)に接続される、請求項23に記載の電気器具(10)。
【請求項25】
前記ファン(50)は、電源用の前記補助電源(34)に接続される、請求項21に記載の電気器具(10)。
【請求項26】
さらに前記電気器具(10)の電気動作および/または前記絶縁流体の組成を制御するための少なくとも1つの制御装置(70)を備える、請求項17から請求項25のいずれか1項に記載の電気器具(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に係る電気装置、ならびに請求項19に係るガス絶縁された電気器具に関し、特にガス絶縁されたトランスまたはリアクタに関する。
【背景技術】
【0002】
トランスおよびリアクタは、当技術分野において周知である。一般的に、トランスは、誘導結合導体、すなわち、トランス巻線を介して1つの回路から別の回路へ電気エネルギーを伝達する装置を指す。第1の(「一次」)巻線内の電流は、磁気コア内の磁場を作成し、磁場は、第2の(「二次」)巻線内の電圧を誘導する。この効果は、相互誘導と呼ばれている。
【0003】
本発明の意味の範囲において、リアクタは、低い周波数または直流電流の通過を可能にしながら、電気回路の高周波交流電流を遮断するために使用されるインダクタを指す。いずれの場合においても少なくとも2つの巻線を含むトランスとは対照的に、リアクタは、単一の巻線を含むことができる。
【0004】
トランスまたはリアクタの電気部品の能動部分は、特に巻線(複数可)および磁気コアを含み、それらは、それらの間の誘電性の要求に応じて、互いに絶縁されなければならない。絶縁に関しては、トランス(または同様にリアクタ)の異なる種類が区別されることができる。
【0005】
一方で、乾式トランス(またはリアクタ、それぞれ)では巻線と磁性体コアを含む電気部品は、絶縁流体中に浸漬されておらず、典型的に、それは大気圧の空気に囲まれる。
【0006】
他方で、液体またはガス絶縁トランス(またはリアクタのそれぞれ)において、電気部品は、絶縁流体で充填されるタンクまたは容器内に配置される。具体的には、流体絶縁トランスでは、絶縁流体は、鉱油またはシリコーン油またはエステル油といった液体であり、気体絶縁トランスでは、絶縁流体は、大気圧または高圧のいずれかにおけるSFまたはNといったガスである。
【0007】
36キロボルトよりも高い電圧の場合、ガス絶縁または液体絶縁トランス(またはリアクタ、それぞれ)が典型的に使用される。絶縁流体の絶縁性能および熱性能が比較的高いことに起因して、電気部品の部品の間のクリアランスは比較的小さい。
【0008】
しかし、液体絶縁トランス、特に油性含浸トランスでは、重度の故障状態の下で、火災や爆発のリスクを負う。これは、地下変電所、都市部、製油所および海洋設備などの敏感な分野で重要になり得る。このような場合、非可燃性ガスを充填したガス絶縁トランスは、好ましくは、安全上の理由のために使用される。たとえば、絶縁ガスとしてSFを用いたトランスは、市場に既に出回っている。
【0009】
高い断熱性能を有し、かつ同時にSFよりも低い低地球温暖化係数(GWP)を有する代替絶縁流体を見出す試みにおいて、トランスにおいてフルオロケトンを使用することは、たとえば国際公開第2011/048039号で提案されている。
【0010】
ガス絶縁トランスは、たとえば−25℃ほどに低くされ得る、指定された最低動作温度以上の周囲温度で完全に機能する必要がある。この結果、典型的に、動作条件の下で、すなわち最低動作温度までの低下において、気体状態にある絶縁流体が使用されている。
【0011】
しかし、フルオロケトンは比較的高い沸点を有し、このため最低動作温度以上の温度でさえ、凝縮のリスクを負う。絶縁媒体が部分的に凝縮された場合には、誘電絶縁耐力または電気器具、具体的にはトランスまたはリアクタの耐電圧は低減され、それが完全な定格電圧に通電され得ないことを意味する。
【0012】
凝縮の危険性を低減するために、フルオロケトンの比較的低い分圧が、典型的には選択され、これもまた絶縁流体の絶縁耐力および冷却能力にも影響を及ぼす。
【0013】
器具が非動作状態にあるとき、すなわち、電力グリッドに接続される前に、凝縮の危険性が特に明らかである。この状態では、電力損失がないため、熱は生成されておらず、内部空間内の温度は、このため気体状態の絶縁流体を維持するには不十分かもしれない。
【0014】
寒い環境では、すなわち絶縁流体の露点よりもかなり低い場合、動作中にさえ、すなわち器具の電力損失が発生する熱が露点以上の温度を維持するために不十分であるときに、凝縮現象が発生する可能性がある。無負荷またはわずかな負荷しかないとき、これは、特に起こり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
技術水準の欠点を考慮すると、本発明が解決しようとする問題点はこのため、有機フッ素化合物を含む絶縁流体を使用するガス絶縁、特にガス絶縁トランスまたはガス絶縁リアクタを有する電気器具を含む電気装置を提供することであり、当該装置は、非常に安全な方法で、完全な定格電圧へ器具の運転を開始することを可能にする。
【0016】
さらなる態様によれば、本発明はまた、有機フッ素化合物を含む絶縁流体を利用した、ガス絶縁、特にガス絶縁トランスまたはガス絶縁リアクタを備えた電気器具を提供するという問題を解決することを目的とし、当該装置は、負荷条件とは独立に、非常に安全な運転を可能にする。
【0017】
問題は、それぞれ、独立請求項1および19の主題によって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項および請求項の組み合わせで与えられる。
【0018】
請求項1によれば、本発明は、少なくともその一部が有機フッ素化合物を含む誘電絶縁流体を含有する絶縁空間を画成する、トランスの内部空間を囲むハウジングを備えるガス絶縁、特にガス絶縁トランスまたはガス絶縁リアクタを有する電気器具を含む電気装置に関する。電気器具は、さらに、絶縁空間内に配置され絶縁流体に囲まれた電気部品を備え、当該電気部品は、少なくとも1つの巻線を含む。本発明によれば、電気装置は、電力グリッドに少なくとも1つの巻線のうちの1つまたは複数を接続することにより、器具を非動作状態から動作状態にもたらすための電気コネクタを含む。さらに、電気装置は、電気器具が非動作状態にあるときに、少なくとも1つの巻線のうちの1つまたは複数に接続可能な補助電源を備える。
【0019】
本発明の文脈において使用される「巻線」という用語は、広く解釈されるべきであり、特に、それ自体が2つ以上の巻線またはコイルを含む電圧系統の形態の巻線を包含する。
【0020】
「ガス絶縁を有する電気器具」という用語は、ガス絶縁を有する少なくとも1つの構成要素、部分または区画を有する任意の電気器具を広く包含するものとし、また、任意の全体的にガス絶縁された電気器具を包含するものとする。
【0021】
本発明の文脈において使用される「非動作状態」という用語は、特に、すべての巻線が電力グリッドから直流的に絶縁された状態に関する。好ましくは、回路ブレーカおよびアイソレータの組み合わせは、巻線をオフグリッドに維持するために使用され、それぞれの巻線を補助電源に安全に接続する。
【0022】
本発明の文脈において使用される「リアクタ」という用語は、特に、電気リアクタ、より特定的には、電流制限装置、および/または無効電力補償装置のためのものに関する。
【0023】
特に電気器具が動作可能になる前に、すなわち、それが電力グリッドに接続される前に、すなわち、電気器具の開始位相において、補助電源に1つまたは複数の巻線を接続することにより、熱は電力損失によって生成されることができる。これは再び、凝縮された絶縁流体が気体状態にもたらされることを可能とし、このため電気器具の動作を開始する前に、公称組成の絶縁ガスと、その結果として、十分に高い絶縁耐力とが達成される。
【0024】
具体的には、補助電源は、このため、補助電源に接続される少なくとも1つの巻線に熱を発生するように設計されている。これにより、巻線(複数可)は、絶縁空間に存在する絶縁流体の任意の凝縮液を蒸発させるために必要な熱量を発生する発熱素子として機能する。このため、追加の加熱手段は必要とされず、最終的に装置の非常にコンパクトな設計を達成することができる。
【0025】
熱の発生のために、本発明は、無負荷損失、負荷損失、またはその両方を使用することができる。具体的には、交流(AC)電源または直流(DC)電源は、加熱のために使用されることができる。以下でより詳細に説明するように、交流電源が、好ましい。具体的には、交流補助電源は、電気器具の定格負荷の損失に匹敵する電力定格を有するように選択されることができる。
【0026】
しかし、特定のSCADA装置などの電気器具の二次装置への電力供給のためなどに、直流電源が利用可能である場合は、熱は、この直流電源のみを使用して、抵抗損失によって生成されることができる。同一の高周波の磁場がコア内に作成されることにより、巻線に高周波電圧を供給することもさらに可能である。ここで、高周波数とは、電力グリッドの周波数以上の周波数(すなわち、50Hz以上または60Hz以上または16 2/3Hz以上)を広く包含するものとし、特に、kHzの範囲または10kHzの範囲または100kHzの範囲以上である周波数を包含することができる。
【0027】
電気器具、電気コネクタ、補助電源とは別に、電気装置は、たとえばアイソレータといった、さらなる個々の部品を含むことが理解される。
【0028】
上述のように、本発明のガス絶縁を有する電気器具は、好ましくは、ガス絶縁トランスまたはガス絶縁リアクタである。本発明は、このように、動作状態の間に現れる誘電状況に対して、トランスまたはリアクタ、特にその絶縁耐圧を順当に準備するために、トランスまたはリアクタのための固有の巻線(複数可)を、電力グリッド以外の電源に接続することにより、それらを使用する。
【0029】
実施形態によれば、電気器具は、ガス絶縁トランス、特にガス絶縁電力トランスである。この結果、本実施形態の電気部品は、位相ごとの一次巻線と二次巻線とを備えた位相ごとの少なくとも2つの巻線を含み、さらに、磁気コアを備える。これにより、電気コネクタは、電力グリッドに一次巻線を接続することにより、特に開始位相において、トランスを非動作状態から動作状態にもたらすために設計されている。
【0030】
特に、少なくとも2つの巻線は、たとえばここでは主交流電源に接続される巻線といった一次巻線からの部分と、たとえばここでは負荷に接続される巻線といった二次巻線からの部分とを含む。実施形態では、たとえば三次巻線、四次巻線または他の巻線といったさらなる巻線が、存在していてもよい。
【0031】
ガス絶縁トランスの一実施形態では、巻線は、「コア型」トランスの場合のように磁気コアの周りに巻かれることができ、または「シェル型」トランスの場合のように、磁気コアに囲まれることができる。
【0032】
実施形態では、器具は、電力トランスである。
上述したように、補助電源は、補助電源に接続された任意の巻線において熱を生成するように一般的に設計されている。以下でより詳細に説明するように、補助電源は、理想的には、追加の熱素子および/またはファンのような、トランスのさらなる構成要素に電力を供給するために使用されることができる。
【0033】
実施形態では、さらなる電気装置は、補助電源に接続されるべきではない少なくとも1つの巻線を短絡させるための手段を含む。特に、電気器具がオフグリッドである場合、特に、電気器具がグリッドの二次側でグリッドから分離されている場合、そのような手段は、補助電源に接続されていない少なくとも二次巻線または一次巻線を短絡するものとする。
【0034】
補助電源が補助交流電源である上述した実施形態では、電源は、好ましくは、補助交流電源に接続された巻線、特に一次巻線において、少なくとも1つの短絡された巻線、特に二次巻線の定格電流の200%以下、好ましくは150%以下、より好ましくは100%以下の定格電流が生成されるような電圧を誘導するように定格化される。好ましい実施形態によれば、補助交流電源は、少なくとも1つの短絡された巻線で少なくとも定格とほぼ同じかそれ以下の電流が生成されるように、それに接続された巻線で電圧を誘導するように定格化される。
【0035】
実施形態では、補助電源は、電気器具の非動作状態の間に、特に開始位相で、補助電源に接続された少なくとも1つの巻線に抵抗損失を発生させるために、特に、電気器具の二次装置に電力を供給するための、直流(DC)電源である。
【0036】
実施形態では、補助電源は高周波電源である。具体的には、補助電源は、ガス絶縁トランスの非動作状態中、特に開始位相で、ガス絶縁トランスの磁気コアで高周波磁気損失を生成するための高周波電源である。
【0037】
実施形態によれば、電気コネクタは、特に、電力グリッドに接続される状態から補助電源に接続される状態に、および逆に補助電源に接続される状態から電力グリッドに接続される状態に、少なくとも1つの巻線を切り替えるためのスイッチである。これは、電気装置の非常にコンパクトな設計に再び貢献する。
【0038】
実施形態では、電気コネクタは、電気器具を遮断し、オフグリッドにして維持するために、特に、電気器具の一次側をグリッドから遮断し、遮断して維持するために、特に、アイソレータと組み合わされる回路ブレーカを含み、さらに、電気器具がオフグリッドであるとき、特に、電気器具がその一次側でグリッドから分離されるときに、少なくとも1つの巻線のうちの少なくとも1つを補助電源に接続するための接触手段を含む。
【0039】
特定の実施形態によれば、補助電源は、さらに、少なくとも1つのファンおよび/または電気器具に起因する少なくとも1つの追加の熱素子に電力を供給するために設計されている。この文脈では、追加の熱素子は、補助電源に接続された巻線によって形成された熱素子以外のものをいう。ファンおよび追加の熱素子(複数可)は、装置の内部空間内に均一な熱分配を可能にする。これらの構成要素および熱素子として機能する巻線のために同じ電源を使用することにより、非常にコンパクトな設計を実現することができる。
【0040】
上述のように、本発明はさらに、特に上記のような電気装置で使用するための、ガス絶縁器具に関する。
【0041】
電気器具は、ガス絶縁を備え、装置の外部に内部空間から熱を伝達するためのラジエータを含む。ラジエータにより、装置の動作中に生成される過剰な熱を効率よく放出することができる。ラジエータは、電気器具の任意の巻線および/または磁気コア(存在する場合)で発生した熱を運ぶ熱伝達流体を通過させるように設計され、熱伝達流体の流れは、熱伝達流体路を画定する。
【0042】
本発明によれば、熱伝達流体の少なくとも一部がラジエータをバイパスすることを可能とするように、器具はさらに、ラジエータの上流で熱伝達流体路から分岐する、熱伝達流体のためのバイパスチャネルを含む。
【0043】
典型的には、熱伝達流体と絶縁流体は、1つであり同一である。具体的には、それは、熱伝達ガスである。
【0044】
熱伝達流体路は、少なくとも部分的にチャネルの形態、特にチャネル壁に囲まれたチャネルの形態であり得る。
【0045】
完全な一般性において、すなわち、本出願の文脈においてまたはそこから独立に、一般に電気的に中電圧または高電圧の器具に対して、たとえば本明細書に開示された有機フッ素化合物または任意の他のSF置換誘電絶縁流体および/またはアーク消火媒体を含有する絶縁流体および/またはアーク消火媒体を使用して、ラジエータは、環境へ熱を伝達するように設計されることができ、またはラジエータによって放出される熱が電気装置または器具をさらに加熱するために使用されることができる。特に、SFとは異なる代替ガスを使用する、また特に本明細書に記載の絶縁流体および/またはアーク消火媒体を使用するガス絶縁開閉装置またはその部品のために、熱が使用されることができる。この目的のために、各チャネルは、特にパイプまたはチューブの形態で、さらなる電気装置、特にGISへ、ラジエータから受け取った熱を伝達するために、ハウジングの外側に配置されることができる。
【0046】
上述のように、本発明の電気器具は、好ましくは、ガス絶縁トランスまたはガス絶縁リアクタであり、特に、ガス絶縁トランス、より特定的にはガス絶縁電力トランスである。
【0047】
実施形態では、バイパスチャネルの分岐の下流に、熱伝達流体路が、ラジエータ入口チャネルを形成し、バイパスチャネルの分岐に、バルブ、特に3ポートバルブが、バイパスチャネルおよびラジエータ入口チャネルのそれぞれを少なくとも部分的に開閉するように配置されている。このため、熱伝達流体の流れは、制御されることができ、ラジエータを通過および/またはバイパスする熱伝達流体の量は、トランスの内部空間内の実際の温度の状況に適合されることができる。一方で、気相へと凝縮物をもたらすために熱が必要とされる場合、または、凝縮につながる可能性がある温度低下に対抗するために必要とされる場合は、ラジエータをバイパスする熱伝達流体の量が増加される。他方で、絶縁流体を完全に気体状態に維持するために必要な熱も考慮した上で、過剰な熱が生成される場合、当該過剰な熱は、ラジエータを通過する熱伝達流体のそれぞれの量を指示することによって放出されることができる。
【0048】
熱伝達流体路は、ラジエータに直接に隣接しかつその下流に(伝熱流体の流れの方向によって下流が規定される)、ラジエータ出口チャネルを形成し、バイパスチャネルは、ラジエータからある距離離れて、ラジエータ出口チャネルへと開くことがさらに好ましい。このため、バイパスチャネルを通って導かれる熱伝達流体の一部は、再び熱伝達流体路、こうして、伝達流体の循環に入る。バイパスする熱伝達流体によって運ばれる熱がラジエータへと放出されないという事実のために、比較的高い量の熱エネルギーが循環し、このため、トランス内部空間内で比較的高い温度を維持するのに寄与する。
【0049】
絶縁空間内の温度状況に応じて、熱伝達流体の流れ、特に、バイパスチャネルからのおよび/またはラジエータ出口チャネルからの絶縁空間への熱伝達流体の流れを生成するために、および/または熱伝達流体中に含まれる液体成分を均一に混合するために、ファンが配置されることが特に好ましい場合がある。
【0050】
ファンは、対流によってトランスを冷却するその機能とは別に、また絶縁流体を均一に混合するのに役立ち、このため絶縁空間全体にわたって均一な熱分布と均一な絶縁流体組成物とを達成することができる。COおよび/またはOのようなバックグラウンドガスと組合せて、たとえば、フルオロケトンのような比較的高い比重の絶縁流体成分を使用する場合に、底部領域にフルオロケトンが蓄積し、一定に混合されないかもしれないが、このことは、ファンによって効率的に回避することができるため、これは、特に重要である。ファンは、熱伝達流体の流れを生成し、その流れは温度状況に応じて、ラジエータを通過、および/またはバイパスされることを可能とされる。
【0051】
ファンが提供される場合、複数の異なる冷却モードが実現されることができる。第1のモードによれば、ファンが、非アクティブであり、バイパスチャネルが開いていることにより、最小限の冷却を提供する。ファンを作動させることによって、または少なくとも部分的にバイパスチャネルを閉じることにより、ラジエータを通過する熱伝達流体の量を増やすことによって、冷却は増加されることができる。ファンを作動させ、同時にバイパスチャネルを閉じることによって最大の冷却を得ることができる。
【0052】
電気器具の加熱手順の間に、バイパスチャネルは、典型的には、少なくとも部分的に開かれている。好ましくは、ファンは、この手順の間に動作中であり、これによりバイパスチャネルを少なくとも部分的に通過する熱伝達流体の流れを生成する。
【0053】
本発明の文脈において使用される「ファン」という用語は、広く解釈されるべきであり、ガス流を生成するための任意の装置を包含し、特にベンチレータ、送風機またはポンプを包含する。
【0054】
実施形態によれば、器具はさらに、絶縁流体の凝縮物を回収するための回収タンクを含む。器具は、さらに、凝縮物、特に回収タンク内に含まれる凝集物を蒸発させるための、追加の熱素子を含むことが好ましい。回収タンク内に凝縮された絶縁流体を回収することによって、具体的には回収タンク、特にその壁に、熱エネルギーを伝達することによって、非常に効率的な蒸発を達成することができる。
【0055】
好ましくは、追加の熱素子および/またはファンは、電源用補助電源に接続される。代替的にまたは追加的に、追加の熱素子および/またはファンに、たとえば地熱エネルギーまたは分配熱供給を使用した熱エネルギーによって、供給することも可能である。
【0056】
実施形態によれば、有機フッ素化合物は、フルオロエーテル、特にハイドロフルオロモノエーテル、フルオロケトン、フルオロオレフィン、特にハイドロフルオロオレフィン、およびそれらの混合物からなる群から選択されるが、これは化合物のこれらの分類が、非常に高い絶縁性能、特に高い絶縁耐力(またはブレークダウン電界強度)と同時に、低GWPおよび低毒性を有することが見出されているためである。
【0057】
本発明は、それぞれの絶縁流体が、フルオロエーテル、特にハイドロフルオロモノエーテルと、フルオロケトンと、フルオロオレフィン、特にハイドロフルオロオレフィンとのうちのいずれか1つを含む実施形態、ならびにこれらの少なくとも2種の混合物を含む実施形態の両方を包含する。
【0058】
実施形態では、絶縁流体はさらに、特に空気、空気成分、窒素、酸素、二酸化炭素、窒素酸化物およびこれらの混合物からなる群から選択されるバックグラウンドガスを含む。
【0059】
本発明の文脈において使用される「フルオロエーテル」という用語は、パーフルオロエーテル、すなわち完全にフッ素化されているエーテルと、ハイドロフルオロエーテルすなわち、部分的にのみフッ素化されているエーテルの両方を包含する。「フルオロエーテル」という用語はさらに、飽和化合物ならびに不飽和化合物、すなわち炭素原子間の二重および/または三重結合を含む化合物を包含する。フルオロエーテルの酸素原子に結合された少なくとも部分的にフッ素化されたアルキル鎖は、互いに独立し、直鎖状または分枝状であることができる。
【0060】
「フルオロエーテル」という用語はさらに、非環式および環式エーテルの両方を包含する。このため、酸素原子に結合した2つのアルキル鎖は、必要に応じて環を形成することができる。特に、この用語は、フルオロオキシランを包含する。特定の実施形態において、本発明に係る有機フッ素化合物は、パーフルオロオキシランまたはハイドロフルオロオキシランであり、より特定的には、3〜15個の炭素原子を含むパーフルオロオキシランまたはハイドロフルオロオキシランである。
【0061】
実施形態では、それぞれの絶縁流体は、少なくとも3個の炭素原子を含有するハイドロフルオロモノエーテルである。それらの高い絶縁耐力とは別に、これらのハイドロフルオロモノエーテルは、140℃以上の温度まで、化学的および熱的に安定している。これらは、非毒性であるか、または低い毒性レベルを有する。さらに、それらは、非腐食性および非爆発性である。
【0062】
本明細書で使用する「ハイドロフルオロモノエーテル」という用語は、1つの唯一のエーテル基を有する化合物を指し、2つのアルキル基に結合する当該エーテル基は、互いに独立し、直鎖状または分枝状であることができ、必要に応じて環を形成することができる。化合物は、このため、熱伝達流体中で、2つのエーテル基を含有する化合物、すなわちハイドロフルオロジエステルの使用に関する、たとえば米国特許第7128133B号明細書に開示された化合物とは明らかに対照的である。
【0063】
本明細書で使用する「ハイドロフルオロモノエーテル」という用語は、モノエーテルが部分的に水添され部分的にフッ素化されたものであるとさらに理解されるべきである。それが、異なって構造化されたハイドロフルオロモノエーテルの混合物を含んでもよいように理解されるべきである。「構造的に異なる」という用語は、広義に、ハイドロフルオロモノエーテルの化合式または構造式の任意の違いを包含するものとする。
【0064】
上記のように、少なくとも3個の炭素原子を含有するハイドロフルオロモノエーテルは、比較的高い絶縁耐力を有することが見出されている。具体的には、SFの絶縁耐力に対する本発明に係るハイドロフルオロモノエーテルの絶縁耐力の比は、約0.4よりも大きい。
【0065】
また、上述したように、ハイドロフルオロモノエーテルのGWPは低い。好ましくは、GWPは、100年あたり1000未満、より具体的には、100年あたり700未満である。本明細書で言及されるハイドロフルオロモノエーテルは、比較的低い大気寿命を有しており、加えて、オゾン破壊触媒サイクルにおける役割を果たしているハロゲン原子、すなわちCl、BrまたはIを欠いている。本明細書に記載されるハイドロフルオロモノエーテルのオゾン破壊係数(ODP)はゼロであり、これは環境の観点から非常に有利である。
【0066】
少なくとも3個の炭素原子を含有し、このため、−20℃を超える比較的高い沸点を有するハイドロフルオロモノエーテルに対する選好は、一般的にハイドロフルオロモノエーテルの沸点が高くなると共に、誘電強度がより高くなるという知見に基づくものである。
【0067】
他の実施形態によれば、ハイドロフルオロモノエーテルは、正確に3個または4個または5個または6個の炭素原子、特に正確に3個または4個の炭素原子、最も好ましくは正確に3個の炭素原子を含有する。
【0068】
より具体的には、ハイドロフルオロモノエーテルはこのため、水素原子の一部がフッ素原子で各々置換されている、以下の構造式により定義される化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物である。
【0069】
【化1-1】
【0070】
【化1-2】
【0071】
3個または4個の炭素原子を含有するハイドロフルオロモノエーテルを使用することにより、器具の巻線の適度な加熱によって気化を達成することができる。このため、器具の動作の前に、そのすべての部分が気体状態になっている絶縁流体を実現することができる。
【0072】
化合物の可燃性を考慮すると、ここにハイドロフルオロモノエーテルの「F率」と簡単に呼ばれる、フッ素および水素原子の合計数に対するフッ素原子の数の比を、少なくとも5〜8であるように選択することができることがさらに有利である。この定義内に入る化合物は、一般的に不燃性であり、このため、最高の安全要件に準拠する絶縁流体をもたらすことが見出されている。
【0073】
他の実施形態によれば、ここで「F/C比」と簡単に呼ばれる、炭素原子の数に対するフッ素原子の数の比は、1.5:1〜2:1の範囲である。このような化合物は、一般的に100年あたり1000未満のGWPを有し、このため、非常に環境に優しい。特にハイドロフルオロモノエーテルは、100年あたり700未満のGWPを有することが好ましい。
【0074】
本発明の他の実施形態によれば、ハイドロフルオロモノエーテルは、一般構造(0)を有する。
−O−C (0)
ここで、aとdとは、1〜3の独立な整数であり、a+d=3または4または5または6、特に3または4であり、bとcとは0〜11、特に0〜7の独立な整数であり、b+c=2a+1であり、eとfとは0〜11、特に0〜7の独立な整数であり、e+f=2d+1であり、さらにbとeのうちの少なくとも1つは、1以上であり、cとfのうちの少なくとも1つは、1以上である。
【0075】
これによって、ハイドロフルオロモノエーテルの一般的な構造または式(0)内の望ましい実施形態では、aは1であり、bおよびcは0から3の範囲の独立な整数であり、b+c=3であり、d=2であり、eおよびfは、0から5の範囲の独立な整数であり、e+f=5であり、さらにbとeのうちの少なくとも1つは、1以上であり、さらにcとfのうちの少なくとも1つは、1以上である。
【0076】
より特定の実施形態によれば、一般的な構造(0)におけるcおよびfの正確に1つは、0である。エーテル結合の一方側のフッ素に対応する群は、反対側が非置換のままであり、「偏析(segregation)」と呼ばれる。偏析は、同じ鎖長の分離されていない化合物と比較して沸点を低下させることが見出されている。
【0077】
最も好ましくは、ハイドロフルオロモノエーテルは、ペンタフルオロエチルメチルエーテル(CH−O−CFCF)、および2,2,2−トリフルオロエチル−トリフルオロメチルエーテル(CF−O−CHCF)からなる群から選択される。ペンタフルオロ−エチル−メチルエーテルは、+5.25°Cの沸点、100年あたり697のGWP、0.625のF率を有し、一方、2,2,2−トリフルオロエチル−トリフルオロメチルエーテルは、+11°Cの沸点、100年あたり487のGWP、0.75のF率を有する。それらは両方とも0のODPを有するので、完全に環境に許容可能である。
【0078】
また、ペンタフルオロ−エチル−メチルエーテルは175℃の温度で30日間熱的に安定であること、従って、器具に与えられた動作条件のために完全に適していることが見出されている。より高い分子量のハイドロフルオロモノエーテルの熱安定性の研究は、完全に水添されたメチルまたはエーテル基を含有する群が、部分的に水添された群と比較してより低い熱安定性を有することが示しているので、2,2,2−トリフルオロエチル−トリフルオロメチルエーテルの熱的安定性は、さらに高くなると想定することできる。
【0079】
一般的にハイドロフルオロモノエーテル、およびペンタフルオロ−エチル−メチルエーテル、ならびに2,2,2トリフルオロエチル−トリフルオロメチルエーテルは、特に、人間への毒性の低い危険性を呈する。これは、哺乳動物のHFC(ハイドロフルオロカーボン)試験の利用可能な結果から結論付けることができる。また、商業ハイドロフルオロモノエーテルについて利用可能な情報には、本出願の化合物の発がん性、変異原性、生殖/発達への影響と、他の慢性効果の証拠が与えられていない。
【0080】
より高い分子量の商業的ハイドロフルオロエーテルのために利用可能なデータに基づいて、ハイドロフルオロモノエーテル、特にペンタフルオロ−エチル−メチルエーテル、ならびに2,2,2−トリフルオロエチル−トリフルオロメチルエーテルは、10000ppmより高い致死濃度LC50を有すると結論付けることができ、毒物学的観点からもそれらを適切であるとする。
【0081】
上記のハイドロフルオロモノエーテルは、空気より高い誘電強度を有する。具体的には、1バールのペンタフルオロ−エチル−メチルエーテルは、1バールの空気よりも約2.4倍高い誘電強度を有する。
【0082】
好ましくは55℃以下、より好ましくは40°C以下、特に30°C以下であるその沸点を考慮すると、上述のハイドロフルオロモノエーテル、特にペンタフルオロ−エチル−メチルエーテルおよび2,2,2−トリフルオロエチル−トリフルオロメチルエーテルはそれぞれ、通常動作条件で気体状態である。また、すべての部分が気体状態である絶縁性液体は、器具の動作に先立って達成されることができ、有利である。
【0083】
上記ハイドロフルオロモノエーテルに代替的にまたは追加的に、それぞれの絶縁流体は、4〜12個の炭素原子を含むフルオロケトンを含む。
【0084】
本出願で使用される「フルオロケトン」という用語は、広く解釈されるものとされ、パーフルオロケトンおよびハイドロフルオロケトンの両方を包含するものとし、さらに飽和化合物と不飽和化合物の両方、すなわち、炭素原子間の二重および/または三重結合を含む化合物を包含するものとする。フルオロケトンの少なくとも部分的にフッ素化されたアルキル鎖は、直鎖状または分枝状であり得るか、または必要に応じて1つまたは複数のアルキル基で置換されて環を形成することができる。例示的な実施形態では、フルオロケトンは、パーフルオロケトンである。さらなる例示的な実施形態では、フルオロケトンは、分枝状のアルキル鎖、特に少なくとも部分的にフッ素化されたアルキル鎖を有する。さらに別の例示的な実施形態では、フルオロケトンは、完全飽和化合物である。
【0085】
別の態様によれば、本発明に係る絶縁流体は、4〜12個の炭素原子を有するフルオロケトンを含んでもよく、フルオロケトンの少なくとも部分的にフッ素化されたアルキル鎖は、任意に1つまたは複数のアルキル基で置換された環を形成する。
【0086】
特に、絶縁流体が正確に5個または正確に6個の炭素原子を含有するフルオロケトンまたはそれらの混合物を含むことが好ましい。6個を超える炭素原子を有するより大きな鎖長を有するフルオロケトンと比較して、5個または6個の炭素原子を含むフルオロケトンは、比較的低沸点であるという利点を有し、本発明の装置および器具によって、液化に効率的に対抗することができる。
【0087】
実施形態によれば、フルオロケトンは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された、以下の構造式により定義される化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物である。
【0088】
【化2】
【0089】
5個以上の炭素原子を含むフルオロケトンが一般的に人間の安全のための優れた範囲で非毒性であるので、それらはさらに有利である。これは、毒性であり高反応性であるヘキサフルオロアセトン(またはヘキサフルオロプロパノン)などの、4個より少ない炭素原子を有するフルオロケトンとは対照的である。特に、本明細書中で簡潔にフルオロケトンa)と呼ばれる正確に5個の炭素原子を含むフルオロケトン、および正確に6個の炭素原子を含むフルオロケトンは、500℃まで熱的に安定である。
【0090】
特定の実施形態によれば、特に、正確に5個の炭素原子を有し、より具体的に(Ia)から(Ii)に記載の構造式を有するフルオロケトンを含む誘電絶縁流体は、特に、空気、空気成分、窒素、酸素、二酸化炭素、窒素酸化物(NO、NO、NOを含むがこれらに限定されない)、およびそれらの混合物からなる群から選択される、バックグラウンドガスをさらに含むことができる。
【0091】
本発明の実施形態では、分枝アルキル鎖を有するフルオロケトン、特にフルオロケトンa)は、それらの沸点が、直鎖アルキル鎖を有する対応する化合物(すなわち同一の分子式を持つ化合物)の沸点よりも低いので、好ましい。
【0092】
実施形態によれば、フルオロケトンa)は、特に、分子式C10Oを有する、すなわち炭素原子間の二重または三重結合なく完全に飽和しているパーフルオロケトンである。フルオロケトンa)は、より好ましくは、1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−3−(トリフルオロメチル)ブタン−2−オン(デカフルオロ−2−メチルブタン−3−オンとも呼ばれる)、1,1,1,3,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン−2−オンと、1,1,1,2,2,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン−3−オンと、オクタフルオロシクロペンタノンと、最も好ましくは1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−3−(トリフルオロメチル)ブタン−2−オンと、から成る群から選択することができる。
【0093】
1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−3−(トリフルオロメチル)ブタン−2−オンは、以下の構造式(I)で表すことができる。
【0094】
【化3】
【0095】
ここで簡単に「C5−ケトン」という、CFC(O)CF(CFまたはC10Oという分子を有する1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−3−(トリフルオロメチル)ブタン−2−オンは、特に誘電体キャリアガスとの混合物中で高誘電率絶縁性能の利点を有し、非常に低いGWPを有し、低沸点を有するため、特に、高および中電圧絶縁用途のために好ましいことが見出されている。これは、0のODPを有し、実質的に非毒性である。
【0096】
実施形態によれば、異なるフルオロケトン成分の混合物を組合せることによってさらに高い絶縁性能が達成されることができる。実施形態では、ここで上述され、正確に5個の炭素原子を含有し、簡単にフルオロケトンa)と呼ばれるフルオロケトン、および、正確に6個の炭素原子または正確に7個の炭素原子を含有し、ここで簡単にフルオロケトンc)とも呼ばれるフルオロケトンは、好適には同時に誘電絶縁体の一部にすることができる。このため、絶縁流体は、各々がそれ自体で絶縁流体の絶縁耐力に寄与する1つ以上のフルオロケトンを有して達成されることができる。
【0097】
実施形態では、さらにフルオロケトンc)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された、以下の構造式
【0098】
【化4】
【0099】
により定義される化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物、ならびに、フルオロケトンの少なくとも部分的にフッ素化されたアルキル鎖が1つまたは複数のアルキル基(IIh)によって置換された環を形成している、正確に6個の炭素原子を有する任意のフルオロケトン、および/または、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された、以下の構造式
【0100】
【化5-1】
【0101】
【化5-2】
【0102】
により定義される化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物、特にドデカフルオロ−シクロヘプタノン、ならびにフルオロケトンの少なくとも部分的にフッ素化されたアルキル鎖が、1つまたはそれ以上のアルキル基(IIIo)によって置換された環を形成する、正確に7個の炭素原子を有する任意のフルオロケトンである。
【0103】
本発明は、(0a)から(0r)、(Ia)から(Ii)、(IIa)から(IIh)、(IIIa)から(IIIo)の構造式に記載の化合物およびそれらの混合物からなる群から選択される各化合物および各化合物の組み合わせを包含する。
【0104】
別の態様によれば、本発明に係る誘電絶縁流体は、フルオロケトンの少なくとも部分的にフッ素化されたアルキル鎖が、任意に1つまたは複数のアルキル基で置換された環を形成している、正確に6個の炭素原子を有するフルオロケトンを含んでもよい。さらに、このような誘電絶縁流体は、特に、空気、空気成分、窒素、酸素、二酸化炭素、窒素酸化物(NO、NO、NOを含むがこれらに限定されない)およびこれらの混合物からなる群から選択されたバックグランドガスを含んでもよい。さらに、このような誘電絶縁流体を含む電気器具が開示される。
【0105】
さらに別の態様によれば、絶縁流体は、フルオロケトンの少なくとも部分的にフッ素化されたアルキル鎖が、任意に1つ以上のアルキル基で置換された環を形成している、正確に7個の炭素原子を有するフルオロケトンを含んでもよい。さらに、このような絶縁流体は、特に、空気、空気成分、窒素、酸素、二酸化炭素、窒素酸化物(NO、NO、NOを含むがこれらに限定されない)およびこれらの混合物からなる群から選択されたバックグランドガスを含んでもよい。さらに、このような誘電絶縁流体を含む電気器具が開示される。
【0106】
本発明は、(0a)から(0r)、(Ia)から(Ii)、(IIa)から(IIg)、(IIIa)から(IIIn)の構造式に記載の化合物およびそれらの混合物からなる群から選択される各化合物および各化合物の組み合わせを包含する任意の絶縁流体を包含し、絶縁流体は、特に、空気、空気成分、窒素、酸素、二酸化炭素、窒素酸化物(NO、NO、NOを含むがこれらに限定されない)およびこれらの混合物からなる群から選択されたバックグランドガスを含んでもよい。さらに、このような絶縁流体を含む電気器具が開示される。
【0107】
本発明による特定の装置および器具の用途に応じて、上述した(「フルオロケトンc)」と指定されたものに該当する)正確に6個の炭素原子を含むフルオロケトンは、それぞれ絶縁空間区画用に好ましくあり得、このようなフルオロケトンは、人間の安全のための優れた範囲で非毒性である。
【0108】
実施形態では、フルオロケトンc)は、フルオロケトンa)と同様に、パーフルオロケトンであり、および/または分枝アルキル鎖、特に少なくとも部分的にフッ素化されたアルキル鎖を有し、および/またはフルオロケトンc)は、完全に飽和化合物を含有する。特に、フルオロケトンc)は、分子式C12Oを有する、すなわち炭素原子間の二重または三重結合なく完全に飽和する。より好ましくは、フルオロケトンc)は、1,1,1,2,4,4,5,5,5−ノナフルオロ−2−(トリフルオロメチル)ペンタン−3−オン(ドデカフルオロ−2−メチルペンタン−3−オンとも呼ばれる)、1,1,1,3,3,4,5,5,5−ノナフルオロ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン−2−オン(ドデカフルオロ−4−メチルペンタン−2−オンとも呼ばれる)、1,1,1,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロ−3−(トリフルオロメチル)ペンタン−2−オン(ドデカフルオロ−3−メチルペンタン−2−オンとも呼ばれる)、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−3,3−ビス−(トリフルオロメチル)ブタン−2−オン(ドデカフルオロ−3,3−(ジメチル)ブタン−2−オンとも呼ばれる)、ドデカフルオロヘキサン−2−オン、ドデカフルオロヘキサン−3−オン、デカフルオロシクロヘキサノン(総式C10Oを有する)からなる群から選択され、特に、上述された1,1,1,2,4,4,5,5,5−ノナフルオロ−2−(トリフルオロメチル)ペンタン−3−オンである。
【0109】
1,1,1,2,4,4,5,5,5−ノナフルオロ−2−(トリフルオロメチル)ペンタン−3−オン(ドデカフルオロ−2−メチルペンタン−3−オンとも呼ばれる)は、以下の構造式(II)で表すことができ、1,1,1,2,4,4,5,5,5−ノナフルオロ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン−3−オン(ここでは簡単に「C6−ケトン」ともいい、分子式CC(O)CF(CFを有する。)は、特にその高い絶縁性と非常に低いGWPの高電圧絶縁用途のために好ましいことが見出される。
【0110】
【化6】
【0111】
具体的には、その減圧された破壊電界強度は、非常に低い誘電強度(Ecr=25kV/(cm×バール)を有する空気のものよりも、はるかに高い、240キロボルト/(cm×バール)ほどである。これは、0のオゾン破壊係数を有し、非毒性である。このため、環境への影響は、SFを用いた場合よりもはるかに低く、同時に、人間の安全のための優れた範囲が達成される。
【0112】
上記のように、有機フッ素化合物は、フルオロオレフィン、特に、ハイドロフルオロオレフィンであることができる。より具体的には、フルオロオレフィンまたはハイドロフルオロオレフィンは、それぞれ、正確に3個の炭素原子を含む。
【0113】
実施形態によれば、ハイドロフルオロオレフィンは、1,1,1,2−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,2,3,3−テトラフルオロ−2−プロペン(HFO−1234yc)、1,1,3,3−テトラフルオロ−2−プロペン(HFO−1234zc)、1,1,1,3−テトラフルオロ−2−プロペン(HFO−1234ze)、1,1,2,3−テトラフルオロ−2−プロペン(HFO−1234ye)、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)、1,1,2,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225yc)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225zc)、(Z)1,1,1,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234zeZ)、(Z)1,1,2,3−テトラフルオロ−2−プロペン(HFO−1234yeZ)、(E)1,1,1,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234zeE)、(E)1、1、2、3−テトラフルオロ−2−プロペン(HFO−1234yeE)、(Z)1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225yeZ)、(E)1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225yeE)およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される。
【0114】
本発明はさらに、以下に示す添付の図面により例示される。
【図面の簡単な説明】
【0115】
図1】本発明のガス絶縁トランスを含む本発明の例示的な電気装置の純粋な概略図。
図2】本発明による例示的な装置のトランスの一次側のスイッチング構成。
図3】本発明による例示的な装置のトランスの二次側のスイッチング構成。
【発明を実施するための形態】
【0116】
図1によれば、例示的な電気装置1は、ガス絶縁を含む電気器具10を含み、特定の実施形態では、ガス絶縁トランス101が示される。トランス101は、内部空間14を囲むハウジング12を備える。内部空間14は、有機フッ素化合物を含む、誘電絶縁流体を含む絶縁空間16を規定する。
【0117】
絶縁空間16には、電気部品18が配置され、絶縁流体に囲まれる。電気部品18は、第1の導体19で形成された一次巻線20、すなわち、第1の巻線20と、第2の導体21で形成された二次巻線22、すなわち第2の巻線22とを含み、その両方が、示される実施形態では磁気コア24の周りに配置される。第1の導体19および第2の導体21のそれぞれに対して、それぞれのブッシング26a、26bおよび28a、28bがハウジング12の壁30に配置される。
【0118】
装置1はさらに、トランス101を非動作状態から動作状態にもたらすための電気コネクタ32を含む。示された実施形態によれば、これは、電力グリッド20に一次巻線を接続する電気コネクタ32により達成される。
【0119】
装置1はさらに、トランス101が非動作状態にあるときに、すなわちトランス101が、電力グリッドから直流的に絶縁されるときに、一次巻線20に接続可能な補助電源34を備える。図示の実施形態では、補助電源34は、交流電源であり、電気コネクタ32は、電力グリッドに接続されている状態から補助電源34に接続されている状態へと、一次巻線20を切り換えるための電気スイッチ321である。
【0120】
示された実施形態によれば、電気装置1は、二次巻線22を短絡するための手段36、特にスイッチ361を備える。図1と併せて図3に開示されているように、短絡用の手段36、361と、41a、41bと、42a、42b、42cとは、電気器具10を遮断しオフグリッドにして維持するために、特にその二次側で電気器具10を遮断し、その二次側で電気器具10をグリッドから遮断して維持するために、回路ブレーカCB2、42a、42b、42cとを備えることができる。
【0121】
トランス101の一次側(ここでは供給側)の典型的なスイッチング構成は、図2に示されており、一方、二次側(ここでは負荷側)の具体的な構成は、図3に示されている。特定の実施形態によれば、トランス101は、このように、一次側でスター結線の巻線20a、20b、20cと、二次側でデルタ結線の巻線を使用する三相電力トランス101とであり、各相の配線はL1、L2、L3と略され、スター構成の中性配線は、Nと略されている。
【0122】
示される非動作状態では、回路ブレーカCB1内の接点38a、38b、38c、38d、または一次側に起因する第1の三相ブレーカのCB1は、開いており、このためトランス101は、直流的に電力グリッドから絶縁されている。この状態では、一次巻線20a、20b、20cは、それぞれの接点40a、40b、40cを閉じることにより、補助電源34に接続されことができ、対応する配線はAux、Aux、Auxと略記される。
【0123】
二次側では、それぞれの回路ブレーカCB2におけるそれぞれの接点42a、42b、42cが、または第2の3相ブレーカCB2が開いているときに、巻線22a、22b、22bは、それぞれ接点41a、41bによって短絡されることができる。
【0124】
このため、短絡用手段36、361と、41a、41bと、42a、42b、42cとは、電気器具10をグリッドから遮断しオフグリッドにして維持するために、特にその二次側で電気器具10を遮断し、その二次側で電気器具10をグリッドから遮断して維持するために、回路ブレーカCB2、42a、42b、42cを備えることができる。これにより、接点41a、41bは、巻線20または22との間、ここでは二次巻線部22a、22b、22c間の接点を短絡させるように機能する。
【0125】
補助交流電源34により、電圧は、二次側の巻線22a、22b、22cに少なくともほぼ定格の電流を生成するために、一次側の巻線20a、20b、20cに誘導されることができ、最終的に電力損失による絶縁空間16の効率的な加熱を可能とし、このため特に、有機フッ素化合物がその中に含まれる絶縁流体を気相において維持する。
【0126】
例示的な実施形態では、シンク44は、図1に示すハウジングの底壁30’内に配置され、シンク44は、回収タンク46へと開く。シンク44と回収タンク46とは、絶縁流体の凝縮物を回収するために設計されている。熱コイル481の形態の追加の熱素子48は、回収タンク46内に含まれる凝縮液を蒸発させるために、回収タンク46に取り付けられる。追加の熱素子48は、電源用補助電源34に接続される。
【0127】
例示的な実施形態では、トランス101はさらに、ハウジング12の底部領域に配置されるファン50を含むことができる。補助電源熱素子48と同様に、ファン50もまたたとえば、電力供給用の補助電源34に接続される。
【0128】
トランス101は、さらに、電気部品18からある距離だけ離れてハウジング12に接続されたラジエータ52を含むことができる。ラジエータ52は、巻線20、22および/またはコア24のいずれかで発生した熱を搬送する熱伝達流体を通過させるように設計され、これにより内部空間14からトランス101の外側に熱を伝達する。
【0129】
熱伝達流体の流れは、図1に矢印によって概略的に示されている熱伝達流体路54を画定する。
【0130】
電気器具10は、少なくとも熱伝達流体の一部がラジエータ52をバイパスすることを可能とするように、ラジエータ52の上流で熱伝達流体路54から分岐する熱伝達流体のためのバイパスチャネル56を含むことができる。
【0131】
バイパスチャネル56の分岐の下流で、熱伝達流体路54は、ラジエータ52を開閉するラジエータ入口チャネル58を形成する。バイパスチャネル56の分岐では、バルブ60、特に3ポートバルブ60は、少なくとも部分的にバイパスチャネル56およびラジエータ入口チャネル58のそれぞれを開閉するように構成されることができる。
【0132】
ラジエータ52に直接に隣接して下流側に、すなわち熱伝達流体の下流方向において、熱伝達流体路54は、ラジエータ52からある距離だけ離れてバイパスチャネル56が開く、ラジエータ出口チャネル62を形成する。
【0133】
ファン50によって、熱伝達流体の流れは、具体的には、バイパスチャネル56および/またはラジエータ出口チャネル62から、特に絶縁空間16へと生成されることができる。
【0134】
トランス101は、さらに、温度センサ64、具体的には温度計と、圧力および/またはガス濃度センサ66、具体的に圧力計および化学センサ68、特にクロマトセンサまたは光学センサ、より具体的にはUVセンサとを含む。これらのセンサにより、絶縁空間16の実際の条件が決定されることができる。具体的には、ガス組成、ガス密度が決定され、公称の組成物および/または公称濃度と比較されることができる。
【0135】
たとえば、トランス101の動作前に、すなわち巻線20、22が依然として電力グリッドから直流的に絶縁された開始位相において、一次巻線20は、補助電源34に接続され、二次巻線は短絡される。図示の実施形態では、補助電源34は、二次巻線22で定格電流の100%以下を生成するために必要な電圧を一次巻線20で誘導するために定格化される補助交流電源341である。電力損失のために、巻線20、22は、加熱され、このため凝縮された絶縁流体が気体状態にもたらされることを可能にし、絶縁空間16の温度上昇をもたらす。最終的に、公称組成の、結果として十分に高い誘電強度の絶縁ガスは、このためトランス101の動作開始前に達成されることができる。
【0136】
換言すれば、補助電源34は、電気器具10の動作閾値絶縁耐力値よりも高く誘電絶縁流体の気相の絶縁耐力を増大させるために、少なくとも部分的にまたは完全に誘電絶縁流体を蒸発させるための熱を生成するように設計されている。
【0137】
このため、好ましくは、トランス101の巻線20、22は、動作前に絶縁空間16における絶縁流体に存在する任意の凝縮液を蒸発させるために必要な熱量を発生する熱素子としてふるまう。
【0138】
動作中に、熱伝達流体の一定の流れは、上述したファン50によって生成され、このためトランス101が常に冷却されていることを確実にする。ファン50は、全体の絶縁空間16全体に均一な絶縁流体組成物および熱分布を得るために、絶縁流体を恒久的に混合する役割を担う。
【0139】
上記センサ64、66、68により、絶縁空間16の条件、特に温度条件、圧力ならびに絶縁流体の組成および密度は、常時監視されることができる。
【0140】
たとえば、測定温度および/または公称値との有機フッ素化合物の分圧の比較が、液体有機フッ素化合物を気相にもたらす必要性を明らかにする場合、これは、ラジエータ52をバイパスし、熱伝達流体の量を制御する、バルブ60によって達成することができる。具体的には、ラジエータ52をバイパスする熱伝達流体の量が増加される。
【0141】
他方、絶縁流体を完全にガス状態で維持するために必要な熱を考慮しても、過剰な熱が生成されていることを測定温度が明らかにした場合には、当該過剰な熱は、ラジエータ52を通過する熱伝達流体のそれぞれの量を指示することによって放出されることができる。このため、バイパスチャネル56は閉じられることができる。
【0142】
トランス101および/または絶縁流体の組成物の電気的動作を制御するために、トランスは、たとえばファン50のモードおよび、たとえば、バルブ60のモードを制御することによってバイパスチャネルが開放される程度を制御することができる制御装置70を備える。
【0143】
参照番号一覧
【符号の説明】
【0144】
1 電気装置
10、101 電気器具、トランス
12 ハウジング
14 内部空間
16 絶縁空間
18 電気部品
19 第1の配線
20 第1の(一次)巻線
21 第2の配線
22 第2の(二次)巻線
24 磁気コア
26a、26b 第1の配線用のブッシング
28a、28b 第2の配線用のブッシング
30、30’ ハウジング壁、ハウジングの底壁
32 電気コネクタ
321 電気スイッチ
34、341 補助電源、補助交流電源
36、361 二次巻線を短絡する手段、スイッチ
38a−38d 回路ブレーカ(一次側)の接点
40a−40c 巻線(一次側)を補助電源に接続する接点
41a、41b 巻線短絡用接点(二次側)
42a−42c 回路ブレーカ(二次側)の接点
44 シンク
46 回収タンク
48、481 追加の熱要素、ヒートコイル
50 ファン
52 ラジエータ
54 熱伝達流体路
56 バイパスチャネル
58 ラジエータ入口チャネル
60 バルブ
62 ラジエータ出口チャネル
64 温度センサ
66 圧力および/またはガス密度センサ
68 化学センサ
70 制御装置
図1
図2
図3