(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1つの半径方向突出部は、前記長手方向軸線に沿う実質的に同一の軸方向の場所のところに位置する少なくとも2つの半径方向突出部を含む、請求項1記載のシリンジ。
前記少なくとも1つの半径方向突出部は、前記プランジャ周りの実質的に同一の円周方向の場所のところに位置する少なくとも2つの半径方向突出部を含む、請求項1記載のシリンジ。
【背景技術】
【0003】
流体特性を備えた物質、例えば気体、液体、ペースト、スラリなどを貯蔵したり運搬したりするためのシリンジが知られている。シリンジは、ポートと流体連通状態にあるボアを備えた筒および筒内に設けられたピストンを有する場合がある。ピストンを並進させてポートから遠ざけるとポートを通って物質を筒中に引き込むことができる。別法として、ピストンを並進させてボアに近づけるとポートを通って物質を筒から放出することができる。
【0004】
シリンジの筒は、透明または半透明の材料で形成される場合があり、その結果、ボア内でのピストンの位置は、筒越しに見えるようになる。さらに、シリンジの筒には標識が設けられている場合があり、標識に対するピストンの長手方向整列状態がピストンとポートとの間に貯蔵された物質の量を視覚的に指示することができるようになっている。
【0005】
米国特許第5,009,645号(以下、「第´645号特許」という)明細書は、測定された量の物質(例えば、薬物)を小出しするシリンジについて説明することを意図している。第´645号特許の明細書に記載されたシリンジは、筒と、十字形横断面を備えたプランジャロッドと、プランジャロッドに固定されていて、プランジャの移動距離を確実に設定し、それによりシリンジから小出しされる物質の量または体積を制御する無限調節可能な停止部材とを有している。しかしながら、第´645号特許のシリンジを用いた多数の投与分または投与量の順次送り出しは、投与分送り出し相互間における無限調節可能な停止部材の不正確な変位に起因して生じる投与分決定上の誤差、無限調節可能な停止部材の位置を調節するための過度の時間の浪費またはこれら両方をもたらす場合がある。
【0006】
米国特許出願公開第2005/0137532号(以下、「第´532号特許公開」という)明細書は、プランジャを有する薬物投与ユニットについて説明することを意図しており、プランジャに沿って再使用不能なストロークストップが順次配置されている。第´532号特許公開明細書によれば、ストロークストップは、弱体化線の周りに脆弱であり、従って、ストロークストップを各々壊すことにより、推進プランジャの前方運動および対応の投与分の投与が可能である。しかしながら、第´532号特許公開のストロークストップは、そのように構成されている空のシリンジの充填を妨害する場合があり、従って、用途をあらかじめ充填されたシリンジに限定する。さらに、第´532号特許公開のストロークストップは、これらの性質が脆弱なので本来的に再使用不能であり、ストロークストップは、複雑でありかつ製造費が高くつく場合がある。
【0007】
米国特許第5,318,544号(以下、「第´544号特許」という)明細書は、流体の所定の放出体積を計量するシリンジについて説明することを意図している。第´544号特許のシリンジは、管、クリップ、および停止面が設けられている計量プランジャを有し、プランジャは、クリップに設けられた開口部中に挿入されてシリンジチューブ内に活動可能に配置される。しかしながら、第´544号特許のプランジャ停止面は、製造するのが困難でありまたは製造費が高くつく場合のある複雑な形状を有する。さらに、第´544号特許の停止面は、充填ステップ中の軸方向並進に加えてプランジャの回転を必要とすることによって空のシリンジの充填を妨害する場合がある。
【0008】
米国特許第6,579,269号(以下、「第´269号特許」という)明細書は、可聴音を伴う場合のあるプランジャの摺動変位のばらつきを許容する構造を備えたシリンジを記載することを意図している。米国特許出願公開第2009/0287161号(以下、「第´161号特許出願」という)明細書は、親指を持ち上げてプッシュロッドから親指による圧力を除いたあと、油圧運動量が流体を送り出し続けるのを阻止するよう作用することができる物理的停止部または用量投与インジケータを有するシリンジを記載することを意図している。しかしながら、第´269号特許明細書も第´161号特許公開明細書も、投与量分割シリンジ内でのプランジャの運動を可能にするために減速抵抗力と加速抵抗力の差を加減する非対称斜面を提供してはいない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面の各図を参照して本発明の種々の観点について説明する。なお、別段の指定がなければ、図全体にわたって、同一の参照符号は、同一の部分を示している。
【0017】
図1は、本発明の観点によるシリンジ100の略図である。シリンジ100は、筒102、プランジャ104、およびプランジャ104に設けられた少なくとも1つの半径方向突出部106を有する。筒102は、第1の孔またはポート110、第2の孔またはポート112、および第1の孔110と第2の孔112との間に延びる内部ボア114を画定する内面108を有している。第1の孔110は、筒102の長手方向軸線120に沿って筒102の遠位端118のところに配置されるのが良く、第2の孔112は、筒102の長手方向軸線120に沿って筒102の近位端122のところに配置されるのが良い。理解されるように、第1の孔110の中心は、長手方向軸線120上に位置するのが良いが、その中心が筒102の遠位端118のところに配置されるものとみなされる長手方向軸線120上に位置する必要はない。さらに、理解されるように、第2の孔112の中心は、長手方向軸線120上に位置するのが良いが、その中心が筒102の近位端122のところに配置されるものとみなされる長手方向軸線120上に位置する必要はない。
【0018】
筒102は、筒102から少なくとも部分的に半径方向126に遠ざかって延びたフランジ124を有するのが良く、この場合、半径方向126は、軸方向128に垂直である。本発明の一観点によれば、軸方向128は、長手方向軸線120に平行である。本発明の別の観点によれば、フランジ124は、筒102から実質的に半径方向126に遠ざかって延びている。
【0019】
プランジャ104は、遠位端132および近位端134を備えたシャフト130を有する。ピストン136がシャフト130の遠位端132に結合され、半径方向突出部106がシャフト130の外面から半径方向126に少なくとも部分的に延びている。半径方向突出部は、シャフトの遠位端132と近位端134との間でシャフト130の長手方向長さに沿って設けられている。プランジャ104は、シャフト130の近位端134のところに設けられたフランジ140をさらに有するのが良く、この場合、フランジ140は、シャフト130から外方に半径方向126に少なくとも部分的に延びている。理解されるように、シャフト130は、円形断面、多角形断面、長方形断面、十字形断面、または当業者に知られている任意他のシャフト断面を有することができる。
【0020】
半径方向突出部106は、シャフトの長手方向軸線146回りに軸対称回転平面を有するのが良く、半径方向突出部106は、シャフト130回りの円周方向170にシャフト130を部分的にまたは完全に包囲する。変形例として、半径方向突出部106は、半径方向126および軸方向128を含む平面内に断面を定める任意他の構造を有しても良く、この場合、この構造は、シャフト130から半径方向126に少なくとも部分的に突き出る。本発明の観点によれば、半径方向突出部106は、シャフト130に固定され、その結果、半径方向突出部106は、シャフト130の長手方向軸線146に沿ってシャフト130に対して自由には並進することはできず、半径方向突出部106は、長手方向軸線146回りにシャフト130に対して自由には回転することができないようになっている。
【0021】
少なくとも1つの半径方向突出部106は、軸方向128に対してシャフト130に沿って互いに異なる軸方向場所のところに設けられた2つまたは3つ以上の半径方向突出部106を含む半径方向突出部の軸方向アレイを含むのが良い。軸方向アレイに属する2つまたは3つ以上の半径方突出部106は、シャフト130に沿う実質的に同一の円周方向場所に設けられるのが良い。
【0022】
少なくとも1つの半径方向突出部106は、プランジャ104の長手方向軸線146周りの互いに異なる円周方向場所に設けられた半径方向突出部106の円周方向アレイを含むのが良い。円周方向アレイに属する2つまたは3つ以上の半径方向突出部106は、軸方向128に対してシャフト130に沿う実質的に同一の軸方向場所に設けられるのが良い。
【0023】
つぎに
図2〜
図4を参照すると、
図2は、本発明の一観点によるプランジャ104の半径方向断面図であり、
図3は、本発明の別の観点によるプランジャ104の半径方向断面図であり、
図4は、本発明の別の観点によるプランジャ104の半径方向断面図である。
【0024】
図2に示されているように、2つまたは3つ以上の半径方向突出部106は、シャフト130周りに円周方向アレイをなして配置されるのが良く、2つまたは3つ以上の半径方向突出部106のうちの1つは、円周方向170で見て2つまたは3つ以上の半径方向突出部106のうちの他方と実質的に反対側に配置されている。
【0025】
図3に示されているように、2つまたは3つ以上の半径方向突出部106は、円周方向170で見てシャフト130周りに互いに異なる円周方向場所のところに配置された3つの半径方向突出部106を含むのが良い。本発明の観点によれば、3つの半径方向突出部106が円周方向170で見て実質的に一様なアレイをなして配置されるのが良い。本発明の別の観点によれば、3つの半径方向突出部106は、全て、シャフト130に沿って実質的に同一の軸方向場所に配置されるのが良い。
【0026】
図4に示されているように、2つまたは3つ以上の半径方向突出部106は、円周方向170で見てシャフト130周りの互いに異なる円周方向場所に配置された4つの半径方向突出部106を含むのが良い。本発明の観点によれば、4つの半径方向突出部106は、円周方向170で見て実質的に一様なアレイをなして配置されるのが良い。本発明の別の観点によれば、4つの半径方向突出部106は、全て、シャフト130に沿う実質的同一の軸方向場所に配置されるのが良い。
【0027】
図1を参照すると、プランジャ104は、軸方向128に沿って筒102のボア114内で並進するよう構成されている。さらに、ピストン136は、筒102の内面108と滑動かつ封止係合関係をなすよう構成されている。本発明の一観点によれば、筒102の長手方向軸線120は、プランジャ104の長手方向軸線146と実質的に同軸である。しかしながら、理解されるように、筒102の長手方向軸線120は、プランジャ104の長手方向軸線146と実質的に同軸である必要はない。
【0028】
軸方向128に沿う第1の孔110から遠ざかるピストン136の並進は、物質を、筒102の外部から第1の孔110を経て筒102の内部ボア114内に引き込むよう作用することができる。これとは逆に、軸方向128に沿う第1の孔110に向かうピストン136の並進は、物質を、筒102の内部ボア114から第1の孔110を通って放出するよう作用することができる。
【0029】
筒102の内面108は、ボア114を備えた近位端部122の近くに孔150を備え、この孔は、長手方向軸線120から孔150を画定する内面108の部分までの半径方向寸法152を有している。本発明の観点によれば、半径方向寸法152は、ボア114内のピストン136の軸方向場所と筒の近位端部122との間にボア114の最も小さい半径方向寸法を有する。本発明の別の観点によれば、孔150は、孔112の同一の軸方向場所のところに設けられている。本発明の別の観点によれば、孔150は、筒の長手方向軸線120に向かって半径方向に突き出たアンダーカット151によって画定されている。
【0030】
半径方向寸法152は、プランジャ104の長手方向軸線146からピストン136の外面までの半径方向寸法154よりも小さいのが良い。さらに、半径方向寸法152は、筒の長手方向軸線120から軸方向128で見てピストン136と孔110との間に設けられている筒102の内面108の部分まで測定した半径方向寸法156よりも小さいのが良い。
【0031】
少なくとも1つの半径方向突出部106は、最小近位孔150のところでのプランジャ104の外面と筒の内面108との間の半径方向締め代または干渉度の変化により筒102に対するプランジャ104の動きに対抗する非一様な抵抗または力を発揮するよう構成されている。本発明の観点によれば、プランジャシャフト130の一部分は、プランジャ104の長手方向軸線146からシャフト130の外面まで延びていて筒孔150の半径方向寸法152以下である半径方向寸法160を有するのが良く、その結果、ピストン136がボア114内に配置されたときに孔150のところでプランジャシャフト130と筒の内面108とが殆ど接触せずまたは全く接触しないようになる。本発明の別の観点によれば、プランジャ104の長手方向軸線146から半径方向突出部106の外面までの半径方向寸法162は、筒孔150の半径方向寸法152よりも大きいのが良く、その結果、孔150のところでの半径方向突出部106と内面108との間の半径方向締め代は、筒102に対するプランジャ104の並進に対する抵抗を増大させるようになっている。かくして、プランジャ104の半径方向プロフィールは、軸方向128で見て筒102に対するプランジャ104の存在場所を表す指示する手応えをシリンジ100のユーザに提供することができる。
【0032】
半径方向突出部106の外面と孔150のところでの筒の内面108の摺動接触により、半径方向突出部106の弾性変形、半径方向突出部106の塑性変形、筒の内面108の弾性変形、筒の内面108の塑性変形、またはこれらの組み合わせを生じさせることができる。本発明の観点によれば、半径方向突出部106の軸方向長さ164全体は、半径方向突出部106のどの部分もプランジャ104からちぎれるようにしないで、プランジャ104を筒102に対して並進させることによって孔150を横切ることができる。したがって、少なくとも1つの半径方向突出部106は、筒102内におけるプランジャ104の操作によって、プランジャ104に対してもろくはない場合がある。
【0033】
図5および
図6を参照すると、
図5は、本発明の一観点によるシリンジ100の部分断面図であり、
図6は、本発明の別の観点によるシリンジ100の部分断面図であることが理解されよう。
図5に示されているように、プランジャ104を半径方向突出部106が先導する初期接触箇所500のところで筒102に接触するまで筒102に向かって並進させることができ、その結果、先導初期接触箇所500は、プランジャ104の長手方向軸線146、筒102の長手方向軸線120、またはこれら両方から半径方向距離502だけ離隔されるようになる。
【0034】
図6に示されているように、プランジャ104を半径方向突出部106が後続の初期接触箇所510のところで筒102に接触するまで筒102に向かって並進させることができ、その結果、後続初期接触箇所510は、プランジャ104の長手方向軸線146、筒102の長手方向軸線120、またはこれら両方から半径方向距離512だけ離隔されるようになる。半径方向距離512(
図6参照)は、アンダーカット151を構成する筒102の内面108のプロフィールに応じて、半径方向距離502(
図5参照)と等しくても良く、あるいは等しくなくても良いことは理解されよう。
【0035】
図7〜
図11は、本発明の種々の観点によるプランジャ104の軸方向断面図である。
図7に示されているように、プランジャ104は、シャフト130の外面から最大半径方向高さの箇所704まで延びる遠位斜面またはランプ702を備えた半径方向突出部106を有する。遠位斜面702の最大半径方向高さ箇所704は、長手方向軸線146から半径方向距離706を置いたところに配置されている。遠位斜面702は、筒102とのその先導初期接触箇所500のところに、半径方向126および軸方向128に対して勾配708を有している。
【0036】
半径方向突出部106はまた、シャフト130の外面から最大半径方向高さの箇所712まで延びる近位斜面またはランプ710を備えている。近位斜面710の最大半径方向高さ箇所712は、長手方向軸線146から半径方向距離714を置いたところに配置されている。近位斜面710は、長手方向軸線146から半径方向距離502を置いたところに位置する箇所718のところに、半径方向126および軸方向128に対して勾配716を有している。
【0037】
理解されるように、遠位斜面702に関する最大半径方向高さ箇所704までの半径方向距離706は、近位斜面またはランプ710に関する最大半径方向高さ箇所712までの半径方向距離714に等しくても良く、あるいはこれに等しくなくても良いことは理解されよう。本発明の観点によれば、遠位斜面702に関する最大半径方向高さ箇所704は、軸方向128で見て近位斜面に関する最大半径方向高さ箇所712から平坦な表面720によって隔てられるのが良い。本発明の別の観点によれば、遠位斜面702に関する最大半径方向高さ箇所704は、近位斜面710に関する最大半径方向高さ箇所712と一致するのが良く、したがって、これらの間には平坦面720が存在しない。
【0038】
遠位斜面702を近位斜面710または平坦面720からこれらの間の勾配の不連続性によって識別することができることは理解されよう。さらに、遠位斜面702か近位斜面710かのいずれかから半径方向突出部106の隣接の表面まで移行するコーナー部が平滑であっても丸みが付いていても、それにもかかわらず、当業者であれば勾配のかかる不連続部を識別できることは理解されよう。
【0039】
本発明の観点によれば、遠位斜面702の勾配708の絶対値は、近位斜面710の勾配716の絶対値に等しくはない。本発明の別の観点によれば、遠位斜面702の勾配708の絶対値は、近位斜面710の勾配716の絶対値よりも大きい。例えば、遠位斜面702の勾配708の絶対値は、45°を超えるのが良く、近位斜面710の勾配716の絶対値は、45°未満であるのが良い。本発明のさらに別の観点によれば、遠位斜面702の勾配708の絶対値は、近位斜面710の勾配716の絶対値よりも小さい。
【0040】
理解されるように、遠位斜面702および近位斜面710は、半径方向126および軸方向128によって定められた平面内に直線状のプロフィールを有するのが良く、したがって、遠位斜面702の勾配708は、遠位斜面702の直線状プロフィール上に位置し、近位斜面の勾配716は、近位斜面710の直線状のプロフィール上に位置するようになる。
【0041】
本発明の観点によれば、遠位斜面702および近位斜面710のプロフィールは、長手方向軸線146に対して直角でありかつ軸方向128で見て最大半径方向高さの箇所704,712相互間の中間の箇所732のところに位置する平面730に関して非対称であるのが良い。本発明の別の観点によれば、最大半径方向高さ箇所704,712は、互いに一致しており、平面730は、最大半径方向高さ箇所704,712を通る。
【0042】
図8に示されているように、遠位斜面702か近位斜面710かのいずれかは、半径方向126および軸方向128によって定められた平面内に凹状のプロフィールを有することができる。
図9に示されているように、遠位斜面702か近位斜面710かのいずれかは、半径方向126および軸方向128によって定められた平面内に凸状のプロフィールを有することができる。
図10に示されているように、遠位斜面702および近位斜面710は、これら両方共半径方向126および軸方向128によって定められた平面に対して、それぞれ凹状のプロフィールおよび凸状のプロフィールを有することができる。これとは逆に、近位斜面710は、凸状のプロフィールを有しても良く、近位斜面710は、凹状のプロフィールを有しても良いことが理解されよう。
【0043】
図11に示されているように、遠位斜面702は、当接面738を有するのが良く、当接面738は、筒102の内面108との先導初期接触箇所500を備える(
図5参照)。当接面738は、直線状のプロフィール、凹状のプロフィール、または凸状のプロフィールを有することができる。本発明の観点によれば、先導初期接触箇所500のところでの当接面738の接線733は、長手方向軸線146と約90°の角度734をなしている。本発明の別の観点によれば、長手方向軸線146と約90°の角度736をなす近位斜面710の接線は存在しない。この場合、約90°は、約80°約と100°との間の角度であると理解されよう。
【0044】
本発明は、シリンジ一般に利用でき、特に、ユーザに伝わる物質の量の手応えをもたらすシリンジに利用できる。さらに、本発明は、医学、製造、建築、保守および修理、農業、食品調理の状況で、またはシリンジを用いることができる任意他の状況で用いられるシリンジに利用できる。したがって、本発明の観点は、薬物を患者に送り出し、体液を患者から取り出し、あるいは他の流体物質、例えば空気、接着剤、潤滑剤、食品などを送り出すシリンジに利用できる。
【0045】
つぎに
図1を参照してシリンジ100の作用について説明する。プランジャ104は、抵抗が比較的な小さな状態で筒102のボア114内でポート110に向かって並進し、ついには、少なくとも1つの半径方向突出部106が先導初期接触箇所500のところで筒102の内面108に接触するようになる(
図5参照)。プランジャ104の半径方向突出部106と筒102の初期接触後、抵抗の増大によりユーザには、筒102に対するプランジャ104の軸方向位置を指示する手応えが与えられる。
【0046】
本発明の観点によれば、プランジャ104の軸方句の長さに沿う少なくとも1つの半径方向突出部106の存在場所は、シリンジ100から放出される物質の所望の投与分または投与量に関し、ボア114内におけるピストン136の掃過体積に関し、筒102に対する停止箇所に対応している。したがって、シリンジ100のユーザは、少なくとも1つの半径方向突出部106と筒102の内面108との初期接触によって生じる手応えを感じると、筒102中へのプランジャ104の並進を停止させるのが良い。
【0047】
つぎに、ユーザは、少なくとも1つの半径方向突出部106と筒102の内面108の衝突に抗してプランジャ104を並進させるのに十分な力を加えることによってシリンジ100から物質の第2の投与分を送り出す段階に移るのが良い。半径方向突出部106の近位斜面が筒102の内面108との後続初期接触状態にあるとき、ユーザは、筒102中へのプランジャ104のそれ以上の並進に対する抵抗の減少を感じ取ることができ、そしてひきつづきプランジャ104を筒102中に並進させることができ、ついには、プランジャの抵抗の第2の増大が知覚されるようになる。プランジャの抵抗の第2の増大は、次の半径方向突出部106の遠位斜面とハードストップ、例えばピストン136と筒の内面108の当接接触との初期接触またはプランジャ104と筒102との任意他の当接接触の結果である場合がある。
【0048】
本発明の観点によれば、半径方向突出部106の遠位斜面と近位斜面の非対称により、設計者は、少なくとも1つの半径方向突出部106と筒102の内面108との先導初期接触と後続初期接触の相対的抵抗を加減することによって手応えまたはクリック感をさらに向上させることができる。例えば、遠位斜面の勾配は、近位斜面の勾配よりも急峻であるのが良く、それにより投与分を送り出す際の筒102に対するプランジャ104の急激な減速およびシリンジ100からの物質の次の投与分の送り出しの開始時における筒102に対するプランジャ104の緩やかな加速が行われる。
【0049】
かくして、本発明の観点は、筒102に対するプランジャ104の運動に関して可変抵抗または力による手応えによってシリンジ100の筒102内におけるプランジャ104の軸方向位置を指示する装置および方法を提供している。したがって、ユーザは、筒102に対するプランジャ104の配置場所を目で観察する必要なく、しかも潜在的にシリンジ100を片手だけで操作しながらシリンジ100からの物質の多数回の投与分を送り出すことができ、それによりユーザのもう一方の手を自由にしてシリンジ100からの物質の送り出しと並行して他の操作を行うことができる。
【0050】
本出願人は、多数回投与分または量の各々を送り出すために迅速なプランジャ動作を用いて多数回投与分の薬物を単一のシリンジから送り出す必要性を認識した。例えば、薬物の経鼻投薬は、部分投与量を患者の各外鼻孔に迅速に連続してかつ高い噴霧化度で送り出す手法から恩恵を受けることができる。
【0051】
噴霧化度は、噴霧化オリフィス前後の圧力降下の増大およびかくして噴霧化オリフィスを通る流量の増加につれて増大する。したがって、噴霧化度は、薬物送り出し中における筒102に対するプランジャ104の高い速度から恩恵を受けることができる。そして、本出願人は、多数回投与型シリンジに関して高いプランジャ速度の結果として、投与分がシリンジの筒102内におけるプランジャ104の相対位置の視覚的フィードバックにより制御される場合、各投与分における薬物の量とおよび噴霧化度の両方に関して反復性および再現性の面における誤差が生じる場合がある。確かに、視覚的フィードバックに基づく投与量の誤差は、少なくともプランジャ104を迅速に減速させると同時に所望の投与分に対した軸方向存在場所のところで正確に停止させるのが困難なために、高いプランジャ速度の必要性によって深刻化する場合がある。
【0052】
本発明の観点は、従来型の視覚的フィードバックではなく、シリンジのプランジャ104と筒102との可変締め代によって投与分の手応えを提供することによって従来方式の欠点を解決している。上述したように、シリンジ100のプランジャ104と筒102との可変締め代を本発明の観点に従って変えることができ、それにより筒102内におけるプランジャ104の位置を指示する種々の触覚で分かる締め代の程度を提供することができる。確かに、個々の投与量を表す手応えを提供することによって、シリンジユーザは、プランジャの移動率および患者の鼻に対する孔110の存在場所に注意を向けることができ、それにより投与量と噴霧化度の両方の繰り返し性および再現性を向上させることができる。
【0053】
加うるに、本発明の観点は、例えば充填手技中における筒102から離れるプランジャ104の並進を可能にする投与量分割シリンジ100を提供している。例えば、上述した第´544号特許明細書および第´467号特許公開明細書に記載されている従来の多数回投与型シリンジとは異なり、本発明のシリンジは、シリンジに物質を充填するためにプランジャシャフト130の回転を必要としないものとすることができる。
【0054】
シリンジ100は、第1の半径方向突出部106と筒102との接触までのプランジャ104の並進に対応した物質の第1の投与分は、第2の半径方向突出部106とシリンジ100の筒102との接触までのプランジャ104の並進に対応した物質の第2の投与分と量が実質的に等しくすることができるように半径方向突出部106の軸方向アレイを備えた状態で構成できる。しかしながら、理解されるように、シリンジ100は又、他の物質送り出しプロセスに関し、物質の第1の投与量が物質の第2の投与量とは異なるよう構成されても良い。
【0055】
別段の指定がなければ、「実質的に」という用語は、「程度が相当大きい」を意味するものとし、あるいは多いけれども必ずしも否定された全体ではないことを意味している。
【0056】
理解されるように、上記説明は、開示した装置および方法の実施例を提供している。しかしながら、本発明の他の具体化例が上述の実施例とは細部において異なる場合のあることが想定される。本発明または本発明の実施例といった場合これらは全て、その時点で説明されている特定の実施例を参照していることを意図しており、本発明の範囲全般に関する限定を意味することを意図しているものではない。ある特定の特徴に関する全ての差別的記載および軽視的記載は、これらの特徴について優先性または好適性がないことを示すものであるが、別段の指定がなければ本発明の範囲からかかる特徴を全く排除するものではない。
【0057】
本明細書に示されている値の範囲についての記載は、本明細書において別段の指定がなければ、その範囲に含まれる別々の値の各々を個々に参照する簡潔な表記法として役立つことを意図しているに過ぎず、別々の値の各々は、これが個別的に本明細書に記載されているかのごとく本明細書中に組み込まれる。本明細書において説明した方法の全ては、別段の指定がなければまたは文脈上明らかに矛盾しない限り、任意適当な順序で実施できる。