(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のこの詳細な説明は、読む者の便宜のためにセクションに分割される。この開示を読む上で当業者に明白なように、本明細書に記載され、例示される個々の実施態様各々は、本開示の範囲または精神から外れることなく、個別の構成要素および、他のいくつかの実施態様(この開示の同一または異なるセクションに記載されるかにかかわらない)のいずれかの特徴から容易に分離されるかまたは該特徴と組み合わされる特徴を有する。任意の記載の方法が、記載の事象の順にまたは理論上可能な他の順に実施され得る。本開示の実施態様は、他に断らない限り、当該技術分野の範囲内である、有機合成化学、生化学、生物学、分子生物学、組換DNA技術、薬理学などの技術を用いるだろう。該技術は、文献中で十分に説明されている。この開示は、記載される特定の実施態様に制限されず、実際には本発明の実施態様は、当然本明細書に記載のものから異なり得る。
【0021】
I. 定義
本発明の範囲は請求の範囲によりのみ制限されるため、本明細書で用いられる用語は、特定の実施態様のみを記述する目的のためであり、制限することを意図しない。他に定義されない限り、本明細書で用いるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解される意味と同じ意味を有する。本明細書および請求項において、反対の意図が明白でない限り以下の意味を有すると定義されるだろう多くの用語への言及がなされるだろう。いくつかの場合において、通常理解される意味を有する用語が、明確性および/または即時参考のために本明細書で定義され、本明細書での該定義の包含は、当該技術分野において一般的に理解される用語の定義に対する本質的な違いを表すとして解釈されるべきでない。
【0022】
他に定義されない限り、本明細書で用いるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様または同等である任意の方法および物質が本発明の実施または試験において用いられ得るが、好ましい方法、デバイスおよび物質はここで記述される。本明細書で引用されるすべての技術および特許の刊行物は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。本明細書のいかなる記載も、本発明が先行発明によって該開示に先行する権利を有しないことを認めるものとして解釈されるべきでない。
【0023】
範囲を含むすべての数字表示、例えばpH、温度、時間、濃度および分子量は、必要に応じて、0.1または1.0の増加量により(+)または(-)変化する近似値である。必ずしも明示的に示されていなくても、用語「約」がすべての数字表示の前に付くと解されるべきである。
【0024】
単数形「a」、「an」および「the」は、他に明確に断らない限り、複数形の言及も含む。したがって、例えば「化合物」への言及は、複数の化合物を含む。
【0025】
用語「投与」は、宿主、例えばヒトへの本開示の化合物、組成物または薬剤を導入することを指す。薬剤の投与の1つの好ましい経路は、経口投与である。他の経路は、静脈内投与および皮下投与である。
【0026】
用語「含む」は、化合物、組成物および方法が記載される要素を包含するが、他を除外しないことを意味することを意図する。「から本質的になる」は、化合物、組成物および方法を定義するために用いられるとき、請求項に記載の発明の基礎的および新規な特徴に実質的に影響するだろう他の要素を除外することを意味するものとする。「からなる」は、請求項において特定されていない任意の要素、工程または成分を除外することを意味するものとする。これらの移行句の各々により定義される実施態様は、本発明の範囲内である。
【0027】
商品名Sarasar(Schering)でも知られる用語「ロナファルニブ」または「EBP994」は、次に示す構造式:
【化1】
を有するFTase阻害剤4(2[4-[(11R)-3,10-ジブロモ-8-クロロ-6,11-ジヒドロ-5Hベンゾ[5,6]-シクロヘプタ[1,2b]ピリジン-11イル]-ピペリジノ]-2-オキソエチル]-1-ピペリジンカルボキサミド)(Sch-66336またはSCH 66336としても特定される)を指す。
【0028】
ロナファルニブは、およそ200℃の融点を有する結晶性固体であり、非吸湿性である。その分子量は638.7である。固体状態において、化合物は熱に安定である。溶液において、それは中性pHで安定であるが、酸性または塩基性条件で加水分解するだろう。それは、難水溶性の三環式化合物であり、これは結晶形態で製剤化されたとき、動物において低く可変なバイオアベイラビリティを生じる。相当な努力が、経口バイオアベイラビリティを向上させるために製剤開発に捧げられてきた。原薬に加えて、カプセル剤における投与のためのロナファルニブの適切な医薬製剤は、ポビドン、ポロキサマー188、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムを含有する。製品は、最適なバイオアベイラビリティを達成するために薬物:ポビドン(1:1)共沈物で製剤化される。これらは、市販製品で一般に用いられる安全で十分試験された添加剤である。
【0029】
ヒト血清または血漿試料の用語「HDV RNAウイルス量」または「ウイルス量」は、所与の量のヒト血清または血漿試料におけるヒトHDV RNAのコピー数を指す。現在、HDV RNAの検出のための1つの市販の試験(Quest Therapeutics)があるが、臨床的試料におけるHDV RNAの定量用の市販の臨床検査はない。しかしながら、文献(例えば、Kodani et al., 2013, J. Virol. Methods, 193(2), 531;およびKaratayli et al., 2014, J. Clin. Virol, 60(1), 11)で報告されたいくつかの該アッセイは、本発明の方法に従って用いるのに適した血清または血漿中のHDV RNAの定量のための定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)アッセイを利用する。アッセイ中に生成されるシグナル量は、試料中のHDV RNA量に比例する。試験試料からのシグナルは、定量されたデルタ型肝炎RNA標準の希釈系列のシグナルと比較され、ゲノムコピーのコピー数が計算される。
【0030】
ヒト(宿主)に関して用語「HDV感染」は、宿主がHDV感染を患っているという事実を指す。典型的にHDV感染ヒト宿主は、宿主血清もしくは血漿1mL当たり少なくとも約2 log HDV RNAコピーまたは宿主血清もしくは血漿1mL当たりHDV-RNAの102コピー、頻繁に宿主血清もしくは血漿1mL当たり少なくとも約3 log HDV RNAコピーまたは宿主血清もしくは血漿1mL当たりHDV-RNAの103コピー、および頻繁に、特にいずれの治療中にない患者について、宿主血清もしくは血漿1mL当たり少なくとも約4 log HDV RNAコピーまたは宿主血清もしくは血漿1mL当たりHDV-RNAの104コピー、例えば宿主血清もしくは血漿1mL当たり約4 log HDV RNAコピーから宿主血清もしくは血漿1mL当たり7 log HDV RNAコピーまたは宿主血清もしくは血漿1mL当たりHDV-RNAの104〜107コピーの、HDV RNAのウイルス量を有するだろう。
【0031】
用語「患者」、「宿主」または「対象体」は、区別しないで用いられ、ウイルスが取り除かれた以前HDVに感染していた患者を含む、HDVに感染したヒトを指す。
【0032】
用語「医薬組成物」は、対象体への投与に適した組成物を包含することを意味する。一般的に「医薬組成物」は無菌で、対象体内で所望しない反応を誘発し得る爽雑物を有しない(例えば医薬組成物中の一または複数の化合物が医薬品グレードである)ことが好ましい。医薬組成物は、経口、静脈内、口腔、直腸、非経口、腹腔内、皮内、気管内、筋肉内、皮下、吸入などを含む多くの種々の投与経路により、それを必要とする対象体または患者へ投与するために設計され得る。
【0033】
用語「医薬的に許容される添加剤」、「医薬的に許容される希釈剤」、「医薬的に許容される担体」または「医薬的に許容されるアジュバント」は、一般的に安全で、無毒性であり、他の点でも生物学的に望ましくないものでない医薬組成物を製造するのに有用な添加剤、希釈剤、担体および/またはアジュバントを意味し、獣医用および/またはヒトの医薬用に許容される添加剤、希釈剤、担体およびアジュバントを含む。明細書および請求項で用いられる「医薬的に許容される添加剤、希釈剤、担体および/またはアジュバント」は、1以上の該添加剤、希釈剤、担体およびアジュバントを含む。多種多様の医薬的に許容される添加剤、例えばビヒクル、アジュバント、担体または希釈剤および補助剤、例えばpH調整剤および緩衝剤、等張化剤、安定化剤、湿潤剤などが、当該技術分野において知られている。医薬的に許容される添加剤は、様々な刊行物に広く記載されており、A. Gennaro (2000) “Remington: The Science and Practice of Pharmacy,” 20th edition, Lippincott, Williams, & Wilkins;Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems (1999) H.C. Ansel et al., eds., 7th ed., Lippincott, Williams, & Wilkins;およびHandbook of Pharmaceutical Excipients (2000) A.H. Kibbe et al., eds., 3rd ed. Amer. Pharmaceutical Assocが挙げられる。経口製剤について、ロナファルニブおよび/またはリトナビルは、単独、または錠剤、散剤、顆粒剤もしくはカプセル剤を作るための適切な添加剤、例えば、従来の添加剤、例えばラクトース、マンニトール、コーンスターチもしくはポテトデンプン;結合剤、例えば結晶セルロース、セルロース誘導体、アラビアゴム、コーンスターチもしくはゼラチン;崩壊剤、例えばコーンスターチ、ポテトデンプンもしくはカルボキシメチルセルロースナトリウム;滑沢剤、例えばタルクもしくはステアリン酸マグネシウム;および必要であれば、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、防腐剤および香料と組合せて、ロナファルニブを含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる、本発明の医薬製剤において用いられ得る。
【0034】
用語「医薬的に許容される塩」は、生物学的効果および適宜遊離塩の他の特性を保持する塩、ならびに無機または有機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸などとの反応により得られるものを指す。開示の薬剤の実施態様が塩を形成する場合、これらの塩は本開示の範囲内である。本明細書の処方のいずれかのうちの薬剤への言及は、他に断らない限り、その塩への言及を含むと解される。
【0035】
本明細書で用いる用語「治療上有効量」は、疾患、障害または病態をある程度処置するだろう、例えば処置される疾患、すなわち感染の症状の1以上を緩和するだろう投与されている薬剤(化合物、阻害剤および/または薬物とも呼び得る)の実施態様の量、および/または処置されている対象体が発症しているかまたは発症する危険性がある疾患、すなわち感染の症状の1以上をある程度防止するだろう量を指す。
【0036】
用語「処置」、「処置すること」および「処置する」は、疾患、障害または病態の薬理学的および/または生理的影響および/またはその症状を低下させるかまたは改善するために、薬剤と疾患、障害または病態において作用するとして定義される。本明細書で用いる「処置」は、ヒト対象体における疾患の任意の処置に及び、そして:(a)疾患に罹患しやすいと決定されたが疾患に感染したとしてまだ診断されていない対象体において疾患の発生の危険性を低下させること、(b)疾患の発現を妨害すること、および/または(c)疾患を緩和すること、すなわち疾患の緩解を引き起こすことおよび/または1以上の疾患症状を緩和することを包含する。「処置」はまた、疾患または病態の不存在下でも薬理効果を提供する抑制剤の送達を包含することを意味する。例えば「処置」は、対象体において増強されたまたは望ましい効果(例えば、病原ウイルス量の減少、疾患症状の低下など)を提供する疾患または病原抑制剤の送達を包含する。
【0037】
本明細書で用いる用語「単位剤形」は、ヒト対象体のための単一の用量として適切である物理的に離散した単位を指し、各単位は、医薬的に許容される希釈剤、担体またはビヒクルと関連して所望の処置効果を生じるのに十分な量において算出される一または複数の化合物(例えば、本明細書に記載の抗ウイルス化合物)の所定量を含む。
【0038】
本明細書で用いる用語「経口剤形」は、経口投与する剤形、例えば錠剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、シロップ剤、エリキシル剤および懸濁剤を指す。「固形経口投与形態」としては、錠剤、カプセル剤、カプレット剤などが挙げられる。
【0039】
本明細書で用いる用語「経口単位剤形」は、経口投与する単位剤形を指す。
【0040】
本明細書に記載の任意の活性医薬成分(ロナファルニブ、リトナビルおよびコビシスタットが挙げられるが、これらに限定されない)のすべての重水素化アナログ(化合物が、1以上の重水素原子での1以上の水素原子の置き換えのみにより親化合物と異なる場合、別の化合物、「親化合物」の重水素化アナログである)は、本発明の目的で、親化合物への言及により包含される。
【0041】
本明細書に記載の任意の薬剤(ロナファルニブ、リトナビル、コビシスタットおよび本明細書に記載の任意の他の活性医薬物質が挙げられるが、これらに限定されない)のすべての立体異性体、例えば、エナンチオマー型(これは不斉炭素の不存在下でも存在し得る)およびジアステレオマー型を含む、様々な置換基上の不斉炭素のため存在し得るものは、本開示の範囲内と企図される。本開示の化合物の個々の立体異性体は、例えば、他の異性体を本質的に有しなくてもよく、または例えば、ラセミ体としてまたはすべての他の、もしくは他の選択された、立体異性体と混合されてもよい。本開示の化合物の立体中心は、IUPAC 1974 Recommendationsによって定義されるとおりSまたはR配置を有し得る。
【0042】
用語「制酸薬」は、胃酸分泌を低下させるかまたはその影響を低下させる薬剤を指し、H2-受容体アンタゴニストおよびプロトンポンプ阻害剤が挙げられる。
【0043】
「H2-受容体アンタゴニスト」は、胃において壁細胞(特にヒスタミンH2受容体)上でヒスタミンの作用をブロックするために用いられ、これらの細胞により酸の産生を低下させる薬物のクラスである。H2アンタゴニストは、消化不良の処置において用いられる。
【0044】
「5-HT3アンタゴニスト」は、5-HT3受容体(迷走神経の求心神経を含む、嘔吐に含まれるいくつかの重要な部位、孤束核(STN)および最後野自体において見られるセロトニン受容体のサブタイプ)において受容体アンタゴニストとして作用する薬物のクラスである。セロトニンは、化学療法剤に応じて小腸のクロム親和性細胞により放出され、嘔吐反射を始めるために迷走神経の求心神経(5-HT3-受容体による)を刺激し得る。5-HT3受容体アンタゴニストは、5-HT3受容体へのセロトニンの結合を抑制することにより嘔吐および悪心を抑える。中枢神経系(CNS)において5-HT3受容体の最も高い濃度は、STNおよび化学受容器引金帯(CTZ)において見られ、5-HT3アンタゴニストはまた、これらの部位において作用することにより嘔吐および悪心を抑え得る。
【0045】
「NK1」は、中枢および末梢神経系に位置するGタンパク質共役受容体である。この受容体は、サブスタンスP(SP)として知られる優性リガンドを有する。SPは、11アミノ酸から構成される神経ペプチドであり、これは脳からのインパルスおよびメッセージを送り、受け取る。それは、脳の嘔吐中枢において高濃度で見られ、活性化されたとき嘔吐逆流を引き起こす。NK-1受容体アンタゴニストは、NK1受容体によって発せられるシグナルをブロックする。
【0046】
「プロトンポンプ阻害剤」は、胃壁細胞の分泌表面においてH+/K+ ATPase酵素系の特異的阻害により胃酸分泌を抑える抗分泌性化合物のクラスである。この酵素系が胃粘膜内の酸(プロトン)ポンプとして見なされるため、この系の阻害剤は、それらが酸産生の最終工程をブロックする点で胃酸ポンプ阻害剤として特徴づけられている。この効果は、用量依存性であり、刺激に関係なく基礎的および刺激性酸物質の阻害を引き起こす。
【0047】
「下痢止め薬」は、2タイプ:便を濃くするものおよび腸の痙攣を遅くするもののいずれかであり得る。濃くする混合物(例えばオオバコ)は水を吸収する。これは、便を大きくし、それをより固くさせるのを助ける。抗痙攣性下痢止め製剤は、大腸の腸筋神経叢中のμ-オピオイド受容体上で作用することにより腸の痙攣を遅くする。腸筋神経叢の活性を低下させることにより(これは順番に腸管壁の縦走平滑筋および環状平滑筋の緊張を低下させる)、腸管でとどまる時間物質の量を増加させ、より多くの水が糞便から吸収されることを可能にする。抗痙攣剤はまた、結腸のマスムーブメントを低下させ、胃腸反射を抑える。
【0048】
用語「GI不耐性」は、個々に下痢、悪心および嘔吐のいずれか1つ、または組合せを指す。
【0049】
II.
序論
一態様において、本発明は、プレニルトランスフェラーゼ阻害剤ロナファルニブおよびCYP3A4阻害剤リトナビルを共投与することによるD型肝炎ウイルス(HDV)に感染した患者の処置に関する。HDV感染を処置するのにロナファルニブを用いることがWO2011/088126(出典明示により本明細書の一部とする)において提案されているが、当該刊行物は、インビボでの有効性データを含んでおらず、広い範囲の用量(例えば25〜300 mg/日)を記載している。以下に記載するように、本発明者らは、28日間100 mg BIDのロナファルニブの投与がウイルス量を減少させることを見出したが、当該減少は治療として開発するに十分でなかった。より高用量のロナファルニブは、ほとんど忍容性がなく、非許容レベルの有害事象を生じた。したがって、200 mg BIDが投与されたとき、おそらく低い忍容性、低い患者コンプライアンス、およびGI管を通過する薬剤の損失のため処置の約1か月後ロナファルニブの血清レベルが落ちた。300 mg BIDが投与されたとき、ロナファルニブの血清レベルは予測より低く、低い忍容性の結果と思われる。例えば下記表10参照。したがって、100 mg BIDロナファルニブの投与が十分に効果的にでなかったが、より高い用量は、有意なGI関連有害作用を伴い、HDVに感染した患者の日常的な治療として不適切な処置となった。
【0050】
本発明は、部分的に、本明細書に記載の投与計画に従ってリトナビルと組合せたロナファルニブの投与(「ロナファルニブ-リトナビル共治療」)という発見から生じ、ロナファルニブ単独治療と比較して優れたアウトカムを生じる。驚くべきことに、100 mgロナファルニブBIDおよび100 mgリトナビルQDの投与は、56日間の処置後に測定されたロナファルニブ単独治療で見られたものより高いロナファルニブの血清濃度を生じたが、より低い頻度の有害作用であった(例えば下記表9および10参照)。また、ロナファルニブ-リトナビル共治療は、患者アウトカムを向上させるためにGI修飾薬の予防的投与(特に、制吐薬、下痢止め薬および制酸薬の1以上の予防的投与)で補うかまたはそれと組合せ得ることを見出した。したがって、本発明の一態様は、GI修飾薬の組合せの予防的投与と組み合わせたロナファルニブ-リトナビル共治療に関する。
【0051】
一実施態様において、ロナファルニブ-リトナビル共治療を受けている患者は、75〜150 mg/日、例えば75 mg/日、100 mg/日または150 mg/日の1日用量のロナファルニブを投与され、100 mg〜200 mg/日、例えば100 mg/日または200 mg/日の1日用量のリトナビルを投与される。上記の用量は、ロナファルニブをQDまたはBID投与することおよびリトナビルをQDまたはBID投与することにより達成され得る。一手法において、ロナファルニブはBID投与され、リトナビルはQD投与される。一手法において、ロナファルニブおよびリトナビル両方がBID投与される。一手法において、ロナファルニブおよびリトナビル両方がQD投与される。
【0052】
III.
HDV処置
本発明は、HDV感染患者がロナファルニブおよびリトナビルの経口投与(「ロナファルニブ投与」、「ロナファルニブ-リトナビル共治療」などとも呼び得る)により処置される、HDV感染に関連する疾患を処置するための方法を提供する。好ましくは、ロナファルニブおよびリトナビルは、本明細書に記載の用量および投与計画に従って投与される。いくつかの実施態様において、HDV感染患者は、1、2もしくは3またはそれ以上のクラスの消化管(GI)修飾薬で予防的処置を受ける。いくつかの実施態様において、ロナファルニブ-リトナビル共治療を受けている患者はまた、インターフェロン(例えば、インターフェロン-αまたはインターフェロン-λ)で処置される。
【0053】
ロナファルニブ-リトナビル共治療のための投与計画
ロナファルニブは、固形および血液悪性疾患、ハッチンソン・ギルフォード早老症症候群および慢性デルタ型肝炎ウイルス感染の処置のために調査されたが、いずれの症状に対しても承認されていない。ロナファルニブ投与に関する大多数の報告は、一または複数の抗新生物薬剤と組合せて癌の患者にロナファルニブを投与することに関連する。
【0054】
リトナビル(AbbVie, Inc.により商品名Norvir(登録商標)で販売されている)は、HIV-1感染個体の処置のために他の抗ウイルス薬と組合せて抗レトロウィルス薬として投与されている。Miller et al., 2015, Infection and Drug Resistance, 8:19-29参照。成人患者におけるHIV-1の処置のために、リトナビルの推奨用量は、食事と一緒に経口で600 mg 1日2回である。Norvir(登録商標)の添付文書参照。リトナビルはまた、薬理学的エンハンサーまたは増強剤として用いられる。薬物動態学的「増強する(boosting)」は、これらの薬物をより効果的にする薬理学的エンハンサーと共投与することによる経口投与された薬物の薬理学的増強を指す。リトナビルは、HIV感染を処置するのに用いられるプロテアーゼのC
maxを押し上げるために用いられる。リトナビルの増強効果は、薬物のいくつかの特性により生じる。リトナビルは、代謝の2つの重要な段階を抑制する:
【0055】
第1に、リトナビルは、吸収時の初回通過代謝を抑制する。腸管に並ぶ腸細胞は、薬物代謝に関連する重要なシトクロムP450アイソザイムの1つであるCYP3A4、および効果的に薬物を腸壁から汲み出して腸管内腔へ戻すことができる流出輸送体であるP-糖タンパク質の両方を含む。リトナビルは、これらのタンパク質の両方を抑制する。したがって、リトナビルとP-糖タンパク質により輸送されるおよび/または腸細胞CYP3A4により代謝される薬物との共投与は、共投与される薬物のCmaxを増加させ得る。第2に、リトナビルは、肝臓中のCYP3A4を抑制し、それ故に薬物の血漿半減期を維持する。
【0056】
いくつかの因子は、どの許容される用量のリトナビルが増強剤としての使用のためであるかを予測することを不可能にし、決定することを難しくする。
【0057】
第1に、リトナビルの増強効果は、第1の(すなわち、共投与される)薬物(PD)に応じて広くおよび予測不可能に変化する。これは、第1の薬物(プロピオン酸フルチカゾン、水溶性経鼻スプレーとして送達される)のAUCの350倍増加から11倍増加(シデナフィル(sidenafil))、1.2倍増加(トリメトプリム)まで及び得る第1の薬物とのリトナビルの共投与の効果を示すNorvir(登録商標)の添付文書(FDAウェブサイトhttp://www.rxabbvie.com/pdf/norvirtab_pi.pdfで利用可能)により示される。1つの薬物クラス内でさえ大きな差異がある。例えば、プロテアーゼ阻害剤の17の用量-範囲薬物動態試験に関するメタ研究において、Hill et al.は、7つのプロテアーゼ阻害剤:アンプレナビル、アタザナビル、ダルナビル、インジナビル、ロピナビル、サキナビルおよびチプラナビルでの1日50〜800 mgの用量におけるリトナビル増強効果を評価した。Hillは、リトナビルがインジナビル、チプラナビルおよびロピナビルに対して用量依存的な増強効果を有すると結論付けた。例えば、「リトナビル用量を50から100 mgへ上げたとき、ロピナビルCminに大きな上昇があった」。しかしながら、ダルナビルまたはサキナビルに対するリトナビルの増強効果は、その用量と相関しない。例えば、1日200 mgのリトナビルの用量は、薬物の血清曝露に対して1日100 mgと同じ効果を有する(「…200mg 1日1回の用量での、これらの用量についてのダルナビルの血漿曝露は…100 mgのリトナビル1日1回と同様であった」)。同様に、サキナビル試験結果は、用いたリトナビルの用量とサキナビルの達成されたCmaxまたはCminとの間の有意な相関を示さなかった。
【0058】
また、肝炎の患者におけるリトナビルの薬物動態は、他の処置集団と比較してより予測不可能である可能性が高い。Li et al.は、肝臓CYP3A4発現が慢性HBV感染の個体において低下することを報告した。HDVに共感染したHBV感染患者のサブ集団は分離して試験されなかったが、CYP3A4の低下がHDV陽性個体において生じる可能性が高い。Li et al., 2006, Zhonghua yi xue za zhi, 86:2703-2706参照。
【0059】
リトナビルが末梢血リンパ球において見られるP-糖タンパク質を抑制し得ることもまた報告されている。Lucia et al., 2001, J Acquir Immune Defic Syndr. 27:321-30参照。ロナファルニブがP-糖タンパク質の基質である場合、リトナビルの共投与は、より少ないロナファルニブを細胞から戻って輸送させ得て、それ故に薬物の細胞内半減期が増加し得るだろう。
【0060】
また、HDV患者サブ集団は、HBVのみに感染した患者より硬変の高いレベル(慢性D型肝炎の患者の約60〜70%で発生する)により特徴付けられる。HDV患者集団におけるリトナビルの薬物動態は、他の集団と比較してより予測不可能である可能性が高い。
【0061】
慢性HDVの患者へのロナファルニブとリトナビルの共投与の治療効果は、本発明前に公知でなく、本発明前の医学文献に慢性HDV感染の患者を処置するのに有効である投与計画(例えば用量および投与計画)は記載されていなかった。
【0062】
また、ロナファルニブの投与およびロナファルニブとリトナビルの共投与の副作用プロファイルは、これまでに測定されていない。下痢、悪心および嘔吐が、ロナファルニブ投与(Schering IB参照)およびリトナビル投与(Norvirの添付文書参照)両方の副作用として報告されている。癌患者において、200 mg BIDロナファルニブ投与は、「忍容性良好である」として特徴付けられた。Hanrahan et al., 2009, “A phase II study of Lonafarnib (SCH66336) in patients with chemorefractory, advanced squamous cell carcinoma of the head and neck,” Am J Clin Oncol. 32:274-279(再発性SCCHNのための白金ベース治療後のロナファルニブ治療を記載している)およびList et al., 2002, Blood, 100:789A(200 mg BIDのロナファルニブ投与が進行した造血器腫瘍の患者において良好な忍容性を示した)参照。しかしながら、治療上有効なレベルのロナファルニブの慢性HDV感染の患者への投与の副作用プロファイルは知られておらず、ロナファルニブ-リトナビル共治療の副作用プロファイルはいずれの集団についても知られていなかった。
【0063】
HDV感染に対するロナファルニブ投与の影響
慢性デルタ型肝炎(HDV)の患者のコホートは、28日間100 mgロナファルニブBIDでの処置を受け、プラセボを投与された患者での-0.24 log HDV RNAコピー/mLと比較して-0.74 log HDV RNAコピー/mLのベースラインからナディアへのHDV RNAレベルの平均変化を示した。下記実施例1の参照。ロナファルニブの血漿レベルは、処置中200 ng/mL〜1,100 ng/mLの範囲であり、この研究において、ロナファルニブのより高い血漿レベルを有する対象体が処置中HDV RNA力価においてより大きな減少を経験したことが見出された。
図2参照。しかしながら、ウイルス量のより強固な減少が必要とされる。
【0064】
以下の実施例2に記載するように、HDV感染患者へのより高用量のロナファルニブの投与は、ウイルス量のより劇的な減少を生じる。28日間200 mg BIDロナファルニブを投与された患者において、ウイルス量の平均変化は-1.63 HDV RNAコピー/mLであった。28日間300 mg BIDロナファルニブを投与された患者において、ウイルス量の平均変化は-2.00 HDV RNAコピー/mLであった。
【0065】
我々は、200 mg BIDロナファルニブの毎日の投与が100 mg BIDロナファルニブの毎日の投与と比較してHDV 患者において優れたウイルス量の減少を提供すると結論付けた。しかしながら、ロナファルニブ200 mg/BIDまたは300 mg/BIDの投与は、著しい有害作用を生じ、このことは、これらの投与計画を長期治療に適さなくする。
【表1】
【0066】
HDV感染に対するロナファルニブ-リトナビル投与の影響
実施例5〜10に示すように、ロナファルニブ-リトナビル共治療は、8週目に検出できないレベルへ1つのケースを含めて、HDVウイルス量を本質的に減少させた。
図5参照。したがって本発明の様々な方法において、ロナファルニブおよびリトナビルの各々は、継続的に、1日2回、少なくとも1日1回(QD)経口投与され、様々な実施態様において、1日2回(BID)である。
【0067】
図2に示すように、HDVウイルス量は、ロナファルニブの血漿濃度が増加するとともに減少する。ロナファルニブ血清レベルとロナファルニブ-リトナビル共治療を受けている患者におけるウイルス量との間の相関はまた、約21日間約3,500〜5,000 ng/mLの範囲で血清ロナファルニブ濃度を維持する患者のウイルス量(
図7参照)を約21日間約1500〜2500 ng/mLの範囲で血清ロナファルニブ濃度を維持する患者のウイルス量(
図7および8参照)と比較することにより示す。また表9を参照すると、共治療の6週間後に最も高いロナファルニブ血清レベルを有する患者がウイルス量の最も大きな減少を有すること、および2,000 ng/mL超のロナファルニブ血清レベルを有する患者が2,000 ng/mL未満の血清レベルを有する患者より劇的なウイルス量の減少を一般的に有することが示され、患者4は当該傾向の例外である。
【0068】
ある特定の実施態様において、ロナファルニブおよびリトナビルは、2,000 ng/mL超、例えば4,000 ng/mL超の血清ロナファルニブレベルをもたらす計画に従って共投与される。いくつかの実施態様において、ロナファルニブおよびリトナビルは、約3,500 ng/mL〜約8,500 ng/mL(例えば、約4,500 ng/mL〜約7,500 ng/mL、約5,000 ng/mL〜約6,000 ng/mL、約5,500 ng/mL〜約6,500 ng/mL、約6,000 ng/mL〜約7,000 ng/mLまたは約6,500 ng/mL〜約7,500 ng/mL)または約5,000 ng/mL〜約7,000 ng/mLの範囲にある血清ロナファルニブレベルをもたらす計画に従って共投与される。
【0069】
本明細書で用いる血清ロナファルニブレベルまたは濃度は、定期的に(例えば1週間に1回、2週間に1回、1ヵ月に1回または他のスケジュールに従って)対象体から得られた血清試料から測定され得て、介在期間中のレベルは推定され得る。例えば、4,000 ng/mLの測定値が4週目に得られ、6,000 ng/mLの測定値が6週目に得られた場合、この分析の目的のために、介在する2週間の血清レベルは4,000〜6,000 ng/mLの範囲であったと結論付けられる。いくつかの実施態様において、最初の測定は、経口治療の開始後1週間以後になされる。
【0070】
ロナファルニブの血清レベルは、放射性免疫アッセイ、クロマトグラフィーアッセイ、質量分析などを含む、当該技術分野で公知の方法を用いて測定され得る。本発明のいくつかの実施態様において、タンパク質沈降法(アセトニトリル)を用いて患者血清試料を抽出した。その後、試料を分離のためにWaters CSH C18、2.1 x 50 mm、1.7μmカラムに負荷し、続いてロナファルニブの検出のために陽イオンモードでLC-MS/MSに負荷した。ロナファルニブのアッセイ範囲は1〜2500 ng/mLであった。
【0071】
典型的な用量
限定ではなく例示のために、典型的な用量は表2に提供される。通常、ロナファルニブおよびリトナビルは、一緒におよそ同時に(例えば、同時または互いの約15分間以内)投与される(例えば、患者により自己投与される)。
【表2】
【0072】
表2中の実施態様1〜8の各々は、予防的GI修飾薬(例えば、制吐薬、下痢止め薬および制酸薬)と投与され得る。下記セクションIV参照。
【0073】
いくつかの実施態様において、ロナファルニブおよびリトナビル(または同様の増強剤、例えばコビシスタット)は患者に投与され、リトナビル用量およびEBP994用量の両方は、少なくとも30日間、通常少なくとも約60日または6ヵ月〜1年以上を含む90日以上でさえ、少なくとも100 mg QDである。いくつかの実施態様において、ウイルスレベルが一定期間(例えば1〜3ヵ月以上)検出できないレベルへ低下した後、投与が中断されるだろう。一手法において、ロナファルニブ/リトナビルの適切な用量は、少なくとも30日間、より頻繁には少なくとも60日間および典型的には少なくとも90日間または90日以上の、100 mg QD/50 mg QDまたはBID、100 mg QD/100 mg QDまたはBID、100 mg QD/150 mg QDを含む。一手法において、ヒトにおけるデルタ型肝炎ウイルス(HDV)感染の処置は、少なくとも約30日間、約100 mg QDロナファルニブの1日用量、および治療上有効量のCYP3A4阻害剤(例えば、リトナビルまたはコビシスタット)を投与し、それによりHDV感染を処置することを含む。一手法において、リトナビルは100 mg QDで投与される。
【0074】
用量漸増
一実施態様において、HDV感染について処置されている患者は、薬物への患者の忍容性を増加させて副作用を最小化するために、ロナファルニブ漸増する投与計画を受ける。漸増する計画において各用量の投与の持続期間は、典型的には1〜4週間以内であるが、患者の反応に基づいて臨床医により調節(例えば加速)され得る。例えば、制限されないが、患者は、所期の所望の最終用量が達成されるまで、1番目の2週間にロナファルニブ 50 mg BIDを投与され、続いて2番目の2週間に75 mg BIDを投与され、続いて3番目の2週間に100 mg BIDを投与され得る。典型的に漸増する投与量は、適切な用量、例えば100 mg QDまたはBIDのリトナビルと共投与される。
【0075】
処置の持続期間
患者は、所与の時間、不定の時間、またはエンドポイントに達するまでロナファルニブ-リトナビル共治療を受け得る。処置は、少なくとも2〜3ヵ月間毎日連続的に継続され得る。治療は、典型的には少なくとも30日間、より頻繁には少なくとも60日間または少なくとも90日間、さらにより頻繁には少なくとも120日間、時には少なくとも150日間、および時には少なくとも180日間である。いくつかの実施態様において、処置は、少なくとも6ヵ月から1年継続される。他の実施態様において、処置は、患者の寿命の残りの間、または意味のある治療利益を提供するために十分に低いレベルにてウイルスを維持するのに投与がもはや有効でなくなるまで継続される。
【0076】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の治療は、HDV RNAレベルが3 log HDV RNAコピー/mL未満(1,000 コピー/mL未満)となるまで、または時にHDV RNAレベルが2 log HDV RNAコピー/mL未満(100 コピー/mL未満)もしくは検出レベル未満となるまで一定期間継続される。いくつかの場合において、治療は、ウイルス量が許容可能な低いレベル(例えば、検出できないレベル)に低下した後一定期間(例えば1〜3ヵ月以上)継続され得る。
【0077】
いくつかの場合において、治療は、「肝炎フレア」または「ALTフレア」が患者において観察されるまで継続される。肝炎フレア(または急性増悪)は、慢性B型肝炎ウイルス(HBV)感染において観察される、正常の上限、約40 U/mLの5倍を超える血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の急激な増加である。HBV患者におけるHBVフレアは、HLA-I制限性の、細胞毒性Tリンパ球(CTL)が介在するHBVに対する免疫反応およびその下流機構により生じる。より高いALTレベルは、より強固なHBVの免疫クリアランスを反映する。Liaw, 2003, “Hepatitis flares and hepatitis B e antigen seroconversion: implication in anti-hepatitis B virus therapy,” J Gastroenterol Hepatol 18:246-52参照。肝炎フレアは、抗HDV処置への反応において以前に報告されていないが、本明細書に記載のロナファルニブ-リトナビル共治療への反応においてフレアの兆候が観察された。例えば、12週間経口投与されるロナファルニブ100 mg BIDおよびリトナビル50 mg BIDを受けた2人の患者は、正常な個体より10〜20倍高いALTレベルにより特徴付けられるALTフレアを示した。ALTフレアはまた、ロナファルニブ200 mg BIDまたは300 mg BID単独治療を受ける何人かの患者において観察された。HDV患者におけるフレアの観察は、本明細書に記載の用量におけるリトナビルとロナファルニブでの共治療が前例のない治療効果を有し得ることを示唆する。
【0078】
IV.
消化管修飾治療での予防
実施例に記載のように、ロナファルニブ単独治療およびロナファルニブ-リトナビル治療を受けるHDV感染患者は、消化管(GI)副作用を経験した。消化管(GI)副作用は、ファルネシルトランスフェラーゼクラスにおける化合物に予期しないわけではない。GI不耐性はまた、プロテアーゼ阻害剤として用いられるとき1200 mg/日にて投与され得るリトナビルの公知な副作用である。しかしながら、HBV患者(特に比較的適度な用量のロナファルニブおよびリトナビルが投与された患者)におけるこれらの症状の重症度および持続性は、予期されなかった。消化管刺激の処置のための薬剤としては制吐薬、制酸薬(H2-受容体アンタゴニストおよびプロトンポンプ阻害剤)および下痢止め薬が挙げられる。典型的な薬剤(限定ではなく例示のために)を表3に記載する。
【0079】
本発明の方法によれば、ロナファルニブは、制吐薬、制酸薬(H2-受容体アンタゴニストまたはプロトンポンプ阻害剤)および/または下痢止め薬の少なくとも1、少なくとも2または少なくとも3つと組合せて用いられて、ロナファルニブ治療中の患者の継続的なコンプライアンスを可能にする。一実施態様において、下痢止め薬を投与する。一実施態様において、下痢止め薬および制酸薬を投与する。一実施態様において、下痢止め薬および制吐薬を投与する。一実施態様において、下痢止め薬、制酸薬および制吐薬を投与する。一実施態様において、下痢止め薬はロモティル(アトロピン/ジフェノキシレート)であり、および/または制酸薬はファモチジンであり、および/または制吐薬はオンダンセトロンである。
【表3】
【0080】
一手法において、GI修飾治療は、必要に応じて(症状に応じて)投与される。一手法において、GI修飾治療は予防的に投与される。この文中の本明細書で用いる「予防的に」は、症状の不存在下または症状の発生前の患者への投与を指す。典型的に予防的処置は、ロナファルニブ処置の間に固定スケジュール(例えば毎日)に従った投与を要する。
【0081】
一手法において、予防的処置は、オンダンセトロン(制吐薬)、ロモティル(アトロピン/ジフェノキシレート)(下痢止め薬)およびファモチジン(制酸薬)の投与を含む。例えば、オンダンセトロン8 mg BIDが投与され得て、ロモティル(アトロピン/ジフェノキシレート)5 mg QIDまたは5 mg BIDが投与され得て、そしてファモチジン20 mg BIDが投与され得る。
【0082】
一手法において、GI修飾薬がロナファルニブの投与前に毎日投与される。一手法において、GI修飾薬がロナファルニブ治療の投与30分〜2時間前に投与される。
【0083】
一手法において、GI修飾薬は、ロナファルニブが投与されるのと毎日同時に投与されるが、ロナファルニブ(および適宜リトナビル)は、GI修飾薬がロナファルニブ放出前に効き始めるように遅放性製剤(例えば腸溶コーティングを含む)として投与される。
【0084】
GI修飾薬の予防的投与は、一般的にロナファルニブ治療期間中継続される。
【0085】
一手法において、GI修飾薬の予防的投与は、ロナファルニブ投与の第1日目に始まる。別の一手法において、GI修飾薬の1以上の投与は、経口ロナファルニブ-リトナビル治療の開始前に始まる。例えば一実施態様において、患者は、ロナファルニブ処置の開始前日にオンダンセトロンを投与される。一手法において、1以上のGI修飾薬は、経口ロナファルニブ-リトナビル処置の開始の2日以上前に始め毎日投与される。
【0086】
好ましい実施態様において、GI修飾薬は、BIDまたはQDスケジュールに従って投与される。
【0087】
H2-受容体アンタゴニスト
これらのGI修飾治療の一実施態様において、このGI修飾治療は、H2-受容体アンタゴニストである。これらのGI修飾治療の一実施態様において、ラニチジン(Zantac(登録商標))は、150 mg 1日2回、150 mg 1日4回までの用量でロナファルニブ治療期間中投与される。これらのGI修飾治療の別の一実施態様において、ファモチジン(Pepcid(登録商標))は、40 mg 1日1回、20 mg 1日2回まで、40 mg 1日2回までの用量でロナファルニブ治療期間中投与される。これらのGI修飾治療の別の一実施態様において、シメチジン(Tagamet(登録商標))は、400 mg 1日1回、800 mg 1日1回まで、1600 mg 1日1回まで、800 mg 1日2回まで、300 mg 1日4回まで、400 mg 1日4回まで、600 mg 1日4回までの用量でロナファルニブ治療期間中投与される。これらのGI修飾治療の別の一実施態様において、ニザチジン(Axid)は、150 mg 1日1回、300 mg 1日1回まで、150 mg 1日2回までの用量でロナファルニブ治療期間中投与される。
【0088】
5-HT3 アンタゴニスト
これらのGI修飾治療の一実施態様において、この治療は、5-HT
3受容体アンタゴニストである。これらのGI修飾治療の一実施態様において、オンダンセトロン(Zofran(登録商標))は、ロナファルニブ治療の開始の30分〜2時間前に8 mg 1日1回、8 mg 1日2回まで、8 mg 1日3回までで投与される。この実施態様において、投与は、少なくともロナファルニブ処置期間中継続される。これらのGI修飾治療の別の一実施態様において、グラニセトロン(経口Kytril(登録商標))は、ロナファルニブ治療の開始の1時間前までに与えられる2 mgまたは1 mg 1日2回で投与される。この実施態様において、投与は、少なくともロナファルニブ処置期間中継続される。
【0089】
NK-1受容体アンタゴニスト
これらのGI修飾治療の一実施態様において、このGI修飾治療は、NK-1受容体アンタゴニストである。これらのGI修飾治療の一実施態様において、アプレピタント(Emend(登録商標))は、ロナファルニブ治療の開始の1時間前に与えられる1日目における125 mg、続いて2および3日目における80 mg用量からなる3日の処置として、5-HT3受容体アンタゴニストおよびコルチコステロイドと組合せて投与される。これらのGI修飾治療の別の一実施態様において、ホスアプレピタント(Emend(登録商標)IV)を1日の処置として、5-HT3受容体アンタゴニストおよびコルチコステロイド(デキサメサゾン)と組合せて投与し、これは、1日目のロナファルニブ治療の開始30分前までに与えられる1の150 mg用量のホスアプレピタント、続いて単回12 mg用量のデキサメサゾンおよび単回用量の5-HT3受容体アンタゴニスト(例えばオンダンセトロン)、ロナファルニブ治療の開始30分前までに与えられる単回150 mg用量までのホスアプレピタント、続いて単回8 mg用量のデキサメサゾンおよび単回用量の5-HT3受容体アンタゴニスト(例えばオンダンセトロン)からなり、そして2〜4日目に単回8 mg用量のデキサメサゾンを投与する。
【0090】
プロトンポンプ阻害剤
これらのGI修飾治療の一実施態様において、このGI修飾治療は、プロトンポンプ阻害剤(PPI)である。これらのGI修飾治療の一実施態様において、オメプラゾール(Prilosec(登録商標))は、制酸薬と組合せてロナファルニブ治療の開始の4日前までに20 mg 1日1回、40 mg 1日1回までの用量でロナファルニブ治療期間中投与される。これらのGI修飾治療の別の一実施態様において、オメプラゾール/重炭酸ナトリウム(Zegerid(登録商標))は、食事およびロナファルニブ治療の開始の少なくとも1時間前に20 mg 1日1回、40 mg 1日1回までの用量でロナファルニブ治療期間中投与される。これらのGI修飾治療の別の一実施態様において、エソメプラゾールマグネシウム(Nexium(登録商標))は、ロナファルニブ治療の開始の少なくとも1時間前に20 mg 1日1回、40 mg 1日1回まで、40 mg 1日2回までの用量でロナファルニブ治療期間中投与される。これらのGI修飾治療の別の一実施態様において、エソメプラゾールストロンチウムは、ロナファルニブ処置の少なくとも1時間前に24.65 mg 1日1回、49.3 mg 1日1回まで、49.3 mg 1日2回までの用量でロナファルニブ治療期間中投与される。これらのGI修飾治療の別の一実施態様において、ランソプラゾール(Prevacid(登録商標))は、ロナファルニブ治療の2時間前までにランソプラゾールの15 mg 1日1回、14日間まで30 mg 1日1回まで、60 mg 1日1回まで、30 mg 1日2回まで、ロナファルニブ治療期間中30 mg 1日3回までの用量で投与される。これらのGI修飾治療の別の一実施態様において、デクスランソプラゾール(Dexilant(登録商標))は、ロナファルニブ治療期間中デクスランソプラゾールの30 mg 1日1回、60 mg 1日1回までの用量でロナファルニブ治療の2時間前までに投与される。これらのGI修飾治療の別の一実施態様において、パントプラゾールナトリウム(Protonix(登録商標))は、ロナファルニブ治療の7日前までに40 mg 1日1回、40 mg 1日2回までの用量でロナファルニブ治療期間中投与される。
【0091】
本発明のいくつかの実施態様において、GI修飾治療は、CYP3A4に対する阻害効果により選択されるプロトンポンプ阻害剤(PPI)を含む。PPI介在性阻害は、治療上有効なロナファルニブ血清レベルを維持するのを助け得る。該阻害性PPIとしては、オメプラゾールおよびレベプラゾールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
下痢止め薬
これらのGI修飾治療の一実施態様において、この治療は、下痢止め薬である。これらのGI修飾治療の一実施態様において、アトロピン/ジフェノキシレート(Lomotil(登録商標)、Lonox(登録商標))は、Lomotil錠剤2つ1日4回またはLomotil(登録商標)液剤10 ml 1日4回(20 mg/日)の用量で最初のコントロールが達成されるまで投与され、この後用量は1日5 mg(錠剤2つまたは液剤10 ml)程度まで減少され得る。これらのGI修飾治療の別の一実施態様において、ロペラミドHCl(Imodium(登録商標))は、4 mg(カプセル剤2つ)、続いて軟便が出るたびに2 mg(カプセル剤1つ)、16 mg(カプセル剤8つ)までの用量で投与される。これらのGI修飾治療の別の一実施態様において、次サリチル酸ビスマス(Kaopectate(登録商標)、Pepto-Bismol(登録商標))は、必要に応じて30分〜1時間ごとに錠剤2つまたは30 mLとして、24時間中8用量まで投与される。
【0093】
V.
医薬組成物および単位投与形態
本発明は、ロナファルニブおよびリトナビル共治療を提供するための医薬組成物を提供する。一手法において、ロナファルニブおよびリトナビル共投与は、上記セクションIVで述べた1、2または3つのGI安定化剤の予防的投与と組み合される。一手法において、ロナファルニブおよびリトナビル共投与は、下記セクションVIIで述べるインターフェロン共治療と組み合される。
【0094】
一般的に、ロナファルニブおよびリトナビルは、経口投与用に製剤化され、経口投与される。しかしながら、本発明は、1以上の他の経路、例えばIVまたは皮下(SQ)製剤の投与を用いてHDV感染の処置のためのヒトへのロナファルニブおよび/またはリトナビルの投与のための方法および組成物を提供する。別の一例として、本発明の方法は、薬物を皮下投与するためにパッチ技術、特にマイクロニードルを使用するパッチ技術を用いて実施され得る。非経口投与は、GIおよび他の副作用を回避または少なくとも軽減し得る。全身および局所投与経路を含む薬物送達に適切な他の経路が用いられ得る。
【0095】
ある特定の実施態様において、ロナファルニブおよび/またはリトナビルは、固形投与形態(例えばカプセル剤、カプレット剤、錠剤など)で経口投与され得る。ある特定の実施態様において、ロナファルニブおよび/またはリトナビルは、液体を含む軟ゲルカプセル剤として経口投与され得る。いくつかの実施態様において、薬剤は、液体剤形(経口の懸濁剤、シロップ剤またはエリキシル剤)または組合せ(例えば、ロナファルニブ錠剤およびリトナビル液剤)として投与される。各単位用量、例えば、ティースプーン、テーブルスプーン、ミリリットルなどがロナファルニブおよび/またはリトナビルを含む所定の量の組成物を含む経口投与のための液体投与形態が提供され得る。
【0096】
ロナファルニブおよびリトナビルは、別々に(個別の単位投与形態として)共投与され得るか、またはロナファルニブおよびリトナビル両方を含む経口単位剤形において組み合され得る。個別の単位形態として投与されるとき、典型的にロナファルニブおよびリトナビル用量は、およそ同じ時に、例えば同時にまたは互いの約3分以内に、または別法として互いの約10、30または60分以内に投与(例えば自己投与)される。いくつかの実施態様において、ロナファルニブが投与される前にリトナビルは投与される。
【0097】
ロナファルニブは、50 mg、75 mgおよび100 mgカプセル剤として製造されているが、異なる量の活性成分と投与形態を調製することは当業者の能力内である。一実施態様において、本発明の医薬製剤は、50 mg、75 mgまたは100 mgを含む単位投与形態として経口投与のために製剤化されたロナファルニブを含む。塩または溶媒和物が用いられる場合、当業者に容易に理解されるように、同等により多くの量が必要とされる。
【0098】
リトナビルは、100-mg錠、100-mg軟ゼラチンカプセル剤および80-mg/mL経口液剤として市販されているが、異なる量の活性成分と投与形態を調製することは当業者の能力内である。様々な実施態様において、本発明の方法において有用な単位投与形態は、50 mgまたは10 mgを含む。塩または溶媒和物が用いられる場合、当業者に容易に理解されるように、同等により多くの量が必要とされる。
【0099】
本発明のいくつかの実施態様において、ロナファルニブおよびリトナビルは、同じ剤形において送達される(すなわち「共製剤化される」)。例えば、剤形は、ロナファルニブおよびリトナビル(添加剤および助剤と一緒に)を含み得る。限定されないが、ロナファルニブおよびリトナビルは、混合物、マルチ粒子製剤(これはリトナビルを含むマトリックス中でロナファルニブの小さな粒子を含み得る)、二層製剤、テーブル内テーブル(table-within-table)製剤などとして提供され得る。共投与のための該形態は公知である(例えば、US20090142393、US20080021078、WO2009042960参照)。ロナファルニブおよびリトナビルを含む液剤製剤はまた、共投与のために用いられ得る。
【0100】
ロナファルニブおよび/またはリトナビル投与形態は、速放性および制御放出(例えば、遅放性または徐放性)を含む所定の溶出プロファイルのために製剤化され得る。例えば、ロナファルニブは遅放性のために製剤化され得て、リトナビルは速放性のために製剤化され得る(個別または組合せ剤形として投与されようと)。
【0101】
セクションIVで上記のように、一手法において、ロナファルニブを受けている患者は1のGI修飾薬またはGI修飾薬の組合せの予防的投与を受けるだろうと企図される。一手法において、1以上のGI修飾薬は、ロナファルニブおよび/またはリトナビルとの共製剤として提供される。例えば、限定されないが、ロナファルニブ、リトナビルおよびGI修飾薬は三層錠剤として製剤化され得る。別の一手法において、1以上のGI修飾薬は、以下のセクションVIに記載のように、普通の医薬品包装(「共包装」)で提供される。一手法において、1以上のGI修飾薬は、速放性製剤として提供され、ロナファルニブ(および適宜リトナビル)は、制御放出製剤として提供される。少なくとも1のGI修飾薬が速放性のために製剤化されおよびロナファルニブが制御放出(例えば遅放性)のために製剤化される限り、異なる溶出を有する製剤化された薬剤は、様々な組合せで共包装および/または共製剤化され得る。好ましい実施態様において、製剤は、患者が、ロナファルニブの溶出前にGI修飾薬が効くことを可能にする製剤を用いて、ロナファルニブおよび少なくとも1のGI修飾薬を実質的に同じ時に(例えば、同時にまたは互いに約5分以内に)自己投与することを可能にする。この手法を用いて、患者は、患者が治療薬を自己投与しなければならない1日当たりの回数を増加させることなくGI修飾薬のプレ放出の利益を受け得る。
【0102】
制御または遅放性製剤を作るための方法は、当該技術分野において公知である。限定ではなく例示のために、いくつかの場合において、ロナファルニブ、および適宜リトナビルは、放出遅延剤と製剤化され得る。この製剤中のロナファルニブは、対象体へ薬物投与後遅延期中ゼロまたは比較的低い薬物の放出を有し得て;その後、遅延期の終了後薬物の急速な放出(「バースト」)を達成する。遅延期は、典型的には約0.25〜3時間の範囲、より頻繁には約0.5〜2時間の範囲である。例えば拡散、膨潤、浸透バーストまたはエロージョン(例えば薬剤および組み込まれる添加剤の固有の溶解に基づく)による遅延バースト溶出を提供するための多くの方法が当該技術分野において公知である;米国特許出願公開第20110313009号参照。
【0103】
いくつかの場合において、限定ではなく例示のために、放出遅延剤は、体内の所定の状態への曝露の際にロナファルニブおよび/またはリトナビルを放出させることができるように設計される。一実施態様において、放出遅延剤は、消化管の特有の側面への曝露の際に薬物を放出させることができる腸溶出剤である。ある実施態様において、腸溶出剤は、pH感受性であり、消化管内で遭遇するpHの変化によって影響を受ける(pH感受性放出)。腸溶性物質は、典型的に胃pHにおいて不溶性のままであり、その後、下流消化管(例えば、頻繁には十二指腸、または時には結腸)のより高いpH環境において活性成分の放出を可能にする。別の一実施態様において、腸溶性物質は、下部消化管、特に結腸に存在する細菌酵素により分解される酵素分解性ポリマーを含む。適宜、単位剤形は、特定のpHにおいてまたはそれを越えるとき約0.25〜2時間以内の放出をもたらすように設計されたpH感受性腸溶性物質と製剤化される。様々な実施態様において、特定のpHは、例えば約4.5、5、5.5、6または6.5であり得る。特に実施態様、pH感受性物質は、約5.5またはそれ以上のpHへ曝露されたとき1時間以内に薬物の少なくとも80%の放出を可能にする。別の一実施態様において、pH感受性物質は、約6またはそれ以上のpHへ曝露されたとき1時間以内に薬物の少なくとも80%の放出を可能にする。
【0104】
例えばコーティング剤として、腸溶出製剤のために用いられる物質は、当該技術分野において公知であり、例えば米国特許出願公開第20110313009号に記載されるものである。異なる腸溶性物質の組合せはまた用いられ得る。異なるポリマーを用いる多層コーティングはまた適用され得る。いくつかの例において、腸溶性物質は、約0.25〜約3時間、時には約0.5〜約4時間の範囲で薬物放出の遅延を生じさせる。
【0105】
当業者は、腸溶層コーティング重量および組成物を変化させることにより腸溶コーティングマルチ粒子からの遅延バースト溶出前の遅延期を調節し得る。例えば、胃中での時間が<4時間であり、剤形が胃を離れた後ある程度の保護(1〜3時間)が望まれる場合、投与と薬物放出間の4時間までの保護を提供する適切なレベルのコーティングを調製し得る。正確なコーティング重量を特定するために、マルチ粒子の試料は、コーティング重量の範囲にわたって流動床コーターから引かれ、正確なコーティングレベルを特定するためにインビトロ溶出によって試験されるだろう。これらの結果に基づいて正確なコーティング重量が選択されるだろう。腸溶コーティングマルチ粒子の例は米国特許第6,627,223号で見付けられ得る。
【0106】
ロナファルニブおよび/またはリトナビルは、1以上の放出遅延剤と混合され得る(mixed)(例えば、ブレンドされ得るか(blended)、インターミックスされ得るか(intermixed)または連続相内であり得る)、および/またはその中に含まれ得る(例えば、その中に封入され得るかまたはそれでコーティングされ得る)。例えば、遅延バースト溶出製剤は、ロナファルニブおよび/またはリトナビルを含む1以上のカプセル剤の形態であり得る。他の例において、ロナファルニブおよび/またはリトナビルは、放出遅延剤でコーティングされたマルチ粒子形態、例えば顆粒剤、マイクロ粒子(ビーズ)またはナノ粒子内であり得る。
【0107】
経口投与に適する医薬製剤および単位投与形態は、特に、患者が薬物を自己投与する慢性病態および治療の処置において有用である。しかしながら、上記のように、いくつかの場合(急性感染症および生命の危機にある状態、特に入院を要求するものが挙げられるがこれらに限定されない)において、静脈内製剤が望ましく、本発明は該製剤も提供する。本発明は、ロナファルニブおよび/またはリトナビルが、水性または非水性溶媒、例えば植物または他の同様の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステルまたはプロピレングリコールに;および必要であれば、従来の添加剤、例えば可溶化剤、等張化剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤および防腐剤と溶解、懸濁または乳化させることにより本発明に従って注射用調製物へ製剤化され得る医薬製剤を提供する。注射または静脈内投与のための単位投与形態は、滅菌水、通常生理食塩水または別の医薬的に許容される担体中の溶液として組成物を含み得る。ロナファルニブおよび/またはリトナビルの単位投与形態のための活性医薬成分の適切な量は本明細書で提供される。
【0108】
VI.
キットおよび包装
ロナファルニブ、リトナビル、および適宜、HDV患者を処置するのに用いられる1以上のGI修飾薬は、HDV患者へ医薬包装で送達され得る。該包装は、患者の利便性および治療計画へのコンプライアンスを改善することが意図される。典型的に包装は、紙(厚紙)またはプラスチックを含む。
【0109】
一実施態様において、送達包装は、単回単位剤形に組合せてまたは個別の単位用量として所定の治療上有効な用量でロナファルニブおよびリトナビルを含む。各薬物の用量(例えばmgで)および単位用量の形態(例えば、錠剤、カプセル剤、速放性、遅放性など)は、本明細書の推奨に従って任意であり得る。
【0110】
一手法において、包装は、複数日投与(例えば1週間または1ヵ月)に適する用量を含む。好ましい手法において、複数日パックにおいて各投与(例えば、QD投与のための1日1回、BID投与のための1日2回など)のための用量(例えば、錠剤)は、異なる日または異なる時間に投与されるために用量から分割される。
【0111】
別の一実施態様において、包装は、所定の治療上有効な用量のロナファルニブ、リトナビルまたはロナファルニブおよびリトナビルの組合せ、ならびに単一の包装に組み合される1以上のGI修飾薬を含むが、該包装内の個別の構成要素中互いにから分離される。
【0112】
VII.
インターフェロン共治療
HBV感染および/またはHBVおよびHDV共感染を処置する現在の医療は、インターフェロン-αもしくはインターフェロン-γ単独治療(インターフェロン-α2bもしくはPEG化インターフェロン、例えばRocheから販売されるPegasysもしくはMerckから販売されるPEG-Intronでの処置を含む)、またはインターフェロン-αおよびヌクレオシドもしくはヌクレオチドアナログ、例えばアデフォビル(Hepsera(登録商標))、エンテカビル(Baraclude(登録商標))、ラミブジン(Epivir-HBV(登録商標)、Heptovir(登録商標)、Heptodin(登録商標))、テルビブジン(Tyzeka(登録商標))、テノフォビル(Viread(登録商標))およびリバビリン(例えばRebetol(登録商標)もしくはCopegus(登録商標))との組合せ治療のいずれかを使用する。本発明の方法によれば、ロナファルニブは、HDV感染(すなわち、HBVおよびHDV共感染)を処置するこれらの標準的治療の1つと組合せて用いられる。一実施態様において、ロナファルニブは、100 mg QDのロナファルニブ用量にて他の薬剤(例えばインターフェロンαおよびリトナビル)と組合せ投与される。ある実施態様において、本発明は、インターフェロンまたはリトナビルと組合せて少なくとも100 mgロナファルニブQDまたはBIDの投与によるHDV感染を処置するための方法を提供する。
【0113】
したがって一手法において、ロナファルニブ(例えば、増強剤(booster)、例えばトナビルと組合せるロナファルニブ)を受けている患者はまた、インターフェロン(例えば、インターフェロン-α)で処置される。いくつかの実施態様において、ロナファルニブおよびインターフェロン-α両方が患者に投与され、ロナファルニブ用量は少なくとも約50 mg BIDもしくは少なくともまたは約75 mg BIDもしくはQDである。いくつかの実施態様において、ロナファルニブ用量は100 mg BIDである。いくつかの実施態様において、ロナファルニブおよびインターフェロン-αの投与は同時的である。いくつかの実施態様において、ロナファルニブおよびインターフェロン-αの投与は連続性である。いくつかの実施態様において、インターフェロン-αはPEG化インターフェロン(以下、「Pegasys」)である。したがって、HDV-感染したロナファルニブ-リトナビル共治療を受けている患者はまたインターフェロンで処置され得ると企図される。
【0114】
他の薬剤、例えばインターフェロンαおよびリトナビル(Norvir)と組合せるロナファルニブの投与は、より低い用量における効率的な治療および/または投与頻度の減少を提供する。いくつかの場合において、患者は、ロナファルニブ、リトナビルおよびインターフェロン-αを投与される。いくつかの実施態様において、Pegasysは週1回投与される。いくつかの実施態様において、PEG化インターフェロン(Pegasys)は、1週間当たり180μgの用量で投与される。これらの実施態様において、ロナファルニブおよびインターフェロンの投与は、少なくとも30日間、通常少なくとも約60または6ヵ月〜1年以上を含む90日以上でさえ継続される。ある手法において、投与は、約30日間、より典型的には30または60日間、および頻繁には6ヵ月間、9ヵ月間および12ヵ月間も長く継続的だろう。いくつかの実施態様において、ウイルスレベルが一定期間(例えば1〜3ヵ月以上)検出できないレベルに低下した後、投与は中止されるだろう。
【0115】
インターフェロン
それらが介してシグナルを送る受容体のタイプに基づいて、ヒトインターフェロンは3つの主な型に分類されている。様々な実施態様において、I〜III型いずれかのインターフェロンは、HDV感染を処置するためにロナファルニブと組合せて用いられる。すべてのI型IFNは、IFNAR1およびIFNAR2鎖からなるIFN-α受容体(IFNAR)として知られる特定の細胞表面受容体複合体に結合する。ヒトに存在するI型インターフェロンは、IFN-α、IFN-β、IFN-εおよびIFN-ωである。II型IFNは、IFNGR1およびIFNGR2鎖からなるIFN-γ受容体(IFNGR)に結合する。ヒト中のII型インターフェロンは、IFN-γである。最近分類されたIII型インターフェロン群は、IFN-λ1、IFN-λ2およびIFN-λ3と呼ばれる(それぞれIL29、IL28AおよびIL28Bとも呼ばれる)3つIFN-λのからなる。これらのIFNは、IL10R2(CRF2-4とも呼ばれる)およびIFNLR1(CRF2-12とも呼ばれる)からなる受容体複合体を介してシグナルを送る。
【0116】
したがって本発明は、インターフェロン-αまたはインターフェロン-λがロナファルニブと組合せて用いられる組合せ治療を提供する。本明細書で用いる用語「インターフェロン-α」または「IFN-α」および「インターフェロン-λ」または「IFN-λ」は、ウイルス複製および細胞増殖を抑制し、免疫反応を調節する関連ポリペプチドのファミリーを指す。用語「IFN-α」は、天然IFN-α;合成IFN-α;誘導体化IFN-α(例えば、PEG化IFN-α、グリコシル化IFN-αなど);および天然または合成IFN-αのアナログを含む。用語「IFN-α」はまた、コンセンサスIFN-αを包含する。したがって本質的に、抗ウイルス特性を有する任意のIFN-αまたはIFN-λ、例えば天然IFN-αとして記載されるものは、本発明の組合せ治療において用いられ得る。
【0117】
本発明の目的のために適切なインターフェロンとしては、PEG化IFN-α-2a、PEG化IFN-α-2b、コンセンサスIFNおよびIFN-λが挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
用語「IFN-α」は、ある特定の特性、例えば血清半減期を変更するために誘導体化された(例えば天然ペプチドと比較して化学的に修飾された)IFN-αの誘導体を包含する。すなわち、用語「IFN-α」は、ポリエチレングリコールで誘導体化されたIFN-α(「PEG化IFN-α」)などを含む。PEG化IFN-αおよびそれを作るための方法は、例えば米国特許第5,382,657号;第5,951,974号;および第5,981,709号に記載される。PEG化IFN-αは、PEGと上記IFN-α分子のいずれかのコンジュゲートを包含し、インターフェロンα2a(Roferon、Hoffman La-Roche、Nutley、N.J.)、インターフェロンα2b(Intron、Schering-Plough、Madison、N.J.)、インターフェロンα2c(Berofor Alpha、Boehringer Ingelheim、Ingelheim、Germany);および天然インターフェロンαのコンセンサス配列の決定により定義されるコンセンサスインターフェロン(Infergen(登録商標)、InterMune、Inc.、Brisbane、CA.)へコンジュゲートされたPEGが挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
したがって、本発明の組合せ治療のいくつかの実施態様において、IFN-αは、1以上のポリエチレングリコール部分で修飾、すなわちPEG化されている。PEG化-インターフェロン、ペグインターフェロンα-2a(40 kD)(Pegasys、Hoffmann-La Roche)およびペグインターフェロンα-2b(12 kD)(PegIntron、Merck)の2つの形態は、市販されており、これらは薬物動態学的、ウイルス動態、忍容性プロファイル、およびそれ故に投与の点で異なる。
【0120】
ペグインターフェロンα-2a(Pegasys)は、40 kD分岐鎖ポリエチレングリコール(PEG)に共有結合したインターフェロンα-2a(約20 kD)からなる。PEG部分は、リシンへの安定なアミド結合によりインターフェロンα部分へ1つの部位において結合される。ペグインターフェロンα-2aは、60,000ダルトンのおよその分子量を有する。ペグインターフェロン-α-2aの生物活性は、ある特定のウイルスに対する適応性および先天性免疫反応両方に影響を与えるそのインターフェロンα-2a部分に由来する。このαインターフェロンは、ウイルスのタンパク質合成ブロックするおよびウイルスのRNA変異誘発を含むなどの多くの抗ウイルス作用を生じるインターフェロン刺激遺伝子の発現を最大にする複数の細胞内シグナル伝達経路を活性化する、肝細胞上のヒト1型インターフェロン受容体に結合し、それを活性化する。天然インターフェロンα-2aと比較して、ペグインターフェロンα-2aは、持続的な吸収および排出遅延を有する。ペグインターフェロンα-2aは、固定された1週間の用量として用いられる。ペグインターフェロンα-2aは、注射後比較的一定の吸収を有し、大部分が血液および器官に分布される。
【0121】
ペグインターフェロンα-2b(PegIntron)は、12 kD直鎖ポリエチレングリコール(PEG)に共有結合したインターフェロンα-2bからなる。当該分子の平均分子量はおよそ31,300ダルトンである。ペグインターフェロンα-2bは、主にモノPEG化種(1のPEG分子が1のインターフェロン分子と結合する)と少量のジPEG化種からできている。インターフェロン分子上の14の異なるPEG結合部位が特定されている。ペグインターフェロンα-2bの生物活性は、ある特定のウイルスに対する適応性および先天性免疫反応両方に影響を与えるインターフェロンα-2b部分に由来する。このαインターフェロンは、ウイルスのタンパク質合成ブロックするおよびウイルスのRNA変異誘発を含むなどの多くの抗ウイルス作用を生じるインターフェロン刺激遺伝子の発現を最大にする複数の細胞内シグナル伝達経路を活性化する、肝細胞上のヒト1型インターフェロン受容体に結合し、それを活性化する。天然インターフェロンα-2bと比較して、ペグインターフェロンα-2bは、持続的な吸収、クリアランス遅延、半減期延長を有する。ペグインターフェロンα-2bは、患者の体重に基づく1週間の用量として用いられる。ペグインターフェロンα-2bは、体内において急速な吸収およびより広い分布を有する。
【0122】
PEG化IFN-αポリペプチドのPEG分子は、IFN-αポリペプチドの1以上のアミノ酸側鎖とコンジュゲートする。ある実施態様において、PEG化IFN-αは、1のアミノ酸のみにPEG部分を含む。別の一実施態様において、PEG化IFN-αは、2以上のアミノ酸にPEG部分を含み、例えば、IFN-αは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14つの異なるアミノ酸残基と結合するPEG部分を含む。IFN-αは、アミノ基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基によって直接(すなわち結合基無しで)PEGと共役し得る。
【0123】
PEG化インターフェロンは、単独治療としてHDVの管理において用いられているが、HDVのクリアランスは1年間処置されたものの1/4に過ぎない。本発明により提供される組合せ治療は、免疫調節剤、例えばインターフェロンと(適宜他の抗ウイルス薬と組合せて)直接抗ウイルス剤として本明細書で提供されるようにロナファルニブを投与することを含む。例示的インターフェロンとしは、上で述べたものが挙げられる。これらの組合せ治療の一実施態様において、PEG化インターフェロンα-2a(Pegasys)を180マイクログラム(mcg)または135 mcg(より高い用量に陰性反応を示す患者のために用いられる)の用量で毎週皮下(SQ)投与する。これらの組合せ治療の別の一実施態様において、PEG化インターフェロンα-2b(PegIntron)を1.5 mcg/kg/wkの用量で毎週SQ投与する。これらの方法の他の実施態様において、α-インターフェロンは、次のように用いられる:コンセンサスインターフェロン(Infergen)を9 mcg〜15 mcgで毎日または週3回SQ投与する;インターフェロン-α2a組み換えを3 MIU〜9 MIUで週3回SQ投与する;インターフェロン-α2b(Intron A)組み換えを3 MIU〜25 MIUで週3回SQ投与する;およびPEG化インターフェロンλ(IL-28)を80 mcg〜240 mcgで毎週SQ投与する。
【0124】
用語「IFN-α」はまた、コンセンサスIFN-αを包含する。コンセンサスIFN-α(「CIFN」および「IFN-con」および「コンセンサスインターフェロン」とも呼ばれる)は、米国特許第4,695,623号および第4,897,471号で開示されるIFN-con1、IFN-con2およびIFN-con3に指定されたアミノ酸配列ならびに天然インターフェロンαのコンセンサス配列の決定により定義されるコンセンサスインターフェロン(例えば、Infergen(登録商標)、Three Rivers Pharmaceuticals、Warrendale、PA)を包含するが、限定されない。IFN-con1は、Infergen(登録商標)αcon-1製剤中のコンセンサスインターフェロン剤である。Infergen(登録商標)コンセンサスインターフェロン製剤を本明細書でその商品名(Infergen(登録商標))またはその一般名(インターフェロンαcon-1)で称する。IFN-conをコードするDNA配列は、上記特許または他の標準的方法に記載のように合成され得る。ある実施態様において、少なくとも1の更なる治療薬はCIFNである。
【0125】
用語「IFN-λ」は、IFN-λ1、IFN-λ2およびIFN-λ3を包含する。これらのタンパク質は、それぞれインターロイキン-29(IL-29)、IL-28AおよびIL-28Bとしても知られる。まとめてこれら3つのサイトカインは、IFNのIII型サブセットを含む。それらは、I型またはII型IFNにより用いられる受容体と異なるヘテロ二量体受容体複合体を介してシグナルを送るという事実を含む、多くの理由のためI型およびII型IFNの両方とはっきり異なる。I型IFN(IFN-α/β)およびIII型IFN(IFN-λ)がはっきり異なる受容体複合体を介してシグナルを送るが、それらは、多種多様の標的細胞において同じ細胞内シグナル伝達経路および抗ウイルス活性を含む同じ生物学的活性の多くを活性化する。インターフェロンλは、80、120または180 mcg QWを含むが限定されない、任意の治療上適切な用量で投与され得る。
【0126】
本発明の組合せ治療の様々な実施態様において、IFN-αおよび異種ポリペプチドを含む融合ポリペプチドが用いられる。適切なIFN-α融合ポリペプチドとしては、Albuferon-α
TM(ヒトアルブミンおよびIFN-αの融合産物;Human Genome Sciences;例えば、Osborn et al., 2002, J. Pharmacol. Exp. Therap. 303:540-548参照)が挙げられるが、これに限定されない。また、本方法において用いるのに適切なものは、IFN-αの遺伝子シャッフル型である。例えば、Masci et al., 2003, Curr. Oncol. Rep. 5:108-113参照。他の適切なインターフェロンとしては、Multiferon(Viragen)、Medusa Interferon(Flamel Technology)、Locteron(Octopus)およびOmega Interferon(Intarcia/Boehringer Ingelheim)が挙げられる。
【0127】
したがって、様々な実施態様において、ロナファルニブは、本発明に従ってHDV感染を処置するためにインターフェロンと組合せて投与される。様々な実施態様において、インターフェロンは、PEG化IFN-α2aまたはPEG化IFN-α2bである。ロナファルニブ/PEG化IFN-α2aの適切な用量は、100 mg BID/180 mcg QWである。ロナファルニブ/PEG化IFN-α2bの適切な用量は、100 mg BID/1.5 mcg/kg患者体重 QWである。
【0128】
VIII.
他の抗ウイルス治療
HDV-感染したロナファルニブ-リトナビル共治療を受けている患者はまた、他の抗ウイルス剤、例えばヌクレオシドおよびヌクレオチドアナログ、HBV感染を処置するのに用いられる化合物ならびに他の薬剤で処置され得ると企図される。
【0129】
ヌクレオシドおよびヌクレオチドアナログ
本明細書に記載のロナファルニブ-リトナビル共治療と組合せて用いられ得る抗ウイルスヌクレオシドまたはヌクレオチドアナログとしては、例えばアデフォビル(Hepsera(登録商標))、エンテカビル(Baraclude(登録商標))、ラミブジン(Epivir-HBV(登録商標)、Heptovir(登録商標)、Heptodin(登録商標))、テルビブジン(Tyzeka(登録商標))、テノフォビル(Viread(登録商標))およびリバビリン(例えばRebetol(登録商標)またはCopegus(登録商標))が挙げられる。
【0130】
HBVを処置するのに用いられる化合物
本発明の様々な組合せ治療において、HDVの処置のために、ロナファルニブはHBVに対する抗ウイルス薬と組み合される。インターフェロンを除き現在承認されている抗HBV薬は、逆転写酵素を阻害し、ヌクレオシドまたはヌクレオチドアナログである。これらの薬剤は、HBVに対し有効であるが、HDVが複製する必要がするHBsAgを低下させないためHDVに対し効果的でない;しかしながら本発明の組合せ治療において用いられるとき、患者アウトカム改善が達成され得る。現在、承認された抗HBV薬としては、インターフェロンα(Intron A(登録商標))、PEG化インターフェロン(Pegasys(登録商標))、ラミブジン(Epivir-HBV(登録商標)、Zeffix(登録商標)またはHeptodin(登録商標))、アデフォビルピボキシル(Hepsera(登録商標))、エンテカビル(Baraclude(登録商標))、テルビブジン(Tyzeka(登録商標)、Sebivo(登録商標))、クレブジン(韓国/アジア)、テノフォビル(Viread(登録商標))が挙げられる。Truvada(登録商標)(これは、テノフォビルおよびエムトリシタビンの組合せである)は、まだ承認されていないが、初期の臨床試験においてHBVウイルス価を低下させるのに有効であることが示されており、本発明の組合せ治療において有用である。
【0131】
他の治療化合物
本発明に従って処置されているHDV感染患者に有益な効果を有して投与され得る他の治療化合物としては、ヌクレオシドまたはヌクレオチドアナログ;チアゾリド;プロテアーゼ阻害剤;ポリメラーゼ阻害剤;ヘリカーゼ阻害剤;クラス C CpG トール様受容体7および/または9アンタゴニスト;両親媒性ヘリックスかく乱物質またはNS4B阻害剤;スタチンまたは他のHMG CoAレダクターゼ阻害剤;免疫調節剤;抗炎症剤;二次プレニル化阻害剤;シクロフィリン阻害剤;およびαグルコシダーゼ阻害剤が挙げられる。
【0132】
他の治療モジュール
経口のロナファルニブ-リトナビル共治療は、HDV感染の迅速で完全なクリアランスのための治療過程において1のモジュールであり得る。したがって、本明細書に記載の処置計画に、代替治療が先行し得るか、またはそれが続き得る。
【0133】
一例として、いくらかの患者は、薬物の高血中レベルを迅速に達成するためにロナファルニブの最初のIV点滴から利益を受け得て、ここで該レベルは、患者が本明細書により具体的に記載される経口治療に置かれる前にある期間(1〜数日間またはおそらく1週間)の連続または定期的なIV点滴により維持され得る。これらの実施態様において、患者は、200 mg BID投与(およびより高い用量)で達成される血清レベルに関連する治療効果を達成するために薬物を点滴され得る。IV投与は、医師の他の訓練された医療専門家のケアの下で(例えば病院において)予防的治療、およびこれらの高用量で経口投与することに関連するAEを回避もしくは改善するためまたは必要であればIV投与を終止するためのモニタリングとともになされる。他の実施態様において、数日間または数週間治療上有効な薬物の血中レベルに維持する薬物デポーを提供するための皮下点滴は、経口治療のために本明細書に記載されるものと同じ治療上有効な結果を達成するために用いられ得る。
【0134】
IX.
増強剤としてのコビシスタットの使用
リトナビルが最も広く用いられているCYP3A4阻害剤であるが、本明細書に記載の発見は、CYP3A4阻害剤阻害剤とのロナファルニブ組合せ処置を実施することを可能にする。代替態様において、本発明は、薬物動態増強剤コビシスタットがリトナビルの代わりにロナファルニブと組合せて用いられる、本明細書の他の箇所に記載の実施態様を提供する。
【0135】
コビシスタット(商品名Tybost(登録商標)でGilead Sciencesにより販売されている)は、CYP3Aの別の強力な阻害剤である。リトナビルがするように、それは、この酵素の他の基質の血中レベルを「増強する」が、リトナビルと異なり、抗ウイルス活性を有しない。また、それはある特定の薬物を分解するのに関与している酵素系(CYP3A)に対して明白な効果を有するが、それは、多数の潜在的に有害な薬物相互作用に寄与し得る多くの他の薬剤により用いられる他の酵素系に影響を及ぼさない。コビシスタットは、本明細書に記載の任意の用量および投与頻度でのロナファルニブと組合せたその承認された用量または任意のより低い用量での本発明の組合せ治療に有用である。
【0136】
一態様において、本発明は、リトナビル以外の増強剤が用いられることを除く、本明細書に記載の方法および組成物を用いるHDV患者の処置を企図する。一実施態様において、増強剤はコビシスタットである。いくつかの実施態様において、コビシスタットのより低い用量が用いられる(例えば、50 mg QDまたは50 mg BID)。
【0137】
表4は、限定されないが、ロナファルニブ-コビシスタット共治療のための4つの典型的な投与計画(A-D)を例示する。コビシスタットは、本明細書に記載の任意の用量および投与頻度でのロナファルニブと組合せたその承認された用量または任意のより低い用量での本発明の組合せ治療に有用である。代替実施態様において、コビシスタットは、より低い用量で(例えば、75 mg)および/またはより頻繁に(例えば、BID)で投与される。
【表4】
【0138】
別の一実施態様において、コビシスタット(Tybost(登録商標))は、150 mg 1日1回にて投与される。ある実施態様において、ロナファルニブは、100 mg QD、100 mg BIDにて、適宜上記のインターフェロンと組合せて投与され得る。
【実施例】
【0139】
X.
実施例
実施例1. BID投与される100 mgロナファルニブでのHDV患者の処置
この実施例は、慢性HDVの患者においてHDV RNAレベルを低下させるロナファルニブの有効性を実証する。8群1患者(すべて慢性HDVを有する)を次のように処置した:慢性デルタ型肝炎(HDV)を有する6人の患者(患者1、2、4、5、6および8)はロナファルニブで処置され、2人の患者(患者3および7)は28日間プラセボを投与された。積極的処置群の6人の患者は28日間100 mg BIDにて(経口投与)投与された。ロナファルニブ積極的処置群におけるベースラインからナディアへのHDV RNAレベルの平均変化は、-0.74 log HDV RNAコピー/mLであり、プラセボ群では、-0.24 log HDV RNAコピー/mLであった。
【0140】
患者4、5、6および8は、積極的処置中にベースラインからナディアへの量的血清HDV RNAレベルの0.5 log HDV RNAコピー/mL以上の低下により定義されるように、治療に反応した。表5(処置中および処置後の各患者についてのHDV RNAウイルス量における変化を示す)および
図1(患者4、5および6のlog HDV RNAコピー/mLレベルの経時変化を示す)参照。ベースラインから処置の終了(EOT)への患者4のHDV RNAレベルの変化は、-1.34 log HDV RNAコピー/mLであった。ベースラインからEOTへの患者5のHDV RNAレベルの変化は、-0.82 log HDV RNAコピー/mLであった。ベースラインからEOTへの患者6のHDV RNAレベルの変化は、-1.41 log HDV RNAコピー/mLであった。
【表5】
【0141】
HDV RNAウイルス量はロナファルニブの血漿濃度と相関する。
図2は、ロナファルニブの血漿レベルとウイルス量との間の相関を示す。ロナファルニブのより高い血漿レベルを有する対象体は、処置中HDV RNA力価においてより大きな低下を経験した。血漿レベルは、処置中200 ng/mL〜1,100 ng/mLの範囲であった。
【0142】
処置後ウイルスリバウンド
患者4、5および6は、ロナファルニブ治療を28日目に中止した後、ウイルスリバウンドまたは血清HDV RNAレベルの増加を示した。ロナファルニブ中止後、患者4のHDV RNAレベルは、1.7 log HDV RNAコピー/mL増加した。ロナファルニブ中止後、患者5のHDV RNAレベルは、1.4 log HDV RNAコピー/mL増加した。患者4、5および6は、ロナファルニブ治療を中止したおよそ4〜8週間後に始まるHDV RNAレベルのその後の低下を示し、これは、HDV RNAとHBV DNA間のウイルスダイナミクスへのウイルスに起因すると考えられる。
【0143】
実施例2. BID投与される200 mgおよび300 mgロナファルニブでのHDV患者の処置
5.8 log HDV RNAコピー/mL〜8.78 log HDV RNAコピー/mLの範囲のベースラインHDV RNAウイルス価により記録されるように、HDVに感染したと分かっている6人のヒト対象体を84日間200 mg BIDまたは300 mgいずれかのBIDの用量でのロナファルニブで処置した。
【0144】
28日間の処置の効果
28日間の処置の終わりに、ベースラインから28日目への6人の対象体でのウイルス量の平均変化は、200 mg BID群については-1.63 log コピー/mLであり、300 mg BID群については-2.00 log コピー/mLであった。表6および
図3参照。
【表6】
【0145】
28日目の結果は、100 mg BID投与計画に対してthe 200 mg BIDおよび300 mg BID投与計画の優れた有効性を示した。しかしながら、更なる有効性が十分な治療効果のために必要とされる。BID投与される200 mgおよび300 mgロナファルニブでHDV患者を処置する結果に基づいて、我々は、十分な治療効果を達成するための戦略が増強剤と組合せた少なくとも更なる30日間または更なる60日以上の投与を継続することを含むと決定した。いくつかの実施態様において、単独またはインターフェロンと組合せた増強剤の使用は、患者がより低いロナファルニブ用量(例えば、100 mg QDもしくは100 mg BID)またはより短い処置期間(例えば、30日間)で十分な治療効果を達成するのを可能にする。
【0146】
56〜84日間の処置の効果
200 mg BIDおよび300 mg BID投与が56日間(29〜56日目を2ヵ月と称し得る)および84日間(57〜84日目を3ヵ月と称し得る)継続されたとき、6人の患者いずれでのウイルス量の変化は、28日目にウイルス量レベルからプラトーに達したかまたは増加した。ウイルス量におけるこの変化なしまたは増加は、ロナファルニブへの低い消化管忍容性に起因した。これらの6人の患者は、消化管苦痛を緩和するために予防的にGI修飾薬を受けなかった。コンプライアンスはGI不耐性のため2ヵ月および3ヵ月(29〜84日目)における200 mg BIDおよび300 mg BIDロナファルニブ処置に乏しい可能性がある。
【0147】
実施例3. 100 mg BIDロナファルニブおよびインターフェロンでのHDV患者の組合せ処置
HDVに感染したと分かっている3人のヒト対象体は、4.34 log HDV RNAコピー/mL〜5.15 log HDV RNAコピー/mLの範囲のベースラインHDV RNAウイルス価および155〜174 IU/Lの範囲のALT値により述べられるように、56日間(2ヵ月)1週間当たり180μgのPegasys(PEGインターフェロンα-2a)と組合せて100 mg BIDの用量におけるロナファルニブで処置される。
【0148】
28日目の終わりに、3人の患者すべてのHDV RNAウイルス価は、HDV-RNAにおいて-1.04 log HDV RNAコピー/mL〜-2.00 log HDV RNAコピー/mLの低下の範囲でベースラインから低下し、3人の対象体での平均低下は、-1.8 log HDV RNAコピー/mLであった。56日目の終わりに、すべての3人の患者のHDV RNAウイルス価は、56日目において3 log コピー/mLの平均ウイルス量低下で低下し続けた。また、3人の患者すべてのALT値は、56日間を通じてベースラインから低下し、治療を停止した後低下し続け、3人の患者のうち2人で処置停止の4週目後までに正常化した。ALT値の正常値上限は、40 U/Lであると推定される。
【0149】
各患者についてのHDV RNAウイルス量およびALT値の変化を以下の表7に示す。
【表7】
【0150】
これらのウイルス量結果は、200 mg BIDロナファルニブ計画と比較可能な有効性および100 mg BIDロナファルニブ計画より優れた有効性および200 mg BIDロナファルニブと比較してより少ないグレート2の有害事象(AE)を示す。
【0151】
実施例4. 100 mg BIDロナファルニブおよび100 mg QDリトナビルでのHDV患者の組合せ処置
HDVに感染したと分かっている3人のヒト対象体、5.14 log HDV RNAコピー/mL〜6.83 log HDV RNAコピー/mLの範囲のベースラインHDV RNAウイルス価および84〜195 U/LのALT値により述べられるように、実質的に他は実施例1に記載のとおり、8週間100 mg QDのリトナビルと組合せて100 mg BIDの用量のロナファルニブで処置される。
【0152】
4週目の終わりに、3人の患者すべてのHDV RNAウイルス価は、HDV-RNAにおいて-1.71 log HDV RNAコピー/mL〜少なくとも-2.76 log HDV RNAコピー/mLの低下の範囲でベースラインから低下し、3人の患者での平均低下は、-2.2 log HDV RNAコピー/mLであった。8週目の終わりに、3人の患者すべてのHDV RNAウイルス価は低下し続け、患者2のウイルス価は検出できなかった。8週目における3人の患者すべてでの平均ウイルス量低下は、-3.2 log HDV-RNAであった。
【0153】
また、3人の対象体すべてのALT値は、35-50 U/Lの範囲でベースラインから低下した。ALT値の正常値上限は、40 U/Lであると推定される。表8参照。
【0154】
各患者についてのHDV RNAウイルス量の変化を以下の表8に示し、
図5に示す。
【表8】
【0155】
これらの結果は、200 mg BIDおよび300 mg BIDロナファルニブ単独治療と比較してならびに100 mg BIDロナファルニブおよび1週間当たり180μgPegasys(PEGインターフェロンα-2a)の組合せ処置より優れた有効性を示す。また、200 mg BIDロナファルニブと比較して観察されたグレード2のAEはより少なかった。表9参照。
【表9】
【表10】
【0156】
実施例5. ロナファルニブおよびリトナビルでのHDV患者の処置
実施例には、ロナファルニブおよびリトナビルの組合せ治療の抗HDV効果が示される。慢性HDV感染の8人の患者は、表10に概括される計画下で84日間ロナファルニブおよびリトナビルの4つの異なる用量組合せ(経口投与)で処置される。
【0157】
結果
ベースラインからの患者のHDV RNAレベルの変化は、ロナファルニブおよびリトナビル組合せ治療の結果として表11に概括される。
【表11】
【0158】
28日目、56日目および84日目までの患者1〜8におけるHDV RNAレベルの変化を示す時間的経過は、それぞれ
図6A.1、6A.2、6A.3に示される(標準化されたベースラインと比較した変化)。logウイルス量の平均変化は、28日目後-1.89、56日目後-1.86、84日目後-1.62であった。ナディアに4〜6週間で到達し、この後VLはプラトーになるか、またはいくつかの場合においてわずかに上昇する。群4は可飽和吸収点に到達し得て、これはより低いロナファルニブ用量が好ましいことを示唆する。
【0159】
群1および2は最も高いCminを維持した。これらの2群は、BIDロナファルニブ(群1)またはBIDリトナビル(群2)いずれかを有する。このことは、より高いまたはより多い頻度のリトナビル用量、例えばBIDが有益であり得ることを示唆する。
図10は、リトナビルのQD投与(グラフに示される)が2500〜3500 ng/mLの範囲であるLNF血清濃度を提供することを例証する。患者におけるBIDへのリトナビル投与の増加は、>5000 ng/mLのより高いロナファルニブ血清濃度を達成し得る。
【0160】
ロナファルニブ-リトナビル共治療で処置されるデルタ型肝炎感染患者におけるHDV RNAレベル低下とロナファルニブの血清レベルの増加の相関は、患者2(
図7)および患者8(
図8)に例示される。
血清ロナファルニブレベル2000 ng/mL未満を有する患者は、例えば患者8において、ロナファルニブレベル5,000 ng/mL近くかまたはそれを越える(> 2 log HDV-RNA)を有する患者と比較して、より低いウイルス量減少(< 1.5 log HDV-RNA)を有する可能性がある。
【0161】
有害作用
表12は、治療の最初の6週間中の患者の有害事象概括し、試験中の患者の75%(8人の患者のうち6人)が7〜10週目において少なくとも1の用量減少を必要としたことを示す。用量減少は、しばしばHDV RNAレベルにおいて増加またはプラトーをもたらした。
【表12】
【0162】
副作用のため患者8人の患者のうち6人(患者1、2、3、4、5、8)においてロナファルニブ用量を減少させた。用量減少は、ウイルス量増加またはプラトーと相関した。ロモティルおよびオンダンセトロンは、8人の患者のうち3人で用いられた(4週目で開始)。3人のうち2人はロナファルニブ用量減少を必要としなかった。
【0163】
実施例6
この予測的実施例は、ロナファルニブ 50 mg QD + リトナビル 100 mg QDの投与によりHDV感染を処置することを記載している。HDVに感染した患者は、90〜180日間毎日以下の計画を自己投与する:
ロナファルニブ 50 mg QD
リトナビル 100 mg QD
【0164】
処置の過程で患者のロナファルニブ血清レベルおよびHDVウイルス量を定期的に測定する。90日間の処置後、患者のウイルス量はベースラインを越えて低下する。
【0165】
実施例7
この予測的実施例は、ロナファルニブ 50 mg BID + リトナビル 50 mg BIDの投与によりHDV感染を処置することを記載している。HDVに感染した患者は、90〜180日間毎日以下の計画を自己投与する:
ロナファルニブ 50 mg BID
リトナビル 50 mg BID
オンダンセトロン 8 mg BID
ロモティル 5 mg BID
ファモチジン 20 mg BID。
【0166】
処置の過程で患者のロナファルニブ血清レベルおよびHDVウイルス量を定期的に測定する。90日間の処置後、患者のウイルス量はベースラインを越えて低下する。
【0167】
実施例8
この予測的実施例は、ロナファルニブ 75 mg QD + リトナビル 100 mg QDの投与によりHDV感染を処置することを記載している。HDVに感染した患者は、90〜180日間毎日以下の計画を自己投与する:
ロナファルニブ 75 mg QD
リトナビル 100 mg QD
オンダンセトロン 8 mg BID
ロモティル 5 mg BID
ファモチジン 20 mg BID。
【0168】
処置の過程で患者のロナファルニブ血清レベルおよびHDVウイルス量を定期的に測定する。90日間の処置後、患者のウイルス量はベースラインを越えて低下する。
【0169】
実施例9
この予測的実施例は、ロナファルニブ 75 mg BID + リトナビル 50 BIDの投与によりHDV感染を処置することを記載している。HDVに感染した患者は、90〜180日間毎日以下の計画を自己投与する:
ロナファルニブ 75 mg BID
リトナビル 50 mg BID
オンダンセトロン 8 mg BID
ロモティル 5 mg BID*
ファモチジン 20 mg BID
オメプラゾール 20 mg BID
*用量まで漸増する
【0170】
処置の過程で患者のロナファルニブ血清レベルおよびHDVウイルス量を定期的に測定する。90日間の処置後、患者のウイルス量はベースラインを越えて低下する。
【0171】
本明細書で引用されるすべて刊行物および特許は、個々の刊行物または特許が具体的または個々出典明示により組み込まれるために示されたように出典明示により本明細書に組込まれ、そして刊行物が引用されるものに関連して方法および/または物質を開示および記載するために出典明示により本明細書に組込まれる。
【0172】
本発明はある特定の態様、実施態様および任意の特徴により具体的に開示されるが、当業者であれば該態様、実施態様および任意の修飾、改良および改変に頼ることができ、該修飾、改良および改変は本開示の範囲内であると考えられると解されるべきである。
【0173】
本発明は、以下の態様および実施態様を含む。
[発明1]
ヒト患者においてデルタ型肝炎ウイルス(HDV)感染を処置する方法であって、患者に治療上有効量のロナファルニブおよび治療上有効量のCYP3A4阻害剤を少なくとも約30日間経口投与し、それよりHDV感染を処置することを含む方法。
[発明2]
CYP3A4阻害剤がリトナビルである、発明1に記載の方法。
[発明3]
ヒトのHDVのウイルス量を少なくとも2 log HDV-RNAコピー/mLまたは少なくとも3 log HDV-RNAコピー/mL減少させる、発明1に記載の方法。
[発明4]
処置が少なくとも30日間、少なくとも60日間、少なくとも90日間、少なくとも120日間、少なくとも150日間、または少なくとも180日間である、発明1に記載の方法。
[発明5]
1以上のGI修飾薬の予防的投与をさらに含む、発明1に記載の方法。
[発明6]
ロナファルニブが遅放性製剤として投与され、GI修飾薬が効き始めた後放出される、発明5に記載の方法。
[発明7]
1以上のGI修飾薬が制吐薬、制酸薬および下痢止め薬からなる群より選択される、発明5に記載の方法。
[発明8]
1以上のGI修飾薬がオンダンセトロン、ロモティルおよびファモチジンからなる群より選択される、発明5に記載の方法。
[発明9]
オンダンセトロンが8 mg BIDまたはTIDで投与され、ロモティルが5 mg QIDまたはBIDで投与され、ファモチジンが20 mg BIDで投与される、発明8に記載の方法。
本発明は、本明細書に広く一般的に記載されている。一般的開示内になるより狭い種および下位概念の各々はまた、本発明の一部を形成する。また、本発明の特徴または態様がマーカッシュグループによって記載される場合、当業者は、本発明はまたそれにより任意の個々の構成要素またはマーカッシュグループの構成要素の下位グループによって記載されると認識するだろう。