特許第6490816号(P6490816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490816
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】オルガノポリシロキサンの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/06 20060101AFI20190318BHJP
【FI】
   C08G77/06
【請求項の数】3
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-535364(P2017-535364)
(86)(22)【出願日】2016年7月21日
(65)【公表番号】特表2018-505267(P2018-505267A)
(43)【公表日】2018年2月22日
(86)【国際出願番号】EP2016067377
(87)【国際公開番号】WO2017016967
(87)【国際公開日】20170202
【審査請求日】2017年7月11日
(31)【優先権主張番号】102015214503.4
(32)【優先日】2015年7月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザントマイヤー,フランク
(72)【発明者】
【氏名】レーッセル,ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】プラッセ,マルコ
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−193980(JP,A)
【文献】 特開2007−100094(JP,A)
【文献】 特表2014−509321(JP,A)
【文献】 特開2006−206589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分枝状オルガノポリシロキサンの製造のための完全に連続した方法であって、
− 第1の反応装置としてのカラム内の第1の工程では、少なくとも1つの第1のクロロシランをアルコールと連続的に反応させて縮合度の低いポリオルガノシラン混合物(=シリコーン樹脂中間体)を生成させ、この反応は
a) アルコールおよび水、または
b) アルコール、水および当該第1のクロロシランとは以下のように、即ち、
− それはより揮発性が低く、従ってより高い沸点を有し、および
− さらにより低い反応性を有することができる
ように異なる少なくとも1つのさらなるクロロシランにより起こり、
c)加水分解性塩素1モル当たり0.1から2.0モルのアルコールが使用され、
d)使用されたアルコールは最大で5重量%の水を含有し、
− 第2の工程では、第1の工程からのシリコーン樹脂中間体を第2の反応装置としての連続ループ反応器または連続的な入出力を有する撹拌バッチ反応器または連続的に接続された攪拌装置カスケードに移し、そこで反応が
a) アルコールおよび水を用いて触媒痕跡量の塩化水素の存在下で、または
b) アルコールおよび水を用いて、触媒痕跡量の塩化水素の存在下で、さらにアルコキシおよび/またはヒドロキシ官能化オルガノポリシロキサンまたはアルコキシおよび/またはヒドロキシ官能化シランを添加して、起こり、
最終生成物、即ち、所望の縮合度を有する分岐状オルガノポリシロキサンを生成し、
但し、方法全体の間に、使用されるアルコール以外に、他の溶媒は使用されず、
このアルコールは1種類のアルコールまたは少なくとも2種類の異なるアルコールの混合物からなることができる、方法。
【請求項2】
分枝状オルガノポリシロキサンの製造のための部分的に連続した方法であって、
− 第1の反応装置としてのカラム内の第1の工程では、少なくとも1つの第1のクロロシランを連続的に反応させて縮合度の低いポリオルガノシラン混合物(=シリコーン樹脂中間体)を生成させ、この反応は
a) アルコールおよび水、または
b) アルコール、水および当該第1のクロロシランとは以下のように、即ち
それはより揮発性が低く、従ってより高い沸点を有し、および
− さらにより低い反応性を有することができる
ように異なる少なくとも1つのさらなるクロロシランにより起こり、
c)加水分解性塩素1モル当たり0.1から2.0モルのアルコールが使用され、
d)使用されたアルコールは最大で5重量%の水を含有し、
− 第2の工程では、第1の工程からのシリコーン樹脂中間体を第2の反応装置としての撹拌された不連続的に操作されるバッチ反応器に移し、そこで反応が
a) アルコールおよび水を用いて触媒痕跡量の塩化水素の存在下で、または
b) アルコールおよび水を用いて、触媒痕跡量の塩化水素の存在下で、さらにアルコキシおよび/またはヒドロキシ官能化オルガノポリシロキサンまたはアルコキシおよび/またはヒドロキシ官能化シランを添加して、起こり、
最終生成物、即ち、所望の縮合度を有する分岐状オルガノポリシロキサンを生成し、
但し、方法全体の間に、使用されるアルコール以外に、他の溶媒は使用されず、
このアルコールは1種類のアルコールまたは少なくとも2種類の異なるアルコールの混合物からなることができる、方法。
【請求項3】
工程1のアルコールが最大4重量%の水を含有することを特徴とする請求項1および2のいずれかに記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロシランから所望の縮合度までアルコールおよび水との反応による2工程を経て分岐状オルガノポリシロキサンを調製するための部分的にまたは完全に連続した方法であって、方法全体は追加の有機溶媒を使用することなく動作し、廃水が生成されず、方法は非常に反応性のクロロシランまたはクロロシラン混合物の制御された、ゲル化のない縮合に特に適している該方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン樹脂とも呼ばれる分枝状オルガノポリシロキサンの製造方法は、これまで長年の従来技術であった。
【0003】
オルガノポリシロキサンの製造のためのアルコキシシランの加水分解(例えば、DE1302773号参照)と比較して、クロロシランから出発する加水分解は、アルコキシシランの生成および単離がもはや必要でなく、経済的利点をもたらすという利点を有する。
【0004】
クロロシランからのオルガノポリシロキサンの製造のための連続的方法および不連続的方法の両方は、従来技術における多くの刊行物および特許明細書から長く知られている。
【0005】
現段階で、不連続的方法の例として特許明細書GB1192506号、DE953661C号、DE854708C号およびDE2415331A号およびUS2005288473号を参照することができる。これらの方法の欠点は、クロロシランの高い反応性に起因する、反応中に必要な高希釈である。これらの方法のさらなる欠点は、反応の終わりに相分離に至る大過剰の水によるものであり、この方法で遊離した塩酸は水相中で吸収または中和される。従って、大規模な工業規模では、まず処分のための大量の廃棄物があり、第2に、塩酸は経済的でない条件下でのみ回収可能であるため、失われる。
【0006】
連続的なクロロシランの加水分解の例として、US3489782号、DE954198号、DE102005047394A1号、DE102009045930A1号およびDE102007004838A1号を参照することができる。これらの方法においても、大量の水が必要であり、これは前述の廃水の問題を引き起こし、ここでもまた、水に溶解した塩酸は、経済的でない条件下で再び回収することができるにすぎない。
【0007】
これらの不連続的方法および連続的方法と同様に、カラムを使用する技術も確立されている。これらのカラム法により、反応制御を著しく改善することができる。従って、廃水相はもはや生成されず、遊離された塩酸はガスとしてカラムヘッドで回収することができる。関連する方法は、US2719859号、US3792071号、US4298753号、US6767982号、US5223636号およびUS4209454号に記載されている。これらの方法全ての共通の欠点は、それらがもっぱら低縮合度のオリゴマーをもたらすことである。縮合度の高いポリオルガノシロキサンは、これらの方法では入手できない。
【0008】
US2719859号は、加水分解性シランが水性加水分解媒体の連続流に細分されて導入され、加水分解媒体が常に過剰に存在することを特徴とする、カラム中でのポリオルガノシロキサンの製造方法を教示する。この方法は大量の水を必要とし、それは後で排水として処理するか排出しなければならない。加水分解媒体は常に過剰で使用され、生成物の排出に使用されるので、使用されるカラム設備は常に加水分解媒体で満たされており、その結果空時容量は低くなる。環状ポリシランに安定化することができるシラン、または十分な量の末端停止剤を含有するシラン混合物は、ここでは溶媒を含まないものとして使用することができる。完全な縮合でTまたはQ単位のみを形成するネットワーク形成性シランは、不活性溶媒中で希釈されて、不溶性ゲルを形成することなく反応性のあまり高くないシランの存在下で使用されて、ワークアップをさらに妨げ、方法の適用範囲を著しく制限する。
【0009】
US3792071号は、クロロシランからのアルコキシシランまたは縮合度の低いアルコキシポリオルガノシロキサンの連続的製造方法を教示する。この方法は、反応容器として蒸留カラムを用いて行われる。クロロシラン、アルコキシル化に必要なアルコールおよびポリオルガノシロキサンの製造のための縮合に必要な水は、異なる点でカラムに供給される。クロロシランはカラムヘッド上に、アルコールはこれの下のカラム部分またはカラムの下3分の1に適用される。カラムの大部分のカラムの内部温度は常にアルコールの沸点に対し少なくとも半度上に維持されるので、アルコールはカラム内でガス状であり、向流で下方に移動するクロロシランと出会う。
【0010】
アルコキシシランの製造に関し、この方法では溶媒および水は必要でない。縮合したポリオルガノシロキサンの製造については、両方がこの方法では必要なので、いずれの場合でも存在するアルコールと同様に、沸点が使用されるアルコールの沸点を上回るさらなる不活性有機溶媒、例えば、トルエンがカラム中に存在する。クロロシランが溶媒に溶解し、溶液としてカラムに供給されるという点で、溶媒がカラムに導入される。水およびアルコールは、それらの沸点よりも僅かに高い温度でカラムに供給され、そのためそれらはガスの形態でカラムに供給される。
【0011】
クロロシランは、それがカラムに供給される前に周囲温度にある。
【0012】
使用されるケイ素結合塩素のモルに基づいてモル過剰のアルコールが常に使用される。
【0013】
この方法は、得られた生成物において、これに対して特異的な中和または洗浄工程をカラムの処理後に必要とすることなく、1桁のppm範囲の非常に低い残留酸含有量が得られることを特徴とする。
【0014】
この方法の欠点は、空時容量が低いこと、方法の反応条件(US4298753号の比較例AおよびBに示される)下でのオレフィン性不飽和シランの重合に対する感受性、およびポリオルガノシロキサンへの縮合で、後で除去することが困難な不活性有機溶媒を使用しなければならないという事実である。従って、パーソナルケアのような溶媒不耐性の用途は、そのような生成物では実現できないか、残留する微量の溶媒をかなりの費用で生成物から除去しなければならず、経済的でない。
【0015】
さらなる欠点は、カラムが高温で常に運転されることにあり、例えば、メチルトリクロロシラン等のクロロシランの一部が比較的低い沸点を有するために、異なるクロロシランの混合物がカラム内で互いに分離され、従って無作為な比率で互いに反応し、そのためこの方法ではクロロシラン混合物から一定の組成のポリオルガノシロキサンを製造することはより困難である。
【0016】
US4209454号は、ポリオルガノアルコキシシロキサンの連続的製造方法を教示する。この方法では、クロロシランは、反応器に取り付けられたカラムに直接適用される。クロロシランの適用は、十分に長い反応時間を可能にするために、反応器から一定の最小距離で行わなければならない。反応器は、アルコール、水および生成されるポリオルガノシロキサンを含有する。装置にはさらなる溶媒は含まれない。反応器の内容物を加熱して沸騰させて、アルコールおよび場合により水を向流でクロロシランと接触させる。
【0017】
この方法の利点は、ここでは、例えば、GB674137号のような類似の手順を提案する他の方法よりもアルコキシ含有量を良好に制御することが可能であり、US4209454号の実施例が特にGB674137と比較して確認するように、ゲル形成の傾向がこの手順によりより良好に制御されることである。
【0018】
しかし、この方法は、オレフィン性不飽和ケイ素結合置換基に対して耐性ではない。
【0019】
カラムは反応器からの蒸発性成分の沸点で常に運転され、例えば、メチルトリクロロシランのような一部のクロロシランは比較的低い沸点を有するので、異なるクロロシランの混合物、例えば、フェニルトリクロロシランおよびメチルトリクロロシランがカラム内で互いに分離され、排ガス中に排出されたその一部が失われる。結果として、この方法では、生成物の量単位当たりより多くの量の抽出物が必要であるため、収益性が悪くなる。さらに、化学量論組成のシフトを排除することはできないので、この方法では、クロロシラン混合物から一定組成のポリオルガノシロキサンを製造することもより困難である。
【0020】
US4298753号には、第2の縮合段階でカラムを使用する、アルコキシシランまたは低縮合度のポリオルガノアルコキシシロキサンの製造のための2段階アルコキシル化方法または2段階アルコキシル化および縮合方法が教示されている。第1の縮合段階も連続的に運転され、そのために、カラムの上流で反応器が使用され、これは攪拌装置またはループであり得る。この予備反応器では、クロロシランとアルコールが並行して計量され、アルコールは加水分解性ケイ素結合塩素の量に基づいて準化学量論量で使用される。予備反応器は加熱されない。このようにして得られた反応混合物は、予備反応器から0から20℃の間の調製温度で排出され、カラムのヘッドに供給される。カラムは高温に調整される。さらなるアルコールは、予備反応器からの反応混合物の供給点の下でカラムに供給され、これは少なくとも、未だ存在するケイ素結合塩化物残渣の全てを完全に加水分解するのに十分な量で供給される。縮合のための水は、予備反応器にではなく、カラムに供給される。
【0021】
クロロシランは反応器に供給される前に周囲温度にある。この方法はまた、異なるクロロシランの混合物に対しても操作可能である。縮合のために水をカラムに供給する場合、クロロシランは不活性溶媒に溶解され、不活性溶媒の沸点はカラムが操作される温度より高い。
【0022】
アルコールとしては、沸点が使用されるクロロシランの沸点より低いものが適している。
【0023】
塩酸は予備反応器から、また反応カラムからも回収される。得られた生成物は、1桁のppm範囲の残留塩酸含有量を有する。
【0024】
この方法は、溶媒を含まないアルコキシシランを製造するのに効率的かつ適切である。オルガノポリシロキサンの製造については、例は与えられていない。またこの場合の欠点は、ポリオルガノシロキサンの製造のために、後で高い費用をかけて除去されなければならないトルエンのような追加の不活性溶媒の使用が必要であるということである。また、目的生成物の後のストリッピング中に、関連するアルコールおよび追加の不活性溶媒の溶媒混合物が得られ、これは反応手順のために、容易には再び使用できず、代わりにこれが共沸混合物の形成および同様の効果によって防止されない場合には、まずは費用をかけて互いに分離しなければならない。
【0025】
US5223636号は、ポリオルガノアルコキシシロキサンの製造のためのカラム処理を教示しており、そこでは反応器に取り付けられたカラムが使用される。開始時に、処理中に連続的にカラムに供給されるハロシランの完全にアルコキシル化された形態であるアルコキシシランが反応器に供給される。水およびアルコールは連続的に反応器に供給される。ハロシランは、反応器からの沸騰成分、主にアルコールへ、加水分解および縮合されたアルコキシシランと共に向流でアルコキシル化され、ここでハロシランアルコキシル化および加水分解の間に遊離されるハロゲン化水素酸が触媒酸として使用される。この手順には、余分な触媒酸を添加する必要がないという利点が確かにあるが、酸の量を制御することが困難であるだけでなく、特定の添加よりも著しく高いという欠点がある。生産規模のこのようなプラントでは、固定パイプ付きコネクタから酸を供給することが通常であるので、触媒の節約の利点は、制御の難しい反応条件という主な欠点に反しているため、むしろ僅かであると推定される。さらに、その後に除去されなければならない大量の酸が生成物中に残る。このような手順では、達成可能な縮合度に限界が設定される。縮合度が低い場合、そのような手順は容認できる。しかし、縮合度の程度が増加するにつれてゲル化の傾向が著しく増加するので、より高い縮合度では、方法はもはや十分に安定ではなくなる。
【0026】
可能な限りハロゲン化水素酸の量を制御するために、US52223636号では、ハロゲン化水素酸ガスを反応系から排出するために、補助ガス流の使用が提案されている。このように本質的に複雑な方法は、主張された利点を完全に打ち消す。
【0027】
US5223636号の実施例が示すように、生成物中に残存するHClの量は、100ppmよりも著しく大きく、これは、特許出願の時点でさえも、既に古くからの従来技術であった。
【0028】
US6767982号には、全てのケイ素原子が少なくとも1つのアルコキシ置換基を有することを特徴とする線状ポリオルガノアルコキシシロキサンの製造のための連続2段階方法が教示されており、第1の反応器の第1の工程で、ハロシラン、アルコールおよび水の混合物から部分アルコキシレートが生成され、それは第2の工程で反応蒸留カラムに適用され、そこでさらにアルコールを添加して最終生成物へのさらなる縮合が行われる。場合により、予備反応器からカラムへの移送中の反応混合物を加熱装置に通し、温度制御する。この方法中、ガスの形態のハロゲン化水素酸が生成され、これは系から除去される。液相に溶解したハロゲン化水素酸は系内に残る。ここでは、先のUS5223636号と同様に、合成中に生成されたハロゲン化水素酸が触媒として使用される。
【0029】
即ち、液相はハロゲン化水素酸で過飽和される。この方法の第1工程では既に水が存在するので、ハロゲン化水素酸は水性アルコール相の飽和まで溶解され、飽和ハロゲン酸水性環境が加水分解および縮合のために存在する。ポリオルガノシロキサンの製造のためのやや匹敵する連続法が記載されているEP1772475B1の実施例1では、このような飽和エタノール−水溶液は非常に反応性であり、その反応性の低下には、その反応促進作用を最小にするため、EP1772475B1号の場合は水によるかなりの希釈が必要である。EP1772475B1号には、ポリオルガノシロキサンを過度の縮合から保護し、それを水−エタノール相から抽出するために、ポリオルガノシロキサンのための水不溶性不活性有機溶媒が使用されている。EP1772475B1号によるこのような方法で、高い縮合度が可能である。US6767982号の場合には、そのような濃縮エタノール−水混合物が確かに添加されるが、同時に溶媒の使用は省かれる。縮合が増加するとゲル化の危険性が許容できない程増加し、方法はもはや安定に操作することができなくなるので、このような手順は低い縮合度に限定される。従って、US6767982号が、線状ポリオルガノシロキサン(25モル%を超えるアルコキシ含有率を有していなければならない)のみを対象とすることは論理的である。
【0030】
さらに、より多量のハロゲン化水素酸が形成される方法の段階での水の使用は、より多くの割合のハロゲン化水素酸が液相のワークアップに持ち越され、その結果として喪失されるかまたは廃棄物流中に排出されなければならないという影響を有する。
【0031】
DE102005003899A1号は、低アルコキシシリコーン樹脂の連続的製造方法を教示する。この方法の目的は、高度に縮合されたオルガノポリシロキサン、例えば、固体シリコーン樹脂の製造である。この方法は、ハロシランを水およびアルコールの存在下でカラム内で、既に反応系中に存在する所望のオルガノポリシロキサンと反応させることを特徴とする。水およびアルコールは、全てのケイ素結合ハロゲン基の完全な加水分解に必要であるよりも多くの水が常に存在するように反応装置に添加される。過剰の水は縮合反応の制御を可能にする。これは、2つの異なる蒸留カラムからなるシステムで行われ、その第1のものは純粋な反応カラムとして構成され、第2のものは反応およびストリッピング装置として構成される。この方法はまた、高粘度を示す高度に縮合されたオルガノポリシロキサンが形成されるので、例えば、芳香族溶媒のような不活性有機溶媒の使用を必要とする。これらは溶液中でしか管理できない。
【0032】
DE102005003898A1号は、クロロシランからアルコキシ官能化ポリシロキサンを製造するための連続法を教示しており、ここでは予備反応器を有する二重カラムシステムが反応装置として使用される。この構成の大きな利点は、予備反応器中の部分的なアルコキシレートの生成によって比較的少量の塩酸ガスしかカラムシステム内に形成されないことにある。従って、塩酸ガスの量が少ないことは、もはやカラムに大きな容量制限作用をもたず、従って、カラムシステムの空時容量は顕著に増加する
【0033】
第2のカラムはストリッピングカラムとして作動し、縮合には寄与しない。第2のカラムでは、場合により不活性有機溶媒を使用する。しかし、そのような不活性有機溶媒を使用する必要性がどの場合に存在するかについては明確に述べられていない。しかし、目的生成物として高度に縮合されたアルコキシ豊富なシロキサンは得られず、縮合度の低いシロキサンのみが得られるが、この方法に続く無溶媒操作モードは少なくとも問題があり、従って一貫して可能ではないことは明らかである。
【0034】
この方法は、縮合度の低い高度にアルコキシ官能化されたオリゴマーを製造するためにのみ適しているが、より高い縮合度を設定するためには適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】独国特許第1302773号明細書
【特許文献2】英国特許出願公開第1192506号明細書
【特許文献3】独国特許第953661号明細書
【特許文献4】独国特許第854708号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第2415331号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0288473号明細書
【特許文献7】米国特許第3489782号明細書
【特許文献8】独国特許第954198号明細書
【特許文献9】独国特許出願公開第102005047394号明細書
【特許文献10】独国特許出願公開第102009045930号明細書
【特許文献11】独国特許出願公開第102007004838号明細書
【特許文献12】米国特許第2719859号明細書
【特許文献13】米国特許第3792071号明細書
【特許文献14】米国特許第4298753号明細書
【特許文献15】米国特許第6767982号明細書
【特許文献16】米国特許第5223636号明細書
【特許文献17】米国特許第4209454号明細書
【特許文献18】欧州特許第1772475号明細書
【特許文献19】独国特許出願公開第102005003899号明細書
【特許文献20】独国特許出願公開第102005003898号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
本発明の目的は、
− 異なるクロロシランの混合物から再現可能に一定組成のポリオルガノシロキサンを製造することを可能にし、
− 不活性有機溶剤を全く使用せずに操作され、即ち、反応物として必要な有機成分のみを反応混合物中に含有し、
− 廃水相を生成せず、
− 残留酸含有量が10ppm未満と非常に低い生成物を利用可能にし、
− アルコキシ含有量を意図的に高から低に調節することができ、そのため低分子量および高分子量のポリオルガノシロキサンを直ぐに固体に供給するのに適しており、従って安定な手順で最高の縮合度を可能にし、
− 放出されたハロゲン化水素酸の回収率が少なくとも95%である
クロロシランまたはクロロシランの混合物からポリオルガノアルコキシシロキサンを製造するための、部分的にまたは完全に連続的で経済的な方法を提供することである。
【0037】
驚くべきことに、この課題は、本発明によって全ての構成要素の態様において解決されることが見出されている。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明の1つの主題は、分枝状オルガノポリシロキサンの製造のための完全に連続した方法であって、
− 第1の反応装置としてのカラム内の第1の工程では、少なくとも1つの第1のクロロシランをアルコールと連続的に反応させて縮合度の低いポリオルガノシロキサン混合物(=シリコーン樹脂中間体)を生成させ、この反応は
a) アルコールおよび水、または
b) アルコール、水および当該第1のクロロシランとは以下のように、即ち、
− それはより揮発性が低く、従ってより高い沸点を有し、および
− さらにより低い反応性を有することができる
ように異なる少なくとも1つのさらなるクロロシランにより起こり、
c)加水分解性塩素1モル当たり0.1から2.0モルのアルコールが使用され、
d)使用されたアルコールは最大で5重量%の水を含有し、
− 第2の工程では、第1の工程からのシリコーン樹脂中間体を第2の反応装置としての連続ループ反応器または連続的な入出力を有する撹拌バッチ反応器または連続的に接続された攪拌装置カスケードに移し、そこで反応が
a) アルコールおよび水を用いて触媒痕跡量の塩化水素の存在下で、または
b) アルコールおよび水を用いて、触媒痕跡量の塩化水素の存在下で、さらにアルコキシおよび/またはヒドロキシ官能化オルガノポリシロキサンまたはアルコキシおよび/またはヒドロキシ官能化シランを添加して、起こり、
最終生成物、即ち、所望の縮合度を有する分岐状オルガノポリシロキサンを生成し、
但し、方法全体の間に、使用されるアルコール以外に、他の溶媒は使用されず、
このアルコールは1種類のアルコールまたは少なくとも2種類の異なるアルコールの混合物からなることができる該方法である。
【0039】
本発明のさらなる主題は、分枝状オルガノポリシロキサンの製造のための部分的に連続した方法であって、
− 第1の反応装置としてのカラム内の第1の工程では、少なくとも1つの第1のクロロシランを連続的に反応させて縮合度の低いポリオルガノシラン混合物(=シリコーン樹脂中間体)を生成させ、この反応は
a) アルコールおよび水、または
b) アルコール、水および当該第1のクロロシランとは以下のように、即ち、
工程が以下のように異なり、
− それはより揮発性が低く、従ってより高い沸点を有し、および
− さらにより低い反応性を有することができる
ように異なる少なくとも1つのさらなるクロロシランにより起こり、
c)加水分解性塩素1モル当たり0.1から2.0モルのアルコールが使用され、
d)使用されたアルコールは最大で5重量%の水を含有し、
− 第2の工程では、第1の工程からのシリコーン樹脂中間体を第2の反応装置としての撹拌された不連続的に操作されるバッチ反応器に移し、そこで反応が
a) アルコールおよび水を用いて触媒痕跡量の塩化水素の存在下で、または
b) アルコールおよび水を用いて、触媒痕跡量の塩化水素の存在下で、さらにアルコキシおよび/またはヒドロキシ官能化オルガノポリシロキサンまたはアルコキシおよび/またはヒドロキシ官能化シランを添加して、起こり、
最終生成物、即ち、所望の縮合度を有する分岐状オルガノポリシロキサンを生成し、
但し、方法全体の間に、使用されるアルコール以外に、他の溶媒は使用されず、
このアルコールは1種類のアルコールまたは少なくとも2種類の異なるアルコールの混合物からなることができる該方法である。
【0040】
本発明による完全にかつ部分的に連続的な方法の両方のさらなる実施形態は、
第1の工程で生じたカラムの塩酸含有ヘッド留出物を凝縮させ、予備反応器からの反応混合物の投入点よりも短い距離だけ下のカラムに戻し、それによりそれはカラムの底部に到達せず、カラム内で遊離した塩酸は反応系から完全に除去され、その結果、シリコーン樹脂中間体は100ppm未満の残留塩酸含有量でさらにワークアップすることなく反応カラムの底部に蓄積する。
【0041】
次に、最終生成物(=高度に縮合された分枝状オルガノポリシロキサン)のワークアップ/精製が、ストリッピングによって行われ得る。このようにして、それは揮発性成分を含まず、その後、これはその純粋で最終的な形態で存在する。ストリッピングは任意に変更することができ、手順はすべて既知の従来技術の範囲内にあり、例えば、蒸留を含む。適切な変形例のさらなる例については、以下でより詳細に説明する。第2の工程の後に生成物をストリッピングする際に得られる留出物は、第2の反応装置の留出物として続く本文に記載されている。
【0042】
アルコールとしては、好ましくは、アルコキシシランの製造、またはクロロシランとアルコールおよび場合により水との反応によるオルガノポリシロキサンの製造のために使用することができ、その沸点が特定のアルコキシシランまたは製造されるべきオルガノポリシロキサンの沸点よりも低いアルコール性ヒドロキシル基を有する炭化水素化合物が使用される。アルカノールおよび1から6個の炭素原子を有するエーテル酸素で置換されたアルカノール、例えば、メタノール、エタノール、n−またはイソプロパノール、ベータメトキシエタノール、n−ブタノールまたはn−ヘキサノールが好ましい。メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびブタノール、特にメタノールおよびエタノールが特に好ましい。場合により、特定の反応装置に供給する前に短い混合区域で均質化することができる、異なるアルコールの混合物も使用することができる。
【0043】
この方法で生じる塩化水素は、好ましくは、第1の反応装置のヘッドにおいて縮合性の成分を含まず、これらの成分は次いで関連する反応装置に戻される。従って、塩化水素はガスとして回収することができる。
【0044】
クロロシランまたはクロロシラン混合物としては、好ましくは、クロロシランとアルコールおよび場合により水との反応によるアルコキシシランまたはオルガノポリシロキサンの製造のための従来技術において既に使用されているものが使用される。これらは、特に、一般式(I)のシランである。
SiCl4−n (I)、
式中、
Rは、水素基、またはヘテロ原子で置換されたもしくは置換されていない酸安定性のC1からC18炭化水素基を意味し、
nは0、1、2または3の値を有することができ、
但し、式(I)のシランの多くとも50%中のnは3の値を有し、
式(I)のシランの少なくとも20%中のnは0または1の値を有する。
【0045】
ここではクロロシランを使用しているので、基Rの酸安定性は塩酸による攻撃に対する安定性を意味する。
【0046】
本発明の開示の全ての式において、記号はそれらの意味を互いに独立して有する。ケイ素原子は常に4価である。
【0047】
炭化水素基Rの選択された例は、アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、ヘキシル基、例えば、n−ヘキシル基、ヘプチル基、例えば、n−ヘプチル基、オクチル基、例えば、n−オクチル基およびイソオクチル基、例えば、2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えば、n−ノニル基、デシル基、例えば、n−デシル基、ドデシル基、例えば、n−ドデシル基、およびオクタデシル基、例えば、n−オクタデシル基、シクロアルキル基、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基、アリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基およびフェナントリル基、アルカリール基、例えば、トリル基、キシリル基およびエチルフェニル基、ならびにアラルキル基、例えば、ベンジル基およびβ−フェニルエチル基である。特に好ましい炭化水素基Rは、メチル、n−プロピルおよびフェニル基である。
【0048】
<第1の工程>
式(I)のシランは、純粋なシランとして、および式(I)の異なるシランの混合物としての両方で使用することができる。それらは、第1の反応装置、即ち、カラムに直接供給される。
【0049】
− 第1の反応装置では、クロロシランのアルコキシル化および縮合の両方が、クロロシランまたはクロロシラン混合物とアルコールおよび水との反応を介して起こり、低縮合度のオルガノポリシロキサン(シリコーン樹脂中間体としてさらなる本文中に記載される)および塩化水素ガスが得られる。形成される塩化水素ガスは、カラムから取り出され、縮合性成分の除去後に再循環される。冷却ブラインで縮合可能な成分はカラムに戻すことができる。このカラムにおいて、クロロシランまたはクロロシラン混合物は、最初にカラム底部(そこでアルコールは沸点まで加熱される)から蒸気としてクロロシランに向かって流れるアルコールと遭遇する。これにより、カラム底部に移動するアルコキシシランがクロロシランから形成される。そこではそれらはアルコールと水との混合物に遭遇し、加水分解して縮合し、オリゴマーが形成される。縮合の程度は、水の量によって制御可能である。アルコキシシランまたはアルコキシシラン混合物がもたらす少量の残留塩素含有量は、ここでは加水分解触媒として十分である。カラム中のアルコキシシラン形成中に遊離した塩酸をカラムから取り出す。これの間に、必然的かつ不可避的にアルコキシシランに付着する塩酸の上でアルコキシシラン形成の間に遊離される塩酸の導入を防止する措置が取られることがこの方法の特徴である。匹敵する方法のための従来技術における利点として時々述べられているような酸還流の導入による底部の過度の酸性化は、このようにして本発明の方法では明白に回避される。
【0050】
第1の反応装置の後の、単離され、ストリッピングされたシリコーン樹脂中間体の粘度は、それぞれ25℃で最大で600mPas、特に最大で500mPas、特に最大で400mPasである。
【0051】
この第1の反応装置後の純粋なストリッピングされたシリコーン樹脂中間体のアルコキシ含有率は、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも22重量%、特に少なくとも25重量%である。第1の反応装置のこのシリコーン樹脂中間体中のケイ素結合塩素の量は、最大で100ppm、好ましくは最大で75ppm、特に最大で50ppm、特に好ましくは最大で30ppmである。
【0052】
<第2の工程>
第1の工程からのシリコーン樹脂中間体を含有する反応混合物は、ループ反応器または連続的な入出力を有する攪拌バッチ反応器を含む第2の反応装置に移される。さらに、少なくとも2つの攪拌装置の連続的に接続された攪拌装置カスケードの使用が可能である。第2の工程はまた、単純な攪拌装置が使用され、反応が適切な保持時間で行われ、次いでワークアップのために排出されるという点で、不連続的に実施することもできる。
【0053】
この第2の反応装置では、さらなる反応は、a)アルコールおよび水を用いて、工程1および2からもたらされた触媒痕跡量の塩化水素の存在下で、所望の縮合段階(=高度に縮合した分枝状オルガノポリシロキサン=最終生成物)まで行われる。好ましくは、第2の反応装置中の混合物は、各々第1の工程からの純粋なストリッピングされたシリコーン樹脂中間体100重量部を基準にして、4から17重量部、特に好ましくは6から14重量部の量の水、50から120重量部、特に好ましくは60から100重量部の量のアルコール、0.02から0.1重量部、特に好ましくは0.04から0.08重量部の量の塩化水素を含む。
【0054】
さらなる実施形態において、b)触媒痕跡量の塩化水素の存在下でのアルコールおよび水との反応は、さらなるアルコキシおよび/またはヒドロキシ官能化オルガノポリシロキサンまたはアルコキシおよび/またはヒドロキシ官能化シランのさらなる添加により行われる。ここで、さらなるアルコキシおよび/またはヒドロキシ官能化オルガノポリシロキサンまたはアルコキシおよび/またはヒドロキシ官能化シランは、好ましくは液体であるか、またはそれらは第1の工程のシリコーン樹脂中間体を製造するために使用されたアルコールまたはアルコール混合物に可溶性である。
【0055】
追加のアルコキシおよび/またはヒドロキシ官能化オルガノポリシロキサンは、式(IV)の繰り返し単位から構成されるものである。
式(IV):RSi(OR(4−p−q)/2
式中、
Rは上記の意味を有し、
は、同一または異なる1価のCからCアルキル基または水素を意味し、
pおよびqは0、1、2または3を意味し、
但し、
p+q≦3かつ
式(IV)の全繰り返し単位の少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、特に好ましくは少なくとも40%のpは1の値を有する。
【0056】
さらなる追加のアルコキシシランは一般式(V)を有する。
式(V):RSi(OR4−o
式中、
はヘテロ原子で置換されていてもいなくてもよい炭化水素基を意味し、窒素原子はヘテロ原子として含まれておらず、
は上記の意味を有し、
oは0、1、2または3を意味する。
【0057】
本発明による方法の主な利点は、第2の工程におけるさらなる加水分解および縮合が、さらなる極性または非極性溶媒の添加なしに、反応物として使用されるアルコールまたはアルコール混合物の使用のみで行われ、最終生成物、即ち、任意の所望の縮合度の分枝状オルガノポリシロキサンが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0058】
実施の説明:
以下では、本発明による方法の実施を装置を例にとって説明する。プラントは、循環蒸発器(第1の工程)を備えたカラムおよびループ(第2の工程)を含む。
【0059】
第1の工程:第1の反応装置は循環蒸発器とその上に取り付けられたカラムとからなる。第1の反応装置のカラムは、第1の反応装置の上に、水作動凝縮器、次にブライン作動凝縮器を有する。そこで得られた留出物はカラムに戻される。凝縮器の後に得られた塩化水素ガスを回収することができる。
【0060】
第2の工程:第2の反応装置は、ループまたは連続的な入出力を有する攪拌バッチ反応器、連続的に接続された攪拌装置カスケードまたは不連続攪拌装置からなり、ループが好ましい。さらなる変形例は、バッチ式反応器中で不連続的に続く縮合である。
【0061】
第1の反応装置の循環蒸発器から、反応によって得られる反応生成物の混合物を遠心ポンプにより抜出し、さらに水、場合によりエタノールおよび触媒量の塩酸またはクロロシランと混合し、第2の反応装置のループで反応させる。この第2の反応装置のループから、最終生成物が、それが生成される量で除去される。
【0062】
第1の工程から得られるシリコーン樹脂中間体は、ろ過、蒸留および混合工程を含む通常の手段によって純粋で安定な生成物として得ることができ、または他の成分と調製物に配合することができる。他のケイ素含有成分とは別に調製物用のこのような成分は、有機モノマーまたは有機ポリマー、水、溶媒、乳化剤、安定剤、pH調整剤または他の添加剤、等の助剤、充填剤、顔料およびビルダーを含み、この列挙は限定としてではなく例としてのみ理解されるべきである。
【0063】
シリコーン樹脂中間体は、式(II)の繰り返し単位から構成されるものである。
式(II):RSi(OR(4−x−y)/2
は、それぞれ上記の意味を有する基RまたはRを意味し、
は上記の意味を有し、
xおよびyは0、1、2または3の値を意味し、
但しx+y≦3かつ
式(II)の全ての繰り返し単位の少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、特に好ましくは少なくとも40%のxは1の値を有し、式(II)の全繰り返し単位の100%において1の値を有することもでき、式(II)の全繰り返し単位にわたって平均化されたxは平均で0.8から1.9、好ましくは0.85から1.9、特に好ましくは0.9から1.8の値を有し、x=1およびx=2が特に好ましく、
一般式(II)の全繰り返し単位にわたって平均化されたyは0.6から2.0、好ましくは0.7から1.9、特に好ましくは0.8から1.9の平均値を有し、
シリコーン樹脂中間体は、特に、それらが少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも21重量%、特に好ましくは少なくとも22重量%、特に少なくとも23重量%の基ORを含有することを特徴とし、
シリコーン樹脂中間体において、単位ORは、最大で10重量%、好ましくは最大で9重量%、特に好ましくは最大で8重量%、特に最大で7重量%のヒドロキシ基を含む。シラノール基は、式(II)の繰り返し単位から構成されるシリコーン樹脂中間体中に義務的に存在する必要はない。
【0064】
シリコーン樹脂中間体は、最大で12の多分散度(=PD)を有する600から8,000g/モルの範囲の分子量(重量平均M)を有する。好ましくは、それらは最大で10の多分散度を有する650から5,000g/モルのMwを有し、特に好ましくはそれらは最大で8の多分散度を有する700から4000g/モルのMwを有し、特にそれらは最大で6の多分散度を有する700から3000g/モルのMwを有する。それらは、純粋な生成物としては液体であり、粘度は25℃および標準圧力において10から2000mPas、好ましくは25から1500mPas、特に好ましくは30から1000mPasの範囲にある。
【0065】
第2の工程から得られる最終生成物は、ろ過、蒸留および混合の工程を含むワークアップの通常の手段によって純粋で安定な最終生成物として得ることができ、または他の成分と共に調製物に配合することができる。この第2の工程からの最終生成物は、それらが縮合された縮合度に応じて、単離された純粋な最終生成物としての液体、高粘性また固体である。得られる縮合度は、第2の反応装置で選択される反応条件に依存する。特に、縮合度は、水および酸の量ならびに温度、選択された酸の性質および計量の順序ならびに第2の反応装置で選択される計量速度によって決定される。原則として、これらのパラメータの任意の組合せが可能であり、その選択は達成されるべき結果の影響を受ける。ここでは全ての変動性における方法が本発明の主題であるので、ここでは原則として可能な組合せは、既に知られている従来技術からのそれらから、それらが可溶性または可融性の、従ってさらに処理可能なオルガノポリシロキサンの製造をもたらさないことが明らかであるために明らかに不合理であるものを除いて除外されない。本方法において驚くべきことは、従来技術とは対照的に、使用されるアルコールまたはアルコール混合物とは別に、極性または非極性の有機溶媒を使用せずに、方法の変動性およびそれから生じる生成物の多様性が達成可能であるという事実である。
【0066】
第2の工程の反応が、第1の工程からの純粋なストリッピングされたシリコーン樹脂中間体100重量部に対して4から10重量部の量の水を用いて行われる場合、液体から粘性の液体である最終生成物が優先的に得られる。
【0067】
混合物が、第1の工程からの純粋なストリッピングされたシリコーン樹脂中間体100重量部に対して、10から17重量部の量の水を含有する場合には、第2の工程で粘性の液体から固体の生成物が優先的に得られる。
【0068】
使用される水は、好ましくは、部分的に脱イオン化された水、完全に脱イオン化された水、蒸留または(複数回の)再蒸留水および医学的または薬学的目的のための水、特に好ましくは部分的に脱イオン化された水および完全に脱イオン化された水である。
【0069】
好ましくは、本発明に従って使用される水は25℃および1010hPaで最大50μS/cmの導電率を有する。本発明により使用される水は、好ましくは空気飽和し、透明で無色である。
【0070】
好ましくは、全ての工程で同じアルコールが使用され、好ましくはそれはメタノールまたはエタノールである。エタノールは、メチルエチルケトン、石油エーテルまたはシクロヘキサンのような通常の変性剤を含有することができ、メチルエチルケトンが好ましい。
【0071】
第2の工程では、塩化水素は、塩酸としてまたはクロロシラン、酸塩化物もしくは線状ホスホニトリル塩化物のような前駆体の形態で添加することができ、塩酸溶液および特に塩酸水溶液が好ましい。
【0072】
第2の工程では、好ましくは、成分を単独で計量し、短時間混合し、ループに計量供給する。閉ループでは、循環ポンプの前に成分を単独で計量供給することもできる。
【0073】
好ましくは、閉ループは、1から5バールの絶対圧、沸点より5から10℃低い温度、60から150分の平均滞留時間、および層流から乱流で操作される。
【0074】
第2の工程では、連続的な入出力を有する攪拌バッチ反応器を、好ましくは、1バールの絶対圧、混合物の沸点および60から150分の平均滞留時間で操作する。平均滞留時間は、反応生成物の排出速度で割った反応体積から計算される。
【0075】
調製物において工程2からの最終生成物と一緒に使用できる成分は、ここでは他の液体または固体のケイ素含有成分、有機モノマーまたは有機ポリマー、水、溶媒、乳化剤、安定剤、pH調節剤またはさらなる添加剤等の補助剤であり、この列挙は単なる例示であり、限定として理解されるべきではない。
【0076】
第2の工程からの最終生成物は、式(III)の繰り返し単位から構成されるものである。
式(III):RSi(OR(4−a−b)/2
式中、
およびRは既に上記の意味を有し、
aおよびbは0、1、2または3を意味し、
但し、
a+b≦3かつ
式(III)の全ての繰り返し単位の少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、特に好ましくは少なくとも40%のaは1の値を有し、また式(III)の全繰り返し単位の100%において1の値を有することもでき、式(III)の全繰り返し単位にわたって平均化されたaは、0.8から1.9、好ましくは0.85から1.9、特に好ましくは0.9から1.8の値を有し、a=1およびa=2がaに対し特に好ましい値であり、
一般式(III)の全繰り返し単位にわたって平均化されたbは、0.05から1.7、好ましくは0.06から1.6、特に好ましくは0.08から1.5の平均値を有し、
式(III)の繰返し単位から構成される最終生成物は、特に、それらが最大25重量%、好ましくは最大24重量%、特に好ましくは最大23重量%、特に最大22重量%の基ORを含有することを特徴とし、
式(III)の繰り返し単位から構成される最終生成物において、単位ORは10重量%の程度、好ましくは最大で9重量%、特に好ましくは最大で8重量%、特に最大で7重量%のヒドロキシ基で存在する。シラノール基は最終生成物中に義務的に存在する必要はない。ここで、対応するシリコーン樹脂中間体よりも、常に少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも7重量%、特に好ましくは少なくとも10重量%、特に少なくとも12重量%少ない基ORが最終生成物中に含まれ、この場合、基ORの100重量%は、式(II)の繰り返し単位から構成されるシリコーン樹脂中間体からの基ORの総数である。
【0077】
式(III)の繰り返し単位から構成される最終生成物は、多分散度(PD)が最大で20である1,000から50,000g/モル(重量平均)の範囲の平均分子量Mwを有する。好ましくは、それらは18の多分散度を有する1,250から30,000g/モルのMwを有し、特に好ましくはそれらは15の多分散度を有する1,500から20,000g/モルのMwを有し、特にそれらは13の多分散度を有する1,500から15,000g/モルのMwを有する。式(III)の繰り返し単位から構成される最終生成物のMwは、式(II)の繰り返し単位から構成されるシリコーン樹脂中間体のMwの少なくとも1.1倍、好ましくは少なくとも1.2倍、特に好ましくは少なくとも1.3倍、特に少なくとも1.4倍である。式(III)の繰返し単位から構成される最終生成物は液体でもよく、また高粘性または固体でもよいので、それらは非常に大きな粘度範囲に及ぶことができる。それらが液体オルガノポリシロキサンである場合、それらの粘度は25℃および標準圧力で600mPas超、特に好ましくは750mPas超、特に好ましくは1000mPas超である。
【0078】
本発明の方法に従って製造されたシリコーン樹脂中間体またはそれから得られる最終生成物もしくは調製物は、腐食防止用調製物における使用に非常に適している。特に、それらは高温での腐食防止の目的での使用に適している。
【0079】
耐高温腐食防止の目的の他に、本発明の方法に従って製造されたシリコーン樹脂中間体またはそれから得られる最終生成物もしくは調製物はまた、鉄筋コンクリート中の鉄筋の腐食防止に使用することができ、本発明によるシリコーン樹脂中間体またはそれから得ることができる最終生成物もしくは調製物は、純粋な形態および調製物の両方で使用することができる。ここで、鉄筋コンクリートにおける腐食防止効果は、本発明によるシリコーン樹脂中間体または最終生成物またはこれらを含有するその調製物が、成形および硬化される前にコンクリート混合物に導入されること、およびコンクリートが硬化した後にコンクリートの表面に直接塗布することの両方により得られる。
【0080】
シリコーン樹脂中間体またはその最終生成物またはその調製物は、屋内および屋外セクター用の人工岩の製造のための結合剤として使用することができる。
【0081】
金属に対する腐食防止の目的の他に、本発明による方法によって製造されたシリコーン樹脂中間体または最終生成物は、調製物またはそれから得られる固体または膜の他の性質の操作のために使用することもできる:
− 電気伝導度および電気抵抗の制御
− 調製物の流動性の制御
− 湿ったまたは硬化したフィルムまたは物体の光沢の制御
− 耐候性の向上
− 耐薬品性の向上
− 色相安定性の向上
− 白亜化傾向の低減
− 固体またはフィルムの静摩擦および滑り摩擦の減少または増加
− 調製物中の泡の安定化または不安定化
− 調製物の接着性の改善
− 充填剤および顔料の湿潤および分散挙動の制御
− 調製物のレオロジー特性の制御
− 例えば、固体またはフィルムの、柔軟性、耐引掻き性、弾力性、伸縮性、曲げ性、引裂き挙動、弾性挙動、硬度、密度、引裂成長抵抗性、加圧成形残留性、異なる温度での挙動、膨張係数、耐摩耗性のような機械的特性、および熱伝導率、燃焼性、ガス透過性、水蒸気、熱気、化学薬品、気候および放射線に対する抵抗性、滅菌性のようなさらなる特性の制御
− 例えば、誘電損失係数、誘電強度、誘電定数、漏れ電流抵抗、耐アーク性、表面抵抗、比絶縁破壊抵抗のような電気特性の制御
− 例えば、固体またはフィルムの、柔軟性、耐引掻き性、弾力性、伸縮性、曲げ性、引裂き挙動、弾性挙動、硬度、密度、引裂成長抵抗性、加圧成形残留性、様々な温度での挙動
【0082】
上述した特性を操作するために本発明の方法で製造されたシリコーン樹脂中間体または最終生成物を使用することができる用途の例は、金属、ガラス、木材、鉱物基材等の基材上のコーティング材料および含浸および被覆、織物、カーペットおよび床材の製造のための合成および天然繊維、または繊維、皮革、およびプラスチック(例えば、フィルムおよびそれから得られる成形部品)から製造可能な他の製品の製造である。シリコーン樹脂中間体または最終生成物は、調製成分を適切に選択することにより、消泡、流動促進、疎水化、親水化、充填剤および顔料分散、充填剤および顔料湿潤、基材湿潤、表面平滑性の促進、添加剤を用いた調製物から得られる硬化混合物の表面における静的および摺動抵抗の低下の目的のための添加剤として調製物に使用することもできる。本発明による方法によって製造されたシリコーン樹脂中間体および最終生成物は、液体または硬化固体形態でエラストマー混合物に組み込むことができる。これにより、それらは、透明性、耐熱性、黄変傾向および耐候性の制御等の他の使用特性を補強または向上させる目的で使用することができる。
【0083】
上記の式の上記記号は全て、それぞれ互いに独立してその意味を有する。全ての式において、ケイ素原子は4価である。
【0084】
本明細書において、物質は機器分析によって得られるデータの記述によって特徴付けられる。これらが基づいている測定値は、公的に入手可能な規格に従って、または特別に開発された方法に従ってのいずれかで行われる。伝達される教示の明快さを確実にするために、使用される方法をここに記載する。
【0085】
<粘度:>
他に記載がない限り、粘度はDIN EN ISO 3219による回転粘度測定によって決定される。特に記載のない限り、全ての粘度データは25℃で1013ミリバールの標準圧力が適用される。
【0086】
<屈折率:>
屈折率は、特に断らない限り、規格DIN 51423に従って589nmで25℃および1013ミリバールの標準圧力で可視光波長範囲内で決定される。
【0087】
<透過率:>
透過率は、UV VIS分光法によって決定される。適切な機器は、例えば、Analytik Jena Specord 200である。
【0088】
使用される測定パラメータは、範囲:190〜1100nm、
ステップ幅:0.2nm、積分時間:0.04秒、測定モード:ステップ操作である。まず、基準測定(バックグラウンド)を行う。試料ホルダー上に取り付けられた石英板(石英板の寸法:HxB 約6×7cm、厚さ約2.3mm)を試料ビーム経路に置き、空気に対して測定する。
【0089】
次に、試料測定を行う。試料ホルダーに取り付けられた塗布された試料を有する石英板(塗布された試料の層厚さ約1mm)を試料ビーム経路に入れ、空気に対して測定する。バックグラウンドスペクトルに対する内部オフセットは、試料の透過スペクトルをもたらす。
【0090】
<分子組成:>
分子組成は、核磁気共鳴分光法(用語については、ASTM E386:high resolution nuclear magnetic resonance spectroscopy(NMR):terms and symbolsを参照)によって決定され、H核および29Si核を測定する。
【0091】
H NMR測定の説明]
溶媒:CDCl、99.8%d
試料濃度:5mm NMRチューブ中の約50mg/1mlのCDCl
【0092】
TMSを添加しない測定、7.24ppmのCDCl中の残留CHClのスペクトル参照
【0093】
分光器:Bruker Avance I 500またはBruker Avance HD 500
プローブヘッド:5mm BBOプローブヘッドまたはSMARTプローブヘッド(Bruker)
【0094】
測定パラメータ:
Pulprog=zg30
TD=64k
NS=64または128(プローブヘッドの感度に依存)
SW=20.6ppm
AQ=3.17秒
D1=5秒
SFO1=500.13MHz
O1=6.175ppm
【0095】
処理パラメータ:
SI=32k
WDW=EM
LB=0.3Hz
【0096】
使用する分光器の種類に応じて、測定パラメータの個々の適合が必要な場合がある。
【0097】
29Si NMR測定の説明]
溶媒:緩和試薬として1重量%のCr(acac)を含むC 99.8%d/CCl 1:1v/v
試料濃度:10mm NMRチューブ中の約2g/1.5ml溶媒
分光器:Bruker Avance 300
プローブヘッド:10mm 1H/13C/15N/29Siガラスを含まないQNPプローブヘッド(Bruker)
【0098】
測定パラメータ:
Pulprog=zgig60
TD=64k
NS=1024(プローブヘッドの感度に依存)
SW=200ppm
AQ=2.75秒
D1=4秒
SFO1=300.13MHz
O1=−50ppm
【0099】
処理パラメータ:
SI=64k
WDW=EM
LB=0.3Hz
【0100】
使用する分光器の種類に応じて、測定パラメータの個々の適合が必要な場合がある。
【0101】
<分子量分布:>
分子量分布は、ポリスチレン標準および屈折率検出器(RI検出器)と共にゲル浸透クロマトグラフィー(GPCまたはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC))の方法が使用される重量平均Mwおよび数平均Mnとして決定する。別段の記載がない限り、溶離剤としてTHFを使用し、DIN 55672−1を適用する。多分散度(PD)は、商Mw/Mnである。
【0102】
<ガラス転移温度:>
ガラス転移温度を、DIN53765、穿孔されたるつぼ、加熱速度10K/分後の動的差熱量測定(示差走査熱量測定、DSC)によって決定する。
【実施例】
【0103】
以下、本発明の方法を実施例に記載するが、これらはこれらに限定されるものと考えられるべきではない。全てのパーセントデータは、重量に基づいている。特に明記しない限り、全ての操作は、約25℃の室温、標準圧力(1.013バール)で実施する。装置は、多くの機器製造業者によって市販されているような通常の商業的な実験器具である。
【0104】
Phはフェニル基=C−を意味し、
Meはメチル基=CH−を意味する。従って、Meは2つのメチル基を意味する。
iOctは、イソオクチル基、または同じである2,2,4−トリメチルペンチル基を意味する。
【0105】
[実施例1]:完全に連続した本発明による方法。カラムとループの組み合わせ
工程1および2の実施のための装置として、連続アルコキシル化プラントを使用し、これは、正幅が50mmの長さ5mの適した反応カラムを備えた2.5Lのサイズの循環蒸発器および、続いて充填体積1.5Lであり、工程3が行われるループ反応器からなっている。
【0106】
循環蒸発器に2000gのエタノールを充填し、78℃の底部温度(エタノール還流)に設定する。
【0107】
充填体積が1.5リットルの反応ループに、工程1および2から得られるアルコキシオリゴマーポリオルガノシロキサンとエタノールとの等重量部からなる混合物を充填し、60℃に加熱して循環させる。
【0108】
1部のIO−トリクロロシランおよび9部のメチルトリクロロシランからなる混合物1500g/時を、500g/時のエタノールと同様にカラムに計量供給する。
【0109】
このカラムにおいて、クロロシラン混合物は、向流中の蒸気形態のエタノールで部分的にアルコキシル化され、この間、反応の副生成物として形成されるHClは廃ガス管を経て出る。
【0110】
さらに、500g/時のエタノールおよび140g/時の水を反応カラムの底部を介して反応系に供給し、加熱還流する(エタノール沸点:78℃)。
【0111】
アルキルシラントリアルコキシレートを、反応カラムの底部の水によってオリゴマーに縮合する。オリゴマー化または重合の程度は、使用される水の量によって制御可能である。
【0112】
発生する反応カラムのヘッド留出物(いわゆる酸還流)を凝縮し、予備反応器からの反応混合物の供給点より短い距離だけ下のカラムに戻す。これは、反応カラムの底部または記載された計量点よりも底部に近いカラムの地点に供給されない。これは、底部に達してそこで縮合反応を制御できないようにする酸還流の量が高すぎることを回避するために行う。
【0113】
従って、この方法で遊離されたHClを、廃ガス管を介して反応系から完全に除去し、その結果、底部から抜き出されるシリコーン樹脂中間体は、100ppm未満の残留HCl含有量(滴定可能)で蓄積する。このようにして反応カラムの底部で製造されたシリコーン樹脂中間体は、所望により反応カラムの底部から抜き取ることができ、分析的に特徴付けすることができる。それは、低粘度(100mm/秒未満)および20重量%を超える高い残留アルコキシ含有量を特徴とする。
【0114】
典型的な例では、以下の分析データがシリコーン樹脂中間体について得られた:
29Si NMRからの分子組成:
MeSiO3/2OCtSiO3/2:11.8モル%
MeSi(OEt)O2/2OctSi(OEt)O3/2:50.8モル%、MeSi(OMe)1/2OctSi(OEt)3/2:30.0モル%、MeSi(OMe)OctSi(OEt):6.4モル%
MeSiO2/2:0.8モル%(メチルトリクロロシラン中のジメチルジクロロシランのわずかな含有量のため)
MeSi(OEt)O1/2:0.2モル%(メチルトリクロロシラン中のジメチルジクロロシランのわずかな含有量のため)
エトキシ含有量:34.2重量%
OctSi(OEt)0−33−0/2の含有量:9.1重量%
Mw:4200g/モル
Mn:900g/モル
PD:4.7
【0115】
反応カラムの底部からの反応生成物を、形成されるのと同じ規模で反応ループに通す。ここでは、カラムの底部からの反応生成物は、反応ループを充填するために使用されるように、等量の部のエタノールおよびシリコーン樹脂中間体の混合物からなる。
【0116】
反応を開始するために、反応ループ中の初期混合物に、1.3重量%の塩酸水溶液50gを計量供給する。次いで、反応カラムの底部からのシリコーン樹脂中間体を、縮合した最終生成物を反応ループから除去するのと同じ規模で水性塩酸(1.3重量%のHCl水溶液の200g/時)と共に反応ループに供給する。
【0117】
ここでは、15分の平均滞留時間および35から40%の固体含有量(アルコール中の溶解樹脂)が確立されるように、抽出物流を計量供給する。
【0118】
このようにして製造された縮合HCl酸性ループ最終生成物を、メタノール中のナトリウムメチラートの30%溶液で中和し、次いで濾過する。
【0119】
その後、アルコール性最終生成物溶液を蒸留し、粘度、残留アルコキシ含有量および分子量分布等の生成物パラメータによって定義される液体最終生成物を得る。典型的な例では、以下の分析データが得られた:
【0120】
29Si NMRからの分子組成:
MeSiO3/2OCtSiO3/2:50.0モル%
MeSi(OEt)O2/2OctSi(OEt)O3/2:44.5モル%、
MeSi(OMe)1/2OctSi(OEt)3/2:4.5モル%、
MeSi(OMe)OctSi(OEt):0.2モル%
MeSiO2/2:0.8モル%(メチルトリクロロシラン中のジメチルジクロロシランのわずかな含有量のため)
MeSi(OEt)O1/2:0.0モル%(メチルトリクロロシラン中のジメチルジクロロシランのわずかな含有量のため)
エトキシ含有量:17.0重量%
OctSi(OEt)0−33−0/2の含有量:8.9重量%
【0121】
さらなる生成物パラメータ:
粘度:3600mm/秒
Mw:8200g/モル
Mn:1900g/モル
PD:4.3
【0122】
[実施例2]:部分的に連続した本発明の方法。カラムと攪拌装置の組み合わせ。
実施例1の工程1からの反応カラムの底部からのシリコーン樹脂中間体のエタノール溶液2744.29gを、5Lの撹拌容器中で、83.16gの水および2.31gの20%水性塩酸と混合する。混合物を80℃に加熱し、エタノールの還流が生じるようにする。この温度で2時間撹拌する。次にそれを60℃に冷却し、次いで2.31gのナトリウムメチラート溶液(メタノール中30%)を加える。残留塩酸含有量は、フェノールフタレインに対する滴定によって決定し、5ppmである。次に、全ての揮発性成分を80℃および10ミリバールの減圧下で留去し、得られた最終生成物を100μmの細孔幅を有するフィルタープレートに通して圧力吸引ロートに通して濾過する。1100gの透明な液体生成物が得られ、これは以下の特性および組成を有する:
【0123】
粘度:3100mm/秒
【0124】
分子量および不均一性:
Mw:8350g/モル
Mn:1190g/モル
PD:7.0
【0125】
29Si NMRからの分子組成:
MeSiO3/2OCtSiO3/2:49.4モル%
MeSi(OEt)O2/2OctSi(OEt)O3/2:46.9モル%、
MeSi(OMe)1/2OctSi(OEt)3/2:3.7モル%、
エトキシ含有量:16.9重量%
ケイ素に結合したOH基0.56%
【0126】
[実施例3]:部分的に連続した本発明による方法。カラムとMSE110を有する攪拌装置との組み合わせ。
実施例1で使用したシランであるメチルトリクロロシランおよびイソオクチルトリクロロシランの代わりにメチルトリクロロシランをもっぱら使用して、実施例1に記載したように第1の工程を実施する。エタノールの代わりにメタノールを処理アルコールとして使用し、反応カラムの温度は78℃ではなく、64℃である。他のパラメータは全て実施例2のように選択する。メタノールに溶解したシリコーン樹脂中間体、濃度51%が得られる。全ての揮発性成分を80℃および10ミリバールの減圧下での蒸留により除去した後の単離された形態では、以下の組成を有する:
MeSiO3/2:29.7モル%
MeSi(OMe)O2/2:55.9モル%、
MeSi(OMe)1/2:12.9モル%、
MeSi(OMe):0.9モル%、
MeSiO2/2:0.6モル%、
メトキシ含有量:30.3重量%
シラノール基は検出されない。
Mw=2100g/mol
Mn=700g/mol
PD=3.0
【0127】
第2の工程では、第1の工程からのシリコーン樹脂中間体を、1リットルの反応体積を有する攪拌されたかつ加熱可能なバッチ反応器に1250g/時の速度で連続的に供給する。第2の計量添加では、2500gのメタノール、300gの部分的脱イオン水および15.2gの20%塩酸の混合物700g/時を添加する。反応を還流で操作する。1950g/時の反応混合物を連続的に反応器からさらなる撹拌容器にポンプで送り込み、メタノール中の25%ナトリウムメチラート溶液4.15g/時と連続的に混合する。撹拌容器からの試料は25mgHCl/kgのHCl値を有する。ロータリーエバポレーター中で100℃および20ミリバールでストリッピングした後の試料(=最終生成物)は、トルエンに可溶性の高粘性樹脂であり、メトキシ含有量は13.7重量%であり、シラノール含有量は1.5重量%である。
【0128】
MeSiO3/2:53.2モル%
MeSi(OMe)O2/2:44.3モル%、
MeSi(OMe)1/2:1.7モル%、
MeSi(OMe):0.2モル%、
MeSiO2/2:0.6モル%、
【0129】
Mw=4700g/モル
Mn=1100g/モル
PD=4.3