特許第6490819号(P6490819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6490819pH4.5から7の環境において安定性が改善された表面処理炭酸カルシウム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490819
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】pH4.5から7の環境において安定性が改善された表面処理炭酸カルシウム
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/02 20060101AFI20190318BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20190318BHJP
   C09C 3/06 20060101ALI20190318BHJP
   C09C 1/68 20060101ALI20190318BHJP
   C01F 11/18 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   C09C1/02
   C09C3/08
   C09C3/06
   C09C1/68
   C01F11/18 J
【請求項の数】21
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2017-537393(P2017-537393)
(86)(22)【出願日】2016年1月13日
(65)【公表番号】特表2018-508612(P2018-508612A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】EP2016050536
(87)【国際公開番号】WO2016113285
(87)【国際公開日】20160721
【審査請求日】2017年9月13日
(31)【優先権主張番号】15151341.3
(32)【優先日】2015年1月15日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】62/106,243
(32)【優先日】2015年1月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/114,135
(32)【優先日】2015年2月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェラード,ダニエル・イー
(72)【発明者】
【氏名】ブッデ,ターニャ
(72)【発明者】
【氏名】ゲイン,パトリック・エイ・シー
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−227665(JP,A)
【文献】 特表2012−530042(JP,A)
【文献】 特表2012−530180(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/167473(WO,A1)
【文献】 特開平07−118011(JP,A)
【文献】 特表2015−521222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/02
C01F 11/18
C09C 1/68
C09C 3/06
C09C 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH4.5から7の環境において安定性が改善された表面処理炭酸カルシウムの製造方法であって、該方法は、
i)炭酸カルシウムを提供するステップ、当該炭酸カルシウムは天然粉砕炭酸カルシウムであり、
ii)20℃で測定した場合、0から8のpK値を有する少なくとも1つの酸を提供するステップ、当該少なくとも1つの酸が、リン酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、これらの酸性塩およびこれの混合物から成る群から選択され、
iii)少なくとも1つの共役塩基を提供するステップ、
iv)ステップi)の前記炭酸カルシウム、ステップii)の前記少なくとも1つの酸およびステップiii)の前記少なくとも1つの共役塩基を接触させて、表面処理炭酸カルシウムを形成するステップ
を含み
ステップi)の炭酸カルシウムが、100から1,200μmの体積中央粒径d50を有する粒子の形態であり、
ステップii)の少なくとも1つの酸およびステップiii)の少なくとも1つの共役塩基が水性緩衝溶液の形態で共に提供され、ステップiv)において、ステップi)の炭酸カルシウムを前記水性緩衝溶液と接触させて、表面処理炭酸カルシウムを形成する、
方法。
【請求項2】
ステップiv)が、
a1)ステップi)の炭酸カルシウムおよびステップii)の少なくとも1つの酸を接触させて前処理した炭酸カルシウムを形成するステップ、ならびに
a2)ステップa1)の前記前処理した炭酸カルシウムをステップiii)の少なくとも1つの共役塩基と接触させて表面処理炭酸カルシウムを形成させるステップ
を含み、ステップii)の前記少なくとも1つの酸が水溶液の形態で提供される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップiv)が、
b1)ステップi)の炭酸カルシウムおよびステップiii)の少なくとも1つの共役塩基を接触させて前処理した炭酸カルシウムを形成するステップ、ならびに
b2)ステップb1)の前記前処理した炭酸カルシウムをステップii)の少なくとも1つの酸と接触させて表面処理炭酸カルシウムを形成させるステップ
を含み、ステップiii)の前記少なくとも1つの共役塩基が水溶液の形態で提供される、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップiv)が、
c1)ステップi)の炭酸カルシウム、水性緩衝溶液および場合により水を混合して、表面処理炭酸カルシウムの水性懸濁物を形成するステップ、ならびに
c2)ステップc1)で得た前記水性懸濁物から表面処理炭酸カルシウムを分離するステップ
を含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
ステップi)の炭酸カルシウムが、200から1,000μmの体積中央粒径d50を有する粒子の形態である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップii)の少なくとも1つの酸が、リン酸、クエン酸、これらの酸性塩およびこれの混合物から成る群から選択される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップiii)の少なくとも1つの共役塩基が、20℃で測定した場合、0から8のpK値を有する酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩であり、好ましくはステップiii)の前記少なくとも1つの共役塩基が、リン酸、クエン酸、亜硫酸、ホウ酸、酢酸、酒石酸、ギ酸、プロパン酸、シュウ酸、ホスホン酸およびこれの混合物から成る群から選択される酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩であり、より好ましくはステップiii)の前記少なくとも1つの共役塩基が、リン酸、クエン酸、亜硫酸、ホウ酸、酢酸、酒石酸、ギ酸、プロパン酸、シュウ酸、ホスホン酸およびこれの混合物から成る群から選択される酸のナトリウム塩および/またはカリウム塩であり、ならびに最も好ましくは、ステップiii)の前記少なくとも1つの共役塩基が、リン酸、クエン酸およびこれの混合物から成る群から選択される酸のナトリウム塩および/カリウム塩である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
水性緩衝溶液が、4.0から7.5、好ましくは4.5から6.0および最も好ましくは4.8から5.5のpH値を有する、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
水性緩衝溶液が、0.01mol/kgから2mol/kg、好ましくは0.04から1.0mol/kg、より好ましくは0.06から0.5mol/kg、さらにより好ましくは0.07から0.4mol/kgおよび最も好ましくは0.08から0.2mol/kgの濃度を有する、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップi)の炭酸カルシウムが、0m/gを超えて5m/gまでの範囲、好ましくは0m/gを超えて2m/gまでの範囲およびより好ましくは0m/gを超えて1m/gまでの範囲のBET比表面積を有する粒子の形態である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
表面処理炭酸カルシウムを乾燥させるステップv)をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法によって得られる、pH4.5から7の環境において安定性が改善された、表面処理炭酸カルシウムの懸濁物。
【請求項13】
表面処理炭酸カルシウムが、酢酸で処理した場合、pH5およびpH6にて1時間当たりの酸消費の減少があり、前記減少が少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%および最も好ましくは少なくとも70%である、請求項12に記載の表面処理炭酸カルシウムの懸濁物。
【請求項14】
0m/gを超えて5m/gまでの範囲、好ましくは0m/gを超えて2m/gまでの範囲およびより好ましくは0m/gを超えて1.6m/gまでの範囲のBET比表面積を有する粒子の形態である、請求項12または13に記載の表面処理炭酸カルシウムの懸濁物。
【請求項15】
請求項11に記載の方法によって得られる、pH4.5から7の環境において安定性が改善された、乾燥表面処理炭酸カルシウム。
【請求項16】
表面処理炭酸カルシウムが、酢酸で処理した場合、pH5およびpH6にて1時間当たりの酸消費の減少があり、前記減少が少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%および最も好ましくは少なくとも70%である、請求項15に記載の乾燥表面処理炭酸カルシウム。
【請求項17】
0m/gを超えて5m/gまでの範囲、好ましくは0m/gを超えて2m/gまでの範囲およびより好ましくは0m/gを超えて1.6m/gまでの範囲のBET比表面積を有する粒子の形態である、請求項15または16に記載の乾燥表面処理炭酸カルシウム。
【請求項18】
研磨洗浄組成物であって、請求項12から14に記載の表面処理炭酸カルシウムの懸濁物または請求項15から17に記載の乾燥表面処理炭酸カルシウムを含む、研磨洗浄組成物。
【請求項19】
請求項12から14に記載の表面処理炭酸カルシウムの懸濁物の研磨材料としての、好ましくは洗浄用途のための研磨材料としての使用。
【請求項20】
請求項15から17に記載の乾燥表面処理炭酸カルシウムの使用であって、研磨材料としての、好ましくは化粧品用途および/または洗浄用途のための研磨材料としての、より好ましくは化粧品用途の研磨材料としてのおよび最も好ましくは局所皮膚適用のための研磨材料としての使用。
【請求項21】
表面を洗浄するための請求項18に記載の研磨洗浄組成物の使用であって、好ましくは生物表面を洗浄するための、ならびにより好ましくは、ヒトの皮膚、動物の皮膚、ヒトの毛髪、動物の毛および歯、歯肉、舌または頬表面などの口腔の組織から成る群から選択される生物表面を洗浄するための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pH4.5から7の環境において安定性が改善された、乾燥したまたは懸濁物中の表面処理炭酸カルシウム、これの製造方法およびこれの使用ならびにpH4.5から7の環境において安定性が改善された炭酸カルシウムを含有する生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨クリーナーは、当分野において周知であり、あらゆる種類の表面、特に汚れの除去が困難な汚れた表面の洗浄に広く使用される。例えばテーブル、流しまたは皿表面などの家庭用品の表面の洗浄に研磨クリーナーを使用できる。研磨材料は、練り歯磨きなどのパーソナルケア製品に、顔用およびボディ用スクラブまたは石鹸では剥離剤としても使用できる。粉砕杏仁、アーモンドシェル、糖もしくは塩結晶、または軽石などの天然成分に加えて、ポリエチレンミクロスフェアなどのポリマービーズは、研磨材料として広くパーソナルケア製品に使用されている。
【0003】
しかし、化粧品組成物中の研磨剤および剥離剤であるマイクロビーズとも呼ばれるポリエチレンミクロスフェアの使用により、マイクロビーズなどのマイクロプラスチックによる水質汚染が重大な環境上の懸念事項となってきた。化粧品およびパーソナルケア製品からのマイクロビーズは、使用後に排水管に流され、下水道に入り、その後、河川や運河へと進み得る。マイクロビーズはここから容易に、最終的に海洋にまで行き着く。
【0004】
結果として、マイクロビーズは、米国の幾つかの州とオランダで既に禁止されている。イリノイ州は、マイクロビーズを含有する製品の製造と販売を禁止する州法を制定した米国の最初の州となった。この二段階の禁止令は、2018年および2019年に発効する。ニューヨーク州議会は2014年5月にマイクロビーズの禁止令を採択し、オハイオ州とカリフォルニア州ではさらなる州法が検討されている。オランダは、2016年末までに化粧品にマイクロビーズを実質的に含まないという意向を発表した世界で初めての国である。結果として、化粧品会社は、今後数年にわたってマイクロビーズの使用を段階的に廃止し、環境にやさしい代用品について集中的に探索することを確約している。
【0005】
研磨材料として炭酸カルシウムを含む液体洗浄組成物は、例えばWO2013/078949に記載されている。天然アルカリ土類炭酸塩粒子の使用を含む、固体表面の洗浄のための乾式ブラスト法は、WO2009/133173に開示されている。WO03/061908、EP1666203およびEP1738872も、不溶性アルカリ金属炭酸塩の沈殿物または凝集体の使用を含む、固体表面の乾式洗浄方法を開示している。US5,827,114、US5,531,634およびWO94/07658には、ブラスト洗浄用炭酸カルシウムの使用が開示されている。マイクロダーマブレーション処置は、US2001/0023351に記載されている。この処置で使用する円形粒子は、ガラスビーズとすることができる。
【0006】
しかし、従来の炭酸カルシウムは、酸性水性媒体中で分解し、従って、洗浄組成物またはパーソナルケア製品によくある7未満のpHを有する組成物では一般に使用できない。ボディスクラブなどの化粧品研磨洗浄組成物は例えば、典型的には、皮膚の保護層を保護するために、約5から7のpH値を有する。
【0007】
前述の観点から、環境にやさしい研磨材料が引き続き求められている。
【0008】
酸安定化炭酸カルシウムまたはこれの懸濁物の使用は、中性から酸性酸の製造のために製紙産業で既知である。このような使用は、例えばUS6,228,161およびUS7,033,428(どちらもDrummond)、US5,043,017、US5,156,719(どちらもPassaretti)、WO97/08247、WO97/08248およびWO97/14651)(全てECC)ならびにUS6,540,878(Leino)に記載されている。
【0009】
少なくとも1つの酸および二酸化炭素の存在下での粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムの反応は、WO00/39222、WO2004/083316、WO2005/121257、WO2009/074492、EP2264108、EP2264109、US2004/0020410およびEP2070991に記載されている。これらの文献に記載された反応によって得られた生成物は全て、20から120m/gの範囲または200m/gもの高いBET表面積を示す多孔質生成物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2013/078949号
【特許文献2】国際公開第2009/133173号
【特許文献3】国際公開第03/061908号
【特許文献4】欧州特許第1666203号明細書
【特許文献5】欧州特許第1738872号明細書
【特許文献6】米国特許第5827114号明細書
【特許文献7】米国特許第5531634号明細書
【特許文献8】国際公開第94/07658号
【特許文献9】米国特許出願公開第2001/0023351号明細書
【特許文献10】米国特許第6228161号明細書
【特許文献11】米国特許第7033428号明細書
【特許文献12】米国特許第5043017号明細書
【特許文献13】米国特許第5156719号明細書
【特許文献14】国際公開第97/08247号
【特許文献15】国際公開第97/08248号
【特許文献16】国際公開第97/14651号
【特許文献17】米国特許第6540878号明細書
【特許文献18】国際公開第00/39222号
【特許文献19】国際公開第2004/083316号
【特許文献20】国際公開第2005/121257号
【特許文献21】国際公開第2009/074492号
【特許文献22】欧州特許第2264108号明細書
【特許文献23】欧州特許第2264109号明細書
【特許文献24】米国特許出願公開第2004/0020410号明細書
【特許文献25】欧州特許第2070991号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、前述の欠点の少なくとも一部を回避する研磨材料を提供することである。特に、pH4.5から7の環境において安定である研磨剤を提供することが望ましく、従ってこれらの条件下で安定である研磨組成物にも使用できる。さらに、穏やかな研磨特性を有するため、繊細な表面の洗浄にもまたパーソナルケア製品にも使用できる研磨材料を提供することが望ましい。
【0012】
さらに、本発明の目的は、天然源から誘導可能な研磨材料を提供することである。易生分解性である研磨剤を提供することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記および他の目的は、独立請求項において本明細書に定義するような主題によって解決される。
【0014】
本発明の一態様により、pH4.5から7の環境において安定性が改善された表面処理炭酸カルシウムの製造方法であって、
i)炭酸カルシウムを提供するステップ、
ii)20℃で測定した場合、0から8のpK値を有する少なくとも1つの酸を提供するステップ、
iii)少なくとも1つの共役塩基を提供するステップ、
iv)ステップi)の炭酸カルシウム、ステップii)の前記少なくとも1つの酸およびステップiii)の前記少なくとも1つの共役塩基を接触させて、表面処理炭酸カルシウムを形成するステップ、
を含み、ステップii)の前記少なくとも1つの酸および/またはステップiii)の前記少なくとも1つの共役塩基が、水溶液の形態で提供される方法が提供される。
【0015】
さらなる態様により、pH4.5から7の環境において安定性が改善され、本発明による方法によって得られる表面処理炭酸カルシウムの懸濁物が提供される。
【0016】
またさらなる態様により、pH4.5から7の環境において安定性が改善され、本発明の方法によって得られる乾燥表面処理炭酸カルシウムが提供される。
【0017】
なおさらなる態様により、本発明による表面処理炭酸カルシウムまたは乾燥表面処理炭酸カルシウムの懸濁物を含む研磨洗浄組成物が提供される。
【0018】
なおさらなる態様により、研磨材料としての、好ましくは洗浄用途のための研磨材料としての、本発明による表面処理炭酸カルシウムの懸濁物の使用が提供される。
【0019】
またさらなる態様により、本発明による乾燥表面処理炭酸カルシウムの使用であって、研磨材料としての、
好ましくは化粧品用途および/または洗浄用途のための研磨材料としての、
より好ましくは化粧品用途の研磨材料としての、ならびに最も好ましくは局所皮膚適用のための研磨材料としての、使用が提供される。
【0020】
なおさらなる態様により、表面を洗浄するための本発明による研磨洗浄組成物の使用であって、
好ましくは生物の表面を洗浄するための、
より好ましくは、ヒトの皮膚、動物の皮膚、ヒトの毛髪、動物の毛および歯、歯肉、舌または頬表面などの口腔の組織から成る群から選択される生物の表面を洗浄するための使用が提供される。
【0021】
本発明の好都合な実施形態は該当する従属請求項に定義されている。
【0022】
一実施形態により、ステップiv)は、
(a1)ステップi)の炭酸カルシウムおよびステップii)の少なくとも1つの酸を接触させて前処理した炭酸カルシウムを形成するステップ、ならびに
(a2)ステップa1)の前処理した炭酸カルシウムをステップiii)の少なくとも1つの共役塩基と接触させて表面処理炭酸カルシウムを形成させるステップ、
を含み、ステップii)の前記少なくとも1つの酸は、水溶液の形態で提供される。
【0023】
別の実施形態により、ステップiv)は、
(b1)ステップi)の炭酸カルシウムおよびステップiii)の前記少なくとも1つの共役塩基を接触させて前処理した炭酸カルシウムを形成するステップ、ならびに
(b2)ステップb1)の前処理した炭酸カルシウムをステップii)の少なくとも1つの酸と接触させて表面処理炭酸カルシウムを形成させるステップ、
を含み、ステップiii)の前記少なくとも1つの共役塩基は、水溶液の形態で提供される。
【0024】
一実施形態により、ステップii)の少なくとも1つの酸およびステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、水性緩衝溶液の形態で共に提供され、ステップiv)において、ステップi)の炭酸カルシウムを前記水性緩衝溶液と接触させて、表面処理炭酸カルシウムを形成する。別の実施形態により、ステップiv)は、
(c1)ステップi)の炭酸カルシウム、水性緩衝溶液および場合により水を混合して、表面処理炭酸カルシウムの水性懸濁物を形成するステップ、ならびに
(c2)ステップc1)で得た前記水性懸濁物から表面処理炭酸カルシウムを分離するステップを含む。
【0025】
一実施形態により、ステップi)の炭酸カルシウムは、天然粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ドロマイト、これの凝集体または凝結体、または上記材料の混合物および好ましくは天然粉砕炭酸カルシウムである。別の実施形態により、ステップi)の炭酸カルシウムは、1から1,500μm、好ましくは25から1,400μm、より好ましくは100から1,200μm、さらにより好ましくは200から1,000μm、最も好ましくは300から800μmの体積中央粒径d50を有する粒子の形態である。
【0026】
一実施形態により、ステップii)の少なくとも1つの酸は、リン酸、クエン酸、亜硫酸、ホウ酸、酢酸、酒石酸、ギ酸、プロパン酸、シュウ酸、ホスホン酸、酸性塩およびこれの混合物から成る群から選択される。好ましい実施形態により、ステップii)の少なくとも1つの酸は、リン酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、これらの酸性塩およびこれの混合物から成る群から選択される。最も好ましい実施形態により、ステップii)の少なくとも1つの酸は、リン酸、クエン酸、これらの酸性塩およびこれの混合物から成る群から選択される。
【0027】
別の実施形態により、ステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、20℃で測定した場合、0から8のpK値を有する酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩であり、好ましくはステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、リン酸、クエン酸、亜硫酸、ホウ酸、酢酸、酒石酸、ギ酸、プロパン酸、シュウ酸、ホスホン酸およびこれの混合物から成る群から選択される酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩であり、より好ましくはステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、リン酸、クエン酸、亜硫酸、ホウ酸、酢酸、酒石酸、ギ酸、プロパン酸、シュウ酸、ホスホン酸およびこれの混合物から成る群から選択される酸のナトリウム塩および/またはカリウム塩であり、ならびに最も好ましくは、ステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、リン酸、クエン酸およびこれの混合物から成る群から選択される酸のナトリウム塩および/カリウム塩である。上記アルカリ金属塩のアルカリ金属は、Li、Na、Kから成る群から選択することができ、好ましくはNaおよびKから成る群から選択される。上記アルカリ土類金属塩の金属はMg2+である。
【0028】
一実施形態により、水性緩衝溶液は、4.0から7.5、好ましくは4.5から6.0および最も好ましくは4.8から5.5のpH値を有する。別の実施形態により、水性緩衝溶液は、0.01mol/kgから2mol/kg、好ましくは0.04から1.0mol/kg、より好ましくは0.06から0.5mol/kg、さらにより好ましくは0.07から0.4mol/kgおよび最も好ましくは0.08から0.2mol/kgの濃度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の目的のために、以下の用語が以下の意味を有することを理解すべきである:
本発明の意味における「研磨材料」という用語は、摩擦または剥離によって表面を研磨または洗浄することができる粒子状物質を示す。
【0030】
本発明の目的のために、「酸」はブレンステッド−ローリー酸として定義され、即ちこの酸はHイオン供給体である。本発明により、酸は酸性塩でもあり得、調製条件下でHイオンを生成する。「酸性塩」は、陽性元素によって一部中和されたHイオン供給体として定義される。「塩」は、アニオンおよびカチオンから形成された電気的に中性のイオン化合物として定義される。「部分結晶性塩」は、XRD分析で、本質的に別個の回折パターンを示す塩として定義される。
【0031】
本発明により、pKは、所与の酸中の所与のイオン化性水素に関連する酸解離定数を表す記号であり、所与の温度の水中で平衡状態のこの酸からのこの水素の自然解離度を示す。このようなpK値は、Harris,D.C.「Quantitative Chemical Analysis:3rd Edition」,1991,W.H.Freeman & Co.(USA),ISBN 0−7167−2170−8またはCRC Handbook of Chemistry and Physics,1994−1995 75th edition,8−43 to 8−55,CRC Press Inc.,1995などの参照テキストに見出され得る。
【0032】
「共役塩基」という用語は、酸からプロトンを除去することによって形成される物質を示す。プロトンを得ることにより、共役塩基が酸に改質される。
【0033】
本発明の意味における「天然粉砕炭酸カルシウム」(GCC)は、天然源、例えば石灰石、大理石またはチョークから得られ、湿式および/または乾式処理、例えば粉砕、篩過および/または分画により、例えばサイクロンまたは分級機によって加工された炭酸カルシウムである。
【0034】
本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、一般に、水性環境における二酸化炭素と水酸化カルシウム(水和石灰)との反応後の沈降によってまたは水中でのカルシウム源および炭酸塩源の沈降によって得られる合成材料である。さらに、沈降炭酸カルシウムは、例えば、カルシウム塩および炭酸塩、塩化カルシウムおよび炭酸ナトリウムを水性環境に取り込んだ生成物であってもよい。PCCは、ファーテライト、カルサイトまたはアラゴナイトの結晶形態を有し得る。PCCは、例えばEP2447213A1、EP2524898A1、EP2371766A1またはWO2013/142473A1に記載されている。
【0035】
本発明の目的のために、「凝集体(agglomerate)」および「凝結体(aggregate)」という用語は、ISO14887:2000(E)に記載された定義を有するものである。ここで「凝集体」は、緩やかに凝集している粒子の集合体として定義され、「凝結体」は、互いに強固に結合した粒子の集合体として定義される。
【0036】
本文書を通じて、フィラー材料または他の微粒子材料の「粒径」は、粒径の分布によって説明される。値dは、粒子のx体積%が有するd未満の粒径に対する粒径を表す。従って、d50値は、体積中央粒径であり、即ち全粒子の全体積の50%は、この粒径より大きい粒子から生じ、全粒子の全体積の50%は、この粒径より小さい粒子から生じる。本発明の目的のために、別途指摘しない限り、粒径は体積中央粒径d50として規定する。体積中央粒径d50の測定には、フラウンホーファ光散乱モデルを使用して、英国のマルバーンインスツルメント社(Malvern Instruments Ltd.)製のマスタサイザー(Mastersizer)2000またはマスタサイザー(Mastersizer)3000が使用され得る。重量粒径分布は、全ての粒子の密度が等しい場合、体積粒径に一致し得る。方法および機器は当業者に公知であり、フィラーおよび顔料の粒径を決定するためによく使用されている。高速撹拌機および超音波を使用して試料を分散させる。
【0037】
本発明の目的のために、液体組成物の「固体含有率」は、全ての溶媒または水が蒸発した後に残存する材料の量の測定値である。
【0038】
本発明の意味における炭酸カルシウムの「比表面積(SSA)」は、炭酸カルシウムの質量で割った鉱物顔料の表面積として定義される。本明細書で使用する場合、比表面積は、BET等温線を使用して窒素ガス吸着により測定され(ISO9277:2010)、m/gで明記される。
【0039】
本発明の意味における「表面処理炭酸カルシウム」という用語は、炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部の上に表面処理を得るために、少なくとも1つの酸および請求項1に記載の少なくとも1つの共役塩基と接触させた炭酸カルシウムを示す。
【0040】
本発明の意味において、「界面活性剤」という用語は、2つの液体間の表面張力または液体と固体との間の界面張力を低下させる化合物を示し、洗剤、湿潤剤、乳化剤、発泡剤または分散剤として作用し得る。
【0041】
本発明の目的のために、用語「粘度」または「Brookfield粘度」は、Brookfield粘度を示す。Brookfield粘度はこの目的のために、Brookfield DV−II+Pro粘度計により25℃±1℃、100rpmにて、Brookfield RVスピンドルセットの適切なスピンドルを使用して測定し、mPa・sで規定する。当業者は、自分の技術知識に基づいて、Brookfield RVスピンドルセットから測定する粘度範囲に好適であるスピンドルを選択する。例えば200から800mPa・sの間の粘度範囲では、スピンドル番号3を使用し、400から1,600mPa・sの間の粘度範囲では、スピンドル番号4を使用し、800から3,200mPa・sの間の粘度範囲では、スピンドル番号5を使用し、1000から2,000,000mPa・sの間の粘度範囲では、スピンドル番号6を使用し、そして4,000から8,000,000mPa・sの粘度範囲では、スピンドル番号7を使用することができる。
【0042】
「懸濁物」または「スラリー」は本発明の意味において、不溶性固体および溶媒または液体、好ましくは水ならびに場合によりさらなる添加剤を含み、通常、大量の固体を含有するため、これから形成される液体よりも粘性であり、高密度であることができる。
【0043】
「含む(comprising)」という用語を本明細書および特許請求の範囲において使用する場合、これは機能的に非常にまたはわずかに重要な、他の規定されていない要素を排除しない。本発明の目的のために、「より成る(consisting of)」という用語は、用語「より構成される(comprising of)」の好ましい実施形態であると見なされる。以下で群が少なくとも幾つかの実施形態を含むと定義される場合、これはまた、好ましくはこれらの実施形態のみから成る群を開示すると理解されるものとする。
【0044】
「含む(including)」または「有する(having)」という用語を使用する場合は必ず、これらの用語は上で定義した「含む(comprising)」と同等であることを意味する。
【0045】
単数名詞を指すときに不定冠詞または定冠詞、例えば「1つの(a)」、「1つの(an)」または「この(the)」を使用する場合、何か他のことが特に示されない限り、これはこの名詞の複数を含む。
【0046】
「得られる(obtainable)」または「定義できる」および「得られる(obtained)」または「定義される」などの用語は、互換的に使用される。このことは例えば、文脈が別途明確に示さない限り、用語「得られる」は、例えば実施形態を例えば、用語「得られる」の後の一連のステップによって得なければならないことを、このような限定された認識が好ましい実施形態として用語「得られる」または「定義される」によって常に含まれるとしても、示すものではない。
【0047】
本発明のpH4.5から7の環境において安定性が改善された表面処理炭酸カルシウムの製造方法は、
(i)炭酸カルシウムを提供するステップ、
(ii)20℃で測定した場合、0から8のpKa値を有する少なくとも1つの酸を提供するステップ、
(iii)少なくとも1つの共役塩基を提供するステップ、
(iv)ステップ(i)の前記炭酸カルシウム、ステップ(ii)の前記少なくとも1つの酸およびステップ(iii)の前記少なくとも1つの共役塩基を接触させて、表面処理炭酸カルシウムを形成するステップ、
を含む。ステップ(ii)の前記少なくとも1つの酸および/またはステップ(iii)の前記少なくとも1つの共役塩基は、水溶液の形態で提供される。
【0048】
以下では、本発明の方法の詳細事項および好ましい実施形態をより詳細に述べる。これらの技術的詳細および実施形態は、前記方法から得られる本発明の表面処理炭酸カルシウム、前記本発明の表面処理炭酸カルシウムの本発明の使用および前記本発明の圧縮材料を含む組成物にも適用されることを理解するべきである。
【0049】
炭酸カルシウム
本発明の方法のステップi)において、炭酸カルシウムが提供される。一実施形態により、ステップi)の炭酸カルシウムは、天然粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ドロマイト、これの凝集体もしくは凝結体または上記材料の混合物である。好ましくは、ステップi)の炭酸カルシウムは、天然粉砕炭酸カルシウムである。
【0050】
天然粉砕炭酸カルシウム(GCC)は、石灰石もしくはチョークなどの堆積岩からまたは変成大理石岩、卵殻もしくは貝殻から採掘される炭酸カルシウムの天然形態から製造されると理解される。炭酸カルシウムは、カルサイト、アラゴナイトおよびファーテライトの3種類の結晶多形として存在することが知られている。最も一般的な結晶多形であるカルサイトは、炭酸カルシウムの最も安定な結晶形態であると考えられる。あまり一般的でないのはアラゴナイトであり、アラゴナイトは離散したまたはクラスタ化した針状斜方晶系結晶構造を有する。ファーテライトは、最も稀な炭酸カルシウム多形であり、一般に不安定である。粉砕炭酸カルシウムは、ほぼ例外なくカルサイト多形であり、カルサイト多形は三方菱面体と言われ、最も安定な炭酸カルシウム多形となる。炭酸カルシウム「源」という用語は、本出願の意味において、炭酸カルシウムが得られる天然型鉱物材料を示す。炭酸カルシウム源は、炭酸マグネシウム、アルミノシリケートなどの天然型構成成分をさらに含んでいてもよい。
【0051】
本発明の一実施形態により、天然粉砕炭酸カルシウム(GCC)源は、大理石、チョーク、石灰石またはこれの混合物から選択される。好ましくは、天然粉砕炭酸カルシウム源は大理石である。本発明の一実施形態により、GCCは乾式粉砕によって得られる。本発明の別の実施形態により、GCCは湿式粉砕と後続の乾燥によって得られる。
【0052】
本発明の意味における「ドロマイト」は、炭酸カルシウム含有鉱物、即ちCaMg(CO(「CaCO・MgCO」)の化学組成を有する炭酸系カルシウム−マグネシウム鉱物である。ドロマイト鉱物は、ドロマイトの全重量に対して少なくとも30.0重量%のMgCO、好ましくは35.0重量%を超える、およびより好ましくは40.0重量%を超えるMgCOを含有していてもよい。
【0053】
本発明の一実施形態により、炭酸カルシウムは1種の天然粉砕炭酸カルシウムを含む。本発明の別の実施形態により、炭酸カルシウムは、異なる源から選択された2種以上の天然粉砕炭酸カルシウムの混合物を含む。
【0054】
本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、水性環境における二酸化炭素と石灰との反応後の沈降によって、または水中でのカルシウムおよび炭酸イオン源の沈降によって、またはカルシウムイオンと炭酸イオンとの化合による、例えばCaClとNaCOとの溶液からの沈降によって一般に得られる合成材料である。PCCを製造するさらなる考えられる方法は、石灰ソーダ法、またはPCCがアンモニア製造の副生成物であるソルベー法である。沈降炭酸カルシウムは、カルサイト、アラゴナイトおよびファーテライトの3種類の主な結晶形態として存在し、これらの結晶形態それぞれについて多くの異なる多形(晶癖)がある。カルサイトは、偏三角面体(S−PCC)、菱面体(R−PCC)、六方晶柱状、卓面体晶系、コロイド晶系(C−PCC)、立方晶系および柱状(P−PCC)などの代表的晶癖を有する、三方晶系構造を有する。アラゴナイトは、六方晶柱状系双晶、ならびに薄い細長柱状、湾曲ブレード状、鋭利な角錐状、チゼル形状結晶、分枝樹およびサンゴまたはワーム様形状の多様な組み合わせの代表的晶癖を有する斜方晶系構造である。ファーテライトは六方晶結晶系に属する。得られたPCCスラリーは、機械的に脱水および乾燥することができる。
【0055】
本発明の一実施形態により、炭酸カルシウムは1種の沈降炭酸カルシウムを含む。本発明の別の実施形態により、炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムの異なる結晶形態および異なる多形から選択される2つ以上の沈降炭酸カルシウムの混合物を含む。例えば、少なくとも1つの沈降炭酸カルシウムは、S−PCCから選択される1つのPCCおよびR−PCCから選択される1つのPCCを含んでいてもよい。本発明のなお別の実施形態により、炭酸カルシウムは、25から1,500μmの体積中央粒径d50を有する沈降炭酸カルシウムの凝集体または凝結体を含む。
【0056】
本発明の一実施形態により、炭酸カルシウムは、天然粉砕炭酸カルシウムである。本発明の別の実施形態により、炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムである。本発明のなお別の実施形態により、炭酸カルシウムは、天然粉砕炭酸カルシウムおよび沈降炭酸カルシウムの混合物である。本発明のなお別の実施形態により、炭酸カルシウムは、場合により天然粉砕炭酸カルシウムおよび/または沈降炭酸カルシウムと混合されたドロマイトである。
【0057】
一実施形態により、ステップi)の炭酸カルシウムは、1から1,500μm、好ましくは25から1,400μm、より好ましくは100から1,200μm、さらにより好ましくは200から1,000μm、最も好ましくは300から800μmの体積中央粒径d50を有する粒子の形態である。
【0058】
一実施形態により、ステップi)の炭酸カルシウムは、天然粉砕炭酸カルシウム、ドロマイト、PCCの凝結体もしくは凝集体、または上述の混合物から成る群から選択され、25から1,500μm、好ましくは25から1,400μm、より好ましくは100から1,200μm、さらにより好ましくは150から1,100μm、なおより好ましくは200から1,000μmおよび最も好ましくは300から800μmの体積中央粒径d50を有する粒子の形態である。
【0059】
一実施形態により、ステップi)の炭酸カルシウムは、40から2,000μm、好ましくは200から1,800μm、より好ましくは300から1,500μm、さらにより好ましくは400から1,200μmおよび最も好ましくは500から1,000μmの体積トップカット粒径(d98)を有する粒子の形態である。
【0060】
別の実施形態により、ステップi)の炭酸カルシウムは、0m/gを超えて5m/gまでの範囲、好ましくは0m/gを超えて2m/gまでの範囲およびより好ましくは0m/gを超えて1.6m/gまでの範囲のBET比表面積を有する粒子の形態である。
【0061】
炭酸カルシウムは、任意の好適な液体または乾燥形態で使用することができる。例えば、炭酸カルシウムは、粉末および/または懸濁物の形態であってもよい。懸濁物は、炭酸カルシウムの粒子を溶媒、好ましくは水と混合することによって得ることができる。溶媒、好ましくは水と混合される炭酸カルシウムは、例えば、懸濁物、スラリー、分散物、ペースト、粉末、湿潤フィルタケーキとしてまたは圧縮もしくは顆粒形態の任意の形態で提供することができる。
【0062】
懸濁物は未分散であること、または分散させることができ、即ち懸濁物は分散剤を含むため、水性分散物を形成する。
【0063】
本発明の一実施形態により、炭酸カルシウムは、分散剤を含有しない水性懸濁物の形態で使用される。本発明の別の実施形態により、炭酸カルシウムは、分散剤を含有する水性懸濁物の形態で使用される。好適な分散剤はポリホスフェートから選択されてもよく、特にトリポリホスフェートである。別の好適な分散剤は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸もしくはイタコン酸をベースとするポリカルボン酸塩のホモポリマーもしくはコポリマーおよびアクリルアミドまたはこれの混合物を含む群から選択することができる。アクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーがとりわけ好ましい。このような生成物の重量平均分子量Mは、好ましくは2,000から15,000g/molの範囲であり、3,000から7,000g/molまたは3,500から6,000g/molの重量平均分子量Mがとりわけ好ましい。例示的な実施形態により、分散剤は、2,000から15,000g/mol、好ましくは3,000から7,000g/mol、最も好ましくは3,500から6,000g/molの重量平均分子量Mを有するナトリウムポリアクリレートである。
【0064】
炭酸カルシウムの懸濁物の固体含有率は、当業者に公知の方法によって調整することができる。水性懸濁物の固体含有率を調整するために、例えば水性懸濁物は、沈積、濾過、遠心分離または熱分離法によって部分脱水されてもよい。本発明の一実施形態により、炭酸カルシウムの水性懸濁物の固体含有率は、水性懸濁物の全重量に対して、1から85重量%、より好ましくは5から75重量%および最も好ましくは10から65重量%である。
【0065】
少なくとも1つの酸および少なくとも1つの共役塩基
方法ステップii)において、20℃で測定した場合、0から8のpK値を有する少なくとも1つの酸が提供される。
【0066】
ステップii)の少なくとも1つの酸は、調製条件の下でHイオンを生成する、任意の中−強酸もしくは弱酸またはこれの混合物であることができる。本発明により、少なくとも1つの酸は酸性塩でもあってもよく、調製条件下でHイオンを生成する。
【0067】
乾燥形態で入手可能な場合、ステップii)の少なくとも1つの酸およびステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、結晶水を含んでいてもよい。
【0068】
一実施形態により、ステップii)の少なくとも1種の酸は、20℃で測定した場合、0から2.5のpK値を有する中−強酸である。20℃でのpKが0から2.5である場合、酸は、好ましくは亜硫酸、リン酸、シュウ酸、またはこれの混合物、より好ましくはリン酸、シュウ酸またはこれの混合物から選択され、最も好ましくはリン酸である。少なくとも1つの酸は、酸性塩、例えばLi、NaもしくはKなどの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されているHPO、またはLi、Na、K、Mg2+またはCa2+などの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されているHPO2−であることもできる。少なくとも1つの酸は、1つ以上の酸および1つ以上の酸性塩の混合物であることもできる。
【0069】
なお別の実施形態により、少なくとも1つの酸は、20℃で測定する場合に、2.5を超えて7以下のpK値を有する弱酸である。好ましい実施形態により、弱酸は20℃で2.6から5のpK値を有し、より好ましくは、弱酸は、酢酸、ギ酸、プロパン酸、クエン酸、ホウ酸、酒石酸、ホスホン酸およびこれの混合物から成る群から、好ましくはクエン酸、酒石酸およびこれの混合物から成る群から選択され、ならびに最も好ましくはクエン酸である。
【0070】
本発明の一実施形態により、ステップii)の少なくとも1つの酸は、リン酸、クエン酸、亜硫酸、ホウ酸、酢酸、酒石酸、ギ酸、プロパン酸、シュウ酸、ホスホン酸、酸性塩およびこれの混合物から成る群から選択され、好ましくはリン酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、これらの酸性塩およびこれの混合物から成る群から選択され、ならびに最も好ましくはリン酸、クエン酸、これらの酸性塩およびこれの混合物から成る群から選択される。
【0071】
好ましくは、ステップii)の少なくとも1つの酸は、リン酸もしくはこれの酸性塩、クエン酸もしくはこれの酸性塩またはこれの混合物であってもよい。好ましい実施形態により、少なくとも1つの酸は、リン酸、クエン酸、ナトリウム二水素ホスフェート、カリウム二水素ホスフェート、カリウム二水素シトレート、ナトリウム二水素シトレート、二ナトリウム水素シトレート、二カリウム水素シトレートおよびこれの混合物から成る群から選択される。
【0072】
使用される(複数の)酸が有機酸である場合、ここで該酸は、動植物脂肪、油またはワックスに由来して、飽和または不飽和であり得る炭素数4から28の鎖(通常、分枝であり偶数)を有する、脂肪族モノカルボン酸ではないことが好ましい。これが脂肪酸のIUPACによる定義であることに留意する必要がある。即ち、有機酸を本発明の方法で使用する場合、該有機酸は脂肪酸ではないことが好ましい。上記は共役塩基にも当てはまる。
【0073】
ステップii)の少なくとも1つの酸は、液体または乾燥形態で提供できる。例えば、少なくとも1つの酸は、顆粒もしくは粉末などの固体および/または溶液などの形態であってもよい。一実施形態により、ステップii)の少なくとも1つの酸は、水溶液の形態で提供される。少なくとも1つの酸が顆粒または粉末などの固体の形態である場合、酸は結晶水を含んでいてもよい。
【0074】
ステップii)の少なくとも1つの酸は、濃縮溶液またはより希釈された溶液として提供できる。好ましくは、少なくとも1つの酸と炭酸カルシウムとのモル比は、1:10から1:100、好ましくは1:20から1:80およびより好ましくは1:50から1:60である。
【0075】
本発明の一実施形態により、ステップii)の少なくとも1つの酸の水溶液は、0.01mol/kgから2mol/kg、好ましくは0.04から1.0mol/kg、より好ましくは0.06から0.5mol/kg、さらにより好ましくは0.07から0.4mol/kgおよび最も好ましくは0.08から0.2mol/kgの濃度を有する。
【0076】
方法ステップiii)において、少なくとも1つの共役塩基が提供される。本発明による共役塩基は、酸からプロトンを除去することにより形成される物質である。プロトンを得ることにより、共役塩基は対応する酸に改質される。
【0077】
ステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩であることができる。本発明の一実施形態により、少なくとも1つの共役塩基は、リン酸、クエン酸、亜硫酸、ホウ酸、酢酸、酒石酸、ギ酸、プロパン酸、シュウ酸、ホスホン酸およびこれの混合物から成る群から選択される酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩である。アルカリ金属は、リチウム、ナトリウムまたはカリウムから選択され得る。アルカリ土類金属はマグネシウムであってもよい。
【0078】
好ましくは、ステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、リン酸もしくはこの酸性塩、クエン酸もしくはこの酸性塩、またはこれの混合物から選択される酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩であり得る。好ましい実施形態により、ステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、二ナトリウム水素ホスフェート、二カリウム水素ホスフェート、三カリウムシトレートおよび/または三ナトリウムシトレートである。
【0079】
一実施形態により、ステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、ステップii)の少なくとも1つの酸の共役塩基である。例えば、ステップii)の少なくとも1つの酸がリン酸である場合、ステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、アルカリ金属ホスフェートおよび/またはアルカリ土類金属ホスフェートである。別の例示的な実施形態により、ステップii)の少なくとも1つの酸がクエン酸である場合、ステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、アルカリ金属シトレートおよび/またはアルカリ土類金属シトレートである。しかし、ステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、ステップii)の少なくとも1つの酸とは異なる酸の共役塩基であってもよい。例えば、ステップii)の少なくとも1つの酸はクエン酸であることができ、ステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、アルカリ金属ホスフェートおよび/またはアルカリ土類金属ホスフェートであってもよい。
【0080】
ステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、液体または乾燥形態で提供できる。例えば、少なくとも1つの共役塩基は、顆粒もしくは粉末などの固体および/または溶液の形態であってもよい。一実施形態により、ステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、水溶液の形態で提供される。
【0081】
ステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、濃縮溶液またはより希釈された溶液として提供できる。好ましくは、少なくとも1つの共役塩基対炭酸カルシウムのモル比は、1:10から1:100、好ましくは1:20から1:80およびより好ましくは1:50から1:60である。
【0082】
本発明の一実施形態により、ステップiii)の少なくとも1つの共役塩基の水溶液は、0.01mol/kgから2mol/kg、好ましくは0.04から1.0mol/kg、より好ましくは0.06から0.5mol/kg、さらにより好ましくは0.07から0.4mol/kgおよび最も好ましくは0.08から0.2mol/kgの濃度を有する。
【0083】
方法ステップii)の少なくとも1つの酸および方法ステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、個別にまたは組合せて提供できる。
【0084】
本発明により、ステップii)の少なくとも1つの酸および/またはステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、水溶液の形態で提供される。一実施形態により、ステップii)の少なくとも1つの酸ならびにステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、個別の水溶液として提供される。
【0085】
一実施形態により、ステップii)の少なくとも1つの酸およびステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、共に水性緩衝溶液の形態で提供される。本発明の一実施形態により、水性緩衝溶液は、ホスフェート緩衝液、ホスフェート−シトレート緩衝液、シトレート緩衝液、タートレート緩衝液、ボレート緩衝液から成る群から選択され、好ましくは、水性緩衝溶液は、ホスフェート緩衝液、ホスフェート−シトレート緩衝液またはシトレート緩衝液およびより好ましくはホスフェート−シトレート緩衝液またはシトレート緩衝液である。
【0086】
好ましい実施形態により、ステップii)の少なくとも1つの酸およびステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、共に水性緩衝溶液の形態で提供され、ステップii)の少なくとも1つの酸は、ナトリウム二水素ホスフェート、カリウム二水素ホスフェート、クエン酸、ナトリウム二水素シトレート、カリウム二水素シトレート、二ナトリウム水素シトレート、二カリウム水素シトレートおよびこれの混合物から選択され、ステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、二ナトリウム水素ホスフェート、二カリウム水素ホスフェート、三カリウムシトレートおよび/または三ナトリウムシトレートである。より好ましくは、ステップii)の少なくとも1つの酸は、ナトリウム二水素ホスフェート、ナトリウム二水素シトレートまたはこれの混合物から選択されてもよく、ステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、二ナトリウム水素ホスフェート、二カリウム水素ホスフェート、三カリウムシトレートおよび/または三ナトリウムシトレートであってもよい。
【0087】
一実施形態により、水性緩衝溶液は、4.0から7.5、好ましくは4.5から6.0および最も好ましくは4.8から5.5のpH値を有する。別の実施形態により、ステップの水性緩衝溶液は、0.01mol/kgから2mol/kg、好ましくは0.04から1.0mol/kg、より好ましくは0.06から0.5mol/kg、さらにより好ましくは0.07から0.4mol/kgおよび最も好ましくは0.08から0.2mol/kgの濃度を有する。
【0088】
一実施形態により、水性緩衝溶液は、炭酸カルシウムの水性懸濁物の全量に対して、0.1から99重量%の量で、好ましくは1から90重量%の量で、より好ましくは10から80重量%および最も好ましくは60から70重量%の量で提供される。
【0089】
表面処理炭酸カルシウムの製造方法
本発明の一態様により、pH4.5から7の環境において安定性が改善された表面処理炭酸カルシウムの製造方法であって、
i)炭酸カルシウムを提供するステップ、
ii)20℃で測定した場合、0から8のpK値を有する少なくとも1つの酸を提供するステップ、
iii)少なくとも1つの共役塩基を提供するステップ、
iv)ステップi)の炭酸カルシウム、ステップii)の少なくとも1つの酸およびステップiii)の少なくとも1つの共役塩基を接触させて、表面処理炭酸カルシウムを形成するステップ、
を含み、ステップii)の少なくとも1つの酸および/またはステップiii)の少なくとも1つの共役塩基が、水溶液の形態で提供される方法が提供される。
【0090】
本発明の方法のステップiv)により、ステップi)の炭酸カルシウム、ステップii)の少なくとも1つの酸およびステップiii)の少なくとも1つの共役塩基を接触させる。ステップi)の炭酸カルシウムは、ステップii)の少なくとも1つの酸およびステップiii)の少なくとも1つの共役塩基とを、1ステップまたは複数のステップで接触させることができる。
【0091】
本発明の一実施形態により、ステップiv)は、
a1)ステップi)の炭酸カルシウムおよびステップii)の少なくとも1つの酸を接触させて前処理した炭酸カルシウムを形成するステップ、ならびに
a2)ステップa1)の前処理した炭酸カルシウムをステップiii)の少なくとも1つの共役塩基と接触させて表面処理炭酸カルシウムを形成させるステップ、
を含み、ステップii)の少なくとも1つの酸は、水溶液の形態で提供される。
【0092】
本発明の別の実施形態により、ステップiv)は、
b1)ステップi)の炭酸カルシウムおよびステップiii)の少なくとも1つの共役塩基を接触させて前処理した炭酸カルシウムを形成するステップ、ならびに
b2)ステップb1)の前処理した炭酸カルシウムをステップii)の少なくとも1つの酸と接触させて表面処理炭酸カルシウムを形成させるステップ、
を含み、ステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、水溶液の形態で提供される。
【0093】
または、ステップi)の炭酸カルシウム、ステップii)の少なくとも1つの酸およびステップiii)の少なくとも1つの共役塩基を同時に接触させる。この場合、ステップii)の少なくとも1つの酸およびステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、個別にまたは混合物として提供することができる。好ましくは、ステップii)の少なくとも1つの酸およびステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、例えばステップii)の少なくとも酸およびステップiii)の少なくとも1つの共役塩基を含む水性緩衝溶液の形態の混合物として提供することができる。
【0094】
本発明の一実施形態により、ステップii)の少なくとも1つの酸およびステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、水性緩衝溶液の形態で共に提供され、ステップiv)において、ステップi)の炭酸カルシウムを水性緩衝溶液と接触させて、表面処理炭酸カルシウムを形成する。
【0095】
接触ステップiv)は、当分野で公知のいずれの手段によっても実施できる。例えば、ステップi)の炭酸カルシウム、ステップii)の少なくとも1つの酸およびステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、噴霧および/または混合によって接触させることができる。噴霧または混合のための好適な処理装置は当業者に既知である。
【0096】
本発明の一実施形態により、方法ステップiv)は噴霧によって実施される。本発明の別の実施形態により、方法ステップiv)は、混合によって実施される。当業者は、自分の処理装置によって混合速度および温度などの混合条件を適合させる。例えば混合は、プロシェアミキサによって行うことができる。プロシェアミキサは、機械的に作られた流動床の原理によって機能する。プロシェアブレードは、水平円筒ドラムの内壁近くで回転して、混合物の構成成分を生成物床から開けた混合スペースへ運搬する。機械的に作られた流動床によって、大型のバッチであっても非常に短時間で確実に強力に混合される。チョッパおよび/または分散機を使用して、乾燥運転中に塊を分散させる。本発明の方法で使用され得る機器は、例えばドイツのGebruder Lodige Maschinenbau GmbHから入手できる。さらに、例えばドイツ、バルレヒテン=ドッティンゲン(Ballrechten−Dottingen)のYstral GmbHによる管状混合装置を使用してもよい。
【0097】
方法ステップiv)は、室温にて、即ち20℃±2℃の温度にて、または他の温度にて行われ得る。本発明の一実施形態により、方法ステップiv)は、少なくとも1秒間、好ましくは少なくとも1分間、例えば少なくとも2分間実施する。一実施形態により、方法ステップiv)は、少なくとも1分間、好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも10分間および最も好ましくは少なくとも20分間混合することによって実施する。
【0098】
本発明により、ステップii)の少なくとも1つの酸および/またはステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、水溶液の形態で提供される。上記の化合物を接触させることによってステップiv)の間に導入される水の量に応じて、表面処理炭酸カルシウムは、湿潤もしくは吸湿表面処理炭酸カルシウムの形態で、または表面処理炭酸カルシウムの水性懸濁物の形態で得られる。例えば、得られた湿潤もしくは吸湿表面処理炭酸カルシウムまたは表面処理炭酸カルシウムの水性懸濁物の所望の固体含有率またはBrookfield粘度を制御および/または維持および/または達成するために、方法ステップiv)の間に追加の水を導入し得ることも、本発明の制限内にある。
【0099】
ステップiv)により、表面処理炭酸カルシウムの懸濁物が得られ、懸濁物は、懸濁物中の表面処理炭酸カルシウムの重量に対して、1から80重量%の範囲、より好ましくは10から60重量%の範囲および最も好ましくは20から50重量%の範囲の固体含有率を有する。
【0100】
本発明により、方法はさらに、表面処理炭酸カルシウムを乾燥するステップv)を含むことができる。
【0101】
一般に、乾燥ステップv)は、いずれの好適な乾燥装置も使用して行ってもよく、例えば蒸発器、フラッシュ乾燥機、オーブン、スプレー乾燥機などの装置を使用する熱乾燥および/もしくは減圧乾燥ならびに/または真空チャンバ内での乾燥を含んでいてもよい。
【0102】
一実施形態により、乾燥ステップv)は、スプレー乾燥ステップであり、好ましくは前記スプレー乾燥ステップが、100℃から1,000℃および好ましくは200℃から600℃の入口温度で行う。粒径が小さい場合、例えば1から20μmの体積中央粒径d50では、噴霧乾燥が好ましい場合がある。20μmを超える体積中央粒径d50の場合、他の乾燥方法、例えばオーブン内での乾燥、流動床乾燥機またはフラッシュ乾燥が好ましい場合がある。
【0103】
乾燥ステップv)により、好ましくは全含水率が低い乾燥表面処理炭酸カルシウムが得られる。一実施形態により、ステップv)によって得た表面処理炭酸カルシウムは、乾燥表面処理炭酸カルシウムの全重量に対して1.0重量%以下の全含水率を有する。
【0104】
別の実施形態により、ステップv)によって得た乾燥表面処理炭酸カルシウムは、乾燥表面処理炭酸カルシウムの全重量に対して0.5重量%以下、および好ましくは0.2重量%以下の全含水率を有する。なお別の実施形態により、ステップv)によって得た乾燥表面処理炭酸カルシウムは、乾燥表面処理炭酸カルシウムの全重量に対して0.01から0.15重量%の間、好ましくは0.02から0.10重量%の間、およびより好ましくは0.03から0.07重量%の間の全含水率を有する。
【0105】
本発明の任意の一実施形態により、ステップiv)の後およびステップv)の前に、表面処理炭酸カルシウムを少なくとも6時間、好ましくは少なくとも12時間、より好ましくは少なくとも24時間および最も好ましくは少なくとも48時間放置する。この長い接触時間によって、表面処理の効率を改善することができ、より均質な表面処理層の形成につながり得る。
【0106】
ステップiv)の後に表面処理炭酸カルシウムの水性懸濁物が得られる場合、表面処理炭酸カルシウムを水性懸濁物から分離する必要がある場合がある。任意の実施形態により、方法ステップiv)において、ステップi)の炭酸カルシウム、ステップii)の少なくとも1つの酸、ステップiii)の少なくとも1つの共役塩基および場合により水を接触させて表面処理炭酸カルシウムの水性懸濁物を形成し、ステップiv)の後およびステップv)の前に、表面処理炭酸カルシウムをステップiv)で得た水性懸濁物から分離する。
【0107】
一実施形態により、ステップi)の炭酸カルシウムは、表面処理炭酸カルシウムの水性懸濁物の全量に対して、10から99重量%の量、好ましくは10から95重量%の量、より好ましくは20から90重量%の量および最も好ましくは30から40重量%の量で提供される。
【0108】
本発明の一実施形態により、ステップii)の少なくとも1つの酸およびステップiii)の少なくとも1つの共役塩基は、水性緩衝溶液の形態で共に提供され、ステップiv)は、
c1)ステップi)の炭酸カルシウム、水性緩衝溶液および場合により水を混合して、表面処理炭酸カルシウムの水性懸濁物を形成するステップ、ならびに
c2)ステップc1)で得た水性懸濁物から表面処理炭酸カルシウムを分離するステップを含む。
【0109】
本発明の目的のために、表現「分離する」は、表面処理炭酸カルシウムが本発明の方法のステップc1)から得た水性懸濁物から除去または単離されることを意味する。ステップc1)から得た表面処理炭酸カルシウムは、当業者に公知のいずれの在来の分離手段によっても水性懸濁物から分離することができる。本発明の一実施形態により、方法ステップc2)において、表面処理炭酸カルシウムは機械的および/または熱的に分離される。機械的分離方法の例は、例えば、ドラムフィルタもしくはフィルタプレスによる濾過、ナノ濾過または遠心分離である。熱分離方法の例は、例えば蒸発器での熱の印加による濃縮方法である。好ましい実施形態により、方法ステップc2)において、表面処理炭酸カルシウムは、好ましくは濾過および/または遠心分離によって機械的に分離される。
【0110】
一実施形態により、ステップiv)の後およびステップv)の前に、表面処理炭酸カルシウムを洗浄溶液、好ましくは水で洗浄する。例えば、表面処理炭酸カルシウムは、洗浄溶液、好ましくは水で1回、2回または3回洗浄できる。好適な洗浄溶液は、水、エタノールまたはこれの混合物から選択することができる。
【0111】
本発明の好ましい実施形態により、pH4.5から7の環境において改善された安定性を有する表面処理炭酸カルシウムの製造方法であって、
I)炭酸カルシウムを提供するステップ、
II)20℃で測定した場合に0から8のpK値を有する少なくとも1つの酸および少なくとも1つの共役塩基を含む水性緩衝溶液を提供するステップ、
III)ステップI)の前記炭酸カルシウムをステップII)の前記水性緩衝溶液および場合により水と接触させて表面処理炭酸カルシウムを形成するステップ
を含む方法が提供される。
【0112】
一実施形態により、水性緩衝溶液は、ホスフェート緩衝液、ホスフェート−シトレート緩衝液、シトレート緩衝液、タートレート緩衝液、ボレート緩衝液から成る群から選択され、好ましくは、水性緩衝溶液は、ホスフェート緩衝液、ホスフェート−シトレート緩衝液またはシトレート緩衝液およびより好ましくはホスフェート−シトレート緩衝液またはシトレート緩衝液である。好ましい実施形態により、少なくとも1つの酸は、ナトリウム二水素ホスフェート、カリウム二水素ホスフェート、クエン酸、ナトリウム二水素シトレート、カリウム二水素シトレート、二ナトリウム水素シトレート、二カリウム水素シトレートおよびこれの混合物から選択され、少なくとも1つの共役塩基は、二ナトリウム水素ホスフェート、二カリウム水素ホスフェート、三カリウムシトレートおよび/または三ナトリウムシトレートである。より好ましくは、少なくとも1つの酸は、ナトリウム二水素ホスフェート、カリウム二水素ホスフェート、ナトリウム二水素シトレート、カリウム二水素シトレートまたはこれの混合物から選択され得、少なくとも1つの共役塩基は、二ナトリウム水素ホスフェート、二カリウム水素ホスフェート、三カリウムシトレートおよび/または三ナトリウムシトレートであり得る。
【0113】
本発明により、この方法は、乾燥ステップv)に関して上述したように、表面処理炭酸カルシウムを乾燥するステップIV)をさらに含むことができる。
【0114】
表面処理炭酸カルシウム
本発明のさらなる態様により、pH4.5から7の環境において安定性が改善された表面処理炭酸カルシウムの懸濁物であって、
i)炭酸カルシウムを提供するステップ、
ii)20℃で測定した場合、0から8のpK値を有する少なくとも1つの酸を提供するステップ、
iii)少なくとも1つの共役塩基を提供するステップ、
iv)ステップi)の前記炭酸カルシウム、ステップii)の前記少なくとも1つの酸およびステップiii)の前記少なくとも1つの共役塩基を接触させて、表面処理炭酸カルシウムを形成するステップ
を含み、ステップii)の前記少なくとも1つの酸および/またはステップiii)の前記少なくとも1つの共役塩基が水溶液の形態で提供される方法によって得られる、懸濁物が提供される。
【0115】
本発明のさらなる態様により、pH4.5から7の環境において安定性が改善された乾燥表面処理炭酸カルシウムであって、
i)炭酸カルシウムを提供するステップ、
ii)20℃で測定した場合、0から8のpK値を有する少なくとも1つの酸を提供するステップ、
iii)少なくとも1つの共役塩基を提供するステップ、
iv)ステップi)の前記炭酸カルシウム、ステップii)の前記少なくとも1つの酸およびステップiii)の前記少なくとも1つの共役塩基を接触させて、表面処理炭酸カルシウムを形成するステップ、ならびに
v)表面処理炭酸カルシウムを乾燥させるステップ
を含み、ステップii)の前記少なくとも1つの酸および/またはステップiii)の前記少なくとも1つの共役塩基が水溶液の形態で提供される方法によって得られる、乾燥表面処理炭酸カルシウムが提供される。
【0116】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の方法を実施することにより、表面処理炭酸カルシウムの調製に使用した炭酸カルシウムと同様のBET表面積を示す表面処理炭酸カルシウムを調製できることを見出した。即ち、本発明者らは、驚くべきことに、本発明の処理が、処理した生成物のBET表面を全く増大させないか、またはわずかな増大をもたらすだけであることを見出した。
【0117】
以下の段落は、別途明記しない限り、pHが4.5から7の環境において安定性が改善された表面処理炭酸カルシウムの懸濁物およびpHが4.5から7の環境において安定性が改善された乾燥表面処理炭酸カルシウムの両方を示すものとする。
【0118】
一実施形態により、表面処理炭酸カルシウムは、1から1,500μm、好ましくは25から1,400μm、より好ましくは100から1,200μm、さらにより好ましくは200から1,000μm、最も好ましくは300から800μmの体積中央粒径d50を有する粒子の形態である。加えてもしくはまたは、表面処理炭酸カルシウムは、40から2,000μm、好ましくは200から1,800μm、より好ましくは300から1,500μm、さらにより好ましくは400から1,200μm、最も好ましくは500から1,000μmの体積トップカット粒径d98を有する粒子の形態であってもよい。
【0119】
一実施形態により、表面処理炭酸カルシウムは、酢酸で処理した場合、pH5およびpH6にて1時間当たりの酸消費量の減少があり、減少は少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、および最も好ましくは少なくとも70%である。
【0120】
別の実施形態により、表面処理炭酸カルシウムは、0m/gを超えて5m/gまでの範囲、好ましくは0m/gを超えて2m/gまでの範囲およびより好ましくは0m/gを超えて1.6m/gまでの範囲のBET比表面積を有する粒子の形態である。
【0121】
本発明の方法により得られる表面処理炭酸カルシウムは、様々な用途に使用することができる。本発明の一態様により、表面処理炭酸カルシウムは研磨材料として使用される。本発明者らは、本発明の方法によって得た表面処理炭酸カルシウムが、非常に穏やかな研磨性を提供し得て、この研磨性によって繊細な表面、とりわけ化粧品用途に好適となることを見出した。好ましい実施形態により、本発明の方法によって得られる乾燥表面処理炭酸カルシウムは、化粧品用途および/または洗浄用途のための研磨材料として、より好ましくは化粧品用途の研磨材料として、および最も好ましくは局所皮膚適用のための研磨材料として使用される。別の好ましい実施形態により、本発明の方法によって得られる表面処理炭酸カルシウムの懸濁物は、洗浄用途の研磨材料として使用される。
【0122】
本発明の発明者らは驚くべきことに、本発明の方法によって得られる表面処理炭酸カルシウムがpH4.5から7の環境で安定性の改善を示すことを見出した。従って、表面処理炭酸カルシウムは、このような環境での用途にとりわけ好適である。しかし、本発明の表面処理炭酸カルシウムは、懸濁物または乾燥形態で、7を超えるpH値、例えば7を超えて10または11の範囲のpH値を必要とする用途で使用することもできる。さらに、本発明の方法によって得られた表面処理炭酸カルシウムは、組成物の感覚特性に影響を与えることなく、研磨洗浄組成物中のマイクロビーズなどの従来の研磨材料を代替可能であることが判明した。さらに、乾燥表面処理炭酸カルシウムは、非毒性材料であり、生物分解性であり、このことによって例えば化粧品用途および環境にやさしい家庭用洗浄剤に最も好適となっている。
【0123】
研磨洗浄組成物
本発明のさらなる態様により、本発明による方法によって得られる表面処理炭酸カルシウムを含む研磨洗浄組成物が提供される。
【0124】
一実施形態により、研磨洗浄組成物は、組成物の全重量に対して、少なくとも1重量%の研磨材料としての表面処理炭酸カルシウムを含む。例えば、研磨洗浄組成物は、組成物の全重量に対して、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%または少なくとも8重量%の研磨材料としての表面処理炭酸カルシウムを含むことができる。本発明の一実施形態により、組成物は、組成物の全重量に対して、10から80重量%、好ましくは15から70重量%、より好ましくは17から60重量%、さらにより好ましくは19から50重量%および最も好ましくは約20重量%の表面処理炭酸カルシウムを含む。
【0125】
表面処理炭酸カルシウムは、1種類の表面処理炭酸カルシウムのみから成ることができ、または2種類以上の表面処理炭酸カルシウムの混合物であることもできる。本発明の研磨洗浄組成物は、唯一の研磨材料として表面処理炭酸カルシウムを含有することができる。または、本発明の研磨洗浄組成物は、表面処理炭酸カルシウムを少なくとも1つの追加の研磨材料と組合せて含有することができる。さらなる研磨材料は、プラスチック、硬質ワックス、無機および有機研磨剤または天然材料から生成できる。
【0126】
一実施形態により、研磨洗浄組成物は、好ましくはシリカ、沈降シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、メタホスフェート、三カルシウムホスフェート、カルシウムピロホスフェート、天然粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ナトリウムバイカーボネート、ベントナイト、カオリン、水酸化アルミニウム、カルシウム水素ホスフェート、ヒドロキシアパタイト、杏仁、梅仁、塩、砂糖、ポリエチレンビーズ、ヘチマ、コメ、タケ、微結晶セルロース、玄武岩、ワックス、コーヒー、ポリ乳酸、ココアエクスフォリエータおよびこれの混合物から成る群から選択される、少なくとも1つの追加の研磨材料をさらに含む。
【0127】
一実施形態により、追加の研磨材料は、表面処理炭酸カルシウムと同じ体積中央粒径d50、即ち1から1500μm、好ましくは25から1,400μm、より好ましくは100から1,200μm、さらにより好ましくは200から1,000μmおよび最も好ましくは300から800μmのd50を有することができる。この研磨材料は、局所適用に好適である。
【0128】
または、追加の研磨材料は、0.1から100μm、好ましくは0.5から50μm、より好ましくは1から20μmおよび最も好ましくは2から10μmの体積中央粒径d50を有する。このような研磨材料は、経口用途に好適である。
【0129】
少なくとも1つの追加の研磨材料は、組成物の全重量に対して1から80重量%、好ましくは5から70重量%、より好ましくは10から60重量%および最も好ましくは20から50重量%の量で研磨洗浄組成物中に存在することができる。
【0130】
本発明の研磨洗浄組成物は、固体の形態または液体の形態であってもよい。一実施形態により、研磨洗浄組成物は、固体、好ましくは粉末、粒状体、錠剤、スティック、チャンク、ブロック、スポンジまたはレンガ状塊の形態である。別の実施形態により、研磨洗浄組成物は、液体、好ましくは溶液、懸濁物、ペースト、エマルジョン、クリーム、オイルまたはゲルの形態である。
【0131】
本発明の一実施形態により、研磨洗浄組成物は液体の水性組成物である。一実施形態により、水性組成物は、組成物の全重量に対して1から90重量%、好ましくは5から80重量%、より好ましくは10から70重量%および最も好ましくは20から60重量%の水を含む。
【0132】
本発明の別の実施形態により、研磨洗浄組成物は液体の非水性組成物である。一実施形態により、水性組成物は、組成物の全重量に対して1から90重量%、好ましくは5から80重量%、より好ましくは10から70重量%および最も好ましくは20から60重量%の溶媒を含む。好適な溶媒は当業者に既知であり、例えば4から14個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、エーテルおよびジエーテル、グリコール、アルコキシル化グリコール、グリコールエーテル、アルコキシル化芳香族アルコール、芳香族アルコール、テルペン、天然油またはこれの混合物である。
【0133】
一実施形態により、研磨洗浄組成物は、20℃で測定した5.0から7.0、好ましくは5.5から6.5および最も好ましくは約6のpHを有する。代替実施形態により、研磨洗浄組成物は、20℃で測定した5を超えるpHを有する。別の代替実施形態により、組成物は、20℃で測定した7.0を超えるpHを有する。例えば、研磨洗浄組成物は、7.5から11または7.5から10のpHを有し得る。pHを調整するための手段は当業者に既知である。
【0134】
研磨洗浄組成物が液体形態である場合、該組成物は20℃で4,000から50,000mPa・sのBrookfield粘度を有する増粘組成物であってもよい。
【0135】
研磨洗浄組成物は、界面活性剤をさらに含んでもよい。本発明の一実施形態により、研磨洗浄組成物は、組成物の全量に対して0.1から30重量%、好ましくは0.5から25重量%および最も好ましくは2から20重量%の界面活性剤を含む。
【0136】
好適な界面活性剤は当業者に既知であり、非イオン性、アニオン性、双性イオン性、両性、カチオン性界面活性剤およびこれの混合物から選択され得る。
【0137】
適切な非イオン性界面活性剤の例は、性質が親水性である単純アルキレンオキシドと、反応性水素原子を有する脂肪族またはアルキル芳香族疎水性化合物との縮合によって生成される化合物である。適切なアニオン性界面活性剤は、例えばアルキル部分に炭素原子6から22個を含有する分枝鎖または直鎖アルキル基を分子構造中に有する有機硫酸モノエステルおよびスルホン酸の水溶性塩である。好適な双性イオン性界面活性剤の例は、炭素原子8から18個の脂肪族基およびアニオン性水溶性基で置換された脂肪族基を有する脂肪族第四級アンモニウム、スルホニウムおよびホスホニウム化合物、例えばベタインおよびベタイン誘導体、例えばアルキルベタイン、特にC12−C16アルキルベタイン、3−(N,N−ジメチル−N−ヘキサデシルアンモニウム)−プロパン−1−スルホネートベタイン、3−(ドデシルメチル−スルホニウム)−プロパン−1−スルホネートベタイン、3−(セチルメチル−ホスホニウム)−プロパン−1−スルホネートベタインおよびN,N−ジメチル−N−ドデシル−グリシンの双性イオン性界面活性剤である。好適な両性界面活性剤は、例えば炭素原子8から20個のアルキル基およびアニオン性水溶性基で置換された脂肪族基を含有する脂肪族第二級および第三級アミンの誘導体、例えばナトリウム3−ドデシルアミノ−プロピオネート、ナトリウム3−ドデシルアミノプロパン−スルホネートおよびナトリウムN−2−ヒドロキシ−ドデシル−N−メチルタウレートである。好適なカチオン性界面活性剤の例は、1または2の、炭素原子8から20個のアルキルまたはアラルキル基のおよび2または3の小型脂肪族(例えばメチル)基を有する第四級アンモニウム塩、例えば塩化セチルトリメチルアンモニウムである。さらなる例は、周知のテキスト、例えば「Household Cleaning,Care and Maintenance Products」,Edts.Herrmann G.Hauthal,G.Wagner,1st Edition,Verlag fur Chem.Industrie H.Ziolkowsky 2004または「Kosmetische Emulsionen und Cremes」,Gerd Kutz,Verlag fur Chem.Industrie H.Ziolkowsky 2001に記載されている。
【0138】
本発明の研磨組成物は、これの洗浄性能を補助する成分をさらに含んでもよい。例えば組成物は、洗剤ビルダーおよびこのようなビルダーの混合物を、組成物の全量に対して25重量%以下の量で含有しいてもよい。好適な無機または有機洗剤ビルダーは当業者に既知であり、例えばナトリウムトリポリホスフェートまたはナトリウムアルミニウムシリケートから選択することができる。
【0139】
一実施形態により、既に挙げた成分に加えて、研磨洗浄組成物は、分散剤、増粘剤、保存剤、湿潤剤、発泡剤、フッ化物源(例えば研磨洗浄組成物が口腔ケア製品である場合)、香味料、香料、着色剤、活性剤および/または緩衝系をさらに含む。活性剤の例は、医薬的、生物学的または化粧品的に活性な薬剤、殺生物剤、または消毒剤である。本発明の研磨洗浄組成物は、本明細書で触れていないが当業者に既知である、さらなる任意成分も含んでもよい。
【0140】
本発明の一実施形態により、研磨洗浄組成物は、化粧品組成物、好ましくは局所適用のための化粧品組成物、より好ましくは顔洗浄剤、ボディウォッシュ、ボディスクラブ、スクラブシャンプー、マッサージクリーム、ボディポリッシャー、エクスフォリエータ、ピーリングクリーム、食品スクラブ、マイクロダーム研磨製品または口腔ケア組成物である。口腔ケア組成物の例は、練り歯磨き、歯磨き粉、歯科用パウダーブラスト用パウダーまたはチュアブルガムである。一実施形態により、研磨洗浄組成物は、5.0から7.0、好ましくは5.5から6.5および最も好ましくは約6のpH値を有する化粧品組成物である。
【0141】
一実施形態により、pH4.5から7の環境において安定性が改善された表面処理炭酸カルシウムを含む化粧品組成物が提供され、化粧品組成物は5.0から7.0のpH値を有し、表面処理炭酸カルシウムは、
i)炭酸カルシウムを提供するステップ、
ii)20℃で測定した場合、0から8のpK値を有する少なくとも1つの酸を提供するステップ、
iii)少なくとも1つの共役塩基を提供するステップ、
iv)ステップi)の前記炭酸カルシウム、ステップii)の前記少なくとも1つの酸およびステップiii)の前記少なくとも1つの共役塩基を接触させて、表面処理炭酸カルシウムを形成するステップ、ならびに
v)表面処理炭酸カルシウムを乾燥させるステップ
を含み、ステップii)の前記少なくとも1つの酸および/またはステップiii)の前記少なくとも1つの共役塩基が水溶液の形態で提供される方法によって得られる。
【0142】
本発明のさらなる態様により、本発明の研磨洗浄組成物は、表面を洗浄するために使用される。
【0143】
本発明のさらなる態様により、表面の洗浄方法であって、表面を本発明による研磨洗浄組成物と接触させる、表面の洗浄方法が提供される。表面は、例えば噴霧、注入または圧搾によって組成物を表面に塗布することによって、本発明の組成物と接触され得る。研磨洗浄組成物は、未希釈形態または希釈形態であることができる組成物中に浸漬されたモップ、ペーパータオル、ブラシまたは布などの適切な手段を使用することによって、表面に適用され得る。
【0144】
本発明の一実施形態により、表面は、好ましくは家庭内の硬質表面、皿表面、皮革表面および自動車表面から成る群から選択される無生物表面である。家庭内の硬質表面の例は、作業用表面、セラミック表面、冷蔵庫、冷凍庫、洗濯機、自動乾燥機、オーブン、電子レンジ、セラミック調理台、浴室付属品または食器洗浄機である。皿表面の例は、皿、カトラリー、まな板または平鉢である。
【0145】
本発明の別の実施形態により、表面は、好ましくはヒトの皮膚、動物の皮膚、ヒトの毛髪、動物の毛および歯、歯肉、舌または頬表面などの口腔の組織から成る群から選択される生物表面である。
【0146】
本発明の一実施形態により、本発明の方法は組成物をすすぐステップをさらに含む。
【0147】
好ましい実施形態により、本発明の研磨洗浄組成物は、生物表面を洗浄するために、より好ましくは、ヒトの皮膚、動物の皮膚、ヒトの毛髪、動物の毛および歯、歯肉、舌または頬の表面などの口腔の組織から成る群から選択される生物表面を洗浄するために使用される。
【0148】
一実施形態により、洗浄される表面は、好ましくは家庭内の硬質表面、皿表面、皮革表面および自動車表面から成る群から選択される無生物表面である。
【0149】
本発明の範囲および関心対象は、本発明のある実施形態を例証するためであり、非限定的である以下の実施例に基づいてより良好に理解される。
【実施例】
【0150】
1.測定方法
以下では、実施例で行った測定方法について説明する。
【0151】
pH値
a)標準的なpH測定
懸濁物または溶液のpHは、メトラートレド(Mettler Toledo)セブンイージー(Seven Easy)pH計およびメトラートレドInLab(R)エキスパートプロ(Expert Pro)pH電極を使用して、25℃にて測定した。機器の3点較正(セグメント法による。)を、20℃にて4、7および10のpH値を有する市販の緩衝溶液(米国のシグマ−アルドリッチ社(Sigma−Aldrich Corp.))を使用して、最初に行った。報告したpH値は、機器によって検出した終点値である(終点は、測定した信号の平均からの差が最後の6秒間にわたって0.1mV未満である場合であった。)。
【0152】
b)pH5および6における安定性に関するpH測定
懸濁物または溶液のpHは、メトラートレド(Mettler Toledo)DL58滴定計およびメトラートレドDG 115−SC電極を使用して、25℃にて測定した。機器の3点較正(セグメント法による。)を、20℃にて4.01、7.00および9.21のpH値を有する市販の緩衝溶液(スイスのハミルトン(Hamilton)製のDuracal Buffers)を使用して、最初に行った。報告したpH値は、機器によって検出した終点値である(終点は、測定した信号の平均からの差が最後の2.5秒間にわたって0.1mV未満である場合であった。)。
【0153】
BET比表面積(SSA)
BET比表面積は、250℃にて30分の期間にわたって加熱することによる試料の調整後に、窒素を使用したISO9277によるBET法により測定する。このような測定の前に、試料をブフナー漏斗内で濾過して、脱イオン水ですすぎ、オーブンで110℃にて少なくとも12時間乾燥させる。
【0154】
粒径分布
全ての微粒子材料の重量中央粒径、例えば天然粉砕または沈降炭酸カルシウムを、重力場における沈降挙動の分析である沈降法によって測定した。測定は、Micromeritics Instrument Corporation製のSedigraph(商標)5100を用いて行った。方法および機器は当業者に既知であり、0.1から5μmの範囲のフィラーおよび顔料の粒度を測定するためによく使用される。測定は、0.1重量%Na水溶液中で行った。高速撹拌機および超音波を使用して試料を分散させる。
【0155】
炭酸カルシウムおよび表面処理炭酸カルシウムの体積中央粒径d50は、マルバーンマスタサイザー(Malvern Mastersizer)2000レーザ回折システム(マルバーンインスツルメンツ(Malvern Instruments Plc)、英国)を使用して、フラウンホーファ光散乱近似を用いて評価した。当業者に既知の方法および器具を一般に使用して、フィラーおよび5μmを超える他の微粒子材料の粒子サイズを測定する。5μm未満の粒径ではセディグラフ(Sedigraph)法を用いることが好ましいが、1μmもの小さい粒径では、マルバーンマスタサイザー(Malvern Mastersizer)を使用して体積に基づく粒径を測定することも可能である。高速撹拌機を用いて超音速の存在下で試料を分散させた。
【0156】
2.材料
本発明のために、以下の緩衝溶液を試験した。
【0157】
各緩衝溶液の調製に脱イオン水を使用したことに留意する必要がある。
【0158】
実験室規模の試験で使用する緩衝剤
A:ホスフェート緩衝液
NaHPO溶液(0.1mol/kg)999.2gおよびNaHPO溶液(0.1mol/kg)20.8gを混合した。この緩衝液の最終pHは5.0であり、総ホスフェートイオン濃度は0.1mol/kgであった。
【0159】
B:ホスフェート−シトレート緩衝液
NaHPO溶液(0.2mol/kg)257.3g、クエン酸溶液269.1g(0.1mol/kg)および脱イオン水492.7gを混合した。この緩衝液の最終pHは5.0であり、総ホスフェートイオン濃度は0.05mol/kgであり、総シトレートイオン濃度は0.026mol/kgであった。
【0160】
C:シトレート緩衝液
第1の溶液は、ナトリウム二水素シトレート溶液(0.1mol/kg)1,000gをビーカーに入れ、磁気スターラーバーで撹拌しながら三ナトリウムシトレート48.2gをビーカーに添加することによって調製した。前記第1の溶液の総シトレート濃度は0.27mol/kgであった。
【0161】
前記第1の溶液365gおよび脱イオン水635gを合せて混合した。次いで、0.1mol/kgクエン酸溶液を、最終pHが5.0に達するまで添加した。最終緩衝溶液は、0.1mol/kgの総シトレートイオン濃度を有していた。
【0162】
以下の化学薬品を使用して、上の溶液を調製した:
ナトリウム二水素ホスフェート一水和物(NaHPO・HO、メルク(Merck)KGaG)、二ナトリウム水素ホスフェート二水和物(NaHPO・2HO、メルク(Merck)KGaA)、無水クエン酸(H、シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich))、無水ナトリウム二水素シトレート(NaH、シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich))および三ナトリウムシトレート二水和物(Na・2HO、シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich))。
【0163】
パイロット規模の試験で使用する緩衝液
以下の緩衝溶液をパイロット規模の試験で試験した。使用した化合物の量ならびに生じたイオン濃度を表1に示す。化合物全てはシグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)から購入した。
【0164】
【表1】
【0165】
炭酸カルシウム
使用した炭酸カルシウムは、200μmのd10(体積測定)、243μmのd20(体積測定)、362μmのd50(体積測定)、640μmのd90(体積測定)および811μmのd98(体積測定)ならびに1.0未満のBET比表面積を有する、トルコのカラビガ産の天然粉砕炭酸カルシウムであった。
【0166】
3.実施例
実施例1A−表面処理炭酸カルシウムの調製−実験室規模
以下のように調製した3種の緩衝溶液のうちいずれか1種によって炭酸カルシウムを処理して、表面処理炭酸カルシウム試料3種を調製した。
【0167】
緩衝溶液1,000gをビーカーに添加した。炭酸カルシウム550gを撹拌しながら添加して、混合物を5分間撹拌した。
【0168】
混合物を20から24時間放置した後、混合物のpHを測定した。測定したpH値を下の表2に示す。次いで、混合物を100μmのふるいで濾過した。ふるい上の得られた残渣を水道水およそ500gとビーカー中で約30秒間洗浄し、混合物を再び濾過した。次いで、ふるい上の得られた残渣をオーブン中90℃で一晩乾燥させた。
【0169】
【表2】
【0170】
実施例1B−表面処理炭酸カルシウムの調製−パイロット規模
試料4
ホスフェート−シトレート緩衝溶液D 30kgを使用した。この溶液を、プロシェアミキサ内の上記の乾燥炭酸カルシウム15kgに添加した。溶液は、炭酸カルシウムに対するシトレートイオンの適用量が2.0%となり、炭酸カルシウムに対するホスフェートイオンの適用量が1.9%となるような濃度であった。次いで、このスラリーを10分間混合し、ドラム内に空けた。混合直後に採取した1つの試料T0を106μmで篩過し、115℃で乾燥させ、第2の試料T1を一晩放置して熟成した後、106μmで篩過して、115℃で乾燥させた。
【0171】
試料5
上記の炭酸カルシウム15kgを140μmで湿式篩過して微細材料を除去し、プロシェアミキサに添加した。最後の湿式篩過した試料は水およそ3kgを含んでいた。ホスフェート−シトレート緩衝溶液E 15kgを使用した。次いでこの溶液を、プロシェアミキサ内の湿式篩過炭酸カルシウムに添加した。溶液は、炭酸カルシウムに対するシトレートイオンの適用量が2.0%となり、炭酸カルシウムに対するホスフェートイオンの適用量が1.9%となるような濃度であった。次いで、このスラリーを10分間混合し、ドラム内に空けた。混合直後に採取した1つの試料T0を106μmで篩過し、115℃で乾燥させ、第2の試料T1を一晩放置して熟成した後、106μmで篩過して、115℃で乾燥させた。
【0172】
試料6
上記の炭酸カルシウム25kgを140μmで湿式篩過して微細材料を除去し、プロシェアミキサに添加した。最後の湿式篩過した試料は水およそ5kgを含んでいた。ホスフェート−シトレート緩衝溶液F 5kgを使用した。次いでこの溶液を、プロシェアミキサ内の湿式篩過炭酸カルシウムに添加した。溶液は、炭酸カルシウムに対するシトレートイオンの適用量が2.0%となり、炭酸カルシウムに対するホスフェートイオンの適用量が1.9%となるような濃度であった。次いで、このスラリーを10分間混合し、ドラム内に空けた。混合直後に採取した1つの試料T0を106μmで篩過し、115℃で乾燥させ、第2の試料T1を一晩放置して熟成した後、106μmで篩過して、115℃で乾燥させた。
【0173】
試料7
上記の炭酸カルシウム25kgを140μmで湿式篩過して微細材料を除去し、プロシェアミキサに添加した。最後の湿式篩過した試料は水およそ11kgを含んでいた。ホスフェート緩衝溶液G 5kgを使用した。次いでこの溶液を、プロシェアミキサ内の湿式篩過炭酸カルシウムに添加した。溶液は、炭酸カルシウムに対するホスフェートイオンの適用量が7.4%となるような濃度とした。次いで、このスラリーを10分間混合し、ドラム内に空けた。混合直後に採取した1つの試料T0を106μmで篩過し、115℃で乾燥させ、第2の試料T1を一晩放置して熟成した後、106μmで篩過して、115℃で乾燥させた。処理後、しかし乾燥前に、洗浄ステップを行った試料および行わない試料の両方を採取した。
【0174】
試料8
上記の炭酸カルシウム25kgを140μmで湿式篩過して微細材料を除去し、プロシェアミキサに添加した。最後の湿式篩過した試料は水およそ5kgを含んでいた。シトレート緩衝溶液H 15kgを使用した。次いでこの溶液を、プロシェアミキサ内の湿式篩過炭酸カルシウムに添加した。溶液は、炭酸カルシウムに対するシトレートイオンの適用量が1.2%となるような濃度とした。次いで、このスラリーを10分間混合し、ドラム内に空けた。混合直後に採取した1つの試料T0を106μmで篩過し、115℃で乾燥させ、第2の試料T1を一晩放置して熟成した後、106μmで篩過して、115℃で乾燥させた。
【0175】
実施例2A−表面処理炭酸カルシウムの安定性−実験室規模
実施例1Aに従って調製した試料を、pH5およびpH6の酸性条件下でのこれらの安定性に関して、酢酸(2.0mol/l)で試料を滴定することによって分析した。未処理の炭酸カルシウムも比較試料として分析した。
【0176】
pH5での安定性
濃酢酸(シグマアルドリッチ(Sigma−Aldrich)、CAS No.64−19−7、puriss.99−100%)から2.0mol/l酢酸溶液を調製した。
【0177】
試料0.9から1.1gをプラスチックカップ内に秤量し、エタノール(AlcosuisseのA15−A無水エタノール)−水混合物(60/40体積/体積)100mlを添加した。
【0178】
試料の滴定は、調製した酢酸溶液を用いて、対照バンド0.5でpH値が5.0に達するまで時間をかけて3通り実施した。滴定は、60分間の期間にわたって実施した。
【0179】
pH6での安定性
濃酢酸(シグマアルドリッチ(Sigma−Aldrich)、CAS No.64−19−7、puriss.99−100%)から0.1mol/l酢酸溶液を調製した。
【0180】
試料1.2gをプラスチックカップ(精度0.1mg)に正確に秤量し、エタノール(AlcosuisseのA15−A無水エタノール)−水混合物(60/40体積/体積)100mlを添加した。
【0181】
試料の滴定は、調製した酢酸溶液を用いて、対照バンド0.1でpH値が6.0に達するまで時間をかけて3通り実施した。滴定は、60分間の期間にわたって実施した。
【0182】
最終結果を以下の表2(pH5での結果)および表3(pH6での結果)に示す。表3および4に示す結果は、15から60分の間に測定した1時間当たりの酸消費量を示す。
【0183】
【表3】
【0184】
【表4】
【0185】
上記の結果からわかるように、本発明の表面処理炭酸カルシウム試料1から3は、pH5およびpH6の両方で、1時間当たりの酸消費量の低減を示したことから、比較の未処理炭酸カルシウムと比べて酸安定性の改善を示した。
【0186】
実施例2B−表面処理炭酸カルシウムの安定性−パイロット規模
実施例1Bに従って調製した試料を、pH5の酸性条件下でのこれらの安定性に関して、酢酸(1.0mol/l)で試料を滴定することによって分析した。未処理の炭酸カルシウムも比較試料として分析した。
【0187】
pH5での安定性
濃酢酸(シグマアルドリッチ(Sigma−Aldrich)、CAS No.64−19−7、puriss.99−100%)から1.0mol/l酢酸溶液を調製した。
【0188】
試料0.9から1.1gをプラスチックカップ内に秤量し、エタノール(AlcosuisseのA15−A無水エタノール)−水混合物(60/40体積/体積)100mlを添加した。
【0189】
試料の滴定は、調製した酢酸溶液を用いて、対照バンド0.5でpH値が5.0に達するまで時間をかけて3通り実施した。滴定は、60分間の期間にわたって実施した。
【0190】
最終結果を以下の表5に示す。表5に示す結果は、15から60分の間に測定した1時間当たりの酸消費量を示す。
【0191】
【表5】
【0192】
実施例3A−実験室規模で調製した研磨材料からのボディスクラブ処方物の調製
様々な各ボディスクラブ処方物を、以下の規準処方に従って調製した。
【0193】
【表6】
【0194】
D部で使用した研磨材料を下の表6に示す。
【0195】
【表7】
【0196】
手順:
1.A部およびB部を個別に溶融し、85℃で保温する(水浴中)。
2.ハイドルフ(Heidolph)RZR 2041ミキサを800から1,000rpmで使用して、激しく撹拌しながら、両部(AおよびB)を混合する。
3.タラックス(Turrax)(商標)(IKA、シュタウフェン、ドイツ)を使用して激しくホモジナイズし、ハイドルフ(Heidolph)RZR 2041ミキサ(300から350rpm)を使用して、撹拌しながら室温まで冷却する。
4.C部を段階的に添加し、ハイドルフ(Heidolph)RZR 2041ミキサ(150から200rpm)を使用して、C部が均一に混和するまで(およそ10から15分間)、ゆっくり撹拌しながら混合する。
5.D部を段階的に添加し、均質な混合物が得られるまで、ハイドルフ(Heidolph)RZR 2041ミキサ(150から200rpm;およそ10から15分間)を用いて、ゆっくり撹拌しながら混合する。最終生成物をガラスフラスコに充填することができる。
【0197】
下の表7は、上の規準処方で使用した生成物の種類ならびにこれらの化合物の供給者の概要である。
【0198】
【表8】
【0199】
供給者:
【0200】
【表9】
【0201】
実施例3B−パイロット規模で調製した研磨材料からのボディスクラブ処方物の調製(試料6(T0およびT1))
様々な各ボディスクラブ処方物を、以下の規準処方に従って調製した。
【0202】
【表10】
【0203】
D部で使用する研磨材料は、下の表8に示す。
【0204】
【表11】
【0205】
手順:
1.A部およびB部を個別に溶融し、85℃で保温する(水浴中)。
2.ハイドルフ(Heidolph)RZR 2041ミキサを800から1,000rpmで使用して、激しく撹拌しながら、両部(AおよびB)を混合する。
3.タラックス(Turrax)(商標)(IKA、シュタウフェン、ドイツ)を使用して激しくホモジナイズし、ハイドルフ(Heidolph)RZR 2041ミキサ(300から350rpm)を使用して、撹拌しながら室温まで冷却する。
4.C部を段階的に添加し、ハイドルフ(Heidolph)RZR 2041ミキサ(150から200rpm)を使用して、C部が均一に混和するまで(およそ10から15分間)、ゆっくり撹拌しながら混合する。
5.D部を段階的に添加し、均質な混合物が得られるまで、ハイドルフ(Heidolph)RZR 2041ミキサ(150から200rpm;およそ10から15分間)を用いて、ゆっくり撹拌しながら混合する。最終生成物をガラスフラスコに充填することができる。
【0206】
以下の表9は、上記のガイド処方物に使用される製品の種類およびこれらの化合物の供給者の概要である。
【0207】
【表12】
【0208】
供給者:
【0209】
【表13】
【0210】
実施例4−調製したボディスクラブ処方物の官能評価
調製したボディスクラブ処方物1から5の官能特性について、小スプーンを使用してボディスクラブおよそ0.075mlを手または指に適用することによって試験を行った。後述する処方物の官能特性は、0から10の評点で採点し、0は「不良」を意味し、10は「非常に良好」を意味する。
【0211】
評価した官能特性:
外観
【0212】
【表14】
【0213】
手の動き
【0214】
【表15】
【0215】
展延性
【0216】
【表16】
【0217】
1分後
【0218】
【表17】
【0219】
2分後
【0220】
【表18】
【0221】
洗浄中
【0222】
【表19】
【0223】
すすぎおよび乾燥の後
【0224】
【表20】
【0225】
結果:
【0226】
【表21】
【0227】
【表22】
【0228】
【表23】
【0229】
上の表10から12にまとめた結果から推測できるように、他の処方物と比較して、本発明の処方物2は、皮膚に対して最良の「易滑性」効果を示した。発泡は全て同様であるが、5℃および40℃でより良好である。保管温度が高いほど粘度が低下するため、40℃で保管した試料の延展性が改善される。処方物2および4では、最良の延展性が変わらない。
【0230】
皮膚のすすぎおよび洗浄後、柔軟性(記述語「柔軟」)の評価により、全ての処方物について実質的に同じ結果が得られた。油脂状外観によって、ピーリング中の試料間の顕著な相違がもたらされる。
【0231】
異なる成分が成分Cとして使用されているため、処方物5は処方物1から4と比較できないが、この処方物も良好な性能を示すことに留意する必要がある。
【0232】
結論として、本発明の全てのボディスクラブ処方物は良好な官能性能を示し、本発明の方法によって得た表面処理炭酸カルシウムがボディスクラブなどの化粧品製品に好適であることが確認された。