特許第6490826号(P6490826)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6490826高重量パーセントでコポリマーを含有するコポリマー溶液のための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490826
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】高重量パーセントでコポリマーを含有するコポリマー溶液のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/11 20060101AFI20190318BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20190318BHJP
   A61L 31/10 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   C08J3/11CFF
   C08L75/04
   A61L31/10
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-545618(P2017-545618)
(86)(22)【出願日】2016年4月13日
(65)【公表番号】特表2018-509500(P2018-509500A)
(43)【公表日】2018年4月5日
(86)【国際出願番号】US2016027294
(87)【国際公開番号】WO2016171975
(87)【国際公開日】20161027
【審査請求日】2017年8月29日
(31)【優先権主張番号】62/151,877
(32)【優先日】2015年4月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505003528
【氏名又は名称】カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】デラニー、ジュニア ジョゼフ ティ.
(72)【発明者】
【氏名】ウルフマン、デイビッド アール.
(72)【発明者】
【氏名】アレム、アデニイ オー.
(72)【発明者】
【氏名】アデヌシ、アデグボラ オー.
【審査官】 芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−526326(JP,A)
【文献】 特表2014−533580(JP,A)
【文献】 特表2013−502495(JP,A)
【文献】 Macromolecules,米国,1994年,Vol.27,No.6,p.1548−1554
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−28
C08L
C08K
A61L 15/00−33/18
C09D
C08G 18/00−87,71/00−04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックコポリマーを含む溶液を作製する方法であって、前記方法は、
ブロックコポリマーを溶媒混合物に溶解して溶液を形成するステップを含み、溶媒混合物は少なくとも2つの溶媒成分を含み、溶媒混合物中のブロックコポリマーの溶解度は、約64℃で少なくとも約7重量%であり、溶媒混合物はブロックコポリマーと非反応性であり、少なくとも2つの溶媒成分のいずれか1つとブロックコポリマーとからなる単一溶媒溶液中のブロックコポリマーの最大溶解度は、約64℃で約1重量%以下であり、ブロックコポリマーは、ポリイソブチレンセグメントおよびポリウレタンセグメントを含み、
前記ブロックコポリマーと前記溶媒混合物との間のハンセン溶解度パラメータ距離が約2MPa0.5未満である、方法。
【請求項2】
前記溶媒混合物が、アセトフェノン、ベンズアルデヒド、シクロヘキサノンおよび桂皮酸エチルからなる群より選択される第1の溶媒成分と、芳香族炭化水素、シクロヘキサン、エチルベンゼン、トルエンおよびキシレンからなる群より選択される第2の溶媒成分と、の2つの溶媒成分からなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の溶媒成分がシクロヘキサノンであり、前記第2の溶媒成分がトルエンである、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒混合物が、トルエン第1の溶媒成分と、フェニルアセトニトリル、カプロラクトン(イプシロン)、ベンズアルデヒドおよびブチルベンゾエートからなる群より選択される第2の溶媒成分と、ベンジルアセテート、テトラヒドロフラン、2,6−ジメチルピリジン、ベンジルベンゾエートおよびサフロールからなる群より選択される第3の溶媒成分と、の3つの溶媒成分からなる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒混合物が少なくとも3つの溶媒成分を含み、前記溶媒成分の少なくとも1つが少なくとも約5.1MPa0.5のハンセン極性溶解度パラメータと、少なくとも約3.8MPa0.5のハンセン水素結合溶解度パラメータと、を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒混合物中のブロックコポリマーの溶解度が、約64℃で少なくとも約20重量%である、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ブロックコポリマー層を含む移植可能な医療機器を作製する方法において、前記方法は、
請求項1〜のいずれか一項に記載のブロックコポリマー溶液を配合するステップと、
前記ブロックコポリマー溶液を前記移植可能な医療機器に堆積させるステップと、
前記移植可能な医療機器を乾燥させ、前記溶媒混合物を蒸発させてブロックコポリマー層を残すステップと、
を含む方法。
【請求項8】
前記堆積させるステップが、前記移植可能な医療機器上への前記ブロックコポリマー溶液のエレクトロスピニングおよびエレクトロスプレーの少なくとも1つを含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
第1の溶媒と、
第2の溶媒と、
前記第1の溶媒および前記第2の溶媒を含む溶液中に約64℃で約7重量%以上の量のポリイソブチレンセグメントおよびポリウレタンセグメントを含むブロックコポリマーと、
を含む組成物であって、
前記第1の溶媒および前記ブロックコポリマーからなる溶液中のブロックコポリマーの溶解度は、約64℃で約1重量%以下であり、前記第2の溶媒および前記ブロックコポリマーからなる溶液中のブロックコポリマーの溶解度は約64℃で約1重量%以下である、組成物。
【請求項10】
前記第1の溶媒が、アセトフェノン、ベンズアルデヒド、シクロヘキサノンおよび桂皮酸エチルからなる群より選択され、かつ前記第2の溶媒が、芳香族炭化水素、シクロヘキサン、エチルベンゼン、トルエンおよびキシレンからなる群より選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1の溶媒がシクロヘキサノンであり、前記第2の溶媒がトルエンである、請求項10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項11のいずれか一項に記載の組成物は第3の溶媒をさらに含み、前記溶媒の少なくとも1つが少なくとも約5.6MPa0.5の極性ハンセン溶解度パラメータを有し、前記溶媒の少なくとも1つが少なくとも約4.6MPa0.5の水素結合ハンセン溶解度パラメータを有し、前記第3の溶媒および前記ブロックコポリマーからなる溶液中のブロックコポリマーの溶解度が約64℃で約1重量%以下である、組成物。
【請求項13】
請求項に記載の組成物は第3の溶媒をさらに含み、前記第1の溶媒は、トルエンであり、前記第2の溶媒は、フェニルアセトニトリル、カプロラクトン(イプシロン)、ベンズアルデヒド、およびブチルベンゾエートからなる群より選択され、前記第3の溶媒は、ベンジルアセテート、テトラヒドロフラン、2,6−ジメチルピリジン、ベンジルベンゾエートおよびサフロールからなる群より選択され、前記第3の溶媒および前記ブロックコポリマーからなる溶液中のブロックコポリマーの最大溶解度は約64℃で約1重量%以下である、組成物。
【請求項14】
前記第1の溶媒と前記第2の溶媒を合せたものにおける前記ブロックコポリマーの溶解度が約64℃で少なくとも約20重量%である、請求項11のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒ベースのポリマー処理に適したポリマーの溶液を製造するための溶液および方法に関する。より詳細には、本発明は、ブロックコポリマーを含有する溶液およびブロックコポリマーを含む溶液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー材料は、移植可能な医療機器の分野において広く使用されている。例えば、シリコーンゴム、ポリウレタン、およびフルオロポリマーなどのポリマー材料は、医療用リード線、ステントおよび他のデバイスのためのコーティング材料および/または絶縁材料として使用されている。
【0003】
移植可能な医療機器にポリマー材料を組み込むことは、特定の用途に応じて様々な方法によって行うことができる。いくつかの用途において、例えば移植可能なリード体のための用途において、ポリマー材料は、ブロックコポリマーを流動させるのに十分な温度で押し出すことができても、同ポリマー材料を破壊させるのに十分なほど高い温度であってはいけない。すなわち、押出しおよび冷却後にリードを形成する材料は、元のポリマー材料とほぼ同じ構造を有する。
【0004】
他の用途では、移植可能な医療機器にポリマー材料を組み込むために溶媒ベースの処理を用いることが望ましい場合がある。溶媒ベースの処理には、エレクトロスプレー、エレクトロスピニング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、およびフォーススピニングが含まれる。ポリマー材料の全ての溶媒ベースの処理にとって不可欠なのは、ポリマー材料の基本構造を保持しながらそのポリマー材料を溶液にする能力である。場合によっては、いくつかのポリマー材料を特徴付ける強度および耐薬品性の非常に優れた特性によって、ポリマー材料の構造がほとんど損なわれない状態にあるポリマー材料溶液を形成することも困難になる。場合によっては、ポリマー材料の溶液は、数重量%(例えば、約1〜2重量%)のみのポリマー材料に制限されるかもしれない。そのようにポリマー材料を低い重量パーセントで溶解させた溶液は、溶媒ベースの処理においては経済的に有用ではない場合もあり、他の溶媒ベースの処理では全く機能しないことがあるかもしれない。さらに他の場合には、ポリマー材料を適切な濃度で溶液にすることが可能ではあるが、溶媒が非常に危険であり、その使用が望ましくない場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施例1において、ブロックコポリマーを含む溶液を作製する方法は、ブロックコポリマーを溶媒混合物に溶解して溶液を形成するステップを含み、溶媒混合物は少なくとも2つの溶媒成分を含む。溶媒混合物中のブロックコポリマーの溶解度は、約64℃で少なくとも約7重量%である。溶媒混合物はブロックコポリマーと非反応性である。少なくとも2つの溶媒成分の任意の1つとブロックコポリマーとからなる単一溶媒溶液中のブロックコポリマーの最大溶解度は、約64℃で約1重量%以下である。ブロックコポリマーは、ポリイソブチレンセグメントおよびポリウレタンセグメントを含む。
【0006】
実施例2において、ブロックコポリマーと溶媒混合物との間のハンセン溶解度パラメータ距離が約2MPa0.5未満である実施例1の方法。
実施例3において、溶媒混合物が2つの溶媒成分、即ち、アセトフェノン、ベンズアルデヒド、シクロヘキサノンおよび桂皮酸エチルからなる群より選択される第1の溶媒成分と、芳香族炭化水素、シクロヘキサン、エチルベンゼン、Solvesso(商標)100、Solvesso(商標)150、トルエンおよびキシレンからなる群より選択される第2の溶媒成分と、からなる実施例1〜2のいずれかの方法。
【0007】
実施例4において、第1の溶媒成分がシクロヘキサノンであり、第2の溶媒成分がトルエンである、実施例1〜3のいずれかの方法。
実施例5において、溶媒混合物が、3つの溶媒成分、即ち、トルエンおよびSolvesso(商標)150からなる群より選択される第1の溶媒成分と、フェニルアセトニトリル、カプロラクトン(イプシロン)、ベンズアルデヒドおよびブチルベンゾエートからなる群より選択される第2の溶媒成分と、ベンジルアセテート、テトラヒドロフラン、2,6−ジメチルピリジン、ベンジルベンゾエートおよびサフロールからなる群より選択される第3の溶媒成分と、からなる実施例1〜2のいずれかの方法。
【0008】
実施例6において、溶媒混合物が少なくとも3つの溶媒成分を含み、同溶媒成分の少なくとも1つが少なくとも約5.1MPa0.5のハンセン極性溶解度パラメータと、少なくとも約3.8MPa0.5のハンセン水素結合パラメータとを有する、実施例1の方法。
【0009】
実施例7において、溶媒混合物中のブロックコポリマーの溶解度が約64℃で少なくとも約20重量%である実施例1〜6のいずれかの方法。
実施例8において、ブロックコポリマー層を含む移植可能な医療機器を作製する方法は、請求項1〜7のいずれかに記載のブロックコポリマー溶液を配合するステップと、ブロックコポリマー溶液を移植可能な医療機器に堆積させるステップと、移植可能な医療機器を乾燥させ、溶媒混合物を蒸発させてブロックコポリマー層を残すステップとを含む。
【0010】
実施例9において、堆積するステップが、移植可能な医療機器上へのブロックコポリマー溶液のエレクトロスピニングおよびエレクトロスプレーの少なくとも1つを含む、実施例8の方法。
【0011】
実施例10において、第1の溶媒、第2の溶媒およびブロックコポリマーを含む組成物。ブロックコポリマーは、第1の溶媒および第2の溶媒を含む溶液中に約64℃で約7重量%以上の量でポリイソブチレンセグメントおよびポリウレタンセグメントを含む。第1の溶媒およびブロックコポリマーからなる溶液中のブロックコポリマーの最大溶解度は、約64℃で約1重量%以下である。第2の溶媒およびブロックコポリマーからなる溶液中のブロックコポリマーの最大溶解度は約64℃で約1重量%以下である。
【0012】
実施例11において、第1の溶媒が、アセトフェノン、ベンズアルデヒド、シクロヘキサノンおよび桂皮酸エチルからなる群より選択され、第2の溶媒が、芳香族炭化水素、シクロヘキサン、エチルベンゼン、Solvesso(商標)100、Solvesso(商標)150、トルエンおよびキシレンからなる群より選択される、実施例10の組成物。
【0013】
実施例12において、第1の溶媒がシクロヘキサノンであり、第2の溶媒がトルエンである、実施例10〜11のいずれかの組成物。
実施例13では、実施例10〜12のいずれかの組成物は第3の溶媒をさらに含み、溶媒の少なくとも1つが少なくとも約5.6MPa0.5の極性ハンセン溶解度パラメータを有し、溶媒の少なくとも1つが少なくとも約4.6MPa0.5の水素結合ハンセン溶解度パラメータを有し、第3の溶媒とブロックコポリマーからなる溶液中のブロックコポリマーの最大溶解度が約64℃で約1重量%以下である、組成物。
【0014】
実施例14において、実施例10の組成物は第3の溶媒をさらに含み、第1の溶媒は、トルエンおよびSolvesso(商標)150からなる群より選択され、第2の溶媒は、フェニルアセトニトリル、カプロラクトン(イプシロン)、ベンズアルデヒド、およびブチルベンゾエートからなる群より選択され、第3の溶媒は、ベンジルアセテート、テトラヒドロフラン、2,6−ジメチルピリジン、ベンジルベンゾエートおよびサフロールからなる群より選択され、第3の溶媒およびブロックコポリマーからなる溶液中のブロックコポリマーの最大溶解度は約64℃で約1重量%以下である、組成物。
【0015】
実施例15において、第1の溶媒と第2の溶媒を合せたものにおけるブロックコポリマーの溶解度が約64℃で少なくとも約20重量%である、実施例10〜12のいずれかの組成物。
【0016】
実施例16において、ブロックコポリマーを含む溶液を作製する方法は、ブロックコポリマーを溶媒混合物に溶解して溶液を形成するステップを含み、溶媒混合物は少なくとも2つの溶媒成分を含む。溶媒混合物中のブロックコポリマーの溶解度は、約64℃で少なくとも約7重量%である。溶媒混合物はブロックコポリマーと非反応性である。少なくとも2つの溶媒成分の任意の1つとブロックコポリマーとからなる単一溶媒溶液中のブロックコポリマーの最大溶解度は、約64℃で約1重量%以下である。ブロックコポリマーは、ポリイソブチレンセグメントおよびポリウレタンセグメントを含む。
【0017】
実施例17において、ブロックコポリマーと溶媒混合物との間のハンセン溶解度パラメータ距離が約2MPa0.5未満である実施例16の方法。
実施例18において、溶媒混合物が2つの溶媒成分、即ち、アセトフェノン、ベンズアルデヒド、シクロヘキサノンおよび桂皮酸エチルからなる群より選択される第1の溶媒成分と、芳香族炭化水素、シクロヘキサン、エチルベンゼン、Solvesso(商標)100、Solvesso(商標)150、トルエンおよびキシレンからなる群より選択される第2の溶媒成分と、からなる実施例16〜17のいずれかの方法。
【0018】
実施例19において、第1の溶媒成分がシクロヘキサノンであり、第2の溶媒成分がトルエンである、請求項16〜18のいずれかに記載の方法。
実施例20において、溶媒混合物が、3つの溶媒成分、即ち、トルエンおよびSolvesso(商標)150からなる群より選択される第1の溶媒成分と、フェニルアセトニトリル、カプロラクトン(イプシロン)、ベンズアルデヒドおよびブチルベンゾエートからなる群より選択される第2の溶媒成分と、ベンジルアセテート、テトラヒドロフラン、2,6−ジメチルピリジン、ベンジルベンゾエートおよびサフロールからなる群より選択される第3の溶媒成分と、からなる請求項16〜17のいずれかに記載の方法。
【0019】
実施例21において、溶媒混合物が少なくとも3つの溶媒成分を含み、溶媒成分の少なくとも1つが少なくとも約5.6MPa0.5の極性ハンセン溶解度パラメータを有し、溶媒成分の少なくとも1つは、少なくとも約4.6MPa0.5の水素結合ハンセン溶解度パラメータを有する、請求項16〜17のいずれかに記載の方法。
【0020】
実施例22において、溶媒混合物中のブロックコポリマーの溶解度が、約64℃で少なくとも約20重量%である、請求項16〜21のいずれかに記載の方法。
実施例23において、第1の溶媒、第2の溶媒およびブロックコポリマーを含む組成物。ブロックコポリマーは、第1の溶媒および第2の溶媒を含む溶液中に約64℃で約7重量%以上の量でポリイソブチレンセグメントおよびポリウレタンセグメントを含む。第1の溶媒およびブロックコポリマーからなる溶液中のブロックコポリマーの最大溶解度は、約64℃で約1重量%以下である。第2の溶媒およびブロックコポリマーからなる溶液中のブロックコポリマーの最大溶解度は約64℃で約1重量%以下である。
【0021】
実施例24において、第1の溶媒が、アセトフェノン、ベンズアルデヒド、シクロヘキサノンおよび桂皮酸エチルからなる群より選択され、第2の溶媒が、芳香族炭化水素、シクロヘキサン、エチルベンゼン、Solvesso(商標)100、Solvesso(商標)150、トルエンおよびキシレンからなる群より選択される、実施例23の組成物。
【0022】
実施例25において、第1の溶媒がシクロヘキサノンであり、第2の溶媒がトルエンである、実施例23〜24のいずれかの組成物。
実施例26において、実施例23の組成物は第3の溶媒をさらに含み、溶媒の少なくとも1つが少なくとも約5.6MPa0.5の極性ハンセン溶解度パラメータを有し、溶媒の少なくとも1つが少なくとも約4.6MPa0.5の水素結合ハンセン溶解度パラメータを有し、第3の溶媒とブロックコポリマーからなる溶液中のブロックコポリマーの最大溶解度が約64℃で約1重量%以下である、組成物。
【0023】
実施例27において、第1の溶媒がトルエンおよびSolvesso(商標)150からなる群より選択され、第2の溶媒が、フェニルアセトニトリル、カプロラクトン(イプシロン)、ベンズアルデヒドおよびブチルベンゾエートからなる群より選択され、第3の溶媒が、ベンジルアセテート、テトラヒドロフラン、2,6−ジメチルピリジン、ベンジルベンゾエートおよびサフロールからなる群より選択され、第3の溶媒およびブロックコポリマーからなる溶液中のブロックコポリマーの最大溶解度は約64℃で約1重量%である、実施例23の組成物。
【0024】
実施例28において、第1の溶媒と第2の溶媒を合せたものにおけるブロックコポリマーの溶解度が、約64℃で少なくとも約20重量%である、実施例23〜25のいずれかの組成物。
【0025】
実施例29において、ブロックコポリマー層を含む移植可能な医療機器を作製する方法は、ブロックコポリマーを含むブロックコポリマー溶液を配合するステップと、ブロックコポリマー溶液を移植可能な医療機器に堆積させるステップと、移植可能な医療機器を乾燥させ、溶媒混合物を蒸発させてブロックコポリマー層を残すステップとを含む。ブロックコポリマー溶液は、約64℃で少なくとも約7重量%の濃度である。ブロックコポリマー溶液を配合するステップは、ブロックコポリマーを溶媒混合物に溶解して溶液を形成することを含み、溶媒混合物は少なくとも2つの溶媒成分を含む。溶媒混合物中のブロックコポリマーの溶解度は、約64℃で少なくとも約7重量%である。溶媒混合物はブロックコポリマーと非反応性である。少なくとも2つの溶媒成分の任意の1つとブロックコポリマーとからなる単一溶媒溶液中のブロックコポリマーの最大溶解度は、約64℃で約1重量%以下である。ブロックコポリマーは、ポリイソブチレンセグメントおよびポリウレタンセグメントを含む。
【0026】
実施例30において、溶媒混合物が2つの溶媒成分、即ち、アセトフェノン、ベンズアルデヒド、シクロヘキサノンおよび桂皮酸エチルからなる群より選択される第1の溶媒成分と、芳香族炭化水素、シクロヘキサン、エチルベンゼン、Solvesso(商標)100、Solvesso(商標)150、トルエンおよびキシレンからなる群より選択される第2の溶媒成分と、からなる実施例29の方法。
【0027】
実施例31において、第1の溶媒成分がシクロヘキサノンであり、第2の溶媒成分がトルエンである、実施例29〜30のいずれかの方法。
実施例32において、溶媒混合物が、3つの溶媒成分、即ち、トルエンおよびSolvesso(商標)150からなる群より選択される第1の溶媒成分と、フェニルアセトニトリル、カプロラクトン(イプシロン)、ベンズアルデヒド、およびブチルベンゾエートからなる群より選択される第2の溶媒成分と、ベンジルアセテート、テトラヒドロフラン、2,6−ジメチルピリジン、ベンジルベンゾエートおよびサフロールからなる群より選択される第3の溶媒成分と、からなる、実施例29の方法。
【0028】
実施例33において、堆積するステップは、移植可能な医療機器上へのブロックコポリマー溶液の、溶媒流延(solvent casting)、スプレーコーティング、または浸漬コーティングのうちの少なくとも1つを含む、請求項29〜32のいずれかに記載の方法。
【0029】
実施例34において、溶媒混合物が少なくとも3つの溶媒成分を含み、溶媒成分の少なくとも1つが少なくとも約5.6MPa0.5の極性ハンセン溶解度パラメータを有し、溶媒成分の少なくとも1つが少なくとも約4.6MPa0.5の水素結合ハンセン溶解度パラメータを有する、請求項29の方法。
【0030】
実施例35において、堆積するステップは、移植可能な医療機器上へのブロックコポリマー溶液のエレクトロスピニングおよびエレクトロスプレーの少なくとも1つを含む、請求項29〜32および34のいずれかの方法。
【0031】
複数の実施形態が開示されているが、本発明のさらに他の実施形態は、本発明の例示的実施形態を示し、かつ記載する以下の詳細な説明から当業者には明らかになるであろう。したがって、図面および詳細な説明は、本質的に例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
ブロックコポリマーは、重合モノマーの交互のセクションで作製されたポリマー材料である。ブロックコポリマーは、例えば、とりわけ、直鎖状、環状および分岐状の立体配置(configuration)から選択され得る多くの立体配置を取ることができる。分岐状の立体配置としては、星形状の立体配置(例えば、3つ以上の鎖が単一の分岐点から始まる立体配置)、くし形の立体配置(例えば、主鎖および複数の側鎖を有する立体配置、「グラフト」配置とも称される立体配置)、樹枝状の立体配置(例えば、樹枝状および超分岐ポリマー)などが挙げられる。
【0033】
いくつかのブロックコポリマーは、移植可能な医療機器での使用に非常に望ましい特性を有する。例えば、いくつかのブロックコポリマーは、強く、耐久性があり、耐酸化性であり、化学的に耐性であり、極めて生体安定性であることが知られている。このようなブロックコポリマーは、典型的には溶解が困難である。移植可能な医療機器に適したブロックコポリマーの例は、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)、ポリ(ビニリデンフルオライド−コ−ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(イソブチレン−コ−スチレン)、ポリ(イソブチレン−ウレタン)およびポリ(スチレン−b−イソブチレン−b−スチレン)を含み得る。ブロックコポリマーはまた、それらの特性が、構成している重合モノマーの比率を変えることによって所望に応じて変化させることができるという点で調整可能である。
【0034】
いくつかの実施形態では、ブロックコポリマーを含む溶液は、ブロックコポリマーを、少なくとも2つの溶媒成分または少なくとも3つの溶媒成分を含む溶媒混合物に溶解することによって作製することができる。個々の溶媒成分は、均一な有機溶媒、例えば、シクロヘキサノンまたはトルエンであってもよい。溶媒混合物の溶媒成分は合せられて、ブロックコポリマーを溶解する。すなわち、ブロックコポリマーは、それがもはや固体形態ではなく、沈降しないように溶媒混合物に溶解される。ブロックコポリマーはまた、その基本構造を保持するように溶解される。すなわち、溶解したポリマーは、ブロックコポリマーの重合モノマーの交互のセクションから構成されており、溶解したポリマーの約0.1重量%未満が、モノマーまたはホモポリマーの形態である。
【0035】
いくつかの実施形態では、溶媒混合物中のブロックコポリマーの溶解度は、少なくとも約7重量%、約8重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、または約30重量%程度であり得るか、または約40重量%、約50重量%、約60重量%、または約70重量%以下であり得るか、または上記の値の任意の対の間に定義される任意の範囲内に存在していてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、溶媒混合物中のブロックコポリマーの溶解度は、約7重量%〜約70重量%、約8重量%〜約60重量%、約10重量%〜約50重量%、または約20重量%〜約40重量%の量であってもよい。本明細書に記載される全ての溶解度値は、約64℃の温度でのものである。
【0036】
驚くべきことに、いくつかの実施形態では、溶媒混合物中のブロックコポリマーの溶解度は、本明細書に記載されるように高くてもよく(例えば、70重量%まで)、一方、溶媒混合物の溶媒のそれぞれの単一溶媒溶液中でのブロックコポリマーの最大溶解度(例えば、単一の溶媒を含む溶媒混合物)は比較的低くてもよい。例えば、単一溶媒溶液中のブロックコポリマーの最大溶解度は、約1重量%以下であってもよい。言い換えれば、複数の単一溶媒溶液中のブロックコポリマーの最大溶解度は、約1重量%以下であってもよく、ここで、複数の単一溶媒溶液のそれぞれは、溶媒混合物の溶媒成分のうちの任意の1つとブロックコポリマーとから構成されている。いくつかの実施形態では、溶媒混合物の溶媒成分のうちの任意の1つとブロックコポリマーとから構成されている単一溶媒溶液中のブロックコポリマーの最大溶解度は、約0.5重量%以下、約0.2重量%以下、約0.1重量%以下、または約0.05重量%以下であってもよい。いくつかの実施形態では、ブロックコポリマーは、溶媒混合物の溶媒成分の任意の1つから構成される単一の溶媒溶液に実質的に不溶性であってもよい。本明細書に記載される全ての最大溶解度の値は、約64℃の温度でのものである。
【0037】
ハンセン溶解度パラメータ(Hansen Solubility Parameters)(HSP)は、ある材料が別の材料に溶解するかどうかを予測するために使用することができる。HSPは物質の分子間に作用する力を表す3つのパラメータ、すなわち分散力、極性分子間力、および水素結合力からなる(チャールズ エム.ハンセン(Charles M. Hansen)、ハンセン溶解度パラメータ:ユーザハンドブック(Hansen Solubility Parameters:A User’s Handbook)、CRC Press社、第2版、2007年、を参照されたい)。3つのHSPは3次元のハンセン空間を定義する。材料の3つのHSPは、ハンセン空間の座標である。したがって、溶媒またはポリマーなどの材料のHSPは、ハンセン空間内の材料の相対的な位置を決定する。溶媒混合物のHSPは、溶媒混合物を構成する個々の成分溶媒のHSPの体積加重された組合せ(volume−weighted combination)である。したがって、溶媒混合物はまた、ハンセン空間において相対位置を有する。ハンセン溶解度パラメータ距離(Ra)は、溶媒混合物、溶媒混合物の溶媒成分、またはポリマーなど、任意の2つの材料の間のハンセン空間の距離である。Raは、以下の式1から決定することができる。
【0038】
【数1】
ここで、δd1、δp1、およびδh1は、それぞれ、溶媒混合物、溶媒混合物の溶媒成分、またはポリマーの2つのうちの一方の分散、極性および水素結合HSPであり、δd2、δp2、およびδh2は、溶媒混合物、溶媒混合物の溶媒成分、またはポリマーの2つのうちの他方の分散、極性および水素結合HSPである。特定の溶媒成分またはポリマーについてのHSPの値は、経験的に決定されてもよいし、公開された表から見つけてもよい。
【0039】
相互作用半径(interaction radius)(R)は、溶解すべき材料について決定されてもよい。Rは、任意の溶媒成分(または溶媒混合物)がその材料と共に溶液を形成する可能性がある範囲内のハンセン空間における距離である。RaとRの比は、相対的エネルギー差(Relative Energy Difference)(RED)として知られている。したがって、1より大きいRED値を有する材料および溶媒成分(または溶媒混合物)について、材料および溶媒成分(または溶媒混合物)は、溶媒を形成するにはそれらのHSPが十分に類似していないかもしれない。逆に、RED値が1未満の材料および溶媒(または溶媒混合物)の場合、材料および溶媒成分(または溶媒混合物)は、それらがHSPにおいて十分に類似しており、材料は溶媒成分(または溶媒混合物)と溶液を形成する可能性があり得る。REDは、材料が溶媒成分(または溶媒混合物)を含む溶液を形成する可能性があるかどうかを予測することができるが、必ずしも正確ではない。REDは、溶媒成分(または溶媒混合物)と溶液を形成するであろう材料の最大重量パーセントを予測することはない。
【0040】
いくつかの実施形態では、ポリマーおよび溶媒混合物のREDは約1未満であり、ポリマーおよび溶媒混合物の溶媒成分の各々についてのREDの各々は約1より大きくてもよい。そのような実施形態では、REDは、溶媒成分の各々が個々にはポリマーに適した溶媒ではないが、溶媒の混合物はポリマーに適した溶媒であることを示唆する。
【0041】
いくつかの実施形態では、溶媒混合物は少なくとも3つの溶媒成分を含み、溶媒成分の少なくとも1つは少なくとも約5.6MPa0.5の極性HSPを有していてもよく、溶媒成分の少なくとも1つは少なくとも約4.6MPa0.5の水素結合HSPを有していてもよい。少なくとも約5.6MPa0.5の極性HSPおよび少なくとも約4.6MPa0.5の水素結合HSPを有する溶媒成分を含むことにより、ブロックコポリマーを含む溶液を、例えば、エレクトロスピニングまたはエレクトロスプレーといったいくつかの溶媒ベースの(solvent−based)処理において使用することによる効率を改善することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、ブロックコポリマーを含む溶液は、ポリイソブチレンセグメントおよびポリウレタンセグメントを含むポリ(イソブチレン−ウレタン)ブロックコポリマー(PIB−PUR)を溶媒混合物に溶解することによって作製され得る。PIB−PURは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、「ポリイソブチレンウレタン、尿素およびウレタン/尿素コポリマーおよびそれを含む医療機器」という名称の米国特許第8324290号明細書に記載されているように合成することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、溶媒混合物は、溶媒混合物中のPIB−PURの溶解度が、少なくとも約7重量%、約8重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、または約30重量%程度であり得るか、または約40重量%、約50重量%、約60重量%、または約70重量%以下であり得るか、または上記の値の任意の対の間に定義される任意の範囲内に存在してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、溶媒混合物中のブロックコポリマーの溶解度は、約7重量%〜約70重量%、約8重量%〜約60重量%、約10重量%〜約50重量%、または約20重量%〜約40重量%の量であってもよい。溶解度は約64℃で測定される。
【0044】
いくつかの実施形態では、溶媒混合物中のPIB−PURの溶解度は、本明細書に記載されるように高くてもよく(例えば、約70重量%)、一方、溶媒混合物の溶媒の各々の単一溶媒溶液(即ち、単一溶媒を含む溶媒混合物)中のPIB−PURの最大溶解度は、比較的低くてもよい。例えば、単一溶媒溶液中のPIB−PURの最大溶解度は、約1重量%以下であってもよい。言い換えると、複数の単一溶媒溶液中のPIB−PURの最大溶解度は、約1重量%以下であってもよく、ここで、複数の単一溶媒溶液の各々は、溶媒混合物の溶媒成分の任意の1つとPIB−PURとからなる。いくつかの実施形態では、溶媒混合物の溶媒成分の任意の1つとPIB−PURとからなる単一溶媒溶液中のPIB−PURの最大溶解度は、約0.5重量%以下、約0.2重量%以下、約0.1重量%以下、または約0.05重量%以下であってもよい。いくつかの実施形態において、PIB−PURは、溶媒混合物の溶媒成分の任意の1つからなる単一の溶媒溶液に実質的に不溶性であってもよい。最大溶解度は、約64℃の温度において決定される。溶媒混合物中のPIB−PURの64℃よりもかなり高い温度への暴露は、ブロックコポリマーの機能的特性または美容的特性を変化させる可能性がある。
【0045】
いくつかの実施形態では、溶媒混合物とPIB−PURとの間のハンセン溶解度パラメータ距離(Ra)は、約2.0MPa0.5未満、約1.8MPa0.5未満、約1.6MPa0.5未満、または約1.4MPa0.5未満であってもよい。いくつかの実施形態では、溶媒混合物中の溶媒成分の任意のものとPIB−PURとの間のハンセン溶解度パラメータ距離(Ra)は、約2.5MPa0.5より大きく、約3.0MPa0.5より大きく、約4.0MPa0.5より大きく、または約8.0MPa0.5より大きくてもよい。溶媒混合物の溶媒成分の全てのそれぞれとPIB−PURとの間のハンセン溶解度パラメータ距離(Ra)は、約2.5MPa0.5より大きく、約3.0MPa0.5より大きく、約4.0MPa0.5より大きく、または約8.0MPa0.5より大きくてもよい。
【0046】
本開示の実施形態では、PIB−PURのHSPは経験的に決定されている。PIB−PURの場合、分散HSPは約18.5MPa0.5であり、極性HSPは約5.4MPa0.5であり、水素結合HSPは約2.9MPa0.5である。種々の溶媒に関するHSPは、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、チャールズ エム.ハンセン(Charles M. Hansen)、ハンセン溶解度パラメータ:ユーザハンドブック(Hansen Solubility Parameters:A User’s Handbook)、CRC Press社、第2版、2007年、に見出すことができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、PIB−PURを含む溶液は、PIB−PURを、2つの溶媒成分、即ち、第1の溶媒成分および第2の溶媒成分、からなる溶媒混合物に溶解することによって作製することができる。いくつかの実施形態では、第1の溶媒成分は、アセトフェノン、ベンズアルデヒド、シクロヘキサノンおよび桂皮酸エチルからなる群より選択されてもよく、そして、第2の溶媒成分は、芳香族炭化水素、シクロヘキサン、エチルベンゼン、Solvesso(商標)100、Solvesso(商標)150、トルエンおよびキシレンからなる群より選択されてもよい。いくつかの実施形態では、第1の溶媒成分は約50重量%以上の濃度にて存在しており、残りは第2の溶媒成分であってもよい。いくつかの実施形態において、第1の溶媒の第2の溶媒に対する重量比は、50%対50%、60%対40%、70%対30%、80%対20%、または90%対10%、或いは前述の重量比のいずれかの間の任意の重量比であってもよい。他の実施形態では、第1の溶媒成分はフェニルアセトニトリルであり、第2の溶媒成分は芳香族炭化水素、シクロヘキサン、エチルベンゼン、Solvesso(商標)100、Solvesso(商標)150、トルエンおよびキシレンからなる群より選択されてもよく、第1の溶媒成分は約50重量%未満の濃度で存在しており、残りは第2の溶媒成分であってもよい。いくつかの実施形態では、第1の溶媒の第2の溶媒に対する重量比は、49%対51%、40%対60%、30%対70%、20%対80%、または10%対90%、或いは前述の重量比のいずれかの間の任意の重量比であってもよい。
【0048】
他の実施形態では、PIB−PURを含む溶液は、PIB−PURを、3つの溶媒成分、即ち、第1の溶媒成分と第2の溶媒成分と第3の溶媒成分とからなる溶媒混合物に溶解することによって作製することができる。いくつかの実施形態において、第1の溶媒成分は、トルエンおよびSolvesso(商標)150からなる群より選択され、第2の溶媒成分は、フェニルアセトニトリル、カプロラクトン(イプシロン)、ベンズアルデヒドおよびブチルベンゾエートからなる群より選択され、そして第3の成分は、ベンジルアセテート、テトラヒドロフラン、2,6−ジメチルピリジン、ベンジルベンゾエートおよびサフロールからなる群より選択されてもよい。いくつかの実施形態では、第2の溶媒成分は、わずか約20重量%、約25重量%、または約30重量%であってもよく、或いは、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、または約55重量%程度であってもよく、或いは上述の値の任意の対の間であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、第2の溶媒成分は、約20重量%〜約55重量%、約25重量%〜約50重量%、約30重量%〜約45重量%、または約35重量%〜約40重量%の量にて存在していてもよい。いくつかの実施形態では、第3の溶媒成分は、わずか約1重量%、約5重量%、約10重量%、または約20重量%の量にて存在していてもよく、残りは第1の溶媒成分であってもよい。
【0049】
別の実施形態では、ブロックコポリマーを含む移植可能な医療機器は、ブロックコポリマーを少なくとも約7重量%、約8重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、または約30重量%で、或いは約40重量%、約50重量%、約60重量%、または約70重量%以上で、或いは前述の値の任意の対の間に定義された任意の範囲内の濃度にて含むブロックコポリマー溶液を配合する(formulating)ことによって作製され得る。例えば、いくつかの実施形態では、溶媒混合物中のブロックコポリマーの濃度は、約7重量%〜約70重量%、約8重量%〜約60重量%、約10重量%〜約50重量%、または約20重量%〜約40重量%の量にて存在していてもよい。溶解度は約64℃で測定される。
【0050】
ブロックコポリマー溶液を配合するステップは、ブロックコポリマーを少なくとも2つの溶媒成分を含む溶媒混合物に溶解するステップを含むことができる。溶媒混合物の溶媒成分は一緒にブロックコポリマーを溶解する。すなわち、ブロックコポリマーは、それがもはや固体形態ではなく、沈降しないように溶媒混合物に溶解される。ブロックコポリマーはまた、その基本構造を保持するように溶解される。すなわち、溶解したポリマーは、ブロックコポリマーの重合モノマーの交互のセクションから構成されており、溶解したポリマーの約0.1重量%未満が、モノマーまたはホモポリマーの形態である。
【0051】
いくつかの実施形態では、移植可能な医療機器を乾燥させるステップは、ブロックコポリマー層を残すために溶媒混合物を蒸発させるステップを含む。
いくつかの実施形態では、ブロックコポリマー溶液を移植可能な医療機器上に堆積させるステップは、移植可能な医療機器へのブロックコポリマー溶液の溶媒流延、スプレーコーティング、または浸漬コーティングのうちの少なくとも1つを含み得る。他の実施形態では、ブロックコポリマー溶液を移植可能な医療機器上に堆積させるステップは、移植可能な医療機器上へのブロックコポリマー溶液のエレクトロスピニングおよびエレクトロスプレーの少なくとも1つを含み得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、溶媒混合物は少なくとも3つの溶媒成分を含み、溶媒成分の少なくとも1つは少なくとも約5.6MPa0.5の極性HSPおよび少なくとも約4.6MPa0.5の水素結合HSPを有していてもよい。少なくとも約5.6MPa0.5の極性HSPおよび少なくとも約4.6MPa0.5の水素結合HSPを有する溶媒成分を含むことにより、ブロックコポリマーを含む溶液を、例えば、エレクトロスピニングまたはエレクトロスプレーといったいくつかの溶媒ベースの処理において使用することによる効率を改善することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、移植可能な医療機器に含まれるブロックコポリマーは、PIB−PURを含むことができる。PIB−PURを含む溶液は、上記した実施形態のいずれかに従って作製することができる。
【0054】
別の実施形態では、組成物は、第1の溶媒と、第2の溶媒と、第1の溶媒および第2の溶媒を含む溶液中に約7重量%以上の量でのブロックコポリマーと、を含み得る。第1の溶媒およびブロックコポリマーからなる溶液中のブロックコポリマーの最大溶解度は、約1重量%以下であってもよく、第2の溶媒とブロックコポリマーとからなる溶液中のブロックコポリマーの最大溶解度は、約1重量%以下であってもよい。いくつかの実施形態では、ブロックコポリマーは、約7重量%、約8重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%または約30重量%以上で、或いは約40重量%、約50重量%、約60重量%、または約70重量%以下で、或いは前述の値の任意の対の間に定義された任意の範囲内で存在していてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、第1の溶媒および第2の溶媒を含む溶液中のブロックコポリマーの溶解度は、約7重量%〜約70重量%、約8重量%〜約60重量%、約10重量%〜約50重量%、または約20重量%〜約40重量%の量であってもよい。溶解度は約64℃で測定される。
【0055】
いくつかの実施形態では、第1の溶媒とブロックコポリマーとからなる溶液中のブロックコポリマーの最大溶解度は、約1重量%以下、約0.5重量%、約0.2重量%以下、約0.1重量%以下、または約0.05重量%以下であり、第2の溶媒とブロックコポリマーとからなる溶液中のブロックコポリマーの最大溶解度は、約1重量%以下、約0.5重量%、約0.2重量%以下、約0.1重量%以下、または約0.05重量%以下であってもよい。いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーは、第1の溶媒に実質的に不溶性であり、第2の溶媒に実質的に不溶性であってもよい。最大溶解度は約64℃で測定される。
【0056】
いくつかの実施形態では、組成物はさらに第3の溶媒を含み、3つの溶媒の少なくとも1つは、少なくとも約5.6MPa0.5の極性HSPを有し、3つの溶媒の少なくとも1つは少なくとも約4.6MPa0.5の水素結合HSPを有していてもよい。少なくとも約5.6MPa0.5の極性HSPおよび少なくとも約4.6MPa0.5の水素結合HSPを有する溶媒を含むことにより、ブロックコポリマーを含む溶液を、例えば、エレクトロスピニングまたはエレクトロスプレーといったいくつかの溶媒ベースの処理において使用することによる効率を改善することができる。
【0057】
他の実施形態では、組成物のブロックコポリマーは、ポリイソブチレンセグメントおよびポリウレタンセグメント(PIB−PUR)を含み得る。いくつかの実施形態では、組成物の第1の溶媒は、アセトフェノン、ベンズアルデヒド、シクロヘキサノン、および桂皮酸エチルからなる群より選択され、組成物の第2の溶媒は、芳香族炭化水素、シクロヘキサン、エチルベンゼン、Solvesso(商標)100、Solvesso(商標)150、トルエンおよびキシレンからなる群より選択されてもよい。いくつかの実施形態では、第1の溶媒は約50重量%以上の濃度にて存在し、残りは第2の溶媒であってもよい。いくつかの実施形態において、第1の溶媒の第2の溶媒に対する重量比は、50%対50%、60%対40%、70%対30%、80%対20%または90%対10%であってもよく、或いは前述の重量比のいずれかの間の任意の重量比であってもよい。他の実施形態では、第1の溶媒はフェニルアセトニトリルであり、第2の溶媒は芳香族炭化水素、シクロヘキサン、エチルベンゼン、Solvesso(商標)100、Solvesso(商標)50、トルエンおよびキシレンからなる群より選択されてもよく、ここで、第1の溶媒は約50重量%未満の濃度で存在してもよく、残りは第2の溶媒であってもよい。いくつかの実施形態では、第1の溶媒の第2の溶媒に対する重量比は、49%対51%、40%対60%、30%対70%、20%対80%または10%対90%であってもよく、或いは前述の重量比のいずれかの間の任意の重量比であってもよい。いくつかの実施形態では、第1の溶媒はシクロヘキサノンであり、第2の溶媒はトルエンであってもよい。
【0058】
他の実施形態では、組成物の第1の溶媒は、トルエンおよびSolvesso(商標)150からなる群より選択され、組成物の第2の溶媒は、フェニルアセトニトリル、カプロラクトン(イプシロン)、ベンズアルデヒドおよびブチルベンゾエートからなる群より選択されてもよく、そして組成物の第3の溶媒は、ベンジルアセテート、テトラヒドロフラン、2,6−ジメチルピリジン、ベンジルベンゾエートおよびサフロールからなる群より選択されてもよい。いくつかの実施形態では、第2の溶媒成分は、わずか約20重量%、約25重量%、または約30重量%であってもよく、或いは、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、または約55重量%程度であってもよく、或いは上述の値の任意の対の間であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、第2の溶媒成分は、約20重量%〜約55重量%、約25重量%〜約50重量%、約30重量%〜約45重量%、または約35重量%〜約40重量%の量にて存在していてもよい。いくつかの実施形態では、第3の溶媒成分は、わずか約1重量%、約5重量%、約10重量%、または約20重量%の量にて存在していてもよく、残りは第1の溶媒成分であってもよい。
【実施例】
【0059】
本発明は、本発明の範囲内の多数の改変および変形が当業者には明らかであるので、例示としてのみ意図される以下の実施例においてより詳細に記載される。別段の記載がない限り、以下の実施例で報告される全ての部、百分率および比は重量に基づくものであり、実施例で使用される全ての試薬は、以下に記載の薬品供給者から得られたか、入手可能であるか、或いは従来の技術によって合成可能である。
【0060】
実施例1
シクロヘキサノン/トルエン中のPIB−PUR
PIB−PURは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、発明の名称が「ポリイソブチレンウレタン、尿素およびウレタン/尿素コポリマーおよびこれを含む医療機器」である米国特許第8,324,290号明細書に記載されているように合成した。この方法によって形成されたPIB−PURは、ポリマー材料の厚膜として製造される。PIB−PURを、約2ミリメートル(mm)〜約20mmの最大寸法を有するポリマー塊に切断、または分離した。
【0061】
PIB−PURをシクロヘキサノン(Sigma−Aldrich社、99.8%、#W390909)に添加した。シクロヘキサノンを攪拌し、64℃の温度で、少なくとも48時間、最大96時間保持した。PIB−PURは、シクロヘキサノンに溶解しないことがはっきりと観察できた。PIB−PURは、シクロヘキサノンに添加したときに僅かに膨潤していることが目視にて観察された。シクロヘキサノンとPIB−PURとの間のハンセン溶解度パラメータ距離(Ra)は約4.0MPa0.5である。
【0062】
PIB−PURをトルエン(Sigma−Aldrich社、99.5%、#179418)に添加した。トルエンを撹拌し、64℃の温度で、少なくとも48時間、最大で96時間保持した。PIB−PURは、トルエン中に溶解していないことがはっきりと観察できた。PIB−PURは、トルエンに添加したときに僅かに膨潤していることが目視にて観察された。中央が不透明のままである一方で、縁部が透明になるのが観察された。トルエンとPIB−PURとの間のRaは約4.2MPa0.5である。
【0063】
シクロヘキサノンとトルエンを等量で混合して溶媒混合物を形成した。溶媒混合物を攪拌し、64℃の温度に保持した。PIB−PURを、重量パーセントを増加させて溶媒混合物に添加した。17.8重量%までの様々な重量パーセントでのPIB−PURは、24時間後に、溶媒混合物中に完全に溶解して溶液を形成した。50/50のシクロヘキサノン/トルエン溶媒混合物とPIB−PURとの間のRaは約1.4MPa0.5である。
【0064】
本発明の範囲から逸脱することなく、論じられた例示的な実施形態に対して様々な修正および追加を行うことができる。例えば、上述の実施形態は特定の特徴を指すが、本発明の範囲は、特徴の異なる組み合わせを有する実施形態及び記載された特徴の全てを含まない実施形態も含む。したがって、本発明の範囲は、そのようなすべての均等物とともに、実施例の範囲内にあるそのような代替物、改変物および変形物のすべてを包含するように意図されている。