特許第6490829号(P6490829)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490829
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】心臓置換弁のためのロック機構
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20190318BHJP
【FI】
   A61F2/24
【請求項の数】34
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2017-546848(P2017-546848)
(86)(22)【出願日】2016年3月3日
(65)【公表番号】特表2018-507072(P2018-507072A)
(43)【公表日】2018年3月15日
(86)【国際出願番号】US2016020745
(87)【国際公開番号】WO2016144708
(87)【国際公開日】20160915
【審査請求日】2017年9月27日
(31)【優先権主張番号】62/129,177
(32)【優先日】2015年3月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/058,841
(32)【優先日】2016年3月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】バッカス、アンドリュー ジェイ.エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】イノ、タカシ エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】クリソストモ、クリスリー ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】カロメニ、マイケル ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ファム、アン トゥ
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−516055(JP,A)
【文献】 特表2012−505061(JP,A)
【文献】 特表2015−501680(JP,A)
【文献】 特表2012−521854(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0310917(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心長手軸を規定する管状のアンカ部材に固定的に取り付けられるバックル部材と、
前記中心長手軸に沿い、前記バックル部材内において前記バックル部材に対し相対変位可能なポスト部材と、
前記ポスト部材の取付点において、当該ポスト部材に離脱可能に取り付けられるアクチュエータ部材と、
前記取付点において前記アクチュエータ部材と前記ポスト部材とに挿通されて、前記アクチュエータ部材と前記ポスト部材とに離脱可能に結合されるピン部材と、
を備え、
前記ポスト部材は、前記バックル部材に対する前記ポスト部材の遠位側への相対移動を規制するべく当該バックル部材に形成された受部に係止するように構成されたラッチ部を含み、
前記取付点は、前記ラッチ部の近位側に配置されている心臓置換弁ロック機構。
【請求項2】
請求項に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記ピン部材は、直線状の遠位部と、前記直線状の遠位部に対して遠位側に位置する巻回状の遠位先端部とを含んでいる心臓置換弁ロック機構。
【請求項3】
請求項に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記ピン部材は、前記直線状の遠位部から前記遠位先端部にかけて一方向に湾曲している心臓置換弁ロック機構。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記ポスト部材の近位側の前記中心長手に沿う変位が前記取付点を前記バックル部材の遠位側の第1の位置から前記バックル部材の遠位端の第2の位置まで移動させる心臓置換弁ロック機構。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記ポスト部材は、当該ポスト部材の遠位端から近位側に延びる片持ち状の脚部を含んでいる心臓置換弁ロック機構。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記バックル部材は、剛体であり、前記ラッチ部は、前記ポスト部材の本体部に対し相対移動可能である心臓置換弁ロック機構。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記ポスト部材は、本体部を含み、前記ラッチ部は、前記ポスト部材の本体部に対し相対移動可能であり、
前記管状のアンカ部材の中心長手軸周りの前記ラッチ部の円周方向変位によって前記受部から前記ラッチ部が離脱する心臓置換弁ロック機構。
【請求項8】
請求項に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記バックル部材は、前記管状のアンカ部材から離反する方向に延びる軸方向に延びた2つの側壁と、前記軸方向に延びた2つの側壁の間に延び、前記バックル部材全体にわたって前記軸方向に挿通するチャネルを形成する後壁と、前記軸方向に延びた2つの側壁の間において前記後壁に形成された1つ以上の小孔とを含んでおり、
前記1つ以上の小孔を挿通して前記バックル部材を前記管状のアンカ部材に保持する締付要素が設けられている心臓置換弁ロック機構。
【請求項9】
請求項に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記バックル部材は、前記軸方向に延びた2つの側壁のいずれか一方に沿って貫通するスロットを含んでおり、
前記スロットは、少なくとも一部が前記チャネルと合致している心臓置換弁ロック機構。
【請求項10】
請求項又はに記載の心臓置換弁ロック機構において、前記後壁は、前記軸方向に延びた2つの側壁に比べて相対的に前記中心長手軸から半径方向に離間して配置されており、前記後壁は、前記1つ以上の小孔と前記バックル部材の遠位端とに連通している凹部を含んでいる心臓置換弁ロック機構。
【請求項11】
請求項10に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記締付要素は、前記ポスト部材が前記チャネル内に配置されているときに前記凹部を挿通して前記バックル部材から離間して延びている心臓置換弁ロック機構。
【請求項12】
請求項から11のいずれか一項に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記受部は、前記軸方向に延びた2つの側壁のうち少なくともいずれか一方に形成されている心臓置換弁ロック機構。
【請求項13】
請求項から12のいずれか一項に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記アクチュエータ部材は、D字形の長尺ロッドに対し固定的に取り付けられている平坦な取付部を含んでいる心臓置換弁ロック機構。
【請求項14】
請求項13に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記長尺ロッドの少なくとも一部は、前記取付部の遠位側に延びており、前記取付部の遠位側に延びている前記長尺ロッドの部分は、前記アクチュエータ部材が遠位側に進行した際、前記受部から前記ラッチ部を離脱するために前記中心長手軸周りに前記ラッチ部を円周方向に変位するように構成されている心臓置換弁ロック機構。
【請求項15】
中心長手軸を規定する管状のアンカ部材に固定的に取り付けられるバックル部材と、
前記中心長手軸に沿い、前記バックル部材内において前記バックル部材に対し相対変位可能なポスト部材と、
前記ポスト部材の取付点において、当該ポスト部材に離脱可能に取り付けられるアクチュエータ部材と、
前記取付点において前記アクチュエータ部材と前記ポスト部材とに挿通されて、前記アクチュエータ部材と前記ポスト部材とに離脱可能に結合されるピン部材と、
を備え、
前記ポスト部材は、前記バックル部材に対する前記ポスト部材の遠位側への相対移動を規制するべく当該バックル部材に形成された受部に係止するように構成されたラッチ部を含み、
前記取付点は、前記ラッチ部の近位側に配置されている心臓置換弁ロック機構。
【請求項16】
請求項15に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記取付点にて前記アクチュエータ部材と前記ポスト部材とを挿通して離脱可能に結合されるピン部材をさらに含んでいる心臓置換弁ロック機構。
【請求項17】
請求項16に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記ピン部材は、直線状の遠位部と、前記直線状の遠位部に対して遠位側に位置する巻回状の遠位先端部とを含んでいる心臓置換弁ロック機構。
【請求項18】
請求項17に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記ピン部材は、前記直線状の遠位部から前記遠位先端部にかけて一方向に湾曲している心臓置換弁ロック機構。
【請求項19】
請求項15に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記ポスト部材の近位側の軸方向変位が前記取付点を前記バックル部材の遠位側の第1の位置から前記バックル部材の遠位端の第2の位置まで移動させる心臓置換弁ロック機構。
【請求項20】
請求項15に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記ポスト部材は、当該ポスト部材の遠位端から近位側に延びる片持ち状の脚部を含んでいる心臓置換弁ロック機構。
【請求項21】
請求項15に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記バックル部材は、剛体である心臓置換弁ロック機構。
【請求項22】
請求項15に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記ポスト部材のラッチ部は、可撓性を有している心臓置換弁ロック機構。
【請求項23】
請求項21に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記ラッチ部は、前記ポスト部材の本体部に対し相対移動可能である心臓置換弁ロック機構。
【請求項24】
中心長手軸を規定する管状のアンカ部材に固定的に取り付けられるバックル部材と、
前記中心長手軸に沿い、前記バックル部材内において前記バックル部材に対し相対変位可能なポスト部材と、
前記ポスト部材の取付点において、当該ポスト部材に離脱可能に取り付けられるアクチュエータ部材と、
前記取付点において前記アクチュエータ部材と前記ポスト部材とに挿通されて、前記アクチュエータ部材と前記ポスト部材とに離脱可能に結合されるピン部材と、
を備え、
前記ポスト部材は、本体部と、前記本体部に対し相対変位可能に設けられ、前記バックル部材に対する前記ポスト部材の遠位側への相対移動を規制するべく当該バックル部材に形成された受部に係止するように構成されたラッチ部とを含み、
前記中心長手軸周りに前記ラッチ部が円周方向に変位することで前記受部から前記ラッチ部が離脱する心臓置換弁ロック機構。
【請求項25】
請求項24に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記バックル部材は、前記管状のアンカ部材から離反する方向に延びる軸方向に延びた2つの側壁と、前記軸方向に延びた2つの側壁の間に延び、前記バックル部材全体にわたって軸方向に挿通するチャネルを形成する後壁と、前記軸方向に延びた2つの側壁の間において前記後壁に形成された1つ以上の小孔とを含んでおり、
前記1つ以上の小孔を挿通して前記バックル部材を前記管状のアンカ部材に保持する締付要素が設けられている心臓置換弁ロック機構。
【請求項26】
請求項25に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記バックル部材は、前記軸方向に延びた2つの側壁のいずれか一方に沿って貫通するスロットを含んでいる心臓置換弁ロック機構。
【請求項27】
請求項26に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記スロットは、少なくとも一部が前記チャネルと合致している心臓置換弁ロック機構。
【請求項28】
請求項25に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記後壁は、前記2つの側壁に比べて相対的に前記中心長手軸から半径方向に離間して配置されており、前記後壁は、前記1つ以上の小孔と前記バックル部材の遠位端とに連通している凹部を含んでいる心臓置換弁ロック機構。
【請求項29】
請求項28に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記締付要素は、前記ポスト部材が前記チャネル内に配置されているときに前記凹部を挿通して前記バックル部材から離間して延びている心臓置換弁ロック機構。
【請求項30】
請求項25に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記受部は、前記2つの側壁のうち少なくともいずれか一方に形成されている心臓置換弁ロック機構。
【請求項31】
請求項24に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記ポスト部材は、当該ポスト部材の遠位端から近位側に延びる片持ち状の脚部を含んでいる心臓置換弁ロック機構。
【請求項32】
請求項24に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記アクチュエータ部材は、D字形の長尺ロッドに対し固定的に取り付けられている平坦な取付部を含んでいる心臓置換弁ロック機構。
【請求項33】
請求項32に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記長尺ロッドの少なくとも一部は、前記取付部の遠位側に延びている心臓置換弁ロック機構。
【請求項34】
請求項33に記載の心臓置換弁ロック機構において、前記取付部の遠位側に延びている前記長尺ロッドの部分は、前記アクチュエータ部材が遠位側に進行した際、前記受部から前記ラッチ部を離脱するために前記中心長手軸周りに前記ラッチ部を円周方向に変位するように構成されている心臓置換弁ロック機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療装置並びに医療装置を製造若しくは使用する方法に関する。より詳細には、本発明は、心臓置換弁のためのロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば血管内使用といった医療用途のための多種多様な体内医療装置が開発されている。これらの装置のいくつかは、ガイドワイヤ、カテーテル、及び(例えば、ステント、グラフト、置換弁等のための)医療装置装入システム等を含んでいる。これらの装置は、様々な異なる製造方法のいずれかによって製造され、様々な方法のうちの1つによって使用される。既知の医療装置及び方法の各々には、何等かの利点も欠点もある。代替的な医療装置並びに医療装置の製造若しくは使用のための代替方法を提供する必要が継続している。
【発明の概要】
【0003】
第1の態様において、心臓置換弁ロック機構は、管状のアンカ部材に固定的に取り付けられるバックル部材と、前記バックル部材に対し軸方向に相対変位可能なポスト部材と、前記ポスト部材に対し取付点にて離脱可能に取り付けられるアクチュエータ部材とを備えていてもよい。前記ポスト部材は、前記バックル部材に対する前記ポスト部材の遠位側への相対移動を規制するべく当該バックル部材に形成された受部に係止するように構成されたラッチ部を含んでいてもよい。前記取付点は、前記ラッチ部の近位側に配置されていてもよい。
【0004】
追加的な又は代替的な第2の態様において、前記心臓置換弁ロック機構は、前記取付点にて前記アクチュエータ部材と前記ポスト部材とを挿通して離脱可能に結合されるピン部材をさらに備えていてもよい。
【0005】
追加的な又は代替的な第3の態様において、前記ピン部材は、直線状の遠位部と、前記遠位部に対して遠位側に位置する巻回状の遠位先端部とを含んでいる。
追加的な又は代替的な第4の態様において、前記ピン部材は、前記遠位部から前記遠位先端部にかけて一方向に湾曲している。
【0006】
追加的な又は代替的な第5の態様において、前記ポスト部材の近位側の軸方向変位が前記取付点を前記バックル部材の遠位側の第1の位置から前記バックル部材の遠位端の第2の位置まで移動させる。
【0007】
追加的な又は代替的な第6の態様において、前記ポスト部材は、当該ポスト部材の遠位端から近位側に延びる片持ち状の脚部を含んでいる。
追加的な又は代替的な第7の態様において、前記バックル部材は、略剛体である。
【0008】
追加的な又は代替的な第8の態様において、前記ポスト部材の少なくとも一部は、可撓性を有している。
追加的な又は代替的な第9の態様において、前記ラッチ部は、前記ポスト部材の本体部に対し相対移動可能である。
【0009】
追加的な又は代替的な第10の態様において、前記心臓置換弁ロック機構は、中心長手軸を規定する管状のアンカ部材に固定的に取り付けられるバックル部材と、前記バックル部材内にて当該バックル部材に対し軸方向に相対変位可能なポスト部材と、前記ポスト部材に対し取付点にて離脱可能に取り付けられるアクチュエータ部材と、を備えていてもよい。前記ポスト部材は、本体部と、前記本体部に対し相対変位可能に設けられ、前記バックル部材に対する前記ポスト部材の遠位側への相対移動を規制するべく当該バックル部材に形成された受部に係止するように構成されたラッチ部とを含んでいてもよい。前記中心長手軸周りに前記ラッチ部が円周方向に変位することで前記受部から前記ラッチ部が離脱してもよい。
【0010】
追加的な又は代替的な第11の態様において、前記バックル部材は、前記アンカ部材から離反する方向に延びる軸方向に延びた2つの側壁と、前記2つの側壁の間に延び、前記バックル部材全体にわたって軸方向に挿通するチャネルを形成する後壁と、前記2つの側壁の間において前記後壁に形成された1つ以上の小孔とを含んでいてもよい。前記1つ以上の小孔を挿通して前記バックル部材を前記アンカ部材に保持する締付要素が設けられていてもよい。
【0011】
追加的な又は代替的な第12の態様において、前記バックル部材は、前記2つの側壁のいずれか一方に沿って軸方向に貫通するスロットを含んでいる。
追加的な又は代替的な第13の態様において、前記スロットは、少なくとも一部が前記チャネルと合致している。
【0012】
追加的な又は代替的な第14の態様において、前記後壁は、前記2つの側壁に比べて相対的に前記中心長手軸から半径方向に離間して配置されており、前記後壁は、前記1つ以上の小孔と前記バックル部材の遠位端とに連通している凹部を含んでいる。
【0013】
追加的な又は代替的な第15の態様において、前記締付要素は、前記ポスト部材が前記チャネル内に配置されているときに前記凹部を挿通して前記バックル部材から離間して延びている。
【0014】
追加的な又は代替的な第16の態様において、前記受部は、前記2つの側壁のうち少なくともいずれか一方に形成されている。
追加的な又は代替的な第17の態様において、前記ポスト部材は、当該ポスト部材の遠位端から近位側に延びる片持ち状の脚部を含んでいる。
【0015】
追加的な又は代替的な第18の態様において、前記アクチュエータ部材は、D字形の長尺ロッドに対し固定的に取り付けられている平坦な取付部を含んでいる。
追加的な又は代替的な第19の態様において、前記長尺ロッドの少なくとも一部は、前記取付部の遠位側に延びている。
【0016】
追加的な又は代替的な第20の態様において、前記取付部の遠位側に延びている前記長尺ロッドの部分は、前記アクチュエータ部材が遠位側に進行した際、前記受部から前記ラッチ部を離脱するために前記中心長手軸周りに前記ラッチ部を円周方向に変位するように構成されている。
【0017】
いくつかの実施形態、態様、及び実施例の上記概要は、本発明の各開示された実施形態又は全ての実施形態を説明することを意図するものではない。以下の図及び詳細な説明は、これらの実施形態をより具体的に例示する。
【0018】
本発明は、添付の図面に関連する様々な実施形態の以下の詳細な説明を考慮することにより、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】配備姿勢における例示的なインプラントの一部の斜視図。
図2】例示的なバックル部材の斜視図。
図3図2の例示的なバックル部材の端面図。
図4】例示的なポスト部材の斜視図。
図5図4の例示的なポスト部材の正面図。
図6図4の例示的なポスト部材の側面図。
図7図4の例示的なポスト部材の端面図。
図8】例示的なアクチュエータ部材の斜視図。
図9図8の例示的なアクチュエータ部材の端面図。
図10】ラッチ部が受部に係止している例示的なインプラントと連携する選択された例示的なロック機構の構成要素の斜視図。
図11図10の例示的なロック機構の選択された構成要素の正面図。
図12図10の例示的なロック機構の選択された構成要素の側面図。
図13】ラッチ部が受部に係止している例示的なロック機構の選択された構成要素の斜視図。
図14図13の例示的なロック機構の選択された構成要素の正面図。
図15】ラッチ部が受部に係止している例示的なロック機構の選択された構成要素の斜視図。
図16図15の例示的なロック機構の選択された構成要素の正面図。
図17】ラッチ部が受部から離脱している例示的なロック機構の選択された構成要素の正面図。
図18図17の例示的なロック機構の選択された構成要素の側面図。
図19】ラッチ部が受部から離脱している例示的なロック機構の選択された構成要素の正面図。
図20】ラッチ部が受部から離脱している例示的なロック機構の選択された構成要素の正面図。
図21】例示的な解除システムの選択された構成要素と連携する例示的なロック機構の選択された構成要素の動作の斜視図。
図22】例示的な解除システムの選択された構成要素と連携する例示的なロック機構の選択された構成要素の動作の斜視図。
図23】例示的な解除システムの選択された構成要素と連携する例示的なロック機構の選択された構成要素の動作の斜視図。
図24】例示的な解除システムの選択された構成要素と連携する例示的なロック機構の選択された構成要素の動作の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の態様は、様々な改変及び代替形態を取り込むことが可能であるが、それらの具体例が、例示として図面に示され、詳細に記載される。しかしながら、本発明の態様を記載した特定の実施形態に限定する意図はないことを理解すべきである。そうではなく、本発明の精神及び範囲内にある全ての修正、等価物、及び代替物をカバーすることを意図している。
【0021】
以下の説明は、縮尺通りではない図面を参照して読まれるべきであり、同様の参照番号はいくつかの図を通して同様の要素を示す。詳細な説明及び図面は、特許請求の範囲に記載された発明を例示するものであって、限定するものではない。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、説明され、図示された様々な要素を様々な組合せ及び構成で配置できることを認識するであろう。詳細な説明及び図面は、特許請求の範囲に記載された発明の例示的な実施形態を示す。
【0022】
以下に定義された用語については、特許請求の範囲又は本明細書の他の箇所で異なる定義が与えられていない限り、これらの定義が適用されるものとする。
ここに記載された全ての数値は、明示的に示されているか否かに拘わらず「約」という用語で修正されているものとする。「約」という用語は、数値の文脈において、一般に、列挙された値と等価である(即ち、同じ機能又は結果を有する)と当業者が考える数の範囲を指す。多くの場合、「約」という用語には、最も近い有意な値に四捨五入された数字が含まれていてもよい。用語「約」(数値以外の文脈における)の他の用法は、特に明記しない限り、明細書の文脈から理解され、明細書の文脈と整合する通常の慣習的な定義を有するものと想定することができる。
【0023】
終点による数値範囲の列挙には、終点を含むその範囲内の全ての数値が含まれる(例えば、1から5は、1,1.5,2,2.75,3,3.80,4,及び5を含む)。
様々な構成要素、機構、及び仕様に関係するいくつかの適切な寸法、範囲、及び値が開示されているが、当業者は、所望の寸法、範囲、及び値の少なくとも1つが明示的に開示されたものから逸脱する可能性があることを理解できるであろう。
【0024】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含んでいる。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されているように、「又は」という用語は、その内容が明確に別段の指示をしない限り、「少なくともいずれか1つ」を含むその意味において一般に使用される。
【0025】
「近位」、「遠位」、「進入」、「後退」、その変形等のような相対的な用語は、一般的には、様々な要素の位置、方向、及び操作に関して、「近位」及び「後退」は使用者、即ち施術者又は操作者に近いこと又は使用者に向かう方を指し、「遠位」及び「アバンズ」は使用者から遠いこと又は使用者に遠ざかることを意味する。
【0026】
明細書中の「実施形態」、「いくつかの実施形態」、「その他の実施形態」等は、記載された実施形態が特定の特徴、構造、又は特性を含み得ることを示しているが、全ての実施形態が必ずしも特定の特徴、構造、又は特性を含んでいるとは限らない。しかも、上掲のフレーズが必ずしも同一の実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性がある実施形態に関連して記載されている場合、他の実施形態に関連するこのような特徴、構造又は特性にも影響することは、明確に相反的に述べられていない限り、明示的に記載されているか否かに拘わらず、当業者の知識の範囲内のことである。即ち、以下に記載される様々な個々の要素は、たとえ特定の組立品として明示的に示されていないにせよ、他の追加的な実施形態の構成すること及び説明された実施形態を補完して豊かにすることの少なくともいずれか一方のために、互いに組立可能又は組付可能であると、当業者によって理解されるのと同じように想定されるであろう。
【0027】
明瞭化のために、種々の記載やクレームされた特徴を呼称したり、区別したりするために、所定の識別に用いる序数詞を用いた命名法(例えば、第1、第2、第3、第4等)が特許請求の範囲の少なくともいずれか一方に使用される場合がある。この序数詞を用いた命名法は、限定を意図するものではなく、単なる例示であることが理解されるべきである。いくつかの実施形態において、簡略化及び明瞭化のために、以前に使用した序数詞での命名法を変更したり逸脱したりする場合がある。即ち、「第1の」要素として識別された特徴が後で「第2の」要素、「第3の」要素等と呼ばれる場合があり、或いは、完全に省略されたり、別の特定事項を「最初の」要素と呼称したりする場合がある。それぞれの場合における意味や指し示すものは、当業者には明らかであろう。
【0028】
心臓血管系に影響を及ぼす疾患や症状(medical condition)は、米国及び世界中で一般的である。伝統的に、心臓血管系の治療は、しばしば、当該心臓血管系の影響を受けている部分に直接アクセスすることによって行われた。例えば、1つ以上の冠動脈における閉塞の治療は、従来、冠動脈バイパス手術を採用することによってなされていた。容易に理解できるように、そのような療法は、患者にとってむしろ侵襲的なものであり、かなりの回復時間や多くの処置を必要とする。より最近では、より侵襲性の低い治療法、例えば、遮断された冠状動脈に経皮的カテーテル(例えば、血管形成術)を介してアクセスし治療する開発されている。そのような治療方法は、患者及び臨床医の間で広く受け入れられている。
【0029】
いくつかの比較的一般的な症状は、心臓内の1つ以上の弁の効率が悪いこと、非効率性、若しくは完全な機能不全を含んでいること、又はその結果である。例えば、大動脈弁の機能不全は、ヒトに重大な影響を及ぼす可能性があり、対処しなければ、重篤な健康状態や死に至る可能性がある。欠陥のある心臓弁の処置は、当該処置がしばしば欠陥のある弁の修復又は完全な置換を必要とするという点で他の課題を提起する。そのような治療は、患者にとっては高度に侵襲的なものである。ここに開示するものは、心臓血管系の診断、治療、及び治癒の少なくともいずれか1つをなすために、当該心臓血管系の一部に医療装置の装入用に使用可能な医療装置である。ここに開示される医療装置の少なくとも一部は、心臓置換弁(例えば、置換大動脈弁)を装入し、移植するために使用可能である。加えて、ここに開示される各装置は、心臓置換弁を経皮的に装入することができ、従って、患者に対してはるかに侵襲性が低いものとなり得る。本明細書に開示された装置は、以下でより詳細に説明するように、多くの付加的な好ましい特徴及び利点を提供し得るものでもある。
【0030】
図1は、例示的なメディカルインプラントシステム10の部分斜視図である。簡略化のため、メディカルインプラントシステム10のいくつかの特徴は、省略されていたり、又は概略的に図示されていたりいる。メディカルインプラントシステム10の構成要素のいくつかに関する追加的な詳細は、他の図表でより詳細に提供される。メディカルインプラントシステム10は、様々な医療装置を解剖学的構造内のいくつかの場所に装入したり配備したりするために使用される。少なくともいくつかの実施形態において、メディカルインプラントシステム10は、心臓置換弁の経皮装入に使用することができる心臓置換弁システム(例えば、置換大動脈弁システム)であってもよい。しかしながら、このことは、メディカルインプラントシステム10が僧帽弁置換、弁修復、弁形成術等、又は他の同様の介入を含む他の介入にも使用され得ることから、限定的なものではない。
【0031】
メディカルインプラントシステム10は、一般に、装入システム12と、装入システム12に装着され、装入時に装入システム12ルーメン内に配置されるメディカルインプラント14(即ち、例えば弁置換インプラント)とを含むカテーテルシステムとして説明される。いくつかの実施形態においてハンドル、即ちアクチュエータが当該装入システム12の近位端に配置される。一般に、ハンドルは、装入システム12に加えて、メディカルインプラント14の配備を支援するのと同様に、装入システム12の位置を操作するように構成されてもよい。
【0032】
使用時において、メディカルインプラントシステム10は、脈管構造を介して関心領域に隣接する位置まで経皮的に進行可能である。例えば、メディカルインプラントシステム10は、脈管構造を通って、大動脈弓を横切り、欠陥のある大動脈弁(又は他の心臓弁)に隣接する位置にまで進行可能である。装入の間、メディカルインプラント14は、概して細長で姿勢の低い「装入」姿勢で装入システム12内に配置される。一旦位置合わせされると、装入システム12は、メディカルインプラント14を露出させるために後退する。メディカルインプラント14は、当該メディカルインプラント14を解剖学的構造内へ移植するのに適した(例えば、図1に示されるように)概して短くて太い「配備」姿勢に半径方向に拡張するために、作動される。メディカルインプラント14が解剖学的構造内に適切に配備されると、装入システム12は、メディカルインプラント14を、例えば生来の大動脈弁用の好適な置換弁として機能する「解放」姿勢で所定の位置に残しつつ、血管系から抜き出される。少なくともいくつかの介入において、メディカルインプラント14は、生来の大動脈弁内に配備される場合がある(例えば、生来の弁は所定の位置に残され、切除されない)。代替的には、生来の弁を切除し、置換弁としてメディカルインプラント14に置換してもよい。
【0033】
いくつかの実施形態において、装入システム12は、内部を挿通する1つ以上のルーメンを含んでいてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、装入システム12は、第1のルーメン、第2のルーメン、第3のルーメン、及び第4のルーメンを含んでいてもよい。原則として、1つ以上のルーメンは、装入システム12の全長に沿って延びる。しかしながら、1つ以上のルーメンのうちの1つ以上が装入システムの長さの一部のみに沿って延びる他の実施形態も想定される。例えば、いくつかの実施形態において、第4のルーメンは、装入システム12の遠位端の近位側で効果的に第4のルーメンを終端させるため、装入システム12の遠位端の手前で少なくとも終端させ、さらには遠位端を充填してもよい。
【0034】
装入システム12の第1のルーメン内に配置されるのは、例えば、アクチュエータ部材50のような少なくとも1つのアクチュエータ部材であり、該アクチュエータ部材は、メディカルインプラント14を装入姿勢と配備姿勢とに駆動(即ち、拡張又は伸長)する。いくつかの場合において、(複数の)アクチュエータ部材50は、「アクチュエータ要素」という用語のことであり、当該用語と言い換え可能に使用される。換言すれば、メディカルインプラントシステム10は、少なくとも1つのアクチュエータ部材50を含んでいる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのアクチュエータ部材50が2つのアクチュエータ部材50、3つのアクチュエータ部材50、4つのアクチュエータ部材50、又は他の好適な即ち所望の数のアクチュエータ部材50を含んでいてもよい。説明のみを目的として、メディカルインプラントシステム10及びメディカルインプラント14の少なくともいずれか1つが、3つのアクチュエータ部材50とともに示されている。
【0035】
少なくともいくつかの実施形態において、第1のルーメンは、低摩擦ライナ(例えば、硬質ポリエチレン(FEP)ライナ)で内装されていてもよい。第2のルーメン内に配置されているのは、ピン離脱マンドレル20であり、詳しくは後述される。少なくともいくつかの実施形態において、第2のルーメンは、ハイポチューブライナで内装されていてもよい。第3のルーメンは、ガイドワイヤルーメンであってもよく、いくつかの実施形態において、第3のルーメンもまた、ハイポチューブライナで内装されていてもよい。いくつかの実施形態において、非伸長性ワイヤ又は別の補強部材を収容するために、第4のルーメンを使用してもよい。非伸長性ワイヤ又は別の補強部材の形状は、様々である。いくつかの実施形態において、非伸長性ワイヤは、ステンレス鋼編組の形態を取るものであってもよい。非伸長性ワイヤは、編組の両側に配置された一対の縦方向に延びるアラミド及びパラアラミドストランド(例えばKEVLAR(登録商標))の少なくともいずれか一方を追加的に含んでいてもよい。非伸長性ワイヤは、概して、第4のルーメンに「配置される」よりはむしろ、第4のルーメン内に埋め込まれていてよい。加えて、非伸長性ワイヤは、装入システム12の遠位端領域近傍位置まで延びていてもよいが、装入システム12の遠位端まで完全に延びることはない。例えば、第4のルーメンの短い遠位セグメントは、装入システム12の遠位端に隣接するポリマ材料で充填されていてもよい。
【0036】
装入システム12はまた、遠位端領域から遠位に延びるガイドワイヤチューブ延長部を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、ノーズコーンがガイドワイヤチューブ延長部に取り付けられていてもよい。いくつかの実施形態において、ノーズコーンは、一般に、傷を与えない(atraumatic)形状を有するように設計される。いくつかの実施形態において、ノーズコーンは、メディカルインプラント14の装入中に装入システム12の遠位先端に接するように構成された尾根状部(ridge)又は岩棚状部(ledge)を含んでいてもよい。
【0037】
図1は、メディカルインプラントシステム10又はメディカルインプラント14のいくつかの選択された構成要素を示す。例えば、図示の構成では、メディカルインプラント14が、「装入」姿勢と「配備」姿勢との間で可逆的に作動可能な筒状のアンカ部材としての編組40によって支持された複数の弁小葉16(例えば、ウシ心膜(bovine pericardial))含んでいることを示している。いくつかの実施形態において、アンカ部材としての編組40は、略円筒形の形状又は構造であってもよい。アンカ部材としての編組40用の適切な、しかし限定的ではない材料、例えば金属材料又はポリマ材料のいくつかについては、後述する。いくつかの実施形態において、メディカルインプラント14は、アンカ部材としての編組40を「配備」姿勢に保持するように構成された複数のロック機構を含んでいてもよい。少なくとも1つのアクチュエータ部材50は、前記複数のロック機構と係合し、「装入」姿勢と「配備」姿勢との間でアンカ部材としての編組40を作動させるように構成されていてもよい。いくつかの実施形態において、一のアクチュエータ部材50は、一のロック機構に対応して少なくとも結合し、さらには作動可能である。その他の構成も考えられる。
【0038】
複数のアクチュエータ部材50及び対応するロック機構の少なくともいずれか一方が、メディカルインプラント14に含まれてはいるが、明確性と簡潔性のため、以下の説明の多くは、これらの要素の単数の例に限定される。当業者であれば、以下に説明する実施例の特徴及び動作が、複数のロック機構及び複数のアクチュエータ部材50の全ての例に等しく適用可能であることを容易に認識するであろう。複数のロック機構及び複数のアクチュエータ部材50用のいくつかの適切な、しかし限定的ではない材料、例えば金属材料又はポリマ材料については、後述する。
【0039】
いくつかの実施形態において、複数のロック機構は、それぞれが、例えば弁小葉16間の交連部分(commissure portions)のところに、軸方向に移動可能なポスト部材76(ポスト部材76は、「交連ポスト」と呼称されることがある)と、アンカ部材としての編組40に固定的に取り付けられたバックル部材58とを備えている。換言すれば、少なくともいくつかの実施形態において、メディカルインプラント14は、複数のポスト部材76及び対応する複数のバックル部材58を含んでいてもよい。別の構成や対応もまた想定される。いくつかの実施形態において、ポスト部材76は、バックル部材58に係止し、「配備」姿勢にする。いくつかの実施形態において、ポスト部材76は、バックル部材58から軸方向、即ち長手方向に離間し、「装入」姿勢にする。ポスト部材76及びバックル部材58用のいくつかの適切な、しかし限定的ではない材料、例えば金属材料又はポリマ材料は、後述する。
【0040】
いくつかの実施形態において、軸方向に移動可能なポスト部材76の遠位端86は、縫合糸、テザー、接着剤、又は他の適切な要素によって、アンカ部材としての編組40の遠位端に少なくとも保持され、場合によっては取り付けられる(つまり、堅固な取り付け、移動可能な取り付け、取り外し可能な取り付け等がなされる)。いくつかの実施形態において、ポスト部材76は、軸方向、即ち長手方向において、アンカ部材としての編組40に対し、相対移動可能であり、バックル部材58は、アンカ部材としての編組40に対し、固定的に取り付けられている。バックル部材58がアンカ部材としての編組40に対し移動可能又は取り外し可能に取り付けられる別の実施形態も想定される。いくつかの実施形態において、ポスト部材76は、アンカ部材としての編組40に固定的に取り付けられており、かつバックル部材58は、アンカ部材としての編組40に固定的に取り付けられていてもよい。いくつかの実施形態において、ポスト部材76及びバックル部材58のいずれか一方は、アンカ部材としての編組40に固定的に取り付けられ、他方は、アンカ部材としての編組40に移動可能又は取り外し可能に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態において、ポスト部材76は、アンカ部材としての編組40に移動可能又は取り外し可能に取り付けられ、バックル部材58は、アンカ部材としての編組40に移動可能に又は取り外し可能に取り付けられていてもよい。いくつかの実施形態において、ポスト部材76は、バックル部材58は、アンカ部材としての編組40の遠位端に保持され、或いは取り付けられていてもよい(即ち、固定的に取り付けられる、移動可能に取り付けられる、取り外し可能に取り付けられる、等)。いくつかの実施形態において、バックル部材58は、アンカ部材としての編組40の近位端に固着され、又は取り付けられていてもよい。いくつかの実施形態において、バックル部材58は、アンカ部材としての編組40の近位端のところ又は近位端に、固着され若しくは取り付けられていてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、メディカルインプラント14は、アンカ部材としての編組40に対し、対応するポスト部材76の近傍に保持され、個々のポスト部材76を(少なくとも部分的に)使用する複数の弁小葉16のうちの1つ以上を含んでいてもよい。弁小葉16はまた、アンカ部材としての編組40のベース、即ち遠位端に保持されていてもよい。複数のポスト部材76に隣接して(例えば、芯合わせされて)位置合わせされているのは、対応する複数のバックル部材58である。図示の例において、アンカ部材としての編組40には、バックル部材58が1つずつ、3つのポスト部材76のそれぞれに隣接して取り付けられる。従って、アンカ部材としての編組40は、合計3つのバックル部材58と3つのポスト部材76とを有していることになる。同様に、図示の例では、合計3つのアクチュエータ部材50のそれぞれについて、1つのアクチュエータ部材50は、1つのポスト部材76と1つのバックル部材58とを操作できるように可能に併設されている。より少数の又はより多数のバックル部材58、ポスト部材76、及びアクチュエータ部材50を使用する別の実施形態も想定される。いくつかの実施形態において、シール44をアンカ部材としての編組40の周りに配置してもよく、その部材名が示唆するように、シール44は、メディカルインプラント14を配備の目標部位又は対象領域内にシールする一助となる。
【0042】
いくつかの実施形態において、メディカルインプラント14と装入システム12の取り付けは、カプラ32の使用が有効である。いくつかの実施形態において、カプラ32は、装入システム12に少なくとも配置され、場合によっては取り付けられている円筒状ベース(図示せず)を概ね含んでいてもよい。前記ベースから遠位側に突出しているのは、複数(例えば、2つ、3つ、4つ等)のフィンガ34であり、それぞれが各バックル部材58の近位端のところでメディカルインプラント14と結合している。以下にさらに詳細に後述するように、フィンガ34とバックル58との保持をより補助するために、カプラ32のフィンガ34周りには、カラー36が設けられていてもよい。カプラ32のフィンガ34に近接して(軸方向に相対摺動可能に)延びる複数のアクチュエータ部材50に連携する当該カプラ32のフィンガ34を維持するために、カラー36よりも近位側に配置され、カプラ32のフィンガ34を維持する機能を奏するガイド38を各フィンガ34の外周に配置してもよい。最後に、ピン離脱アセンブリ18はリンク構造体であって、ポスト部材76、バックル部材58、及びアクチュエータ部材50を互いに連携させた状態に維持する。いくつかの実施形態において、ピン離脱アセンブリ18は、コイル状接続部24を介して一緒に結合されるとともに、フェルール22を有するピン離脱マンドレル20に保持される複数の個別ピン部材26を含んでいてもよい。いくつかの好ましい、しかし限定的ではないカプラ32用、複数のフィンガ34用、カラー36用、ガイド38用、ピン離脱アセンブリ18用、複数の個別ピン部材26用、ピン離脱マンドレル20用、及びフェルール22用の少なくともいずれか1つの材料、例えば金属材料又はポリマ材料は、後述する。
【0043】
装入の間、メディカルインプラント14は、後述するように、バックル部材58の突出した近位端に結合されている(さらに結合部分上方に配置されたカラー36によって所定位置に保持されている)カプラ32のフィンガ34が併設されていることにより、さらには、複数のアクチュエータ部材50とポスト部材76とを共締めするピン部材26により、装入システム12の遠位端に保持されている。メディカルインプラント14が目標部位又は対象領域に進入したとき、装入システム12は、メディカルインプラント14を露出するために引き抜かれ、つまり後退する(即ちメディカルインプラント14は、装入システム12に対し、遠位側に相対進入する)。次いで、ポスト部材76を引っ張ってバックル部材58と結合するために複数のアンカ部材としての編組40を近位側に後退させることにより、メディカルインプラント14及びアンカ部材としての編組40の少なくともいずれか一方を軸方向に短く、或いは半径方向に拡張して「ロック」し、アンカ部材としての編組40を「装入」姿勢から、(例えば、図1に示すように)拡張された「配備」姿勢にするために、複数のアクチュエータ部材50が使用可能である。最後に、ピン部材26が取り外され、それによって複数のアクチュエータ部材50をポスト部材76から離脱し、複数のアクチュエータ部材50とカプラ32のフィンガ34とがメディカルインプラント14から引き抜かれるのを許容し、しかして目標部位又は対象領域で「解放」姿勢にあるメディカルインプラント14(及びアンカ部材としての編組40の少なくともいずれか一方)を配備する。換言すれば、「配備」姿勢と「解放」姿勢との1つの違いは、ピン部材26がポスト部材76に取り付けられているか否かである。「配備」姿勢において、ピン部材26は、依然ポスト部材76に取り付けられており、そのため、さらに後述するように、例えばメディカルインプラント14を再配置するために、複数のアクチュエータ部材50が遠位側へ進入することによってメディカルインプラント14(アンカ部材としての編組40の少なくともいずれか一方)がロック解除されるのを許容する。いくつかの実施形態において、複数の弁小葉16の少なくとも一部は、アンカ部材としての編組40の中心長手軸に沿う共通の位置で、少なくともバックル部材58の一部と軸方向、即ち長手方向にオーバラップし、いくつかの実施形態において、メディカルインプラント14の全体的な長さ、即ち高さをより短くすることを可能にする。
【0044】
図2図3は、バックル部材58の一例を示している。バックル部材58は、近位端と、この近位端に対向して配置された遠位端60とを含んでいる。いくつかの実施形態において、バックル部材58は、近位端から遠位端60まで延びる後壁64を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、バックル部材58は、軸方向に延びる2つの側壁62を含んでいてもよく、これら2つの側壁62は、バックル部材58が当該側壁62に取り付けられている時に、半径方向内方の中心長手軸に向かい、後壁64から離反して延びるものである。いくつかの実施形態において、後壁64は、当該後壁64が2つの側壁62に対して相対的にメディカルインプラント14の中心長手軸から半径方向に離間して配置されるように、アンカ部材としての編組40の半径方向内面にぴったりと接合するように構成される。いくつかの実施形態において、後壁64は、管状のアンカ部材としての編組40の内面に密着して接合するように構成された湾曲した外面を含んでいてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態において、軸方向に延びる2つの側壁62は、第1の側壁62と第2の側壁62とを含んでいる。いくつかの実施形態において、各側壁62は、当該側壁62の上部から延びて後壁64と離間する上部フランジ61を含んでおり、この上部フランジ61は、後壁64に直角にバックル部材58(又は中心長手軸)を通る中心平面に向かって互いに内向きに延びている。少なくともいくつかの実施形態において、上部フランジ61は、略後壁64及び後壁64の内面の少なくともいずれか一方に対し平行に指向している。
【0046】
いくつかの実施形態において、バックル部材58は、軸方向に延びる2つの側壁62のうちの少なくとも1つに穿孔された受部74を含んでいる。いくつかの実施形態において、受部74は、少なくとも2つの側壁62の一方を貫通する小孔(aperture)、開口(opening)、即ち孔(hole)である。いくつかの実施形態において、受部74は、後壁64を下向きにし、側壁62を上向きにして遠位端60側から見て左側の側壁62に設けられる。いくつかの実施形態において、受部74は、後壁64を下向きにし、側壁62を上向きにして遠位端60側から見て右側の側壁62に設けられる。いくつかの実施形態において、軸方向に延びる2つの側壁62のそれぞれに受部74を形成してもよい。より詳細に後述するように、受部74は、バックル部材58に対するポスト部材76の相対移動を規制するようにポスト部材76のラッチ部80を係止させるように構成されている。少なくともいくつかの実施形態において、ラッチ部80は、受部74内に収容されてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態において、後壁64は、2つの側壁62、後壁64、及び上部フランジ61の少なくともいずれか1つが、バックル部材58を通って軸方向に延びるチャネル70を形成するように、2つの側壁62の間に延びる。いくつかの実施形態において、バックル部材58又はチャネル70は、2つの側壁62のうちの1つに沿って軸方向に貫通するスロット72(例えば、略D字形スロット)を含んでいる。いくつかの実施形態において、スロット72は、後壁64を下向きにし、側壁62を上向きにして、遠位端60から見たときに左側の側壁62に沿って貫通していてもよい。いくつかの実施形態において、スロット72は、チャネル70と少なくとも一部が一致していてもよい。本実施形態では、D字形スロット72は例示的なものに過ぎず、他の適切な形状又はキーイング機構を適宜使用してもよい。いくつかの実施形態において、後壁64は、当該後壁64に形成され、2つの側壁62の間に配置された1つ以上の小孔66を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、締付要素96(例えば、縫合糸、糸、ワイヤ、フィラメント等)を1つ以上の小孔66に通し、バックル部材58をアンカ部材としての編組40に固定してもよい。いくつかの実施形態において、後壁64は、1つ以上の小孔66の一部若しくは全部又はバックル部材58の遠位端と連通する凹部68を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、締付要素96は、ポスト部材76がチャネル70又はスロット72内に配置されているときには、凹部68を通ってバックル部材58から離反する方向に延びていてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態において、バックル部材58は、概ね剛性を有している。いくつかの実施形態において、バックル部材58は、金属材料、ポリマ材料、セラミック材料、複合材料、又は他の適切な材料又はそれらの組み合わせから形成されてもよい。いくつかの実施形態において、バックル部材58は、部分的に剛性を有しているか、或いは部分的に可撓性を有していてもよい。いくつかの実施形態において、バックル部材58は、アクチュエータ部材50及びポスト部材76の少なくともいずれか一方が、チャネル70及びスロット72の少なくともいずれか一方に対し、摺動可能に受け入れられるか、又は軸方向沿いに軸方向に変位(translate)することを許容する。いくつかの実施形態において、バックル部材58は、アクチュエータ部材50及びポスト部材76の少なくともいずれか一方が、アンカ部材としての編組40の中心長手軸に向かって半径方向内向きにバックル部材58から離脱することを規制し、それによってアクチュエータ部材50及びポスト部材76が軸方向の運動を軸方向変位に制限するようにしてもよい。
【0049】
図4から図7は、ポスト部材76の一例を図示している。いくつかの実施形態において、ポスト部材76は、近位端及び遠位端86を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、ポスト部材76は、本体部78と、本体部78から横方向に離反して延びるラッチ部80とを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、ラッチ部80は、本体部78から遠位方向に向かって半径方向及び円周方向の少なくともいずれか一方に傾斜した少なくとも1つの支持部を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、ラッチ部80は、本体部78から第1の方向に離間して傾斜した第1の支持部と、本体部78に対して第1の方向とは反対の第2の方向に本体部78から離間して傾斜した第2の支持部とを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、ラッチ部80は、本体部78から離反するように弾性的、即ち自己付勢されていてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態において、ポスト部材76は、遠位端86に可撓性のあるヒンジ部82によって接続された片持ち状の脚部84を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、片持ち状の脚部84は、ヒンジ部82、即ち遠位端86から近位側へ延び、当該片持ち状の脚部84の自由端を、本体部78とラッチ部80の少なくともいずれか一方から(アンカ部材としての編組40に対して)半径方向内側に配置させている。いくつかの実施形態において、自由端は、ラッチ部80の近位側に配置されてもよい。いくつかの実施形態において、自由端は、遠位端86又はヒンジ部82の少なくともいずれか一方の近位側に配置されてもよい。
【0051】
いくつかの実施形態において、ヒンジ部82は、曲率半径を有しており、或いは含んでいてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、曲率半径は、0ミリメートルから3ミリメートルまでであってもよい。いくつかの実施形態において、曲率半径は、0ミリメートルから3ミリメートルまでの内部曲率半径であってもよい。いくつかの実施形態において、曲率半径は、0ミリメートルから3ミリメートルまでの外側曲率半径であってもよい。他の構成及び曲率半径も考えられる。いくつかの実施形態において、ヒンジ部82は、本体部78と片持ち状の脚部84とが互いに鋭角に配置されるように構成されていてもよい。いくつかの実施形態において、鋭角は、約0°から約90°の間、約3°から約60°の間、約5°から約45°の間、約8°から約30°の間、約10°から約20°の間、約12°から約16°、約14°又は別の適切な角度の間としてもよい。いくつかの実施形態において、ヒンジ部82は、片持ち状の脚部84をポスト部材76の本体部78に弾性的に取り付けている。いくつかの実施形態において、片持ち状の脚部84の少なくとも一部は、「配備」姿勢にあるアンカ部材としての編組40の中心長手軸に沿ってバックル部材58と重なり合っていてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、片持ち状の脚部84は、自由端と、固定端とを含んでおり、片持ち状の脚部84は、固定端のところでポスト部材76の本体部78に取り付けられており、固定端は、ヒンジ部82に直接接続されている。いくつかの実施形態において、片持ち状の脚部84の自由端は、片持ち状の脚部84自身と複数の弁小葉16との少なくともいずれか一方を除き、メディカルインプラント14のいずれの構造体にも取り付けられていない(即ち、直接取り付けられない)。換言すれば、いくつかの実施形態において、自由端は、メディカルインプラント14のいずれの構造体(即ち、バックル部材58、アンカ部材としての編組40)にも機構にも直接的には取り付けられていない。いくつかの実施形態において、少なくともヒンジ部82のある実施形態、又はヒンジ部82を含む実施形態におけるポスト部材76の最遠位端は、例えば、縫合糸、フィラメント、ワイヤ、又は他の適切な手段といった締付要素によって、アンカ部材としての編組40の遠位端に固定されてもよい。その場合には、ポスト部材76が近位側に引っ張られてバックル部材58と固定すると、アンカ部材としての編組40の遠位端もまた、バックル部材58に対して相対的に近位側に引っ張られ、「装入」姿勢から「配備」姿勢に変わる。
【0053】
少なくともいくつかの実施形態において、複数の弁小葉16のうちの1つ以上が(複数の)片持ち状の脚部84に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態において、片持ち状の脚部84に複数の弁小葉16を取り付けることにより、複数の弁小葉16にとアンカ部材としての編組40との間に柔軟性やストレス低減をもたらす。いくつかの実施形態において、複数の弁小葉16を(複数の)片持ち状の脚部84に直接固定してもよい。いくつかの実施形態において、複数の弁小葉16は、ポスト部材76の本体部78には直接固定されておらず、(複数の)片持ち状の脚部84を介してポスト部材76の本体部78に固定されていてもよい。いくつかの実施形態において、複数の弁小葉16は、少なくとも(複数の)片持ち状の脚部84の一部の周囲を包み込まれていてもよい。いくつかの実施形態において、複数の弁小葉16の最遠位端は、アンカ部材としての編組40の遠位端に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態において、複数の弁小葉16は、縫合糸、糸、ワイヤ、フィラメント、又は他の適切な要素の1つ以上を用いることにより、(片持ち状の脚部84に、アンカ部材としての編組40に、及び複数の弁小葉16自身に)取り付けられ又は固定される。いくつかの実施形態において、複数の弁小葉16は、固着剤、接着剤、又は他の適切な固定手段を用いることにより、(片持ち状の脚部84に、アンカ部材としての編組40に、又は複数の弁小葉16自身に)取り付けられ又は固定される。いくつかの実施形態において、複数の弁小葉16は、布、織物、又は他の薄い可撓性材料を使用することにより、(片持ち状の脚部84に、アンカ部材としての編組40に、又は弁小葉16自身に折り返されて)取り付けられ又は固定される。
【0054】
いくつかの実施形態において、ポスト部材76は、本体部78からアンカ部材としての編組40の中心長手軸に向かって延びる取付部88を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、取付部88は、当該取付部88を横方向に貫通する取付点としての孔90と、当該取付部88の反本体部78側端部のところから本体部78又はアンカ部材としての編組40の方へ略180°折り返されているフック部92とを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、取付部88、換言すれば取付点としての孔90をラッチ部80の近位側に配置することができる。いくつかの実施形態において、本体部78は、例えば、縫合糸といった締付要素を使用することによってポスト部材76をアンカ部材としての編組40に固定するための1つ以上の小孔ないし孔を含んでいてもよい。
【0055】
いくつかの実施形態において、ラッチ部80は、ポスト部材76がバック部材58から遠位側へ遠ざかる動作を規制するように、バックル部材58の受部74に係止するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態において、ポスト部材76の少なくとも一部は可撓性を有している。いくつかの実施形態において、ラッチ部80は、本体部78に対して相対移動可能であってもよい。いくつかの実施形態において、ラッチ部80は、当該ラッチ部80の遠位端が本体部78に対し横方向に相対変位可能な状態で、ラッチ部80の近位端から本体部78に対し相対的に揺動可能であってもよい。いくつかの実施形態において、ラッチ部80は、本体部78及びアンカ部材としての編組40に対して円周方向に相対変位可能であってもよい。いくつかの実施形態において、ラッチ部80の中心長手軸の円周方向の変位又は受部74からの離反により、ラッチ部80が、受部74から離脱するようにしてもよい。いくつかの実施形態において、片持ち状の脚部84は、本体部78に対し、ヒンジ部82のところで、さらにはヒンジ部82を用いることによって、接離可能であってもよい。
【0056】
いくつかの実施形態において、本体部78は、好ましくは単一品として、又は単一品から、ラッチ部80、ヒンジ部82、片持ち状の脚部84、及び取付部88の少なくともいずれか1つと一体的な部材に形成されている。いくつかの実施形態において、ポスト部材76は、後述するように、単体のワイヤ、フラットストック、又は他の適切な材料から形成することができる。いくつかの実施形態において、ポスト部材76は、機械加工、スタンピング、レーザ切断等のような単一のワイヤ片、フラットストック、又は他の適切な材料をさらに加工することによって形成されていてもよい。本体部78用、ラッチ部80用、ヒンジ部82用、片持ち状の脚部84用、又は取付部88用に適切な、しかし限定的ではないいくつかの材料、例えば金属材料又はポリマ材料のいくつかについては、後述する。
【0057】
図8及び図9は、アクチュエータ部材50の一例を示している。アクチュエータ部材50は、近位端及び遠位端を含んでいる。使用時において、前記近位端は、メディカルインプラント14を「装入」姿勢から「配備」姿勢に変わり、さらに後に「解放」姿勢に変わるために、使用者に操作され、或いは駆動される。いくつかの実施形態において、アクチュエータ部材50は、長尺ロッド52、例えば遠位端から見て一方の側壁が平坦面を有するD字形のD字形長尺ロッド52を含んでおり、前記長尺ロッド52は、一方の側壁が平らな「D」形状を有している(或いは、例えば、図9に示すように、近位端から見て、長尺ロッド52は、右側に平坦面を有する逆「D」の外観を有している)。いくつかの実施形態において、長尺ロッド52は、傾斜した、又はテーパ状の遠位端を含んでいてもよい。
【0058】
いくつかの実施形態において、アクチュエータ部材50、換言すれば長尺ロッド52は、概ね多角形(即ち、両面、3面、4面、5面、6面等)の形状であってもよい。規則的な又は不規則的な他の形状も想定される。いくつかの実施形態において、アクチュエータ部材50は、後述するように、単体のワイヤ、円形ストック、又は他の適切な材料から形成してもよい。いくつかの実施形態において、アクチュエータ部材50は、機械加工、スタンピング、レーザ切断等のような単一のワイヤ片、フラットストック、又は他の適切な材料をさらに加工することによって形成されていてもよい。いくつかの実施形態において、アクチュエータ部材50は、当該アクチュエータ部材50がバックル部材58に組み付けられた際、バックル部材58に対し相対的に回動することを規制(即ち回動不能に)されていてもよい。いくつかの実施形態において、アクチュエータ部材50がポスト部材76に結合されているとき、アクチュエータ部材50は、ポスト部材76に対して相対的に移動可能であってもよい。
【0059】
アクチュエータ部材50の遠位部は、バックル部材58のチャネル70、スロット72を貫通する。長尺ロッド52の平坦面は、バックル部材58の側壁62に対し、摺動可能に嵌合し、結合されている。長尺部材52の平坦面は、後面64を下向きにし、側面を上向きにして遠位端60から見たときに、バックル部材58の左側壁62と摺動可能に嵌合し、結合されている。アクチュエータ部材50は、バックル部材58に対して軸方向に変位可能であってもよい。
【0060】
いくつかの実施形態において、アクチュエータ部材50は、アクチュエータ部材50の遠位部分に固定的に取り付けられ、延長された取付部54を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、取付部54は、平坦に形成され、長尺ロッド52から前記平坦面と略平行な方向に延びている。いくつかの実施形態において、平坦な取付部54は、当該取付部54を横向きに貫通して長手方向に指向する長孔スロット56を有していてもよい。いくつかの実施形態において、アクチュエータ部材50がバックル部材58のチャネル70、スロット72を貫通している際、平坦な取付部54は、バックル部材58の2つの側壁62から延びる上部フランジ61の間の中心長手軸に向かって半径方向内向きに延びることが可能である。アクチュエータ部材50用、長尺ロッド52用、及び取付部54用の少なくともいずれか1つについて、いくつかの適切な、しかし限定的ではない材料、例えば金属材料又はポリマ材料のいくつかについては、後述する。
【0061】
いくつかの実施形態において、アクチュエータ部材50は、取付点としての孔90のところでポスト部材76に離脱可能に接続されている。いくつかの実施形態において、アクチュエータ部材50の取付部54は、ポスト部材76の取付部88に摺動可能に嵌合し、結合されている。いくつかの実施形態において、長孔スロット56は、取付点としての孔90と芯合わせされてもよい。いくつかの実施形態において、心臓弁ロック機構は、図10から図21に示すように、アクチュエータ部材50の平らな取付部54に形成された長孔スロット56と、ポスト部材76の取付部88の取付点としての孔90とに挿通し、離脱可能に結合されているピン部材26を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、フック部92及び取付部88の少なくともいずれか一方は、取付部54と嵌合結合しており、アクチュエータ部材50とポスト部材76との間で相対回転を規制するように構成されている。
【0062】
いくつかの実施形態において、ピン部材26は、直線状の遠位部28と、遠位部28の遠位端に設けられて巻回状の遠位先端部30とを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、巻回状の遠位先端部30は、アクチュエータ部材50の平らな取付部54に形成された長孔スロット56と、ポスト部材76の取付部88に設けられた取付点としての孔90とに挿通している。いくつかの実施形態において、ピン部材26は、遠位部28から巻回状の遠位先端部30にわたって単一方向に湾曲し、略円形の環状ループを形成している。換言すれば、ピン部材26は、遠位部28から巻回状の遠位先端部30にわたって、Sカーブ、又は正弦波形状といった多重の屈曲、湾曲、又は向きの変更を要しない。遠位部28から巻回状の遠位先端部30にわたって単一方向に曲成されていることは、多重の屈曲、湾曲、又は向きの変更を有するピン部材と比較して、より低減された引っ張り力を用いて伸長することを容易にし、許容する。
【0063】
図10から図24は、「配備」姿勢にあるメディカルインプラント14(及びアンカ部材としての編組40の少なくともいずれか一方)をロックするロック機構の選択された構成要素の関連性及び動作を示す。簡略化及び明瞭化のために、カプラ32のフィンガ34のうちの1つのみ、複数のアクチュエータ部材50のうちの1つのみ、ポスト部材76の1つのみ、バックル部材58の1つのみ、カラー36の1つのみ、ピン部材26のうちの1つのみが図示され、説明される(メディカルインプラント14及びアンカ部材としての編組40の全体は、ロック機構の理解を容易にするために示されていない)。しかしながら、以下の説明は、メディカルインプラント14内における2つ以上の要素(即ち、複数のアクチュエータ部材50、バックル部材58、ポスト部材76、ピン部材26等)のいずれか又は全ての要素についても等しく適用可能である。
【0064】
図21から図24に示されるように、各アクチュエータ部材50は、フィンガ34をバックル部材58に結合し、ロックしているカラー36と、バックル部材58と、ポスト部材76とを経由して、カプラ32のフィンガ34に近接し、覆っているガイド38を貫通している。アクチュエータ部材50は、バックル部材58を介して軸方向に変位可能である。いくつかの実施形態において、アクチュエータ部材50は、ポスト部材76を貫通して長手方向に延びるチャネル70及びスロット72(例えば、D形スロット)に対し摺動可能且つ回動不能に嵌合するように構成されたキー溝構造(例えば平坦面)を含んでいてもよい。
【0065】
ここで図10から図20を参照して、アクチュエータ部材50の遠位端は、ポスト部材76の取付部88を介し、取付点としての孔90と芯合わせ可能な長手方向に指向する長孔スロット56を含んでいる。そのように芯合わせされた際、ピン部材26は、アクチュエータ部材50の取付点としての孔90及び長孔スロット56を通ってループを形成可能である。このことは、アクチュエータ部材50をポスト部材76に離脱可能に結合又は装着し、さらには、メディカルインプラント14を装入している間に利用することのできるこれら構造物の構成を形成する。ポスト部材76の近位端とバックル部材58の遠位端とは、(例えば、図10に示すように)長手方向に分離され、このようにして、メディカルインプラント14は、患者の解剖学的構造を経由して関心領域及び目標部位に経皮的移行するのに適した、細長の概ね薄型の「装入」姿勢とされる。
【0066】
メディカルインプラント14が解剖学的構造内の意図された目標部位又は関心領域に到達すると、臨床医は、アクチュエータ部材50を近位側に後退し、それによってアンカ部材としての編組40を「配備」姿勢にするべく軸方向に短縮し又は半径方向に拡張するために、ポスト部材76の近位端をバックル部材の遠位端60に向けて移動する。アクチュエータ部材50を近位側に後退、即ち引くと、図10から図16に示すように、ポスト部材76の取付部88の取付点としての孔90を貫通して位置合わせされたピン部材26は、長孔スロット56の遠位端に位置することになる。最終的には、アクチュエータ部材50は、ポスト部材76のラッチ部80をバックル部材58の受部74に係止するのに十分な長さだけ後退可能であり、それによって、解剖学的構造内の移植に適した「拡張」姿勢に(例えば、図15から図16及び図21に示すように)あるメディカルインプラント14をロックするように、アンカ部材としての編組40からの反力といったバックル部材58に対するポスト部材76の遠位側への相対移動を規制する。換言すれば、いくつかの実施形態において、近位方向においてバックル部材58に対し相対的なアクチュエータ部材50(従って、アクチュエータ部材50と離脱可能に接続されたポスト部材76)の近位側への軸方向変位は、取付点としての孔90をバックル部材58の遠位にある第1の位置から、アンカ部材としての編組40を「装入」姿勢から「配備」姿勢に作動させることができる、バックル部材58の遠位端60の近位側の第2の位置に移動する。
【0067】
しかしながら、この時点では、アクチュエータ部材50がポスト部材76に依然として結合されているため、メディカルインプラント14を「ロック解除」するためにアクチュエータ部材50を遠位側に付勢することが可能であり、これによって、メディカルインプラント14の再配置又は後退を許容する。図17から図20に示すように、アクチュエータ部材50が遠位側に付勢された場合、アクチュエータ部材50は、ポスト部材76とバックル部材58の左側壁62との間を通過して、ポスト部材76の取付部88に形成された取付点としての孔90を挿通するピン部材26を長孔スロット56の遠位端の近位に位置合わせするように、ポスト部材76及びバックル部材58に対して遠位側に変位する。このアクチュエータ部材50の遠位側への変位は、傾斜した又はテーパ状の遠位端のような長尺ロッド52の一部が、ラッチ部80と当接し、結合される。少なくともいくつかの実施形態において、取付部54が遠位側に延びている長尺ロッド52の一部は、アクチュエータ部材50が遠位側に進行した際、ラッチ部80を受部74から離脱するために受部74から中心長手軸周りにラッチ部80を円周方向に変位させ、又は受部74から離反させる機能を奏するように構成されている。
【0068】
図19に示すように、アクチュエータ部材50及び長尺ロッド52がラッチ部80を受部74から外すために十分に遠位側へ軸方向に変位した後、ピン部材26は、長孔スロット56の近位端に位置合わせされる。一旦、ピン部材26が長孔スロット56の近位端に位置合わせされると、図20に示すように、ポスト部材76はバックル部材58に対してアクチュエータ部材50と共に遠位側に移動することができる。換言すれば、アクチュエータ部材50の遠位側への軸方向変位は、アンカ部材としての編組40を「配備」姿勢からロック解除する。長孔スロット56の近位端に位置合わせされたピン部材26により、アクチュエータ部材50のさらなる遠位側への押圧は、ピン部材26によって結合されたアクチュエータ部材50とポスト部材76とのバックル部材58に対する遠位側への相対変位をもたらし、それによってアンカ部材としての編組40を「配備」姿勢から「装入」姿勢に作動させる。
【0069】
これとは別に、図22に示すように、(例えば、適切な撮像技術によるメディカルインプラント14の可視化後に)臨床医がメディカルインプラント14の位置合わせやロックに満足する場合、ポスト部材76からアクチュエータ部材50の結合を解いて離脱するため、ピン部材26が引き抜かれ(例えば、ポスト部材76の取付部88の取付点としての孔90及びアクチュエータ部材50の取付部54の長孔スロット56から取り外され)、それによって、アクチュエータ部材50がポスト部材76から近位側に後退することを許容する。
【0070】
アクチュエータ部材50のさらなる後退は、当該アクチュエータ部材50の取付部54がカラー36に結合される原因となり、アクチュエータ部材50がさらに後退するほど、カラー36がカプラ32のフィンガ34に沿って近位側にスライドする原因となる。そうすると、カプラ32のフィンガ34の溝が形成されたフォーク状端部が露出し、図23に示すように、バックル部材58の近位端に設けられ、前記溝に嵌合するように構成された突起を有するレールから離脱可能となる。図24に示すように、フォーク状端部がレールから離脱した後における、少なくとも1つのアクチュエータ部材50のさらなる後退は、カプラ32のフィンガ34とメディカルインプラント14とがロック機構から近位側に後退する原因となり、それによって、メディカルインプラント14を目標部位に残留し、「解放」姿勢にする。
【0071】
ここに開示されるメディカルインプラントシステム10(及びここに開示される他のシステム)並びに当該システムの様々な構成要素に使用可能な材料は、医療装置に一般的に関連する材料を含んでいてもよい。説明を簡単にする目的のために、以下の説明では、装入システム12及びメディカルインプラント14の少なくともいずれか一方を参照する。しかしながら、これは、本明細書に記載された装置及び方法を限定することを意図したものではない、というのは、限定するものではないが、アンカ部材としての編組40、アクチュエータ部材50、ポスト部材76、バックル部材58、ピン部材26、及びそれらの要素の少なくともいずれか1つ、又は構成要素といった、本明細書に記載された他の要素、部材、構成部品、装置についても適用し得るものだからである。
【0072】
いくつかの実施形態において、装入システム12及びメディカルインプラント14のいずれか1つ並びにその構成要素のいずれか1つは、金属、金属合金、ポリマ(そのいくつかの例は後述する)、金属−ポリマ複合材料、セラミック、それらの複合材料等、又は他の適切な材料で形成されている。適切な金属及び金属合金のいくつかの例としては、304V,304L,316LVステンレス鋼等のステンレス鋼、軟鋼、線形弾性及び超弾性ニチノールの少なくともいずれか一方等のニッケル−チタン合金、他のニッケル合金であって、例えば、ニッケル−クロム−モリブデン合金(例えば、INCONEL(登録商標)625等のUNS:N06625、HASTELLOY(登録商標)C−22(登録商標)等のUNS:N06022、HASTELLOY(登録商標)C276(登録商標)、他のHASTELLOY(登録商標)合金等)、ニッケル−銅合金(例えば、MONEL(登録商標)400、NICKELVAC(登録商標)400、NICORROS(登録商標)400等のUNS:N04400等)、ニッケル−コバルト−クロム−モリブデン合金(例えば、MP35−N(登録商標)等のUNS:R30035等)、ニッケル−モリブデン合金(例えば、HASTELLOY(登録商標)ALLOY B2(登録商標)のようなUNS:N10665)、他のニッケル−クロム合金、他のニッケル−モリブデン合金、他のニッケル−コバルト合金、他のニッケル−鉄合金、他のニッケル−銅合金、他のニッケル−タングステン又はタングステン合金等の他のニッケル合金、コバルト−クロム合金、コバルト−クロム−モリブデン合金(例えば、ELGILOY(登録商標)、PHYNOX(登録商標)等のUNS:R30003)、白金富化ステンレス鋼、チタン、それらの複合材料等、又はあらゆる他の適切な材料を含んでいる。
【0073】
本明細書で言及されるように、入手可能な族の範囲内において、ニッケル−チタン又はニチノール合金は、「線形弾性」又は「非超弾性」と呼ばれるカテゴリであり、化学上は従来の形状記憶及び超弾性品種と類似するものではあるが、ある明確で有用な機械的特性を示し得る。線形弾性又は非超弾性ニチノールは、超弾性ニチノールが示す実質的な「超弾性プラト」又は「フラグ領域」を応力/歪み曲線に示さない点において、超弾性ニチノールとは区別される。反対に、線形弾性又は非超弾性ニチノールは、回復可能な歪みが増加するにつれて、応力は、完全に線形な関係になるのではないにせよ、塑性変形が始まるまで、或いは、少なくとも超弾性ニチノールに見られるフラグ領域よりも線形となる関係になるまで、略線形に増え続ける。従って、本発明の目的のために、線形弾性又は非超弾性ニチノールは、「実質的に」線形弾性又は非超弾性ニチノールと呼ぶこともできる。
【0074】
いくつかの事例において、線形弾性又は非超弾性ニチノールは、超弾性ニチノールが塑性変形する前に約8%の歪みを受け入れるものであるのに対し、線形弾性又は非超弾性ニチノールが(例えば、塑性変形する前に)実質的に弾性を維持しながら約2%から5%までの歪みを受け入れる点で、超弾性ニチノールと区別可能である、両材料は、塑性変形する前に約0.2%から0.44%の歪みしか受け入れることができない(組成に基づいて区別可能な)ステンレス鋼といった他の線形弾性材料と区別することができる。
【0075】
いくつかの実施形態において、線形弾性又は非超弾性ニッケル−チタン合金は、広い温度範囲にわたって、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)及び動的金属熱分析(DMTA:Dynamic Metal Thermal Analysis)分析によって検出可能なマルテンサイト/オーステナイト相変化を示さない合金である。例えば、いくつかの実施形態において、線形弾性又は非超弾性のニッケル−チタン合金は、約−60℃から約120℃の範囲のDSC及びDMTA分析によって検出可能なマルテンサイト/オーステナイト相の変化はない。従って、このような材料の機械的曲げ特性は、この非常に広い温度範囲にわたって温度の影響に対して一般に不活性である。いくつかの実施形態において、周囲温度、即ち室温における線形弾性又は非超弾性ニッケル−チタン合金の機械的曲げ特性は、例えば、超弾性プラト及びフラグ領域の少なくともいずれか一方を示すことがない点で、体温における機械的特性と実質的に同じである。換言すれば、広い温度範囲にわたって、線形弾性又は非超弾性ニッケル−チタン合金は、その線形弾性特性及び非超弾性特性の少なくともいずれか一方を維持する。
【0076】
いくつかの実施形態において、線形弾性又は非超弾性ニッケル−チタン合金は、約50重量%から約60重量%までの範囲のニッケルであり、残りは略チタンである。いくつかの実施形態において、組成物は約54重量%から約57重量%の範囲にあるニッケルである。適切なニッケル−チタン合金の一例は、神奈川県の古河テクノマテリアル社から市販されているFHP−NT合金である。他の適切な材料は、ULTANIUM(商標)(Neo−Metricsから入手可能)及びGUM METAL(商標)(トヨタ社から入手可能)を含んでいてもよい。いくつかの他の実施形態において、超弾性合金、例えば超弾性ニチノールを使用して所望の特性を達成可能である。
【0077】
少なくともいくつかの実施形態において、装入システム12及びメディカルインプラント14の少なくともいずれか一方、並びにその構成要素の少なくとも一部は、放射線不透過性材料でドープされるか、作製されるか、そうでなければ放射線不透過性材料を含んでいてもよい。放射線不透過性材料は、医療処置中に蛍光透視スクリーン又は他の画像化技術に比較的明るい画像を生成することができる材料であると理解される。この比較的明るい画像は、メディカルインプラントシステム10の使用者がその位置を決定する一助となる。放射線不透過性材料のいくつかの例は、金、白金、パラジウム、タンタル、タングステン合金、放射線不透過性充填剤が充填されたポリマ材料等が含まれるが、これらに限定されるものではない。加えて、他の放射線不透過性マーカバンド及びコイルの少なくともいずれか1つもまた、同じ結果を達成するためにメディカルインプラントシステム10の設計に組み込んでもよい。
【0078】
いくつかの実施形態において、ある程度の磁気共鳴イメージング(MRI)適合性がメディカルインプラントシステム10に与えられる。例えば、装入システム12及びメディカルインプラント14の少なくともいずれか一方、並びにそれらの構成部品の少なくとも一部は、画像を概ね歪ませたり、実質的なアーチファクト(即ち、画像のギャップ)を生じさせたりしない材料から作製される。例えば、特定の強磁性材料は、MRI画像内にアーチファクトを生成する可能性があるため、適切ではない場合がある。装入システム12及びメディカルインプラント14の少なくともいずれか一方、並びにそれらの構成部品の少なくとも一部は、MRI装置が作像可能な材料から作製されてもよい。これらの特性を示す材料としては、例えば、タングステン、コバルト−クロム−モリブデン合金(例えば、ELGILOY(登録商標)、PHYNOX(登録商標)等のUNS:R30003等)、ニッケル−コバルト−クロム−モリブデン合金(例えば、MP35−N(登録商標)等のUNS:R30035)、ニチノール等を含んでいる。
【0079】
シース又はカバー(図示せず)は、メディカルインプラントシステム10の概ね滑らかな外面を呈し得る装入システム12の一部又は全部に配置されていてもよい。しかしながら、他の実施形態において、装入システム12が外面を呈し得るようなシース又はカバーがメディカルインプラントシステム10の一部又は全部に存在していなくてもよい。シースは、ポリマ又は他の適切な材料から作製される。適切なポリマのいくつかの例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリオキシメチレン(POM、例えばデュポン社から入手可能なDELRIN(登録商標))、ポリエーテルブロックエステル、ポリウレタン(例えば、ポリウレタン85A)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテルエステル(例えば、DSMエンジニアリングプラスチックス社から入手可能なARNITEL(登録商標))、エーテル又はエステルベースの共ポリマ(例えば、ブチレン/ポリ(アルキレンエーテル)フタレート及びデュポン社から入手可能なHYTREL(登録商標)等の他のポリエステルエラストの少なくともいずれか一方)、ポリアミド(例えば、バイエル社から入手可能なDURETHAN(登録商標)又はエルフ・アトケム社から入手可能なCRISTAMID(登録商標))、エラストマー性ポリアミド、ブロックポリアミド/エーテル、ポリエーテルブロックアミド(例えば、PEBAX(登録商標)の商品名で入手可能なPEBA)、エチレン酢酸ビニルコポリマ(EVA)、シリコーン、ポリエチレン(PE)、Marlex(登録商標)高密度ポリエチレン、Marlex(登録商標)低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(例えば、REXELL(登録商標))、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(例えばKEVLAR(登録商標))、ポリスルホン、ナイロン、ナイロン−12(EMSアメリカン・グリロン社から入手可能なGRILAMID(登録商標))、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PFA)、エチレンビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリスチレン、エポキシ、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリ(スチレン−b−イソブチレン−b−スチレン)(例えば、SIBS又はSIBS50Aの少なくともいずれか一方)、ポリカーボネート、アイオノマー、生体適合性ポリマ、他の適切な材料、若しくはそれらの混合物、複合物、これらの共ポリマ、ポリマ/金属複合材等を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、シースを液晶ポリマ(LCP)と混合することが可能である。例えば、混合物は、約6%までLCPを含んでいてもよい。
【0080】
いくつかの実施形態において、メディカルインプラントシステム10の外面(例えば、装入システム12の外面を含む)は、サンドブラスト仕上げ、ビーズブラスト仕上げ、重炭酸ナトリウムブラスト仕上げ、電解研磨仕上げ等であってもよい。これらの実施形態において、いくつかの他の実施形態と同様に、コーティング、例えば、潤滑コーティング、親水コーティング、保護コーティング、又は他の種類のコーティングは、シースの一部又は全部にわたって施されていてもよく、或いは、別の実施形態において、シースのない装入システム12の一部に適用してもよい。代替的にシースは、潤滑コーティング、親水コーティング、保護コーティング、又は他のタイプのコーティングを含んでいてもよい。フルオロポリマのような疎水性コーティングは、装置の操作性及び装置の交換を改善する乾式潤滑性を提供する。潤滑コーティングは、操縦性を改善し、病変の交差能力(lesion crossing capability)を改善する。適切な潤滑性ポリマは当該技術分野において周知であり、さらに、シリコーン及び同等材料、又は高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアリーレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシアルキルセルロース、アルギン、サッカライド、カプロラクトン及び同等材料、並びにそれらの混合物及び複合材料が含まれる。複数の親水性ポリマは、適切な潤滑性、結合性、及び可溶性を有するコーティングを生成するために、混合され、或いは水不溶性化合物(いくつかのポリマを含む)に配合されてもよい。
【0081】
コーティング又はシースは、例えば、コーティング加工、押出加工、共押出加工、断続層共押出(ILC:Interrupted Layer Co−Extrusion)加工、又はいくつかのセグメントをエンド・ツー・エンドに融合する工法によって形成してもよい。当該層は、均一な剛性を有していてもよく、或いは、その近位端から遠位端にかけて剛性が漸減するものであってもよい。剛性の漸減は、ILCのように連続的であってもよく、或いは、分離した押出管状セグメントを融合させる工法のように段階的であってもよい。外側層は、放射線写真の視覚化を容易にするために放射線不透過性充填材料を含浸したものであってもよい。当業者であれば、これらの材料は本発明の範囲から逸脱することなく広範に変更可能であることを認識するであろう。
【0082】
本開示は、多くの点で例示的なものに過ぎないことを理解されたい。本発明の範囲を逸脱することなく、形状、寸法、及び工程の順序に関する事項について、詳細に変更可能である。このことは、それが適切である限り、他の実施形態で使用される1つの例示的な実施形態の特徴のいずれかの使用を含んでいてもよい。本発明の範囲は、もちろん、添付の特許請求の範囲が表現される用語で定義される。
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