(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の液圧プレス機のようにロッドに挿入孔を設ける場合、被成形物の成形時等にロッドに作用する大荷重に耐えられるようにするために、ロッドを大型化する必要がある。このため、ロッドを駆動させるためのメインシリンダ等も大型化する傾向にある。上述したような液圧プレス機では、作業効率を維持しつつ、ロッド及びメインシリンダ等をコンパクト化することが求められている。
【0005】
本発明は、ピストンを有する型締力発生部のコンパクト化を実現できる成形装置及び成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る成形装置は、対となる金型同士を型閉じして被成形物を成形する成形装置であって、対となる金型のうち一方の金型が装着され、他方の金型に向かう方向である進退方向へ進退可能なスライドと、作動油が供給されることで進退方向へ移動可能なピストンを有し、型締力を発生させる型締力発生部と、スライドを進退方向に進退させるスライド駆動部と、スライドに型締力発生部からの型締力を伝達する型締力伝達部と、を備え、スライドは、ピストンが挿通可能な孔部を有し、型締力伝達部は、孔部を覆ってピストンが孔部に進入することを妨げる第1位置と、第1位置から退避してピストンが孔部に進入することを許容する第2位置と、の間を移動可能であり、第1位置に位置するときにピストンからの型締力をスライドへ伝達する力伝達体と、力伝達体を移動させる力伝達体駆動部と、を有する。
【0007】
この成形装置によれば、進退方向へ進退可能なピストンは、スライドに設けられる孔部に挿通可能になっている。これにより、スライドをピストンの先端よりもその基端側へ退避させる際に、従来技術のようなピストンにロッドが挿入される孔等を設けなくともよい。したがって、ピストンは、必要な型締力を発生させる断面積を超えて大きくなることを防止できる。また、上記成形装置は、孔部を覆ってピストンが当該孔部に進入することを妨げる第1位置に位置するときに、ピストンからの型締力をスライドに伝達する力伝達体を有する型締力伝達部を備えている。これにより、金型の型締を行う際に、力伝達体が第1位置に位置することによって、ピストンからの型締力を力伝達体及びスライドを介して金型に良好に伝達できる。加えて、型締力伝達部を用いることによって、ピストンの移動量を低減できるので、型締力発生部における作動油が供給される部分も小型化できる。すなわち、ピストンを有する型締力発生部のコンパクト化を実現できる。
【0008】
ここで、スライド駆動部によりスライドが進退する際、孔部にてピストンはスライドに対して摺動可能であってもよい。この場合、スライドとピストンとを独立して進退させることができる。
【0009】
また、上記成形装置は、型締力発生部及びスライド駆動部のそれぞれの駆動を制御する制御部を更に備え、制御部は、スライドが進退方向へ進行するようにスライド駆動部を制御した後、ピストンが進退方向へ進行するように型締力発生部を制御してもよい。このような制御部の制御によって、スライドとピストンとを独立して進退させることができる。このため、制御部は、スライド駆動部によってスライドを高速駆動するように制御する一方で、スライドに高い型締力を与えるようにピストンの駆動を制御することができる。これにより、成形装置における1回の成形サイクルにおいて、サイクルタイムの短縮と、高い型締力の発生との両立が可能になる。
【0010】
また、型締力伝達部は、進退方向と直交する直交方向に進退制御されてもよい。この場合、ピストン及びスライドの進退方向と、型締力伝達部の進退方向とが互いに直交している。これにより、例えばスライドが下降した後、ピストンとスライドとの間の第1位置に型締力伝達部を容易に進行させることができる。
【0011】
また、スライド駆動部は、作動油が供給されることでサブピストンが進退する1又は複数の油圧式ピストンシリンダを有し、サブピストンの断面積の合計値は、ピストンの断面積よりも小さくてもよい。この場合、サブピストンは、ピストンと比較して大きな圧力をスライドに加えることはできないものの、ピストンと比較して高速で駆動することができる。このため、スライド駆動部は、スライドを高速で駆動させることができる。加えて、ピストンは、サブピストンと比較して低速で駆動するものの、サブピストンと比較して大きな圧力を力伝達体及びスライド等に加えることができる。したがって、成形装置における1回の成形サイクルにおいて、スライド駆動部によるスライドの高速駆動に起因したサイクルタイムの短縮と、ピストンの駆動に起因した高い型締力の発生との両立が可能になる。
【0012】
また、対となる金型同士を型閉じして、対となる金型の間に配置された被成形物を膨張成形してもよい。例えば、上記成形装置が鍛造成形を行う場合、金型と被成形物とが接触することによって成形抵抗が生じ、この成形抵抗に打ち勝って金型同士を合わせるため、ピストンにて金型を加圧する必要がある。このため、上記成形装置が被成形物を鍛造成形する場合、ピストンもある程度の距離を進行しなければならず、当該ピストンのストロークの距離を確保する必要がある。これに対して、成形装置が被成形物を膨張成形する場合、ピストンは、一方の金型(もしくはスライド)が下降しきった状態あるいは下降しきる直前から、力伝達体等を介して当該金型を加圧すればよい。この場合、ピストンのストロークの距離は、鍛造成形等よりも短くてよく、当該ピストンのストロークに要する時間を短縮できる。したがって、上記成形装置を用いた膨張成形によれば、ピストンを有する型締力発生部をさらにコンパクト化できると共に、成形時間を短縮できる。
【0013】
また、本発明の一形態に係る成形方法は、スライドに設けられる孔部に型締力発生部のピストンを挿通させ、ピストンがスライドの孔部外に位置するように、スライドを金型同士が合わさる方向へ進行させ、スライドとピストンとの間であってピストンが孔部に進入することを妨げる位置に型締力伝達部を進行させ、金型同士が合わさる方向へピストンを進行させ、型締力伝達部及びスライドを介して金型同士を型締する。
【0014】
この成形方法によれば、スライドに設けられる孔部に型締力発生部のピストンを挿通させるので、スライドをピストンの先端よりもその基端側へ退避させる際に、従来技術のようにピストンにロッドが挿入される孔等を設けなくともよい。したがって、ピストンは、必要な型締力を発生させる断面積を超えて大きくなることを防止できる。また、ピストンが孔部に進入することを妨げる位置に型締力伝達部を進行させた後、金型同士が合わさる方向へピストンを進行させ、型締力伝達部及びスライドを介して金型同士を型締する。これにより、ピストンからの型締力を型締力伝達部及びスライドを介して金型に良好に伝達できる。加えて、型締力伝達部によって、ピストンの移動量を低減できるので、ピストンを駆動させるための型締力発生部も小型化できる。したがって、ピストンを有する型締力発生部のコンパクト化を実現できる。
【発明の効果】
【0015】
このように本発明によれば、ピストンを有する型締力発生部のコンパクト化を実現できる成形装置及び成形方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による成形装置及び成形方法の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、成形装置の概略構成図である。
図1に示されるように、一対の金型同士を近接させてこれらの金型により被成形物を加圧成形する成形装置1は、下部フレーム2(ベッド)と、上部フレーム3(クラウン)と、下部フレーム2及び上部フレーム3をつなぐ複数の柱状フレーム4(アップライト)と、型締力発生部22(詳細は後述)と、2つのスライド駆動部42(詳細は後述)と、型締力発生部22及びスライド駆動部42の駆動をそれぞれ制御する制御部5とを備えている。下部フレーム2、上部フレーム3、及び柱状フレーム4のそれぞれは、例えば鋼鉄製の部材を組み合わせて構成されている。以下では、柱状フレーム4の延在方向を昇降方向とし、当該昇降方向に直交する方向を水平方向とする。本実施形態では、少なくとも一方の金型を昇降方向に進退させることによって、被成形物を成形する。すなわち、本実施形態では、昇降方向は、上記金型同士が合わさる方向に相当する。
【0019】
下部フレーム2は、下型M1が載置固定されているベッド12(ボルスタ)を備えている。下型M1は、鋼鉄製ブロックで構成されており、その上面に成形空間を形成するための成形面(不図示)を備える。
【0020】
上部フレーム3は、その中央に設けられる型締力発生部22と、上型M2を支持及び駆動する金型駆動部23とを備えている。上型M2は、下型M1と同様の鋼鉄製ブロックで構成されており、その下面に成形空間を形成するための成形面(不図示)を備える。
【0021】
型締力発生部22は、被成形物を成形する際に一対の金型を型開させない型締力を発生する機構であり、油圧シリンダ31と、油圧シリンダ31内を摺動可能であって昇降方向に進退可能なピストン32と、油圧シリンダ31内の油室に作動油を供給する油供給部33とを備えている。
【0022】
油圧シリンダ31は、昇降方向に延在する略筒状の部材であって、その内部に作動油が収容される油室を有している。油圧シリンダ31の内部は、ピストン32の基端部32a(詳細は後述)によって、下側領域31a(
図1参照)と上側領域31b(
図5参照)とに区画されている。下側領域31aと上側領域31bとが、油室を構成する。下側領域31aは、油路34を介して油供給部33に接続されており、上側領域31bは、油路35を介して油供給部33に接続されている。下側領域31a及び上側領域31bに充填される作動油の量は、油供給部33によって制御されている。
【0023】
ピストン32は、油圧シリンダ31内に供給される作動油によって昇降する部材であり、その一端(
図1における上端)に位置すると共に油圧シリンダ31の内壁に摺接する基端部32aと、基端部32aより下側に位置する本体部32bとを備えている。本体部32bは、下部フレーム2に向かって延在する略柱形状を有している。本体部32bの径Dbは、基端部32aの径Daよりも小さくなっている。ピストン32の他端(
図1における下端)には、平坦な先端面32cが設けられている。なお、油圧シリンダ31及びピストン32の中心軸は、互いに一致している。
【0024】
油供給部33は、油圧シリンダ31の下側領域31a及び上側領域31bに作動油を供給する部材であり、例えば作動油が蓄積されたタンク、当該タンク内の作動油を吐き出すポンプ等から構成される。また、油供給部33は、下側領域31a及び上側領域31bに充填されている作動油を回収する。例えば、油供給部33が下側領域31aに作動油を供給する場合、油供給部33は、上側領域31bに充填されている作動油を回収する。このようにして油供給部33は、下側領域31a及び上側領域31bに充填されている作動油の体積を調整し、昇降方向におけるピストン32の位置を制御する。なお、油路34及び油路35にはバルブ(不図示)が設けられており、当該バルブの制御を行うことで、油供給部33から作動油を供給する供給先を変更することが可能である。
【0025】
金型駆動部23は、上型M2を昇降方向に進退駆動させる機構であり、その下部に上型M2が装着されるスライド41と、スライド41を支持すると共に駆動する複数(本実施形態では2つ)のスライド駆動部42とを備えている。なお、スライド駆動部42の数は限定されず、1つでもよい。
【0026】
図2は、スライドを示す平面図である。
図2に示されるように、スライド41は、平面視にて略矩形状を呈する部材であり、2つのスライド駆動部42によって吊られている。スライド41には、ピストン32の本体部32bが挿通可能な孔部41aと、スライド駆動部42の吊下部42a(詳細は後述)が連結される連結部41bとが設けられている。なお、スライド41の平面視における形状は、矩形状に限らず、他の部品との位置関係等に基づき適宜他の形状に設定されてもよい。
【0027】
孔部41aは、スライド41の中央において昇降方向に延在する貫通孔及び当該貫通孔を構成する周縁(スライド41の一部)であり、その中心はピストン32の中心軸と一致している。平面視における孔部41aの径Dcは、ピストン32の本体部32bにおける先端面32cの径Db以上になっている。孔部41aの径Dcが先端面の径Dbと同一である場合、ピストン32及びスライド41のいずれかが昇降すると、孔部41aにてピストン32とスライド41とが摺動する。すなわち、ピストン32と、孔部41aを構成するスライド41の一部とは、互いに接触し得る。また、2つの連結部41bの内、一方の連結部41bは、スライド41の角部周辺に設けられている。他方の連結部41bは、スライド41の中心に対して一方の連結部41bと点対称になる位置に設けられている。
【0028】
図1に戻って、スライド41上には、型締力発生部22から発生する型締力を上型M2に伝達する型締力伝達部51が設けられている。ここで、型締力伝達部51について、
図3を用いながら詳細に説明する。
図3は、型締力伝達部51の詳細な構造を示す平面図であり、
図3(a)は孔部41aが露出している状態を示し、
図3(b)は孔部41aが後述するブロック体53にて覆われている状態を示す。
【0029】
型締力伝達部51は、昇降方向においてピストン32とスライド41との間であって、孔部41aを覆ってピストン32が孔部41aに進入することを妨げる位置(第1位置)と、当該第1位置から退避してピストン32が孔部41aに進入することを許容する位置(第2位置)との間を移動可能である部材である。型締力伝達部51は、上記第1位置に位置するときにピストン32からの型締力を受け、スライド41に当該型締力を伝達する部材である。
図3に示されるように、型締力伝達部51は、スライド41上に配置され、孔部41aを覆う大きさを有するブロック体53(力伝達体)と、スライド41上に配置され、ブロック体53を水平方向に駆動させる2つのブロック体駆動部54(力伝達体駆動部)とを有している。
【0030】
ブロック体53は、上記第1位置に位置する際にピストン32からの型締力を直接受け得る部材であり、本体部53aと、ブロック体駆動部54に連結される2つの耳部53bとを有している。平面視において、本体部53aの面積は、スライド41の孔部41aの面積よりも大きい。このため、
図3(b)に示されるように本体部53aが上記第1位置に移動し、孔部41aを完全に覆う場合には、本体部53aの少なくとも一部がスライド41に接している。なお、
図3(a)に示されるように本体部53aが上記第2位置に移動した場合、
図1に示されるように、ピストン32の本体部32bが孔部41aに挿通可能になっており、スライド41は、その上面がピストン32の先端面32cよりも基端部32a側へ位置できるように上昇できる。
【0031】
2つのブロック体駆動部54のそれぞれは、スライド41上にて孔部41aの中心を挟んで設けられており、ブロック体53に連結する連結部54aと、連結部54aを水平方向に進退駆動させる駆動部54bとを有している。連結部54aは、駆動部54bの動作に応じて駆動する棒状部材であり、水平方向における一方向に沿って延在している。また、2つの連結部54aは、互いに平行になるように延在している。駆動部54bは、例えば油圧シリンダであり、油圧シリンダ31と同様に作動油が供給されることによって連結部54aが進退する。このため、ブロック体53は、ブロック体駆動部54によって並進制御される。なお、ブロック体駆動部54は2つ設けられる構成に限らず、1つ、又は3つ以上設けられてもよい。
【0032】
駆動部54bが連結部54aをその外部に押し出すことによって、ブロック体53が駆動部54bから遠ざかる。これにより、
図3(a)に示されるように、ブロック体53を上記第2位置に退避させる。また、駆動部54bが連結部54aをその内部に引き戻すことによって、ブロック体53が駆動部54bに近づく。これにより、
図3(b)に示されるように、ブロック体53を上記第1位置に進行させる。
【0033】
図1に戻って、2つのスライド駆動部42のそれぞれは、スライド41を昇降方向に進退させる部材である。2つのスライド駆動部42のそれぞれは、スライド41を吊す吊下部42aと、吊下部42aを昇降方向に進退駆動させる駆動部42bとを有している。吊下部42aは、駆動部42bの動作に応じて駆動する棒状部材(サブピストン)であり、昇降方向に沿って延在している。また、吊下部42aの下端は、対応するスライド41の連結部41b(
図2を参照)に連結している。スライド駆動部42は、油圧式のピストンシリンダと、油供給部33から供給される作動油が収容される油室とを有している。このため、吊下部42aは、駆動部42b内に供給される作動油によって昇降し、且つ、スライド駆動部42は、油供給部33を有すると言える。
【0034】
吊下部42aであるサブピストンの径Ddは、ピストン32の基端部32aの径Daよりも小さい。また、複数設けられているスライド駆動部42のサブピストンの断面積の合計値は、ピストン32の基端部32aの断面積よりも小さい。このため、油供給部33から同じ条件(量、圧)の作動油を、型締力発生部及びスライド駆動部42のそれぞれに供給した場合、スライド駆動部42へ供給した方が高速でスライド41を駆動できる。また、スライド駆動部42におけるストローク(スライド41を進退させることができる最大の距離)は、型締力発生部22におけるストロークよりも長い。
【0035】
本実施形態では、スライド41と型締力伝達部51とは、一体化している。このため、スライド41が昇降方向に進行(下降)した場合、型締力伝達部51は、スライド41と同じ量だけ下降する。
【0036】
制御部5は、型締力発生部22及びスライド駆動部42の駆動を制御する部材であり、例えばCPU(中央演算装置)等である。制御部5は、例えば、油供給部33による油圧シリンダ31への油供給を制御することによって、型締力発生部22の駆動を制御する。また、制御部5は、例えば、油供給部33によるスライド駆動部42への油供給を制御することによって、スライド駆動部42の駆動を制御する。制御部5による型締力発生部22の制御と、スライド駆動部42の制御とは、独立している。このため、ピストン32とスライド41とは、互いに異なるタイミングにて昇降方向に進行することが可能である。つまり、スライド駆動部42へ作動油を供給し、型締力発生部22へ作動油を供給しないことで、スライド41は下降しながらもピストン32は停止したままとすることが可能である。本実施形態では、制御部5は、スライド41が昇降方向へ進行(下降)するようにスライド駆動部42を制御した後、ピストン32が昇降方向へ進行(下降)するように型締力発生部22を制御する。なお、制御部5は、ブロック体駆動部54の駆動を制御してもよい。
【0037】
次に、
図4及び
図5を用いながら、本実施形態に係る成形装置1を用いた成形方法の一例について説明する。
図4及び
図5は、成形装置による成形工程を示す図である。
【0038】
まず、第1工程として、
図1に示されるように、ピストン32及びスライド41の位置を設定する(準備工程)。第1工程では、ピストン32を上昇(退避)させると共に、スライド駆動部42の吊下部42aを上昇(退避)させる。このとき、スライド41の孔部41aにピストン32の本体部32bが挿通する(進入する)まで、スライド41を上昇させる。これにより、下型M1と上型M2との昇降方向における距離を広げ、下型M1と上型M2との間に被成形物を搬入しやすくなる。第1工程では、型締力伝達部51のブロック体53は、スライド41上にて上記第2位置に配置されているため、スライド41は、ブロック体53に阻害されることなくピストン32の先端面32cよりも基端部32a側まで上昇する。この状態では、ピストン32の先端面32cは、スライド41の孔部41aの下端内に位置している。
【0039】
次に、第2工程として、
図4に示されるように、ピストン32がスライド41の孔部41a外に位置するように、スライド41を下降(進行)させる(スライド進行工程)。具体的には、被成形物を下型M1上に設置した後、スライド駆動部42の吊下部42aが所定の位置まで下降することによってスライド41を下降させる。これにより、下型M1と上型M2との昇降方向における距離を縮める。この際、スライド駆動部42のサブピストンは、ピストン32よりも小径であるため、スライド41は高速で下降する。なお、スライド41が所定の位置まで下降するとは、昇降方向におけるピストン32の先端面32cとスライド41との間隔がブロック体53の厚さ以上になる位置までスライド41が下降することに相当する。
【0040】
また、第2工程では、スライド41を下降させた後、ブロック体駆動部54を制御し、ブロック体53を上記第1位置まで進行させる(ブロック体進行工程)。これにより、昇降方向におけるピストン32とスライド41との間にブロック体53を配置する。本実施形態では、ブロック体53は、上記第1位置にてピストン32の先端面32cと接しているか、もしくは若干の隙間を有している。
【0041】
次に、第3工程として、
図5に示されるように、ピストン32を下降(進行)させる(ピストン進行工程)。第3工程では、ピストン32の下降に伴う圧力をブロック体53に伝達する。このとき、ブロック体53に伝達された圧力がスライド41に伝達し、スライド41が下降する。これにより、下型M1と上型M2との上記距離をさらに縮め、下型M1と上型M2とが密着(型閉じ)する。この状態でピストン32を介して上型M2を加圧することにより、下型M1と上型M2とが強固に型締され、被成形物の成形が行われる。この際、ピストン32は、スライド駆動部42のサブピストンよりも大径であるため、スライド41を高速に低下させることはできないものの、型締時に大きな力をスライド41及び上型M2に与えることができる。
【0042】
第3工程後、ピストン32を上昇(退避)させる。続いて、ブロック体53を上記第2位置に退避させた後にスライド41を上昇(退避)させることによって、第1工程にて示した場所にピストン32、スライド41、及びブロック体53を戻す。最後に、被成形物を成形装置1から回収する。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る成形装置1によれば、昇降方向へ進退可能なピストン32は、スライド41に設けられる孔部41aに挿通可能になっている。これにより、スライド41をピストン32の先端面32cよりもその基端部32a側へ退避させる際に、ピストン32にロッドが挿入される孔等を設けなくともよい。したがって、ピストン32は、必要な型締力を発生させる断面積を超えて大きくなることを防止できる。また、成形装置1は、孔部41aを覆ってピストン32が孔部41aに進入することを妨げる第1位置に位置するときに、ピストン32からの型締力をスライド41に伝達するブロック体53を有する型締力伝達部51を備えている。これにより、下型M1及び上型M2の型締を行う際に、ブロック体53が第1位置に位置することによって、ピストン32からの型締力をブロック体53及びスライド41を介して上型M2に良好に伝達できる。加えて、型締力伝達部51を用いることによって、ピストン32の移動量を低減できるので、型締力発生部22における作動油が供給される油圧シリンダ31も小型化できる。したがって、ピストン32及び油圧シリンダ31を有する型締力発生部22のコンパクト化を実現できる。
【0044】
また、本実施形態に係る成形装置1を用いた成形方法によれば、第1工程にて、スライド41をピストン32の先端面32cよりもその基端部32a側へ退避させる。このとき、ピストン32にロッドが挿入される孔等を設けることなくスライド41を退避できるので、ピストン32は、必要な型締力を発生させる断面積を超えて大きくなることを防止できる。また、第3工程では、第2工程にてピストン32が孔部41aに進入することを妨げる第1位置に型締力伝達部51のブロック体53を進行させた後、ピストン32を下降させてブロック体53及びスライド41を介して下型M1及び上型M2を型締する。これにより、ピストン32からの型締力を上型M2に良好に伝達できる。加えて、ブロック体53が上記第1位置に進行することによって、ピストン32の移動量を低減できるので、ピストン32を駆動させるための油圧シリンダ31も小型化できる。したがって、ピストン32及び油圧シリンダ31を有する型締力発生部22のコンパクト化を実現できる。
【0045】
また、スライド駆動部42によりスライド41が昇降(進退)する際、孔部41aにてピストン32はスライド41に対して摺動可能であってもよい。この場合、スライド41とピストン32とを独立して進退させることができる。
【0046】
また、成形装置1は、型締力発生部22及びスライド駆動部42のそれぞれの駆動を制御する制御部5を備え、制御部5は、スライド41が進退方向へ進行するようにスライド駆動部42を制御した後、ピストン32が進退方向へ進行するように型締力発生部22を制御するので、当該制御部5は、スライド41とピストン32とを独立して進退させることができる。このため、制御部5は、スライド駆動部42によってスライド41を高速駆動するように制御する一方で、スライド41に高い型締力を与えるようにピストン32の駆動を制御することができる。これにより、成形装置1における1回の成形サイクルにおいて、サイクルタイムの短縮と、高い型締力の発生との両立が可能になる。
【0047】
また、型締力伝達部51は、昇降方向と直交する並進方向に進退制御されるので、ピストン32及びスライド41の進退方向と、型締力伝達部51におけるブロック体53の進退方向とが互いに直交している。これにより、スライド41が下降した後、ピストン32とスライド41との間の第1位置にブロック体53を容易に進行させることができる。
【0048】
また、スライド駆動部42は、作動油が供給されることでサブピストンが進退する1又は複数の油圧式ピストンシリンダを有し、サブピストンの断面積の合計値は、ピストン32の断面積よりも小さいので、サブピストンは、ピストン32と比較して大きな圧力をスライド41に加えることはできないものの、ピストン32と比較して高速で駆動することができる。このため、スライド駆動部42は、スライド41を高速で駆動させることができる。加えて、ピストン32は、サブピストンと比較して低速で駆動するものの、サブピストンと比較して大きな圧力をブロック体53及びスライド41等に加えることができる。したがって、成形装置1における1回の成形サイクルにおいて、スライド駆動部42によるスライド41の高速駆動に起因したサイクルタイムの短縮と、ピストン32の駆動に起因した高い型締力の発生との両立が可能になる。
【0049】
加えて、油圧シリンダ31に供給する作動油の単位時間あたりの流量を低減することによって、例えば大容量の作動油を供給及び回収するためのプレフィルバルブ等が不要になる。これにより、成形装置1を構成する部材数を低減できる。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記実施形態における成形装置1において、上型M2が駆動せず、下型M1が駆動してもよい。この場合、成形装置1は、スライド41及びスライド駆動部42の代わりに下型M1を駆動させるための機構を備えることになる。更に、上型M2及び下型M1の双方が駆動するようにしてもよい。また、上型M2等は必ずしも昇降方向に沿って駆動しなくてもよい。換言すると、金型同士が合わさる方向は、昇降方向に限られない。この場合、ブロック体53が移動する方向(ピストン32等が進退する方向と直交する直交方向)は、水平方向に限られない。
【0051】
また、上記実施形態における成形装置1及び当該成形装置1を用いた成形方法として、鍛造成形以外の成形、例えば、特開2015−112608号に記載されている膨張成形等を適用してもよい。この場合、成形装置1は、下型M1及び上型M2以外に、下型M1及び上型M2の間で中空部材からなる被成形物を保持するための保持機構、当該中空部材を加熱するための加熱機構、中空部材に高圧ガスを吹き込むブロー機構、及び下型M1及び上型M2を冷却するための冷却機構等を備える。
【0052】
上記成形装置1を用いて膨張成形を行う場合、例えば、対となる下型M1及び上型M2同士を型閉じして、当該下型M1及び上型M2の間に配置された被成形物を膨張成形する。鍛造成形の場合、金型と被成形物とが接触することによって成形抵抗が生じ、この成形抵抗に打ち勝って上型M2をさらに下降させるため、ピストン32にて加圧する必要がある。このため、成形装置1が被成形物を鍛造成形する場合、ピストン32もある程度距離を下降しなければならず、当該ピストン32のストロークの距離を確保する必要がある。これに対して、成形装置1が被成形物を膨張成形する場合、ピストン32は、上型M2(もしくはスライド41)が下降しきった状態あるいは下降しきる直前から、ブロック体53等を介して当該上型M2を加圧すればよい。この場合、ピストン32のストロークの距離は、鍛造成形等よりも短くてよく、当該ピストン32のストロークに要する時間を短縮できる。したがって、上記成形装置1を用いた膨張成形によれば、ピストン32を有する型締力発生部22をさらにコンパクト化できると共に、成形時間を短縮できる。
【0053】
また、上記実施形態において、スライド駆動部42及びブロック体駆動部54の少なくとも一方は、油圧式ピストンシリンダ以外の駆動機構であってもよい。例えば、電動式のアクチュエータ等でもよい。また、スライド駆動部42及びブロック体駆動部54の数は、それぞれ2つに限られない。