【発明が解決しようとする課題】
【0005】
円形管状や円筒状のコンテナバッグに土砂を詰め入れて形成された土嚢は外周が膨らんだ円柱形となり、これらを地盤の上に列状に敷き詰めると土嚢と土嚢の間には奥側へ凹んだ段差ができる。角型に形成された現状のコンテナバッグでも、土砂を詰め入れると周面が膨らんで円柱形になることに変わりはない。
【0006】
仮設構造物として円柱形の土嚢を積み上げて補強土壁を構成した場合に、土壁の表面が凹凸していたのでは見栄えが悪く、また、土壁表面に段差があると異物が堆積したり引っ掛かたりして、土嚢の表面を傷つけたり破損させたりしやすい。
仮設構造物は、本工事が始まるまでの間だけ一時的に設置されるものであるが、本工事が始まるまでに数年を要して仮設構造物の設置が長期間に亘ることも多く、その間、周辺の景観に悪影響を及ばさないように、仮設構造物の外観は見栄え良く収められていることが好ましい。また、敷設した土嚢が劣化することがないように、異物が堆積し難くい形状に設けられていることが好ましい。
【0007】
また、ジオテキスタイル工に土留め構造体を構成する場合も、円柱形の土嚢を盛土材として用いると、法面に土嚢と土嚢の間に段差ができて見栄えが悪くなる。
土留め構造体の法面を垂直に収めるときは、土嚢間の段差や土嚢の外側に膨らんで湾曲した外周面が露出しないように、前記の如く法面側の端部に壁面材を設置して土嚢表面を覆ったり、段差部分にモルタルを充填して隣接した土嚢の外周面の部分を平滑な面に仕上げたりする必要がある。
【0008】
本発明は従来の技術の有するこのような問題点に鑑み、土嚢を敷き詰めて補強土壁を構成するにあたり、敷き詰めた土嚢列の表面にできる隣接土嚢間の段差や凹凸が出来る限り小さくなるように設けることで、異物の堆積に伴う土嚢の劣化防止を図るとともに、補強土壁表面の外観上の見栄えを良好なものとすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の通り、円筒状のものに代えて角型のコンテナバッグを用いて土嚢を形成しても、現状のものでは土砂を詰め入れるとコンテナバッグの胴部周面が膨らんで円柱或いは樽形になり、土嚢を敷き詰めたときに隣り合う土嚢同士の間に段差ができてしまう。
そこで、本発明では、内部に中詰材を一杯に充填しても角型に保持されるように構成されたコンテナバッグを用いて土嚢を形成し、これを地盤に敷き詰めて、土嚢列の段差や凹凸が小さく、表面が略平滑な補強土壁を構成した。
【0010】
本発明の補強土壁は、フレキシブルコンテナバッグに中詰材を詰め入れて形成された角型土嚢が、地盤上に一列又は複数列に敷き詰められ、その上に前記角型土嚢が積み重ねられた構成を有する補強土壁であって、
前記フレキシブルコンテナバッグが、四角筒形の胴部の四隅角部の内側に角部の両側の側面に跨る仕切り片が各々
取り付けられ、前記四隅角部の各角部の内側に
、二つ折りされた吊用ベルトがその両端部を角部の両側の側面の内側で前記仕切り片の両端部にそれぞれ重ねられ、且つ胴部の下部から上部に亘る当該側面の内面に止着されて角部の内側に各々一体に取り付けられているとともに、前記胴部の下部が底部を設けて塞がれ、前記四隅角部の内側に吊用ベルトが取り付けられた胴部の上部開口の内周縁に筒状の投入部が取り付けられてなることを特徴とする。
【0011】
これによれば、コンテナバッグの胴部の四隅角部の内側に、各々角部を水平に跨ぐように仕切り片を配置して、仕切り片の両端部を角部両側の胴部側面に止着してあるので、コンテナバッグに中詰材が充填されたときに、胴部周側面に中詰材の外向きの圧力がかかっても、角部両側の側面が外側に拡がることはなく、角部は略直角に保持されて胴部周側面が外方へ膨らむように変形することが抑制され、さらに、仕切り片で仕切られた角部内側の平面視略直角三角形の空間に内容物が充填されることでコンテナバッグは角型に保持される。
従って、前記コンテナバッグに中詰材を充填して角型土嚢を形成し、これを地盤上に一列又は複数列に敷き詰め、さらにその上に角型土嚢を積み重ねれば、隣接する土嚢と土嚢の間に段差がなく、表面が平滑な補強土壁を構成することができる。
前記構成の補強土壁は、隣り合う土嚢同士が互いの側面全体を密着させて設置されるので、表面に段差や凹凸がなく、段差や凹凸が表出したとしても極めて小さいものなので、外観が方形ブロックを積み重ねた如き直角に交わる平面が強調された見栄えの良いものとなり、また、土嚢と土嚢の間に異物が堆積したり引っ掛かったりし難く、異物の堆積に伴って土嚢が劣化することを防止することができる。
【0012】
また、本発明の補強土壁の構成方法は、四角筒形の胴部の四隅角部の内側に角部の両側の側面に跨る仕切り片が各々
取り付けられ、前記四隅角部の各角部の内側に
、二つ折りされた吊用ベルトがその両端部を角部の両側の側面の内側で前記仕切り片の両端部にそれぞれ重ねられ、且つ胴部の下部から上部に亘る当該側面の内面に止着されて角部の内側に各々一体に取り付けられているとともに、前記胴部の下部が底部を設けて塞がれ、前記四隅角部の内側に吊用ベルトが取り付けられた胴部の上部開口の内周縁に筒状の投入部が取り付けられてなるフレキシブルコンテナバッグに中詰材を詰め入れて角型土嚢を形成し、
地盤上にジオテキスタイルを敷き、このジオテキスタイル上であってその前端部よりも内側の位置で前記角型土嚢を一列又は複数列に敷き詰め、敷き詰めた角型土嚢の後方の地盤上に土を盛り、表面を敷き均し転圧した後、前記ジオテキスタイルの前端側を敷き詰めた角型土嚢の後方へ折り返して角型土嚢の前面から上面に亘って巻き付けるとともに後方へ折り返した端部を前記盛土の上面に固定して地盤上に第1の補強土壁を形成し、
次いで、前記第1の補強土壁の上面にジオテキスタイルを敷き、このジオテキスタイル上であってその前端部よりも内側の位置で、前記角型土嚢を一列又は複数列に敷き詰め、当該敷き詰めた角型土嚢の後方の前記第1の補強土壁上に土を盛り、表面を敷き均し転圧した後、前記ジオテキスタイルの前端側を敷き詰めた角型土嚢の後方へ折り返して角型土嚢の前面から上面に亘って巻き付けるとともに後方へ折り返した端部を前記盛土の上面に固定して第1の補強土壁上に第2の補強土壁を形成した構成を有することを特徴とする。
【0013】
これによれば、補強土壁のジオテキスタイルが巻き付けられる側の壁面は、土嚢と土嚢の間の段差や凹凸がなく、地盤に対して略垂直に交差する平滑な面となるので、ジオテキスタイルを巻き付けつつ補強土壁を積層することで、壁面部が略垂直な土留め構造体を構成することができる。
補強土壁の壁面に段差や凹凸がないので、土留め構造体の法面を垂直に収める場合に、法面側の端部に段差や凹凸を覆う壁面材を設置したり、段差部分にモルタルを充填して平滑な面に仕上げたりする工事は不要である。勿論、法面に沿って補強するため、壁面材を補強土壁の壁面に設置したり壁面に沿ってモルタルを充填して固めたりしてもよい。
【0014】
前記構成の補強土壁において、コンテナバッグは、複数の帯状の仕切り片が角部の上端から下端に亘り互いに間隔を開けて止着された構成のものを用いることができる。
【0015】
これによれば、コンテナバッグの胴部の四隅角部の内側で、角部の上端から下端に亘って複数の仕切り片が互いに適宜な間隔を開けて取り付けてあるので、中詰材として大小の塊を含む土砂を詰め入れる場合であっても、上下の仕切り片の間の隙間を通して角部内側の空間部に土砂がスムーズに入り込んで、胴部の四隅角部に隈無く詰め入れることができる。土砂を一杯に充填したときに、コンテナバッグの角部の内側の空間に隙間ができて角部が潰れたり湾曲したりするようなことはなく、コンテナバッグは角型に保持される。
この場合、仕切り片で仕切られた角部内側の空間全体に隈無く且つスムーズに内容物が入り込むようにするため、角部の上端から下端に至る仕切り片の配置間隔(S)が、仕切り片の短手幅(W)の長さと略同じ(S≒W)に設けられていることが好ましい(
図7参照)。
【0016】
角型土嚢を構成するコンテナバッグは、ポリプロピレンやポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの合成繊維で織られたシートとベルトを用いて形成することができる。コンテナバッグの胴部や底部を構成するシート同士の止着や胴部への吊用ベルトの止着に用いる手段も、縫製や熱融着、接着などの適宜な手段を用いることができる。仮設構造物として本発明の補強土壁を構成する場合、コンテナバッグの吊用ベルトの止着部分が紫外線を受けて劣化することがないように、コンテナバッグの胴部の内側に吊用ベルトが止着されていることが好ましい。
なお、本発明を適用して、道路や河川の応急仮工事や災害復旧工事などに耐候性大型土嚢積層工法を実施する場合、コンテナバッグに中詰材を詰め入れて形成される土嚢は、一般財団法人土木研究センターが発刊した『「耐候性大型土のう積層工法」設計・施工マニュアル』で規定される強度や変形特性、耐久性、排水・透水性などの性能を満足する性能を有するものであることが好ましい。