特許第6490908号(P6490908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6490908小形モータの斜め巻コイルなどの自己支持形空芯コイルを製造するための型巻コイル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490908
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】小形モータの斜め巻コイルなどの自己支持形空芯コイルを製造するための型巻コイル
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/04 20060101AFI20190318BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   H02K3/04 E
   H02K15/04 C
【請求項の数】24
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-103623(P2014-103623)
(22)【出願日】2014年5月19日
(65)【公開番号】特開2014-230484(P2014-230484A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2017年5月15日
(31)【優先権主張番号】10 2013 105 130.8
(32)【優先日】2013年5月17日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】13171603.7
(32)【優先日】2013年6月12日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】13177009.1
(32)【優先日】2013年7月18日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】10 2014 102 204.1
(32)【優先日】2014年2月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507154620
【氏名又は名称】ドクトル・フリッツ・ファウルハーバー・ゲー・エム・ベー・ハー・ウント・コー・カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】DR. FRITZ FAULHABER GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ローラント・ケラー
(72)【発明者】
【氏名】アルミン・ナーゲル
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ホルダー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・クルムバイン
(72)【発明者】
【氏名】ヤノス・プップリクス
【審査官】 若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−124892(JP,A)
【文献】 特開2011−182561(JP,A)
【文献】 特表2008−530968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/04
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周領域を互いにオーバラップさせながら配置された少なくとも2個の型巻コイル(20)からなる自己支持形空芯コイルである、小形モータ(1)の斜め巻コイル(6)を製造するための型巻コイル(20)であって、
異なった径方向面に位置するとともに、端辺部(26a,26b)に側端連結部を経て互いに連結されている2つの型巻コイル側辺部(24a,24b)が形成され、前記側端連結部は前記型巻コイル側辺部(24a,24b)を繋ぐ巻線段差部(28)の径方向段差面を備え、前記型巻コイル側辺部(24a,24b)は斜め巻コイル(6)の縦軸心(16)を中心として円弧状に湾曲して形成され、径方向外側の前記型巻コイル側辺部(24a)の曲率半径(R1)は径方向内側の前記型巻コイル側辺部(24b)の曲率半径(R2)よりも大である型巻コイルにおいて、
前記型巻コイル側辺部(24a,24b)と前記巻線段差部(28)とを有する各々の巻線(30)は、巻き付け工程で作用する力を通じて、前記巻線(30)を形成する電線部材(22)に直接力が及ぼされることで形状形成され、
前記巻線段差部(28)は、巻き付け工程中に斜め巻コイル(6)の電線部材(22)を直接に曲げることによって、及び、巻き付け工程中に電線部材(22)に巻き付けに際して生ずる力によって、巻き付け完了後の前記巻型コイル(20)に対する事後的な変形なしに、いずれの巻線(30)も長さの変化なしに、巻線に機械的応力なしに、長さを調整するためのプレハブの予備材料が不要であるように形状形成される型巻コイル。
【請求項2】
平面視で見て、少なくとも1回巻きの、菱形形状の巻線(30)、台形形状の巻線(30)、楕円状の巻線(30)、または、中央部がまっすぐに延びた変形の菱形形状の巻線(30)または、巻線幅(A)が最大の領域を縦軸心(Y)に対して垂直方向に延びる横軸心(Z)が端辺部間をつなぐ縦軸心(Y)よりも短い、変形菱形形状の巻線(30)となっていることを特徴とする請求項1に記載の型巻コイル。
【請求項3】
前記巻線(30)の巻き付け方向はそれぞれ同一方向であることを特徴とする請求項1または2に記載の型巻コイル。
【請求項4】
前記型巻コイル側辺部(24a,24b)の曲率半径(R1,R2,R3)は、この型巻コイル(20)の縦軸心(16)の全長にわたり、一方の端辺部(26a)から他方の端辺部(26b)に至るまでそれぞれ一定であり、前記巻線段差部(28)は前記縦軸心(16)に対して径方向に段差を形成していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の型巻コイル。
【請求項5】
前記型巻コイル側辺部(24a,24b)の曲率半径(R1,R2,R3)は、この型巻コイル(20)の縦軸心(16)の全長にわたり、一方の端辺部(26a)から他方の端辺部(26b)に至るまで連続的に増加し、前記巻線段差部(28)は前記縦軸心(16)に対して半径方向及び軸方向に段差を形成していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の型巻コイル。
【請求項6】
前記型巻コイル側辺部(24a,24b)の曲率半径(R1,R2,R3)は、この型巻コイル(20)の一方の端辺部(26a)から他方の端辺部(26b)に至るまでの縦軸心(16)の全長にわたり、第1の区域にあっては一定であり、それに続く第2の区域にあっては連続的に増加もしくは減少することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の型巻コイル。
【請求項7】
前記端辺部(26a,26b)は、この型巻コイル(20)の縦軸心(16)を基準として、0°〜90°、特に90°の折り曲げ角で、前記縦軸心に向かって内側方向または前記縦軸心(16)から離反する外側方向に折り曲げられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の型巻コイル。
【請求項8】
電線部材(22)は、巻線始端(32)から巻線終端(34)に至るまで、らせん状に、単層または多層を形成し、特に、交差しないようにして巻き付けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の型巻コイル。
【請求項9】
前記電線部材(22)は、円形または縦長、特に方形の電線断面を有する単一電線または、少なくとも2本から4本の隣接しながら平行に延びて焼き付け塗料(25)を介した溶着接合によって互いに結合された電線(23)を有する連結電線またはリッツ線であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の型巻コイル。
【請求項10】
前記連結電線の場合、その単一電線(23)は個々の前記巻線(30)の内部において互いに隣接していると共に、この型巻コイル(20)内において径方向に重畳していることを特徴とする請求項9に記載の型巻コイル。
【請求項11】
この型巻コイル(20)は、コイル本体(18)の縦軸心(16)に対して垂直をなして延びる切断面(VII−VII)で見て、面状で、矩形で、湾曲した断面を有していることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の型巻コイル。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の型巻コイルを製造する方法であって、
前記型巻コイル(20)は、巻き付け工程中に、巻き付けに際して生ずる力による、電線部材(22)の直接の巻線(30)形状形成により、巻き付け完了後の型巻コイル(20)に対する事後的な変形なしに、異なった曲率半径(R1,R2,R3)で湾曲された前記型巻コイル側辺部(24a,24b)および前記端辺部の巻線段差部(28)が作り出されることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記型巻コイル(20)は、形状形成を伴う巻き付け工程の完了後、電線材料(22)の焼き付け塗料コーティング(25)の焼き付けのために、一時的に加熱されるか、あるいは含浸塗料でコーティングされるまたはプラスチックが吹き付けられることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記型巻コイル(20)に、加熱のために、一時的に電流が印加されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法によって型巻コイルを製造する装置において、
回転軸心(42)を中心にして回転駆動される、前記回転軸心(42)に対する横断方向で分割された2つの加工台(44,46)からなる巻き付け装置(40)として構成され、前記加工台(44,46)は、互いに対向する端面に、異なった曲率半径(R1,R2,R3)で湾曲した前記型巻コイル側辺部(24a,24b)を形状形成するための側面部(A,B)ならびに前記巻線段差部(28)を形状形成するためのブリッジ部(C)を備えた、巻き付けされる型巻コイル(20)の内側および外側の面輪郭に対応した、陰型成形された相補的な形状形成面(48,50)を有し、前記形状形成面(48,50)の少なくとも一方の領域に、前記電線部材(22)の巻線(30)の延び形状を決定するための転回点として、一連の巻き付け部材(52)が配置されていることを特徴とする装置。
【請求項16】
前記形状形成面(48,50)のいずれか一方の領域に、前記電線部材(22)の巻き付け始端(32)用の固定具(54)が設けられていることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記巻き付け部材(52)の少なくとも一部は、完成した型巻コイル(20)の取り出しのために、着脱式に取り付けられていることを特徴とする請求項15または16に記載の装置。
【請求項18】
前記加工台(44,46)は、前記回転軸心(42)の方向に、互いに離間した取り出しポジションと互いに近接した巻き付けポジションとの間を、互いに相対可動し、巻き付けポジションにおいて、両方の形状形成面(48,50)は、前記電線部材(22)が僅かな巻き付け遊びで所定通りに案内されると共に、形状形成されながら形状形成面(48,50)の間を案内されるように、それぞれの電線部材(22)に合わせて隙間幅を寸法調整することのできる巻き付け隙間(56)だけ、互いに離間していることを特徴とする請求項15〜17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
請求項7に記載の型巻コイルを製造するための請求項18に記載の装置において、
前記形状形成面(48,50)の間に形成された巻き付け隙間(56)は、それぞれの形状形成面(48,50)の縦方向(Y−Y)の互いに反対側に位置する端部に、折り曲げ角(α)に合わせた角度である、形状形成面(48,50)に対して角度90°をなして互いに反対方向に延びる、0°〜90°、特に90°の折り曲げ角(α)で折り曲げられた端辺部(26a,26b)の形状形成に用いられる隙間部(56a,56b)を有し、前記隙間部(56a,56b)に延び入る前記形状形成面(48,50)の面状張り出し部(48a,50a)は、それぞれ、前記端辺部(26a,26b)の対向面の陰型輪郭を有していることを特徴とする装置。
【請求項20】
前記加工台(44,46)は、前記加工台(44,46)の扁平部(59)によって形成された面状張り出し部(48a)を有すると共に、加工台突出部(60)に形成された面状張り出し部(50a)を有し、巻き付けポジションにおいて、扁平部(59)によって形成された面状張り出し部(48a)は、加工台突出部(60)によって形成された面状張り出し部(50a)によって覆われ、扁平部(59)を一方とし、加工台突出部(60)を他方とした両者の間にそれぞれの隙間部(56a,56b)が形成されていることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項21】
加工台(44,46)は、型巻コイル(20)を固着するために、巻き付けポジションから互いにさらに一定距離(s)だけ近接移動可能であることを特徴とする請求項15〜20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
巻き付け完了して固着された型巻コイル(20)に、電線焼き付け塗料コーティング(25)の焼き付けのために型巻コイル(20)を電熱により、時間およびアンペア数から見て、適切に加熱できる電流を印加する装置を有することを特徴とする請求項15〜21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
前記加工台(44,46)は、軸方向ガイドエレメント(58)を介し、互いに回転方向に相対整合されて案内されていることを特徴とする請求項15〜22のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の型巻コイル(20)であることを特徴とする、小形モータ(1)に組み付けるための、コイル外周に互いにオーバラップして配置された少なくとも2個の型巻コイル(20)からなる、特に斜め巻きコイルである、自己支持形空芯コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周領域を互いにオーバラップさせながら配置された少なくとも2個の型巻コイルからなる自己支持形空芯コイルである、小形モータの斜め巻コイルを製造するための、電線部材(22)からなる少なくとも1回巻きの巻線を含んでいる型巻コイルに関する。より、詳しくは、異なった径方向面に位置するとともに、端辺部に側端連結部を経て互いに連結されている2つの型巻コイル側辺部が形成され、前記側端連結部は前記型巻コイル側辺部を繋ぐ巻線段差部の径方向段差面を備えると共に、前記型巻コイル側辺部は斜め巻コイルの縦軸心を中心として円弧状に湾曲して形成され、径方向外側の前記型巻コイル側辺部の曲率半径は径方向内側の前記型巻コイル側辺部の曲率半径よりも大となっている。
【0002】
さらに本発明は、本発明による型巻コイルを製造する方法ならびに装置に関する。
【0003】
さらに本発明は、本発明による型巻コイルを使用してなる自己支持形空芯コイルとくに斜め巻コイルに関する。
【背景技術】
【0004】
特許文献1から、冒頭に述べたタイプの型巻コイルが知られている。この場合、個々の巻線は、先ず、フラットな状態で、完成型巻コイルの内部を径方向に延びる軸心を中心として巻き付けられ、その後に初めて、変形、湾曲されて完成形状となされる。その際、それぞれの径方向巻線段差部が形成されなければならない領域に、機械的過負荷による損傷たとえば電線の過伸張が生ずることを回避すべく、前記特許文献1によれば、各々の巻線は、転移を可能とするために、予備としてたとえばヘアピン状の隆起の形の付加的な電線材料を有している。というのも、巻き付け完了し、通例、熱をかけて焼き付けられた型巻コイルの事後的な曲げ変形によって巻線段差部を形成する場合には、この領域における電線の過伸張を回避するために、付加的な電線材料が必要とされるからである。ただしそれにもかかわらず、完成型巻コイルの変形によって、損傷が生ずることがある。というのも、電線材料が機械負荷を受けると、特に、曲げ変形に必要とされる力が加えられなければならない領域に、不適な電線断面変化ならびに引裂による焼き付けコーティング損傷あるいはコーティング剥離さえも生じ得るからである。さらに、いわゆる予備としての付加的な電線材料は所要の転移に非常に正確に適合されていなければならない。万一それが短かすぎたり、あるいは長すぎたりする場合にも、それぞれの巻線段差部を機械的過負荷なしに最適に形成することはできない。
【0005】
特許文献2も、同じく、管状の、中空円筒型の電動機空芯コイルを開示しており、互いにオーバラップする型巻コイルは、径方向巻線段差部の形成なしに、曲率半径のみが作り出されるように形状形成される。そのため、型巻コイルを組み付けてコイル全体を形成する際に、型巻コイルはオーバラップされるため、型巻コイルが位置する内側円筒領域と外側円筒領域との転移面連結が行なわれなければならない。特に、軸方向において互いに反対側に位置する領域に、事後的な変形とそれから生ずる機械負荷が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第1 780 871号明細書
【特許文献2】ドイツ出願公開第101 14 129号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、冒頭に述べたタイプの型巻コイルを改良して、型巻コイルの形状形成に際し、電線部材の電線材料の損傷、電線断面の変化ならびに電線部材の巻線段差部領域および絶縁塗膜の損傷が回避され、巻線段差部領域における電線部材の延び形状が最適化されるようにすることである。加えてさらに、改良された、容易かつ経済的に実現可能な製造方法を供すると共に、構造的にシンプルで効率的な製造装置を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、本発明により、請求項1の特徴記載部記載の特徴により解決される。その特徴は、型巻コイル側辺部と巻線段差部とを有する各々の巻線は、巻き付け工程で作用する力を通じて、巻線を形成する電線部材に直接力が及ぼされることで形状形成されることである。
したがって、本発明によれば、本発明による型巻コイルは、型巻コイル側辺部領域も、巻線段差部領域も共にもっぱら巻き付け工程中に形状形成される。したがって、巻き付け完了した型巻コイルの事後的な曲げ変形を行う必要がない。したがって、本発明によれば、電線材料は、巻き付けの段階で、直接に、各々の個別巻線が所望の巻き付け形状に形状形成される。この点から、本発明での曲げ変形は、完成した型巻コイル全体を曲げ変形するやり方とは異なり、巻き付け工程中に各々の個別巻線についてのみ行なわれる。したがって、この場合ごく僅かな力が必要とされるにすぎないために、電線部材に僅かな塑性変形が生ずるだけである。したがって、本発明によれば、機械的損傷たとえば特に電線材料の断面変化および電線コーティングの引裂または剥離は回避されるあるいは少なくとも顕著に低減されることになる。
【0009】
したがって、本発明による型巻コイルは、電線材料が−あらゆる領域つまり異なった曲率半径で湾曲されている型巻コイル側辺部領域にあっても、巻線段差部領域にあっても−電線断面ならびに外側電線コーティングが毀損されることなく形状形成されるという利点をもつ。
【0010】
したがって、いずれの巻線も長さの変化なしに−したがって機械的応力なしに−保護的に所要の形状にもたらされているため、とりわけ巻線段差部においても、最適な形状形成が達成される。したがって、この形状形成時に、それぞれ最適な電線長さが結果として得られる。それゆえ、長さを調整するためのプレハブの“予備材料”は不要である。
【0011】
本発明によれば、さらに、型巻コイル側辺部および巻線段差部を形成する複数の連結巻線の巻き付け方向は同一とすることが好適である。
【0012】
さらに、本発明による型巻コイルは、少なくとも1回巻きの、変形の菱形形状の巻線、台形形状の巻線、楕円状の巻線、中央部がまっすぐに延びた変形の菱形形状の巻線、または、巻線幅が最大の領域を縦軸心に対して垂直方向に延びる横軸心が端辺部間をつなぐ縦軸心よりも短いように構成された、菱形に類似した形状の巻線によって形成されるのが好適である。
【0013】
さらに本発明によれば、型巻コイル側辺部の曲率半径は、縦軸心に沿って、一方の端辺部から他方の端辺部に至るまでそれぞれ一定であって、巻線段差部は縦軸心に対して径方向に延びているのが好適である。本発明によれば、型巻コイル側辺部の曲率半径は、縦軸心方向でその全長にわたって、一方の端辺部から他方の端辺部に至るまで連続的に増加し、巻線段差部は径方向及び軸方向に延びているのも、同様に好適である。
【0014】
本発明の別な実施形態として、型巻コイル側辺部の曲率半径が、一方の端辺部から他方の端辺部に至るまでの縦軸方向でその全長にわたり、第1の区域にあっては一定であり、それに続く第2の区域にあっては連続的に増加もしくは減少するように形成してもよい。
【0015】
さらに、本発明による型巻コイルの端辺部は、縦軸心を基準として、0〜90°、好ましくは90°の折り曲げ角で縦軸方向または縦軸心から離反する方向に折り曲げられ、巻線段差部は軸方向に整合されて形成されるとよい。端辺部のこのような折り曲げにより、本発明による型巻コイルの全長を短縮することが可能である。
【0016】
本発明による型巻コイルにより、あらゆる線数およびあらゆる極対数用のコイルが実現可能である。特に、ブラシレスモータ(三相電動機)用の、星形結線またはデルタ結線による3線コイルを造成することが可能である。DCモータ用に、特に、5、7、9、11および13体型の並列巻および波巻コイルを造成することが可能である。これは2極式(極対数=1)または4極式(極対数=2)磁気回路用に可能であるだけでなく、これらを上回る極数の磁気回路用にも可能である。
【0017】
各々の巻線の電線部材は、巻線始端から巻線終端まで、らせん状に、単層または多層を形成し、とりわけ交差しないように巻き付けられてもよい。さらに、好適には、電線部材は、円形または縦長たとえば方形の電線断面を有する単一電線または、少なくとも2本、たとえば4本の、隣接して平行に延びるとともに、特に塗料層を介した溶着接合によって互いに結合された電線を有する連結電線あるいはリッツ線からなる。
【0018】
本発明による型巻コイルを製造するための本発明による製造方法は、巻き付け工程中に、巻き付けに際して生ずる力による、電線部材の直接の巻線形状形成により、異なった曲率半径で湾曲された前記型巻コイル側辺部および前記端辺部の巻線段差部が作り出されることを特徴とする。したがって、巻き付け完了後の型巻コイルに対する事後的な変形加工は不要となる。
その際、好ましくは、型巻コイルは、形状形成を伴いながらの巻き付けの完了直後に、電線材料の焼き付け塗料コーティングの焼付けのために一時的に加熱される。この加熱のために、型巻コイルに、一時的に電流を印加できるのが有利である。その際、印加時間およびアンペア数は、電線断面積に応じ、焼き付けに十分な電熱が生ずるが、電流によって電線部材または絶縁あるいはその両方の損傷が生ずることのないように設定される。最後に、一定の冷却時間の経過後、完成した型巻コイルは装置から取り出され、さらなる加工を行なうことが可能である。このように製造された複数の型巻コイルは部分的にオーバラップして組み付けられて、本発明による斜め巻コイルが作り出される。その際、機械的な固着が行なわれ、さらに−詳細には、一時的な加熱処理を伴って−所定の焼き付け塗料コーティングの焼き付けを行なうことも可能である。
【0019】
正確に定められた曲率半径および巻線段差部を備える、本発明による型巻コイルの最適な形状形成によって完成した斜め巻コイルの内部においては、高い銅占積率が達成される。その際、好適には、各々の相巻線は少なくとも1個の型巻コイルによって形成される。いくつかの結線方式を採用して、複数の型巻コイルが連係製造されることにより、結線コストを低減させることが可能である。型巻コイルがこのように連係製造される場合には、コイル形成後に、それぞれの連鎖の始端と終端が結合されさえすればよく、これにより、すべての巻線セグメントの並列化されたデルタ結線式斜め巻コイルが得られる。
【0020】
本発明による型巻コイルを製造するための本発明による製造装置は、回転軸心を中心にして回転駆動される、前記回転軸心に対する横断方向で分割された2つの加工台からなる巻き付け装置として構成されている。この加工台は、互いに対向する端面に、異なった曲率半径で湾曲した前記型巻コイル側辺部を形状形成するための側面部ならびに前記巻線段差部を形状形成するためのブリッジ部を備えた、巻き付けされる型巻コイルの内側および外側の面輪郭に対応した、陰型成形された相補的な形状形成面を有している。形状形成面の少なくとも一方の領域には、電線部材の巻線の延び形状を決定するための転回点として、一連の巻き付け部材が配置されている。
さらに、加工台は、回転軸心の方向に−詳細には、互いに離間した取り出しポジションと互いに近接した巻き付けポジションとの間を−互いに相対移動する。巻き付けポジションにおいて、両方の形状形成面は−電線部材が巻き付けに際して僅かな巻き付け遊びで所定通りに案内されると共に、適切に形状形成されながら両方の形状形成面の間を案内されるように、それぞれの電線部材に合わせて隙間幅を寸法調整することのできる巻き付け隙間ぶんだけ互いに離間している。このことから、巻き付け装置の回転を通じて、一方の形状形成面の領域に一端が固定された電線部材は、両方の形状形成面の間の巻き付け隙間に外側から自動的に引き込まれ、巻き付け部材周りにらせん状に巻き付けられる。その際、電線部材は−湾曲された、型巻コイル側辺部を形成する側面部においても、同じく、巻線段差部を形成するブリッジ部においても、両方の形状形成面の相補的な表面形状に最適に適合化される。
【0021】
好ましい実施態様において、巻き付け完了して固着された型巻コイルに、コイル端を介して電流を印加する装置が設けられている。この給電により、電線焼き付け塗料コーティングの焼き付けのために型巻コイルが加熱され、時間およびアンペア数を適切に選択することで、適切な温度が確保できる。
【0022】
巻き付けおよび焼き付けの完了後、完成した型巻コイルは、加工台を取り出しポジションに移動させることによって取り出すことができる。形状形成された型巻コイルは、次いで、さらなる加工段階に供給され、互いに組み付けられ、融着接合によって結合されて、本発明による自己支持形斜め巻コイルが製造されることになる。個々の型巻コイルの巻線始端と終端は、所定の方法で、互いに電気結線される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一例としてこの場合ステータ側に配置された、本発明による、簡略化して図示した、自己支持形コイルを備えた一例としてのモータの縦断面を示す断面図である。
図2】複数の型巻コイルを有する本発明によるセグメント化されたコイルの拡大側面図である。
図3図2の矢印IIIで示した軸方向から眺めた上記コイルのさらに別の拡大正面図である。
図4図2および3に示したコイルの個々の型巻コイルを示す図である。
図5】本発明による型巻コイルの別途形状を示す図である。
図6】本発明による型巻コイルの別途形状を示す図である。
図7図4に示した切断面VII−VIIによる型巻コイルの拡大断面図である。
図8】連結電線としての例示的な実施形態における、図7に記号“VIII”で示した巻線状態の拡大断面図である。
図9】本発明による型巻コイルの別途実施形態を示す図である。
図10】本発明による斜め巻コイルの別途幾何形状のコイル本体を示す図である。
図11】本発明による斜め巻コイルの別途幾何形状のコイル本体を示す図である。
図12】本発明による斜め巻コイルの別途幾何形状のコイル本体を示す図である。
図13】開放された取り出しポジションに位置する、2つの加工台を有する二体式巻き付け装置の形の本発明による製造装置の簡略化した斜視図である。
図14】電線部材終端ないし始端の固定された、図13に示した2つの加工台の一方を示す図である。
図15】鎖線で示唆した電線部材の巻き付け工程中の、加工台が近接した巻き付けポジションに位置している巻き付け装置の概略的な側面図である。
図16】巻き付け完了後の型巻コイルの加熱焼き付けを示す、図15と同様な図である。
図17】巻き付け完了して、焼き付けの行なわれた型巻コイルを取り出すための取り出しポジションの、図15および図16と同様な側面図である。
図18図17に示した取り出しポジションのさらなる斜視図である。
図19図9に示した型巻コイル製造装置の種々のポジションの図である。
図20図9に示した型巻コイル製造装置の種々のポジションの図である。
図21図9に示した型巻コイル製造装置の種々のポジションの図である。
図22図9に示した型巻コイル製造装置の種々のポジションの図である。
図23図9に示した型巻コイル製造装置の種々のポジションの図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図を用いて本発明の実施形態を説明するが、各図において、同一の部材には同一の符号が付されている。
【0025】
図を参照しながらの以下に述べる実施形態の説明において、本発明は、図示され、説明された実施形態に制限されるものではなく、また、説明された特徴の組み合わせのすべてが必須であるわけでもなく、任意の組み合わせも本発明に含まれる。むしろ、各々の実施形態の各々の部分特徴は、それと関連して説明された他のすべての部分特徴から切り離されてもそれ自体として発明上の意義を有すると共に、他の実施形態の任意の特徴と組み合わされても、本発明を構成するものである。
【0026】
図1には、自己支持形コイルを備えた一例としてのモータが模式的に示されている。図2図7に示すように、コイル(斜め巻コイル)6は、中心縦軸心16を有する中空のセグメント化されたコイル本体18からなる。セグメント化されたコイル本体18は、自己支持形空芯斜め巻コイルとして、個別の型巻コイル(型巻コイル要素)20から製造される。個別の型巻コイル20の数は2個以上、好ましくは3個以上である。図4は、本発明による型巻コイル20の一実施形態を示したものである。本発明によるこの型巻コイル20は、電線部材22から製造されている。この電線部材22は、外側電気絶縁層を有している。電線部材22は、外周に絶縁塗膜層を備えた、たとえばDIN 60317−20、2000/10に定める銅製の丸形電線である。選択的に採用可能なその他の電線部材として、たとえば、連結電線、パラレル配置された複数の単一電線、リッツ線または成形電線などが挙げられる。
【0027】
本発明による型巻コイル20は、電線部材22からなる少なくとも1回巻きの360°巻線から構成されている。また、重畳隣接してパラレルに延びる複数の巻線30から型巻コイルを製造することも本発明の範囲に属する。コイル6当たりの型巻コイル20の数は、コイル6のセグメント数と称される。型巻コイル20のすべての巻線30は同一の巻き付け方向を有しており、これは数学的に正の方向つまり時計回り方向あるいは数学的に負の方向つまり反時計回り方向である。さらに、コイル6のすべての型巻コイル20は同一の巻き付け方向を有している。図4から理解できるように、本発明による型巻コイル20は、好ましくは、互いに平行に延びる複数の巻線30を有しており、各々の型巻コイル20は2つの巻線辺ないし型巻コイル側辺部24a、24b、詳細には、上側型巻コイル側辺部24aおよび下側型巻コイル側辺部24bを有している。型巻コイル20は、互いに対向するこれらの端辺部24a、24bに、型巻コイル側辺部24aと24bとのつなぎ部を与えるために、対応箇所に側端連結部が設けられている。本発明によるコイルを構成しているすべての型巻コイル20のすべての側端連結部は、共同して、軸方向で互いに反対側に位置する端部に本発明による斜め巻コイルのコイル端を作り出している。
【0028】
側端連結部を通る対角線Yに対する、型巻コイル側辺部24a、24b間の垂直間隔はコイル幅Aとなる。本発明による斜め巻コイル6において、コイル幅Aは最大値と値0との間を変動する。つまり、本発明による斜め巻コイル6において、両方の型巻コイル側辺部24a、24bは、それらの側端連結部の領域に位置する転回点で出会うことになる。本発明による型巻コイル20は、さまざまな形状で形成可能である。これについては、図4図5図6が参照される。その形状は、特に、磁界とコイルの磁束鎖交、電線部材22の達成可能な占積率および達成可能な機械強度に影響を及ぼす。図4に示すように、変形の菱形形状が好適であり、この場合、両方の端辺部をつなぐ対角線Yは、それに対して垂直をなして、最大のコイル幅:Aの領域において巻線を貫通する対角線よりも長い。さらにまた、中央部がまっすぐに延びた変形の菱形形状−図5参照−あるいは、楕円形状−図6参照−も実現可能である。さらに、純然たる菱形形状も実施可能であり、あるいは台形形状も実施可能である。
【0029】
図2および図3から理解できるように、型巻コイル20は、管状に形成された斜め巻コイルの外周に、互いにオーバラップして、つまり屋根瓦のようにして配置されている。その際、この配置によれば、一連の型巻コイル20は、コイル6の縦軸心16の周りで、径方向外側の型巻コイル側辺部24aを、曲率半径Rを有する外側円筒14a上に位置させると共に、径方向内側に変位した型巻コイル側辺部24bを、曲率半径Rに比較して小さい半径Rを有する円筒14b上に位置させる。さらに、型巻コイル側辺部24aの径方向内側面と、型巻コイル側辺部24bの径方向外側面とを、曲率半径Rを有する中央円筒14c上に位置させるが、その際、R<R<Rであるために、これらの型巻コイルは互いにオーバラップする位置となる。そのため、型巻コイル側辺部24aおよび24bは、詳しくは、縦軸心16を基準にして、円弧状に湾曲しており、型巻コイル側辺部24aは曲率半径R、Rを有し、型巻コイル側辺部24bは曲率半径R、Rを有している。円筒14a、14bは管状のシェル14を構成している。したがって、このシェル14内において、それぞれ型巻コイル側辺部24a、24bを有する一連の型巻コイル20が延びていることになる。斜め巻きコイル6の外周領域に、一連の型巻コイル20が上述したようにしてオーバラップしながら配置されていることにより、図2に示した側面図にでは、径方向内側に変位して延びる型巻コイル側辺部24bは、その上に位置する、径方向外側に変位した型巻コイル側辺部24aによって覆われてしまうので、型巻コイル側辺部24bは見えなくなっている。
【0030】
型巻コイル側辺部24a、24bが上述したように形成、配置されているので、図3および図5に示すように、端辺部26a、26bの領域で側端連結部を経て互いにつながっており、その際、これらの側端連結部は型巻コイル側辺部24a、24b間の径方向面変位を巻線段差部28によって繋ぐ。したがって、各々の巻線は、巻線によって形成された型巻コイル側辺部24a、24bを連結する2つの巻線段差部28を有している。図示された実施形態において、コイル6は円形の円筒断面を有する中空円筒として形成されているために、コイル本体18は断面が円形の円筒を形成している。このような実施態様において、巻線段差部28は、型巻コイル側辺部24a、24bの間を、径方向に延び、その移行は半径に対して斜めに傾斜して、真っ直ぐまたはやや円弧をなして延びている。この実施形態では、型巻コイル側辺部24a、24bの曲率半径R、R、Rは、一方の端辺部26aから他方の端辺部26bに至る型巻コイル20の縦軸心16全体にわたってそれぞれ一定不変である。
【0031】
図9は、本発明による型巻コイル20の別実施形態を示したものである。この型巻コイル20において、端辺部26a、26bは、端辺部26a、26b間を結ぶ長い対角線Yに対して垂直方に向に、たとえば上下垂直方向に折り曲げられている。折り曲げ角αは、縦軸心ないし対角線Yを基準として、0〜90°であってよい。この場合、折り曲げ角αはそれぞれの外角である。図示された実施形態において、折り曲げられた折り曲げ端26dおよび26eは、互いに反対方向に折り曲げられている。ただしまた、両方の折り曲げ端26d、26eを等しく、一方の方向または他方の方向に折り曲げることも本発明の範囲に属する。図10は、図9に示した折り曲げられた端辺部26d、26eを有した本発明による多数の型巻コイル20からなる本発明によるコイルの実施形態を示したものである。この場合−図9に示すように−端辺部26dは、コイルの縦軸心から外側の方向に向けられ、つまり外側に折り曲げられており、反対側の端辺部26eは、コイル縦軸方向に向かって内側に向けられ、つまり内側に折り曲げられている。既に述べたように、等しく内側に向かってまたは外側に向かって折り曲げられた端辺部を有する型巻コイルを形成するかあるいは型巻コイル20の一端のみにそれぞれ内側に折り曲げられたもしくは外側に折り曲げられた端辺部を設けることも本発明の範囲に属する。内側に折り曲げられたまたは外側に折り曲げられた端辺部を有する型巻コイル20の実施形態において、巻線段差部28は、内側に折り曲げられたまたは外側に折り曲げられた端辺部26d、26eの領域を、詳細には軸方向に、延びている。
【0032】
図11は、本発明によるコイル6の別途幾何形状によるコイル本体18を示したものであり、この場合、コイル本体18は円錐台状に形成されている。コイル本体18がこのように円錐台状に形成されている場合、本発明による型巻コイル20では、型巻コイル側辺部24aおよび24bの半径が、一方の、より小さな直径を有するコイル端から、他方の、より大きな直径を有するコイル端に向かって連続的に増大するように形成される。この場合、型巻コイル側辺部24a、24b間の巻線段差部28は径方向及び軸方向に延びることになる。
【0033】
図12は、図11に示した実施形態と、円筒状に形成されたコイル本体18の実施形態とのコンビネーションによる本発明によるコイルを示したものであり、この場合、コイル本体18は、円筒区域と、それに続く円錐台区域とから構成されている。
【0034】
本発明によれば、各型巻コイルは、巻き付け工程に際する電線部材22の直接の形状形成によって、つまり、巻き付け工程に際して生ずる変形力が巻線30を形成する電線部材22に対して及ぼす作用によって形状形成される。このために、曲率半径R、R、Rで湾曲している型巻コイル側辺部24a、24bならびにこれらの端辺部24a、24bをつなぐ巻線段差部28を有するように巻き付ける工程が完了した型巻コイル20の事後的な変形は不要となる。
【0035】
巻き付けられた各型巻コイル20の内部において、電線部材22の個々の巻線30−これについては図7の右側半分が参照される−は、特に、いわゆる焼付け塗料からなるコーティングを介した溶着接合によって結合され、それによって、形状固定されている。焼付け塗料とは、通例、加熱によって熱可塑化して、電線部材22の巻線30を互いに接着ないし融着接合するポリアミドコーティングである。電線部材22は、焼付け塗料の下に、好ましくはさらに、特にポリウレタンからなる電気絶縁層を有している。
【0036】
図4に示すように、電線部材22は、各々の型巻コイル20の内部において、内側巻線始端32から外側巻線終端34まで、らせん状に、単層または多層を形成し、好ましくは交差しないようにして巻き付けられている。この巻き付けは、図4における描画平面に対して鉛直方向に延び、組み付けられた状態でコイル本体18の内部において径方向に向かって延びる巻き付け軸心36を中心にして行なわれる。その際−図示されているように−型巻コイル20は、径方向上方から見て(図4)、軸方向に長い対角線を有し、周方向に短い対角線を有する変形した菱形形状に形成することができる。さらに、各々の型巻コイル20は−コイル本体18の縦軸心16に対して垂直をなす切断面(図4のV−V面)で見て、平坦な方形弧状のコイル断面を有している(図7参照)。同図の左側領域には、前記断面が簡略化されてハッチングによって示してある。
【0037】
図7および図8に例示的に示すように、電線部材22としては、好ましくは、隣接して平行に延び、特に焼付け塗料コーティング25を介した溶着接合によって互いに連結された少なくとも2本、たとえば図示するように4本の電線23を有する連結電線を使用することができる。この場合、連結電線の電線23は型巻コイル20の個々の巻線30の内部において互いに隣接していると共に、型巻コイル20内において径方向に重畳することになる。
【0038】
連結電線に代えて、単一電線またはリッツ線も電線部材22として使用可能である。リッツ線の場合、これは楕円状または平坦状に圧縮し、連結電線と同様に巻き付けることができる。この場合、リッツ線も型巻コイル20の内部において交差せずに延びているのが好ましいが、その際、リッツ線内部において個々の心線が捻りないし撚りによって交差してもよい。単一電線としては、円形断面を有する電線、特に単層コイルの場合では型巻コイルの径方向厚さが電線直径に等しい、あるいは多層コイルの場合では型巻コイルの径方向厚さが巻き数倍された電線直径に相当する太さを有する、いわゆる太径電線を使用することが可能である。別の形態として、縦長とくに方形の断面を有するいわゆるフラット電線も単一電線として使用可能であり、その際、フラット電線は、連結電線または平坦に圧縮されたリッツ線と同様にして巻き付けられるために、型巻コイル20の径方向厚さはその電線高さに相当する。
【0039】
図13図18を参照して、自己支持形斜め巻コイル6用の型巻コイル20を製造するための本発明による装置を説明する。この装置は、回転軸心42を中心にして回転駆動される巻き付け装置40を有している。この場合、回転軸心42は、上述した型巻コイル20の巻き付け軸心36に相当している。巻き付け装置40は、回転軸心42の横断方向の分割面で、2つの加工台44および46に分割されている。これらの二分割構造の加工台44、46は、互いに対向する端面に相補形状形成面48、50を形成している。一方の加工台44の形状形成面48は、巻き付けされる型巻コイル20の所望の内側面輪郭に適合された凸状の表面形状を有し、他方の加工台46の形状形成面50は、形状形成面48に対して相補的な、つまり、巻き付けされる型巻コイル20の外側面輪郭を形状形成するための凹状の表面形状を有している。このことは、各々の形状形成面48、50は、異なった曲率半径R、R、Rで湾曲している型巻コイル側辺部24a、24bを形状形成するための側面部A及び側面部Bならびに、側面部Aと側面部Bの間に、巻線段差部28を形状形成するためのブリッジ部Cが存在することを意味している。ブリッジ部Cは、ブリッジ部Cの陰型に相当する表面形状を有している。この場合、少なくとも1つの形状形成面の領域、図示するように、たとえば第1の加工台44の形状形成面48の領域に、電線部材22の巻線30の延び形状を決定するための転回点として、突起した一連の巻き付け部材52が配置される。したがって、これらの巻き付け部材52は、型巻コイル20の内側転回点の位置を決定する。これについては、特に、図18が参照される。この図18では、巻き付け完了した型巻コイル20が同時に図示されている。さらに、図14および図18に示すように、一方の形状形成面48、50の領域、たとえば形状形成面48の領域に、電線部材22の巻き付け始端32用の固定具54が設けられている。この固定具54は、好ましくは、電線部材22の端部を挟み込んで容易に摩擦係止固定することのできる開閉クランプによって形成される。
【0040】
さらに、図13図18から理解できるように、両方の加工台44、46は互いに軸方向で相対移動可能である。したがって、加工台の一方は固定とし、他方の加工台は可動としてもよい。これにより、加工台44、46は、互いに離間した取り出しポジション(図13図17および図18参照)と、互いに近接した巻き付けポジションとの間を移動する。その際、巻き付けポジション(図15参照)において、両方の形状形成面48、50は巻き付け隙間56だけ互いに離間している。この巻き付け隙間56は寸法調整可能であり、それぞれの電線部材22に合わせて、電線部材22が巻き付けに際して僅かな巻き付け遊びで所定通りに案内されると共に、形状形成面48、50の間で適合するように形状形成されながら案内される寸法に設定される。巻きつけ工程時の状況については図15が参照される。2つの近接した加工台44および46からなる巻き付け装置40が回転軸心42を中心にして回転することにより、一端が固定具54に固定された電線部材22(鎖線で示唆されいる)は、巻き付け隙間56に自動的に引き込まれ、その際、巻き付け部材52周りで所定通りに巻き付けられる。形状形成面48、50によって定められた巻き付け隙間56の形状により、形状形成面48、50に合わせた電線部材22の湾曲形状の形成が行なわれる。巻き付け装置40は、所望の数の巻線30を有した型巻コイル20を作り出すための巻き付けが完了するまで、回転する。
【0041】
加工台44、46は、巻き付けポジションからさらに一定の距離s(ここで、sは0mmを上回り、0.5mm以下である)だけ、相対近接移動可能であるため(これについては図16を参照のこと)、巻き付け完了した型巻コイル20は巻き付け遊びをなくしながら固着可能である。本発明による装置は、さらに、巻き付け完了して固着された型巻コイル20に、巻き付け端を接点として、電線焼き付け塗料コーティングの焼き付けのために型巻コイル20を電気的に加熱するために、適切な時間および適切なアンペアでもって適切に加熱できるだけの電流を印加する装置を有している。
【0042】
別実施形態として、含浸塗料またはプラスチックの吹付けによる巻線の接着を行なうことも可能である。さらに、2つの加工台44、46は、好適には、ガイド孔58aに嵌合する軸方向ないし軸心と平行に延びるピン状のガイドエレメント58を介して、互いに回転方向に相対整合されて案内されている。これにより、両方の形状形成面48、50は常に互いに正確な位置合わせで対向することが保証される。
【0043】
図19図23は、図9に示した型巻コイル20を製造するための本発明による装置を示したものである。ここでも、図1図18と同様に、同一の部品には同一の符号が付されているので、図19図23に示した装置の構造形態および機能に関しては、全体として、図1図18に関して行なった説明が参照される。図19図23に示した装置において、形状形成面48、50の縦方向Y−Yで見て、それぞれの加工台44、46は、それぞれの形状形成面48、50の間に形成された巻き付け隙間56の互いに反対側に位置する端部にそれぞれ形状形成面48、50に対して90°をなして延びる隙間部56a、56bを有している。これらの隙間部56a、56bは互いに反対方向に延びており、型巻コイル20の、たとえば直角に折り曲げられた端辺部26a、26b(図9参照)の形状形成に用いられる。そのため、それぞれの隙間部56a、56bを含んだ形状形成面48、50の面状張り出し部48a、50aは、それぞれ、型巻コイル20の端辺部26a、26bの対向面の陰型輪郭を有している。面状張り出し部48a、50aを形成するために、各々の加工台44、46は、加工台44、46の扁平部59によって形成された面状張り出し部48aないし50aを有すると共に、加工台44、46に形成された加工台突出部60を有しており、その際、巻き付けポジションにおいて、一方の加工台44、46の加工台突出部60は、扁平部59によって形成された他方の加工台44、46の面状張り出し部48aに被さり、これによって、それぞれの隙間部56a、56bが形成される。これについては、特に、図19および図22が参照される。
【0044】
図19は、図13図18に関連して説明したように、加工台44、46が互いに離間し、電線始端が固定具54に挟み込み固定され、電線部材22が巻き付け開始されるポジションに位置する本発明による装置を示した図である。図20は、図19に示した本発明による装置の、巻き付け工程開始時の相互近接状態を示したものであり、その際、電線部材22は、形状形成面48、50と面状張り出し部48a、50aとの間に形成される巻き付け隙間56および隙間部56a、56bに層を成して巻き付けられて型巻コイルが形成される。
【0045】
図21は、巻き付け工程終了後の近接した状態にある本発明による装置を示したものであり、この場合、加工台44、46の間の巻き付け隙間56は巻き付け終了した型巻コイル20で完全に満たされていることから、型巻コイル20の巻き付けは完了していることが読み取れる。
【0046】
図22は、本発明による装置がなお近接した状態にある場合の、折り曲げられた端辺部26a、26bを有する巻き付け完了した型巻コイル20の断面を示したものである。この場合、型巻コイル20の折り曲げられた端辺部26a、26bは、扁平部59と加工台44、46の加工台突出部60との間に位置していることが読み取れる。さらに、この図は、ガイドエレメント58がそれに対向するガイド孔58aに嵌合した様子も示している。
【0047】
図23は、型巻コイル20を本発明によるツールから取り出すことのできる、型巻コイル20の完成後の、本発明による装置の離間ポジションを示したものである。
【0048】
最後に、自己支持形斜め巻コイル用の型巻コイル20を製造するための本発明による方法を説明する。本発明によれば、型巻コイル20は、巻き付け工程時の、当該工程に際して生ずる巻き付け力による電線部材22の直接の形状形成により(このことにより巻き付け完了した型巻コイル20の事後的な変形が不要となる)、異なった曲率半径で湾曲された型巻コイル側辺部24aおよび24bならびに端辺部の巻線段差部28および、場合によっては折り曲げられた端辺部26a、26bをも備えるように、形成される。これは、図13図18ないし図19図23に示した本発明による装置を用い、上記に説明したようにして行なわれる。型巻コイル20の形状形成を伴いながらの巻き付け工程が完了した後、前記コイルは、電線部材22の焼き付け塗料コーティング25の焼き付けのため、一時的に加熱される。好ましくは、型巻コイル20が、加熱のために、一時的に電流が印加されることにより、この加熱は内部電熱によって行なわれることが可能である。巻き付け工程時の回転方向は矢印Zで表されている。
【0049】
所定の冷却時間をおいた後、このような完成された型巻コイル20は、加工台44、46を図18図23に示した取り出しポジションに移動させることにより、装置から取り出される。取り出し用に、一連の巻き付け部材52の少なくとも一部をそれぞれの加工台に着脱式に取り付けて、型巻コイル20の取り出し前に一連の巻き付け部材52の少なくとも一部を取り外すことができるようにしておくのが好ましい。
【0050】
所定の数の型巻コイル20の製造後、これらの型巻コイルは互いに部分的にオーバラップして組み付けられてコイル本体18とされ、機械的に固定されて、さらに、焼き付け塗料コーティング25の焼き付けのために一時的に加熱される。これにより、図2図3および6bに示すように、自己支持形の斜め巻コイル6が生ずる。
【0051】
本発明は、図示説明した実施形態に制限されるものではなく、本発明の趣旨と同一の機能を有するあらゆる実施形態をも含むものである。上記実施形態は、必ずしも、組み合わされたすべての特徴に制限されるものではなく、むしろ、個々の各々の部分特徴は、その他のあらゆる部分特徴から切り離されても、それ自体として発明上の意義を有するものであることは明らかである。さらに、本発明は、従来もそれぞれの独立した請求項によって定義された特徴コンビネーションに制限されるものではなく、総じて開示されたすべての個別特徴のうちの特定の特徴及びその他の特徴の任意の組み合わせによって定義することが可能である。このことは、基本的にそれぞれの独立した請求項のいずれの個別特徴も実際にはなくすことも可能であり、また本出願のその他の箇所に開示された少なくとも1つの個別の特徴によって置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0052】
6:斜め巻コイル
16:縦軸心
20:型巻コイル
22:電線部材
24a,24b:型巻コイル側辺部
26a,26b:端辺部
28:巻線段差部
30:巻線
32:巻線始端
34:巻線終端
40:巻き付け装置
42:回転軸心
44,46:加工台
48,50:形状形成面
48a:面状張り出し部
52:巻き付け部材
54:固定具
59:扁平部
58:軸方向ガイドエレメント
60:加工台突出部
:径方向外側の型巻コイル側辺部の曲率半径
:径方向内側の型巻コイル側辺部の曲率半径
A:巻線幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23