(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のドラム式洗濯機の一実施形態である乾燥機能を有さないドラム式洗濯機について、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、ドラム式洗濯機1の構成を示す側面断面図である。
【0023】
ドラム式洗濯機1は、外観を構成する筐体10を備える。筐体10の前面10aは、中央部から上部にかけて傾斜し、傾斜した面に洗濯物の投入口11が形成される。投入口11は、開閉自在なドア12により覆われる。
【0024】
筐体10内には、外槽20が、複数のダンパー21により弾性的に支持される。外槽20内には、ドラム22が回転自在に配される。外槽20およびドラム22は、水平方向に対し、後面側が低くなるよう傾斜する。これにより、ドラム22は、水平方向に対して傾斜した傾斜軸を中心に回転する。外槽20およびドラム22の傾斜角度は、10〜20度程度とされ得る。外槽20の前面の開口部20aおよびドラム22の前面の開口部22aは、投入口11に対向し、投入口11ともにドア12により閉鎖される。ドラム22の周壁には、多数の脱水孔22bが形成される。さらに、ドラム22の内周面には、3つのバッフル23が周方向にほぼ等しい間隔で設けられる。
【0025】
ドラム22の後部には、回転体24が回転自在に配される。回転体24は、ほぼ円盤形状を有する。回転体24の表面には、中央部から放射状に延びる複数の突状部24aが形成される。回転体24は、ドラム22と同軸に回転する。
【0026】
外槽20の後方には、ドラム22および回転体24を駆動するトルクを発生させる駆動部30が配される。駆動部30は、洗い工程およびすすぎ工程時には、ドラム22および回転体24を同一方向に異なる回転速度で回転させる。
【0027】
具体的には、駆動部30は、ドラム22を、ドラム22内の洗濯物に加わる遠心力が重力より小さくなる回転速度で回転させ、回転体24を、ドラム22の回転速度よりも速い回転速度で回転させる。一方、駆動部30は、脱水工程時には、ドラム22および回転体24を、ドラム22内の洗濯物に加わる遠心力が重力よりはるかに大きくなる回転速度で一体的に回転させる。駆動部30の詳細な構成は、追って説明される。
【0028】
外槽20の底部には、排水口部20bが形成される。排水口部20bには、排水バルブ40が設けられる。排水バルブ40は、排水ホース41に接続される。排水バルブ40が開放されると、外槽20内に溜められた水が排水ホース41を通じて機外へ排出される。
【0029】
筐体10内の前方上部には、洗剤ボックス50が配される。洗剤ボックス50には、洗剤が収容される洗剤容器50aが前方から引き出し自在に収容される。洗剤ボックス50は、筐体10内の後方上部に配された給水バルブ51に、給水ホース52によって接続される。また、洗剤ボックス50は、外槽20の上部に、注水管53により接続される。給水バルブ51が開放されると、水道栓から水道水が、給水ホース52、洗剤ボックス50および注水管53を通じて外槽20内に供給される。この際、洗剤容器50aに収容された洗剤が、水に押し流れて外槽20内に供給される。
【0030】
次に、駆動部30の構成について詳細に説明する。
【0031】
図2および
図3は、駆動部30の構成を示す断面図である。
図2は、駆動部30の駆動形態が、二軸駆動形態に切り替えられた状態を示し、
図3は、駆動部30の駆動形態が、一軸駆動形態に切り替えられた状態を示す。
図4は、翼プーリ510およびドラムプーリ610の構成を示す図である。
図4(a)は、翼プーリ510を前方から見た図であり、
図4(b)は、ドラムプーリ610を後方から見た図である。
図5は、クラッチガイド710およびクラッチ体720の構成を示す図である。
図5(a)は、クラッチガイド710およびクラッチ体720の側面断面図、
図5(b)は、クラッチガイド710を前方から見た図、
図5(c)は、クラッチガイド710を後方から見た図である。
図6は、クラッチ体720を構成するクラッチ部721の構成を示す図である。
図6(a)は、クラッチ部721を前方から見た図、
図6(b)は、クラッチ部721の側面図、
図6(c)は、クラッチ部721を後方から見た図である。
【0032】
駆動部30は、駆動モータ100と、第1回転軸200と、第2回転軸300と、軸受ユニット400と、翼減速機構500と、ドラム減速機構600と、クラッチ機構部700とを含む。
【0033】
駆動モータ100は、ドラム22および回転体24を駆動するためのトルクを発生する。駆動モータ100は、たとえば、インナーロータ型のDCブラシレスモータであり、ハウジング110内でロータに接続されたモータ軸120が、ハウジング110から後方に延びる。
【0034】
第1回転軸200は、中空形状を有する。第1回転軸200の内部には、前部および後部に、それぞれ、第1すべり軸受211および第2すべり軸受212が設けられ、前端部に、メカニカルシール213が設けられる。
【0035】
第2回転軸300は、第1回転軸200に内包される。第2回転軸300の前部は、第1回転軸200から前方に突出し、第2回転軸300の後部は、第1回転軸200から後方に突出する。第2回転軸300は、外周面が第1すべり軸受211および第2すべり軸受212により受けられ、第1回転軸200内において円滑に回転する。また、メカニカルシール213により、第2回転軸300と第1回転軸200との間への水の侵入が防止される。
【0036】
軸受ユニット400には、中央部にほぼ円筒状の軸受部410が設けられる。軸受部410の内部には、前部および後部に、それぞれ、第1転がり軸受411および第2転がり軸受412が設けられ、前端部に、メカニカルシール413が設けられる。第1回転軸200は、外周面が第1転がり軸受411および第2転がり軸受412により受けられ、軸受部410内において円滑に回転する。また、メカニカルシール413により、第1回転軸200と軸受部410との間への水の侵入が防止される。さらに、軸受ユニット400には、軸受部410の周囲に固定フランジ部420が形成される。
【0037】
軸受ユニット400は、固定フランジ部420において、ネジ止等の固定方法により、外槽20の後面に固定される。軸受ユニット400が外槽20に装着された状態において、第2回転軸300および第1回転軸200が外槽20の内部に臨む。ドラム22が図示しないネジにより第1回転軸200に固定され、回転体24がネジ310により第2回転軸300に固定される。
【0038】
翼減速機構500は、翼プーリ510と、第1モータプーリ520と、翼ベルト530とを含む。駆動モータ100の回転が、翼プーリ510と第1モータプーリ520との外径比で決まる減速比に従って減速され、第2回転軸300に伝達される。
【0039】
翼プーリ510は、第2回転軸300の後端部により回転自在に支持される。翼プーリ510には、中央部に第2回転軸300が挿入される挿入孔511が形成され、この挿入孔511と第2回転軸300との間に前後2つの転がり軸受512、513が介在する。翼プーリ510は、2つの転がり軸受512、513により、第2回転軸300に対して円滑に回転する。
【0040】
図4(a)に示すように、翼プーリ510の前面には、環状の被係合凹部514が形成される。被係合凹部514の外周面には、全周に亘ってスプライン515が形成される。第2回転軸300の後端部に取り付けられた固定ネジ320によって、翼プーリ510の後方への抜けが防止される。
【0041】
第1モータプーリ520は、駆動モータ100のモータ軸120の先端部に取り付けられる。翼ベルト530は、翼プーリ510と第1モータプーリ520との間に架け渡される。
【0042】
ドラム減速機構600は、ドラムプーリ610と、第2モータプーリ620と、ドラムベルト630とを含む。駆動モータ100の回転が、ドラムプーリ610と第2モータプーリ620との外径比で決まる減速比に従って減速され、第1回転軸200に伝達される。
【0043】
ドラムプーリ610は、前面が開放された皿状に形成され、プーリ部611とプーリ部611より外径の小さな固定部612とを含む。プーリ部611の外径、即ち、ドラムプーリ610の外径は、翼プーリ510の外径より大きいため、ドラム減速機構600による減速比は、翼減速機構500による減速比よりも大きい。
【0044】
固定部612には、中央部に挿入孔613が形成される。挿入孔613に第1回転軸200の後端部が挿入され、スプラインを用いた圧入等、所定の固定方法により第1回転軸200の後端部が挿入孔613に固定される。これにより、ドラムプーリ610が第1回転軸200の後端部に固定される。
【0045】
図4(b)に示すように、固定部612の後面には、挿入孔613の外周に、環状の被係合凹部614が形成される。被係合凹部614の外周面には、全周に亘ってスプライン615が形成される。
【0046】
後方に凹む凹部616であるプーリ部611の内部に、軸受部410の後端部が収容される。これにより、駆動部30の前後方向において、軸受ユニット400とドラムプーリ610とが重なる。
【0047】
第2モータプーリ620は、駆動モータ100のモータ軸120の根元部に取り付けられる。ドラムベルト630は、ドラムプーリ610と第2モータプーリ620との間に架け渡される。
【0048】
クラッチ機構部700は、駆動部30による駆動形態を、第2回転軸300に翼プーリ510の回転が伝達可能となるように第2回転軸300と翼プーリ510とを連結することにより、ドラム22と回転体24とを互いに異なる回転速度で回転させる二軸駆動形態と、第2回転軸300にドラムプーリ610の回転が伝達可能となるように第2回転軸300とドラムプーリ610とを連結することにより、ドラム22と回転体24とを同じ回転速度で回転させる一軸駆動形態との間で切り替える。二軸駆動形態は、本発明の第1駆動形態に相当し、一軸駆動形態は、本発明の第2駆動形態に相当する。
【0049】
クラッチ機構部700は、クラッチガイド710と、クラッチ体720と、クラッチレバー730と、レバー支持部740と、クラッチ駆動装置750とを含む。
【0050】
クラッチガイド710およびクラッチ体720は、第1回転軸200および第2回転軸300の軸線方向に並ぶドラムプーリ610と翼プーリ510との間に配置される。
【0051】
図5に示すように、クラッチガイド710は、前面が開放された円筒形状を有する。クラッチガイド710の外周面には、全面に、全周に亘ってスプライン711が形成される。クラッチガイド710の中央部には、挿入孔712が形成される。挿入孔712には、キー溝713が形成される。クラッチガイド710は、挿入孔712が第2回転軸300に通され、キー溝713と図示しないキーとを用いた固定方法により第2回転軸300に固定される。これにより、クラッチガイド710は、第2回転軸300とともに回転する。
【0052】
図5(a)に示すように、クラッチ体720は、クラッチ部721と、包囲部722と、転がり軸受723とを含む。クラッチ部721は、前面および後面が開放された円筒形状を有する。
図6に示すように、クラッチ部721の外周面には、前部および後部に、それぞれ全周に亘って前スプライン724および後スプライン725が形成される。
【0053】
クラッチ部721の内径は、クラッチガイド710の外径とほぼ等しくされ、クラッチ部721の前後の寸法は、クラッチガイド710の前後の寸法より大きくされる。クラッチ部721の内部に、クラッチガイド710が挿入される。クラッチ部721の内周面には、全周に亘って内スプライン726が形成され、この内スプライン726が、クラッチガイド710のスプライン711に噛み合う。内スプライン726の前後の寸法は、スプライン711の前後の寸法より大きくされる。
【0054】
内スプライン726とスプライン711と係合により、クラッチ部721は、クラッチガイド710、即ち、クラッチガイド710が固定された第2回転軸300に対して第2回転軸300の軸線方向への移動でき且つ第2回転軸300と共に回転できる状態となる。
【0055】
包囲部722は、円環状に形成され、クラッチ部721が回転自在となるように、クラッチ部721の中央部を包囲する。クラッチ部721と包囲部722との間に、転がり軸受723が設けられる。転がり軸受723は、大小2つの止め輪727、728により前後に動かないよう固定される。転がり軸受723により、クラッチ部721は、包囲部722に対して、円滑に回転する。
【0056】
クラッチレバー730は、その上端部が、包囲部722に、包囲部722に対して回転可能となるように連結される。また、クラッチレバー730は、レバー支持部740に設けられた支軸741に回動自在に支持される。
【0057】
クラッチ駆動装置750は、アクチュエータ751と、操作レバー752とを含む。アクチュエータ751は、操作レバー752を前後に移動させる。操作レバー752は、クラッチレバー730の下端部に連結される。クラッチレバー730の下端部は、操作レバー752に対して回転可能である。
【0058】
レバー支持部740およびクラッチ駆動装置750は、図示しない取付プレートに固定され、この取付プレートが、軸受ユニット400、または、外槽20に装着される。
【0059】
なお、クラッチレバー730、レバー支持部740およびクラッチ駆動装置750は、クラッチ体720を移動させるための移動機構部を構成する。
【0060】
駆動部30の駆動形態が、一軸駆動形態から二軸駆動形態に切り替えられる場合、
図2に示すように、アクチュエータ751の内部から操作レバー752が前方に押し出される。クラッチレバー730の下端部が、操作レバー752に押されて前方に移動し、クラッチレバー730が支軸741を中心に後方へ回転する。クラッチレバー730の上端部が後方へ移動し、クラッチ体720が、クラッチレバー730の上端部に押されて後方に移動する。これにより、クラッチ部721の後スプライン725と翼プーリ510のスプライン515とが係合する。
【0061】
後スプライン725とスプライン515とが係合すると、クラッチ部721と翼プーリ510とが回転方向に関して固定されるため、翼プーリ510の回転を、クラッチ部721およびクラッチガイド710を介して第2回転軸300に伝達できる状態となる。このような状態において、駆動モータ100が回転すると、当該回転が翼減速機構500を介して第2回転軸300に伝達され、第2回転軸300に固定された回転体24が回転する。回転体24は、駆動モータ100の回転速度が翼減速機構500による減速比に従って低下した回転速度で回転する。また、駆動モータ100の回転がドラム減速機構600を介して第1回転軸200に伝達され、第1回転軸200に固定されたドラム22が回転する。ドラム22は、駆動モータ100の回転速度がドラム減速機構600による減速比に従って低下した回転速度で回転する。上述の通り、ドラム減速機構600による減速比は、翼減速機構500による減速比より大きいため、回転体24が、ドラム22よりも速い回転速度でドラム22と同じ方向に回転する。
【0062】
ここで、クラッチ部721は、翼プーリ510とともに回転するが、クラッチレバー730は、クラッチ部721が回転自在な状態で連結された包囲部722に連結されているので、クラッチ部721が回転しても、その回転がクラッチレバー730にほぼ伝わることがない。
【0063】
一方、駆動部30の駆動形態が、二軸駆動形態から一軸駆動形態に切り替えられる場合、
図3に示すように、アクチュエータ751の内部へ操作レバー752が引き込まれる。即ち、操作レバー752が後方へ移動する。クラッチレバー730の下端部が、操作レバー752に引かれて後方に移動し、クラッチレバー730が支軸741を中心に前方へ回転する。クラッチレバー730の上端部が前方へ移動し、クラッチ体720が、クラッチレバー730の上端部に押されて前方に移動する。これにより、クラッチ部721の前スプライン724とドラムプーリ610のスプライン615とが係合する。
【0064】
前スプライン724とスプライン615とが係合すると、クラッチ部721とドラムプーリ610とが回転方向に関して固定されるため、ドラムプーリ610の回転を、クラッチ部721およびクラッチガイド710を介して第2回転軸300に伝達できる状態となる。このような状態において、駆動モータ100が回転すると、当該回転がドラム減速機構600を介して第1回転軸200および第2回転軸300に伝達され、ドラム22および回転体24が回転する。ドラム22および回転体24は、駆動モータ100の回転速度がドラム減速機構600による減速比に従って低下した回転速度で同じ方向に一体的に回転する。
【0065】
なお、一軸駆動形態において、駆動モータ100が回転すると、当該回転に伴って翼プーリ510も回転する。しかしながら、翼プーリ510は第2回転軸300に対して空回りするだけであり、翼プーリ510の回転は第2回転軸300に伝達されない。
【0066】
図7は、ドラム式洗濯機1の構成を示すブロック図である。
【0067】
ドラム式洗濯機1は、上述した構成に加え、制御部801、記憶部802、操作部803、水位センサ804、電流検知部805、表示部806、モータ駆動部807、給水駆動部808、排水駆動部809、クラッチ駆動部810およびドアロック装置811を備える。
【0068】
操作部803は、電源ボタン803a、スタートボタン803b、コース選択ボタン803cを含む。電源ボタン803aは、ドラム式洗濯機1の電源を投入および遮断するためのボタンである。スタートボタン803bは、洗濯運転をスタートさせるためのボタンである。コース選択ボタン803cは、洗濯運転に係る複数の洗濯コースの中から任意の洗濯コースを選択するためのボタンである。操作部803は、ユーザに操作されたボタンに応じた入力信号を制御部801に出力する。
【0069】
水位センサ804は、外槽20内の水位を検知し、検知した水位に応じた水位検知信号を制御部801に出力する。
【0070】
表示部806は、コース表示部806aと、工程表示部806bと、給水量表示部806cと、洗剤量表示部806dとを含む。コース表示部806aは、コース選択ボタン803cにより選択された洗濯コースを表示する。工程表示部806bは、洗濯運転において、現在進行中の工程を表示する。給水量表示部806cは、ドラム22内の洗濯物の負荷量に応じて決定された外槽20内へ供給される水の量、即ち、給水量を表示する。洗剤量表示部806dは、ドラム22内の洗濯物の負荷量に応じて決定されたドラム22内へ供給される洗剤の量、即ち、洗剤量を表示する。
【0071】
モータ駆動部807は、制御部801からの制御信号に従って、駆動モータ100に駆動電流を供給する。モータ駆動部807は、駆動モータ100の回転速度を検知する速度センサ、インバータ回路等を有し、制御部801により設定された回転速度で駆動モータ100が回転するよう、駆動電流を調整する。
【0072】
電流検知部805は、モータ駆動部807から駆動モータ100に供給される駆動電流を検知し、駆動電流の大きさに応じた検知信号を制御部801に出力する。
【0073】
給水駆動部808は、制御部801からの制御信号に従って、給水バルブ51に駆動電流を供給する。排水駆動部809は、制御部801からの制御信号に従って、排水バルブ40に駆動電流を供給する。
【0074】
クラッチ駆動部810は、制御部801からの制御信号に従って、アクチュエータ751に駆動電流を供給する。
【0075】
ドアロック装置811は、制御部801からの制御信号に従って、ドア12のロックおよびロック解除を行う。
【0076】
記憶部802は、EEPROM、RAM等を含む。記憶部802には、各種洗濯コースの洗濯運転を実行するためのプログラムが記憶される。また、記憶部802には、これらプログラムの実行に用いられる各種パラメータや各種制御フラグが記憶される。
【0077】
さらに、記憶部802は、負荷量テーブル802aと、給水量テーブル802bと、洗剤量テーブル802cとを含む。
図8(a)、(b)および(c)は、それぞれ、負荷量テーブル802a、給水量テーブル802bおよび洗剤量テーブル802cを示す図である。
【0078】
図8(a)に示すように、負荷量テーブル802aには、複数の負荷量と各負荷量に対応付けられた第2電流値と第1電流値との差分値の範囲とが記憶される。第1電流値は、ドラム22が第1貼付き速度まで加速回転するよう二軸駆動形態で駆動部30を動作させたときに駆動モータ100に供給される駆動電流の値である。第1貼付き速度は、ドラム22内の洗濯物に加わる遠心力が重力より大きく、ドラム22の内周面に洗濯物が貼り付くことができる回転速度である。第2電流値は、ドラム22が第1貼付き速度より速い第2貼付き速度まで加速回転するよう二軸駆動形態で駆動部30を動作させたときに駆動モータ100に供給される駆動電流の値である。なお、第1貼付き速度および第2貼付き速度が、本発明の貼付き速度に相当する。
【0079】
ドラム22を第1貼付き速度または第2貼付き速度まで加速回転させた場合、負荷量が多いほど、ドラム22および回転体24に掛かる回転負荷が大きくなって駆動モータ100に掛かる回転負荷が大きくなるので、第1電流値および第2電流値が大きくなる。負荷量が一定量だけ増加した場合、第2電流値の増加量は、第1電流値の増加量より多くなる。よって、第2電流値と第1電流値との差分値は、負荷量が多いほど大きくなる。負荷量テーブル802aでは、差分値が大きいほど、対応付けられた負荷量が大きな値となる。
【0080】
図8(b)に示すように、給水量テーブル802bには、複数の負荷量と、各負荷量に対応付けられた給水量とが記憶される。負荷量が多いほど、洗濯に多くの水量が必要となるので、給水量テーブル802bでは、負荷量の値が大きいほど、対応付けられた給水量が大きな値となる。
【0081】
図8(c)に示すように、洗剤量テーブル802cには、複数の負荷量と、各負荷量に対応付けられた洗剤量とが記憶される。負荷量が多いほど、洗濯に多くの洗剤が必要となるので、洗剤量テーブル802cでは、負荷量の値が大きいほど、対応付けられた洗剤量が大きな値となる。
【0082】
制御部801は、操作部803、水位センサ804、電流検知部805等からの各信号に基づいて、記憶部802に記憶されたプログラムに従い、表示部806、モータ駆動部807、給水駆動部808、排水駆動部809、クラッチ駆動部810、ドアロック装置811等を制御する。
【0083】
ドラム式洗濯機1は、コース選択ボタン803cによってユーザに選択された洗濯コースの洗濯運転を行う。洗濯運転では、洗い工程、中間脱水工程、すすぎ工程および最終脱水工程が順番に実行される。なお、洗濯コースによっては、中間脱水工程とすすぎ工程とが2回以上行われる場合がある。
【0084】
洗い工程およびすすぎ工程では、駆動部30の駆動形態が、二軸駆動形態に切り替えられる。ドラム22内の洗濯物が水に浸かるよう、投入口11の下縁に至らない所定の水位まで外槽20内に水が溜められ、この状態で、駆動モータ100が、交互に、正転および逆転する。これにより、ドラム22と回転体24とが、回転体24の回転速度がドラム22の回転速度より速い状態で、交互に正転および逆転する。このとき、ドラム22は、洗濯物に作用する遠心力が重力より小さくなる回転速度で回転する。
【0085】
ドラム22内の洗濯物が、バッフル23で掻き上げられては落とされ、ドラム22内でタンブリングする。これにより、洗濯物は、ドラム22の内周面に叩き付けられる。加えて、ドラム22の後部では、回転する回転体24の突状部24aに洗濯物が接触し、突状部24aによって洗濯物が擦られたり撹拌されたりする。これにより、洗濯物が洗われる、あるいは、すすがれる。
【0086】
このように、洗いおよびすすぎ時には、ドラム22の回転による機械力のみならず回転体24による機械力が洗濯物に付与されるので、洗浄性能の向上が期待できる。 中間脱水工程および最終脱水工程では、駆動部30の駆動形態が、一軸駆動形態に切り替えられる。駆動モータ100、即ち、ドラム22および回転体24は、ドラム22内の洗濯物に作用する遠心力が重力よりはるかに大きくなる回転速度で一体的に回転する。遠心力の作用により、洗濯物が、ドラム22の内周面に押し付けられ、脱水される。
【0087】
このように、脱水時には、ドラム22と回転体24とが一体的に回転するので、ドラム22に張り付いた洗濯物が回転体24により撹拌されるようなことがなく、洗濯物を良好に脱水できる。
【0088】
さて、本実施のドラム式洗濯機1では、洗濯運転が開始されると、洗い工程が行われる前に、まず、ドラム22内の洗濯物の負荷量が検知され、検知された負荷量に基づいて給水量と洗剤量とが決定され、決定された給水量と洗剤量とが、それぞれ、給水量表示部806cと洗剤量表示部806dに表示される。
【0089】
本実施の形態では、制御部801が、ドラム22の内周面に洗濯物が貼り付くことができる貼付き速度までドラム22が加速回転するよう二軸駆動形態で駆動部30を動作させる。そして、制御部801が、ドラム22が貼付き速度まで加速回転する際にドラム22およびドラム22に対して相対的に回転する回転体24に掛かる回転負荷を、駆動モータ100の駆動電流の形態で検知し、2つの回転負荷、即ち、2つの回転負荷の大きさを表す駆動電流の大きさに基づいて負荷量を検知する。
【0090】
より具体的には、制御部801は、ドラム22を、第1貼付き速度まで加速回転させ、続いて第1貼付き速度より速い第2貼付き速度まで回転させ、第2貼付き速度までの加速度回転と第1貼付き速度までの加速度回転のそれぞれにおいて検知された駆動電流の大きさの差分値、即ち、第2電流値と第1電流値の差分値を求め、その差分値に基づいて負荷量を検知する。
【0091】
図9(a)および(b)は、ドラム22が第1貼付き速度または第2貼付き速度まで加速回転する際のドラム22内の洗濯物の状態を模式的に示す図である。
図9(a)は、負荷量が少ない場合であり、
図9(b)は、負荷量が多い場合である。
図9(c)は、負荷量と駆動モータ100の駆動電流との関係を模式的に示す図である。
図9(d)は、負荷量と駆動電流の差分値との関係を模式的に示す図である。
【0092】
負荷量検知のために、停止状態からドラム22を加速回転させると、
図9(a)および(b)に示すように、やがて、ドラム22内では、遠心力の作用で洗濯物がドラム22の内周面に貼り付き、洗濯物がリング状となる。本実施の形態では、駆動部30の駆動形態が二軸駆動形態に切り替えられているので、回転体24がドラム22より速い回転速度で回転する。即ち、回転体24がドラム22に対して相対的に回転する。
【0093】
図9(a)のように、負荷量が少ない場合、洗濯物はドラム22の内周面付近に存在し、ドラム22の中央部が大きく空いているため、回転する回転体24に洗濯物が触れず、回転体24には洗濯物による回転負荷が掛からない。
【0094】
一方、
図9(b)に示すように、負荷量が多くなってきて、洗濯物がドラム22の中心近くまで詰まってくると、回転する回転体24に洗濯物が触れるので、回転体24には洗濯物による回転負荷が掛かる。
【0095】
先に
図11を参照して説明したように、ドラム22の回転負荷のみを、駆動モータ100の駆動電流により検知する場合、
図9(c)の破線に示すように、負荷量と貼付き速度までの加速回転するときの駆動電流値との関係を示す負荷量−電流特性ラインは負荷量が多い領域で勾配が小さくなる。これに対し、本実施の形態のように、ドラム22の回転負荷と回転体24の回転負荷とを駆動モータ100の駆動電流により検知する場合には、負荷量が多くなると、
図9(c)の斜線のように、回転体24に回転負荷が掛かってくるため、
図9(c)の実線に示すように、負荷量−電流特性ラインは、負荷量が多い領域でも勾配が小さくなりにくく、全体的に線形に近づく。
【0096】
第1電流値および第2電流値に係る負荷量−電流特性ラインが線形に近くなるので、
図9(d)に示すように、第2電流値と第1電流値の差分値に係る負荷量−差分値特性ラインも線形に近くなる。負荷量−差分値特性ラインは、予め試験等を行うことにより求めることができ、負荷量−差分値特性ラインに基づいて、
図8(a)の負荷量テーブル802aの各値が設定される。
【0097】
図10は、負荷量に応じた給水量と洗剤量とを表示する制御処理を示すフローチャートである。
図10(a)は、メインの制御処理を示すフローチャートであり、
図10(b)は、負荷量検知処理を示すフローチャートである。
【0098】
洗濯運転か開始されると、
図10の制御処理が開始される。洗濯運転が開始された当初は、駆動部30の駆動形態は、一軸駆動形態に切り替えられている。
【0099】
図10(a)を参照して、制御部801は、まず、アクチュエータ751を動作させてクラッチ体720を翼プーリ510側へと移動させ、駆動部30の駆動形態を、一軸駆動形態から二軸駆動形態に切り替える(S11)。そして、制御部801は、
図10(b)に示す負荷量検知処理を行う(S12)。
【0100】
図10(b)を参照して、制御部801は、ドラム22が第1貼付き速度まで一方向に加速回転するように、駆動モータ100を一方向に回転させる(S101)。第1貼付き速度は、洗濯物に作用する遠心力が重力より大きく、ドラム22の内周面に洗濯物が貼り付くことができる回転速度である。たとえば、ドラム22の内径が520mm程度である場合には、第1貼付き速度が、65rpmに設定される。ドラム22の回転が第1貼付き速度まで立ち上がる過程において、洗濯物がドラム22の内周面にほぼ分散した状態で貼り付く。このとき、回転体24は、ドラム22より速く加速回転する。
【0101】
制御部801は、ドラム22が第1貼付き速度まで加速回転するときに、電流検知部805により駆動モータ100への駆動電流を検知し、第1電流値として記憶部802に記憶する(S102)。第1電流値は、ドラム22と回転体24の双方に掛かる回転負荷に応じた値となる。
【0102】
続いて、制御部801は、駆動モータ100の回転速度を上げ、ドラム22が第1貼付き速度より速い第2貼付き速度まで一方向に加速回転するよう、駆動モータ100を回転させる(S103)。たとえば、ドラム22の内径が520mm程度である場合には、第2貼付き速度が、165rpmに設定される。
【0103】
制御部801は、ドラム22が第2貼付き速度まで加速回転するときにも、引続いて、電流検知部805により駆動モータ100への駆動電流を検知し、第2電流値として記憶部802に記憶する(S104)。第2電流値は、ドラム22と回転体24の双方に掛かる回転負荷に応じた値となる。
【0104】
制御部801は、記憶部802に記憶された第2電流値と第1電流値との差分値を求め、負荷量テーブル802aを参照して、求めた差分値から負荷量を決定する(S105)。そして、制御部801は、駆動モータ100への通電を停止させ、ドラム22を停止させた後(S106)、負荷量検知処理を終了する。
【0105】
図10(a)に戻り、制御部801は、決定した負荷量に基づき、それぞれ、給水量テーブル802bおよび洗剤量テーブル802cを参照して、給水量と洗剤量とを決定する(S13)。その後、制御部801は、決定した給水量を給水量表示部806cに表示させるとともに、決定した洗剤量を洗剤量表示部806dに表示させる(S14)。そして、制御部801は、
図10の制御処理を終了する。
【0106】
ユーザは、洗剤量表示部806dに表示された洗剤量を確認し、その量の洗剤を洗剤ボックス50に投入する。さらに、制御部801は、洗い工程およびすすぎ工程において、決定された給水量だけ外槽20内に給水を行う。
【0107】
<実施の形態の効果>
本実施の形態によれば、負荷量検知の際、駆動部30を二軸駆動形態で動作させ、ドラム22に掛かる回転負荷と、ドラム22に対して回転する回転体24に掛かる回転負荷とに基づいて負荷量を検知するようにしているので、負荷量検知範囲の負荷量が多い領域において、負荷量の増加量に対してドラム22の回転負荷の変化量が小さくなっても、その小さくなった分を、回転体24の回転負荷の変化量が加わることで補うことができる。よって、負荷量の多い領域での負荷量の検知精度の低下を防止できるので、全体としての負荷量の検知精度を向上させることができる。
【0108】
さらに、本実施の形態によれば、ドラム22に掛かる回転負荷と回転体24に掛かる回転負荷とを、ドラム22と回転体24とを駆動する駆動モータ100の駆動電流の大きさにより検知するようにしたので、2つの回転負荷を纏めて容易に検知することができる。
【0109】
さらに、駆動モータ100の駆動電流値は、外部商用電源の電圧の変動や製品の製造誤差によってばらつく虞がある。本実施の形態によれば、2つの貼付き速度における駆動電流の大きさの差分値を取得し、この差分値に基づいて負荷量を検知するようにしたので、電圧変動や製造誤差によるばらつきを相殺でき、負荷量検知の精度を一層向上させることができる。
【0110】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態等によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0111】
たとえば、上記実施の形態では、第2貼付き速度までの加速回転において検知した第2電流値と第1貼付き速度までの加速回転において検知した第1電流値との差分値に基づいて負荷量が検知される。しかしながら、1つの貼付き速度までの加速回転において検出された1つの電流値に基づいて負荷量が検知されてもよい。
【0112】
さらに、上記実施の形態では、ドラム22が、水平方向に対して傾斜した傾斜軸を中心に回転する。しかしながら、ドラム式洗濯機1は、ドラム22が、水平軸を中心に回転するような構成とされても良い。
【0113】
さらに、上記実施の形態のドラム式洗濯機1は、乾燥機能を備えていないが、本発明は、乾燥機能を備えたドラム式洗濯機、即ち、ドラム式洗濯乾燥機に適用することもできる。
【0114】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。