特許第6490930号(P6490930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6490930ハートアンドアローパターンを示す十角形の形状をしたダイヤモンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490930
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】ハートアンドアローパターンを示す十角形の形状をしたダイヤモンド
(51)【国際特許分類】
   A44C 17/00 20060101AFI20190318BHJP
【FI】
   A44C17/00
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-185117(P2014-185117)
(22)【出願日】2014年9月11日
(65)【公開番号】特開2015-66434(P2015-66434A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2017年6月6日
(31)【優先権主張番号】14/042,175
(32)【優先日】2013年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513132003
【氏名又は名称】ワールドワイド ダイヤモンド トレードマークス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Worldwide Diamond Trademarks Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100091926
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】ローニ リドレビクツ
【審査官】 村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】 米国意匠特許発明第00530642(US,S)
【文献】 米国意匠特許発明第00569296(US,S)
【文献】 特開2006−181644(JP,A)
【文献】 米国意匠特許発明第00416511(US,S)
【文献】 米国意匠特許発明第00544807(US,S)
【文献】 米国意匠特許発明第00462290(US,S)
【文献】 米国意匠特許発明第00550118(US,S)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0137674(US,A1)
【文献】 特開2004−194778(JP,A)
【文献】 特開2010−201043(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0146349(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光にさらされたときに、完全に対称的なカットがされたラウンドダイヤモンドにおけるハートアンドアローパターンに相当し、生来的に表されるハートアンドアローパターンを示すように適合された、10片を有する十角形形状のダイヤモンドであって、
テーブルファセットに対し対称的に配置された10個のメインクラウンファセットと、
全てのメインクラウンファセット上でポリッシュされた2個のスターファセットを有する20個のスターファセットと、
10個のメインパビリオンファセットと、
20個のクラウンハーフファセットと、
20個のパビリオンハーフファセットと
20個の副パビリオンハーフファセットと、
10個の副パビリオンファセットと、
0個のメインガードルファセットと、を備え、
前記副パビリオンファセットは、副パビリオンハーフファセットとメインパビリオンファセットの間に位置して、それぞれメインパビリオンファセットが前記ダイヤモンドの共通のキューレットポイントから前記副パビリオンファセットのみに向かって延びており、
各ガードルファセットは、互いに相対的にガードルの厚さが僅かに不均一にポリッシュされ、各ガードルファセットは、前記ダイヤモンドが十角形の形状を形成するように互いに所定の角度をなしており、
前記副パビリオンファセットは、48°〜67°の範囲内でポリッシュされ、前記副パビリオンハーフファセットは、50°〜70°の範囲内でポリッシュされている、
ことを特徴とする十角形の形状をしたダイヤモンド。
【請求項2】
前記ガードルファセットは、その隣り合う辺の前記ガードルファセットに対して36°の角度を形成する10個の等しいサイズのガードルファセットにポリッシュされていることを特徴とする請求項1に記載の十角形の形状をしたダイヤモンド。
【請求項3】
前記メインクラウンファセットは、33.8°〜35.2°の角度範囲にあり、0.4°の公差にポリッシュされていることを特徴とする請求項1または2に記載の十角形の形状をしたダイヤモンド。
【請求項4】
前記10個のメインパビリオンファセットは、前記メインクラウンファセットおよび前記ガードルファセットが40.6°〜41.1°の角度範囲に並ぶようにポリッシュされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の十角形の形状をしたダイヤモンド。
【請求項5】
前記10個のメインパビリオンファセットは、前記ダイヤモンドの中心またはキューレットに位置する共通の点から延びていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の十角形の形状をしたダイヤモンド。
【請求項6】
さらに、各メインパビリオンファセット上で対称の配置で形成された2つのパビリオンハーフファセットからなり三角形の幾何学的配置の20個のパビリオンハーフファセットを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の十角形の形状をしたダイヤモンド。
【請求項7】
各パビリオンハーフファセットは、41.5°〜42.2°の角度範囲にあり、かつ前記クラウンハーフファセットに対する角度範囲が37.0°〜40.8°となるようにポリッシュされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の十角形の形状をしたダイヤモンド。
【請求項8】
前記パビリオンハーフファセットと前記クラウンハーフファセットとの間の角度の公差は、0.8°を超えないことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の十角形の形状をしたダイヤモンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第11/744571号の一部継続出願である2008年9月16日提出の米国特許出願番号12/208806のさらに一部継続出願であり、それぞれの開示事項は参照してこれらを援用するものである。そして、本発明はカットダイヤモンドの分野に関連し、特に、光にさらされたときに、理想的なラウンドカットのダイヤモンドから生じるハートアンドアローパターンに実質的に匹敵するハートアンドアローパターンを生じるように適合させた十角形の形状を有するダイヤモンドに関連する。
【背景技術】
【0002】
ラウンドカットダイヤモンドが、ほぼ完全な対称形状を有し、かつ後述する表1のように、比較的狭い比率の範囲内でポリッシュされ、等しく対称にカットされたファセットをもつ場合、光にさらしたときに、ラウンドカットダイヤモンドによってハートアンドアローパターンを見せる。ハートアンドアローパターンを有する、ほぼ完全なラウンドカットダイヤモンドは、現在まで、市場における他のどのような形状のダイヤモンドによってもふさわしいものがない、光沢、色、光学的光ハンドリングの特性を与える。ダイヤモンドは、円形以外に、例えば、ハート形状、オーバル、ペア、マーキス、プリンセス、エメラルド等、多くの知られた幾何学的形状にカットされるが、光にさらされたときに、ほぼ完全な対称のラウンド形状のラウンドカットダイヤモンドにより生み出されるハートアンドアローパターンに相当するハートアンドアローパターンをもたらす十角形の形状にダイヤモンドをカットすることは現在知られていない。
【0003】
これまで、ダイヤモンド産業ではラウンドカットダイヤモンドのみが真のハートアンドアローパターンを生み出すと広く信じられていた。この確信は、ラウンドカットダイヤモンドはほぼ完全な対称形状を有し、かつ、そのクラウンおよびパビリオンファセットのすべてが、そのすべてのパビリオン角の間での角の違いが0.3°より小さく、メインクラウンファセットの角の交差が0.4°より小さく、副クラウンファセットの角の交差が0.3°より小さくカットできるように、容易に同じ角度にカットできること、に基づいている。
これにより、ラウンドカットダイヤモンドにおけるハートアンドアローパターンを得るものとして知られている、狭い角の交差を用いて、ラウンド形状をしたダイヤモンドのほぼ完全な対称形状に似せるようにポリッシュされたダイヤモンドにおいてのみ、真のハートアンドアローパターンを得ることが可能であるという、ダイヤモンド産業における確信が広く受け入れられることとなった。
【0004】
十角形の形状をしたダイヤモンドは、ラウンドダイヤモンドの形状とは大いに異なる幾何学的形状を有する。したがって、もし、ラウンドカットダイヤモンドのみが真のハートアンドアローパターンを生み出せるという広く受け入れられた確信を受け入れるなら、ラウンドカットのダイヤモンドで生じるハートアンドアローパターンに相当するハートアンドアローパターンを得られる十角形の形状にダイヤモンドをポリッシュすることは思いもよらないことである。
【0005】
ラウンドカットダイヤモンドにおいて、ハートアンドアローパターンは、カットファセット、アングルパラメータ、アライメント関係の要件が以下の表1で示されるような場合のみ、現れる。
【0006】
表1
・ダイヤモンドの形状は完全に対称である。
・8個のメインクラウンおよび24個の副クラウンファセット。
・8個のメインボトムおよび16個の副ボトムファセット。
・すべてのメインファセット(クラウンおよびボトム)は、互いに完全な45°の角をなすようにポリッシュされていなければならない。
・すべてのファセットは、完全に並べられている。
・すべてのボトムメインファセットは、等しいサイズであり、40.6°〜41.0°の範囲の角を有する。
・すべてのボトム副ファセットは、等しいサイズであり、メインファセット(メインボトム角40.6°〜41.0°+副41.8°〜42.2°)よりも正確に1.2°急である。
・すべてのメインクラウンファセットは、等しいサイズであり、33.8°〜35.1°の範囲の角を有する。それらは、メインボトムファセット上に完全に並べられていなくてはならない。
・すべての副クラウンファセットは、等しいサイズで、メインクラウンおよび副ボトムファセット上に完全に並べられており、等しい角にポリッシュされている。
・理想的なカット比率:全体の深さ59.4%〜62.4%、クラウン高さ14.5%〜16.0%、ガードル厚さ1.5%〜2.95%、丸み99.0%〜100%、テーブルサイズ53.0%〜57.5%
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のダイヤモンドは、光にさらされたときに、完全に対称的なカットがされたラウンドダイヤモンドにおけるハートアンドアローパターンに相当し、生来的に表されるハートアンドアローパターンを示すように適合された、10片を有する十角形形状のダイヤモンドであって、
テーブルファセットに対し対称的に配置された10個のメインクラウンファセットと、
全てのメインクラウンファセット上でポリッシュされた2個のスターファセットを有する20個のスターファセットと、
10個のメインパビリオンファセットと、
20個のクラウンハーフファセットと、
20個のパビリオンハーフファセットと
20個の副パビリオンハーフファセットと、
10個の副パビリオンファセットと、
0個のメインガードルファセットと、を備え、
前記副パビリオンファセットは、副パビリオンハーフファセットとメインパビリオンファセットの間に位置して、それぞれメインパビリオンファセットが前記ダイヤモンドの共通のキューレットポイントから前記副パビリオンファセットのみに向かって延びており、
各ガードルファセットは、互いに相対的にガードルの厚さが僅かに不均一にポリッシュされ、各ガードルファセットは、前記ダイヤモンドが十角形の形状を形成するように互いに所定の角度をなしており、
前記副パビリオンファセットは、48°〜67°の範囲内でポリッシュされ、前記副パビリオンハーフファセットは、50°〜70°の範囲内でポリッシュされている、ことを特徴とする
その他の利点は、添付の図面とあわせて読むことで、以下の本発明の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の十角形の形状をしたダイヤモンドの平面図であり、ダイヤモンドの側方のテーブルファセット上の10個のメインクラウンファセットの対称的な配置を表している。
図2図1と同様に、本発明の十角形の形状をしたダイヤモンドの他の平面図であり、お互いのメインクラウンファセットの配列および対照的な配置を表している。
図3図2と同様、本発明の十角形の形状をしたダイヤモンドのさらに他の平面図であり、メインクラウンファセットとそれに対応するメインパビリオンファセットの配列および配置を表している。
図4図2と同様、本発明にかかる十角形の形状をしたダイヤモンドの追加の平面図であり、クラウンスターファセット、クラウンハーフファセットおよびメインクラウンファセットの配置および関係を表している。
図5】本発明の十角形の形状をしたダイヤモンドの底面図であり、ダイヤモンドの中心またはキューレットのあたりに対照的に配置された、10個のメインパビリオンファセット、20個のパビリオンハーフファセット、10個の副パビリオンハーフファセットおよび20個の副パビリオンファセットとの間の配置を表している。
図6】本発明の十角形の形状をしたダイヤモンドの側面図であり、副パビリオンハーフファセットと副パビリオンファセットを示し、ダイヤモンドの全体にわたってガードルの厚さが僅かに不均一であることを表している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ダイヤモンドは、反射と屈折の方法により光を分散させるプリズムとして機能する結晶である。図1〜6に示されるように、本発明のダイヤモンド10は、十角形の形状を持っており、十角形の形状は、テーブルファセット(tf)を囲んで、対照的な配置で、他のメインクラウンファセット(mcf)に互いに向かい合って配置され、それぞれが本質的に等しいサイズとした10個のメインクラウンファセット(mcf’s)と、それぞれがメインクラウンファセットと並んだ10個のメインパビリオンファセット(mpf’s)と、全てのメインクラウンファセット(mcf)上でポリッシュされた2個のクラウンスターファセットからなり、実質的に等しいサイズの20個のクラウンスターファセット(csf’s)と、パビリオンハーフファセット(phf)と同数で、好ましくはクラウンスターファセット(csf’s)の数に応じた数のクラウンハーフファセット(chf’s)と、10個の副パビリオンハーフファセット(sphf’s)と、20個の副パビリオンファセット(spf’s)と、前記ダイヤモンドが十角形の形状を形成するように互いに所定の角度でポリッシュされたガードルファセットを以てなる10個のメインガードルファセット(gf’s)と、を有する。
【0010】
ガードルファセットgf’sは、最初に、すべてのメインファセットが石の形状に沿っうように、ダイヤモンドに十角形の形状の幾何学形状と、僅かに不均一なガードルの厚さを与える10個の等しいサイズのガードルファセットgf’sにポリッシュされる。各ガードルファセットは、サイズが等しく、各々の隣り合うガードルファセットに関して好ましくは36°の正確な角を有するべきである。さらに、メインクラウンファセットは、好ましくは33.8°〜35.2°の角の範囲でポリッシュされ、さらに、好ましくは等しいサイズと深さとする。さらに、メインパビリオンファセットは、メインクラウンファセットおよびメインガードルファセットに並び、好ましくは40.6°〜41.1°の角度範囲となるようにポリッシュしてもよい。副パビリオンファセットは、全体にわたって同一であり、48°〜67°の角度範囲にあるようにポリッシュされ、副パビリオンハーフファセットは、副パビリオンファセットよりも2〜3度急になる角にポリッシュされ、したがって、それらの角範囲は50°から70°である。
【0011】
そして、20個のクラウンスターファセットと20個のクラウンハーフファセットは、パビリオンハーフファセットのポリッシュに続いて、十角形の形状のダイヤモンド10状でポリッシュされる。パビリオンハーフファセットは、好ましくは41.5°〜42.2°の角範囲にポリッシュされる。クラウンハーフファセットは、好ましくは37°〜40.8°の角範囲にポリッシュされる。20個のクラウンスターファセットは、全てのメインクラウンファセット上に2個のスターファセットがあるようにポリッシュされる。全てのメインクラウンファセット上の2個のスターファセットのポリッシングは、歪みのないハートアンドアローパターンが表れるのを確実にするのに必要な、並外れたスターパターンをもたらす。さらに、すべてのパビリオンハーフファセットとすべてのクラウンハーフファセットの間の角度の公差は0.8°を超えるべきではない。
【0012】
ファセッティングのアライメントは、可能な限り完全に近く、好ましくは正確とするため倍率100Xのレンズの顕微鏡を用いるべきである。
【0013】
ラウンドカットのハートアンドアローパターンに同等で、真のハートアンドアローパターンを持つ十角形の形状をしたダイヤモンドを製造するため、下に掲げる表Iの最適パラメータを満足するようにダイヤモンドをカットすべきである。
【0014】
表I
全体の深さ 61.0%〜74.5%
テーブルサイズ 53.0%〜60.2%
パビリオン深さ 41.2%〜46.5%
クラウン高さ 13.4%〜16.8%
クラウン角 33.8%〜35.2%
ガードル厚さ 0.6%〜7.5%
すべてのメインファセットの間の角度の不一致は0.5°よりも小さく、すべてのスタークラウンファセットおよびハーフファセットの間では0.7°より小さくすべきである。メインファセットは、使われている角度、サイズおよび深さの点ですべて完全に等しく、かつ0.4°の角の公差であるべきである。
【0015】
追加の10個の副パビリオンハーフファセット(sphf’s)と、20個の副パビリオンファセット(spf’s)は、ダイヤモンドが、原料のダイヤモンドから高いポリッシュ歩留まりを得るように加工されることを可能にしており、それにより、消費者にとって、生産が安価で、より独特なものとなる。図5および6では、参照符号Aはメインパビリオンファセット(mpf’s)を特定するため、参照符号Bは副パビリオンファセット(spf’s)を特定するため、参照符号αは、パビリオンハーフファセット(phf’s)を特定するため、参照符号βは副パビリオンファセット(spf’s)を特定するために使われている。図5および6に示されるように、メインパビリオンファセットAとパビリオンハーフファセットαは、ダイヤモンドの共通のキューレットポイントから副パビリオンファセットのみに延びている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6