特許第6490947号(P6490947)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490947
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】プリテンショナ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/46 20060101AFI20190318BHJP
【FI】
   B60R22/46 119
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-227192(P2014-227192)
(22)【出願日】2014年11月7日
(65)【公開番号】特開2016-88384(P2016-88384A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】山川 宏樹
【審査官】 野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−083711(JP,A)
【文献】 特開平06−298040(JP,A)
【文献】 特開2012−158259(JP,A)
【文献】 特開2008−025785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R22/00−22/48
B21D5/00−9/18
F16L21/00−21/08
B25C1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートベルト装置のシートベルトを引っ張るプリテンショナ装置であって、
ガス発生器と、
ガス発生器を保持するとともに、ガス発生器が発生するガスを供給するガス供給口部にベースネジ部を有するシリンダベースと、
一端部がシリンダベースのベースネジ部に取り付けられて、ガス供給口部からガスが供給される円筒状のシリンダと、
シリンダ内に配置されて、シリンダ内に供給されるガスにより、シリンダの一端部側から他端部側に移動するピストンと、
ピストンに固定されて、ピストンの移動によりシートベルトを引っ張る引張索と、を備え、
シリンダが、一端部に形成されてシリンダベースのベースネジ部に螺合するシリンダネジ部と、他端部に一体に形成されて他端部の先端に向かって全周にわたって半径方向内側に次第に縮小して一端部側から他端部側に移動するピストンと当接可能な内面を有する縮小部と、他端部の先端に形成された非円形の開口と、を有するプリテンショナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたプリテンショナ装置において、
シリンダの非円形の開口が、他端部の先端のシリンダの中心軸を含む位置に形成されたプリテンショナ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたプリテンショナ装置において、
シリンダの非円形の開口が、長孔形状に形成されたプリテンショナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルト装置のシートベルトを引っ張るプリテンショナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリテンショナ装置を備えた車両用のシートベルト装置では、車両の緊急時に、プリテンショナ装置が作動して、プリテンショナ装置により、シートベルトが引っ張られる。その際、プリテンショナ装置のガス発生器がガスを発生して、ガス発生器を保持するシリンダベースからシリンダにガスが供給される。ガスにより、ピストンが、シリンダ内で移動して、シートベルトに連結されたワイヤを引っ張る。これにより、シートベルトの弛みが除かれて、シートベルトを装着した乗員がシートに拘束される。
【0003】
ところで、プリテンショナ装置のシリンダには、主にコストと強度の観点から、円筒状の部材が使用される(特許文献1参照)。
特許文献1に記載された従来のプリテンショナ装置では、プリテンショナ装置を組み立てるときに、シリンダのネジ部をシリンダベース(ベースカートリッジ)のネジ部に螺合させる。ネジ部の螺合により、シリンダがシリンダベースに取り付けられる。
【0004】
また、プリテンショナ装置を組み立てるときには、一般に、シリンダの外周をチャッキングするチャックにより、シリンダを回転させてシリンダベースに取り付ける。ところが、円筒状のシリンダでは、チャックがシリンダの外周で滑り易く、シリンダのネジ部とシリンダベースのネジ部とを螺合させる作業に手間がかかる。加えて、弛み止め剤をシリンダのネジ部に塗布した場合には、シリンダの回転に、より強い力が必要になる。そのため、チャックにより、シリンダを潰すことなく、シリンダの外周を強くチャッキングする必要があり、ネジ部を螺合させる作業の負担が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−63178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、プリテンショナ装置を組み立てるときに、簡単な構造で、シリンダのネジ部とシリンダベースのネジ部を容易に螺合させて、シリンダをシリンダベースに確実に取り付けることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シートベルト装置のシートベルトを引っ張るプリテンショナ装置である。プリテンショナ装置は、ガス発生器と、ガス発生器を保持するとともに、ガス発生器が発生するガスを供給するガス供給口部にベースネジ部を有するシリンダベースと、一端部がシリンダベースのベースネジ部に取り付けられて、ガス供給口部からガスが供給される円筒状のシリンダと、シリンダ内に配置されて、シリンダ内に供給されるガスにより、シリンダの一端部側から他端部側に移動するピストンと、ピストンに固定されて、ピストンの移動によりシートベルトを引っ張る引張索と、を備えている。シリンダが、一端部に形成されてシリンダベースのベースネジ部に螺合するシリンダネジ部と、他端部に一体に形成されて他端部の先端に向かって全周にわたって半径方向内側に次第に縮小して一端部側から他端部側に移動するピストンと当接可能な内面を有する縮小部と、他端部の先端に形成された非円形の開口と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プリテンショナ装置を組み立てるときに、簡単な構造で、シリンダのネジ部とシリンダベースのネジ部を容易に螺合させて、シリンダをシリンダベースに確実に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のプリテンショナ装置を備えたシートベルト装置を示す側面図である。
図2】本実施形態のプリテンショナ装置の側面図である。
図3図2のV−V線で切断したプリテンショナ装置の断面図である。
図4】分解したプリテンショナ装置を示す斜視図である。
図5】本実施形態のプリテンショナ装置の動作を説明するための図である。
図6】本実施形態のプリテンショナ装置の動作を説明するための図である。
図7】プリテンショナ装置のシリンダベースとシリンダを示す斜視図である。
図8】取り付け後のシリンダベースとシリンダを示す斜視図である。
図9】本実施形態のシリンダの成形手順を示す図である。
図10】本実施形態のシリンダの成形手順を示す図である。
図11】本実施形態のシリンダの成形手順を示す図である。
図12】本実施形態のシリンダの成形手順を示す図である。
図13】本実施形態のシリンダの成形手順を示す図である。
図14】バックルを引っ張るプリテンショナ装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のプリテンショナ装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態のプリテンショナ装置は、車両用のシートベルト装置に用いられて、車両の緊急時に、シートベルト装置のシートベルトを引っ張る。
【0011】
図1は、本実施形態のプリテンショナ装置10を備えたシートベルト装置1を示す側面図であり、車両に搭載されたシートベルト装置1を示している。
図示のように、乗員2は、車両のシート3に座って、シートベルト装置1のシートベルト4を装着する。シート3は、例えば、運転席、助手席、又は、後部席であり、シートクッション3Aとシートバック3Bを有する。
【0012】
シートベルト装置1は、プリテンショナ装置10と、シートベルト4と、シートベルトガイド5と、リトラクタ装置6と、タング7と、バックル8を備えている。プリテンショナ装置10は、シート3の側方に配置されて、車両の下部(例えば、フロア)に固定される。シートベルト4は、長尺な帯状部材(ウエビング)であり、車両の上部に固定されたシートベルトガイド5に通される。
【0013】
シートベルト4の一端部は、プリテンショナ装置10に取り付けられ、シートベルト4の他端部は、リトラクタ装置6に取り付けられる。リトラクタ装置6は、巻取ドラムにシートベルト4を巻き取る巻取装置であり、シート3の側方で車両に固定される。タング7は、シートベルト4に取り付けられて、シートベルト4の長手方向に移動する。バックル8は、タング7をロックするロック機構を有し、シート3の側方で車両に固定される。タング7をバックル8に差し込むことで、タング7がバックル8にロックされる。
【0014】
シートベルト4の装着時には、乗員2により、シートベルト4がリトラクタ装置6から引き出されて、タング7がバックル8にロックされる。その状態で、シートベルト4は、シートベルトガイド5とタング7の間のショルダベルト4Aと、タング7とプリテンショナ装置10の間のラップベルト4Bを有する。シートベルト4を外すときには、乗員2は、バックル8によるタング7のロックを解除して、シートベルト4をリトラクタ装置6に巻き取る。
【0015】
車両の緊急時には、リトラクタ装置6が、乗員2に装着されたシートベルト4の引き出しを停止する。また、車両の指示部から作動信号を受信したときに、プリテンショナ装置10が作動する。指示部は、車両に設けられた各種の検知センサ(衝撃検知センサ、減速検知センサ等)を有し、検知センサの検知結果に基づいて、プリテンショナ装置10に作動信号を出力する。作動に伴い、プリテンショナ装置10は、シートベルト4の一端部を引っ張り、シートベルト4の弛みを除く。乗員2は、シートベルト4により拘束されて保護される。
【0016】
図2は、本実施形態のプリテンショナ装置10の側面図であり、図1の反対側からみたプリテンショナ装置10を示している。図3は、図2のV−V線で切断したプリテンショナ装置10の断面図であり、図4は、分解したプリテンショナ装置10を示す斜視図である。
図示のように、プリテンショナ装置10は、ガス発生器11と、シリンダベース20と、シリンダベース20に取り付けられる円筒状のシリンダ30と、ピストン40と、ピストン40に固定されたワイヤ50と、ガイド手段60を備えている。ガス発生器11は、車両の緊急時に、ガスを発生して、シリンダベース20を通して、シリンダ30内にガスを供給する。シリンダベース20とシリンダ30は、金属により、それぞれ所定形状に形成されている。
【0017】
シリンダベース20は、ガス発生器11を保持する保持部21と、円筒状のガス導入部22と、シリンダ30が取り付けられるガス供給口部23と、ガス供給口部23に形成されたネジ部(ベースネジ部という)24を有する。ガス発生器11は、円筒状の保持部21内に収容されて、キャップ25により、保持部21に固定される。シリンダベース20は、保持部21にガス発生器11を保持し、ガス発生器11は、ガス導入部22の内部に向かってガスを発生する。シール部材26が、ガイド手段60により、ガス導入部22の一端に固定されて、ガス導入部22の一端の開口をシールする。
【0018】
シリンダベース20のガス供給口部23は、ガス導入部22の一部(ガス導入部22の他端の開口を含む部分)であり、ガス発生器11が発生するガスをシリンダ30に供給する。シリンダベース20は、ガス供給口部23にベースネジ部24を有する。ベースネジ部24は、ガス供給口部23の内周に形成された雌ネジ部である。シリンダベース20側のベースネジ部24に対応して、シリンダ30は、一端部31に形成されたネジ部(シリンダネジ部という)32を有する。シリンダ30側のシリンダネジ部32は、シリンダ30の一端部31の外周に形成された雄ネジ部であり、シリンダベース20のベースネジ部24に螺合する。ベースネジ部24とシリンダネジ部32の螺合により、シリンダ30の一端部31がシリンダベース20のガス供給口部23に取り付けられて、シリンダ30がシリンダベース20に接続される。
【0019】
ガス発生器11がガスを発生したときに、ガスは、シリンダベース20のガス導入部22内に導入されて、ガス供給口部23からシリンダ30の内部空間33に供給される。また、ガスは、内部空間33内で、シリンダ30の一端部31から他端部34に向かって供給されて、シリンダ30の中心軸方向に流れる。シリンダ30の中心軸は、シリンダ30の半径方向の中心を通る直線(軸)である。シリンダ30の中心軸に直交する断面形状は、円形状である。
【0020】
ピストン40は、シリンダ30内に配置されて、ガス供給口部23からシリンダ30内に供給されるガスにより、シリンダ30の一端部31側から他端部34側に移動する。また、ピストン40は、円筒状の移動体であり、外周に形成されたテーパ部41を有する。2つの弾性リング42、43が、ピストン40の外周に装着され、複数の球体44が、2つの弾性リング42、43の間に位置するテーパ部41に配置される。複数の球体44は、テーパ部41とシリンダ30の間の空間に収容されて、テーパ部41を囲むように配置される。
【0021】
ピストン40は、シリンダ30の一端部31側に配置され、プリテンショナ装置10の作動時に、ガスの圧力により、内部空間33内でシリンダ30の中心軸方向に移動する。その際、複数の球体44は、テーパ部41の最も細い部分に位置し、ピストン40の移動を妨げない。ピストン40は、シリンダ30の他端部34まで移動して、他端部34で停止する。これに対し、ピストン40がシリンダ30の一端部31側に移動すると、複数の球体44が、ピストン40のテーパ部41とシリンダ30の内周面との間に挟まれる。これにより、ピストン40の移動が妨げられて、ピストン40が停止する。
【0022】
ワイヤ50は、シートベルト4とピストン40とを連結する連結部材であり、かつ、ピストン40の移動によりシートベルト4を引っ張る引張部材(ここでは、引張索)である。ワイヤ50の一端部が、ピストン40内に挿入されて、ピストン40のかしめにより、ピストン40に固定される。また、リング51が、ワイヤ50の環状の他端部内に設けられて、ワイヤ50に固定されたスリーブ52により、ワイヤ50の他端部に取り付けられる。シートベルト4は、リング51を通されて、ワイヤ50の他端部に取り付けられる。
【0023】
ワイヤ50は、シリンダベース20のガス導入部22内で、円筒状の保護部材53により覆われる。保護部材53は、ガス導入部22に取り付けられて、ガス発生器11が発生するガスからワイヤ50を保護する。プリテンショナ装置10の作動時には、シリンダ30内で移動するピストン40により、ワイヤ50が、引っ張られて、シリンダ30内に引き込まれる。これに伴い、ワイヤ50は、シートベルト4をプリテンショナ装置10に向かって引っ張る。
【0024】
ガイド手段60は、支持部材61と、支持部材61をシリンダベース20に取り付けるネジ62と、支持部材61に取り付けられた円盤ガイド63と、支持部材61に取り付けられたストッパ64を有する。ワイヤ50は、支持部材61のガイド孔61Aとストッパ64のガイド孔64Aを通されるとともに、円盤ガイド63により曲げられる。プリテンショナ装置10の作動時に、ガイド手段60は、ガイド孔61A、64Aと円盤ガイド63により、ワイヤ50をガイドする。
【0025】
図5図6は、本実施形態のプリテンショナ装置10の動作を説明するための図であり、プリテンショナ装置10の一部を図3と同様の断面図で示している。また、図5図6は、シートベルト4、ワイヤ50、及び、ガイド手段60を側面図で示している。
プリテンショナ装置10が作動するときには(図5参照)、ガス発生器11がガスを発生して、ガスにより、ピストン40がシリンダ30の他端部34まで移動する(図6参照)。同時に、ワイヤ50が、ピストン40により引っ張られて、シートベルト4を引っ張る。
【0026】
ここで、本実施形態のプリテンショナ装置10では、シリンダ30の外周をチャックによりチャッキングすることなく、取付工具により、シリンダ30をシリンダベース20に取り付ける。
図7は、プリテンショナ装置10のシリンダベース20とシリンダ30を示す斜視図であり、取付工具9も示している。また、図7は、シリンダベース20とシリンダ30以外のプリテンショナ装置10の部品を省略して、取り付け前のシリンダベース20とシリンダ30を示している。図8は、取付工具9による取り付け後のシリンダベース20とシリンダ30を示す斜視図である。
【0027】
図示のように、シリンダ30は、一端部31に形成されたシリンダネジ部32と、他端部34に形成された縮小部35と、他端部34の先端に形成された非円形の開口36を有する。縮小部35は、シリンダ30の他端部34を半径方向内側に湾曲させた湾曲部であり、他端部34の先端に向かって次第に縮小する。シリンダ30の非円形の開口36は、縮小部35の最も縮小した先端に形成されて、シリンダ30のシリンダベース20への取り付けに用いられる。また、開口36は、取付工具9の挿入部9Aと嵌合する嵌合口であり、他端部34の先端のシリンダ30の中心軸を含む位置に形成されている。
【0028】
取付工具9の挿入部9Aは、シリンダ30の非円形の開口36に嵌合する嵌合部であり、開口36に対応する非円形の断面形状に形成されている。取付工具9の挿入部9Aは、開口36に挿入されて、開口36に嵌合する。これにより、取付工具9が、シリンダ30に相対回転不能に連結される。その状態で、シリンダ30のシリンダネジ部32をシリンダベース20のベースネジ部24に接触させる。続いて、シリンダベース20を停止させた状態で、取付工具9により、シリンダ30を回転させる。或いは、取付工具9により、シリンダ30を回転しないように保持した状態で、シリンダベース20を回転させる。このように、取付工具9により、シリンダ30をシリンダベース20に対して相対回転させて、ベースネジ部24とシリンダネジ部32を螺合させ、シリンダ30をシリンダベース20に取り付ける(図8参照)。
【0029】
図9図13は、本実施形態のシリンダ30の成形手順を示す図であり、第1成形装置70と第2成形装置75により順に成形されるシリンダ30を示している。具体的には、図9は、第1成形装置70を示す断面図であり、図10は、第1成形装置70により成形されたシリンダ30を示す図である。また、図10Aは、図9に対応するシリンダ30の側面図であり、図10Bは、図10Aの矢印X1方向からみたシリンダ30の正面図である。
【0030】
図示のように、第1成形装置70(図9参照)は、シリンダ30の素材である円管80を固定する一対の固定部材71と、円管80の一方の端部81を成形する金型72を備えている。円管80が一対の固定部材71の間に挟まれた状態で、円管80の端部81は一対の固定部材71の外部に位置する。金型72は、半球状の凹部73と、凹部73の中心に形成された円柱状の突起74を有する。
【0031】
第1成形装置70は、金型72を円管80の端部81に1回又は複数回押し付けて、金型72により円管80の端部81を成形する。その際、円管80の端部81は、金型72の凹部73に入り、凹部73の湾曲した内面(凹面)の形状に対応して変形する。また、金型72の突起74が端部81の開口82に入る。端部81の開口82は、半径方向内側に縮小して、突起74の外面に密着し、突起74の外面形状に対応した形状に成形される(図10参照)。
【0032】
円管80の端部81は、金型72の凹部73により、先端に向かって次第に半径方向内側に縮小する形状に成形される。また、端部81の開口82は、金型72の突起74により、円形状に成形される。金型72による成形後に、金型72を円管80の端部81から離して、円管80を一対の固定部材71から外す。続いて、円管80の端部81は、第2成形装置75により成形される。
【0033】
図11Aは、第2成形装置75を示す断面図であり、図11Bは、第2成形装置75の一部を示す斜視図である。図12は、成形完了時の第2成形装置75を示す断面図であり、図13は、第2成形装置75により成形されたシリンダ30を示す図である。また、図13Aは、図12に対応するシリンダ30の側面図であり、図13Bは、図13Aの矢印X2方向からみたシリンダ30の正面図である。
【0034】
第2成形装置75(図11A参照)は、円管80を保持する保持部材76と、保持部材76の保持穴76A内に形成された成形面76Bと、ロッド状の挿入部材77と、挿入部材77の先端に形成された成形部78を有する。保持部材76の成形面76Bは、保持穴76Aの底に形成された湾曲した凹面であり、円管80の端部81を成形する。円管80の端部81が成形面76Bに対向した状態で、円管80が保持部材76の保持穴76A内に保持される。成形面76B内の空間は円管80の端部81よりも細いため、端部81の一部のみが成形面76B内の空間に位置し、端部81と成形面76Bとの間に隙間が形成される。その状態で、挿入部材77が円管80に挿入されて、挿入部材77の成形部78が端部81の開口82に挿入される(図12参照)。
【0035】
第2成形装置75は、挿入部材77により、円管80の端部81を保持部材76の成形面76Bに押し付け、成形面76Bにより円管80の端部81を成形する。円管80の端部81は、成形面76Bに対応して変形して、半径方向内側に更に縮小する。同時に、端部81の開口82が、半径方向内側に縮小して、成形部78の外面に密着し、成形部78の外面形状に対応した所定形状に成形される。
【0036】
成形部78は、シリンダ30の開口36に対応した非円形の断面形状(ここでは、オーバル形状)の突起であり(図11B参照)、端部81の開口82を貫通する。端部81の開口82は、成形部78により、非円形に成形される(図13参照)。その後、挿入部材77を円管80から出して、円管80を保持部材76から外す。円管80の外側にバリが生じたときには、バリを除去する。
【0037】
円管80の端部81は、シリンダ30の他端部34であり、端部81の開口82は、シリンダ30の開口36である。第1成形装置70と第2成形装置75は、シリンダ30の他端部34に縮小部35を形成し、他端部34の先端に非円形の開口36を形成する。ここでは、シリンダ30の縮小部35は、シリンダ30の他端部34に半球状に形成され、他端部34の先端に向かうにつれて、シリンダ30の半径方向内側に縮小する。また、シリンダ30の開口36は、長孔形状に形成される。
【0038】
以上説明したように、本実施形態のプリテンショナ装置10を組み立てるときには、シリンダ30の非円形の開口36を用いて、シリンダ30をシリンダベース20に対して容易に、かつ、確実に相対回転させることができる。従って、簡単な構造で、シリンダ30のシリンダネジ部32とシリンダベース20のベースネジ部24を容易に螺合させて、シリンダ30をシリンダベース20に確実に取り付けることができる。シリンダ30を回転させる力を、従来よりも強くすることもできる。
【0039】
なお、シリンダ30のシリンダネジ部32をシリンダ30の一端部31の内周に形成し、シリンダベース20のベースネジ部24をガス供給口部23の外周に形成してもよい。この場合には、シリンダ30のシリンダネジ部32は雌ネジ部であり、シリンダベース20のベースネジ部24は雄ネジ部である。上記と同様に、ベースネジ部24とシリンダネジ部32を螺合させることで、シリンダ30がシリンダベース20に取り付けられる。
【0040】
シリンダ30の開口36は、長孔形状以外の非円形の開口であってもよく、例えば、多角形状(三角形状、四角形状、六角形状等)、楕円形状、十字形状、又は、スリット形状に形成してもよい。取付工具9は、各形状の開口36に嵌合する形状に形成され、開口36に挿入される。また、シリンダ30の開口36は、シリンダ30の他端部34の先端において、シリンダ30の中心軸を含まないように形成してもよい。ただし、シリンダ30の開口36を、シリンダ30の中心軸を含む位置に形成すると、シリンダ30を、シリンダベース20に対して、より円滑に相対回転させることができる。
【0041】
以上説明した例(図1参照)では、プリテンショナ装置10は、シートベルト4の一端部に取り付けられて、シートベルト4の一端部を引っ張る。これに対し、プリテンショナ装置10をバックル8に取り付けてもよい。この場合には、プリテンショナ装置10は、バックル8を引っ張ることで、シートベルト4を引っ張る。
【0042】
図14は、バックル8を引っ張るプリテンショナ装置10を示す側面図である。
ここでは、図示のように、シートベルト4の一端部を車両に固定して、プリテンショナ装置10をバックル8に取り付ける。バックル8は、プリテンショナ装置10のワイヤ50に連結される。車両の緊急時に、プリテンショナ装置10は、ワイヤ50により、バックル8及びシートベルト4を引っ張り、シートベルト4の弛みを除く。
【0043】
このように、プリテンショナ装置10により、シートベルト4を直接に引っ張ってもよく、シートベルト4を間接に引っ張ってもよい。また、プリテンショナ装置10のワイヤ50により、リトラクタ装置6の巻取ドラムを回転させて、シートベルト4を引っ張るようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1・・・シートベルト装置、2・・・乗員、3・・・シート、4・・・シートベルト、5・・・シートベルトガイド、6・・・リトラクタ装置、7・・・タング、8・・・バックル、9・・・取付工具、10・・・プリテンショナ装置、11・・・ガス発生器、20・・・シリンダベース、21・・・保持部、22・・・ガス導入部、23・・・ガス供給口部、24・・・ベースネジ部、25・・・キャップ、26・・・シール部材、30・・・シリンダ、31・・・一端部、32・・・シリンダネジ部、33・・・内部空間、34・・・他端部、35・・・縮小部、36・・・開口、40・・・ピストン、41・・・テーパ部、42・・・弾性リング、43・・・弾性リング、44・・・球体、50・・・ワイヤ、51・・・リング、52・・・スリーブ、53・・・保護部材、60・・・ガイド手段、61・・・支持部材、62・・・ネジ、63・・・円盤ガイド、64・・・ストッパ、70・・・第1成形装置、71・・・固定部材、72・・・金型、73・・・凹部、74・・・突起、75・・・第2成形装置、76・・・保持部材、77・・・挿入部材、78・・・成形部、80・・・円管、81・・・端部、82・・・開口。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図14