(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
冷蔵庫本体と、圧縮機、凝縮器、膨張手段および蒸発器を接続して成る冷凍サイクルと、前記冷凍サイクルから導かれる水を一時的に貯留して蒸発させると共に前方へ引き出し可能な蒸発皿と、を具備し、
前記蒸発皿は、前記冷蔵庫本体の底部付近に配置されると共に、前記冷蔵庫本体の最下部に配置される貯蔵室の開口部を塞ぐ扉の後方に配置され、
前記蒸発皿は、前記蒸発皿を前記冷蔵庫本体に収納した際に、前記冷蔵庫本体に係合することで前記蒸発皿の前方への移動を規制する係合部と、上方に向かって隆起する突起部と、を具備し、
前記係合部は、上方に突出して前記冷蔵庫本体と係合する係合部位と、前記係合部位と蒸発皿本体とを連続させる連続部位と、前記係合部位から前方に延出する押圧部位と、を有し、
前記突起部は、前記係合部の両側に配設され、且つ、前記蒸発皿を前記冷蔵庫本体に収納した際に、前記冷蔵庫本体に当接し、
前記蒸発皿の前端部は、前記扉が前記貯蔵室を閉鎖している際に、前記扉の下部により前方から覆われ、
前記扉を取り外した場合、前記蒸発皿を前記冷蔵庫本体に収納すると、前記係合部の前記押圧部位は、上方から視認可能であることを特徴とする冷蔵庫。
【背景技術】
【0002】
一般的な冷蔵庫は、冷蔵庫本体に複数の貯蔵室が設けられており、例えば上方から冷蔵室、冷凍室、野菜室が順次配置されている。そして、冷蔵庫本体の内部奥側の下部に各貯蔵室を冷却するための冷凍サイクルを構成する圧縮機、凝縮器、膨張手段および蒸発器が配置されている。冷凍サイクルにより冷却された冷気はファンにより各貯蔵室に供給される。
【0003】
上記した冷蔵庫に於いては、蒸発器に付着した霜を除去する除霜行程により生じた除霜水は蒸発皿に導かれる。蒸発皿に貯留された水は、上記した圧縮機等から生じる熱を利用して蒸発する。
【0004】
このような蒸発皿を冷蔵庫本体に組み込む構造が以下の特許文献に開示されている。
【0005】
特許文献1を参照すると、前方に配置されたカバーを介して蒸発皿を冷蔵庫本体に固定する事項が開示されている。具体的には、この文献の
図6、
図7およびその説明箇所を参照すると、蒸発皿9と機械室カバー8とを個別の構成要素として形成している。機械室カバーの係合部14が、蒸発皿9の取付部13に係合されることで、機械室カバー8は冷蔵庫の本体側に固定されている。
【0006】
特許文献2を参照すると、圧縮機4の上方近傍に蒸発皿を配置する事項が開示されている。この文献の
図1およびその説明箇所を参照して、冷蔵庫本外1の下部後方に配置された圧縮機4の直上に蒸発皿6が配置されている。また、蒸発皿6は機械室カバー2の内側側面に固定されている。圧縮機4の直上に蒸発皿6が配置されていることにより、使用状況下に於いて圧縮機4から発生する熱により蒸発皿6に貯留された水を蒸発させることが可能となる。
【0007】
図7を参照して、蒸発皿132を前方から塞ぐキックプレート134を有する冷蔵庫110の構成を説明する。冷蔵庫110では、冷蔵庫本体112に上方から、冷蔵室114、上段冷凍室118、下段冷凍室120および野菜室122が設けられている。これらの冷蔵室114等の前方開口部は、扉124、126、128、130で閉鎖されている。除霜水等を暫定的に貯留するための蒸発皿132は、野菜室122の下方に配置される。蒸発皿132の前方はキックプレート134により覆われる。キックプレート134の幅方向の端部付近が冷蔵庫本体112に係合されることで、キックプレート134により蒸発皿132の前方への移動が規制される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した特許文献1に記載した発明では、蒸発皿9とは別体として機械室カバー8を設ける必要があった。よって、冷蔵庫を製造する工程にて、この機械室カバー8を設置するための隙間管理を行う必要があり、これにより製造工程が煩雑になる課題があった。
【0010】
また、特許文献2に記載した発明では、蒸発皿6が冷蔵庫本体に締結手段にて固定されている。よって、冷凍サイクルが停電等により停止することで多量の除霜水が蒸発皿6に貯留した際に、除霜水を除去するために蒸発皿6を冷蔵庫本体から取り外すのが容易でない課題があった。
【0011】
更に、
図7に示した冷蔵庫110でも、冷蔵庫110の製造工程にて、キックプレート134を配置する為の隙間を冷蔵庫本体112に適切に形成するための隙間管理が煩雑である課題があった。更に、キックプレート134が冷蔵庫本体112に適切に嵌め込まれない場合、蒸発皿132が前後方向に移動してしまい、使用状況下にて除霜水が漏れてしまう課題があった。
【0012】
本発明はこれらの課題を鑑みて成され、本発明の目的は蒸発皿が冷蔵庫本体に組み込まれる構成を簡素化した冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の冷蔵庫は、冷蔵庫本体と、圧縮機、凝縮器、膨張手段および蒸発器を接続して成る冷凍サイクルと、前記冷凍サイクルから導かれる水を一時的に貯留して蒸発させると共に前方へ引き出し可能な蒸発皿と、を具備し、 前記蒸発皿は、前記冷蔵庫本体の底部付近に配置されると共に、前記冷蔵庫本体の最下部に配置される貯蔵室の開口部を塞ぐ扉の後方に配置され、
前記蒸発皿は、前記蒸発皿を前記冷蔵庫本体に収納した際に、前記冷蔵庫本体に係合することで前記蒸発皿の前方への移動を規制する係合部と、上方に向かって隆起する突起部と、を具備し、前記係合部は、上方に突出して前記冷蔵庫本体と係合する係合部位と、前記係合部位と蒸発皿本体とを連続させる連続部位と、前記係合部位から前方に延出する押圧部位と、を有し、前記突起部は、前記係合部の両側に配設され、且つ、前記蒸発皿を前記冷蔵庫本体に収納した際に、前記冷蔵庫本体に当接し、前記蒸発皿の前端部は、前記扉が前記貯蔵室を閉鎖している際に、前記扉の下部により前方から覆われ、前記扉を取り外した場合、前記蒸発皿を前記冷蔵庫本体に収納すると、前記係合部の前記押圧部位は、上方から視認可能であることを特徴とする。
【0015】
更に、本発明の冷蔵庫は、前記係合部は、弾性変形することが可能であり、前記係合部の上端部が前記冷蔵庫本体に設けた傾斜面に係合することを特徴とする。
【0017】
更に、本発明の冷蔵庫は、前記係合部位の上端部は、後方に向かって下方に傾斜する傾斜面を含むことを特徴とする。
【0018】
更に、本発明の冷蔵庫は、前記蒸発皿の前方側辺から前方に突出する取手部を更に具備し、前記取手部は、前記冷蔵庫本体の前面よりも前方に突出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の冷蔵庫は、冷蔵庫本体と、圧縮機、凝縮器、膨張手段および蒸発器を接続して成る冷凍サイクルと、前記冷凍サイクルから導かれる水を一時的に貯留して蒸発させると共に前方へ引き出し可能な蒸発皿と、を具備し、 前記蒸発皿は、前記冷蔵庫本体の底部付近に配置されると共に、前記冷蔵庫本体の最下部に配置される貯蔵室の開口部を塞ぐ扉の後方に配置され、
前記蒸発皿は、前記蒸発皿を前記冷蔵庫本体に収納した際に、前記冷蔵庫本体に係合することで前記蒸発皿の前方への移動を規制する係合部と、上方に向かって隆起する突起部と、を具備し、前記係合部は、上方に突出して前記冷蔵庫本体と係合する係合部位と、前記係合部位と蒸発皿本体とを連続させる連続部位と、前記係合部位から前方に延出する押圧部位と、を有し、前記突起部は、前記係合部の両側に配設され、且つ、前記蒸発皿を前記冷蔵庫本体に収納した際に、前記冷蔵庫本体に当接し、前記蒸発皿の前端部は、前記扉が前記貯蔵室を閉鎖している際に、前記扉の下部により前方から覆われ、前記扉を取り外した場合、前記蒸発皿を前記冷蔵庫本体に収納すると、前記係合部の前記押圧部位は、上方から視認可能であることを特徴とする。よって、蒸発皿の前方への移動を規制するためにキックプレート等の別部材を設ける必要がないので、冷蔵庫を構成する部品点数が削減される。更に、冷蔵庫を製造する製造工程にて、このキックプレートを取り付けるための隙間を冷蔵庫本体側で管理する必要がないので、製造工程が簡素化される。更には、蒸発皿を冷蔵庫本体から抜き出す際に、キックプレートを外す必要がないので、容易に蒸発皿を冷蔵庫本体から抜き出すことが出来る。
【0021】
更に、本発明の冷蔵庫によれば、前記係合部は、弾性変形することが可能であり、前記係合部の上端部が前記冷蔵庫本体に設けた傾斜面に係合する。よって、係合受部として機能する冷蔵庫本体の傾斜面と、蒸発皿の係合部が係合することにより、蒸発皿の前方への移動が規制されている。
【0023】
更に、本発明の冷蔵庫によれば、前記係合部位の上端部は、後方に向かって下方に傾斜する傾斜面を含む。よって、蒸発皿を冷蔵庫本体に挿入する際に、この傾斜面が冷蔵庫本体側と摺動することにより係合部が下方に押し下げられ、蒸発皿を容易に挿入することが出来る。
【0024】
更に、本発明の冷蔵庫によれば、前記蒸発皿の前方側辺から前方に突出する取手部を更に具備し、前記取手部は、前記冷蔵庫本体の前面よりも前方に突出することを特徴とする。これにより、前方に突出する取手部を前方に引き出すことで、容易に蒸発皿を冷蔵庫本体から取り出すことが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図を参照して本発明の実施の形態にかかる冷蔵庫10を説明する。
【0027】
図1を参照して、冷蔵庫10の概略的構成を説明する。
図1(A)は冷蔵庫10を全体的に示す斜視図であり、
図1(B)は
図1(A)のX−X線で冷蔵庫10を切断した場合の断面図である。
図1(B)では蒸発皿32が配置される冷蔵庫10の下部のみを示している。
【0028】
本形態では、上下前後左右の各方向を適宜用いて冷蔵庫10の構成等を説明する。ここで、左右方向とは、冷蔵庫10を正面から見た場合の方向を示している。
【0029】
図1(A)に示すように、本実施形態に係る冷蔵庫10は、断熱箱体である冷蔵庫本体12を備え、この冷蔵庫本体12の内部に食品等を貯蔵する貯蔵室が形成されている。この貯蔵室として、上方から、冷蔵室14、左冷凍室18Aおよび右冷凍室18B、下段冷凍室20並びに野菜室22が形成されている。ここで、左冷凍室18A、右冷凍室18Bおよび下段冷凍室20は、何れも冷凍温度域の貯蔵室であり、以下の説明ではこれらを冷凍室と総称することもある。
【0030】
冷蔵庫10の基本的な機能は、各貯蔵室に収納された食品等の被貯蔵物を所定の温度に冷却することにある。冷蔵室14の庫内温度は冷蔵温度域であり、冷凍室の庫内温度は冷凍温度域であり、野菜室22の庫内温度は冷蔵温度域である。
【0031】
冷蔵庫本体12の前面は開口しており、各貯蔵室の開口部には、各々扉が開閉自在に設けられている。冷蔵室14を塞ぐ扉24は、右側上下部が冷蔵庫本体12に回転自在に支持されている。また、左冷凍室18A、右冷凍室18B、下段冷凍室20および野菜室22は、夫々、引き出し自在な扉26A、26B、28および30で塞がれている。
【0032】
図1(B)を参照して、冷蔵庫10の冷蔵庫本体12は、前面に開口部を有する鋼板製の外箱12aと、外箱12aの内側に間隙を持たせて配設されて前面に開口部を有する合成樹脂製の内箱12bと、外箱12aと内箱12bとの間隙に充填発泡された発泡ポリウレタン製の断熱材12cと、から構成されている。尚、各扉24〜30も同様の断熱構造を採用している。また、下段冷凍室20と野菜室22との間にも、同様の断熱構造を有する断熱仕切壁が配置されている。
【0033】
下段冷凍室20の後方に形成された冷却室の内部には、上記した各貯蔵室を循環する空気を冷却するための冷却器36(蒸発器)が配置されている。冷却器36は、圧縮機38、放熱器(図示せず)、膨張弁(キャピラリーチューブ)(図示せず)と冷媒配管を介して接続されており、蒸気圧縮式の冷凍サイクル回路を構成している。冷凍サイクルで用いられる冷媒としては、例えばイソブタンが採用される。
【0034】
上記した冷凍サイクルを構成する圧縮機38、放熱器および膨張弁等は、野菜室22の後方に区画形成された機械室40に収納されている。また、冷蔵庫本体12の底面を構成する台板72の下面に、放熱器としてのコンデンサチューブが配置されても良い。
【0035】
蒸発皿32は、射出成形により製造された樹脂材料から成るトレー型の部材であり、野菜室22を塞ぐ扉30の後方に配置されている。蒸発皿32は、野菜室22の下方前面に形成された開口部34(
図1(A))から、冷蔵庫本体12の野菜室22の下方に挿入される。
【0036】
蒸発皿32の機能は、除霜ステップにて生じた除霜水等を、一時的に貯留して蒸発させることにある。具体的には、上記した冷凍サイクルで各貯蔵室を冷却し続けると、冷却器36に霜が付着する。冷却器36に霜が大量に付着すると冷却効率が低下するので、定期的に霜を除去する除霜ステップが行われる。除霜ステップでは、圧縮機38を停止した後、冷却器36の下方に配置された除霜ヒータ(図示せず)で加熱する等して冷却器36の表面に付着した霜を融解する。霜を溶かすことにより発生する除霜水は、導管等を経由して蒸発皿32に導かれる。蒸発皿32に一時的に貯留された水は、台板72の下面に配置されたコンデンサパイプ(図示せず)から発せられる熱を利用して順次蒸発する。
【0037】
ここで、停電時等では大量の除霜水が蒸発皿32に流入し、更にコンデンサパイプによる熱の供給も無いので、蒸発皿32から水が漏れる恐れがある。また、冷蔵庫10が大型のものであると多量の除霜水が発生するので水漏れの恐れも顕著と成る。このような場合には、使用者が冷蔵庫本体12から蒸発皿32を抜き出し、蒸発皿32に貯留した水を除去する必要がる。本形態では、後述するように冷蔵庫本体12と係合する係合部を下方に押圧するのみで、容易に蒸発皿32を引き出すことが出来るので、水の除去を簡易に行うことが出来る。蒸発皿32に設けられる係合部の構造は
図3等を参照して後述する。
【0038】
図2および
図3を参照して、上記した蒸発皿32の構成を詳述する。
図2は、蒸発皿32の全体を示す斜視図であり、
図3(A)は蒸発皿32の前方突出部48を拡大して示す斜視図であり、
図3(B)は
図3(A)のY−Y線での断面図である。
【0039】
図2を参照して、蒸発皿32は一体成型された厚さが2mm程度の樹脂材料から成り、全体としてトレー形状を呈している。具体的には、蒸発皿32の本体部分は、平面視で略矩形形状の底板42と、底板42の周辺端部から上方に立設された側壁44と、を有している。
【0040】
露受部46は、後側の側壁44を部分的に後方に突出させた部分である。露受部46の底面は、前方に向かって下方に傾斜する傾斜面とされている。露受部46は、上記した除霜水が最初に導かれる部位であり、露受部46に導かれた除霜水は、傾斜面である底面に沿って、蒸発皿32の本体部分に流入する。
【0041】
前方突出部48は、前側の側壁44の左右方向に於ける中央部分を前方に突出させた部位である。この前方突出部48には、蒸発皿32を冷蔵庫本体12に係合させる部分や取手部分が形成されるが、この事項の詳細は
図3を参照して詳述する。
【0042】
リブ50は、底板42を部分的に上方に突起させた部位である。このリブ50は、前後方向、左右方向等に直線状に形成されている。このようなリブ50を形成することで、蒸発皿32の底板42が補強され、挿入時や引き出し時に蒸発皿32が変形することが抑止される。
【0043】
堰止部52は、底板42の一部を左右方向に沿って上方に壁状に突出させた部位である。堰止部52は、蒸発皿32の左端付近および右端付近に形成されている。堰止部52の機能は、蒸発皿32が前方に引き出された際に、蒸発皿32の内部で後方に移動しようとする水を堰き止め、水が蒸発皿32から溢れることを抑止することに成る。
【0044】
図3(A)を参照して、上記した蒸発皿32の前端に形成される前方突出部48の構成を説明する。前方突出部48は、蒸発皿32の前側側壁を部分的に前方に突出させた部位である。
【0045】
係合部58は、前方突出部48の左右方向に於ける中央付近に設けられており、蒸発皿32が冷蔵庫本体12(
図1(B))に収納された際に、冷蔵庫本体12側の係合受部と係合する部位である。係合部58は、冷蔵庫本体12に係合する可動式の爪形形状を呈しており、可動爪と称される場合もある。
【0046】
係合部58の両側には前後方向に細長いスリット59が形成されている。これにより、係合部58はその後方の端部のみで前方突出部48の他の部分と連結され、この連結部分を支点として係合部58が後述するように弾性変形することが可能となる。
【0047】
図3(B)を参照して、係合部58は、後方から、連続部位62、係合部位64および押圧部位66を有している。
【0048】
連続部位62は、係合部位64と前方突出部48の他の部位とを連続させる部位であり、係合部58を下方に押しこむ際には、主にこの部位が弾性変形する。
【0049】
係合部位64は、略四角筒状に上方に突出する部位であり、その上面は後方に向かって下方に傾斜する傾斜面65となっている。係合部位64の上面が傾斜面65であることにより、蒸発皿32を冷蔵庫本体12(
図1(A))に挿入すると、傾斜面65が冷蔵庫本体12側と摺動しつつ係合部58が押し下げられるようになる。よって、使用者が係合部58を下方に押しこむこと無く、係合部58を冷蔵庫本体12(
図1(A))に挿入することができる。
【0050】
押圧部位66は、係合部位64から連続して前方に伸びる板状の部位である。蒸発皿32を冷蔵庫本体12から引き出す際には、先ず、使用者が押圧部位66を下方に押し込むことにより、係合部位64の係合を解除する。
【0051】
図3(A)を参照して、前方突出部48の上面であって左右方向に於ける両端部付近には突起部56が形成されている。突起部56の機能は、蒸発皿32が冷蔵庫本体12(
図1(A))に収納された際に、冷蔵庫本体12側の部材(
図4(B)に示す横板70)と当接することにある。これにより、冷蔵庫本体12の内部に於ける蒸発皿32の上下方向の位置が固定される。また、突起部56を幅方向から見た場合、突起部56の上面は、前方突出部48の上面から滑らかに隆起する曲面形状を呈している。突起部56が曲面形状を呈していることにより、蒸発皿32を冷蔵庫本体12に挿入する際に、突起部56が冷蔵庫本体12側の開口部34(
図1(A))に引っかかることが防止される。
【0052】
通気口82は、前方突出部48の上面を部分的に開口させた部位であり、左右方向に沿って複数個が設けられている。通気口82は、蒸発皿32の下方に配置されたコンデンサパイプ(図示せず)により加熱された空気を流通させる機能を有している。
【0053】
当接部68は、前方突出部48の前方端部付近を下方に突出させた部位である。紙面上では、前方突出部48の右方端部に形成される当接部68が示されているが、その左方端部にも当接部68は形成されている。当接部68の役割は、冷蔵庫本体12側に当接して蒸発皿32の後方への移動を規制することであり、
図4(B)を参照して後述する。
【0054】
取手部54は、前方突出部48の前側側面を更に前方に取手状に突出させた部位である。蒸発皿32を冷蔵庫本体12から引き出す際には、使用者が取手部54を手前に引き出すことで、この引き出し作業を容易に行うことが出来る。
【0055】
窪み部60は、係合部58およびその周辺部の前方突出部48を下方に窪ませて形成されている。窪み部60を設けることで、使用者が係合部58を下方に押しこむことが可能となり、蒸発皿32と冷蔵庫本体12(
図1(A))との係合を解除することができる。
【0056】
図4を参照して、冷蔵庫本体12と蒸発皿32との関連構成を説明する。
図4(A)は蒸発皿32が収納される部分の冷蔵庫本体12を示す断面斜視図であり、
図4(B)はその断面図である。これらの図では、野菜室22を塞ぐ扉30(
図1(B))を前方に引き出して開けた状態を示している。
【0057】
図4(A)、
図4(B)を参照して、冷蔵庫本体12の蒸発皿32が収納される部分について説明する。野菜室22の底部を構成する内箱12bの下方には底板74が配置されており、内箱12bと底板74との間には上記した発泡ポリウレタン製の断熱材が充填されている。そして、底板74の下方には、冷蔵庫本体12の底部となる台板72が配置されており、底板74と台板72で挟まれる空間に蒸発皿32は収納される。
【0058】
内箱12bの前方端部と、底板74の前方端部との間は、横板70で塞がれている。
図4(B)を参照すると、内箱12bの前方先端部には横板70の上端部が連続している。また、底板74の前方先端部分には、横板70の開口部34に面する部分が連続している。このように、横板70は、冷蔵庫本体12の前面の一部を構成している。
【0059】
横板70は、一体成型された樹脂板または金属板から成り、左右方向に細長く開口された開口部34が形成されている。開口部34の大きさは蒸発皿32よりも若干大きい程度である。横板70に形成された開口部34を介して、蒸発皿32の冷蔵庫本体12に対する出し入れが行われる。蒸発皿32の出し入れの為には、開口部34の形状は蒸発皿32よりも若干大きい程度である必要があるが、本形態では一体物である横板70に開口部34を形成しているので、冷蔵庫10自体の組立工程にて開口部34のための精度管理を行う必要はない。
【0060】
図4(A)を参照して、冷蔵庫10が使用される状況下では、蒸発皿32の本体部分は、内箱12bの下方に配置される底板74と、冷蔵庫本体12の底部となる台板72との間に形成された空間に収納されている。
【0061】
この状況下では、蒸発皿32の係合部58は冷蔵庫本体12側に係合しており、係合部58の前方端部は冷蔵庫本体12の前面と略一致している。このことを、使用者が上方から目視することにより、蒸発皿32が冷蔵庫本体12の内部で所定の位置に収納されていることを確認することが可能となる。
【0062】
蒸発皿32の前方端部に形成された取手部54は、冷蔵庫本体12の前面よりも前方に突出している。よって、この取手部54に手を掛けて手前に引き出すことにより、使用者は蒸発皿32を冷蔵庫本体12から容易に取り出すことができる。また、
図1(B)を参照して、野菜室22が扉30で閉鎖されている状況下では、取手部54が形成される蒸発皿32の前方端部は、扉30の下方に位置しており、外部からは視認されない。よって、取手部54をこのように前方に突出させても、冷蔵庫10の外観性が低下することはない。
【0063】
図4(B)を参照して、底板74の前方端部付近には、前方に向かって下方に傾斜する傾斜面76が形成されており、この傾斜面76は、蒸発皿32の係合部58と係合する係合受部として機能している。また、
図3(B)に示したように、係合部58の係合部位64の上面は後方に向かって下方に傾斜する傾斜面65である。よって、係合部58の係合部位64の上面の前方端部が、傾斜面76に係合することで、蒸発皿32の前方への移動が規制される。
【0064】
上記したように、蒸発皿32の前方端部付近には下方に突出する当接部68が形成されている。蒸発皿32が冷蔵庫本体12内部で所定の位置まで挿入されると、当接部68の後方側面は横板70の前面に接触する。当接部68が横板70に接触することで、蒸発皿32の後方への移動が規制される。
【0065】
次に、
図5および
図6に基いて、上記した各図も参照しつつ、蒸発皿32を冷蔵庫本体12に出し入れする方法を説明する。具体的には、
図5を参照して冷蔵庫本体12に蒸発皿32を挿入する方法を説明し、
図6を参照して冷蔵庫本体12から蒸発皿32を抜き出す方法を説明する。
【0066】
図5を参照して、先ず、冷蔵庫本体12に蒸発皿32を挿入する方法を説明する。
図5の各図は、冷蔵庫本体12に蒸発皿32を挿入する方法を逐次的に示す断面図である。
【0067】
図5(A)を参照して、冷蔵庫本体12の前面最下部を構成する横板70の開口部34から蒸発皿32を挿入する。冷蔵庫本体12の底部付近には、底板74と台板72とで挟まれる空間が形成されており、蒸発皿32はこの空間に挿入される。
【0068】
図5(B)を参照して、蒸発皿32の冷蔵庫本体12への挿入を続けると、横板70の端部に、係合部58が接触する。具体的には、係合部58を構成する係合部位64の傾斜面65が、横板70の角部84と接触する。更に、蒸発皿32を後方に押し込むと、係合部位64の傾斜面65が横板70の角部84と摺動しつつ、係合部58が下方に押し込まれる。その際、係合部58の連続部位62は、その右端を支点として弧を描くように弾性変形する。本形態では、係合部58の上端に設けた傾斜面が摺動することにより係合部58を押し下げているので、挿入時に使用者が係合部58を押圧する必要はない。
【0069】
図5(C)を参照して、更に蒸発皿32を後方に向かって挿入すると、係合部58は上記のように弾性変形した状態で、冷蔵庫本体12の内部に移動する。そして、係合部58の上端部が、底板74の傾斜面76と係合する。係合部58を構成する係合部位64の上面は後方に向かって下方に傾斜面65を呈している。よって、鋭角に突起する係合部58の前方上端部分が、底板の傾斜面76と係合しており、これにより蒸発皿32の前方への移動が規制されている。従って、冷蔵庫10に振動等が作用したとしても、係合部58と傾斜面76とが係合しているので、この振動等に起因して蒸発皿32が前方に引き出されてしまうことが防止されている。
【0070】
蒸発皿32が冷蔵庫本体12に充分に挿入されると、係合部58が下方に押圧されなくなり、係合部58の弾性変形が解除されて元の形状に戻る。よって、係合部58の押圧部位66は、平行に延在するようになる。この状態の係合部58は、
図4に示したように斜め上方から使用者が容易に目視確認できる。よって、蒸発皿32が冷蔵庫本体12に適切に収納されているか否かを使用者は容易に判断することが出来る。
【0071】
即ち、係合部58の前方端部が冷蔵庫本体12の前面と略一致していたら、蒸発皿32が適切に収納されていると判断される。一方、係合部58の前方端部が冷蔵庫本体12の前面よりも前方に突出していたら、蒸発皿32の挿入が不足しており、蒸発皿32が適切に収納されていないと判断される。更に、係合部58の前方端部が冷蔵庫本体12の前面よりも前方に突出している場合は、
図1に示す野菜室22の扉30を適切に閉めることが出来ないので、このことによっても使用者は蒸発皿32が適切に収納されていないことを認知することができる。
【0072】
また、冷蔵庫本体12に充分に挿入された状態では、蒸発皿32の当接部68の後面が、冷蔵庫本体12の横板70に当接する。これにより、蒸発皿32が過度に冷蔵庫本体12に挿入されることが防止される。
【0073】
上記のように蒸発皿32を冷蔵庫本体12に挿入した後は、
図1(A)に示すように、引き出し式の扉30で野菜室22の前方開口を塞ぐ。これにより蒸発皿32は冷蔵庫10の外観に現れないようになる。
【0074】
図6を参照して、次に、冷蔵庫本体12から蒸発皿32を抜き出す方法を説明する。
図6の各図は、冷蔵庫本体12から蒸発皿32を抜き出す方法を逐次的に示す断面図である。
【0075】
蒸発皿32の引き出しに先行して、
図1(A)を参照して、引き出し式の扉30を冷蔵庫本体12の野菜室22から引き出して外す。このようにすると、
図4(A)に示すように、冷蔵庫本体12の前面下部に配置された開口部34から蒸発皿32の取手部54および係合部58が露出する。
【0076】
図6(A)を参照して、蒸発皿32を取り出す際には、先ず、係合部58の前方端部である押圧部位66を、使用者の指78で下方に押圧する。
図4(A)に示したように、係合部58の前方端部は、冷蔵庫本体12に設けた開口部34から外部に露出している。よって、使用者は指78で係合部58の押圧部位66を容易に下方に押圧することができる。
【0077】
図6(B)を参照して、次に、指78にて押圧部位66を下方に押し込みつつ、蒸発皿32を前方に引き出す。指78にて係合部58の押圧部位66を押し下げると、係合部58の連続部位62が弾性変形し、係合部位64が前方に傾きつつ下方に変位する。その結果、底板74の傾斜面76と係合部位64との係合が解除され、蒸発皿32を前方に引き出すことが可能となる。その際に使用者は、取手部54に手を掛けて蒸発皿32を前方に引き出すことができる。上記したように、蒸発皿32の取手部54は、冷蔵庫本体12の前面よりも前方に配置されているので、使用者は取手部54を容易に操作することが出来る。
【0078】
図6(C)を参照して、係合部58が冷蔵庫本体12から前方に引き出されたら、上記した押圧を解除することで係合部58は元の形状に戻る。その後、取手部54に手を掛けて蒸発皿32を更に前方に引き出すことにより、冷蔵庫本体12から蒸発皿32を取り出すことが出来る。
【0079】
その後、蒸発皿32に貯留した除霜水を除去し、
図5を参照して説明したように、蒸発皿32を再び冷蔵庫本体12に挿入する。
【0080】
以上、本実施の形態にかかる冷蔵庫10に関して説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。