(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発電フロートが複数連結されて前記水上設置太陽光発電装置が形成され、該水上設置太陽光発電装置を構成する一部の前記発電フロートに前記アンカーに接続される前記索条が連結された
請求項1または請求項2に記載の水上設置太陽光発電装置。
前記発電フロート同士を連結する連結装置が、一定の長さで両端部に一方向に屈曲する回転端部を有する連結棒と、前記回転端部の屈曲方向を前記発電フロートの厚さ方向にして前記回転端部を保持するとともに前記発電フロートの上面に固定される固定金具で構成された
請求項3に記載の水上設置太陽光発電装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
この発明は、水上設置太陽光発電装置と、この水上設置太陽光発電装置などのような浮体を係留するための浮体係留装置についてもので、後者の浮体係留装置については、水上設置太陽光発電装置に用いられる係留装置の説明をもってその説明に代える。
【0017】
図1は水上設置太陽光発電装置11(以下「水上発電装置」という)の設置状態を示す平面図で、
図2は
図1の一部の拡大図、
図3はその側面図である。これらに示すように、水上発電装置11は係留装置12で水底13に係留されて水面に浮かんだ所望の設置状態が保たれている。
【0018】
まず、水上発電装置11の本体部分の説明をし、そのあとに係留装置12とその他の構成について順に説明する。
【0019】
<水上発電装置の本体部分>
水上発電装置11の本体部分は、
図4に示したような複数の発電フロート11aが相互に連結されて構成されている。発電フロート11aは上面に太陽電池パネル15を有し水面に浮くものである。
【0020】
発電フロート11aは、水面に浮く方形板状のフロート本体16と、このフロート本体16の上面に固定され太陽電池パネル15を設置するパネル架台17を有する。
図5はフロート本体16の組み立て途中の斜視図である。この図に示すようにフロート本体16は、複数枚の発泡樹脂板21をその端面同士を合わせて正方形に組み合わせて構成する。これはフロート本体16の大きさが既製の発泡樹脂板では賄えないからであり、フロート本体16の大きさが小さい場合や所望の大きさの発泡樹脂板を製造できる場合には1枚の板材で構成することもできる。
【0021】
発泡樹脂板21には、例えばたてよこ1m×2mのものを使用し、例えば5m×5mのフロート本体とする。発泡樹脂板21の厚さは、使用する太陽電池パネル15の重量や枚数等に応じて適宜のものが使用される。発泡樹脂板21同士の間は、必要に応じて接着剤等の適宜の手段で接合される。
図5の例では、底面に対角線上に張るターンバックル22を備えている。
図5中、23はターンバックル22を固定する固定金具である。
【0022】
このフロート本体16の上面には、部材の固定を可能にする補助プレート24と、劣化防止のための保護板25が固定される。補助プレート24は、接合する複数の発泡樹脂板21同士の結合一体化を図るとともに、パネル架台17等の固定に資するもので、金属製である。補助プレート24の全体の形状はフロート本体16の一辺の長さに対応する細幅の中空板状で、長手方向に沿った両側縁にはL形の縁部24aを有している。補助プレート24の上面には、複数の長穴24bが形成されている。
【0023】
保護板25は、耐候性、特に紫外線に対して耐候性の良い適宜の材料で形成された細幅板状である。材料には、たとえばケイ酸カルシウム板を好適に使用できる。保護板25は、フロート本体16の一辺の長さに略対応する長さに形成され、設置場所に応じて幅寸法が設定されている。この保護板はフロート本体16の上面に太陽電池パネル15を設置したときに太陽光にさらされる部分に敷設するものであり、太陽電池パネル15の配置に応じて適宜大に形成される。
【0024】
上述の補助プレート24はパネル架台17を固定する役割を果たすものであるため、保護板25は補助プレート24に添って配設されることになる。また補助プレート24が上述のように長穴24bを有しているので、補助プレート24内にも保護板25は敷設される。
図6が補助プレート24と保護板25を敷設した状態のフロート本体16の角部分の斜視図、
図7が一辺の中間部分の斜視図である。
【0025】
図8は、補助プレート24と保護板25を敷設した状態のフロート本体16の平面図である。図示例では補助プレート24をフロート本体16の両側縁とこれらの間の2箇所の合計4箇所に固定しており、太陽電池パネル15は補助プレート24に沿って3列設置できる。太陽電池パネル15は、補助プレート24間に対応する部分に設置され、保護板25を敷設していない部分への直射日光を遮る。
【0026】
紫外線に対する耐候性はフロート本体16の側面部分にも要求される。このため、
図9に示したような側面カバー26と、
図10に示したようなコーナーカバー27が取り付けられる。側面カバー26は耐候性を有するアルミニウム合金製で、断面コ字形に形成されている。側面カバー26の高さは補助プレート24の上面からフロート本体16の下面までの高さに嵌合対応する高さである。側面カバー26の長さはフロート本体16の一辺の長さより若干短く設定されている。側面カバー26は短いものを用いて継ぎ足して使用することもできる。コーナーカバー27も耐候性を有するアルミニウム合金製で、平面視アングル状で断面逆L字形に形成されている。コーナーカバー27は補強の役割も果たせるようにするのが好ましいので、側面カバー26よりも厚さを厚くするとよい。コーナーカバー27の固定は、側面カバー26を固定したのち、コーナーカバー27の両端部を側面カバー26の端部に重ねて行う。
【0027】
このように構成されるフロート本体16の上面に、
図11に示したようにパネル架台17が固定される。
【0028】
パネル架台17は、補助プレート24と直交する方向に延ばして配設される2本一組の長尺の架台ベース31と、架台ベース31に立設される前脚32及び後脚33と、これら前脚32及び後脚33の上に固定されて太陽電池パネル15を受ける受け部材34を有する。架台ベース31はフロート本体16の一辺の長さに略対応する長さであり、図示例では3組、合計6本が配設されている。前述のように太陽電池パネル15は3列設置されるので、前脚32、後脚33および受け部材34は一組の架台ベース31に3組、等間隔に配設される。前脚32は後脚33よりも短く設定され、受け部材34は前脚32側が下がるように傾斜する。
【0029】
架台ベース31をはじめ、前脚32も、後脚33も、受け部材34も、アングル材を用いて形成できる。架台ベース31などにアングル材を用いる場合、
図11に示したように対をなす一方と他方でアングル材の向きが反対になるようにする。
【0030】
図12はパネル架台17の側面図であり、この図に示すようにパネル架台17は傾斜角を調節可能である。
【0031】
具体的には、架台ベース31の所定位置に前脚32が立設され、対となる前脚32同士は斜材35で連結される。前脚32と架台ベース31との間にも斜材36が取り付けられる。そして、前脚32の上端には、受け部材34の先端部が枢着される。受け部材34の後端部を支える後脚33は、下側部材33aと上側部材33bで構成され、下側部材33aは架台ベース31に立設される。対となる下側部材33a同士には、前脚32と同様に斜材37が連結されている(
図13参照)。下側部材33aの上端部とそれよりも下の位置には、ボルト穴38a,38bが形成されている。これらのボルト穴38a,38bは上側部材33bの下端部をボルト39ナットで止めるためのものである。上側部材33bは上端が受け部材34の後端部に枢着され、下端部に形成されたボルト穴40に前述のボルト39を保持する。
【0032】
受け部材34の傾斜角度は予め設定され、上側部材33bの下端部のボルト穴40と下側部材33aの下側のボルト穴38bを合わせた時には例えば10度の傾斜、上側のボルト穴38aに合わせた時には例えば20度の傾斜となるようにされている。傾斜角度は適宜設定され、季節や設置場所に応じて必要に応じて変更される。
【0033】
受け部材34の上には太陽電池パネル15が設置されるので、パネル架台17の後脚33側から風が入り込むと、太陽電池パネル15を浮き上がらせる力が作用することになる。これによる浮き上がりを防止するため、
図13に仮想線で示したように、また
図14に示したように、後脚33に風よけ部材41を取り付けるとよい。風よけ部材41は耐候性のあるアルミ板やテント用帆布などの適宜の材料で形成される。剛性のあるものでも柔軟性のあるものでも、大量の風の進入を阻止できるものであればよい。
【0034】
図12に示したパネル架台17は傾斜角を変更できるものであったが、
図15に示したように傾斜角度を変更できない、一定の傾斜角のものとしてもよい。角度変更が不要であるので、後脚33は1個の部材で構成され、後脚33の下端部は架台ベース31に、上端部は受け部材34に固定される。このとき後脚33は、たとえば
図15に示したように、下端部が後方に下がって上端部が前方に倒れた傾斜姿勢で固定するとよい。パネル架台17の組立が容易であるとともに、
図15に仮想線で示したように、風よけ部材41を取り付けたときに風が発電フロート11aを押し流そうとする力を低減することができるからである。
【0035】
以上のように構成された発電フロート11aは、フロート本体の16の浮力で水に浮き、水面に出る太陽電池パネル15で太陽光を受けて発電を行う。フロート本体16が太陽光を受けても、保護板25や側面カバー26、コーナーカバー27が内部の発泡樹脂板21を紫外線から保護するので、高い耐久性が得られる。コーナーカバー27などはフロート本体16の外周を物理的な面でも保護するので、この点からも耐久性を高めることができる。そのうえ、フロート本体16の浮きを発泡樹脂板21で構成しているので、穴がいたら使用できないということもなく、軽量で取り扱いやすい。さらに、パネル架台17に風よけ部材を取り付けると、風によって太陽電池パネル15があおられたり、太陽電池パネル15を備えた発電フロート11aが流されたりするようなことを抑制でき、水上での設置状態の安定化をはかることに貢献する。
【0036】
<連結装置>
発電フロート11aは前述のように複数連結されて水上発電装置11の本体部分が構成される。その連結のための構造、すなわち連結装置51を次に説明する。
【0037】
図16は、縦横にマス目状に配置された4個の発電フロート11aの隙間部分の一部を示す平面図、
図17は1個の発電フロート11aの連結装置51部分を示す平面図である。これらの図では太陽電池パネル15等の図示を省略して連結装置51に関する部分を中心に描いている。
【0038】
これらの図に示すように連結装置51は、発電フロート11aの各辺に2箇所ずつ設けられ、補助プレート24または架台ベース31に固定されている。
【0039】
補助プレート24に固定される連結装置51(
図17のA部分)は、
図18、
図19に示したように、連結棒52と固定金具53で構成されている。
【0040】
連結棒52は、一定の長さで両端部に一方向に屈曲する回転端部52aを有するもので、棒本体54と回転端部材55を有する。棒本体54は金属製で剛性を有し、一定の長さで両端部に枢着部54aを有する。枢着部54aは中心に貫通穴54bを有する環状に形成されている。この棒本体54は、貫通穴54bの中心線の方向が棒本体54の長手方向と直交するとともに、発電フロート11aの上面と平行となるようにして使用される。回転端部材55は、金属製で平面視U字型に形成され、中間部に固定金具53を通して、両端部が棒本体54の枢着部54aに対して留め具54cで枢着されている。
【0041】
固定金具53は、連結棒52の回転端部52aの屈曲方向を発電フロート11aの厚さ方向にして回転端部52aを保持するとともに、発電フロート11aの上面に固定されるものである。固定金具53は、例えばアングル材で構成され、発電フロート11aの上面の補助プレート24に固定される固定片53aと、連結棒52の回転端部52bを回転可能に保持する立設片53bを有する。固定片53aには複数の固定穴53cが形成されており、補助プレート24の長穴24bを利用してボルトナットで固定される。立設片53bには、縦に長い長穴53dが形成され、この長穴53dに回転端部52aが保持される。
【0042】
このような連結装置51で連結された発電フロート11aは、発電フロート11a同士が離れようとしても連結棒52が引っ張り力に抗して離間を阻止し、逆に発電フロート11a同士が接近しようとしても連結棒52が突っ張って、一定以上の接近を阻止する。連結棒52の棒本体54は剛体であるので、発電フロート11a同士の間隔は略一定に保たれることになる。一方で、連結棒52の両端の回転端部52aが回転することと、回転端部52aが固定金具53の長穴53dに保持されたことによって、
図20に仮想線で示したように、発電フロート11a同士は連結されていても上下方向には比較的に自由に変位する。
【0043】
架台ベース31に固定される連結装置51(
図17のB部分)は、
図20、
図21に示したように、連結棒52と、固定金具としての架台ベース31の端部で構成されている。
【0044】
連結棒52の構成は
図18、
図19を用いて説明した前述と同じであるので、詳しい説明は省略する。
【0045】
固定金具については、
図18、
図19で示したように別途に設けずに、架台ベース31の長手方向の端部に、
図21に示したように連結棒52の回転端部52aを保持する長穴31dを形成して、
図8、
図19に示した固定金具53に代える。
【0046】
このような構成の連結装置51による連結によって、複数の発電フロート11aは、互いの間隔がほとんど変化することない一方、波に対しては柔軟に上下方向に変位する。このため、水上発電装置の本体部は、波によってかかる負荷を柔軟に吸収できるうえに、複数の発電フロート11aは一体性の高い状態となる。
【0047】
複数の発電フロート11aは、設置場所の形状等に応じて連結される。連結は発電フロート11aを縦横に並べて行うが、
図1に示したように、設置水面の形や日当たり状況、所望の発電量等に応じて、方形状に限らない適宜の形状に配置する。連結装置51は前述のように複数の発電フロート11aを一体性の高い状態で連結するので、どのような配置形状であっても堅固な連結状態が得られる。
【0048】
<係留装置>
つぎに、水上発電装置11の本体部を係留する係留装置12について説明する。
【0049】
係留装置61は、
図1、
図2、
図3に示したように、水上発電装置11の本体部からのびる索条62と、この索条62が接続されて水底13に設置されるアンカー63で構成される。
【0050】
索条62には強度と対向性のあるステンレスからなるワイヤが用いられる。
【0051】
アンカー63は、
図22に示したように、索条62が接続され水底13に載置される移動体64と、この移動体64をその移動を許容しつつ水底13に保持する保持体65を備えている。そして移動体64には、その底面よりも斜め下に向けて延びる食い込み部66が形成され、この食い込み部66が移動体64の移動方向の前方に向けられる。
【0052】
具体的には、移動体64は棒状であり、長手方向に移動可能である。移動体64は姿勢が変わらずに移動する形状のものがよく、底面は平らであるのがよい。このような移動体は、たとえばH鋼を用いて形成することができる。移動体64の長手方向の一端側部分の上方には索条62が接続される接続部67が形成される。接続部67は、移動体64の上面にH鋼などを立設して形成するとよい。
図22中、68は接続部67を補強する斜材である。接続部67の適宜位置には、索条62を通す貫通穴67aが形成されている。
【0053】
移動体64の長手方向における接続部67を形成した側の端部、すなわち長手方向の一端部には前述の食い込み部66が形成される。食い込み部66は移動体64の長手方向と直交する方向に長く、長手方向の中間が移動体64に接合されている。このため食い込み部66を備えた移動体64は全体として平面視T字形となる。食い込み部66は移動体64の端部に形成され食い込み部64と同じ長さの長方形板状の立設板69の下端から、移動体64の長手方向の一端方向斜め下に向けて延びている。立設板69と食い込み部66の間には、食い込み部66を保持するため複数のリブ70を備えている。また立設板69の長手方向の両端部は、移動体64から斜めに延びる斜材71で支持されている。
【0054】
食い込み部66の傾斜角度については水底13の状況等に応じて適宜設定されるが、例えば移動体64の長手方向に対して10度から40度程度、好ましくは30度から20度、25度程度の傾きに設定するとよい。
【0055】
移動体64を保持する保持体65は、移動体64の長手方向の中間部の一部を上から押さえ込むように保持するもので、
図3に示したように水底13に固定される2本のスクリューアンカー72と、これらのスクリューアンカー72の上に保持される2個の連結部材73と、これら連結部材73の上に掛け渡すように支持される長尺の保持架台74と、この保持架台74の長手方向の中間部の下面で移動体64の上端部を移動可能に保持するスライド金具75を有する。
【0056】
すなわち保持体65は、水底13から離れた上方に架設される保持架台74の下に、移動体64を移動可能に保持する構成である。
【0057】
スクリューアンカー72は公知のものを使用でき、長さや太さは、必要とする固定強度や水底の状態に応じて適宜設定される。連結部材73は、例えば角型鋼材で形成され、下面と上面にそれぞれ接合する相手方に合わせたボルト穴などの構造を形成する。保持架台74は、少なくとも下面、特にその長手方向の中間部に平面を有し、例えば図示例のようなチャンネル鋼や図示しないアングル鋼を使用できる。連結部材73に対してボルトナット等で固定される。スライド金具75は、保持架台74の下面に固定され、移動体64を構成するH鋼の上側のフランジ64aを抱えるように隙間をあけて保持するもので、ボルトナット等で固定される。
【0058】
移動体64に対する保持具65の位置は、移動体65が食い込み部66を有する側に移動しても保持部65から外れない位置である。またこのことが可能なように移動体64の長さが設定されている。
【0059】
このようなアンカー63は、水底13に泥がある場合には泥を取り除いて移動体64を長手方向に移動可能なある程度の平らな状態にしてから設置される。設置は、発電フロート11aの配置に応じて必要な位置に行われ、発電フロート1aに接続された索条62を移動体64の接続部67に接続する。また設置に際して移動体64は、前述のように食い込み部66が移動体64の移動方向の前方、つまり索条62がのびる方向に向けて水底13に載置される。
【0060】
発電フロート11aは前述のように複数連結され水上発電装置11の本体部が構成されるが、
図1に示したように、そのうちの一部の発電フロート11a、より具体的には端に位置する発電フロート11aのうちの一部の発電フロート11aに、アンカー63に接続される索条62が連結されれば足りる。
【0061】
発電フロート11aに対する索条62の固定は、
図2に示したように発電フロート11aにおける端部側の両角部に対して行い、角部の上面に位置する補助プレート24を利用して適宜の金具で固定するとよい。
【0062】
係留に際しては、
図1、
図2に示したように発電フロート11aを複数列同じように並べた場合には、これらをまとめて1個のアンカー63に係留するのが好ましい。必要なアンカー63の数を低減できる上に、発電フロート11aの配列状態を維持しやすくできるからである。
【0063】
複数列の発電フロート11aをまとめて係留するには、各発電フロート11aの両角部に固定した索条62(62a)を、
図2に示したように1本にまとめて、これらの索条62(62b)を、索条緊張重錘77を介してアンカー63に連結する。索条緊張重錘77は、索条62に張力を与える役割を果たすとともに、複数列に並ぶ発電フロート11a同士の間隔を保持する役割を果たすものである。
【0064】
索条緊張重錘77は、まとめて係留する発電フロート11aの配列長さに近い長尺の重量体で構成される。これには例えばH鋼が好適に使用できる。H鋼の一方のフランジに、発電フロート11aの両角部から延びる索条62をまとめた先の索条62bの間隔に対応して複数の連結穴(図示せず)を設け、これらの連結穴に対して、まとめた先の索条62bを連結する。H鋼の他方のフランジの長手方向の中間にはアンカー63に延びる索条63cを連結し、この索条63cの先端をアンカー63の接続部67に連結する。
【0065】
このようにして係留装置12を用いた係留を行うと、
図23に示したように、水上発電装置11の本体部の設置によって索条62が引っ張られる。すると、移動体64は保持体65によって水底13に保持されたまま食い込み部66を有する方向に移動し、この移動にともなって、移動方向前方に向く食い込み部66が水底13に食い込む。この食い込みによって移動体64は水底13に対して強固に位置固定されることになる。
【0066】
このような移動体64を保持する保持体65は移動体64を移動可能に保持するものであるうえに、移動体64自体が自然に生じるけん引力によって水底13に食い込んで固定がなされるので、引っ張り力を直接受ける部材を水底13に強固に固定する場合と比較して、前述のような公知のスクリューアンカー72などのように簡素な固定手段で必要な保持力が得られる。
【0067】
このようして位置固定されたアンカー63が、索条緊張重錘77や連結装置51と協働して、水上発電装置11の本体部の設置状態を維持する。
【0068】
前述のようにアンカー63の固定はスクリューアンカー72のような小規模で簡素な装置で行え、水上発電装置11の簡易な設置が可能である。そのうえ水底13を大規模に改変する必要がないので、設置も撤去も簡単に行える。撤去後の原状回復も容易である。
【0069】
<揺動抵抗体>
以上のような係留装置12で水上発電装置11の本体部を係留すると、アンカー63の強固な固定と、棒状の索条緊張重錘77による索条の緊張および間隔保持と、パネル架台17の風よけ部材41による風よけと、連結装置51による柔軟でありながらも一体性の高い連結によって、設置状態を安定性良く維持できるが、強風が吹く時季や地域などではより高い安定性を得るために、必要に応じて
図24に示したような揺動抵抗体81を一部の発電フロート11aに備えるとよい。
【0070】
この搖動抵抗体81は、上端に開口82aを有し、この開口82aの開口状態が保持される有底袋状の袋体82で構成される。この袋体82には、発電フロート11aを浮かべる水が充填される。
【0071】
袋体82は、容易には水を通さない適宜の材料で形成され、上端の開口82aを形成する開口縁には、開口状態を維持する環状の保形ワイヤ83が保持されている。また開口82aには、吊り下げのための吊り下げワイヤ84が設けられ、この吊り下げワイヤ84の上端が発電フロート11aの下面などに取り付けられる。取り付けは、適宜の金具を用いて行うも、前述のターンバックル22を固定した固定金具23(
図5参照)を用いて行うもよい。
【0072】
このような搖動抵抗体81を備えると、揺動抵抗体81が水中で抵抗を発生させるため発電フロート11aは水面を移動しにくくなる。この結果、発電フロート11aの設置状態の安定性を向上できるとともに、アンカー63にかかる負荷を低減できる。換言すればアンカー63の移動体64の固定に要する固定強度を軽減できる。
【0073】
<ラックフロート>
つぎに、
図1に示したように水上発電装置11の本体部とともに設置されるラックフロート91について説明する。
【0074】
水上発電装置11の本体部は、前述のように複数の発電フロート11aを自由な形に配置でき、その数も必要に応じて増やすことができる。このため配線の数が多くなる。その配線のまとめや発電フロート11aに対するメンテナンスの効率化をラックフロート91で図る。
【0075】
ラックフロート91は
図1に示したように、設置場所の岸から水上発電装置11の本体部に向けてのび、水上発電装置11の本体部の中にも設置されている。ラックフロート91の設置個所は必要に応じて詩適宜設定される。
【0076】
ラックフロート91は、配線を伸ばす部分であるとともに人が歩く通路である。
図25はラックフロート91の斜視図であり、
図26は分解斜視図である。
【0077】
図26に示したようにラックフロート91は、平面視長方形をなすラック架台92と、このラック架台92の上の幅方向中間に設けられるケーブルラック93と、ケーブルラック93の両側に配設される歩廊94を有する。
【0078】
ラック架台92は、鋼材をはしご状に組んだ架台枠92aの下に浮部材92bを備えて構成される。浮部材92bは、厚い方形板状であり、発電フロートと同様に発泡樹脂板を使用するとよい。ラック架台92は適宜長さに形成されており、
図25に示したように、適宜の隙間をあけて配設される。ラック架台92同士の間隔は、上に設けるケーブルラック93や歩廊94の固定で保持するとよい。
【0079】
ケーブルラック93は、公知のケーブルラックを使用するとよく、屋根93a付きのものを用いる。歩廊94についても公知のものを使用できる。ケーブルラック93も歩廊94も、ボルトナットなど適宜の固定手段で固定される。
【0080】
このような構成のラックフロート91は、水上の所望位置に浮かべられ、前述のように発電フロート11aの間にも配設される。発電フロート11aの間への配設に際しては、必要に応じて前述の連結装置51を用いて発電フロート11aに連結するとよい。一体性の高い設置状態が得られる。
【0081】
ラックフロート91を備えると、水上発電装置11の設置に際して電線の取り扱いが容易になり、パネル架台17の傾斜角調節や各種メンテナンスの作業性も向上する。
【0082】
以上、この発明を実施するための一形態を説明した。
【0083】
この発明の構成と前述の一形態の構成との対応において、
この発明の固定金具は、前述の固定金具53、架台ベース31の端部に対応するも、
この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することもできる。
【0084】
たとえば、連結装置は前述のように発電フロートの一辺に2個ずつつけるほか、3個以上とすることもできる。
【0085】
またアンカーの移動体は直線方向に移動するものに限らず、その他の方向にも移動するものであってもよく、食い込み部は同一方向に向くものを複数備えたり異方向に向くものを複数備えたりすることもできる。
【0086】
係留装置で係留する浮体には、太陽光発電の装置のほか様々なものが考えられる。たとえばエネルギーを生成するものとしては風力や水流を利用して発電する浮遊型プラントがある。