(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490983
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】定規の製造方法
(51)【国際特許分類】
B43L 7/00 20060101AFI20190318BHJP
【FI】
B43L7/00 F
B43L7/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-32889(P2015-32889)
(22)【出願日】2015年2月23日
(65)【公開番号】特開2016-155239(P2016-155239A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2017年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】501126308
【氏名又は名称】東洋定規株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080115
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 和壽
(72)【発明者】
【氏名】五頭 弘行
【審査官】
大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭50−061052(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0143934(US,A1)
【文献】
登録実用新案第3128910(JP,U)
【文献】
実公昭48−007896(JP,Y1)
【文献】
登録実用新案第3175237(JP,U)
【文献】
特開2011−126058(JP,A)
【文献】
特開2010−064356(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3192187(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L 7/00−11/08
G01B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の透明な定規本体の、少なくとも1つの直線状の縁辺裏面に、裏刷り用に反転した複数の目盛線を等間隔で白ぬきにし、それ以外はベタとして1色目の印刷をする第1工程と、前記1色目の印刷面に目盛線の色を変えたい目盛線の部分だけ白ぬきに残しベタとして2色目の印刷をする第2工程と、前記2色目で白ぬきに残した目盛線の部分に目立たせたい目盛線の色を入れて3色目の印刷をする第3工程と、を備えることを特徴とする定規の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の定規の製造方法において、表刷り用として1色目と同様に複数の目盛線を白ぬきにし、それ以外はベタとして4色目の印刷をする第4工程と、を備えることを特徴とする定規の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の定規の製造方法において、色を変えたい目盛線は、1cm単位の目盛線であることを特徴とする定規の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の定規の製造方法において、色を変えたい目盛線は、赤色であることを特徴とする定規の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、目立たせたい特定の目盛線の色を他の目盛線と違う色にして、目盛線を読み取り易くした定規の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
目盛線を読み取り易くするために、目盛線の長さや太さを変えることによって差別化したり、例えば1cm毎の目盛線に▲(三角)や●(丸)などの目印を目盛線に付けたりする定規が知られている。しかし、どれも目盛線は同一色(同一版)になっているため読み取り易さの点で十分とはいえなかった。
【0003】
そのため、目盛線に2色以上を使用した従来技術として、特許文献1に示すような定規が提案されている。この定規は背景の色に左右されることなく目盛線等の視認性が妨げられることのないようにすることを目的とし、透光性を有する定規本体と、当該定規本体の幅方向一端側に沿って設けられた目盛線とを備えた定規において、前記目盛線は、線内の幅方向中央を境界として両側の明度が明暗に区別された色で表示されていることを特徴とするものである。
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている定規は、それぞれ1本の目盛線を左右半分ずつ白などの明るい色と黒などの暗い色に分けることによって、被測定物又は背景が白っぽい時には黒い目盛を利用し、被測定物又は背景が黒っぽい時には白の目盛が利用できるというものであり、各目盛線が同じ色の組み合わせで構成されており、目盛の中で特定の目盛線を強調するものではない。したがって、視認性がさほどよいとはいえず、この定規も読み取り易さの点では未だ十分とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−126058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこでこの発明は、上記のような従来の問題点に鑑みなされたものであり、目盛の中で特に目立たせたい特定の目盛線をその他の目盛線の色とは違う色に変えることによって強調して、視認性がよくてより読み取り易い定規の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、請求項
1に記載の発明は、合成樹脂製の透明な定規本体の、少なくとも1つの直線状の縁辺裏面に、裏刷り用に反転した複数の目盛線を等間隔で白ぬきにし、それ以外はベタとして1色目の印刷をする第1工程と、前記1色目の印刷面に目盛線の色を変えたい目盛線の部分だけ白ぬきに残しベタとして2色目の印刷をする第2工程と、前記2色目で白ぬきに残した目盛線の部分に目立たせたい目盛線の色を入れて3色目の印刷をする第3工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項
2に記載の発明は、請求項
1に記載の定規の製造方法において、表刷り用として1色目と同様に複数の目盛線を白ぬきにし、それ以外はベタとして4色目の印刷をする第4工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項
3に記載の発明は、請求項
1又は
2に記載の定規の製造方法において、色を変えたい目盛線は、1cm単位の目盛線であることを特徴とする。
【0011】
請求項
4に記載の発明は、請求項
3に記載の定規の製造方法において、色を変えたい目盛線は、赤色であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、前記のようであって、請求項
1ないし
4に記載の発明によれば、目盛の中で特に目立たせたい特定の目盛線をその他の目盛線の色とは違う赤などの目立つ色に変えることによって強調して、視認性がよくてより読み取り易い定規の製造方法が得られる。製造に際しても、第1工程〜第3工程にしたがって1色目から3色目の印刷をするだけでよく、製造が容易であるとともに、製造コストも安価に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の一実施の形態に係る定規の斜視図である。
【
図4】定規の製造工程を示した図面で、(A)は第1工程を説明するための全体底面図、(B)はその部分拡大図、(C)は(B)のC−C線に沿う断面図である。
【
図5】定規の製造工程を示した図面で、(A)は第2工程を説明するための全体底面図、(B)及び(C)はその部分拡大図、(D)は(C)のD−D線に沿う断面図である。
【
図6】定規の製造工程を示した図面で、(A)は第3工程を説明するための全体底面図、(B)及び(C)はその部分拡大図、(D)は(C)のD−D線に沿う断面図である。
【
図7】定規の製造工程を示した図面で、(A)は第4工程を説明するための全体底面図、(B)及び(C)はその部分拡大図、(D)は(C)のD−D線に沿う断面図である。
【
図8】従前の定規を示した図面で、(A)はその部分拡大図で、目立たせたい目盛線にズレが全くなく印刷された良品例を示し、(B)は(A)のB−B線に沿う断面図である。
【
図9】従前の定規を示した図面で、(A)はその部分拡大図で、目立たせたい目盛線にズレが発生して印刷され目幅にバラツキができた不良品例を示し、(B)は(A)のB−B線に沿う断面図である。
【
図10】同上の従前の定規との対比において、(A)は一実施の形態に係る定規の部分拡大図、(B)は(A)のD−D線に沿う断面図である。
【
図11】同上の従前の定規との対比において、(A)は一実施の形態に係る定規の部分拡大図、(B)は(A)のD−D線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の一実施の形態の定規について、図面を参照しながら説明する。ここでの説明の便宜上、用語について定義付けすると、「目盛線」とは目盛を構成する直線部に目盛られた線、「目盛」とは目盛線の組み合わせを規則に並べた標識の集合、「目幅」とは相隣る目盛線の間隔、のことをそれぞれいうものとする。
【0016】
図1は一実施の形態の定規の斜視図である。ここでは定規の外形を示すのみで、図で平面(上面)となる表面、及び底面(下面)となる裏面に設ける目盛等は省略している。この定規1は、定規本体2を備えている。定規本体2は、透明な合成樹脂からなる所定の厚さWを有する平面視長方形の板状からなっている。定規本体2の表面の長手方向に沿う一方(
図1で斜め上方)の縁部2aは線を描き易いように下向き傾斜のテーパ面となるように切り欠かれている。
図2は定規の平面図、
図3は定規の底面図である。
【0017】
定規本体2の表面における縁部2aの長手方向の表面には、
図2に示すように複数の目盛線3〜5が等間隔で設けられている。これらの目盛線は、1mm間隔の目盛線(小単位)3と、これよりやや長い5mm間隔の目盛線(中単位)4と、さらにこれよりやや長い10mm間隔の目盛線(大単位)5からなっている。目盛線3,4は黒色で表示され、目盛線5は目立ちやすいように赤色で表示されている。目盛線4の縁辺側でない端には●(丸)の目印6が付されている。目盛線5の近傍にはその目盛の位置を示す数字7が設けられている。ここでは10mm(1cm)毎に0,1,2,3・・・と設けられ、黒ベタ8の地に白ぬき表示となっている。また、0,5,10・・と5cm毎の数字は前記とは逆に丸くぬいた白地に黒色で表示されている。
【0018】
また、定規本体2の表面の長手方向に沿う他方の縁辺上面にも同様な複数の目盛線13〜15が等間隔で設けられている。そして、目盛線15の近傍にはその目盛の位置を示す数字16が前記数字7に対して90°向きを変えて、すなわち定規1を図から縦向きとした場合にその左側に位置する被測定物等を目盛線13〜15でよく読めるようにして設けられている。ここでは1cm毎に0,1,2,3・・・と設けられ、0,5,10・・と5cm毎の数字は他よりも大きく、かつ0を赤色とし、5,10を黒色として表示されている。これらの数字16の縁辺でない側には長手方向に黒色のセパレート線17が前記黒ベタ8の地との間に透明な部分18を介在させて設けられている。
【0019】
他方、定規本体2の裏面における縁部2aの長手方向の表面にも、
図3に示すように複数の目盛線23〜25が等間隔で設けられている。これらの目盛線23〜25は、表面側の前記目盛線3〜5と同じように設けられ、数字26も反転して並びが右側からとなっているとか、黒ベタ地ではないとか白ぬき表示でないとか以外は数字7と同じように表示されている。
【0020】
また、定規本体2の裏面の長手方向に沿う他方の縁辺上面にも同様な複数の目盛線43〜45が等間隔で設けられている。これらの目盛線43〜45は、表面側の前記目盛線13〜15と同じように設けられ、数字46も反転して並びが左側からとなっている以外は数字16と同じように表示されている。
【0021】
上記のように定規本体2の表面と裏面に設けられている目盛線3〜5,13〜15と目盛線23〜25,43〜45、数字7,16と数字26,46は反転して表示されている点で同じであり、主として異なる点は表面の一方の縁辺側の数字の一部が白ぬき等されているだけである。
【0022】
なお、定規1はこの例では図示したような長方形の板状定規としたが、目盛線3〜5等さえ設けることが可能であれば、形状は長方形状に限られない。例えば、三角定規、T型定規、分度器等であってもよい。
【0023】
また、定規本体2は、該本体を通して被測定物等が目視できる透明な樹脂からなることが最も好ましいが、目視することができれば半透明な樹脂を用いることも可能である。また、定規本体2を合成樹脂製とする場合、塩化ビニル樹脂、メタクリル樹脂、PET樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
本実施形態の定規1の作用について説明する。定規1を用いた測定作業においては、被測定物等にもよるが、横方向の寸法を測定する場合は、例えば定規本体2の目盛線3〜5が設けられた縁辺を被測定物等にその上から当てがい、該当個所の長さ寸法の測定を行う。この際、目盛線3〜5が小単位や中単位の黒色の目盛線3,4ほかに大単位の赤色の目盛線5からなっているので、特に目立ちやすい大単位の目盛線5の把握が瞬時に行え、きわめて容易に測定を行うことが可能となる。一方、縦方向の寸法を測定する場合は、定規を持ち変え、定規本体2の目盛線13〜15が設けられた縁辺を被測定物等にその上から当てがい、該当個所の長さ寸法の測定を行う。このようにすれば、該目盛線の数字16が縦向きに表示されているので、読みやすい。
【0025】
このように本実施形態の定規1においては、前記したように小単位や中単位の目盛線3,4等は黒色としたが、大単位の目盛線5等は赤色としているため目立ちやすいものとなる。そのため、被測定物等の測定が容易となる。勿論、定規1は定規本体2の裏面にも目盛線23〜25等があるので、こちらの目盛線等での測定も可能である。
【0026】
次に、
図4〜7を参照して定規1の製造方法について説明する。
【0027】
(第1工程)
まず、
図4(A)〜(C)に示すように定規本体2の裏面に、裏刷り用に反転した目盛線3〜5等を白ぬきにし、それ以外はベタとして1色目の印刷をする。50はその1色目の印刷層を示す。印刷は、例えばスクリーン印刷で行う。すなわち、この1色目の印刷では、印刷は全て定規本体2の裏面からするため目盛線3〜5等を裏刷り用に反転しておく。目盛線3〜5等や数字7等、あるいは図示していないが文字等は白ぬきにし、それ以外はベタとする。使用するインクは不透明の隠ぺい性の高いものが好ましく、例えば黒の顔料や平均粒径5〜8μmの微粒子アルミ粉を約30%程度混ぜたものなどを使用する。ここでは微粒子アルミ粉を30%混ぜたシルバーにオレンジの顔料を加えてゴールドに見せた色でのベタ印刷としている。
【0028】
(第2工程)
次に、
図5(A)〜(D)に示すように前記1色目の印刷層50の上に、目盛線の色を変えたい目盛線の部分だけ白ぬきに残しベタとして2色目の印刷をする。60はその2色目の印刷層を示す。
図5(B)は底面から見た2色目の単色を示し、
図5(C)は底面から見た1色目+2色目を示す。すなわち、この2色目の印刷では、目盛線の色を変えたい部分だけを白ぬきに残して、ベタ印刷をする。1色目が淡い色の場合は黒や濃紺などの暗い色にし、逆に1色目が暗い色の場合は白や黄色などの明るい色を使用したほうが目盛線がはっきり見えるので好ましい。ここでは黒色でのベタ印刷としている。
図5(C)に明示しているように白ぬき部61は1色目の目盛線3〜5等の白ぬき部よりも0.4mm〜0.6mm太くする。長さは0.2mm〜0.3mm長くする。
【0029】
(第3工程)
次に、
図6(A)〜(D)に示すように前記2色目の印刷で白ぬきに残した目盛線の部分61に赤などの目立たせたい目盛線の色を入れて3色目の印刷をする。70はその3色目の印刷層を示す。
図6(B)は底面から見た3色目の単色を示し、
図6(C)は底面から見た1色目〜3色目を示す。この3色目の印刷では、2色目で白抜きした部分61に、目立たせたい目盛線5の色を入れる。ここでは赤色での印刷としている。
【0030】
(第4工程)
次に、
図7(A)〜(D)に示すように表刷り用として1色目と同様に目盛や数字、文字などを白ぬきにし、それ以外はベタとして4色目の印刷をする。80はその4色目の印刷層を示す。
図7(B)は底面から見た4色目の単色を示し、
図7(C)は底面から見た1色目〜4色目を示す。この4色目の印刷では、1色目と同様に、隠ぺい性の高いインクで、目盛線、数字、文字等の部分を白ぬきにして表刷りにして印刷する。ここではシルバー色でのベタ印刷としている。色を変えた部分は1色目と同じ部分にくるため、目盛線の長さ、太さ、位置は1色目と同じにする。
【0031】
このようにして、1〜4色目の印刷層50〜80を有する、
図2,7に示した定規1が得られる。すなわち、表面と裏面の目盛線5,15,25,45が赤色で、それ以外の目盛線が黒色の定規1が得られる。
【0032】
図8,9は従前の定規において、2色刷りした場合の例を示す。
図8のように目立たせたい目盛線にズレが全くなく印刷されれば、良品として問題はない。目幅は1.0mmと同じである。しかし、
図9のようにとかく2色目の印刷で目立たせたい赤色の目盛線が本来黒色の目盛線のちょうどセンターに印刷されなければならないのに左に0.2mmズレて印刷されれば、目幅にバラツキができた不良品となってしまう。したがって、従前の方法では目盛線にズレが発生すれば、それがそのまま反映してしまうことになる。
【0033】
この製造方法によれば、
図10に示すように3色目の印刷が0.2mmズレたとしても見た目には目幅はズレておらず、定規1の精度は低下しない。さらに、この製造方法によれば、
図11に示すように2色目は右に3色目は左にと逆方向に0.2mmズレた場合でも、見た目に目幅がバラつくことはない。
【0034】
このように、本実施形態の製造方法によれば、印刷精度等により各色のズレが0.2mm程度生じても、目盛同士がズレて見えることがない。
【0035】
なお、この実施の形態の製造方法では第4工程までとしたが、この第4工程は定規本体2の裏面に必ずしも目盛を付す必要がなければ省略することができる。また、この実施の形態では目立たせたい目盛線の色として赤色を示したが、目立つ色であれば赤色以外でもよく、また目立たせたい目盛線を1cm毎の目盛線としたが、これも一例であり、0.5mm毎の目盛線としたり、あるいは5cm毎の目盛線としてもよいなど実施に際しては特許請求の範囲に記載した技術的事項を変更しない限り、ほかの構成としてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
1 定規
2 定規本体
3〜5,13〜15,23〜25,43〜45 目盛線
6 目印
7,16,26,46 数字
8 黒ベタ
17 セパレート線
18 透明な部分
50 1色目の印刷層
60 2色目の印刷層
70 3色目の印刷層
80 4色目の印刷層