(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491002
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】暴風雪柵用基礎変位防止体
(51)【国際特許分類】
E01F 7/02 20060101AFI20190318BHJP
E02D 27/42 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
E01F7/02
E02D27/42 A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-58973(P2015-58973)
(22)【出願日】2015年3月23日
(65)【公開番号】特開2016-176303(P2016-176303A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】399033094
【氏名又は名称】北海道ガソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082234
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】今野 智和
(72)【発明者】
【氏名】入江 健二
(72)【発明者】
【氏名】柏崎 国弘
(72)【発明者】
【氏名】東 忍
【審査官】
亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4336257(JP,B2)
【文献】
特開2011−140798(JP,A)
【文献】
実開昭57−187812(JP,U)
【文献】
特開2001−226925(JP,A)
【文献】
特開2014−029070(JP,A)
【文献】
実開昭59−027211(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3138408(JP,U)
【文献】
特開2004−143867(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0083025(US,A1)
【文献】
特公昭47−047348(JP,B1)
【文献】
特開2005−194850(JP,A)
【文献】
実開昭61−002549(JP,U)
【文献】
実開昭50−029729(JP,U)
【文献】
特開平08−302678(JP,A)
【文献】
実開平04−112918(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 7/00−7/04
E01F 1/00
E01F 13/00−15/14
E01F 8/00−8/02
E02D 27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路側に埋設するブロック状の基礎と、該基礎に立設され、所定の間隔で列設する他の支柱との間で遮蔽板を支持する支柱とからなる防風雪柵を支持する基礎変位防止体であって、基端側は前記基礎に支持され、自由端となる先端側は上下方向に変位可能なアーム材と、該アーム材の先端側に設けることにより、前記基礎から離間して前記路側に係止する係止材とからなり、該係止材は該路側の斜面に食い込む係止片を有して構成してあることを特徴とする暴風雪柵用基礎変位防止体。
【請求項2】
前記アーム材は、伸縮可能に構成してあることを特徴とする請求項1記載の暴風雪柵用基礎変位防止体。
【請求項3】
前記係止材は、前記アーム材に設けられる基板と、該基板から下向きに突出形成することにより前記路側の斜面に打ち込む係止片とから構成してなる請求項1記載の暴風雪柵用基礎変位防止体。
【請求項4】
前記係止材は、前記路側に打ち込むアンカーピンによって固定するようにしたことを特徴とする請求項1記載の暴風雪柵用基礎変位防止体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、決まった季節に一定方向から強風や雪が吹付ける地域において、交通の安全を確保するために道路の風上側の路側に沿って立設する防風雪柵を支持する
暴風雪柵用基礎変位防止体に関する。
【背景技術】
【0002】
冬季に風や吹雪が一定の方向から強く吹く地域では交通、特に自動車の走行時の安全を確保するために道路の路側に沿って防風雪柵を列設することが行われている。そして、多くの道路は強度性、耐久性を持たせるために砕石の敷設、盛土及びアスファルト舗装といった多層構造の盛土断面からなるため、道路は周囲よりも高い位置に形成されて路側の外側は斜面になっている場合が多い。
そして、
図7に示すように、防風雪柵21を設置する幅員を十分に確保できない路側22にあっては、防風雪柵21を構成する基礎21Aはその全部が路側22に埋設されずに、背面の一部が路側22の斜面22Aから露出した状態になる場合がある。
【0003】
防風雪柵21は
図7に示す矢示イ方向の一定の方向から吹き付ける強い風や吹雪の順風に対応して設置するのが普通であり、この場合は防風雪柵21の基礎21Aの一部が路側22の斜面22Aから露出した状態であっても格別問題は起きない。
【0004】
しかし、異常気象等の気候変動によって、矢示ロ方向の逆方向から防風雪柵21に強い風や吹雪が吹き付ける場合がある(
図8参照)。この場合、基礎21Aの一部が路側22から露出している防風雪柵21にあっては、風圧に対して基礎21Aを支える土圧が不足し、土との摩擦力や自重では支えきれずに防風雪柵21が後方、即ち道路外側に傾き(
図9参照)、最悪の場合には転倒する事態も生じている。また、豪雨によって路側22が軟化し、このために基礎21Aが設置場所から滑動してしまうといった事態も生じている。
【0005】
そこで、防風雪柵をより強度に支える技術として、防雪柵2の転倒防止具4が提案されている。この転倒防止具4は、四角形の支圧板4a上に幅方向両側に位置して一対の直角三角形のサポート部材4bを立設して構成したもので、該基礎コンクリート3の反道路側部位に支圧板4aを配置し、サポート部材4b、4bを基礎コンクリート3の反道路側面に結合一体化することにより、基礎コンクリート3の底面積を広げる、というものである(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4336257号特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の転倒防止具4は、支圧板4aを地盤50上で基礎3と位置合わせする、基礎3に打ち込んだアンカー6にサポート部材4bを位置合わせしてボルト4d・ナット4eで締結するといった多くの、また手間の掛る作業が多数の基礎3毎に必要である。このように、掘削作業や組み付け作業が必要で作業効率が悪い、防止具4に高い製作コストが掛る、路側には防止具4を設置するスペースが必要であるために設置場所が限られる、といった幾多の欠点がある。
【0008】
本発明は上述した従来技術の諸欠点に鑑みなされたもので、構成が簡単で安価であるし、路側の斜面に対応して設置できるので強度性と安定性に優れており、また設置時の作業も容易で短時間で設置が可能であり、しかも既設の防風雪柵にも設けることができる
暴風雪柵用基礎変位防止体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明を構成する手段は、路側に埋設するブロック状の基礎と、該基礎に立設され、所定の間隔で列設する他の支柱との間で遮蔽板を支持する支柱とからなる防風雪柵
を支持する基礎変位防止体であって、基端側は前記基礎に支持され
、自由端となる先端側は上下方向に変位可能なアーム材と、該アーム材の先端側に設け
ることにより、前記基礎から離間して前記路側に係止する係止材とから
なり、該係止材は該路側の斜面に食い込む係止片を有して構成するとよい。
【0010】
そして、前記アーム材は、伸縮可能に構成するとよい。
【0011】
また、前記係止材は、前記アーム材に設けられる基板と、該基板から下向きに突出形成することにより前記路側の斜面に打ち込む
係止片とから構成するとよい。
【0012】
更に、前記係止材は、前記路側に打ち込むアンカーピンによって固定するようにするとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は叙上の如く構成したから、下記の諸効果を奏する。
(1)アーム材の先端側に路側に係止する係止材を設けた基礎変位防止体を基礎に設けたから、基礎の一部が路側から露出している設置場所でも防風雪柵が逆風によって傾斜し、或いは転倒する事態を防止することができる。
(2)基礎変位防止体は基礎に対して係止材が上下方向に変位可能に構成してあるので、設置場所によって路側の斜面の角度が異なっている場合でも対応することができる。
(3)アーム材は伸縮可能に構成したから、防風雪柵を設置する路側の斜面状況に応じて斜面に係止することができる。
(4)係止材は、アーム材に設ける基板と、基板から下向きに突出して斜面に打ち込む突起とから構成したので、路側に確実に係止して風圧に対して防風雪柵を確実に支えることができる。
(5)係止材は路側に打ち込むアンカーピンによって固定するようにしたから、路側が軟弱な地質であっても防風雪柵を確実に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1乃至
図6は本発明の実施の形態に係り、
図1は防風雪柵
用基礎変位防止体の側面図である。
【
図5】変形例に係る基礎変位防止体の側面図である。
【
図6】他の変形例に係るアーム材の部分側面図である。
【
図7】
図7乃至
図9は従来技術に係り、
図7は路側に設置した防風雪柵が順風を受ける状態の側面図である。
【
図8】防風雪柵が逆風を受ける状態の側面図である。
【
図9】防風雪柵が逆風により傾斜した状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を
図1乃至
図6に基き詳述する。
図1乃至
図4において、1は防風雪柵、2は該防風雪柵1を構成し、路側22に埋設したコンクリート製ブロックからなる基礎で、該基礎2の上面2Aには後述する支柱4を支持するための植込ボルト3、3、・・が設けてある。4は鋼材からなる支柱を示し、該支柱4は溶接により固着したプレート板4Aを前記植込ボルト3にナットで締着することにより、基礎2上に立設してある。そして、同様に基礎2上に立設して列設した支柱4との間に図示しない防風雪板が架設してある。
【0016】
5は前記路側22に設けた防風雪柵1を支持するための基礎変位防止体を示す。6は該基礎変位防止体5を構成するアーム材で、該アーム材6はコ字型材からなり、基端側6Aが基礎2の側面にボルト・ナット7により締着してある。なお、アーム材6にはコ字型材に限らずパイプ、型鋼類を使用してもよい。
【0017】
8は前記アーム材6の先端側6Bに設けた係止材を示す。該係止材8は
図2乃至
図4に示すように、四角形の基板8Aと、該基板8Aの前縁から下向きに形成した前側係止片8Bと、基板8Aの後縁から下向きに形成した後側係止片8Cと、基板8Aの幅方向中央に立設した取付片8Dとから構成してあり、前側係止片8Bは中央下端が突出する5角形状に形成して路側22に確実に食い込むようにしてある。
上述の構成からなる係止材8は、前、後係止片8B、8Cを下向きの状態にして取付片8Dをアーム材6の先端側6Bにボルト・ナット9で締着することによりアーム材6に設けてある。
【0018】
上述の構成からなる防風雪柵1は、路側22に沿って地盤を掘削して設置し、路側22の斜面22Aに基礎変位防止体5を係着する。即ち、基礎変位防止体5を斜面22Aの傾斜に合わせて伸長し、係止材8を押圧して斜面22Aに前、後係止片8B、8Cを打ち込む。
これにより、基礎変位防止体5は斜面22Aに確実に係止した状態になり、防風雪柵1が矢示ロ方向の逆風を強く受けても基礎変位防止体5が支えることで基礎2が傾くのを防止することができる。
【0019】
図5は本実施の形態の変形例を示す。その特徴は、係止体8の基板8Aに予め穿設してある穴8E(
図2参照)にアンカーピン9を挿通し、該アンカーピン9を斜面22Aに打ち込むことにより、路側22が軟弱地盤で前、後係止片8B、8Cの食い込みが弱い場合でも係止体8を確実に路側22に係止することができる。
【0020】
図6は他の変形例を示す。図において、10は基礎変位防止体、11は該基礎変位防止体10を構成するアーム材で、該アーム材11は基礎2にボルト・ナット7により締着する固定アーム部11Aと、該固定アーム部11Aの先端側にボルト・ナット12により締着した可動アーム部11Bとから構成し、可動アーム部11Bの先端側に係止材8が設けてある。
【0021】
このようにアーム材11は固定アーム部11Aと可動アーム部11Bの2部材をピン結合し、可動アーム部11Bが上下方向に変位可能に構成したから、路側22の傾斜角度が異なる場合にも係止材8を路側22の斜面22Aに合わせることでき、前、後係止片8B、8Cを斜面22Aに確実に食い込ませることができる。
なお、係止材8を上下方向に変位可能であれば、基礎2に対してアーム材6の基端側6Aを回動可能に軸着する構成にしてもよい。
【0022】
更に、図示しないが、アーム材6は伸縮可能に構成してもよい。この構成により係止体8の位置を斜面22Aに対して前後方向に変えることができるので斜面22Aの状況に対応して係止体8を係止することができる。
【0023】
また、基礎変位防止体5は、既設の防風雪柵の基礎2に後付けして用いてもよいものである。
【符号の説明】
【0024】
1 防風雪柵
2 基礎
4 支柱
5、10 基礎変位防止体
6、11 アーム材
8 係止材
8A 基板
8B 係止片
9 アンカーピン
22 路側
22A 斜面