(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1工程では、前記キャップシートの面内方向の端縁部で、前記キャップシートの表面側から加圧することにより、前記突起部を前記キャップシートの裏面側に向けて押し潰すこと
を特徴とする請求項1に記載の複合構造体の製造方法。
前記第1工程では、前記キャップシートの面内方向の端縁部で、前記キャップシートの裏面側から加圧することにより、前記突起部を前記キャップシートの表面側に向けて押し潰すこと
を特徴とする請求項1に記載の複合構造体の製造方法。
前記第1工程では、各々の前記突起部に隣り合わせて複数の前記突起部が面内方向の六方向に配置されて、前記キャップシートの面内方向の端縁部で、前記キャップシートに形成された前記突起部を面外方向に押し潰して、
前記第2工程では、前記キャップシートの面内方向の端縁部で、前記キャップシートの面外方向に押し潰された複数の前記突起部の各々の側面が互いに密着されるとともに、各々の前記突起部の側面が面内方向で略六角形状に形成されること
を特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の複合構造体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された中空パネルは、パネル端面の開放部を封止・密閉させる方法として、バックシートの外形をキャップシートの外形よりも大きく形成して、バックシートの縁部をキャップシート側やライナーシート側に折り曲げる方法、バックシート及びライナーシートを縁部でプレス加工する方法、又は、パネル端面の開放形状に対応した帯状の封止材を熱融着によって取り付ける方法が提案されている。
【0006】
しかし、特許文献1に開示された中空パネルは、バックシートの縁部をキャップシート側やライナーシート側に折り曲げる方法、又は、バックシート及びライナーシートを縁部でプレス加工する方法によると、キャップシート、バックシート及びライナーシートの外径が、互いに影響し合うものとなるため、パネル端面の開放部を封止・密閉させる前の段階で、外径の寸法調整に厳密性が要求されるものとなる。
【0007】
また、特許文献1に開示された中空パネルは、パネル端面を面材等で覆って封止することで、中空パネルの内部空間に空気や液体を充填・循環等させることが可能となり、中空パネルを一種のラジエーターとして機能させることができるとされているものの、空気や液体の充填・循環の態様が明らかとなっておらず、中空パネルの片面のみから集中的に、かつ、面内方向で均一に冷却又は加温するための具体的な冷却手段・加温手段が開示されてない。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、生産性の高い製造方法を用いて、キャップシートの端縁部の密閉性能を確実に向上させることのできる複合構造体の製造方法、及び、金属シートのみから集中的かつ均一に熱交換することのできる温度調節パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る複合構造体の製造方法は、複数のシート材を積層させて製造される複合構造体の製造方法であって、面外方向の表面側に突出させて複数の突起部が形成されたキャップシートに、前記キャップシートの裏面側からバックシートを取り付けて、前記キャップシートの面内方向の端縁部で、前記キャップシートに形成された前記突起部を面外方向に押し潰す第1工程と、前記キャップシートの面内方向の端縁部で、前記キャップシートの面外方向に押し潰された前記突起部を、金属シートに溶着させる第2工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
第2発明に係る複合構造体の製造方法は、第1発明において、前記第1工程では、前記キャップシートの面内方向の端縁部で、前記キャップシートの表面側から加圧することにより、前記突起部を前記キャップシートの裏面側に向けて押し潰すことを特徴とする。
【0011】
第3発明に係る複合構造体の製造方法は、第1発明において、前記第1工程では、前記キャップシートの面内方向の端縁部で、前記キャップシートの裏面側から加圧することにより、前記突起部を前記キャップシートの表面側に向けて押し潰すことを特徴とする。
【0012】
第4発明に係る複合構造体の製造方法は、第1発明〜第3発明の何れかにおいて、前記第1工程では、各々の前記突起部に隣り合わせて複数の前記突起部が面内方向の六方向に配置されて、前記キャップシートの面内方向の端縁部で、前記キャップシートに形成された前記突起部を面外方向に押し潰して、前記第2工程では、前記キャップシートの面内方向の端縁部で、前記キャップシートの面外方向に押し潰された複数の前記突起部の各々の側面が互いに密着されるとともに、各々の前記突起部の側面が面内方向で略六角形状に形成されることを特徴とする。
【0013】
第5発明に係る温度調節パネルは、複数のシート材を積層させた複合構造体を用いた温度調節パネルであって、面外方向の表面側に突出させて複数の突起部が形成されたキャップシートと、前記キャップシートの裏面に取り付けられるバックシートと、前記キャップシートの表面に取り付けられて前記キャップシートの面内方向の端縁部
における前記突起部が
、面外方向で完全に圧縮されるとともに溶着される金属シートとを備え、前記キャップシートは、複数の前記突起部の各々の側面を面内方向で互いに離間させて形成される間隙で、所定の温度の空気又は液体を面内方向の進行方向を変化させながら循環させることで、前記金属シートから熱交換させるものとなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1発明〜第4発明によれば、キャップシートの面内方向の端縁部を密閉する前の段階で、キャップシート、バックシート及び金属シートの外径の寸法調整に厳密性が要求されないものとなり、複合構造体の製造工程を単純化して、複合構造体の製造コストを低減させることが可能となる。
【0015】
第1発明〜第4発明によれば、複合構造体の製造工程を単純化して製造コストを低減させるとともに、気密性、水密性の高い密閉空間を形成することができるため、キャップシート、バックシート及び金属シートを単純にプレス加工するだけでは得られない、気密性、水密性の高い密閉空間を実現することが可能となる。
【0016】
第1発明〜第4発明によれば、キャップシートの端縁部に帯状の封止材等を別途に取り付けることを必要としないため、複合構造体を製造するための材料コストを低減させるとともに、複合構造体の軽量化を実現させながら、キャップシートの端縁部の封止性能、密閉性能を十分に確保することが可能となる。
【0017】
特に、第2発明によれば、キャップシートの面内方向の端縁部で、キャップシートの表面側から加圧するものとなるため、バックシートに過度の負担をかけることなく、バックシートを伸長させて伸長部が形成されるものとなり、バックシートの損傷を極力小さくすることで、キャップシートの端縁部の封止性能、密閉性能を著しく向上させることが可能となる。
【0018】
特に、第2発明によれば、キャップシートの面内方向の端縁部で、キャップシートの表面側から加圧するものとなり、突起部の天面が基板部より薄く形成されることから、突起部の天面に加熱治具を押し当てる時間を短くして、また、加熱治具の温度を低くすることで、突起部を押し潰す工程に必要となる製造時間、製造コストを低減させることが可能となる。
【0019】
特に、第4発明によれば、キャップシートの端縁部で、複数の突起部が押し潰されて、複数の突起部の各々の側面を互いに密着させるとともに、各々の突起部の側面が略六角形状に形成されることで、互いに密着した複数の側面が、面内方向に連続して連なって配置されないものとなるため、キャップシートの端縁部の封止性能、密閉性能を著しく向上させることが可能となる。
【0020】
第5発明によれば、複合構造体の密閉空間で時間をかけて、かつ、複合構造体の面内方向の隅々まで略均一に、所定の温度の空気又は水等の液体が循環するものとしながら、さらに、専ら金属シートのみから熱交換させるものとなることで、複合構造体の表面側のみから集中的に、かつ、面内方向で略均一に、周辺環境の効率的な加温又は冷却の実現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明を適用した温度調節パネルに使用することのできる複合構造体を示す斜視図である。
【
図2】本発明を適用した複合構造体の製造方法のキャップシートを示す正面図である。
【
図3】本発明を適用した複合構造体の製造方法のキャップシートを示す平面図である。
【
図4】本発明を適用した温度調節パネルに使用することのできる複合構造体を示す正面図である。
【
図5】本発明を適用した複合構造体の製造方法でキャップシートの裏面にバックシートを取り付ける第1工程を示す正面図である。
【
図6】本発明を適用した複合構造体の製造方法の第1実施形態でキャップシートの裏面側に向けて突起部を押し潰す第1工程を示す正面図である。
【
図7】本発明を適用した複合構造体の製造方法の第1実施形態でキャップシートの表面に金属シートを取り付ける第2工程を示す正面図である。
【
図8】本発明を適用した複合構造体の製造方法の第1実施形態で金属シートに突起部の天面を溶着させる第2工程を示す正面図である。
【
図9】本発明を適用した複合構造体の製造方法で突起部の側面又は天面に切欠部を形成した状態を示す斜視図である。
【
図10】本発明を適用した複合構造体の製造方法の第2実施形態でキャップシートの表面側に向けて突起部を押し潰す第1工程を示す正面図である。
【
図11】本発明を適用した複合構造体の製造方法の第2実施形態でキャップシートの表面に金属シートを取り付ける第2工程を示す正面図である。
【
図12】本発明を適用した複合構造体の製造方法の第2実施形態で金属シートに突起部の天面を溶着させる第2工程を示す正面図である。
【
図13】(a)は、本発明を適用した複合構造体の製造方法で複数の突起部が押し潰される前の状態を示す平面図であり、(b)は、複数の突起部が押し潰された後の状態を示す平面図である。
【
図14】本発明を適用した温度調節パネルを示す平面図である。
【
図15】本発明を適用した温度調節パネルを示す正面図である。
【
図16】本発明を適用した温度調節パネルで面内方向の進行方向を変化させながら循環する空気又は液体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を適用した複合構造体1の製造方法、及び、温度調節パネル8を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
本発明を適用した複合構造体1の製造方法は、
図1に示すように、複数のシート材を互いに積層させることで、本発明を適用した温度調節パネル8等に使用することのできる複合構造体1を製造するために用いられる。
【0024】
本発明を適用した温度調節パネル8は、複数のシート材を積層させた複合構造体1を用いるものであり、キャップシート3、バックシート4及び金属シート5の各々が、複数のシート材として互いに積層されて、複合構造体1が形成されるものとなる。
【0025】
本発明を適用した温度調節パネル8は、複合構造体1が用いられて、複数の突起部2が形成されたキャップシート3と、キャップシート3の裏面3bに取り付けられるバックシート4と、キャップシート3の表面3aに取り付けられる金属シート5とを備えるものとなる。
【0026】
複合構造体1は、キャップシート3、バックシート4及び金属シート5の各々が、面内方向Xに延びて形成されるものであり、例えば、面内方向Xの外形が略矩形状に形成された場合に、キャップシート3の面内方向Xの端縁部30が、面内方向Xの四方向に配置される。
【0027】
キャップシート3は、例えば、ポリプロピレン等の樹脂材が用いられる。キャップシート3は、
図2に示すように、面外方向Yの表面側Aに突出させた複数の突起部2と、面外方向Yの裏面側Bで略同一平面上に配置される基板部31とを備える。
【0028】
キャップシート3は、略平板状に形成された樹脂材を、裏面側Bから表面側Aに向けて押圧加工することで、押圧された箇所に突起部2が形成されるとともに、押圧されていない箇所が基板部31となり、例えば、基板部31の板厚tpが0.5mm程度となる。
【0029】
キャップシート3は、樹脂材を押圧加工することで突起部2が形成されるため、突起部2の側面21の板厚ts及び天面22の板厚tcが、基板部31の板厚tpより薄く形成される。キャップシート3は、突起部2の側面21の板厚tsが、面外方向Yで裏面側Bから表面側Aに向けて漸減するとともに、突起部2の天面22の板厚tcが、面内方向Xで略均一となる。
【0030】
キャップシート3は、面外方向Yの表面側Aで略同一平面上に配置された複数の突起部2の天面22により、キャップシート3の表面3aが形成されるとともに、面外方向Yの裏面側Bで略同一平面上に配置された基板部31により、キャップシート3の裏面3bが形成される。
【0031】
各々の突起部2は、面内方向Xで略円形状に側面21が形成されて、側面21の表面側Aの端部から連続して、面内方向Xで略円形状の天面22が形成されることで、略円筒形状に形成されるものとなる。各々の突起部2は、これに限らず、略楕円筒形状、略長円筒形状、又は、略矩形状、略六角形状若しくは略八角形状等の略角筒形状に形成されてもよい。
【0032】
各々の突起部2は、基板部31から連続して側面21が面外方向Yに延びて形成されるものであり、側面21と天面22とに取り囲まれた内側に、略中空状の中空部20が形成される。各々の突起部2は、面外方向Yに押し潰される前の状態で、側面21の面外方向Yの高さ寸法hcが、基板部31から天面22まで、例えば、9mm程度となる。
【0033】
各々の突起部2は、
図3に示すように、天面22の面内方向Xの直径φが、例えば、8mm程度となる。各々の突起部2は、面内方向Xに隣り合わせて配置される突起部2と、面内方向Xに所定の離間距離Lとなるように、互いの側面21を離間させて配置される。複数の突起部2は、例えば、面内方向Xに隣り合わせた側面21で、面内方向Xの最長の離間距離Lmaxが、5mm程度となり、面内方向Xの最短の離間距離Lminが、2mm程度となる。
【0034】
複数の突起部2は、各々の突起部2に隣り合わせて面内方向Xの六方向に配置される。複数の突起部2は、1箇の突起部2に対して面内方向Xに隣り合わせて配置された6箇の突起部2が、面内方向Xの六方向で略均等に配置されることで、略六角形状の均等配置となる。複数の突起部2は、これに限らず、面内方向Xの六方向で略均等に配置されなくてもよい。
【0035】
複数の突起部2は、各々の突起部2に隣り合わせて、複数の突起部2が面内方向Xの六方向に配置されるものに限らず、面内方向Xの如何なる数量の複数方向に配置されるものであってもよい。複数の突起部2は、各々の側面21を面内方向Xで互いに離間させることで、所定の離間距離Lの間隙Sが形成される。
【0036】
バックシート4は、例えば、ポリプロピレン等の樹脂材が用いられて、
図4に示すように、表裏両面が略平坦状に形成されるとともに、面外方向Yの厚さ寸法tbが、0.3mm程度となる。バックシート4は、各々の突起部2の内側に形成された中空部20を塞ぐものとして、キャップシート3の裏面3bに取り付けられる。
【0037】
バックシート4は、キャップシート3の裏面3bで、基板部31に接着剤により接着されて、又は、基板部31に熱融着等により溶着される。バックシート4は、各々の突起部2の天面22から面外方向Yに離間することで、各々の突起部2の中空部20に空気等を充填した状態で、各々の突起部2の中空部20を密封するものとなる。
【0038】
金属シート5は、アルミニウム製の金属板が用いられる。金属シート5は、これに限らず、銅板、鋼板、ステンレス板、アルミニウム合金板、又は、亜鉛合金板等が用いられてもよい。金属シート5は、例えば、表裏両面が略平坦状に形成されるとともに、面外方向Yの厚さ寸法tmが、0.8mm程度となる。
【0039】
金属シート5は、キャップシート3の表面3aで、突起部2の天面22に接着剤により接着されて、又は、突起部2の天面22に熱融着等により溶着される。金属シート5は、キャップシート3の基板部31から面外方向Yに離間することで、複数の突起部2の各々の側面21により形成された間隙Sを、キャップシート3の表面側Aから塞ぐものとなる。
【0040】
本発明を適用した複合構造体1の製造方法は、
図5〜
図8に示すように、キャップシート3の端縁部30を密閉して、複数の突起部2の各々の側面21により形成された間隙Sを、密閉されたキャップシート3の端縁部30と、金属シート5とで取り囲むことによって、キャップシート3と金属シート5との間に密閉空間10を形成するために用いられる。
【0041】
本発明を適用した複合構造体1の製造方法は、
図5、
図6に示すように、キャップシート3の裏面側Bから、キャップシート3にバックシート4を取り付ける第1工程と、
図7、
図8に示すように、キャップシート3の面内方向Xの端縁部30で、キャップシート3に形成された突起部2を、金属シート5に溶着させる第2工程とを備える。
【0042】
本発明を適用した複合構造体1の製造方法は、特に、第1工程において、
図6に示すように、キャップシート3の面内方向Xの端縁部30で、キャップシート3に形成された突起部2を面外方向Yに押し潰すとともに、第2工程において、
図8に示すように、キャップシート3の面外方向Yに押し潰された突起部2を、金属シート5に溶着させるものとなる。
【0043】
本発明を適用した複合構造体1の製造方法は、第1実施形態において、第1工程では、キャップシート3の面内方向Xの端縁部30で、キャップシート3の表面側Aから加圧することにより、突起部2をキャップシート3の裏面側Bに向けて、面外方向Yに押し潰すものとなる。
【0044】
第1工程では、最初に、
図5に示すように、キャップシート3の裏面側Bから、略平坦状に形成されたバックシート4を、キャップシート3の基板部31に接着剤により接着して、又は、基板部31に熱融着等により溶着することで、突起部2の内側の中空部20をバックシート4で塞いで密封して、キャップシート3の裏面3bにバックシート4を取り付ける。
【0045】
このとき、第1工程では、キャップシート3の面内方向Xの側端30aから、面内方向Xの内側に向けて、例えば、20mm程度の範囲が、キャップシート3の面内方向Xの端縁部30として密閉される密閉領域Rとなる。第1工程では、必要に応じて、密閉領域Rに配置される突起部2の側面21又は天面22に、中空部20まで到達させて切欠部23を形成しておく。
【0046】
第1工程では、次に、
図6に示すように、キャップシート3の面内方向Xの端縁部30で、石膏ボード等の断熱材料が用いられた断熱台61を、キャップシート3の裏面側Bに配置する。第1工程では、キャップシート3及びバックシート4を、キャップシート3の面内方向Xの端縁部30で、断熱台61に載せ置くとともに、キャップシート3の表面側Aから、角形鋼管等の伝熱材料が用いられた加熱治具60を、突起部2の天面22に押し当てる。
【0047】
第1工程では、例えば、加熱治具60を180℃程度まで加熱して、突起部2の天面22に400秒程度、加熱治具60が押し当てられる。第1工程では、キャップシート3の表面側Aから、突起部2の天面22に加熱治具60を押し当てて加圧することにより、キャップシート3の面内方向Xの端縁部30として密閉される密閉領域Rで、キャップシート3の裏面側Bに向けて、突起部2を面外方向Yに押し潰すものとなる。
【0048】
第1工程では、突起部2が面外方向Yに押し潰されて、突起部2の側面21が面外方向Yに圧縮されることにより、突起部2、基板部31及びバックシート4の面外方向Yの高さ寸法h1が、例えば、3mm程度となる。第1工程では、
図9に示すように、密閉領域Rに配置される突起部2の側面21又は天面22に切欠部23を形成しておくことで、加熱治具60を突起部2に押し当てるときに、中空部20の空気が熱膨張して突起部2が破裂することを防止することが可能となる。
【0049】
第2工程では、最初に、
図7に示すように、キャップシート3の表面側Aから、略平坦状に形成された金属シート5を、押し潰されていない突起部2の天面22に接着剤により接着して、キャップシート3の表面3aに金属シート5を取り付ける。第2工程では、例えば、接着剤を165℃程度まで加熱して、突起部2の天面22に60秒程度、金属シート5を押し当てて、必要に応じて、キャップシート3に取り付けた金属シート5の全体的な反りを矯正する。
【0050】
第2工程では、次に、
図8に示すように、キャップシート3の面内方向Xの側端30aから、面内方向Xの内側に向けて、例えば、15mm程度の範囲が、キャップシート3の面内方向Xの端縁部30として、突起部2の天面22が金属シート5に溶着される封止領域R1となる。第2工程では、キャップシート3の裏面側Bの断熱台61と、キャップシート3の表面側Aの加熱治具60との間に、キャップシート3、バックシート4及び金属シート5を挟み込む。
【0051】
第2工程では、例えば、銅角材等の伝熱材料が用いられた加熱治具60を217℃程度まで加熱して、キャップシート3の面内方向Xの端縁部30で、キャップシート3の表面側Aから、金属シート5に260秒程度、加熱治具60を押し当てる。第2工程では、キャップシート3の表面側Aから、金属シート5に加熱治具60を押し当てて加圧することで、金属シート5からの熱伝導によって突起部2の天面22を熱溶融させて、金属シート5の接着剤等に突起部2の天面22を溶着させる。
【0052】
第2工程では、キャップシート3の裏面側Bから表面側Aに向けて、キャップシート3及びバックシート4を湾曲変形させて、封止領域R1より面内方向Xの内側に遷移領域R2が形成される。第2工程では、バックシート4を湾曲変形させることで、面内方向X及び面外方向Yに伸長した伸長部40が、遷移領域R2でバックシート4に形成されるものとなる。第2工程では、封止領域R1と遷移領域R2とを併せて、キャップシート3の面内方向Xの側端30aから、例えば、20mm程度の範囲が密閉領域Rとなる。
【0053】
第2工程では、キャップシート3の面内方向Xの端縁部30の封止領域R1で、第1工程で押し潰された突起部2が面外方向Yでさらに押し潰されて、突起部2の側面21が面外方向Yで完全に圧縮されることにより、突起部2、基板部31及びバックシート4の面外方向Yの高さ寸法h2が、例えば、1.1mm程度となる。
【0054】
第2工程では、キャップシート3の面内方向Xの端縁部30で、突起部2の側面21が面外方向Yで完全に圧縮されるとともに、金属シート5に突起部2の天面22を溶着させることで、キャップシート3の面内方向Xの端縁部30を密閉して、キャップシート3の端縁部30の密閉領域Rより面内方向Xの内側で、キャップシート3と金属シート5との間に密閉空間10が形成されるものとなる。
【0055】
本発明を適用した複合構造体1の製造方法は、第2実施形態において、第1工程では、キャップシート3の面内方向Xの端縁部30で、キャップシート3の裏面側Bから加圧することにより、突起部2をキャップシート3の表面側Aに向けて、面外方向Yに押し潰すものとなる。
【0056】
第1工程では、最初に、
図5に示すように、キャップシート3の裏面側Bから、略平坦状に形成されたバックシート4を、キャップシート3の基板部31に接着剤により接着して、又は、基板部31に熱融着等により溶着することで、突起部2の内側の中空部20をバックシート4で塞いで密封して、キャップシート3の裏面3bにバックシート4を取り付ける。
【0057】
第1工程では、次に、
図10に示すように、キャップシート3の端縁部30の密閉領域Rで、キャップシート3の裏面側Bから表面側Aに向けて、キャップシート3及びバックシート4を湾曲変形させて、遷移領域R2でバックシート4に伸長部40を形成させながら、キャップシート3の表面側Aに向けて、突起部2を面外方向Yに押し潰すものとなる。
【0058】
第2工程では、最初に、
図11に示すように、キャップシート3の表面側Aから、略平坦状に形成された金属シート5を、押し潰されていない突起部2の天面22に接着剤により接着して、キャップシート3の表面3aに金属シート5を取り付ける。第2工程では、例えば、接着剤を165℃程度まで加熱して、突起部2の天面22に60秒程度、金属シート5を押し当てて、必要に応じて、キャップシート3に取り付けた金属シート5の全体的な反りを矯正する。
【0059】
第2工程では、次に、
図12に示すように、キャップシート3の面内方向Xの端縁部30の封止領域R1で、第1工程で押し潰された突起部2が面外方向Yでさらに押し潰されて、突起部2の側面21が面外方向Yで完全に圧縮されることにより、突起部2、基板部31及びバックシート4の面外方向Yの高さ寸法h2が、例えば、1.1mm程度となる。
【0060】
第2工程では、キャップシート3の面内方向Xの端縁部30で、突起部2の側面21が面外方向Yで完全に圧縮されるとともに、金属シート5に突起部2の天面22を溶着させることで、キャップシート3の面内方向Xの端縁部30を密閉して、キャップシート3の端縁部30の密閉領域Rより面内方向Xの内側で、キャップシート3と金属シート5との間に密閉空間10が形成されるものとなる。
【0061】
本発明を適用した複合構造体1の製造方法は、
図13に示すように、第1実施形態及び第2実施形態の何れにおいても、第1工程では、
図13(a)に示すように、キャップシート3の面内方向Xの端縁部30で、各々の突起部2に隣り合わせて面内方向Xの六方向に配置された複数の突起部2を押し潰して、また、第2工程では、
図13(b)に示すように、第1工程で押し潰された突起部2がさらに押し潰されることで、複数の突起部2の各々の側面21を互いに密着させるとともに、各々の突起部2の側面21が面内方向Xで略六角形状に形成される。
【0062】
本発明を適用した複合構造体1の製造方法は、
図8、
図12に示すように、キャップシート3の端縁部30を密閉して、キャップシート3の端縁部30より面内方向Xの内側に密閉空間10を形成することで、
図14、
図15に示すように、本発明を適用した温度調節パネル8に使用することのできる複合構造体1が製造されるものとなる。
【0063】
本発明を適用した温度調節パネル8は、
図14に示すように、複合構造体1の幅方向X1で互いに離間させて複数の貫通孔50が金属シート5に形成される。本発明を適用した温度調節パネル8は、例えば、複合構造体1の奥行方向X2の略中央で、金属シート5を貫通させて、2箇所に貫通孔50が形成されるものとなる。
【0064】
本発明を適用した温度調節パネル8は、
図15に示すように、貫通孔50が形成される箇所で、キャップシート3の突起部2をあらかじめ切除しておき、金属シート5を貫通させて形成された各々の貫通孔50にタップ加工が施される。
【0065】
本発明を適用した温度調節パネル8は、ワンタッチカプラ等の接続部材81が各々の貫通孔50に接続されることで、樹脂管等の配管82が接続部材81により各々の貫通孔50に連結されて、注入用配管82a及び排出用配管82bの各々が、複合構造体1に取り付けられる。
【0066】
本発明を適用した温度調節パネル8は、注入用配管82aから複合構造体1の密閉空間10に、所定の温度の空気又は水等の液体Wtが注入されて、複合構造体1の密閉空間10で循環した空気又は水等の液体Wtが、複合構造体1の密閉空間10から排出用配管82bを通じて外部に排出されることで、熱交換による温度調節機能を発揮するものとなる。
【0067】
このとき、本発明を適用した温度調節パネル8は、ポリプロピレン等の樹脂材が用いられたキャップシート3及びバックシート4で、空気又は水等の液体Wtからの断熱性能を高くするとともに、アルミニウム製等の金属板が用いられた金属シート5で、空気又は水等の液体Wtからの伝熱性能を高くすることで、専ら金属シート5のみから熱交換がなされるものとなる。
【0068】
本発明を適用した温度調節パネル8は、特に、
図16に示すように、複数の突起部2の各々の側面21を面内方向Xで互いに離間させたキャップシート3を用いることで、複合構造体1の密閉空間10に間隙Sが形成されるとともに、複数の突起部2が面内方向Xで略六角形状等に配置されるものとなり、空気又は水等の液体Wtが循環するときに、突起部2の側面21に衝突しながら、面内方向Xの進行方向が変化する。
【0069】
本発明を適用した温度調節パネル8は、空気又は水等の液体Wtを面内方向Xの進行方向を変化させながら循環させることで、複合構造体1の密閉空間10で時間をかけて、かつ、複合構造体1の面内方向Xの隅々まで略均一に、空気又は水等の液体Wtが循環するものとなる。
【0070】
これにより、本発明を適用した温度調節パネル8は、複合構造体1の密閉空間10で時間をかけて、かつ、複合構造体1の面内方向Xの隅々まで略均一に、所定の温度の空気又は水等の液体Wtが循環するものとしながら、さらに、専ら金属シート5のみから熱交換させるものとなることで、複合構造体1の表面側Aのみから集中的に、かつ、面内方向Xで略均一に、周辺環境の効率的な加温又は冷却の実現が可能となる。
【0071】
本発明を適用した複合構造体1の製造方法は、
図8、
図12に示すように、キャップシート3の面内方向Xの端縁部30で、キャップシート3、バックシート4及び金属シート5を面外方向Yで互いに溶着等させることにより、密閉領域Rが形成されるため、バックシート4及び金属シート5を折り曲げる加工を必要としないものとなる。
【0072】
これにより、本発明を適用した複合構造体1の製造方法は、キャップシート3の面内方向Xの端縁部30を密閉する前の段階で、キャップシート3、バックシート4及び金属シート5の外径の寸法調整に厳密性が要求されないものとなり、複合構造体1の製造工程を単純化して、複合構造体1の製造コストを低減させることが可能となる。
【0073】
本発明を適用した複合構造体1の製造方法は、キャップシート3の面内方向Xの端縁部30で、突起部2の側面21が面外方向Yで完全に圧縮されるとともに、金属シート5に突起部2の天面22を溶着させるため、キャップシート3の端縁部30の密閉領域Rより面内方向Xの内側で、気密性、水密性の高い密閉空間10が形成されるものとなる。
【0074】
これにより、本発明を適用した複合構造体1の製造方法は、複合構造体1の製造工程を単純化して製造コストを低減させるとともに、気密性、水密性の高い密閉空間10を形成することができるため、キャップシート3、バックシート4及び金属シート5を単純にプレス加工するだけでは得られない、気密性、水密性の高い密閉空間10を実現することが可能となる。
【0075】
また、本発明を適用した複合構造体1の製造方法は、キャップシート3の端縁部30に帯状の封止材等を別途に取り付けることを必要としないため、複合構造体1を製造するための材料コストを低減させるとともに、複合構造体1の軽量化を実現させながら、キャップシート3の端縁部30の封止性能、密閉性能を十分に確保することが可能となる。
【0076】
本発明を適用した複合構造体1の製造方法は、特に、
図13に示すように、キャップシート3の端縁部30で、複数の突起部2が押し潰されて、複数の突起部2の各々の側面21を互いに密着させるとともに、各々の突起部2の側面21が略六角形状に形成されることで、互いに密着した複数の側面21が、略六角形状に折れ曲がって配置されるものとなり、面内方向Xに連続して連なって配置されないものとなるため、キャップシート3の端縁部30の封止性能、密閉性能を著しく向上させることが可能となる。
【0077】
本発明を適用した複合構造体1の製造方法は、第1実施形態において、
図8に示すように、キャップシート3の面内方向Xの端縁部30で、特に、キャップシート3の表面側Aから加圧するものとなるため、バックシート4に過度の負担をかけることなく、バックシート4を伸長させて伸長部40が形成されるものとなり、バックシート4の損傷を極力小さくすることで、キャップシート3の端縁部30の封止性能、密閉性能を著しく向上させることが可能となる。
【0078】
本発明を適用した複合構造体1の製造方法は、第1実施形態において、
図6に示すように、キャップシート3の面内方向Xの端縁部30で、特に、キャップシート3の表面側Aから加圧するものとなり、突起部2の天面22が基板部31より薄く形成されることから、突起部2の天面22に加熱治具60を押し当てる時間を短くして、また、加熱治具60の温度を低くすることで、突起部2を押し潰す工程に必要となる製造時間、製造コストを低減させることが可能となる。
【0079】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、上述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。