特許第6491024号(P6491024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491024
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】両面研磨装置および研磨方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/08 20120101AFI20190318BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   B24B37/08
   H01L21/304 621A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-85845(P2015-85845)
(22)【出願日】2015年4月20日
(65)【公開番号】特開2016-203287(P2016-203287A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236687
【氏名又は名称】不二越機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】赤塩 典彦
(72)【発明者】
【氏名】依田 遼介
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−230452(JP,A)
【文献】 特開2005−066773(JP,A)
【文献】 特開昭62−176755(JP,A)
【文献】 特開2009−289925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/08,
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が研磨面とされ、基台上に支持されたリング状をなす下定盤と、下面が研磨面とされ、前記下定盤の上方に上下動可能、かつ第1の回転軸を中心に回転自在に設けられた上定盤と、前記下定盤と前記上定盤との間に配置され、ワークを保持する透孔を有するキャリアと、前記第1の回転軸に固定され、前記上定盤が上下動自在に係合する回し金を備え、前記上定盤を回転駆動する上定盤回転駆動機構と、前記下定盤の中央孔に配置されて前記キャリアに噛合し第2の回転軸を中心に回転する太陽ギア、および前記下定盤を囲んで配置されて前記キャリアに噛合するインターナルギアを備えて前記キャリアを自転させつつ前記太陽ギア周りに公転させるキャリア回転駆動機構と、前記第2の回転軸を回転駆動する駆動機構を具備する両面研磨装置において、
前記上定盤を回転させる前記第1の回転軸は、筒状をなして、前記下定盤の中央孔に回転自在に挿通されて上下方向に延びると共に、上端に前記回し金が固定され、
前記太陽ギアを回転させる前記第2の回転軸は、前記筒状をなす前記上定盤駆動用の前記第1の回転軸に回転自在に挿通されて上下方向に延びると共に、上端にピニオンギアが固定され、
前記太陽ギアは、筒状をなし、前記上定盤駆動用の前記第1の回転軸の上端部外側に回転自在に支持されると共に、内周部に内歯が形成され、外周部に前記キャリアに噛合する外歯が形成され、
前記上定盤駆動用の前記第1の回転軸の上部に空隙部が形成され、該空隙部内に、前記第2の回転軸に設けた前記ピニオンギアと前記太陽ギアの前記内歯とに噛合して、前記駆動機構により回転される前記第2の回転軸の回転を前記太陽ギアに伝達する遊星ギアが配置され、
前記上定盤駆動用の前記第1の回転軸の上端部に該第1の回転軸と前記回し金とを連結する連結部が設けられ、該連結部が前記遊星ギアの回転軸をなすことを特徴とする両面研磨装置。
【請求項2】
前記回し金は、下に開口する冠状をなし、筒状をなす前記太陽ギアの上部が前記回し金の内部に進入しており、外周部に設けた前記外歯が露出していることを特徴とする請求項1記載の両面研磨装置。
【請求項3】
前記下定盤は、前記基台上に、下定盤回転駆動機構により第3の回転軸を中心に回転自在に配置され、
前記インターナルギアは、インターナルギア回転駆動機構により第4の回転軸を中心に回転自在に配置され、
前記下定盤の前記第3の回転軸が筒状をなして、該下定盤の前記第3の回転軸を筒状の前記上定盤駆動用の前記第1の回転軸が回転自在に挿通しており、
前記下定盤の前記第3の回転軸、前記上定盤駆動用の前記第1の回転軸、および前記太陽ギア駆動用の前記第2の回転軸が互いに軸受された3軸構造をなし、
前記インターナルギアの前記第4の回転軸は、前記3軸構造の前記回転軸とは離れて別異に軸受されていることを特徴とする請求項1または2記載の両面研磨装置。
【請求項4】
前記下定盤の前記第3の回転軸、前記上定盤駆動用の前記第1の回転軸、および前記太陽ギア駆動用の前記第2の回転軸が、それぞれギア群を介して駆動モータに連結され、該ギア群が上下方向に重なっていることを特徴とする請求項3記載の両面研磨装置。
【請求項5】
上面が研磨面とされ、基台上に支持されたリング状をなす下定盤と、下面が研磨面とされ、前記下定盤の上方に上下動可能、かつ第1の回転軸を中心に回転自在に設けられた上定盤と、前記上定盤を回転駆動する上定盤回転駆動機構と、下定盤の中央孔に配置されて前記キャリアに噛合し第2の回転軸を中心に回転する太陽ギア、および前記下定盤を囲んで配置されて前記キャリアに噛合するインターナルギアを備えて前記キャリアを自転させつつ前記太陽ギア周りに公転させるキャリア回転駆動機構を具備する両面研磨装置を用いて、前記キャリアに保持されたワークを研磨する研磨方法において、
前記上定盤回転駆動機構により前記第1の回転軸を回転させて前記上定盤を所要回転数で回転させ、
駆動機構により前記第2の回転軸を回転させ、該第2の回転軸に設けられたピニオン、および前記第1の回転軸に回転自在に支持され、前記ピニオンと前記太陽ギアに設けられた内歯とに噛合する遊星ギアを介して、前記太陽ギアを、前記第1の回転軸の回転数および前記第2の回転軸の回転数の組み合わせにより決定される回転数で回転させて、前記キャリアを自転させながら、前記太陽ギア周りを公転させることを特徴とする研磨方法。
【請求項6】
前記両面研磨装置において、
前記下定盤は、前記基台上に、下定盤回転駆動機構により第3の回転軸を中心に回転自在に配置され、
前記インターナルギアは、インターナルギア回転駆動機構により第4の回転軸を中心に回転自在に配置されていることを特徴とする請求項5記載の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiC等の高硬度材料からなるワークの研磨に用いて好適な両面研磨装置および研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来のいわゆる4ウェイ駆動方式の両面研磨装置(ラップ盤)の全体機構を示す模式的断面図である(特許文献1)。
【0003】
図3において、12は上定盤、14は下定盤、16は太陽ギア、18はインターナルギアである。20はキャリアであり、上定盤12と下定盤14間に位置して、太陽ギア16およびインターナルギア18に噛合し、自転すると共に、太陽ギア16の回りに公転する。このキャリア20に設けられた透孔内にシリコンウェーハ等のワーク21が保持される。
【0004】
上定盤12は、図示しないクレーン機構等の昇降装置によって、下定盤14の上方で上下動可能に支持されている。上定盤12は、下定盤14上に下降した際、フック12fを介して回し金(外周にキー溝が形成された駆動ドラム)12aに係合し、回し金12aが回転することによって回転軸12bを中心に回転する。回し金12aから回転軸12bが垂下し、この回転軸12bの下端にギア12cが設けられている。ギア12cはアイドルギア12dを介して駆動ギア12eに噛合している。駆動ギア12eはスピンドル26に固定されている。したがって、スピンドル26の回転によって、回し金12aを介して上定盤12が回転する。
【0005】
太陽ギア16は、回転軸12bが挿通する筒状の回転軸16bの上端に固定されている。回転軸16bの下端に固定されたギア16cがスピンドル26に固定された駆動ギア16eに噛合している。したがって、太陽ギア16はスピンドル26の回転によって回転する。下定盤14は、筒状の回転軸16bが通する筒状の回転軸14bの上端に固定されている。回転軸14bの下端に固定されたギア14cがスピンドル26に固定された駆動ギア14eに噛合している。したがって、下定盤14は、スピンドル26の回転によって回転する。インターナルギア18は、筒状の回転軸14bが挿通する筒状の回転軸18bの上端に固定されている。回転軸18bの下端に固定されたギア18cがスピンドル26に固定された駆動ギア18eに噛合している。したがって、インターナルギア18は、スピンドル26の回転によって回転する。スピンドル26は可変減速機22に連結されている。可変減速機22は、モータ23にベルト24を介して連結されている。
【0006】
したがって、従来の4ウェイ駆動方式の両面研磨装置は、モータ23が駆動されることにより、回転軸12b、回し金12aを介して上定盤12が回転され、回転軸14bを介して下定盤14が回転される。また、回転軸16bを介して太陽ギア16が回転され、回転軸18bを介してインターナルギア18が回転され、これによりキャリア20が回転され、キャリア20に保持されているワーク21が研磨されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−230452
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、従来の4ウェイ駆動方式(4軸構造)の両面研磨装置は、モータ23が駆動されることにより、上下定盤12、14、太陽ギア16、インターナルギア18が一斉に駆動され、キャリア20が回転されてワーク21の研磨が行える。
【0009】
ところで、上下定盤12、14、太陽ギア16、インターナルギア18の回転系において、上下定盤12、14は剛性を要求され、必然的に重量も大きいことから、その回転駆動には極めて大きな負荷がかかる。
【0010】
しかるに、上記4ウェイ駆動方式の両面研磨装置では、上定盤12を回転する回し金12aが、最上部に位置する関係上、同軸構造の4つの回転軸12b、14b、16b、18bのうち、回し金12a、したがって上定盤12を回転する回転軸12bを最も内側(4軸構造の中心)に配置せざるを得ない構造となる。
【0011】
重量が大きく、その回転に大きな負荷がかかる上定盤12の回転軸12bには、太く剛性の大きな回転軸を用いたいが、回転軸12bを太くすると、必然的に、4軸構造の装置全体が大型化してしまうという不具合がある。
【0012】
特に、昨今では、研磨対象であるワークに、比較的脆弱なシリコンばかりでなく、サファイア、SiC、GaN等の高硬度材料(難加工材料)のワークが増えている。このような高硬度材料の研磨には、上定盤12からのワークへのさらなる高荷重が必要なこと、また上定盤12の一層の高速回転が求められることから、従来の4軸構造の両面研磨装置では剛性が十分でないという課題が顕著になってきた。
【0013】
本発明は、上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、高硬度材料の研磨も良好に行える高剛性、高強度を有する両面研磨装置および研磨方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明は次の構成を備える。
【0015】
すなわち、本発明に係る両面研磨装置は、上面が研磨面とされ、基台上に支持されたリング状をなす下定盤と、下面が研磨面とされ、前記下定盤の上方に上下動可能、かつ第1の回転軸を中心に回転自在に設けられた上定盤と、前記下定盤と前記上定盤との間に配置され、ワークを保持する透孔を有するキャリアと、前記第1の回転軸に固定され、前記上定盤が上下動自在に係合する回し金を備え、前記上定盤を回転駆動する上定盤回転駆動機構と、前記下定盤の中央孔に配置されて前記キャリアに噛合し第2の回転軸を中心に回転する太陽ギア、および前記下定盤を囲んで配置されて前記キャリアに噛合するインターナルギアを備えて前記キャリアを自転させつつ前記太陽ギア周りに公転させるキャリア回転駆動機構と、前記第2の回転軸を回転駆動する駆動機構を具備する両面研磨装置において、前記上定盤を回転させる前記第1の回転軸は、筒状をなして、前記下定盤の中央孔に回転自在に挿通されて上下方向に延びると共に、上端に前記回し金が固定され、前記太陽ギアを回転させる前記第2の回転軸は、前記筒状をなす前記上定盤駆動用の前記第1の回転軸に回転自在に挿通されて上下方向に延びると共に、上端にピニオンギアが固定され、前記太陽ギアは、筒状をなし、前記上定盤駆動用の前記第1の回転軸の上端部外側に回転自在に支持されると共に、内周部に内歯が形成され、外周部に前記キャリアに噛合する外歯が形成され、前記上定盤駆動用の前記第1の回転軸の上部に空隙部が形成され、該空隙部内に、前記第2の回転軸に設けた前記ピニオンギアと前記太陽ギアの前記内歯とに噛合して、前記駆動機構により回転される前記第2の回転軸の回転を前記太陽ギアに伝達する遊星ギアが配置され、前記上定盤駆動用の前記第1の回転軸の上端部に該第1の回転軸と前記回し金とを連結する連結部が設けられ、該連結部が前記遊星ギアの回転軸をなすことを特徴とする。
【0016】
前記回し金を、下に開口する冠状に形成し、筒状をなす前記太陽ギアの上部を前記回し金の内部に進入させるようにすると高さを低くでき、好適である。
【0018】
また、前記下定盤を、前記基台上に、下定盤回転駆動機構により第3の回転軸を中心に回転自在に配置し、前記インターナルギアを、インターナルギア回転駆動機構により第4の回転軸を中心に回転自在に配置し、前記下定盤の前記第3の回転軸を筒状に形成し、該下定盤の前記第3の回転軸を筒状の前記上定盤駆動用の前記第1の回転軸が回転自在に挿通し、前記下定盤の前記第3の回転軸、前記上定盤駆動用の前記第1の回転軸、および前記太陽ギア駆動用の前記第2の回転軸が互いに軸受された3軸構造に形成し、前記インターナルギアの前記第4の回転軸は、前記3軸構造の前記回転軸とは離れて別異に軸受して設けるようにすることができる。
【0019】
前記下定盤の前記第3の回転軸、前記上定盤駆動用の前記第1の回転軸、および前記太陽ギア駆動用の前記第2の回転軸を、それぞれギア群を介して駆動モータに連結し、該ギア群を上下方向に重なるようにすることができる。
【0020】
また本発明に係る研磨方法は、上面が研磨面とされ、基台上に支持されたリング状をなす下定盤と、下面が研磨面とされ、前記下定盤の上方に上下動可能、かつ第1の回転軸を中心に回転自在に設けられた上定盤と、前記上定盤を回転駆動する上定盤回転駆動機構と、下定盤の中央孔に配置されて前記キャリアに噛合し第2の回転軸を中心に回転する太陽ギア、および前記下定盤を囲んで配置されて前記キャリアに噛合するインターナルギアを備えて前記キャリアを自転させつつ前記太陽ギア周りに公転させるキャリア回転駆動機構を具備する両面研磨装置を用いて、前記キャリアに保持されたワークを研磨する研磨方法において、前記上定盤回転駆動機構により前記第1の回転軸を回転させて前記上定盤を所要回転数で回転させ、駆動機構により前記第2の回転軸を回転させ、該第2の回転軸に設けられたピニオン、および前記第1の回転軸に回転自在に支持され、前記ピニオンと前記太陽ギアに設けられた内歯とに噛合する遊星ギアを介して、前記太陽ギアを、前記第1の回転軸の回転数および前記第2の回転軸の回転数の組み合わせにより決定される回転数で回転させて、前記キャリアを自転させながら、前記太陽ギア周りを公転させることを特徴とする。
【0021】
前記両面研磨装置において、前記下定盤を、前記基台上に、下定盤回転駆動機構により第3の回転軸を中心に回転自在に配置し、前記インターナルギアを、インターナルギア回転駆動機構により第4の回転軸を中心に回転自在に配置することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高硬度材料の研磨も良好に行える高剛性、高強度を有する両面研磨装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施の形態に係る両面研磨装置の概略を示す断面図である。
図2】本実施の形態に係る両面研磨装置の要部の断面図である。
図3】従来の両面研磨装置の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1は両面研磨装置30の概略を示す断面図(ハッチングは省略)、図2はその要部を示す断面図である。
【0026】
32は幅広のリング状をなす下定盤であり、その上面が研磨面とされている。下定盤32は定盤受(図示せず)上に載置されている。下定盤32および定盤受はベアリング(図示せず)を介して、基台35上に、筒状をなす第3の回転軸36を中心に回転自在に配置されている。37は回転軸36のベアリングである。
【0027】
第3の回転軸36の下端にはギア38が固定され、このギア38が、駆動モータ(図示せず)の回転軸40に固定されたギア41に噛合している。したがって、駆動モータが駆動されることによって、下定盤32は所要方向に回転される。駆動モータ、第3の回転軸36、ギア38、ギア41等によって、下定盤回転駆動機構が構成される。
【0028】
44は幅広のリング状をなす上定盤であり、その下面が研磨面とされている。上定盤44は、下定盤32と対向して、下定盤32の上方に、図示しない昇降装置により上下動可能、かつ第1の回転軸45を中心に回転自在に設けられている。
【0029】
第1の回転軸45は、筒状をなして、下定盤32の中央孔および第3の回転軸36を回転自在に挿通して上下方向に延びると共に、上端に連結部47を介して回し金46が固定されている。回し金46は外周に上下方向に延びるキー溝が形成された駆動ドラムであり、上定盤44が昇降装置により下降された際、フック部(図示せず)が回し金46のキー溝に係合するようになっている。第1の回転軸45は、ベアリング48を介して第3の回転軸36に回転自在に支持されている。
【0030】
第1の回転軸45の下端にギア49が固定され、このギア49が、駆動モータ(図示せず)の回転軸50に固定されたギア51に噛合している。したがって、駆動モータが駆動されることによって、上定盤44は、回し金46を介して下定盤32と反対方向に回転されるようになっている。駆動モータ、第1の回転軸45、ギア49、ギア51、回し金46等によって、上定盤回転駆動機構が構成される。
【0031】
53はキャリアであり、下定盤32と上定盤44との間に配置されている。キャリア53は、ワークを保持する透孔(図示せず)を有する。
【0032】
キャリア53はその外周にギアが形成され、このギアが、下定盤32の中央孔に配置され、第2の回転軸54を中心に回転する太陽ギア55、および下定盤32を囲んで配置され、第4の回転軸57を中心に回転するインターナルギア58に噛合している。
【0033】
太陽ギア55は、上から小径部55a、中径部55b、大径部55cの3段階の径を有する筒状に形成され、上定盤駆動用の第1の回転軸45の上部外側にベアリングを介して回転自在に支持されている。太陽ギア55の小径部55aの内周部に内歯55dが形成され、大径部55cの外周部にキャリア53に噛合する外歯55eが形成されている。
【0034】
上定盤44に回転力を伝達する前記回し金46は下に開口する冠状に形成され、この回し金46内に、太陽ギア55の小径部55aが進入している。これにより、太陽ギア55と回し金46との関係で、その全体の高さを低く抑えることができる。
【0035】
太陽ギア55を回転させる第2の回転軸54は、筒状をなす上定盤駆動用の第1の回転軸45を、ベアリング60を介して回転自在に挿通して上下方向に延びている。第2の回転軸54の上端にピニオンギア61が固定されている。
【0036】
上定盤駆動用の第1の回転軸45の上部には、空隙部が形成されている。そして、この空隙部内に、4個(図2には3個のみ図示)の遊星ギア62が配置されている。
【0037】
遊星ギア62は、ピニオンギア61と太陽ギア55の内歯55dとに噛合して、太陽ギア駆動用の第2の回転軸54の回転を太陽ギア55に伝達する。
【0038】
第2の回転軸54の下端にギア64が固定され、このギア64が、駆動モータ(図示せず)の回転軸65に固定されたギア66に噛合している。ギア64、ギア66、駆動モータ等によって、第2の回転軸54の駆動機構が構成される。したがって、駆動モータが駆動されることによって、太陽ギア55は、ピニオンギア61、遊星ギア62を介して所要方向に回転される。駆動モータ、ギア64、ギア66、第2の回転軸54、遊星ギア62等によって、太陽ギア回転駆動機構が構成される。
【0039】
本実施の形態では、第1の回転軸45上端に回し金46を固定する連結部47が、遊星ギア62の回転軸に形成されている。これら回転軸間が前記の空隙部である。なお、遊星ギア62は、連結部47を回転軸とするのでなく、単に、空隙部内に配置されているのでもよい。
【0040】
インターナルギア58は、前記のように第4の回転軸57を中心に所要方向に回転する。
【0041】
第4の回転軸の下端にギア68が固定され、このギア68が、駆動モータ(図示せず)の回転軸69に固定されたギア70に噛合している。駆動モータ、ギア68、ギア70等によって、インターナルギア回転駆動機構が構成される。
【0042】
また、太陽ギア回転駆動機構、インターナルギア回転駆動機構、太陽ギア55、インターナルギア58によってキャリア回転駆動機構が構成される。
【0043】
本実施の形態に係る両面研磨装置30は上記のように構成されている。
【0044】
第3の回転軸36が回転されることによって、下定盤32が回転され、また第1の回転軸45が回転されることによって上定盤が回転される。また、第2の回転軸54が回転されることによって、ピニオンギア61、遊星ギア62を介して太陽ギア55が回転され、さらに第4の回転軸57が回転されることによってインターナルギア58が回転され、これにより、キャリア53が回転される。これにより、キャリア53の透孔内に保持されたワークが、上下定盤32,44によって研磨されることになる。
【0045】
なお、上下定盤32、44間には、スラリー供給機構によってスラリー(研磨液)が供給される。
【0046】
なおまた、本実施の形態に係る両面研磨装置30では、上定盤44を回転させると、その第1の回転軸45と回し金46とを連結する連結部47が遊星ギア62の回転軸となっているため、上定盤44の回転が太陽ギア55の回転に影響を与える。太陽ギア55の回転数を設定する際、この上定盤44からの回転の影響を考慮して、ギア群の歯数の設定、駆動モータの回転数、を設定する必要がある。基本的には、太陽ギア55の回転数は、第1の回転軸45の回転数および第2の回転軸54の回転数の組み合わせにより決定される。
【0047】
なお、太陽ギア55を上下動させる機構(図示せず)を追加して、適宜ギアの噛合位置を上下に変化させながら使用すれば、摩耗による保守機会を低減できる。
【0048】
上記のように、本実施の形態では、太陽ギア55を回転させる第2の回転軸54を中心に配置し、その外側に、上定盤44を回転駆動する第1の回転軸45を大径の筒状に設けている。これにより、大きな負荷のかかる上定盤44駆動用の第1の回転軸45を、太く、剛性の高いものに形成できる。これによって、サファイア、SiC、GaNのような高硬度材料のワークの研磨も良好に行えるようになった。なお、軸構造的には、上定盤44駆動用の第1の回転軸45と、太陽ギア55駆動用の第2の回転軸54の配置を入れ替えただけなので、装置全体の大型化を招くわけではない。
【0049】
また、本実施の形態では、上記のように、下定盤32の第3の回転軸36が筒状をなして、該下定盤32の第3の回転軸36に上定盤44駆動用の筒状の第1の回転軸45が回転自在に挿通されており、また、該筒状の第1の回転軸45に太陽ギア55駆動用の第2の回転軸54が挿通される3軸構造をなしている。一方、インターナルギア58の第4の回転軸57は、上記3軸構造の回転軸とは離れて別異に軸受されている。
【0050】
そして、下定盤32の第3の回転軸36、上定盤44駆動用の第1の回転軸45、および太陽ギア55駆動用の第2の回転軸54が、ギア群38、41、ギア群49、51、ギア群64、66を介してそれぞれ駆動モータに連結され、該ギア群が上下方向に重なっている。一方、インターナルギア58を回転する第4の回転軸57は前記のように、3軸構造の回転軸とは別に設けられ、またそのギア群68、70は、上記3軸構造の回転軸を駆動モータに連結するギア群とは上下方向に重なっておらず、別な空間内に配置されている。これにより、下定盤32を回転支持する基台35の高さを低くでき、ひいては、両面研磨装置30全体の高さを低くできる。例えば、従来装置における下定盤上面の高さ(作業位置)が、床面から約1100mmであるのに対して、本実施の形態では950mmと、従来装置より10%以上も低くでき、その結果、回転軸の短軸化や低重心化を実現できる。このように、両面研磨装置30の高さを低くできることにより、装置を安定化させることができ、ワークの研磨抵抗から生じる振動の発生を少なくでき、ワークを精度よく研磨できるという効果を奏する。
【0051】
なお、上記実施の形態では、上定盤44、太陽ギア55、下定盤32およびインターナルギア58をそれぞれ第1の回転軸45、第2の回転軸54、第3の回転軸36および第4の回転軸57を中心に回転する、いわゆる4ウェイ方式の両面研磨装置30としたが、下定盤32およびインターナルギア58のいずれかを固定もしくはその回転を停止する3ウェイ方式(図示せず)、あるいはこれらの双方を固定もしくはその回転を停止する2ウェイ方式(図示せず)の両面研磨装置にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0052】
30 両面研磨装置、32 下定盤、36 第3の回転軸、37 ベアリング、38 ギア、40 回転軸、41ギア、44 上定盤、45 第1の回転軸、46 回し金、47 連結部、48 ベアリング、49 ギア、50 回転軸、51 ギ ア、53 キャリア、54 第2の回転軸、55 太陽ギア、55a 小径部、55b 中径部、55c 大径部、55d 内歯、55e 外歯、57 第4の回転 軸、58 インターナルギア、60 ベアリング、61 ピニオンギア、62 遊 星ギア、64 ギア、65 回転軸、66 ギア、68 ギア、69 回転軸、70 ギア
図1
図2
図3