(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491056
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】窒素除去方法及び窒素除去装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/34 20060101AFI20190318BHJP
C02F 11/04 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
C02F3/34 101A
C02F3/34 101B
C02F11/04 AZAB
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-136488(P2015-136488)
(22)【出願日】2015年7月7日
(65)【公開番号】特開2017-18861(P2017-18861A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2017年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】葛 甬生
【審査官】
富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0068976(US,A1)
【文献】
特開2012−157837(JP,A)
【文献】
特開2006−305488(JP,A)
【文献】
特開2009−131854(JP,A)
【文献】
特開2010−201394(JP,A)
【文献】
特開2006−130397(JP,A)
【文献】
特開2013−017928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00− 3/34
C02F 11/00−11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素含有廃水を無酸素工程及び好気性生物処理工程を有する生物処理システムで処理する工程と、
前記生物処理システムで発生する有機性汚泥を嫌気性消化工程によりメタンガスに分解する工程と、
前記嫌気性消化工程の流出液中のアンモニアを、浮遊媒体を用いて亜硝酸化処理する亜硝酸化処理工程及び該亜硝酸化処理工程に続く嫌気性アンモニア酸化工程により窒素ガスに酸化分解する工程と、
前記嫌気性アンモニア酸化工程の流出液を、前記生物処理システムが備える無酸素工程に導入して前記流出液中の硝酸を脱窒素する工程と
を含む窒素除去方法。
【請求項2】
前記好気性生物処理工程が、アンモニアを硝化する硝化工程を含む請求項1に記載の窒素除去方法。
【請求項3】
前記生物処理システムが、窒素含有廃水を、嫌気工程、前記無酸素工程及び硝化工程で処理する嫌気・無酸素・好気法方式の処理槽を備える請求項1に記載の窒素除去方法。
【請求項4】
前記生物処理システムで処理する工程が、
前記無酸素工程及び前記好気性生物処理工程により得られた処理水を更に脱窒素処理する無酸素工程を更に含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒素除去方法。
【請求項5】
窒素含有廃水を処理する無酸素槽及び好気性生物処理槽を備える生物処理システムと、
前記生物処理システムで発生する有機性汚泥をメタンガスに分解する嫌気性消化槽と、
前記嫌気性消化槽の流出液中のアンモニアを浮遊媒体を用いて亜硝酸化処理する亜硝酸化処理槽と、
前記亜硝酸化処理槽の流出液を窒素ガスに酸化分解する嫌気性アンモニア酸化槽と、
前記嫌気性アンモニア酸化槽の流出液を前記生物処理システムが備える前記無酸素槽に導入する導入ラインと
を備える窒素除去装置。
【請求項6】
前記好気性生物処理槽が、アンモニアを硝化する硝化槽を含む請求項5に記載の窒素除去装置。
【請求項7】
前記生物処理システムが、窒素含有廃水を、嫌気工程、無酸素工程及び硝化工程で処理する嫌気・無酸素・好気法方式の処理槽を備える請求項5に記載の窒素除去装置。
【請求項8】
前記生物処理システムが、前記好気性生物処理槽からの流出液を脱窒素処理する無酸素槽を更に備える請求項5〜7のいずれか1項に記載の窒素除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素除去方法及び窒素除去装置に関し、特に、嫌気性アンモニア酸化法を用いて窒素含有廃水を処理する窒素除去方法及び窒素除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚水中に含まれる窒素、リンは、湖沼、湾などの閉鎖系水域における富栄養化の原因物質であり、汚水処理工程で効率的に除去されることが望まれる。今日、汚水処理工程から発生する汚泥を処理する方法として、汚泥を嫌気性消化させた後に脱水し、更に乾燥及び焼却などを行って処分する方法がある。これらの処理方法から排出される分離液(脱水分離液)は高濃度の窒素を含んでいる。この分離液が汚水処理系に返流されると、窒素、リン負荷が高くなるために、放流水中の窒素濃度が高くなる原因となるため、高濃度の窒素を含有する廃水を高効率に除去する方法が望まれている。
【0003】
汚水から窒素を除去する方法としては生物学的方法が用いられてきている。一般に、汚水中のアンモニア性窒素は、硝化工程と脱窒工程によって窒素ガスまで分解される。具体的には、硝化工程では、アンモニア性窒素は好気条件下で独立栄養性細菌であるアンモニア酸化細菌によって亜硝酸性窒素に酸化され、この亜硝酸性窒素が同じく独立栄養性細菌である亜硝酸酸化細菌によって硝酸まで酸化される。脱窒工程では、従属栄養細菌である脱窒菌が、生成した亜硝酸性窒素および硝酸性窒素を嫌気性条件下で有機物を水素供与体として窒素ガスまで分解する。
【0004】
しかしながら、このような従来の生物学的脱窒法では、アンモニア性窒素を亜硝酸性窒素および硝酸性窒素に酸化するために多量の酸素(空気)を必要とする。更に、脱窒工程では、水素供与体としてのメタノールの使用量が多量であり、ランニングコストを増加させていた。
【0005】
近年、アンモニア性窒素を水素供与体、亜硝酸性窒素を水素受容体として両者を反応させ、窒素ガスを生成することができる独立栄養性の微生物群を利用した嫌気性アンモニア酸化法の開発が進められている。この反応は以下の(1)式によって進行する。
1.0NH
4++1.32NO
2-+0.066HCO
3-+0.13H
+
→1.02N
2+0.26NO
3-+0.066CH
2O
0.5N
0.15+2.03H
2O・・・(1)
【0006】
アンモニアの硝化は、以下の(2)、(3)式に従って進行する。嫌気性アンモニア酸化法では、アンモニアの硝化を亜硝酸化で止めることが肝要であり、硝化処理においてアンモニア性窒素の酸化を亜硝酸性窒素で停止させ、亜硝酸酸化菌の働きにより、硝酸性窒素が生成しないように制御することが必要である。制御方法としては以下の方策がある。
(a)亜硝酸化槽内に遊離アンモニアを一定濃度以上残存させ、この遊離アンモニアの毒性を利用して亜硝酸酸化細菌の働きを抑える(アンモニア酸化細菌の活性を亜硝酸酸化細菌の活性よりも高く維持する)。
(b)アンモニアが硝酸まで酸化されないように酸素供給量を制限する。
(c)亜硝酸化槽内に遊離の亜硝酸を一定濃度以上残存させ、この遊離亜硝酸の毒性を利用して亜硝酸酸化細菌の働きを抑える(アンモニア酸化細菌の活性を亜硝酸酸化細菌の活性よりも高く維持する)。
(アンモニア酸化細菌の作用による亜硝酸の生成)
NH
4++3/2O
2→NO
2+2H
++H
2O ・・・(2)
(亜硝酸酸化細菌の作用による硝酸の生成)
NO
2-+1/2O
2→NO
3- ・・・(3)
【0007】
嫌気性アンモニア酸化法では、窒素収支(1)式から1mMのアンモニアと1.32mMの亜硝酸とが反応して窒素ガスと0.26mMの硝酸が発生する。すなわち水中の窒素濃度は32.48(=1×14+1.32×14)mg/Lから3.64(=0.26×14)mgLに低減し、窒素除去率として約89%を達成できるものの(窒素ガスは溶解度が小さいため水中から放散する)、約11%の硝酸性窒素が残留することになる。例えば一般的な消化汚泥に含まれるアンモニア性窒素2000mg/Lの約57%を亜硝酸性に酸化し、残留する43%のアンモニアと反応せしめても、110mg/Lという高濃度硝酸性窒素が残留する。高率の窒素除去率を達成するためには、さらに残留する硝酸性窒素を除去しなければならない。
【0008】
例えば、特開2006−272177号公報(特許文献1)では、残留する硝酸性窒素を除去するために、嫌気性アンモニア酸化槽の後段に嫌気性脱窒槽を配備し、メタノール、BOD含有廃水、有機酸分離液などの有機炭素源を注入して、独立栄養性脱窒菌を利用して残留硝酸性窒素を還元分解する方法及びシステムを開示している。しかしながら、メタノールのような工業薬品は高価であり処理費用が高額となる。
【0009】
アンモニアを含有する有機性廃水を嫌気性アンモニア酸化によって脱窒素し、副生した硝酸も除去する場合は、廃水中の有機物を利用して脱窒素するため、廃水を嫌気性アンモニア酸化工程後段の脱窒工程に分配注入することが特許文献1に開示されている。しかしながら、脱窒工程では、アンモニアは反応せずに脱窒工程からそのまま流出して窒素除去率が低下してしまう。そのため、有機酸分離水についてはアンモニアを分離したのちに脱窒工程に注入することが必要であり、これによりシステム構成が複雑になり、処理操作も煩雑となるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−272177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記課題に鑑み、本発明は、簡単な構成及び操作によって、嫌気性アンモニア酸化槽で処理された流出液中の硝酸をより経済的な方法で除去可能な窒素除去方法及び窒素除去装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果、嫌気性アンモニア酸化処理で処理される流出水を、無酸素工程及び好気性生物処理工程を有する生物処理システムへ導入し、流出液中の硝酸を生物処理システムで脱窒素することが有用であるとの知見を得た。
【0013】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、窒素含有廃水を無酸素工程及び好気性生物処理工程を有する生物処理システムで処理する工程と、生物処理システムで発生する有機性汚泥を嫌気性消化工程によりメタンガスに分解する工程と、嫌気性消化工程の流出液中のアンモニアを嫌気性アンモニア酸化工程により窒素ガスに酸化分解する工程と、嫌気性アンモニア酸化工程の流出液を、生物処理システムが備える無酸素工程に導入して流出液中の硝酸を脱窒素する工程とを含む窒素除去方法が提供される。
【0014】
本発明に係る窒素除去方法は一実施態様において、好気性生物処理工程が、アンモニアを硝化する硝化工程を含む。
【0015】
本発明に係る窒素除去方法は別の一実施態様において、生物処理システムが、窒素含有廃水を、嫌気工程、無酸素工程及び硝化工程で処理する嫌気・無酸素・好気法方式の処理槽を備える。
【0016】
本発明は別の一側面において、窒素含有廃水を処理する無酸素槽及び好気性生物処理槽を備える生物処理システムと、生物処理システムで発生する有機性汚泥をメタンガスに分解する嫌気性消化槽と、嫌気性消化槽の流出液中のアンモニアを窒素ガスに酸化分解する嫌気性アンモニア酸化槽と、嫌気性アンモニア酸化槽の流出液を生物処理システムが備える無酸素槽に導入する導入ラインとを備える窒素除去装置が提供される。
【0017】
本発明に係る窒素除去装置は一実施態様において、好気性生物処理槽が、アンモニアを硝化する硝化槽を含む。
【0018】
生物処理システムが、窒素含有廃水を、嫌気工程、無酸素工程及び硝化工程で処理する嫌気・無酸素・好気法方式の処理槽を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡単な構成及び操作によって、嫌気性アンモニア酸化槽で処理された流出液中の硝酸をより経済的な方法で除去可能な窒素除去方法及び窒素除去装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る窒素除去装置の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の第2の実施の形態に係る窒素除去装置の一例を示す概略図である。
【
図3】本発明の第3の実施の形態に係る窒素除去装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであってこの発明の技術的思想は構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0022】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施の形態に係る窒素除去装置は、
図1に示すように、窒素を含有する有機性廃水(以下「窒素含有廃水」という)1を処理する生物処理システム16と、生物処理システム16で発生する有機性汚泥(余剰汚泥7)をメタンガスに分解する嫌気性消化槽9と、嫌気性消化槽9の流出液中のアンモニアを窒素ガスに酸化分解する嫌気性アンモニア酸化槽15と、嫌気性アンモニア酸化槽15を生物処理システム16に導入する導入ラインL1とを少なくとも備える。
【0023】
生物処理システム16は、窒素含有廃水1を固形分2−1と分離水2−2とに分離する固液分離槽2と、分離水2−2を実質的に遊離酸素の存在しない嫌気性条件下で処理する無酸素槽3と、無酸素槽3の流出液を好気的に生物処理する好気性生物処理槽4と、好気性生物処理槽4からの流出液を固液分離する固液分離槽5を備えることができる。
【0024】
窒素含有廃水1は、固液分離槽2で粗大固形物が固形分2−1と分離水2−2に分離されたのち、分離水2−2が無酸素槽3に導入される。無酸素槽3では、無酸素槽3に流入される分離水2−2中の酸化態窒素(NO
X−N=NO
2−N+NO
3−N)が、分離水2−2中のBOD成分によって還元分解される。無酸素槽3の流出液は、好気性生物処理槽4へ導入される。
【0025】
好気性生物処理槽4は、無酸素槽3からの流出液を好気性生物処理する処理槽であり、例えば流出液を好気性条件下で処理する曝気槽などが利用可能である。曝気槽内では、残留したBOD物質が酸化分解される。曝気槽の流出液は、固液分離槽5によって分離汚泥と処理水5−1とに分離される。分離汚泥の一部は、返送汚泥6として無酸素槽3に返送され、分離汚泥の残部は余剰汚泥7として、固形分2−1とともに濃縮槽8に導入される。
【0026】
固液分離槽2、5は、沈殿分離、膜分離、ろ過分離、浮上分離などの当業者周知の方法を用いることができる。図示しないが、余剰汚泥7は、固液分離槽2を経由して濃縮槽8に導入してもよい。
【0027】
濃縮槽8では、窒素含有廃水1から分離された固形分2−1と余剰汚泥7が後段にある嫌気性消化槽9での処理に好適な汚泥濃度に濃縮される。濃縮槽8としては、重力式、遠心式、膜式、浮上式などの当業者周知の装置を用いることができる。濃縮槽8では、固形分2−1と余剰汚泥7とが、濃縮汚泥8−1と濃縮分離水8−2とに分離される。濃縮汚泥8−1は、嫌気性消化槽9へ導入される。濃縮分離水8−2は、固液分離槽2、無酸素槽3又は好気性生物処理槽4に移送される。
【0028】
嫌気性消化槽9ではメタン発酵が行われ、濃縮汚泥8−1がメタンガス10にまで分解される。嫌気性消化槽9では浮遊式メタン発酵法が推奨される。発酵工程の撹拌はガス撹拌、インペラを回転する機械撹拌が推奨される。嫌気性消化槽9の流出液11は固液分離槽12へ導入され、固液分離槽12において、流出液13と未分解残渣11−1とに分離される。固液分離槽12では遠心脱水法、沈殿濃縮法など当業者周知の脱水法、濃縮法を用いることができる。
【0029】
固液分離槽12の流出液13に残留するアンモニアは、亜硝酸化槽14において約57%のアンモニアが亜硝酸に酸化される。残留する約43%のアンモニアを含む亜硝酸化槽14からの流出液は、嫌気性アンモニア酸化槽15へ導入される。嫌気性アンモニア酸化槽15では、流出液中のアンモニアが、アンモニア性窒素を電子供与体とし亜硝酸性窒素を電子受容体とする独立栄養性微生物(嫌気性アンモニア酸化細菌)によって、窒素ガスに分解され、一部は硝酸に転換される。
【0030】
図示しないが、流出液13の一部を100%亜硝酸化し、流出液13の残部を、亜硝酸化槽14を経由して嫌気性アンモニア酸化槽15に導入してもよい。流出液11のBOD濃度が高い場合は、嫌気性消化槽9と亜硝酸化槽14との間に流出液11中のBODを酸化させるためのBOD酸化槽を更に配備してもよい。
【0031】
亜硝酸化槽14のアンモニア濃度が高濃度の場合には、嫌気性アンモニア酸化槽15からの流出液15−1を亜硝酸化槽14に循環させアンモニア濃度を低減するとpH管理が容易になるが、低減しすぎると亜硝酸で停止せず硝酸にまで酸化する場合がある。
【0032】
硝酸を含有する該嫌気性アンモニア酸化工程の流出液15−1は、導入ラインL1を介して無酸素槽3に導入され、流出液15−1中の硝酸が、無酸素槽3中の有機物によって無酸素条件下で窒素ガスに還元分解される。
【0033】
図示しないが、流出液15−1は、固液分離槽2を経由して無酸素槽3に導入してもよい。無酸素槽3の前段に、貯留槽、調整槽等がある場合には、それらの槽を経由して無酸素槽3に流出液15−1を導入してもよい。
【0034】
無酸素槽3での無酸素工程では、槽を大気と遮断した密閉式が好ましいが、大気開放下でも少量の空気で溶存酸素濃度が検出されない程度の撹拌を行っても、硝酸の除去には同様の効果を得ることができる。固液分離槽2、5、無酸素槽3、好気性生物処理槽4での各処理は、一括していわゆる一般的な生物処理システム16と呼ばれる。
【0035】
生物処理システム16の生物処理方式としては、活性汚泥処理方式のほか、生物膜方式、膜分離活性汚泥方式など当業者に周知の生物処理方式を配備すればよい。膜分離活性汚泥法では、曝気槽の汚泥濃度が高いため、曝気槽(好気性生物処理槽4)から直接、濃縮槽8に導入することも可能である。また、生物処理システム16として、生物学的脱窒素法として知られる循環式硝化脱窒法、ステップ流入式多段硝化脱窒法、嫌気・無酸素・好気法(A2O法)など当業者に周知の生物学的脱窒素法を利用することもできる。
【0036】
第1の実施形態に係る窒素除去装置及び窒素除去方法によれば、簡単な構成及び操作によって、嫌気性アンモニア酸化槽で処理された流出液中の硝酸をより経済的な方法で除去できる。
【0037】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る窒素除去装置は、
図2に示すように、好気性生物処理槽4が、アンモニアを硝化する硝化槽17を含み、硝化槽17の硝化液を無酸素槽3へ循環させる循環ラインL2を備える点が、
図1に示す窒素除去装置と異なる。
【0038】
窒素含有廃水1は、固液分離槽2で粗大固形物が固形分2−1と分離水2−2に分離されたのち、分離水2−2が無酸素槽3に導入される。無酸素槽3では、無酸素槽3に流入される分離水2−2中の酸化態窒素(NO
X−N=NO
2−N+NO
3−N)が、分離水2−2中のBOD成分によって還元分解される。無酸素槽3の流出液は、好気的条件下にある硝化槽17へ導入される。
【0039】
硝化槽17では、無酸素槽3からの流出液中のアンモニアが窒素酸化物(NO
X)に硝化される。硝化槽17の流出液の一部は、循環水18として循環ラインL2を介して無酸素槽3に循環される。循環水18中のNO
Xは無酸素槽3で還元分解される。循環水18の水量は、循環水18のアンモニア濃度、目標処理窒素濃度によって適宜選択される。
【0040】
硝化槽17からの流出液の残部は、固液分離槽5へ導入される。固液分離槽5では、硝化槽17からの流出液が、分離汚泥と処理水5−1とに分離される。分離汚泥の一部は、返送汚泥6として無酸素槽3に返送され、分離汚泥の残部は余剰汚泥7として、固形分2−1とともに濃縮槽8に導入される。その後は、
図1に示す窒素除去装置及び窒素除去方法と実質的に同様である。
【0041】
第2の実施形態に係る窒素除去装置及び窒素除去方法によれば、処理水5−1のアンモニア濃度及び総窒素濃度を更に低減することができる。なお、図示しないが、処理水5−1中の総窒素濃度を更に低減するためには、硝化槽17と固液分離槽5の間に無酸素槽を別途配備し、固液分離槽5の前段でNO
Xを脱窒素すればよい。また、公知文献(田中ら、「ステップ流入式多段硝化脱窒法に関する調査研究」、2003年度下水道新技研究所年報、[2/2巻]、p.149−150)に記載されるようなステップ流入式多段硝化脱窒法の無酸素槽に、嫌気性アンモニア酸化工程の流出液15−1を導入しても、
図2の方式と同様の効果を得ることができる。
【0042】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る窒素除去装置は、
図3に示すように、生物処理システム16が、窒素含有廃水1を、嫌気工程(嫌気槽19)、無酸素工程(無酸素槽3)及び硝化工程(硝化槽17)で処理する嫌気・無酸素・好気法(A2O法)方式の処理槽20を備え、硝化工程の硝化液を無酸素工程へ循環させる循環ラインL2を備える点が、
図1に示す窒素除去装置と異なる。なお、嫌気工程(嫌気槽19)、無酸素工程(無酸素槽3)及び硝化工程(硝化槽17)で処理順序は
図3に示す態様に限定されず、装置構成によっては、
図3とは異なる順で処理しても構わないことは勿論である。
【0043】
窒素含有廃水1は、固液分離槽2で粗大固形物が固形分2−1と分離水2−2に分離されたのち、分離水2−2が、実質的に遊離酸素も結合酸素(NO
Xをに結合している酸素)の存在しない嫌気槽19へ導入される。嫌気槽19には、固液分離槽5からの返送汚泥6中のリン酸が汚泥中から溶出し、嫌気槽19内のリン濃度が上昇する。嫌気槽19の流出液は、硝化槽17からの循環水18とともに無酸素槽3へ導入される。
【0044】
無酸素槽3では、無酸素槽3に流入される嫌気槽19からの流出液及び循環水18中の酸化態窒素(NO
X−N=NO
2−N+NO
3−N)が、嫌気槽19からの流出液中のBOD成分によって還元分解される。無酸素槽3からの流出水は、好気的条件下にある硝化槽17に導入される。硝化槽17では、無酸素槽3からの流出液中のアンモニアが窒素酸化物(NO
X)に硝化され、嫌気槽19で溶出したリンが活性汚泥に吸収される。
【0045】
硝化槽17の流出液の一部は、循環水18として循環ラインL2を介して無酸素槽3に循環される。硝化槽17の流出液の残部は、固液分離槽5において、分離汚泥と処理水5−1とに分離される。その後は、
図1に示す窒素除去装置及び窒素除去方法と実質的に同様である。
【0046】
第3の実施の形態に係る窒素除去装置及び窒素除去方法によれば、処理水5−1のアンモニア濃度及び総窒素濃度、更にリン酸濃度を低減することができる。なお、図示しないが、処理水5−1中の総窒素濃度を更に低減するためには、硝化槽17と固液分離槽5の間に無酸素槽を別途配備し、固液分離槽5の前段でNO
Xを脱窒素すればよい。また、公知文献(安田卓生、「下水処理実施設におけるステップ流入式嫌気好気法における脱窒・脱りんについて」、北海道大学衛生工学シンポジウム論文集、1993年11月1日、1:p.205−207)に記載されるような、生物学的脱窒脱リン法であるステップ流入式嫌気好気法の無酸素槽に嫌気性アンモニア酸化工程の流出液15−1を導入しても
図3の方式と同様の効果を得ることができる。
【0047】
嫌気槽19において活性汚泥に吸収されたリンは、嫌気条件下にある濃縮槽8及びメタン発酵が行われる嫌気性消化槽9で溶出するので、固液分離槽12でリンを不溶化する無機凝集剤を添加して、分離除去することができる。図示しないが、メタン発酵工程を行う嫌気性消化槽9と亜硝酸化槽14の間にヒドロキシアパタイト(HAP)又はリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)精製装置を配備することにより、リンを回収してもよい。
【実施例】
【0048】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0049】
(第1実施例)
第1実施例では、
図1に示す窒素除去装置の構成に準拠して表1の実験装置を用いて表2の流量(設定値)において有機性廃水の窒素除去処理を実施した。なお、表1の無酸素槽は
図1の無酸素槽3、曝気槽は好気性生物処理槽4、沈殿槽は固液分離槽5、濃縮槽は濃縮槽8、回分式遠心脱水機は固液分離槽12、亜硝酸化槽は亜硝酸化槽14、嫌気性アンモニア酸化槽は嫌気性アンモニア酸化槽15に相当する。その結果、表3に示す処理水質(14日間の平均値サンプル採取日10日)を得ることができた。表3より嫌気性アンモニア酸化槽流出水中のNO
2−N,NO
3−Nは無酸素槽で完全に脱窒素されていることがわかる。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
(第2実施例)
第2実施例では、
図2に示す窒素除去装置の構成に準拠して、好気性生物処理工程としてアンモニアを硝化する消化液循環法を用いた。表4の実験装置を用いて、表5の流量(設定値)において有機性廃水の窒素除去処理を実施したところ、表6に示す処理水質(14日間の平均値サンプル採取日10日)を得ることができた。表6より嫌気性アンモニア酸化槽流出水中のNO
2−N,NO
3−Nは原水のBOD成分によって無酸素槽で完全に脱窒素され、なおかつ生物処理工程処理水の総無機性窒素の除去率は(22−4.1)/22×100=81%となり、実施例1の総無機性窒素除去率(22−13.6)/22×100=38に比較して高率の除去率が得られた。
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
(第3実施例)
第3実施例では、
図3に示す窒素除去装置の構成に準拠して、生物学的脱リン法である嫌気無酸素好気法を用いた。実施例2の表4の実験装置の無酸素槽の前段に50Lの嫌気槽を配備し、表3の流量条件で約3ヶ月間実施した。その結果、総無機性窒素の除去率は実施例2とほぼ同等であったが、リン除去率は実施例2では(2.8−1.5)/2.8×100=46%であったが、実施例3では89%を達成できた。
【符号の説明】
【0058】
1…窒素含有廃水
2…固液分離槽
3…無酸素槽
4…好気性生物処理槽
5…固液分離槽
6…返送汚泥
7…余剰汚泥
8…濃縮槽
9…嫌気性消化槽
10…メタンガス
11…流出液
12…固液分離槽
13…流出液
14…亜硝酸化槽
15…嫌気性アンモニア酸化槽
16…生物処理システム
17…硝化槽
18…循環水
19…嫌気槽
20…処理槽