特許第6491059号(P6491059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491059
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】周波数変換装置及びアンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/26 20060101AFI20190318BHJP
   H04N 5/44 20110101ALI20190318BHJP
【FI】
   H04B1/26 C
   H04N5/44
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-155029(P2015-155029)
(22)【出願日】2015年8月5日
(65)【公開番号】特開2017-34589(P2017-34589A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113665
【氏名又は名称】マスプロ電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 格
(72)【発明者】
【氏名】久野 竹仁
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亮太
【審査官】 岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−204279(JP,A)
【文献】 特開2003−258661(JP,A)
【文献】 特開2015−115882(JP,A)
【文献】 特開2015−104018(JP,A)
【文献】 特開2013−258622(JP,A)
【文献】 特開2014−64237(JP,A)
【文献】 特開2013−93756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/26
H04N 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数帯域が重複し、偏波方式が異なる放送電波の受信信号を、それぞれ、周波数帯域が異なる中間周波信号に周波数変換する一対の周波数変換部を備え、
前記一対の周波数変換部は、それぞれ、
一定周波数の高周波信号を発生する発振回路と、
前記周波数変換の対象となる受信信号と前記発振回路からの出力とを混合することで、該受信信号を前記中間周波信号に変換する混合回路と、
を備え、
前記一対の周波数変換部の一方は、前記発振回路として、基準周波数発振器からの出力に基づき周波数可変発振器の発振周波数を制御するPLL回路を備えた第1局部発振回路を備え、
前記一対の周波数変換部の他方は、前記発振回路として、誘電体共振器の共振により前記高周波信号を発生する第2局部発振回路を備えたことを特徴とする周波数変換装置。
【請求項2】
周波数帯域が重複し、偏波方式が異なる放送電波をそれぞれ受信する受信部と、
前記受信部にて受信された偏波方式が異なる放送電波の受信信号を、それぞれ、周波数帯域が異なる中間周波信号に周波数変換する一対の周波数変換部と、
を備え、
前記一対の周波数変換部は、それぞれ、
一定周波数の高周波信号を発生する発振回路と、
前記周波数変換の対象となる受信信号と前記発振回路からの出力とを混合することで、該受信信号を前記中間周波信号に変換する混合回路と、
を備え、
前記一対の周波数変換部の一方は、前記発振回路として、基準周波数発振器からの出力に基づき周波数可変発振器の発振周波数を制御するPLL回路を備えた第1局部発振回路を備え、
前記一対の周波数変換部の他方は、前記発振回路として、誘電体共振器の共振により前記高周波信号を発生する第2局部発振回路を備えたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
前記受信部は、右旋円偏波及び左旋円偏波の衛星放送電波をそれぞれ受信するよう構成されており、
前記一対の周波数変換部のうち、前記第1局部発振回路を備えた周波数変換部は、前記受信部にて受信された前記右旋円偏波の衛星放送電波の受信信号を周波数変換し、前記第2局部発振回路を備えた周波数変換部は、前記受信部にて受信された前記左旋円偏波の衛星放送電波の受信信号を周波数変換するよう構成されていることを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数帯域が重複し、偏波方式が異なる放送電波の受信信号を、それぞれ、周波数帯域が異なる中間周波信号に周波数変換する周波数変換装置、及び、この周波数変換装置を備えたアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星放送では、放送電波の周波数帯域を有効利用するために、人工衛星から、偏波方式が異なる放送電波を送信することが行われている。例えば、通信衛星(CS)を利用した衛星放送では、放送周波数帯域内で右旋円偏波と左旋円偏波との2種類の電波を利用して放送が行われている。
【0003】
この種の放送電波を受信するアンテナ装置は、パラボラアンテナにて構成されており、パラボラ反射鏡の焦点位置に配置された受信部にて、各偏波方式の放送電波をそれぞれ受信する。
【0004】
そして、受信部にて受信された2種類の受信信号は、周波数変換装置(所謂、LNB:Low Noise Block Converter )にて、周波数帯域が異なる中間周波信号にそれぞれ周波数変換され、共通の伝送路(一般に同軸ケーブル)を介して受信端末側に伝送される。
【0005】
ところで、周波数変換装置にて2種類の受信信号を周波数変換するには、受信信号毎に、周波数変換用の高周波信号(局部発振信号)が必要である。このため、この種の周波数変換装置には、発振周波数が異なる2種類の局部発振回路が設けられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−258658号公報
【特許文献2】特開2007−318718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
衛星放送の受信信号を中間周波信号に周波数変換する際には、局部発振信号の周波数を10GHz前後に設定する必要がある。そして、こうした高周波信号を発生可能な局部発振回路としては、誘電体共振器を備えた共振器方式のものと、PLL回路を備えたPLL方式のものが知られている。
【0008】
このうち、共振器方式の局部発振回路は、発振周波数が誘電体共振器の共振周波数で決まることから、誘電体共振器の形状や大きさを調整することで、発振周波数を所望周波数に設定することができる。
【0009】
しかし、誘電体共振器は、PLL回路のように小型の電子部品を使って小型化することはできず、周波数変換部となる混合回路と共に基板上に実装する必要があるため、周波数変換装置を小型化するのは難しいという問題がある。
【0010】
また、誘電体共振器を基板に実装すると、その共振周波数に対応した局部発振信号が周波数変換装置の筐体内に漏れ出し、その漏れ出した各局部発振信号の周波数差によって、周波数変換後の受信信号に影響を与える高調波信号(スプリアス)が生成される。このため、共振器方式の局部発振回路を用いて周波数変換装置を構成した場合には、高調波信号を抑制するための対策が必要になるという問題もある。
【0011】
また、この対策として、特許文献2に記載のものでは、局部発振回路を含む2種類の周波数変換部を異なる基板上に形成しているが、このような対策では、2種類の回路基板を平行に配置する必要があるので、周波数変換装置がより大型化してしまうという問題がある。
【0012】
一方、PLL方式の局部発振回路は、周波数変換用の混合回路を含む集積回路として容易に小型化できるため、周波数変換装置を小型化できる。また、このように局部発振回路を混合回路と共に周波数変換用の集積回路として構成すれば、その周波数変換部から漏れ出す局部発振信号を抑制でき、延いては、その局部発振信号にて生成される高調波信号の信号レベルも抑制できる。
【0013】
しかし、PLL方式の局部発振回路は、水晶発振器等の基準発振器から出力される一定周波数の基準信号を周波数逓倍し、PLL回路にて、その基準信号に基づき周波数可変発振器の発振周波数を制御することで、所望周波数の局部発振信号を生成することから、共振器方式の局部発振回路に比べて、局部発振信号に不要ノイズ成分が多く含まれることになる。
【0014】
このため、PLL方式の局部発振回路を周波数変換装置に利用すると、共振器方式の局部発振回路を利用した場合に比べて、受信信号の雑音指数(NF)を悪化させてしまうことがある。
【0015】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、周波数帯域が重複した2種類の受信信号を、周波数帯域が異なる中間周波信号に周波数変換する周波数変換装置において、装置の大型化を招くことなく、周波数変換用の高周波信号によって生じる高調波信号の発生、及び、受信信号の雑音指数の劣化、を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の周波数変換装置は、周波数帯域が重複し、偏波方式が異なる放送電波の受信信号を、それぞれ、周波数帯域が異なる中間周波信号に周波数変換する一対の周波数変換部を備える。
【0017】
また、一対の周波数変換部は、それぞれ、一定周波数の高周波信号を発生する発振回路と、周波数変換の対象となる受信信号と発振回路からの出力とを混合することで受信信号を中間周波信号に変換する混合回路とを備える。
【0018】
そして、周波数変換部の一方は、発振回路として、基準周波数発振器からの出力に基づき周波数可変発振器の発振周波数を制御するPLL回路を備えた第1局部発振回路(上述したPLL方式の局部発振回路)を備える。
【0019】
また、周波数変換部の他方は、発振回路として、誘電体共振器の共振により前記高周波信号を発生する第2局部発振回路(上述した共振器方式の局部発振回路)を備える。
このため、本発明の周波数変換装置によれば、第1局部発振回路を備えた周波数変換部から漏れ出す局部発振信号の信号レベルを、第2局部発振部を備えた周波数変換部から漏れ出す局部発振信号の信号レベルよりも低くすることができる。
【0020】
このため、一対の周波数変換部を共振器方式の局部発振回路を用いて構成した場合に比べて、局部発振信号の周波数差によって生じる高調波信号の信号レベルを低減することができ、延いては、周波数変換装置から出力される受信信号の信号品質が低下するのを抑制できる。
【0021】
また、周波数変換部の一方は、使用する電子部品の選定により小型化或いはIC化が可能なPLL方式の局部発振回路にて構成される。このため、一対の周波数変換部を共振器方式の局部発振回路を用いて構成したときのように、各周波数変換部を異なる基板上に形成する必要がなく、各周波数変換部を共通の基板上に形成して、周波数変換装置全体を小型化することができる。
【0022】
また、周波数変換部の他方は、共振器方式の局部発振回路にて構成されることから、この周波数変換部にて周波数変換された受信信号の雑音指数が劣化するのを抑えることができる。このため、本発明によれば、一対の周波数変換部をPLL方式の局部発振回路を用いて構成した場合に比べて、周波数変換装置全体の雑音指数を改善することができる。
【0023】
次に、本発明のアンテナ装置は、周波数帯域が重複し、偏波方式が異なる放送電波をそれぞれ受信する受信部と、受信部にて受信された偏波方式が異なる放送電波の受信信号を、それぞれ、周波数帯域が異なる中間周波信号に周波数変換する一対の周波数変換部と、を備える。そして、一対の周波数変換部は、上記周波数変換装置を構成する一対の周波数変換部と同様に構成されている。
【0024】
このため、本発明のアンテナ装置によれば、受信部に設けられる周波数変換装置を小型化できると共に、その周波数変換装置から出力される受信信号の雑音指数を改善し、周波数変換後の受信信号と共に出力される不要な高調波信号を抑制できる。
【0025】
なお、本発明のアンテナ装置において、受信部が、右旋円偏波及び左旋円偏波の衛星放送電波をそれぞれ受信するよう構成されている場合、第1局部発振回路(PLL方式の局部発振回路)を備えた周波数変換部は、右旋円偏波の衛星放送電波の受信信号を周波数変換し、第2局部発振回路(共振器方式の局部発振回路)を備えた周波数変換部は、左旋円偏波の衛星放送電波の受信信号を周波数変換するよう構成されていてもよい。
【0026】
このようにすれば、後述の実施形態に記載のように、ウルトラハイビジョン、スーパーハイビジョンと呼ばれる4K、8Kの衛星放送にて採用される左旋円偏波の受信信号を、共振器方式の局部発振回路と混合回路とにより構成される周波数変換部を用いて、所望周波数帯域の中間周波信号に周波数変換することができるようになる。
【0027】
なお、この場合、右旋円偏波の受信信号は、PLL方式の局部発振回路と混合回路とにより構成される周波数変換部にて周波数変換されることになるが、この周波数変換部には、現在実用化されている周波数変換用ICを利用することができることから、低コストで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態のアンテナ装置の回路構成を表すブロック図である。
図2】衛星放送の受信信号及び周波数変換後の受信信号の周波数帯域を表す説明図である。
図3】実施形態の比較例として2つの局部発振回路を誘電体共振器で構成したアンテナ装置の回路構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
本実施形態のアンテナ装置は、パラボラ反射鏡の焦点位置に、導波管からなる受信部2を配置することにより構成される周知のパラボラアンテナである。
【0030】
このアンテナ装置は、地上から見て略同一方向に打ち上げられている放送衛星(BS)及び通信衛星(CS)からの送信電波(詳しくは右旋円偏波及び左旋円偏波の放送電波)をそれぞれ受信するのに用いられる。
【0031】
このため、受信部2には、右旋円偏波の放送電波(BS−R、CS−R)を受信するためのプローブ2Rと、左旋円偏波の放送電波(BS−L、CS−L)を受信するためのプローブ2Lが設けられている。
【0032】
なお、受信部2を構成する導波管には、円偏波−直線偏波変換器が設けられており、各プローブ2R、2Lは、円偏波−直線偏波変換器により直線偏波に変換された電波を夫々受信する。
【0033】
ここで、図2に示すように、放送衛星(BS)から送信されてくる右旋円偏波及び左旋円偏波の放送電波(BS−R、BS−L)は周波数帯域が略重複しており、プローブ2Rから出力されるBS−R信号の周波数帯域は、fr1s-r〜fr1e-r(例えば、11.71〜12.16GHz)、プローブ2Lから出力されるBS−L信号の周波数帯域は、fr1s-l〜fr1e-l(例えば、約11.73〜12.19GHz)である。
【0034】
また、通信衛星(CS)から送信されてくる右旋円偏波及び左旋円偏波の放送電波(CS−R、CS−L)も周波数帯域が重複しており、プローブ2Rから出力されるCS−R信号の周波数帯域は、fr2s-r〜fr2e-r(例えば、12.23〜12.75GHz)、プローブ2Lから出力されるCS−L信号の周波数帯域は、fr2s-l〜fr2e-l(例えば、12.21〜12.73GHz)である。
【0035】
これら各放送電波の周波数帯域は、2016年にCSで放送開始が予定され、2020年にBSで放送開始が予定されている、4K、8Kの衛星放送を含むものであり、本実施形態のアンテナ装置は、放送開始予定の4K、8Kの衛星放送を受信可能である。
【0036】
なお、上記各放送電波は放送開始予定のものを含むことから、上述した周波数は一例であり、放送開始後の実周波数と異なることはある。同様に、後述する局部発振信号や中間周波信号等の周波数も、放送開始に伴い変更されることはある。
【0037】
次に、プローブ2R、2Lには、それぞれ、プローブ2R、2Lにて受信された上記各放送電波の受信信号を中間周波信号(IF信号)に周波数変換する周波数変換装置4R、4Lが接続されている。
【0038】
これら各周波数変換装置4R、4Lは、共通の回路基板に実装された回路部品にて構成されており、その回路基板は、受信部2を構成する導波管に一体形成された筐体内に収納されている。
【0039】
筐体は、導波管と同様の導電性材料(アルミダイキャスト等)にて構成されており、この構成により、回路基板に組み付けられた内部回路を保護するシールド部材として機能する。
【0040】
また、各周波数変換装置4R、4Lの出力は、周波数変換装置4R、4Lにて周波数変換された受信信号を混合して増幅する増幅回路6に接続され、増幅回路6の出力は、増幅後の受信信号を選択的に通過させるハイパスフィルタ(HPF)8を介して、出力端子Toutに接続されている。
【0041】
このうち、増幅回路6及びHPF8は、周波数変換装置4R、4Lと同一の回路基板に設けられている。また、出力端子Toutは、受信信号の伝送路となる同軸ケーブルを接続可能なF型の同軸コネクタにて構成されており、上記各回路が設けられた回路基板が収納される筐体に固定されている。
【0042】
次に、周波数変換装置4Rは、右旋円偏波受信用のプローブ2Rからの受信信号(BS−R、CS−R)を、予め設定された中間周波数帯fi1s-r〜fi1e-r(例えば、1.04〜1.49GHz)、fi2s-r〜fi2e-r(例えば、1.56〜2.08GHz)のIF信号に一括して周波数変換(所謂ブロックコンバート)するためのものである。
【0043】
また、周波数変換装置4Lは、左旋円偏波受信用のプローブ2Lからの受信信号(BS−L、CS−L)を、周波数変換装置4Rとは異なる中間周波数帯fi1s-l〜fi1e-l(例えば、2.23〜2.69GHz)、fi2s-l〜fi2e-l(例えば、2.71〜3.23GHz)のIF信号に一括して周波数変換するためのものである。
【0044】
このため、周波数変換装置4Rには、周波数変換用の高周波信号として周波数floc-r(例えば、10.67GHz)の局部発振信号を発生する局部発振回路22が設けられており、周波数変換装置4Lには、周波数変換用の高周波信号として周波数floc-l(例えば、9.50GHz)の局部発振信号を発生する局部発振回路52が設けられている。
【0045】
次に、これら各周波数変換装置4L、4Rの構成について説明する。
図1に示すように、右旋円偏波用の周波数変換装置4Rは、プローブ2Rから、前後2段の低雑音増幅回路12、14を介して受信信号(BS−R、CS−R)を取り込むことで、受信信号を所定レベルまで増幅し、バンドパスフィルタ(BPF)16に入力する。
【0046】
BPF16の通過周波数帯域幅は、右旋円偏波の受信信号(BS−R、CS−R)を選択的に通過させるために、fr1s-r〜fr2e-rに設定されており、BPF16を通過した受信信号(BS−R、CS−R)は、周波数変換部20に入力される。
【0047】
周波数変換部20は、右旋円偏波の受信信号(BS−R、CS−R)を、元の周波数fr1s-r〜fr1e-r、fr2s-r〜fr2e-rから、局部発振回路22から出力される局部発振信号の周波数floc-rを差し引いた周波数fi1s-r〜fi1e-r、fi2s-r〜fi2e-rのIF信号にブロックコンバートするためのものであり、局部発振回路22としてPLL発振回路を備えた集積回路(IC)にて構成されている。
【0048】
なお、PLL発振回路は、水晶振動子21により基準周波数で発振する基準周波数発振器からの出力を周波数逓倍し、その周波数逓倍した基準信号にてPLL回路を介して周波数可変発振器の発振周波数を制御するよう構成されるが、この構成については従来から知られている(例えば、特許文献1参照)ので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0049】
また、周波数変換部20は、BPF16を通過した受信信号(BS−R、CS−R)を周波数変換可能な信号レベルまで更に増幅する増幅回路24と、増幅回路24にて増幅された受信信号(BS−R、CS−R)と局部発振回路22からの局部発振信号(周波数floc-r)とを混合する混合回路26と、混合回路26からの出力を増幅する増幅回路28と、を備える。
【0050】
この増幅回路28には、右旋円偏波の受信信号(BS−R、CS−R)を増幅可能な増幅回路12、14、24とは異なり、受信信号(BS−R、CS−R)よりも周波数が低いIF信号を増幅可能な増幅回路が使用される。つまり、増幅回路28の増幅可能周波数は、増幅回路12、14、24よりも低くなっている。
【0051】
そして、この増幅回路28にて増幅されたIF信号は、ローパスフィルタ(LPF)18を介して、増幅回路6に出力される。
なお、LPF18は、周波数変換部20から出力される右旋円偏波の受信信号のIF信号を通過させ、周波数変換装置4Lから出力される左旋円偏波の受信信号のIF信号の通過を阻止するためのものであり、そのカットオフ周波数は、例えば、通過させるべきIF信号の最大周波数fi2e-rに設定される。
【0052】
一方、左旋円偏波用の周波数変換装置4Lは、プローブ2Lから、前後3段の低雑音増幅回路32、33、34を介して受信信号を取り込むことで、受信信号を所定レベルまで増幅し、BPF36に入力する。
【0053】
このBPF36の通過周波数帯域幅は、左旋円偏波の受信信号(BS−L、CS−L)を選択的に通過させるために、fr1s-l〜fr2e-lに設定されており、BPF36を通過した受信信号(BS−L、CS−L)は、混合回路54に入力される。
【0054】
混合回路54は、BPF36を通過した左旋円偏波の受信信号(BS−L、CS−L)と、局部発振回路52からの局部発振信号(周波数floc-l)とを混合することで、受信信号(BS−L、CS−L)を周波数変換するためのものである。
【0055】
そして、混合回路54からの出力はLPF38に入力され、LPF38から、周波数fi1s-l〜fi1e-l、fi2s-l〜fi2e-lのIF信号が選択的に出力される。
つまり、LPF38は、混合回路54からの出力のうち、左旋円偏波の受信信号(BS−L、CS−L)の周波数fr1s-l〜fr1e-l、fr2s-l〜fr2e-lから、局部発振回路52から出力される局部発振信号の周波数floc-lを差し引いた周波数fi1s-l〜fi1e-l、fi2s-l〜fi2e-lの信号を選択的に通過させる。このため、LPF38のカットオフ周波数は、例えば、通過させるべきIF信号の最大周波数fi2e-lに設定されている。
【0056】
なお、周波数変換装置4Lにおいては、局部発振回路52及び混合回路54にて周波数変換部50が構成されているが、これら各回路52、54は、周波数変換装置4Rの周波数変換部20とは異なり、回路基板に実装された電子部品にて構成される。
【0057】
そして、局部発振回路52は、周波数floc-l(例えば、9.50GHz)の局部発振信号を発生する必要があるため、共振周波数を任意に設定可能な誘電体共振器を用いて構成されている。
【0058】
次に、LPF38を通過したIF信号は、増幅回路40にて増幅された後、HPF42を介して、増幅回路6に出力される。
HPF42は、増幅回路40にて増幅された左旋円偏波の受信信号のIF信号を通過させ、周波数変換装置4Rから出力される右旋円偏波の受信信号のIF信号の通過を阻止するためのものであり、そのカットオフ周波数は、例えば、通過させるべきIF信号の最小周波数fi1s-lに設定される。
【0059】
以上説明したように、本実施形態のアンテナ装置には、受信部2で受信される右旋円偏波及び左旋円偏波の放送電波の受信信号を、それぞれ、共通の伝送線を介して伝送できるように、互いに重複することのない周波数帯のIF信号に周波数変換する周波数変換装置4R、周波数変換装置4Lが備えられている。
【0060】
これら各周波数変換装置4R、4Lは、それぞれ、周波数変換部20、50として、局部発振回路22、52と、混合回路26、54とを備え、周波数変換部20の局部発振回路22は、PLL発振回路にて構成され、周波数変換部50の局部発振回路52は、誘電体共振器にて構成されている。
【0061】
また特に、本実施形態では、周波数変換部20が、局部発振回路22、増幅回路24、混合回路26、及び、増幅回路28を備えた集積回路(IC)として構成されている。
このため、本実施形態のアンテナ装置によれば、周波数変換部20から漏れ出す局部発振信号の信号レベルを、周波数変換部50から漏れ出す局部発振信号の信号レベルよりも低くすることができる。
【0062】
よって、図3に例示するように、右旋円偏波用の周波数変換装置4Rの周波数変換部60を、左旋円偏波用の周波数変換装置4Lの周波数変換部50と同様に、誘電体共振器からなる局部発振回路62を用いて構成した場合に比べて、局部発振信号の周波数差によって生じる高調波信号の信号レベルを低減することができる。
【0063】
具体的には、本発明者等が実験にて高調波信号の信号レベルを測定したところ、アンテナ装置の周波数変換装置を図3に示すように構成した場合、局部発振信号の周波数差「floc-r」−「floc-l」によって生じる高調波信号(本実験例では周波数が1.17GHzの高調波信号)は、−63.34dBm、その高調波信号の2倍の周波数を有する高調波信号は、−65.59dBmとなった。
【0064】
これに対し、アンテナ装置の周波数変換装置を図1に示すように構成した場合、局部発振信号の周波数差「floc-r」−「floc-l」によって生じる高調波信号は、−80.51dBm、その高調波信号の2倍の周波数を有する高調波信号は、−93dBmとなった。
【0065】
この結果、図1に示した本実施形態のアンテナ装置によれば、図3に示すように2つの局部発振回路62、52を誘電体共振器にて構成した場合に比べて、周波数変換後の受信信号(つまりIF信号)に影響を与える上記各高調波信号を、それぞれ、約17dB、約28dB改善できることがわかった。
【0066】
従って、本実施形態のアンテナ装置によれば、周波数変換装置4Rに、周波数変換装置4Lと同様の誘電体共振器からなる局部発振回路62を設けた場合に比べて、出力端子Toutから伝送路上に出力される受信信号(IF信号)の信号品質が低下するのを抑制できる。
【0067】
なお、図3に示す周波数変換装置4Rにおいて、周波数変換部60は、誘電体共振器にて構成された局部発振回路62と、局部発振回路62からの局部発振信号と右旋円偏波の受信信号とを混合する混合回路64に加えて、局部発振回路62からの局部発振信号を選択的に通過させる狭帯域のBPF66が設けられている。
【0068】
そして、混合回路64にて周波数変換された受信信号(IF信号)は、LPF68を介して増幅回路70に入力され、増幅回路70にて所定レベルまで増幅された後、LPF18を介して、増幅回路6に出力される。
【0069】
また、図3に示す周波数変換装置4Lにおいても、周波数変換部50に、局部発振回路52からの局部発振信号を選択的に通過させる狭帯域のBPF56が設けられている。そして、混合回路54にて周波数変換された受信信号(IF信号)は、HPF39を介して増幅回路40に入力され、増幅回路40にて所定レベルまで増幅された後、HPF42を介して、増幅回路6に出力される。
【0070】
この構成は、各混合回路64、54に他方の局部発振回路52、62から出力された局部発振信号が回り込むのを防止し、且つ、各混合回路64、54にて周波数変換されたIF信号をより確実に抽出できるようにするためである。
【0071】
しかし、このようにしても、局部発振回路62を誘電体共振器にて構成すると、周波数変換部60から漏れ出す局部発振信号の信号レベルが大きくなるので、上述した高調波信号の信号レベルが大きくなってしまう。
【0072】
次に、図1に示した本実施形態の周波数変換装置4Rにおいては、周波数変換部20を集積回路(IC)にて構成していることから、周波数変換装置4Lに比べて、回路基板に電子部品を実装する面積を小さくすることができ、周波数変換装置全体、延いては、受信部2を含むアンテナ装置のコンバータ部分、を小型化することができる。
【0073】
また、図1に示した本実施形態の周波数変換装置4Lにおいては、周波数変換部50の局部発振回路52を誘電体共振器にて構成していることから、局部発振回路52をPLL発振回路にて構成した場合に比べて、周波数変換されたIF信号の雑音指数が劣化するのを抑えることができる。
【0074】
このため、本実施形態のアンテナ装置によれば、周波数変換装置4R、4Lに設ける局部発振回路22、52の両方をPLL発振回路にて構成した場合に比べ、出力端子Toutから伝送路に出力される受信信号(IF信号)の雑音指数を改善することができる。
【0075】
なお、本実施形態においては、右旋円偏波用の周波数変換装置4Rに設けられる局部発振回路22が、本発明の第1局部発振回路に相当し、左旋円偏波用の周波数変換装置4Lに設けられる局部発振回路52が、本発明の第2局部発振回路に相当する。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内にて種々の態様をとることができる。
例えば、上記実施形態では、右旋円偏波及び左旋円偏波にて送信されてくるBS・CSの各放送電波を受信するアンテナ装置において、各偏波の受信信号をそれぞれIF信号に周波数変換するものについて説明した。しかし、本発明は、一つの人工衛星から異なる偏波方式で送信されてくる放送電波を受信するアンテナ装置であっても、或いは、垂直・水平というように直交する2偏波の電波を受信する受信アンテナであっても、上記実施形態と同様に適用して同様の効果を得ることができる。
【0077】
また、上記実施形態では、受信信号、局部発振信号、及び、IF信号の周波数を、具体例を挙げて説明したが、上記実施形態に記載の周波数は一例であり、周波数変換対象となる信号の周波数に応じて、適宜設定すればよい。
【符号の説明】
【0078】
2…受信部、2L,2R…プローブ、4L,4R…周波数変換装置、6…増幅回路、8,39,42…HPF、Tout…出力端子、12,14,32,33,34…低雑音増幅回路、16,36,56,66…BPF、18,38,68…LPF、20,50,60…周波数変換部、21…水晶振動子、22…局部発振回路(PLL発振回路)、24,28,40,70…増幅回路、26,54,64…混合回路、52,62…局部発振回路(誘電体共振器)。
図1
図2
図3