特許第6491065号(P6491065)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491065
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20190318BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20190318BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   H01F37/00 E
   H01F37/00 M
   H01F37/00 F
   H01F27/32 150
   H01F27/28 154
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-175560(P2015-175560)
(22)【出願日】2015年9月7日
(65)【公開番号】特開2017-54847(P2017-54847A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2017年11月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000219705
【氏名又は名称】東海興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮内 宏之
(72)【発明者】
【氏名】岡田 壮史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智志
(72)【発明者】
【氏名】神川 義一
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−154564(JP,A)
【文献】 特開2009−246220(JP,A)
【文献】 特開2014−192516(JP,A)
【文献】 特開2010−166013(JP,A)
【文献】 実開平05−066935(JP,U)
【文献】 特開2007−103596(JP,A)
【文献】 特開2014−027090(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/065183(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H01F 27/28
H01F 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアにボビンを介してコイルが巻回されたコイルアセンブリと、前記コイルアセンブリを覆う樹脂モールド部と、を備えるリアクトルであって、
前記コイルは、巻回部と、前記巻回部の一端から延出して曲げ部を介して前記巻回部の軸方向に延びるリード部と、を有し、
前記ボビンは、前記巻回部が装着される筒状部と、前記筒状部の一端側に形成されるフランジ部と、前記フランジ部に形成されると共に前記リード部が挿通される孔と、を有し、
前記フランジ部における前記孔に対する縁部は、前記リード部が前記孔に挿通されると共に前記巻回部の端面が前記フランジ部に当接している状態で前記曲げ部が前記フランジ部に当接しない形状に面取りされていることを特徴とするリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リアクトルとして、磁性体の環状のコアに樹脂製のボビンを介して2つのコイルが巻回されたコイルアセンブリと、2つのコイルの外周面の一部を覆う樹脂カバーと、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。コアは、2つのU字型のコアパーツと、2つのコアパーツの間に配置される2つの直方体のブロックコアと、を有する。ボビンは、2つの筒状部が平行となるようにフランジ部によって連結されたボビン本体と、フランジパーツと、を有する。フランジ部には、2つのコイルのリード部を通す2つのリード用スリットが形成されている。コイルアセンブリは、コイルの螺旋状の巻回部がボビン本体の筒状部に装着されると共にコイルのリード部がリード用スリットに通され、フランジパーツが筒状部に取り付けられ、ブロックコアが筒状部内に配置され、コアパーツがその先端面がブロックコアに対向するように筒状部内に挿入されて、構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−130410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のリアクトルのコイルのリード部は、巻回部の一端から延出して曲げ部を介して巻回部の軸方向に延びている。このため、コイルのリード部がリード用スリットに通されると共にコイルの巻回部がボビン本体の筒状部に装着されるときに、コイルの曲げ部がボビン本体のフランジ部におけるリード用スリットに対する縁部に当接すると、それによって、巻回部の端面とフランジ部との間に隙間ができてしまい、リード部のリード用スリットからの突出部分が短くなってしまうことがある。
【0005】
本発明のリアクトルは、コイルのリード部のボビンの孔からの突出部分の長さを精度よく確保することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のリアクトルは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のリアクトルは、
コアにボビンを介してコイルが巻回されたコイルアセンブリと、前記コイルアセンブリを覆う樹脂モールド部と、を備えるリアクトルであって、
前記コイルは、巻回部と、前記巻回部の一端から延出して曲げ部を介して前記巻回部の軸方向に延びるリード部と、を有し、
前記ボビンは、前記巻回部が装着される筒状部と、前記筒状部の一端側に形成されるフランジ部と、前記フランジ部に形成されると共に前記リード部が挿通される孔と、を有し、
前記フランジ部における前記孔に対する縁部は、面取りされており、前記リード部が前記孔に挿通されると共に前記巻回部の端面が前記フランジ部に当接する、
ことを特徴とする。
【0008】
この本発明のリアクトルでは、ボビンのフランジ部における孔に対する縁部は、面取りされており、コイルのリード部が孔に挿通されると共にコイルの巻回部の端面がフランジ部に当接する。言い換えれば、ボビンのフランジ部における孔に対する縁部は、コイルのリード部が孔に挿通されると共にコイルの巻回部の端面がボビンのフランジ部に当接するように巻回部がボビンの筒状部に装着されるときにコイルの曲げ部と当接しないように面取りされているのである。これにより、コイルの巻回部の端面とボビンのフランジ部とを当接させる(両者の間に隙間ができないようにする)ことができ、コイルのリード部の孔からの突出部分の長さを精度よく確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施例としてのリアクトル20の斜視図である。
図2】リアクトル20の分解斜視図である。
図3】ボビン本体31のフランジ部34の孔36a,36b周辺の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明の一実施例としてのリアクトル20の斜視図であり、図2は、リアクトル20の分解斜視図である。また、図2では、樹脂モールド部60については図示を省略した。リアクトル20は、バッテリからの電力をモータに電圧の昇圧を伴って供給する昇圧コンバータの一部などとして構成され、磁性体のコア24に樹脂製のボビン30を介してコイル50a,50bが巻回されたコイルアセンブリ22(図2参照)と、コイルアセンブリ22の大部分を覆う樹脂モールド部60(図1参照)と、を備える。
【0012】
コア24は、U字状の2つのコアパーツ26a,26bと、直方体状の2つのギャップ部材28a,28bと、を有する。コア24は、コアパーツ26a,26bがギャップ部材28a,28bを介して互いの先端面が対向するように配置されることにより、環状に構成される。
【0013】
コイル50a,50bは、1本の平角線に曲げ加工(エッジワイズ曲げ加工)が施されて、互いに巻回方向が同一となり且つ平行に並ぶように形成されている。このコイル50a,50bは、螺旋状の巻回部51a,51bと、巻回部51a,51bの一端から延出して曲げ部54a,54bを介して巻回部51a,51bの軸方向(巻回方向に対して直交する方向)に延びるリード部56a,56bと、を有する。実施例では、曲げ部54a,54bは、所定のアールとなるように形成されている。
【0014】
ボビン30は、ボビン本体31と、フランジパーツ40と、を有する。ボビン本体31は、2つの筒状の筒状部32a,32bと、筒状部32a,32bの一端側に形成されて筒状部32a,32aが平行に並ぶようにこれらを連結するフランジ部34と、を有する。筒状部32a,32bの内側には、上述のギャップ部材28a,28bが配置されると共にコアパーツ26a,26bの端部が挿入される。また、筒状部32a,32bには、コイル50a,50bの巻回部51a,51bが装着される。フランジ部34の図2中下部のうち左右方向の中央には、筒状部32a,32bと同一方向に伸びるように梁35が形成されている。フランジ部34の図2中上部には、コイル50a,50bのリード部56a,56bが挿通される孔36a,36bが形成されている。
【0015】
図3は、ボビン本体31のフランジ部34の孔36a,36b周辺の断面図である。図3では、コイル50a,50bの一部も図示した。図示するように、ボビン本体31のフランジ部34における孔36a,36bに対する図3中左側の縁部38a,38bは、面取りされている。この縁部38a,38bは、コイル50a,50bのリード部56a,56bが孔36a,36bに挿通されると共にコイル50a,50bの巻回部51a,51bの軸方向の一方側(図3中下側)の端面52a,52bがフランジ部34に当接するように巻回部51a,51bが筒状部32a,32bに装着されるときに曲げ部54a,54bと当接しないように面取りされている。例えば、縁部38a,38bは、コイル50a,50bの曲げ部54a,54bの曲率半径が3mm程度のときに、図3中上向きに対して50度程度左側に傾斜するように面取りされている。
【0016】
フランジパーツ40には、筒状部32a,32bが挿通される孔41a,41bと、梁35が挿通されるスリット42と、が形成されている(図2参照)。
【0017】
次に、リアクトル20の製造について説明する。まず、コイル50a,50bのリード部56a,56bをボビン本体31の孔36a,36bに挿通させながらコイル50a,50bの巻回部51a,51bをボビン本体31の筒状部32a,32bに装着する。実施例では、ボビン本体31のフランジ部34における孔36a,36bに対する縁部38a,38bが上述のように面取りされているから、コイル50a,50bの曲げ部54a,54bとフランジ部34に対する縁部38a,38bとが当接しないようにして、コイル50a,50bの端面52a,52bをフランジ部34に当接させることができ、リード部56a,56bの孔36a,36bからの突出部分の長さを精度よく確保することができる。続いて、ボビン本体31のフランジ部34とフランジパーツ40とがコイル50a,50bを介して対向するようにフランジパーツ40の孔41a,41bと孔42とにボビン本体31の筒状部32a,32bと梁35とを挿通させて、フランジパーツ40をボビン本体31に取り付ける。そして、筒状部32a,32b内でコアパーツ26a,26bの先端面がギャップ部材28a,28bを介して対向するようにコアパーツ26a,26bおよびギャップ部材28a,28bを配置する。このようにしてコイルアセンブリ22を製造する。そして、コイルアセンブリ22を成形型に収容し、成形型の注入孔から樹脂を注入して樹脂モールド部60を形成し、リアクトル20を完成する。リード部56a,56bの孔36a,36bからの突出部分の長さを精度よく確保した状態で樹脂モールド部60を形成することにより、リアクトル20の完成時において、リード部56a,56bの孔36a,36bからの突出部分の長さを精度よく確保することができる。
【0018】
ここで、縁部38a,38bの面取りの角度(図3中上向きに対して左側に傾斜する角度)を、コイル50a,50bの曲げ部54a,54bの曲率半径が3mm程度のときに50度程度とした理由について説明する。縁部38a,38bの面取りの角度を比較的小さく(例えば20度〜30度程度など)すると、面取り部分が図3中下側に長くなることになり、樹脂モールド部60の形成時に、孔36a,36bを通って樹脂が外部(図3中下側)に漏れやすくなってしまう。また、縁部38a,38bの面取りの角度を比較的大きく(例えば、70度〜80度程度など)すると、面取り部分が図3中左側に長くなることになり、コイル50a,50bの端面52a,52bとフランジ部34との当接面積が小さくなってしまう。これらの理由によって、実施例では、コイル50a,50bの曲げ部54a,54bの曲率半径が3mm程度のときに縁部38a,38bの面取りの角度を50度程度とした。なお、縁部38a,38bの面取りの角度は、曲げ部54a,54bの曲率半径などに応じて適宜設定される。
【0019】
以上説明した実施例のリアクトル20では、ボビン本体31のフランジ部34における孔36a,36bに対する縁部38a,38bは、面取りされており、コイル50a,50bのリード部56a,56bが孔に挿通されると共にコイル50a,50bの巻回部51a,51bの端面52a,52bがフランジ部34に当接する。言い換えれば、ボビン本体31のフランジ部34における孔36a,36bに対する縁部38a,38bは、コイル50a,50bのリード部56a,56bが孔36a,36bに挿通されると共にコイル50a,50bの巻回部51a,51bの端面52a,52bがフランジ部34に当接するように巻回部51a,51bが筒状部32a,32bに装着されるときにコイル50a,50bの曲げ部54a,54bと当接しないように面取りされているのである。これにより、コイル50a,50bの巻回部51a,51bの端面52a,52bとボビン本体31のフランジ部34とを当接させる(両者の間に隙間ができないようにする)ことができ、コイル50a,50bのリード部56a,56bの孔36a,36bからの突出部分の長さを精度よく確保することができる。
【0020】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、コア24が「コア」に相当し、コイル50a,50bが「コイル」に相当し、コイルアセンブリ22が「コイルアセンブリ」に相当し、樹脂モールド部60が「樹脂モールド部」に相当する。
【0021】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0022】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、リアクトルの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0024】
20 リアクトル、22 コイルアセンブリ、24 コア、26a,26b コアパーツ、28a,28b ギャップ部材、30 ボビン、31 ボビン本体、32a,32b 筒状部、34フランジ部、35 梁、36a,36b 孔、38a,38b 縁部、40 フランジパーツ、41a,41b 孔、42 スリット、50a,50b コイル、51a,51b 巻回部、52a,52b 端面、54a,54b 曲げ部、56a,56b リード部、60 樹脂モールド部。
図1
図2
図3