(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水と、少なくとも第一の立体障害アミンおよび第二の立体障害アミンのアミン混合物とを含む水性溶媒と;スルホン、スルホン誘導体、およびスルホキシドからなる群より選択される有機性共溶媒とを含む、吸収剤組成物であって、
前記吸収剤組成物が、75wt.%から98wt.%の前記水性溶媒と、2wt.%から25wt.%の前記有機性共溶媒とを含み、wt.%は、吸収剤組成物の総重量に基づく、
および、
前記アミン混合物が、180から1000の範囲の平均分子量を有する多分散ポリエチレングリコール(PEG)混合物とt−ブチルアミンのアミノ化反応生成物であり、および
前記PEG混合物が、式HOCH2(CH2OCH2)nCH2OHで示されるポリエチレングリコールを含み、式中nは1から24の範囲の値から選択される整数であり、および
前記PEG混合物が、前記式を有する2以上の異なるPEG化合物を含み、nは1から24の範囲の値から選択される整数であり、および
前記第一の立体障害アミンが、
式:(CH3)3CNH(CH2CH2O)xCH2CH2NHC(CH3)3
で示されるアミン化合物からなる群より選択され、式中xは、3から14の範囲の整数であり;
前記第二の立体障害アミンが、以下の式:
(CH3)3CNH(CH2CH2O)xCH2CH2OH
で示されるアミン化合物からなる群より選択され、式中xは、3から14の範囲の整数であり、および
前記第二の立体障害アミンに対する前記前記第一の立体障害アミンの重量比が、2.5:1〜8:1の範囲である、吸収剤組成物。
前記水性溶媒が、前記吸収剤組成物中に、85wt.%から97.5wt.%の範囲の量で存在し、前記吸収剤組成物中に存在する前記有機性共溶媒が、2.5wt.%から1
5wt.%の範囲の量である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収剤組成物。
前記有機性共溶媒が、置換または非置換シクロテトラメチレンスルホンのいずれかであり、ここでテトラメチレンスルホン環に付加されるアルキル置換基は2つ以下であり、アルキル置換基は1から4個の炭素原子を有する、請求項4に記載の吸収剤組成物。
【背景技術】
【0002】
ガス状混合物からCO
2、H
2S、CS
2、HCN、およびCOSなどの酸性ガスを分離するための所定のアミン化合物およびアミン溶液の使用がガス処理分野において公知である。米国特許第3,347,621号に、ガス状混合物から酸性ガスを分離する初期の方法の1つが開示されている。この特許において開示された方法は、アルカノールアミンおよびスルホンを含む液体吸収剤と、酸性ガス成分を含有するガス混合物とを接触させることを使用している。相当な濃度のH
2S、CO
2、およびCOSを含有するガス状混合物の処理におけるアルカノールアミンおよびスルホンの溶液の使用を開示している他の初期の特許の例としては、米国特許第3,965,244号および米国特許第3,989,811号が挙げられる。
【0003】
後者の特許、すなわち米国特許第4,894,178号では、H
2SおよびCO
2の両方を含有するガス混合物からのH
2Sの選択的な除去における2種の立体障害の大きなアミン(severely hindered amine)の混合物の使用が開示されている。2種の立体障害の大きなアミンの混合物の代表例としては、ビス(第三ブチルアミノエトキシ)−エタン(BTEE)およびエトキシエトキシエタノール−第三ブチルアミン(EEETB)が挙げられる。この混合物は、トリエチレングリコールを1工程で触媒により第三ブチルアミノ化し、第一のアミンと第二のアミンとの重量比が0.43:1から2.3:1の範囲の第一のアミン、例えばBTEE、および第二のアミン、例えばEEETBを生産することにより得られる。
【0004】
米国特許第4,894,178号では、BTEE水溶液の使用に関連する問題の1つは、それらは再生条件下で相分離を起こすことであると示されている。米国特許第4,894,178号ではさらに、EEETBは、CO
2の存在下でH
2Sの選択的な除去に使用できること、さらにBTEEとEEETBとの混合物は、EEETB単独よりもH
2Sに対して優れた選択性とより高い能力をもたらすだけでなく、BTEE水溶液と同じ再生条件下でも相分離しないことが示されている。
【0005】
米国特許第4,894,178号に開示されているアミン混合物を使用する前に、例えば水、有機溶媒、およびそれらの混合物などの液状媒体中に、アミン混合物を含有させてもよいと教示されている。好ましい液状媒体は水を含むが、その他の可能性のある好適な溶媒としては、米国特許第4,112,051号で説明されている物理的な吸収剤が挙げられる。好適な物理的な吸収剤のなかでも特に、例えばスルホランなどのスルホンが挙げられる。液状媒体は、水と有機溶媒との混合物であってもよく、吸収剤を、典型的には吸収剤組成物総量の0.1から5モル/リットル、好ましくは0.5から3モル/リットルの範囲の量で含む。しかしながら、米国特許第4,894,178号では何のモル単位について述べられているのかが不明確である。
【0006】
米国特許第4,961,873号は、米国特許第4,894,178号に開示された混合物に類似した、第一のアミンと第二のアミンとの重量比が0.43:1から2.3:1の範囲の2種の立体障害の大きなアミンの混合物、アミン塩、および/または立体障害の大きなアミノ酸を含む吸収剤組成物を開示している。立体障害の大きなアミン混合物および立体障害の大きなアミン塩および/またはアミノ酸添加剤は、液状媒体に溶解している。吸収剤組成物のアミン混合物および添加剤は、液状媒体に含有させる前、液体吸収剤組成物総量の重量に基づく重量パーセントで、5から70wt%のアミン混合物、約5から40wt%の添加剤、及び残部の水を含む。
【0007】
米国特許第4,894,178号と同様に、米国特許第4,961,873号では、立体障害の大きなアミン混合物を包含する液体吸収剤組成物の使用前に、それを例えば水、有機溶媒、およびそれらの混合物などの液状媒体中に含有させてもよいことが教示されている。好ましい液状媒体は水を含むが、その他の可能性のある好適な溶媒としては、米国特許第4,112,051号で説明されている物理的な吸収剤が挙げられる。好適な物理的な吸収剤のなかでも特に、例えばスルホランなどのスルホンが挙げられる。液状媒体は、水と有機溶媒との混合物であってもよく、吸収剤を、典型的には吸収剤組成物総量の0.1から5モル/リットル、好ましくは0.5から3モル/リットルの範囲の量で含む。しかしながら、米国特許第4,961,873号では何のモル単位について述べられているのかが不明確である。
【0008】
ガス処理の分野において、現在、通常ガス状の炭化水素ストリーム中に含有される酸性のガス状成分の除去において有用な新規の改善された吸収剤組成物を発見する努力がなされている。いくつかのガス処理用途に関して、CO
2の除去を最小化しながらこのようなガス混合物からH
2Sが選択的に除去されるように、CO
2およびH
2Sの両方を含有するガス混合物を処理することが望ましい場合がある。時には、H
2Sの選択的な除去のために処理されるガスストリームがすでに、そのCO
2濃度に対して低い濃度のH
2S(さらに低減させる必要がある)を有し得る。このような処理しようとする処理ガスストリームの一例としては、クラウステールガスが挙げられる。これらのテールガスストリームは典型的には高濃度の二酸化炭素を有するが、比較的低濃度の硫化水素を有することから、H
2Sを選択的に除去することによって、クラウス硫黄ユニットに導入するための濃縮H
2Sストリームを供給することが望ましい場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の吸収組成物は、硫化水素と二酸化炭素とを含むガス状混合物からの硫化水素の選択的な吸収において特に有用である。本組成物はさらに、硫化水素(H
2S)に加えて他の酸性ガスの吸収除去にも応用できる。
【0017】
本発明の組成物の使用により処理しようとするガスストリームは、多種多様のガス状混合物源から得ることができる。ガス状混合物は、瀝青砂の高温分解を含む処理によって生成した炭化水素含有ガス、ならびに製油所のコークス器および分解ユニットで生産されるかまたは生成した、さらに他の原油の精製操作によって生産されるかまたは生成した炭化水素含有ガスを包含し得る。また所定濃度の上述した化合物などの酸性化合物を有する天然ガスストリームも、本発明の組成物で処理することができる。
【0018】
さらに本組成物は、極めて低濃度の炭化水素を含有するガスストリームを処理するのに使用でき、さらには炭化水素の物質的濃度がゼロかまたは実質的にゼロに等しい濃度のガスストリーム、またはそれとは別に炭化水素が物質的に存在しないガスストリームを処理するのにも使用できる。このような炭化水素濃度が極めて低いガスストリームの一例は、存在するとすれば、クラウスユニットのテールガスストリームである。
【0019】
CO
2に対してH
2S吸収への選択性が高く、さらにH
2S貯蔵能力が高いために、本発明の吸収剤組成物は、特にクラウステールガスストリームの処理において有用である。クラウステールガスストリームは、典型的にはそれらの二酸化炭素濃度と比較して低い濃度のH
2Sを有するが、ストリームを燃焼させたりまたは雰囲気に放出したりするにはこのようなH
2S濃度は高すぎる傾向がある。それゆえに、テールガスストリームから相当部分のH
2Sを除去して、除去されたH
2Sをクラウスユニットへの再利用フィードとして使用することが望ましい場合がある。しかしながら、典型的には、回収されたH
2Sと共にCO
2をクラウスユニットに再利用することは望ましくなく、これはなぜなら、CO
2は不変のままユニットを通過して蓄積するためである。
【0020】
クラウスユニットのテールガスストリームは、典型的には、約0.2vol.%(2,000ppmv)から約4vol.%(40,000ppmv)の範囲のH
2S濃度を有する可能性がある。より具体的には、H
2S濃度は、4,000ppmvから15,000ppmvの範囲であってもよく、さらには6,000ppmvから12,000ppmvの範囲であってもよい。
【0021】
テールガスストリームのCO
2濃度は、場合により、クラウスユニットの熱工程で使用される具体的な燃焼ガスに応じて、ガスストリームの最大90vol.%の範囲であってもよい。例えば、H
2Sを燃焼させるためのクラウスユニットの熱工程で純酸素の燃焼ガスが使用される場合、テールガス中の窒素は極めてわずかであり、CO
2は極めて高濃度であることが予想される。しかしながら燃焼ガスとして空気が使用される場合、テールガス中のCO
2濃度はそれよりもかなり低く、N
2濃度がテールガスの主成分になると予想される。一般的に、テールガス中のCO
2濃度はそのH
2S濃度よりも顕著に高く、テールガスのCO
2濃度は1vol.%(10,000ppmv)から60vol.%の範囲であり得る。より特定には、CO
2濃度は、2vol.%から50vol.%、または3vol.%から40vol.%の範囲である。
【0022】
空気がクラウスユニットの熱工程の燃焼ガスである典型的なケースにおいて、テールガスストリームの大部分として分子状窒素(N
2)が包含され、その濃度範囲は典型的には40から80vol.%である。
【0023】
本吸収剤組成物は、100体積百万分率(ppmv)未満の極めて低いH
2S濃度を有する処理済みテールガスを提供するが、より具体的には、処理済みテールガスのH
2S濃度は、50ppmv未満である。処理済みテールガス中のH
2S濃度は、好ましくは25ppmv未満であり、より好ましくは10ppmv未満である。処理済みテールガスのH
2S濃度の実用的な下限は、1ppmvであり、より典型的には約5ppmvよりも高いが、当然ながら、一般的には、処理済みテールガスが可能な限り最も低いH
2S濃度を有することが望ましい。
【0024】
本発明の吸収剤組成物の必須の成分は、吸収剤組成物の水性溶媒成分の1つとして包含されるアミン化合物の混合物である。アミンの特定の混合物およびその特性が、本発明の吸収剤組成物の特殊な選択性および吸収特徴にある程度寄与すると考えられる。
【0025】
水性溶媒および吸収剤組成物のアミン混合物成分は、アミノ化反応生成物である。アミノ化反応生成物は、好ましくは式(CH
3)
3CNH
2で示されるtert−ブチルアミンであるアミン化合物と、以下の式:
HOCH
2(CH
2OCH
2)
nCH
2OH
で示されるようなポリエチレングリコール(式中nは、整数である)との好適な反応条件下での触媒反応(本明細書の他所でより詳細に説明される)によって調製される。
【0026】
アミン混合物またはアミノ化反応生成物の特性の1つは、アミン混合物の調製で使用されるポリエチレングリコール(本明細書では「PEG」ともいう)反応物の特徴に起因する。PEG反応物は、1種のPEG分子からなるのではなく、1種よりも多くのPEG分子を含む。
【0027】
好ましくは、アミノ化反応生成物の調製で使用されるPEG反応物は、上述の式で示される異なるPEG分子の2種またはそれより多くの分布を含む混合物であり、ここで、個々のPEG分子のそれぞれに関して整数nは異なる値である。それゆえに、アミン混合物は、tert−ブチルアミンと単一分子のPEG、例えばトリエチレングリコールとの反応生成物ではなく、tert−ブチルアミンと所定の分布を有するPEG分子化合物との反応生成物である。
【0028】
アミノ化反応生成物の調製に使用されるPEG化合物の混合物は、典型的には2種またはそれより多くの上述の式で示される異なるPEG化合物を包含し、ここで式中nは、1から24の範囲の値から選択される整数である。PEG混合物にとって、上述の式で示される2種またはそれより多くの分子を含むことが好ましく、ここで整数nは、2から20の整数の範囲、好ましくは2から18の整数の範囲、最も好ましくは3から15の整数の範囲から選択される。
【0029】
反応物として使用されるPEG化合物の混合物は、一般的に、180から1,000の範囲の平均分子量を有すると予想される。したがって、アミノ化反応生成物の調製において反応物として使用されるPEG化合物の混合物中の個々のPEG分子とそれらの相対濃度を組み合わせることによって、例えば提示された180から1,000の範囲の平均分子量を有するPEG化合物の混合物を提供することができる。アミノ化反応生成物の調製における反応物として使用されるPEG混合物にとって、約180から約400の範囲の平均分子量を有することが好ましく、平均分子量は、より好ましくは200から300の範囲である。
【0030】
本明細書で使用されるような平均分子量は、PEG混合物の各PEG分子の分子量を測定して、重さを合計して、次いでPEG混合物のPEG分子の数で割ることによって決定された数平均分子量である。
【0031】
本発明のアミン混合物を調製するためのアミノ化反応は、好適なアミノ化反応条件下で反応物、すなわちtert−ブチルアミン、PEG混合物、および水素を本発明のアミノ化触媒と接触させて、アミン混合物、すなわちアミノ化反応生成物を得ることによって実行される。
【0032】
本発明で必要な特性および特徴を有するアミン混合物を供給することにおいて、この触媒反応で使用するためのアミノ化触媒の選択は重要である。本発明の独特なアミン混合物の提供は、PEG反応物の特徴および特性と、アミノ化反応で使用されるアミノ化触媒の特徴および特性との組み合わせにより達成される。それゆえに、アミノ化触媒の組成および他の特徴は、本発明の臨界的な形態でなければ、重要である可能性がある。
【0033】
アミン混合物の調製で使用されるアミノ化触媒は、触媒活性を有する金属成分を含有し、このような金属成分としては、例えば、ニッケル(Ni)成分、銅(Cu)成分、およびジルコニウム(Zr)成分もしくはクロム(Cr)成分のいずれかまたはその両方、ならびに任意に、好ましくはスズ(Sn)成分などが挙げられる。場合によっては、コバルト(Co)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、またはレニウム(Re)またはそれらの1種またはそれより多くのあらゆる組み合わせのような金属が物質的に存在しないか、または実質的に存在しないか、または存在しないことが、アミノ化触媒にとって望ましい可能性がある。アミノ化触媒の所定の他の実施態様において、ジルコニウムまたはクロムの金属成分のうちどちらか一方だけが物質的に存在しないか、または実質的に存在しないか、または存在しない。
【0034】
アミン混合物の調製に使用できる考えられるアミノ化触媒組成物が、米国特許第4,152,353号;米国特許第6,057,442号;米国特許第7,196,033号;および米国特許第7,683,007号で開示され、説明されており、これらの開示は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0035】
本発明のより具体的な実施態様において、アミノ化触媒は:40から90wt.%のニッケル;4から40wt.%の銅;および1から50wt.%のジルコニウムもしくはクロムのいずれか、またはジルコニウムおよびクロム両方の組み合わせを含む。アミノ化触媒は、0.2から20wt.%のスズをさらに含んでいてもよいし、好ましくは0.2から20wt.%のスズを含む。
【0036】
本発明のアミン混合物の調製に好適に使用できるのであれば、本発明のアミノ化触媒は、これまでに説明した組成の触媒を作製する分野の当業者公知の様々な方法のどれを用いて調製してもよい。アミノ化触媒を調製する方法の一例は、金属(ニッケル、銅、ジルコニウム、クロム、およびスズ)成分の水酸化物、炭酸塩、酸化物、または他の塩の粉末化した混合物を、本明細書で定義されるような組成物が提供されるような比率の水で解膠させ、その後、得られた組成物を押出し成形して、熱処理することによる方法である。
【0037】
アミノ化反応は、あらゆる好適な反応器の配置または形状で、望ましいアミノ化反応生成物をもたらすあらゆる好適な反応条件下で行うことができる。アミノ化反応を実行するための考えられる反応器の例としては、固定床反応器、流動床反応器、連続撹拌反応器、およびバッチ反応器が挙げられる。
【0038】
第一の立体障害アミンは、以下の式:
(CH
3)
3CNH(CH
2CH
2O)
xCH
2CH
2NHC(CH
3)
3
で示されるアミン化合物からなる群より選択され、式中xは、2から16、好ましくは3から14の範囲の整数である。
【0039】
第二の立体障害アミンは、以下の式:
(CH
3)
3CNH(CH
2CH
2O)
xCH
2CH
2OH
で示されるアミン化合物からなる群より選択され、式中xは、2から16、好ましくは3から14の範囲の整数である。
【0040】
本発明の所定の実施態様において、アミン混合物中に含有される第一の立体障害アミンと第二の立体障害アミンとの重量比は、最大10:1の範囲であってもよい。他のケースでは、吸収剤組成物のアミン混合物において、第一の立体障害アミンと第二の立体障害アミンとの重量比は、2.5:1から8:1、好ましくは2.8:1から7:1、より好ましくは3:1から6:1の範囲であってもよい。
【0041】
本発明の一実施態様において、吸収剤組成物の成分である水性溶媒を供給または形成するために、吸収剤組成物は、上記で説明したようにアミン混合物を水と組み合わせて含む。
【0042】
水性溶媒のアミン混合物成分は、一般的には20wt.%から70wt.%の範囲の量で存在し、水分は、一般的には30wt.%から80wt.%の範囲の量で存在する。これらの成分に関して列挙された重量パーセント値は、水性溶媒の総重量に基づくか、またはアミン混合物と水との総重量に基づく。
【0043】
水性溶媒は、25wt.%から65wt.%のアミン混合物、または35wt.%から55wt.%のアミン混合物を含むことが好ましい。アミン混合物は、水性溶媒中に、40wt.%から50wt.%の範囲で存在することがより好ましい。
【0044】
水性溶媒の含水量は、好ましくは、35wt.%から75wt.%、または45wt.%から65wt.%の範囲であってもよく、より好ましくは、含水量は50wt.%から60wt.%である。
【0045】
ガス混合物の吸収処理にアミン混合物または水性溶媒の使用に関連する問題の1つは、アミン混合物または水性溶媒にとって再生温度の範囲内の温度で数種の相に分離することであることが発見された。アミン混合物または水性溶媒は、所定濃度の酸性ガスを有するガスストリームを処理してそれからガスを除去する処理で使用できる。これらの処理は、ガスストリームを処理するシステムに使用することが可能であり、ここでこのようなシステムは、接触塔と、通常リボイラーを備える再生塔を包含する再生器システムとを包含する。
【0046】
処理システムの接触塔は、希薄アミン混合物または希薄水性溶媒を、所定濃度の例えばH
2Sなどの1種またはそれより多くの酸性ガス成分を有するガスストリームまたは混合物と接触させて、処理済みガスストリームと、H
2S豊富なアミン混合物またはH
2S豊富な水性溶媒とを得るための手段を提供する。再生器システムは、H
2S豊富なアミン混合物またはH
2S豊富な水性溶媒を受け取りそれらを再生して、接触塔に導入してそこで使用するためのH
2Sが希薄なアミン混合物またはH
2Sが希薄な水性溶媒を得るための手段を提供する。
【0047】
再生器システムは、典型的には、H
2S豊富なアミン混合物またはH
2S豊富な水性溶媒から、吸収された酸性ガス成分を分離するための手段を提供する再生塔を包含する。アミン混合物または水性溶媒に熱を導入したり、別の方式で再生器システムを稼働させるために熱エネルギーを供給したりするための手段を提供するリボイラーを、再生塔に作動可能なように連結または連通させる。再生システム稼働中、再生温度は、再生器の稼働圧力、および再生されるアミン混合物または水性溶媒の組成に応じて様々であってもよい。
【0048】
再生温度は、典型的には80℃から150℃の範囲内である。より具体的な再生温度は、85℃から140℃の範囲であり、特により具体的には、再生温度は、90℃から130℃の範囲である。
【0049】
前述したように、所定の高温条件で、アミン混合物および水性溶媒組成物は、2つまたはそれより多くの液相に分離する傾向があることが発見された。特に、アミン混合物または水性溶媒は、上述の再生器システムが稼働する条件下で相分離すると考えられる。従来技術の所定の教示では、本明細書において定義されたアミン混合物とは異なる立体障害の大きなアミンの様々な混合物は再生条件下で相分離しないと示されていたために、この相分離現象は予想外である。相分離は望ましくなく、所定の稼働に関する問題を引き起こす可能性があるか、または少なくともガス処理システムの稼働コストをより高くする原因となり得る。
【0050】
しかしながら、アミン混合物および水性溶媒を用いる場合に起こる相分離に関連する所定の問題は、有機性共溶媒の使用および適用によって解決される可能性があることが見出された。したがって、本明細書で説明されているようなアミン混合物および水性溶媒よりもさらに改善された吸収剤組成物は、アミン混合物または水性溶媒の個々の成分の混和性を促進するのに効果的な濃度で、アミン混合物または水性溶媒と共に所定量の有機性共溶媒を取り入れることによって提供される。
【0051】
具体的な有機性共溶媒は、好適には、スルホン、スルホン誘導体、およびスルホキシドからなる有機化合物の群より選択されてもよい。これらの化合物は、米国特許第4,112,051号;米国特許第3,347,621号;および米国特許第3,989,811号(これらの特許は全て、参照により本明細書に組み入れられる)で極めて詳細に定義され説明されている。好ましい有機性共溶媒はスルホンであり、スルホンのなかでも特に、置換または非置換シクロテトラメチレンスルホン(スルホラン)がより好ましい。最も好ましいスルホンは、スルホランである。
【0052】
本発明の吸収組成物のスルホン化合物は、一般式:
【0054】
を有し、式中、R置換基のうち少なくとも4つが水素ラジカルであり、残り全てのRは1から4個の炭素原子を有するアルキル基である。テトラメチレンスルホン環に付加されるアルキル置換基は2つ以下であることが好ましい。
【0055】
好適なスルホン誘導体としては、2−メチルテトラメチレンスルホン;3−メチルテトラメチレンスルホン;2,3−ジメチルテトラメチレンスルホン;2,4−ジメチルテトラメチレンスルホン;3,4−ジメチルテトラメチレンスルホン;2,5−ジメチルテトラメチレンスルホン;3−エチルテトラメチレンスルホン;2−メチル−5−プロピルテトラメチレンスルホン、加えてそれらの類似体および同族体が挙げられる。
【0056】
それゆえに、本発明の吸収剤組成物の実施態様は、有機性共溶媒と、本明細書で説明されているようにアミン混合物および水を包含する水性溶媒との組み合わせを包含し得る。
【0057】
吸収剤組成物の水性溶媒成分は、約75wt.%から約98wt.%の範囲の量で存在していてもよく、ここで重量パーセントは、吸収剤組成物(すなわち水性溶媒+有機性共溶媒)の総重量に基づく。水性溶媒成分が、好ましくは85wt.%から97.5wt.%の範囲の濃度で存在し、より好ましくは90wt.%から97wt.%、最も好ましくは92wt.%から96.5wt.%の範囲の濃度で存在する。
【0058】
吸収剤組成物の有機性共溶媒の成分に関して、吸収剤組成物中に存在する量は、特にこのような成分が少なくとも部分的に不混和性となる高温で水性溶媒成分の混和性を促進するのに効果的になるような量と予想される。この有機性共溶媒の濃度レベルは、約2wt.%から約25wt.%の範囲であってもよく、ここで重量パーセントは、吸収剤組成物の総重量に基づく。
【0059】
吸収剤組成物中の有機性共溶媒の好ましい濃度は、2.5wt.%から15wt.%、より好ましくは3wt.%から10wt.%、最も好ましくは3.5wt.%から8wt.%の範囲である。
【0060】
本発明の吸収剤組成物は、酸性ガス成分を吸収除去することによる、酸性ガス成分を含むガス状混合物の処理において有用である。吸収剤組成物は、H
2SおよびCO
2の両方を含むガス状ストリームからのH
2Sの選択的な除去において特に有用である。これは、吸収条件下で、典型的には吸収器または接触用容器を利用することにより、ガス状ストリームと吸収剤組成物とを接触させることによって達成される。吸収器は、ガス状ストリームからのH
2Sの選択的な吸収および除去に好適な接触または吸収処理条件下で操作される。
【0061】
一般的に、吸収工程は、接触または吸収ゾーンを画定する細長い接触または吸収容器の下の部分にガス状ストリームを供給することによって行われる。接触または吸収ゾーンは、典型的には、接触用トレイもしくはパッキング(packing)、または吸収剤組成物とガス状ストリームとの接触を促進する他のあらゆる好適な手段を備えている。
【0062】
H
2Sが希薄な吸収剤組成物は、細長い容器の上の部分に導入され、容器の下の部分に導入されるガス状ストリームと向流的に流動する。吸収剤組成物が接触用容器を通過するときに、吸収剤組成物がガス状ストリームと接触して、ガス状ストリームからH
2Sが選択的に除去される。H
2S濃度が低下した処理済みガスストリームは、容器の上部端から得られ、H
2S豊富な吸収剤組成物は、容器の下の部分から得られる。
【0063】
H
2Sが希薄な吸収剤組成物の注入口温度、したがってH
2Sが希薄な吸収剤組成物とガス状混合物との接触温度は、典型的には約5℃から約50℃、より典型的には10℃から45℃の範囲である。
【0064】
吸収容器の稼働圧力は、典型的には5psiaから2,000psiaの範囲であるが、より適切には20から1,500psiaの範囲である。
【0065】
吸収器からのH
2S豊富な吸収組成物は、吸収器や接触器で使用するためのH
2Sが希薄な吸収剤組成物を供給するあらゆる好適な手段または方法によって再生が可能である。典型的な再生工程の1つでは、H
2S豊富な吸収組成物を、H
2S豊富な吸収組成物を受け取りそれらを再生するための再生システムの再生器の容器に導入して、H
2Sが希薄な吸収剤組成物を得る。再生器の容器は、H
2S豊富な吸収組成物が導入される再生ゾーンを画定し、再生器の容器は、吸収されたH
2SをそこからストリッピングすることによりH
2S豊富な吸収組成物を再生するための手段を提供する。
【0066】
再生器は、典型的には、H
2S豊富な吸収組成物からH
2Sおよび他の酸性ガス成分をストリッピングするための熱エネルギーを供給するリボイラーを備えている。再生温度は、典型的には80℃または約80℃から170℃または約170℃、より典型的には85℃から140℃の範囲である。
【0067】
再生圧力は、典型的には1psiaから50psia、より典型的には15psiaから40psia、最も典型的には20psiaから35psiaの範囲である。
【0068】
本発明の一実施態様において、硫化水素と二酸化炭素とを含むガスストリームから硫化水素を選択的に除去する処理を改善する方法が提供される。これらの処理において、酸性ガス成分含有ガスストリームを処理するのに所定の従来の吸収および再生処理システムが使用される。これらの処理システムは、典型的には、H
2Sが希薄なアミンとH
2S豊富なアミンとを包含する一連のアミン吸収剤を含有する。本処理システムはさらに、H
2Sが希薄な吸収剤とガスストリームとを接触させて、処理済みガスストリームとH
2S豊富な吸収剤とを得るための接触塔、および接触塔からH
2S豊富な吸収剤を受け取りそれらを再生して、接触塔に導入されるH
2Sが希薄な吸収剤を得るための再生器を包含する。この処理は、アミン吸収剤を供給するか、またはアミン吸収剤を本発明の吸収剤組成物で置き換えることのいずれかによって改善される。
【0069】
したがって、本発明の一実施態様において、硫化水素と二酸化炭素とを含有するガスストリームから硫化水素を選択的に除去するためのアミン吸収剤組成物を利用する処理を改善する方法が提供される。この方法において、本発明の吸収剤組成物は、本明細書で詳細に説明されているように、本明細書の他所でより詳細に説明されているような方式および方法によってガスストリームの吸収処理に供給されて利用される。
【0070】
ここで、硫化水素と二酸化炭素とを含有するガス状ストリームを処理して、特に、ガス状ストリームから硫化水素を選択的に除去して、硫化水素濃度が低下した処理済みガスを得るための吸収−再生システム10の図式的な流れ図である
図1を参照する。処理しようとするH
2SおよびCO
2を含むガス状ストリームは、コンジット12を経由して送られ、続いて好ましくは接触器/吸収器18の下の部分16に導入される。
【0071】
接触器/吸収器18は、接触/吸収ゾーン20を画定し、ここでH
2Sが希薄な吸収剤組成物によってガス状ストリームからH
2Sが選択的に吸収される吸収条件下で、本発明のH
2Sが希薄な吸収剤組成物とガス状ストリームとが接触する。
【0072】
H
2Sが希薄な吸収剤組成物は、コンジット22を経由して送られ、好ましくは接触器/吸収器18の上の部分24の接触/吸収ゾーン20に導入される。H
2Sが希薄な吸収剤組成物が接触/吸収ゾーン20を通過し、そこでこの組成物が、同様に接触/吸収ゾーン20を通過するガス状ストリームと向流様式で接触することにより、ガス状ストリーム中に含有されるH
2Sが選択的に吸収される。
【0073】
H
2S濃度が低下した処理済みガスストリームが生成し、接触/吸収ゾーン20から引き出されて、コンジット28を経由して下流に送られる。H
2S豊富な吸収剤組成物が生成し、接触/吸収ゾーン20から引き出されて、コンジット30を経由して、ポンプ32に送られ、ここでポンプ32は、ポンプ注送ゾーンを画定し、H
2S豊富な吸収剤組成物に圧力エネルギーを付与してそれらを運搬するための手段を提供する。
【0074】
H
2S豊富な吸収剤組成物は、再生器40で定められる再生ゾーン38に導入するためのポンプ32からコンジット36を経由して送られる。再生器40は、H
2S豊富な吸収剤組成物を受け取りそれらを再生して、H
2Sが希薄な吸収剤組成物とH
2Sを含む排ガスとを得るための手段を提供する。典型的には、H
2S豊富な吸収剤組成物は再生ゾーン38を介して下方に流動し、コンジット46を介して再生器40の下の部分42から出る。
【0075】
次いでボトムストリームは再生ゾーン38からリボイラー48に送られる。リボイラー48は、再沸騰ゾーン(示さず)を画定し、ここでボトムストリームの一部(主に水)を蒸発させてそこからH
2Sを追い出すのに使用するための熱エネルギーが導入される。リボイラー48としてあらゆる好適なタイプの当業者公知のリボイラーを使用できるが、代表的な例としては、内部堰50を有するケトル型リボイラーが挙げられ、この内部堰50は、リボイラー48内で、内部堰50の一方の側の液体収容セクション52と内部堰50の他方の側のリボイラーのサンプセクション54とを画定する。熱エネルギーは、水蒸気コイル56を介して送られて液体収容セクション52に導入される。蒸気は、H
2Sおよび水を含む可能性があり、リボイラー48からコンジット58を経由して再生器40の下の部分42に送られる。
【0076】
H
2Sを含む排ガスストリームが生成し、コンジット62を経由して再生器40から送られる。リボイラーのサンプセクション54から熱いH
2Sが希薄な吸収剤組成物が引き出され、コンジット64を経由してポンプ66に送られる。コンジット64の途中に熱交換器70が存在する。熱交換器70は、熱伝達ゾーンを画定し、好ましくは冷却管72を通過する冷却水との間接的な熱交換により熱いH
2Sが希薄な吸収剤組成物を冷却するための手段を提供し、そうすることにより、冷却されたH
2Sが希薄な吸収剤組成物がポンプ66に送られる。冷却されたH
2Sが希薄な吸収剤組成物を接触器/吸収器18の接触/吸収ゾーン20に導入してそれらを再使用するために、コンジット22を経由して冷却されたH
2Sが希薄な吸収剤組成物を運搬するためにポンプ66が備えられている。
【0077】
以下の実施例は、本発明の所定の実施態様を例示するために示したものであって、これらは、いかなる観点においても本発明を限定するものとしてみなされるべきではない。
【実施例】
【0078】
実施例1
この実施例1は、本発明の吸収剤組成物の様々な実施態様の所定の相分離の特徴、および高温での相分離に対する有機性共溶媒(スルホラン)の作用を試験する実験を説明している。表1に試験結果を示す。
【0079】
この実施例1および本明細書に記載の他の実施例に係る組成物を調製するのに使用されるアミン混合物は、本明細書で説明されているようなニッケルアミノ化触媒の存在下で、200℃の反応温度および2,000psigの反応圧力で、tert−ブチルアミンと、平均分子量が180から1000の範囲の多分散ポリエチレングリコール(PEG)の混合物、特に平均分子量が約240のPEG混合物とを触媒反応させることによって調製されたアミノ化反応生成物であった。
【0080】
アミン混合物、水、および有機性共溶媒のスルホランの様々な溶液を調製し、密封したガラスチューブに入れた。全ての溶液は透明であり、室温では単一の相を示した。密封したガラスチューブをシリコーンオイル槽に入れて加熱した。溶液の温度が増加するにつれて、多くが濁り始め、様々な温度で相分離を示した。
【0081】
表1に、試験された様々な溶液または吸収剤組成物の組成、およびそれぞれにおいて数種の液相への分離が観察された温度を示す。この場合、少なくとも120℃よりも高温で成分の液体−液体相分離が起こらないことが望ましい。
【0082】
【表1】
【0083】
この実施例は、水性溶媒(すなわちアミン混合物および水)は、高い温度範囲にわたり相分離することを示す。この実施例はさらに、液体の相分離は、吸収剤組成物(溶液)のアミン混合物成分の様々な濃度にわたり起こることも実証する。データから、アミン混合物成分の濃度が約20wt.%の溶液は、単一の液相を維持するためにはより多くの共溶媒を必要とすることが示される。これは、サンプル番号3、11、および12の結果で示される。このようなアミン混合物成分の濃度レベルでは、高温で相分離を防ぐかまたは単一の相を維持するのに必要な共溶媒の量は、5wt.%から9wt.%の範囲である。
【0084】
実施例2
この実施例は、数種の異なる吸収剤組成物について液体−液体の相分離が起こる温度を決定するのに使用される実験のための器具および手順を説明しており、さらに実験結果を示す。
【0085】
実験を行うのに使用される実験ユニットには、吸収器、水蒸気が供給されるケトル型リボイラーと関連するポンプとを備えた再生器、交換器、および機器が包含される。ケトル型リボイラーのオーバーフローセクション(サンプセクション)からの出口に、吸収剤組成物用のサンプルポイントを配置した。
【0086】
実験ユニットのケトル型リボイラーは、加熱ゾーンを画定した。加熱ゾーン内に、一方の側で内部堰の高さに液体のレベルを維持する内部堰を設けた。したがって、内部堰の逆側で、液体の体積に合わせて、液体をケトル型リボイラーのサンプセクションにオーバーフローさせるように内部堰を設けた。サンプセクションから、接触吸収器に移動させ運搬するために液体を引き出した。内部堰の後ろに存在する所定体積の液体を通過した水蒸気を受け取り、そこを通過させることができる加熱コイルを設けた。またケトル型リボイラーには、加熱ゾーンから蒸気を引き出し実験ユニットの再生器へそれらを運搬するための出口コンジットも設けた。
【0087】
溶媒をシステムに循環させながら、吸収器圧力が8から11.5psigの範囲(中央値は8.7psig)になり、再生器圧力が6.9から11psigの範囲(中央値は9.4psig)になり、吸収器への希薄溶媒の温度がおよそ70℃になるように実験ユニットを稼働させた。
【0088】
所定体積の液体中に複数の液相が形成されたこの実施例2の実験では、少なくとも軽質の相と重質の相とが形成され、重質の相の上に軽質の相が存在した状態になっていると考えられる。軽質の相は、内部堰からケトル型リボイラーのサンプセクションにオーバーフローすると予想された。このメカニズムは、加熱したときに吸収剤溶液が数種の液相に分離する前および分離した後に、吸収剤組成物の液相の組成が異なることの原因である。
【0089】
表2に吸収剤溶液の組成および試験結果を示す。
【0090】
試行番号1
溶液番号1(45%のアミン混合物、55%の水、スルホランなし)を実験ユニットに入れて循環させた。リボイラー温度が93℃に達したら、サンプルをリボイラーの内部堰のオーバーフロー区画から取り出し、標準酸溶液で滴定した。内部堰のオーバーフロー区画からサンプリングした溶液の滴定により、22mlの酸が消費された。溶液の循環をリボイラー温度が113℃に達するまで続けた。リボイラーが113℃の温度のときに内部堰のオーバーフロー区画からサンプリングした溶液の滴定により、10mlの酸が消費された。これらのデータから、溶液、すなわち本発明のアミン混合物と水とを含む水性溶媒は、例えばスルホランなどの有機性共溶媒が存在しない場合、93℃よりも高く113℃未満の温度でまたは113℃で少なくとも2つの液相に分離したことが示される。
【0091】
試行番号2
溶液番号2(42.8%のアミン混合物、52.4%の水、4.8wt.%のスルホラン)を実験ユニットに入れて循環させた。リボイラー温度が87℃に達したら、サンプルをリボイラーの内部堰のオーバーフロー区画から取り出し、標準酸溶液で滴定した。内部堰のオーバーフロー区画からサンプリングした溶液の滴定により、21.7mlの酸が消費された。溶液の循環をリボイラー温度が120℃に達するまで続けた。内部堰のオーバーフロー区画からサンプリングした溶液の滴定により、10.5mlの酸が消費された。これらのデータから、液体が、87℃よりも高温で、少なくとも120℃の温度でまたは120℃未満の温度で相分離したこと、および4.8wt.%のスルホランは溶液の相分離を防ぐには十分ではないことが示される。
【0092】
試行番号3
溶液番号3(40.9%のアミン溶液、50の水、9.1wt.%のスルホラン)を実験ユニットに入れて循環させた。システムに溶液を循環させる間、リボイラー温度がおよそ120℃のときに、リボイラーのオーバーフロー内部堰からサンプルを定期的な間隔で取り出し、標準酸溶液で滴定した。リボイラー温度が120.8℃のとき、溶液の第一のサンプルの滴定により20.5mlの酸が消費された。さらに30分、41分、167分、および284分後にそれぞれ採取された溶液サンプルの滴定により、20mlの酸、20.1mlの酸、20mlの酸、および19.9mlの酸が消費された。
【0093】
これらのデータから、溶液中における9.1wt.%のスルホラン共溶媒の使用が、約120℃の典型的なリボイラー温度で溶液の相分離を防いだこと、および液体−液体相分離の予防が長期にわたり維持されたことが示される。
【0094】
試行番号4
溶液番号4(42.3%のアミン溶液、51.7%の水、6wt.%のスルホラン)を実験ユニットに入れて循環させた。溶液のサンプルが室温になったときに、それを標準酸溶液で滴定したところ、20mlの酸が消費された。溶液をシステムに循環させた。リボイラー温度が113℃に達したら、サンプルをリボイラーの内部堰のオーバーフロー区画から採取し、標準酸溶液で滴定した。サンプリングした溶液の滴定により、19.9mlの酸が消費された。これらのデータから、6wt.%のスルホランは、溶液の液相を単一の相に維持して、溶液の液体−液体相分離を予防するのに十分であったことが示される。
【0095】
【表2】
【0096】
上記に示したデータから、所定濃度の酸性ガス成分を有するガスストリームを処理するための吸収/再生システム内における吸収剤組成物の液体−液体相分離は、典型的なリボイラー稼働温度で起こることが示される。またデータから、例えばスルホン、スルホランなどの有機性共溶媒の使用または適用は、高温で起こると予想される吸収剤組成物のアミン混合物成分の相分離を防ぐことができることも示される。成分として本発明のアミン混合物と水とを包含する所定の水性溶媒の場合、約5wt.%から約10wt.%の範囲のスルホラン濃度が、高温における成分の混和性をもたらし、吸収剤の成分の相分離抑制に寄与する。
【0097】
実施例3
この実施例は、H
2SとCO
2とを含有するガスストリームから、CO
2に対してH
2Sを除去することにおいて、比較用吸収剤であるN−メチルジエタノールアミン(MDEA)と比べて本発明の吸収剤組成物の所定の選択性を測定するのに使用される実験のための器具および手順を説明する。
【0098】
撹拌式のセル型吸収容器を使用して、実験を行った。反応器の容器は、液相サンプルポート、蒸気および液相のための調節可能な撹拌パドル、加熱ジャケット、熱電対ポート、ガス注入口およびガス出口を備えた1リットルのガラス製反応器であった。
【0099】
実験を行う際に、ガラス容器を750ml(周囲温度で)の吸収剤組成物(本発明のアミン混合物またはMDEAのいずれか)で充填し、約250mlの蒸気分の体積を残した。100rpmの速度で蒸気および液相を撹拌する間、液体表面を静かで平らな境界面として維持した。温度をおよそ25℃に維持した。
【0100】
89モル%の窒素、1モル%のH
2S、および10モル%のCO
2を含む容器の注入口ポートにガスを導入した。出口ガスストリームのH
2SおよびCO
2濃度をモニターした。
【0101】
図2にこの試験からの選択された結果を示す。
【0102】
図2は、本発明のアミン混合物の場合およびMDEAの場合の出口ガス中のH
2S濃度の関数としての、H
2Sの吸収率(H
2Sのモル数/m
2/秒)とCO
2の吸収率(CO
2のモル数/m
2/秒)との測定された吸収率比のプロットを示す。示されたプロットから観察できるように、アミン混合物の場合の吸収率比は、それに対応するMDEAの場合の吸収率比よりも一貫して大きい。これは、アミン混合物のH
2S吸収選択性が、MDEAのH
2S吸収選択性よりも大きいことを示す。
【0103】
実施例4
この実施例は、吸収器からのH
2Sのスリップに対するCO
2の作用、およびCO
2吸収のパーセントに対するCO
2の作用を決定するための、本発明のアミン混合物と比較溶媒であるMDEAとの試験からの実験結果を示す。
【0104】
実施例2で説明した実験ユニットを使用して、この実施例4の実験を行った。
図3および
図4に、これらの実験のうちいくつかの結果を示す。0.6から0.7モル%の目標濃度でH
2Sを含む吸収器に、ガスフィードを入れた。ガスフィードのCO
2濃度は、
図3および
図4のプロットの横軸(x軸)に沿って表示された濃度の通りであり、ガスフィードの残部はN
2ガスであった。
【0105】
図3は、本発明のアミン混合物の場合およびMDEAの場合の反応器の容器への入口ガスに含有されるCO
2の関数としての、反応器の容器からの処理済みの出口ガス中で測定されたH
2S濃度のグラフ表示である。示されたデータから観察できるように、反応器の容器への入口ガスが示されたCO
2濃度を有する場合、アミン混合物は、処理済みガス中のH
2S濃度を有意により低くする。これは、処理しようとするガス中の全てのCO
2濃度レベルで、アミン混合物は、MDEAよりもかなり大量のH
2Sを除去することを示す。
【0106】
図4は、反応器の容器への入口ガス中のCO
2濃度の関数として、アミン混合物を用いた、およびMDEAを用いた吸収によって除去される、反応器の容器への入口ガスに含有されるCO
2の測定されたパーセンテージのグラフ表示である。これらのデータから、アミン混合物は、ガスストリームからCO
2を吸収することに関しては、MDEAよりも効果が低いことが示される。CO
2吸収に対してH
2S吸収により高い選択性を有することが望ましいため、これはアミン混合物の優れた特徴である。