(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491118
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】通信端末およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 36/14 20090101AFI20190318BHJP
H04W 36/30 20090101ALI20190318BHJP
H04W 76/19 20180101ALI20190318BHJP
H04W 88/06 20090101ALI20190318BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
H04W36/14
H04W36/30
H04W76/19
H04W88/06
H04M1/00 R
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-17633(P2016-17633)
(22)【出願日】2016年2月2日
(65)【公開番号】特開2017-139537(P2017-139537A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2017年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 諭
【審査官】
齋藤 浩兵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−165781(JP,A)
【文献】
特開2006−320031(JP,A)
【文献】
特開2008−228131(JP,A)
【文献】
特開2004−172882(JP,A)
【文献】
特開2007−295627(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/141879(WO,A1)
【文献】
特開2010−178022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信方式で外部との通信を行う第1の通信部と、
第2の通信方式で外部との通信を行う第2の通信部と、
前記第1の通信方式による外部との通信中に通信が切断した場合に切断理由を判定する切断理由判定部と、
通信切断中に再接続を試行する通信方式を前記第1の通信方式とするか前記第2の通信方式とするかを前記切断理由に基づいて選択する通信方式選択部と
前記第1の通信方式における電波状況と前記第2の通信方式における電波状況とを取得する電波状況取得部とを有し、
前記切断理由判定部が
取得した前記第1の通信方式における電波状況に基づいて前記切断理由を判定し、
前記通信方式選択部が、
前記切断理由が前記第1の通信方式における電波状況の劣化であった場合は前記通信方式選択部が前記第2の通信方式を選択し、
前記切断理由が前記第1の通信方式における電波状況の劣化でなくハンドオーバーの失敗であった場合は前記通信方式選択部が前記第1の通信方式を選択する
ことを特徴とする通信端末。
【請求項2】
前記第2の通信方式の候補を複数有し、
それぞれの前記候補について前記通信方式選択部が選択する優先順位を設定する優先順位設定部を有し、
前記優先順位設定部は、
前記電波状況取得部が取得したそれぞれの前記候補の電波状況に基づいて前記優先順位を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信端末。
【請求項3】
前記第1の通信方式または前記第2の通信方式としてLTE、WiMAX(登録商標)、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)の少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の通信端末。
【請求項4】
第1の通信方式で外部との通信を行い、
第2の通信方式で外部との通信を行い、
前記第1の通信方式における電波状況と前記第2の通信方式における電波状況とを取得し、
前記第1の通信方式による外部との通信中に通信が切断した場合に、
取得した前記第1の通信方式における電波状況に基づいて前記切断理由を判定し、
前記切断理由が前記第1の通信方式における電波状況の劣化であった場合は前記第2の通信方式を選択し、
前記切断理由が前記第1の通信方式における電波状況の劣化でなくハンドオーバーの失敗であった場合は前記第1の通信方式を選択する
ことを特徴とする通信端末の制御方法。
【請求項5】
前記第2の通信方式の候補を複数有し、
それぞれの前記候補の前記電波状況を取得し、
取得した前記電波状況に基づいて前記第2の通信方式として選択する優先順位をそれぞれの前記候補に設定する
ことを特徴とする請求項4に記載の通信端末の制御方法。
【請求項6】
前記第1の通信方式または前記第2の通信方式としてLTE、WiMAX(登録商標)、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)の少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項4に記載の通信端末の制御方法。
【請求項7】
第1の通信方式で外部との通信を行うステップと、
第2の通信方式で外部との通信を行うステップと、
前記第1の通信方式における電波状況と前記第2の通信方式における電波状況とを取得するステップと、
前記第1の通信方式による外部との通信中に通信が切断した場合に、
取得した前記第1の通信方式における電波状況に基づいて前記切断理由を判定するステップと、
前記切断理由が前記第1の通信方式における電波状況の劣化であった場合は前記第2の通信方式を選択するステップと、
前記切断理由が前記第1の通信方式における電波状況の劣化でなくハンドオーバーの失敗であった場合は前記第1の通信方式を選択するステップと
を有することを特徴とする通信端末の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
WiFi(登録商標)やLTE、WiMAX(登録商標)などの複数の通信方式に対応した通信端末が販売されている。このような通信端末で、ある通信方式で通信を行っている際に、何らかの理由で通信が切断される場合がある。通信が切断されると、通信端末はネットワークへの再接続を試行する。このような過程における、通信再開までの時間を短縮したいという要望に応える技術が開発されている。
【0003】
例えば特許文献1には、切断時に接続していたセルの詳細情報を記憶しておき、その情報を用いて再接続を行う技術が開示されている。さらに、最後に使用された順(MRU;Most Recently Used)に、所定数のセル情報をリストとして記憶し、履歴の新しいセルから順に再接続を試みる方法が示されている。リストの上位に配置されたセルに接続可能であれば、再接続までの時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-297784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、リストに情報が記載されたセルが利用できない場合、無駄な再接続試行が繰り返されるという問題がある。例えば、通信端末等の移動等で、通信端末がリストにあるセルの通信可能圏内から外れてしまった場合がこれに当たる。そして、リスト上位から順に再接続を試みて、所定回数の試行で接続できなかった場合は、次の候補セルに切りかえるが、その過程で時間的なロスが生じる。さらに、リストに現在接続可能なセルが無かった場合、セルのサーチをやり直す必要が生じる。以上のような理由により、再接続までに時間を要する場合があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、通信中にネットワークとの接続が切断してしまった場合に、迅速に通信を再開できる通信端末を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の通信端末は、第1の通信方式で通信を行う第1の通信部と、第2の通信方式で通信を行う第2の通信部と、切断理由判定部と、通信方式選択部とを有している。切断理由判定部は、第1の通信方式で通信中に通信が切断してしまった際に、通信が切断した理由を判定する。通信方式選択部は、切断理由判定部が判定した通信の切断理由に基づいて、通信の再開を、第1の通信方式で試行するか、第2の通信方式で試行するか選択する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果は、通信中にネットワークとの接続が切断してしまった場合に、迅速に通信を再開できる通信端末を提供できることである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態の通信端末を示すブロック図である。
【
図2】第2の実施形態の通信端末を示すブロック図である。
【
図3】第2の実施形態の通信端末の動作を示すフローチャートである。
【
図4】第3の実施形態の通信端末を示すブロック図である。
【
図5】第3の実施形態の具体的な適用例を示す模式図である。
【
図6】第3の実施形態の別の具体的な適用例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお各図面の同様の構成要素には同じ番号を付し、説明を省略する場合がある。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の通信端末10を示すブロック図である。
【0012】
通信端末10は、第1の通信方式で通信を行う第1の通信部1と、第2の通信方式で通信を行う第2の通信部2と、切断理由判定部3と、通信方式選択部4とを有している。
【0013】
切断理由判定部3は、第1の通信方式で通信中に通信が切断してしまった際に、通信が切断した理由を判定する。
【0014】
通信方式選択部4は、切断理由判定部3が判定した通信切断理由に基づいて、通信の再開を、第1の通信方式で試行するか、第2の通信方式で試行するか選択する。
【0015】
以上の構成により、通信端末は、通信を再開できる確率が高い通信方式を選択することができる。
【0016】
(第2の実施形態)
図2は第2の実施形態の通信端末100を示すブロック図である。通信端末100は、第1の通信部110と、第2の通信部120と、電波状況取得部130と、電波状況格納部140と、優先順位設定部150と、切断理由判定部160と、通信方式選択部170とを有している。
【0017】
第1の通信部110は、第1の通信方式で外部との通信を行う。
【0018】
第2の通信部120は、第1の通信方式とは異なる第2の通信方式で外部との通信を行う。
【0019】
電波状況取得部130は、第1の通信方式、第2の通信方式、それぞれにおける電波状況を取得する。その取得は、例えば自身でそれぞれの通信方式で用いる周波数の電波の受信電界強度を測定して行うことができるが、外部から情報として受け取っても良い。
【0020】
電波状況格納部140は、電波状況取得部130が取得した電波状況を格納する。電波状況の取得は定期的に行い、取得した時刻ごとに時系列で電波状況を格納する。
【0021】
優先順位設定部150は、第2の通信方式が複数ある場合に通信方式を選択する優先順位を、電波状況格納部に格納されたそれぞれの通信方式の電波状況に基づいて設定する。基本的には受信電界の強いものに高い優先順位を付与するが、電界強度の評価基準は各通信方式における規格に依存するため、通信方式毎に状況を評価する。
【0022】
切断理由判定部160は、電波状況格納部140に格納された電波状況の推移に基づいて切断理由を判定する。例えば、第1の通信方式で通信中に、第1の通信方式で用いる電波が弱くなり、所定の閾値を下回った場合は、第1の通信方式における電波状況の劣化が原因であると判定する。電波状況劣化が原因でなかった場合は、電波状況の劣化が原因でないと判定する。電波状況の劣化以外の原因は種々あると考えられるが、例えばハンドオーバーの失敗が一例として挙げられる。
【0023】
通信方式選択部170は、切断理由判定部160が判定した切断理由に基づいて通信の再開を試行する通信方式を選択する。例えば、第1の通信方式で通信中に切断し、電波状況の劣化が原因であった場合は、第1の通信方式の弱電界領域または通信圏外に入ったことが考えられるので、第2の通信方式を選択する。一方、切断理由が電波状況の劣化でなかった場合は、第1の通信方式を選択する。これは、受信電界強度が足りているにも関わらず、例えばハンドオーバーに失敗した等が原因で、一時的に通信が途絶えただけと考えられるためである。
【0024】
次に、通信端末100の動作について説明する。
図3はこの動作を示すフローチャートである。通信端末は、まず、自身が使用可能な通信方式それぞれに対応する電波の電波状況を取得する(S1)。次に、取得した電波状況を格納する(S2)。電波状況の格納は、それぞれの通信方式毎に時系列で行う。次に、現在使用中の通信方式以外の通信方式について、当該通信方式を選択する優先順位を設定する(S3)。
【0025】
ここで通信が切断したとする(S4)。すると切断理由判定部は電波状況格納部に格納された電波状況を参照し、これに基づいて切断理由を判定する(S5)。切断理由が、電波状況の劣化であった場合は(S6_Yes)、切断前と異なる通信方式で通信の再開を試行する(S7)。この時、いずれの通信方式を選択するかは、優先順位設定部が設定した優先順位に基づいて決定する。
【0026】
一方、切断理由が電波状況の劣化でなかった場合は(S6_No)、切断前と同じ通信方式で、通信の再開を試行する(S8)。
【0027】
以上、説明したように、本実施形態によれば、通信の切断理由に基づいて、通信を再開できる確率が高い通信方法を選択することができる。その結果、通信再開までのタイムラグを小さくすることができる。
【0028】
(第3の実施形態)
図4は本実施形態の通信端末200を示すブロック図である。通信端末200は、互いに異なる通信方式で通信を行う複数の通信部を有している。ここでは、LTE通信部211、WiMAX通信部212、WiFi通信部213、Bluetooth(登録商標)通信部214、・・・を有する例を示している。
【0029】
また、通信端末200は、電波状況取得部230と、電波状況格納部240と、優先順位設定部250と、切断理由判定部260と、通信方式選択部270とを有している。これらは、それぞれ、第2の実施形態の、電波状況取得部130、電波状況格納部140、優先順位設定部150、切断理由判定部160、通信方式選択部170と同じ機能を有する。このため、繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0030】
次に具体的な例を用いて、通信端末200の動作を説明する。なお、以下の例では、通信端末200は、最初にLTEで通信を行っているものとする。
【0031】
図5は、具体的な基地局と通信端末の関係の例を示す模式図である。LTE基地局A_1000AとLTE基地局B_1000Bがあり、それぞれの強電界エリア、LTE強電界エリアA_1100AとLTE強電界エリアB_1100Bとが重なりを持っている。またWiMAX基地局2000が存在し、上記のLTE強電界エリアA_1100A、LTE強電界エリアB_1100Bの重なり部分と重なりを持つようにWiMAX強電界エリア2100が存在している。そして通信端末200はLTE基地局A_1000Aと通信を行っていて、上記の重なり部分を、LTE基地局A_1000AからLTE基地局B_1000Bに向かって移動中であるとする。この時、通信端末200は、LTE、WiMAXそれぞれの電波状況を取得し、ともに良好であると判定している。
【0032】
ここで、通信端末200の通信が切断したとする。すなわち、正常であれば、上記の移動に伴い、通信端末200の通信は、LTE基地局A_1000AからLTE基地局B_1000Bにハンドオーバーされるが、それが途絶えたものとする。この時、通信端末200は、切断理由がLTEの電波状況の劣化ではないと判定するため、通信方式として元と同じLTEを選択して再接続を試行する。この時LTEの電波状況は良好であるため、再接続が成功する確率は高くなる。
【0033】
他方、切断理由が元の通信方式の電波状況の劣化である場合も想定される。
図6はこのような状況の一例を示す模式図である。LTE基地局A_1000AとLTE基地局B_1000Bがあり、それぞれのLTE強電界エリアA_1100AとLTE強電界エリアB_1100Bが重なりを持っていない。すなわちLTEの強電界エリアに空白地帯が存在している。またWiMAX基地局2000が存在し、上記のLTE強電界エリアA_1100A、LTE強電界エリアB_1100Bとそれぞれ重なりを持つようにWiMAX強電界エリア2100が存在している。さらにWiMAX強電界エリア2100は、上記の空白をカバーするように存在している。
【0034】
ここで、通信端末200はLTE基地局A_1000Aと通信を行っていて、LTE強電界エリアA_1100Aから上記の空白地帯に向かって移動中であるとする。この位置ではWiMAXの電波状況が良好であるため、第2の通信方式としWiMAXに高い優先順位が設定される。
【0035】
ここで、通信端末200の通信が切断したとする。この時、通信端末200は、電波状況格納部に格納された電波状況の時系列データから、切断理由がLTEの電波状況の劣化だと判定する。このため、通信方式としてLTE以外で、優先順位の高いWiMAXを選択して再接続を試行する。当該位置ではWiMAXの電波状況であるため、再接続に成功する確率は高くなる。他方、一般的な技術のように、元の通信方式と同じLTEで再接続を試行した場合、接続可能な基地局が無いため、再接続に失敗し、時間をロスすることとなる。
【0036】
以上、本実施形態によれば、意図せず通信が切断した場合に、無駄な試行を繰り返すことなく迅速に再接続を行うことができる。
【0037】
上述した第1乃至第3の実施形態の処理をコンピュータに実行させるプログラムおよび該プログラムを格納した記録媒体も本発明の範囲に含む。記録媒体としては、例えば、磁気ディスク、磁気テープ、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ、などを用いることができる。
【0038】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1、110 第1の通信部
2、120 第2の通信部
3、160、260 切断理由判定部
4、170、270 通信方式選択部
10、100、200 通信端末
130、230 電波状況取得部
140、240 電波状況格納部
150、250 優先順位設定部