(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記部分的に架橋されたヒアルロン酸の第2の水層が、前記部分的に架橋されたヒアルロン酸の第1の水層の架橋の部分的程度よりも高いその程度を有し、そして/又は、前記ヒアルロン酸濃度C2が前記濃度C1よりも高いか又は等しいことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
前記架橋剤Q2の量が前記量Q1よりも多いか又は等しく、そして/又は、前記架橋温度T2が前記温度T1よりも高いか又は等しく、そして前記架橋温度Tmが前記温度T2よりも高いことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
前記架橋持続時間t2が前記持続時間t1よりも長いか又は等しく、そして/又は、前記部分的に架橋されたヒアルロン酸の第1の水層及び第2の水層が等しいか又は異なっていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
前記混合物の架橋が、水溶液を用いて希釈することによって、及び/又は、透析により達成される精製を実施することにより未反応の架橋剤を除去することよって、停止されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
前記ヒアルロン酸がヒアルロン酸の誘導体であり得、すなわち、化学的経路を介して、又はいずれか他の経路を介して、ヒアルロン酸分子を修飾することにより得られる分子であり得ることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
少なくとも架橋されたヒアルロン酸又はその塩の1つ、及び任意に他の生物適合性ポリマーから成り、異なった架橋度を有する、数個の架橋されたヒアルロン酸層の混合物によって特徴づけられ、ここで前記層は互いに共有結合を介して互いに結合される、請求項12に記載の方法に従って得られるハイドロゲル。
その架橋されたマトリックス内に分散されたリドカインを含み、そして/又は前記架橋されたマトリックス内に分散された1又は数個のミネラル物質を含むことを特徴とする、請求項13〜15のいずれか1項に記載のハイドロゲル。
美容用途又は治療用途のための組成物の製造のための;又は、皮膚の質を改善するか又は顔又は身体のしわを充填するか又は顔又は身体の容積を復元するための皮内又は皮下移植可能組成物の製剤化のための;化粧又は薬用化粧組成物の製剤化のための;眼科での用途のための局所又は眼内組成物の製剤化のための;歯科での用途のための局所又は移植可能組成物の製剤化のための;整形外科及びリウマチ科での用途のための関節内組成物の製剤化のための;失禁の治療への用途のための、泌尿器科での使用のための移植可能組成物の製剤化のための;線維症の治療の範囲内で、又は創傷の治癒を改善するために薬又は一般的外科で使用される局所又は移植可能組成物の製剤化のための;又は種々の医療用途のための活性物質の遅延された及び/又は制御された放出を可能にする局所又は移植可能医薬組成物の製剤化のための、請求項13〜16のいずれか1項に記載のハイドロゲルの使用。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、D−グルクロン酸及びN−アセチルグルコサミンから成る二糖単位の反復により形成される多糖である。その構造は、直鎖状であり、そして何れの種特異性も有さない。ヒアルロン酸は、ヒト及び動物の生存生物に広く分布され、ここでそれは、多くの生物学的機能、例えば水和レベルの制御、又は流体又は組織の粘弾性の維持を果たしている。それは、特に滑膜液、目の硝子体液及び真皮に高濃度で見出される。70キロのヒトは、約15gのヒアルロン酸を有し、その半分は皮膚に含まれ、この量は加齢と共に減少する。
【0003】
ヒアルロン酸ゲルは、知られており、そして長年、美容及び医学の分野において使用されて来た。それらのゲルは特に一般的に:
−眼科手術中に、眼内空間を維持し、そして眼の組織を保護するために眼中に、
−関節症の場合、欠損骨膜液を補充し、そして前記生物学的液体の軟骨保護特性を一般的に復元するために、関節中に、
−顔又は身体のしわを埋めるか又は特定領域の量を増加させるために、皮膚中に又は皮膚下に、注射される。
【0004】
ヒアルロン酸は、生存生物において短い半減期(1週間未満)を有する。美容及び医学における多くの用途の場合、投与される注射用ハイドロゲルは、架橋によって安定化されたヒアルロン酸を含む。それは、インビボにおけるこの多糖の寿命(さらに、レマネンス(remanence)と呼ばれる)をかなり増大させる可能性を提供し、したがって、注射される製品の有効性の期間をかなり増大させる可能性を提供する、したがって、架橋によるこの修飾により、架橋されたヒアルロン酸に基づくハイドロゲルは、数ヶ月にわたって、しわを満たす能力を有する。
【0005】
ヒアルロン酸に基づく注射可能ハイドロゲルのインビボのレマネンスを高めるために、当業者は、ヒアルロン酸の架橋度を高めることができることを認識しており;しかし分子のこの修飾は、ゲルの粘度の上昇及び従って、針を通してのゲルの押出し、及び結果的に、医師による所望する領域へのゲルの注射の困難性を高める。これは必ず、
−満足する放出力を保持するために、ヒアルロン酸の架橋度 (crosslinking degree)及びインビボでのゲルのレマネンスの制限、又は
−治療される患者への強い痛み、及びまた、注射領域での高い外傷(斑状出血、赤パッチ、炎症、浮腫、等)を生成する、この針を通してのゲルの押出しのために必要とされる放出力を低めるために、より大きな直径の針の使用のいずれかを意味する。
【0006】
多くの解決策がこの問題を克服するために提案されており、すなわち研究者は、適切なレマネンス及び粘度、及び従って、針を通してのゲルの押出しのための満足するレベルを有する注射用製剤の提供を探求している。
【0007】
例えば次のものから製造されることが言及されている:
− 一般的に粉砕により、架橋されたゲルを粒子に崩壊することにより得られる架橋ヒアルロン酸の粒子に基づく製剤;種々の調製方法が、国際公開第97/04012号出願の場合のように、このタイプの製剤を得るために記載されており、
− 国際公開第2005/085829号出願に記載される特定の調製方法からの異なった架橋アイデンティディーを含む架橋されたヒアルロン酸に基づく製剤、
− お互い架橋されていない、すなわち共有結合を介してお互い結合されていない架橋されたゲルの架橋されたヒアルロン酸含有混合物に基づく製剤;それらの製剤は、フランス特許出願第2924615号に記載される特定の調製方法に従って得られ、及び
− 架橋されたヒアルロン酸のマトリックスと共に架橋される、架橋されたヒアルロン酸の粒子から成る、架橋されたヒアルロン酸に基づく製剤;それらの製剤は、欧州特許出願第2011816号又は米国特許出願第2010/0028435号に従って、調製される。
【0008】
しかしながら、それらの解決策は完全には満足できるものではない。
【0009】
国際公開第97/04012号出願は、粒子の形での多糖類(ヒアルロン酸であり得る)に基づく製品を得る可能性を付与する特定の製造方法を記載する。文献においては「二層ゲル」とも呼ばれる、架橋されたヒアルロン酸に基づく粒状ゲルは、潤滑現象による放出を促進する可能性を付与する、架橋されていないヒアルロン酸の溶液に分散される、約200μm〜1,000μmの直径を有する粒子の存在により特徴づけられる。それらのゲルは、針を通してのゲルの押出しが、特に大きな直径粒子を含む製品に関して、不規則である限り、完全には満足できるものではなく;ここで、担体の役割を演じる非架橋ヒアルロン酸に基づく溶液は、インビボで急速に再吸収され、ここで前記溶液は所望する効果の少なくとも部分的損失(特に、生成量に専用される製品の注射後の日での充填損失)を包含し;そして最終的に、製品の安全性プロフィールは、異物に対する応答を促進し、そして/又は治療される領域の機械的作用下でそれらの粒子の移動を発生する任意の粒子を含まないヒアルロン酸に基づくゲルよりもあまり良好ではない(すなわち、高いレベルの二次効果を生む)。
【0010】
国際公開第2005/085329号出願は、特定量の少なくとも1つのポリマー(ヒアルロン酸であり得る)の架橋を開始するための工程により、及び次に、架橋反応を続けながら、溶液中、ポリマーのグローバル濃度を低めるために、反応混合物の希釈により、溶液中、500,000Da以上の分子質量を有する、追加量のポリマー(ヒアルロン酸であり得る)を添加することにより、特徴づけられる。この溶液は、ヒアルロン酸の効果的架橋を有する可能性を与えるものではない。実際、追加量のポリマーの添加は、希釈を伴っており、そして従って、反応混合物中のヒアルロン酸濃度の低下を伴う。従って、ヒアルロン酸鎖と架橋剤との間の遭遇の確立は低められ、そして架橋反応は非常に効果的ではない。
【0011】
フランス特許第2924615号出願は、同一か又は異なった、それらの混合の前、架橋されたXポリマー(ヒアルロン酸であり得る)の均質混合物により特徴づけられる製造方法を記載している。混合するとは、Xポリマーの並置を意味し、ここで後者のポリマー間での共有結合は生成されない。この解決作は完全には満足できるものではない。なぜならば、ポリマーはお互い結合せず、そして従って、それにより得られるゲルは、そこで非常に有意であり得る機械的応力の作用下で、注射された領域内で解離されるからである。例えば、一定の容積を生成するために唇中に注射される製品の場合が言及され;唇は強い機械的応力を受ける。経験される機械的作用は、移植されたゲルの移動をもたらし、そして従って、治療される領域だけでなくまた、この領域の周囲で二次効果をもたらす。
【0012】
欧州特許第2011816号出願は、粒子形での少なくとも1つの第1の強く架橋された多糖ゲル、及び少なくとも1つの弱く架橋された、マトリックス形成多糖ゲルを含む多糖類(ヒアルロン酸であり得る)の注射用ゲルに関し;前記少なくとも1つの第1のゲルは、前記少なくとも1つの第2のゲルに、共有結合を通して結合される。国際公開第97/04012号出願からの製品とは異なって、強く架橋された粒子は、弱く架橋された多糖マトリックスに結合され;従って、粒子の移動は、短期及び/又は中期、この溶液により強く制限されるが、しかし長期ではそうではない(弱く架橋された多糖が組織中に再吸収された後、移動の可能性を従って、強く架橋された粒子の放出が伴う)。従って、この溶液は、強く架橋される多糖粒子を含むので、異物に対して応答の危険性は、製品の粒状性質及びそれらの粒子の高い架橋度のために、有意である(従って、ヒアルロン酸は有意に修飾され、従って、生物による分子の非認識を促進する)。
【0013】
米国特許第2010/0028435号出願は、架橋されたヒアルロン酸マトリックスに同時架橋される、架橋されたヒアルロン酸粒子から構成される、架橋されたヒアルロン酸に基づく製剤の調製方法を開示する。従って、欧州特許第2011816号について上記に与えられるコメントと同じコメントが準用される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
「部分的に架橋された」(partly crosslinked)とは、任意には、他の生物的合成ポリマーを含む、ヒアルロン酸の前記少なくとも2つの水層が、ヒアルロン酸及び/又は他の生物適合性ポリマーの新規鎖を架橋するために、架橋剤と反応することができるポリマー鎖でまだ利用できる反応部位を有する事実を意味する。
【0019】
本発明の架橋方法は、前記架橋方法の工程の間、すなわち上記のような工程a、b、c及びdの間、ヒアルロン酸又はその塩の1つ、又は任意の他のポリマーの架橋された粒子の調製及び/又は添加を包含しないことを特定することが重要である。すべての部分的に架橋された層は、前記架橋方法の間、例えば粉砕により、粒子に転換される時間はない。従って、本発明の架橋方法は、ヒアルロン酸のゲルと一緒に架橋される架橋粒子を有する可能性は与えない。
【0020】
本発明の実施形態によれば、部分的に架橋されたヒアルロン酸の第2の水層は、部分的に架橋されたヒアルロン酸の第1の水層の部分的架橋度よりも高いその架橋度を有する。この特殊性は、第1の層内での第2のより強く架橋された層の混合を促進する可能性を与える。
【0021】
「部分的架橋度」(partial corosslinking degree)とは、別の層とのその混合の直前の層の架橋レベルを意味し;架橋レベルは、それはさらに、層の混合の間、架橋を継続して進行するので、単なる部分的である。この架橋レベルは、架橋度を実験的に測定し、そしてそれと架橋の最大理論的値(導入された架橋度のモル数及び架橋能力を有するポリマーのモル数の割合を評価することにより計算され得る)とを比較することにより、関連する各層について決定され得る。架橋度は、直接的に(例えば、放出力の測定により、実施例2を参照のこと)、又は間接的に(例えば、核磁気共鳴分光法(NMR)により、例えばKenne et al. (Kenne et al., Modification and cross-linking parameters in hyaluronic acid hydrogels - definitions and analytical methods, Carbohyr. Polym. 2013, 91:410-418)により記載される方法を用いて)、実験的に評価され得る。
【0022】
従って、一般的に、部分的に架橋された層の「部分的架橋度」は、90%未満(理論的に計算された最大値の)、又は70%未満、又はさらに50%未満、又はさらに30%未満、又はさらに10%未満である。
【0023】
本発明の実施形態によれば、ヒアルロン酸の濃度C2は、濃度C1よりも高いか又は等しい。これは特に、第1の層内でのより強く濃縮された第2の層の混合の促進、又は第1の層内での第2の層のより強い膨潤の獲得(ヒアルロン酸は水中で膨潤する能力を有し、従って、その濃度は重要である)の可能性を提供する。次に、これは、第1の層内での第2の層のポリマー鎖の絡み合いによる最大の立体的「包埋」(embedding)の促進、また第1の層及び第2の層のポリマー鎖を結合するのであろう架橋反応の促進の可能性を、それらの鎖の高い物理的近接性及び従って、それらの鎖を架橋するための反応の良好な効率のために、提供する。
【0024】
本発明の実施形態によれば、架橋剤Q2の量は、第1の層についての部分的架橋度よりも高い、第2の層についての部分的架橋度を得るために、量Qよりも多いか又は等しい。
【0025】
本発明の実施形態によれば、架橋温度T2は、第1の層についての部分的架橋度よりも高い、第2の層についての部分的架橋度を得るために、温度T1よりも高いか又は等しい。架橋温度Tmは、第1の層及び第2の層の共有結合を通しての結合を可能にする架橋反応の効率を最大にするために、それ自体、T2よりも高い。
【0026】
本発明の実施形態によれば、架橋持続期間t2は、第1の層についての部分的架橋度よりも高い、第2の層についての部分的架橋度を得るために、その持続期間t1よりも長いか又は等しい。架橋持続期間tmは、それ自体、持続期間t1及びt2よりも長いか又は等しいか、又はその持続期間未満であり得る。この持続期間tmは、前記少なくとも2つの層の混合物の架橋を達成するために、選択された温度Tmに依存する。
【0027】
混合物の調製の間、第1の層及び第2の層の質量は、等しくても、異なっていても良い。得られるハイドロゲルに与えることが所望される性質に依存して、本発明によれば、混合の間、1つの層の存在は、他の層に対して、適切に促進され、そして従って、この層のより大きな質量が、他の層に対して使用されるべきである。従って、機械的/レオロジー観点から、最高架橋度を有する層は、低い架橋度を有する層に対する優勢の弾性及びレマネンス特性を、本発明のゲルに付与することが言及されている。他方では、最低架橋度を有する層は、この層に対して低い放出力を与え、そして従って、放出されるべき製品の容易な使用を可能にする。本発明のハイドロゲルに関しては、従って、相乗効果が、機械的/レオロジー、レマネンス及び注射特性の点で得られる性質に観察される。この相乗効果は、お互い相互作用する次の2種のパラメーターの最適化のために得られる:層の1つの低い架橋度がハイドロゲルの良好な注射能力、並びに凝集性及びグローバル柔軟性を促進し、そしてレマネンス及び弾性を低めるが、ところが他の層の強い架橋度は、レマネンス、弾性に有利な、さらに明白な粘弾性性質を促進し、そして反して、注射能力、凝集性及び柔軟性を低める。従って、この相乗効果は、それらの欠点を最少にすることにより、異なった構成層のそれぞれの利点を組合す可能性を与え、さらに架橋されたポリマー粒子を含む組成物について事前に記載された欠点も回避する。従って、ハイドロゲル内の各架橋された層の割合の最適化は、注射能力、機械的/レオロジー性質及びレマネンスの点から、美容又は医学における治療のために示される異なった必要性を満たすことができる容易に注射できる製品の入手の可能性を与える。
【0028】
本発明の実施形態によれば、種々の部分的架橋層の混合物の架橋は、残留未反応架橋剤を除去するために、精製の達成により停止される。この精製は、当業者に良く知られている技法、例えば透析浴により、又は連続水流での洗浄により行われる。好ましくは、透析による精製は、等浸透圧溶液を用い、そして適切なpHを有することにより選択される。種々の部分的架橋層の混合物の架橋反応の最後で、及びゲル精製工程の前、得られたゲルを、当業界において知られている標準方法に従って、架橋が塩基性媒体下で行われている場合、酸の添加により、及び架橋が酸性媒体下で行われている場合、塩基の添加により、中和することが好都合である。
【0029】
本発明は、ヒアルロン酸、又はその塩、及び特にその生理学的に許容できる塩、例えばナトリウム、カルシウム、亜鉛、カリウム塩、好ましくはナトリウム塩の架橋を扱う。ヒアルロン酸は、動物起源のものであり得るか、又は細菌発酵により得られる。それは、数Da〜類百万Da、好都合には約0.1Da〜4,000,000Daの分子質量を有することができる。
【0030】
本発明はまた、ヒアルロン酸と組合しての他の生物適合性ポリマーの架橋を扱う。天然又は合成起源のそれらのポリマーは、それらの架橋を可能にする化学機能を有すべきであり、そしてそれらは、生物学的流体又は組織と接触させることができるよう、生物適合性であるべきである。例えば、多糖類、ポリエステル、ポリ無水物、ポリホスファゼン、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリ乳酸及びその誘導体、ポリビニル酸、ポリアクリルアミド、N−ビニルピロリドン及びアクリルポリマー、及び生物学的に許容できる誘導体のファミリーが言及され得る。
【0031】
架橋反応は、酸性又は塩基性媒体、好都合には、好ましくは8〜13のpHを有する塩基性媒体中、水溶液下で実施される。前記溶液のpH値は、同一であっても、異なっても良い。
【0032】
異なった架橋反応に包含される架橋剤は、同一であっても、異なっていても良い。それらは一般的に、種々のタイプの二又は多官能架橋剤であり、そしてそれらは、例えばジビニルスルホン、二又は多官能エポキシド、カルボジイミド及びホルムアルデヒドから選択され得る。好ましくは、二又は多官能エポキシドのファミリーからの剤は、選択された、及び特に1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、ジエポキシ−オクタン、又は1,2−ビス−(2,3−エポキシプロピル)−2,3−エチレンである。BDDEの使用が、各実施される架橋反応のために、特に最も好ましい。
【0033】
架橋温度は一般的に、約15℃〜60℃である。それらは好都合には、部分的架橋層の架橋のためには、35℃未満であり、そして種々の部分的架橋層の混合物の架橋のためには、45℃以上である。
【0034】
架橋持続期間は一般的に、数時間、好都合には、1時間〜約12時間である。
【0035】
種々の部分的架橋層の混合物の架橋は、優先的には、2層により実施されるが、しかしそれはまた、異なった部分的架橋度を有する2以上の層によっても実施され得る。
【0036】
架橋される混合物中の各部分的架橋層の重量割合は、特に、選択される組成物、種々の適切な層の部分的架橋度、及びその後、求められる最終特異性に依存して強く変化することができる。一般的に。混合物においては、最高部分的架橋度を有する層の重量割合は、混合物中の異なった層の合計質量の約0.1〜99.9%、又はさらに、約5〜95%、又はさらに、10〜90%、又はさらに、20〜80%、又はさらに30〜70%、又はさらに、40〜60%、又はさらに、45〜55%である。
【0037】
本発明の架橋方法は、従来技術に記載されるそれらの方法とは異なる。それらの方法の何れも、すでに部分的に架橋されている、ヒアルロン酸及び任意には、他の生物適合性ポリマーの少なくとも2つの水層を、架橋の間、混合し、そして次に、前記架橋方法の工程において、架橋されたヒアルロン酸又はその塩、又は任意の他のポリマーの製品の調製及び/又は添加を伴わないで、前記少なくとも2つの層を、共有結合を通して結合するために、前記架橋反応を継続することから成る架橋を包含しない。
【0038】
本発明に最も近いと思われる従来技術の関連資料は、以下の通りである:
−国際公開第97/04012号出願は、ヒアルロン酸であり得る多糖についての特定の架橋方法を記載し;前記方法は、下記工程を含んで成る:
・水溶液中に多糖を入れる工程、
・架橋剤を添加することにより架橋反応を開始する工程、
・架橋反応のための好ましくない立体的条件を導入する工程、ここでそれらの条件は優先的に、架橋の間、反応混合物の希釈であり、及び
・架橋反応のための好ましい立体的条件を再導入する工程、ここでそれらの条件は、架橋反応を完結するために、蒸発による反応混合物の濃縮である。
【0039】
本発明とは異なって、この出願は、架橋の間、異なった部分的架橋ヒアルロン酸層の混合を包含しない。他方では、本発明は、架橋反応の間、好ましくない立体的条件(例えば、希釈)及び次に、好ましい立体的条件(例えば、蒸発)を提供することにより特徴づけられていない:本発明の架橋は、収率を最適化するために、好ましい条件下で実施される。
【0040】
−国際公開第2005/085829号出願は、下記工程により特徴づけられる特定の架橋方法を記載する:
・特定量の少なくとも1つのポリマーの架橋を開始するための工程、及び
・溶液中、500、000Da以上の分子質量を有する、追加量のポリマーの添加、及び架橋反応を続けながら、前記溶液中、ポリマーのグローバル濃度を低めるために、反応混合物の希釈工程。
【0041】
本発明とは異なって、この出願は、架橋の間、種々の部分的架橋ヒアルロン酸層の混合を包含しない。
【0042】
この出願は、架橋反応の間、ポリマーの添加を包含するが、しかしこのポリマーは、部分的に又は全体的に、予備架橋を受けていない。他方では、本発明とは異なって、このポリマー添加は、好ましくない立体的条件を提供する結果を有する反応混合物の希釈により必ず達成され、そして従って、架橋反応の非常に効果的な継続ではない。
【0043】
−フランス特許第2924615号出願は、同一か又は異なっている、それらの混合の前、架橋された、xポリマーの均質混合により特徴づけられるハイドロゲルの調製方法を記載している。
【0044】
本発明とは異なって、この出願は、架橋の間、種々の部分的架橋ヒアルロン酸層の混合物を包含しない。前もって架橋されたxポリマー、及びそれらの個々のために停止された架橋反応物が、共有結合を生成しないで、それらのxポリマーの単純な並置を得るために、混合され:それらの種々のポリマー間に架橋は存在しない。
【0045】
−欧州特許第2011816号出願は、下記工程を含んで成る、ハイドロゲルの調製方法を記載している:
・所望する粒度を有する粒子を得るために、当業者に知られている粉砕技法に従って、第1の強く架橋された多糖の粒子を調製する工程、
・それらの粒子を懸濁する工程、
・少なくとも1つの第2の多糖を添加する工程、及び
・少なくとも1つの第2の弱く架橋された多糖を得るために、前記少なくとも1つの第2の多糖を、架橋度X2まで架橋し、そして前記少なくとも1つの弱く架橋された第2の多糖と前記粒子とを一緒に架橋する工程。
【0046】
この出願とは異なって、本発明は、架橋の間、架橋された粒子の使用(反応混合物における調製及び/又は添加)を包含しない。注目すべきは、下記の本発明の架橋方法の間、架橋されたヒアルロン酸粒子の調製を可能にする粉砕工程が存在しない:
・部分的に架橋された層について、それらの層を混合する前、架橋の継続、
・架橋継続の間、部分的に架橋された層の混合。
【0047】
−米国特許2010/0028435号出願は、欧州特許2011816号の方法に類似する、注射可能ゲルの調製方法を記載する。
【0048】
米国特許2010/0028435号出願からのゲルは、ヒアルロン酸のゲルによる、ヒアルロン酸の架橋された粒子の相互架橋を達成することにより得られる。
【0049】
この出願とは異なって(また、欧州特許2011816号出願とも異なって)、本発明の架橋方法は、前記架橋方法の工程の間、ヒアルロン酸、又はその塩の1つ、又は任意の他のポリマーの架橋された粒子の何れの調製及び/又は添加も包含しない。従って、本発明の架橋方法は、ヒアルロン酸のゲルによる、架橋された粒子の相互架橋を可能にしない。
【0050】
本発明はまた、前述の架橋方法に従って架橋された、ヒアルロン酸、又はその塩の1つ、及び任意には他の生物適合性ポリマーにより形成される注射用ハイドロゲルの調製方法にも関する。この調製方法は、少なくとも次の連続した工程:
−前述の架橋方法に従って、ヒアルロン酸、又はその塩の1つ及び任意には、他の生物適合性ポリマーを架橋する工程、
−適切なpHを有する等浸透溶液によって前記混合物を精製する工程、
−1又は数個の生物適合性ポリマー、及び/又は生物に利益を提供することができる1又は数個の物質、例えば活性物質の任意の活性による前記混合物を均質化する工程、
−任意に脱気及び/又は凍結乾燥する工程、
−注射器、又はフラスコ、又は任意の他の密封容器にコンディション化する (conditioning)工程、及び
−殺菌工程、を包含することを特徴とする。
【0051】
好都合には、本発明の注射用ハイドロゲルは、注射器にコンディション化(conditioned)され、そして次に、直接的使用及び/又はマーケティングのために、それ自体知られている任意の手段に従って、及び好ましくは、オートクレープ処理により滅菌される。
【0052】
本発明はまた、前述の架橋方法に従って得られるハイドロゲルにも関する。このハイドロゲルは、共有結合を通してお互い結合される、異なった架橋度を有する架橋されたヒアルロン酸のいくつかの層の混合物により特徴づけられる、少なくとも架橋されたヒアルロン酸又はその塩の1つ、及び任意には、他の生物適合性ポリマーから成る。従って、本発明の架橋方法により得られるハイドロゲルは、同時架橋された粒子を有さない、単一の「多構造化された」(multistructured)架橋層から構成されるものとして特徴づけられ得る。
【0053】
本発明の側面によれば、ハイドロゲルは、ヒアルロン酸の誘導体に基づかれ、すなわち化学的経路又は任意の他の経路を通して、ヒアルロン酸分子を修飾することにより得られる分子に基づかれ得る。
【0054】
本発明のハイドロゲルは、針を通して押出される良好な能力、及び従って患者に関して、この関連する痛み及び有意な外傷を伴わないで、治療されるべき領域に、医師により容易に注射できる良好な能力を有する。この利点は、低い架橋度を有する層の製剤内での存在により誘発される潤滑性のために良好な注射性を促進する可能性を与える、本発明の架橋方法から生じる「多構造化された」複合マトリックスに起因する。
【0055】
本発明のハイドロゲルは、同時架橋された粒子を含まず、且つそれらの粒子からも構成されない。これは、粒子含有製品(短期及び/又は中/長期間での少数の副作用及び合併症)、再び組織中へのハイドロゲルの統合/移植の増強された能力(組織への製品のより均等な分布)を提供する。
【0056】
その「多構造化された」特徴のために、本発明のハイドロゲルは、著しい機械的/レオロジー粘弾性特性(すなわち、粘性及び弾性の)を有する。等か又は異なった割合での、及び異なった架橋度を有する、少なくとも2層の本発明のハイドロゲル内での存在が、その解剖学を観察しながら、所望する領域を治療するために医師の必要性を最適に満たす可能性、それを支配する生理学的機構、及び適用できる場合、確認される不足の修正を可能にする必要とされる機械的/レオロジー特性(例えば、頬骨の周囲に容積を生成するための強い弾力性)を提供する。
【0057】
本発明のハイドロゲルは、組織において「生物移植」される良好な能力を有する。その「多構造化される」マトリックスは、組織中の製品の最適化された浸透を可能にし、それにより、注射後の外傷の制限及び従って、注射された領域での痛みのような副作用、また任意の注射に続く炎症反応の制限を可能にする高い柔軟性を提供する。
【0058】
異なった層が共有結合を通してお互い結合されている事実により特徴づけられる、ハイドロゲルの特異的構造はまた、特に、治療される領域の機械的応力の作用下で、解離せず、従って他の隣接するか又は遠隔領域に移動しない製品の能力を改善することにより、投与されたインプラントの安全性の強化を可能にする。
【0059】
ハイドロゲルの「多構造化された」マトリックスはまた、ハイドロゲルの良好なレマネンス及び従って、美容又は治療処置の効率の拡張を誘発する注射用製品を維持しながら、高い架橋度の層を有し、さらに医学的又は外科的処置当たりの投与の回数を制限する能力も提供する。
【0060】
治療されるべき領域に依存して適合され、そして最適化され得る機械/レオロジー及び生物統合特性を特に与えられるその特定の複合構造体によりカップリングされる、本発明からのインプラントの高い安全性レベルは、生物に利益を提供することができる1又は数個の物質、及び特に活性物質及び/又は生物学的実体、例えば細胞、富化された血小板、遺伝子、DNA断片又は成長因子の制御にされた及び/又は遅延された放出のための最適な製品にする。異なった架橋度だけではなく、また異なったポリマー濃度を有する、製品内での異なった層の存在は、異なった時点でそれらの物質の個々の放出性を有し、そして従って局所又は一般的処置のための1又は数個の活性成分又は生物学的起源の化合物の塩折及び作用プロフィールを最適化する可能性を提供する。
【0061】
本発明のハイドロゲルは好都合には、ヒト又は動物生体の組織及び/又は体液中に注射により注射される。
【0062】
本発明のハイドロゲルはまた、非注射可能形でも使用され得る。この場合、医師は、適切な医学的及び/又は外科的器具により、治療されるべき領域で本発明からの滅菌製品を蓄積することにより、それを注射する。
【0063】
本発明のハイドロゲルはまた、適切な処方に従って、皮膚、毛髪、爪、目の角膜、歯、唇、の内部又は外部粘膜及び傷上への局所使用のために組成物にも使用され得る。この場合、それは、治療されるべき領域に1又は数個の利点を提供するすべての化合物、例えばビタミン、酸化防止剤、水和分子、タンパク質、薬理学的作用を有するか、又は有さない活性物質、生物学的実体、例えば富化された血小板、遺伝子、DNA断片又は成長因子、着色剤、色素、臭気分子又は芳香族分子を含むことができる。それらの化合物は、ハイドロゲルに分散されるか、又はハイドロゲルの1又は数個のポリマーにグラフトされ、又はハイドロゲル内に分散される別の材料自体に含まれ/カルセル化される。
【0064】
本発明の側面によれば、ヒアルロン酸、又はその塩の1つの総ハイドロゲル濃度は、0.01〜50mg/ml、好ましくは1〜35mg/ml、好都合には8〜30mg/mlである。
【0065】
本発明の側面によれば、本発明のハイドロゲルは、半固体又は粉末を得るために、部分的に又は完全に凍結乾燥される。
【0066】
本発明の側面によれば、本発明のハイドロゲルは、薬理学的作用を有するか又は有さない、天然又は合成起源の1又は数個の活性物質、例えば酸化防止剤、抗炎症剤、防腐剤、抗菌剤、抗真菌剤、抗癌剤、局所麻酔薬、タンパク質、ホルモンを、単独で又は組合せとして含む。それらの活性物質は、ハイドロゲルに分散されるか、又はハイドロゲルの1又は数個のポリマーにグラフとされ、又はハイドロゲル内に分散される別の材料自体に含まれ/カプセル化される。後者の場合、例として、ポリ乳酸又はポリ−ε−カプロラクトン由来のポリマーに基づくマイクロスフェアへの活性物質、例えば抗−炎症剤のカプセル化を挙げることができる。
【0067】
本発明の側面によれば、本発明のハイドロゲルは、その架橋されたマトリックス内に分散されるリドカインを含む。
【0068】
本発明の側面によれば、本発明のハイドロゲルは、生物学的起源の1又は数個の化合物、例えば細胞、富化された血小板、遺伝子、DNA断片又は成長因子を含む。それらの化合物はハイドロゲルに優先的に分散されるが、しかしそれらはまた、ハイドロゲルの1又は数個のポリマーにグラフトされるか、又はハイドロゲル内に分散される別の材料自体に含まれる/カプセル化される。
【0069】
本発明の側面によれば、本発明のハイドロゲルは、ハイドロゲルの架橋されたマトリックス内に分散されるポリマーを含む。たとえば、多糖類、ポリエステル、ポリ無水物、ポリホスファゼン、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリ乳酸及びその誘導体、ポリカルボン酸、ポリアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、及びアクリルポリマー、及び生物学的に許容できる誘導体のファミリーからのポリマーを、列挙することができる。
【0070】
本発明の側面によれば、本発明のハイドロゲルは、ハイドロゲルの架橋されたマトリックス内に分散されるミネラル物質を含む。例えば、ヒドロキシアパタイト又はリン酸三カルシウム、例えばβ−リン酸三カルシウムを挙げることができる。
【0071】
本発明の側面によれば、本発明のハイドロゲルは、患者への投与の直前、生物に有益性を提供することができる、好ましくは無菌の1又は数個の他の物質と共に混合される。次に、その混合物は、満足する混合の生成及び必要から、無菌性の保持の可能性を提供する1又は数個の混合装置を用いて、適切な方法に従って、最終使用者により、すなわち実施者又は権限を与えられた担当者により実施される。例えば、本発明のハイドロゲル、及び1又は数個の化合物、例えば活性物質、生物学的実体又はミネラル物質の混合を、最終使用者により、下記のようにして行われることが言及され得る:
−2つの容器(1つは本発明のハイドロゲルにより満たされ、そして他の1つはハイドロゲルに分散されるべき化合物により満たされる)間でラウンドトリップを行うことによる、それらの容器は例えば、注射器であり得る;
−患者への投与の前、異なった化合物を一緒にし、そして/又は別の容器でそれらを混合するために、両容器(1つは本発明のハイドロゲルにより満たされ、そして他の1つはハイドロゲルに分散されるべき化合物により満たされる)の内容物を同時に押出すことによる。
【0072】
本発明はまた、前述の架橋方法に従って得られたハイドロゲルの美容又は治療用途への使用にも関する。
【0073】
本発明により提供される利点は、美容及び医療への多くの用途のためへの、及びヒアルロン酸についての文献(例えば、Volpi et al., Curr. Med. Chem. 2009, 16:1718-45を参照のこと)にすでに広く記載されているそれらの用途のためへの、前述の架橋方法に従って得られたハイドロゲルの使用を可能にする。
【0074】
従って、本発明のハイドロゲルには、ヒト又は動物における美容又は治療用途のために使用される。それは、好都合には、注射により患者の生体内に移植されると共に、それはまた、非注射可能形でも移植され得、この場合、それは適切な医学的及び/又は外科的器具により、実施者により治療されるべき領域で蓄積される。最終的に、それは局所適用により使用され得る。
【0075】
本発明のハイドロゲルは、特に、下記のために使用される:
−容積を満たすために、
−一定の組織内に空間を生成し、それにより、それらの最適な操作を促進するために、
−生理学的液体又は欠損組織を置換するために、
−前記組織の再生を刺激するか又は促進するために、
−組織を保湿し、そして保護するめに、及び
−生物に利点を提供することができる物質、及び特に活性物質及び/又は生物学的実体を送達するために。
【0076】
例として、次の場合でのハイドロゲルの使用を挙げることができる:
−皮膚の質を改善するか又は顔又は身体のしわを充填するか又は顔又は身体(頬骨、あご、唇、鼻、等)の容積を復元するための皮内又は皮下移植可能組成物の製剤化、
−生物を保湿し、そして/又は生物に異なった性質の化合物、例えばビタミン、酸化防止剤、水和化分子、活性物質、生物学的実体、着色剤、色素、臭気分子又は芳香族分子を提供する目的を有する化粧品又は薬用化粧品の製剤化、
−長期にわたって角膜を水和するための眼科用局所組成物の製剤化、
−歯周ポケットを満たし、そして/又は歯の周囲の組織の再生を刺激するための歯科使用のための局所又は移植可能組成物の製剤化、
−特に、白内障、緑内障、老眼又は障子体の手術の間の適用のための眼内移植可能組成物の製剤化、
−特に、関節症の治療のみならず、また軟骨の骨再構成又は再生のための欠損滑膜液の粘弾性サプリメントの範囲内で、整形外科又はリウマチ学への適用のための関節内移植可能組成物の製剤化、
−失禁の治療への用途のための、泌尿器科での使用のための移植可能組成物の製剤化、 −線維症の治療の範囲内で、又は創傷の治癒を改善するために医学又は一般的外科で使用される局所又は移植可能組成物の製剤化、及び
−種々の医療用途のための活性物質及び/又は生物学的実体の遅延された及び/又は制御された放出を可能にする局所又は移植可能医薬組成物の製剤化。
【実施例】
【0077】
本発明は現在、次の実施例により、非制限的手段で例示され得る。
【0078】
ヒアルロン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、塩酸リドカイン、リン酸化カルシウムヒドロキシアパタイト、及び実施例に使用される他の全化合物は、高純度を有する。
【0079】
調製されたゲルの注射可能性は、12.5mm/分の速度で、所定の針を通して、1mlのガラス製注射器(BD Hypak SCF, 1 ml long RF-PRTC)に含まれるゲルを排出するための必要とされる力(ニュートンでの)を測定することにより決定された。
【0080】
ゲルのレオロジー特性は、40mmの平面−平面形状及び1000μmのギャップを用いてAR2000レオメーター(TA instruments)により25℃で測定された。
【0081】
実施例1:本発明のゲル1の調製
a)部分的に架橋された層Aの調製
3.0 MDaにほぼ等しい分子質量及び13.8%の湿度レベルを有するヒアルロン酸ナトリウム(NaHA)線維4.70gを計量し、これに、1重量%のNaOH水溶液45.75gを添加した。
【0082】
前記線維の水和は、スパチュラを用いた規則的な手動的均質化により、1時間20分、要した。
【0083】
1重量%のNaOH溶液により1:5で希釈された1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)の溶液1.41gを、反応媒体に添加し、続いて、手動均質化を15分間、行った。
【0084】
このようにして得られたゲルを、3つの平等な塊状物に分け、次の3種の画分を調整した:
−画分1を、30℃で1時間、恒温浴中に導入し、そして次に、HCl含有リン酸緩衝溶液により希釈し、20mg/mlの濃度及び中性pHのNaHAを得た(=層A’)。層A’を、10分間、機械的に均質化した(=ゲルA’)。
−画分2を、50℃で2時間、恒温浴中に導入し、そして次に、HCl含有リン酸緩衝溶液により希釈し、20mg/mlの濃度及び中性pHのNaHAを得た(=層A'')。層A''を、10分間、機械的に均質化した(=ゲルA'')。
−画分3を、30℃で1時間、恒温浴中に導入した。
【0085】
得られた部分的架橋層をAとする。
【0086】
b)部分的に架橋された層Bの調製
3.0 MDaにほぼ等しい分子質量及び13.8%の湿度レベルを有するヒアルロン酸ナトリウム(NaHA)線維5.25gを計量し、これに、1重量%のNaOH水溶液45.75gを添加した。
【0087】
前記線維の水和は、スパチュラを用いた規則的な手動的均質化により、1時間20分、要した。
【0088】
1重量%のNaOH溶液により1:5で希釈された1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)の溶液2.73gを、反応媒体に添加し、続いて、手動均質化を15分間、行った。
【0089】
このようにして得られたゲルを、3つの平等な塊状物に分け、次の3種の画分を調整した:
−画分1を、30℃で1時間、恒温浴中に導入し、そして次に、HCl含有リン酸緩衝溶液により希釈し、20mg/mlの濃度及び中性pHのNaHAを得た(=層B’)。層A’を、10分間、機械的に均質化した(=ゲルB’)。
−画分2を、50℃で2時間、恒温浴中に導入し、そして次に、HCl含有リン酸緩衝溶液により希釈し、20mg/mlの濃度及び中性pHのNaHAを得た(=層B'')。層A''を、10分間、機械的に均質化した(=ゲルB'')。
−画分3を、30℃で1時間、恒温浴中に導入した。
【0090】
得られた部分的架橋層をBとする。
【0091】
c)部分的架橋層A及びBの組合せ及び架橋の継続
9.0gの部分的架橋層Aを、13.0gの部分的架橋層Bに添加し、そして室温で15分間、機械的混合にゆだね、その後、50℃で2時間、恒温浴中に浸漬した。
【0092】
架橋された製品を、HCl含有リン酸緩衝液によりpH7.0に中和し、ここで24時間、膨潤し、そして次に、未反応のBDDEを除くために、リン酸緩衝溶液により24時間、透析した。
【0093】
10分間の機械的均質化の後、20mg/mlのヒアルロン酸ナトリウム濃度を有するゲルを得た。
【0094】
実施例2:実施例1のゲルの特徴づけ
ゲル1、A'、A''、B' 及び B''を、1mlのガラス注射器中に導入し、そして12.5mm/分の速度で27G1/2針を通してゲルを押出すために必要とされる力を、下記表に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
下記の通りに見える:
−架橋反応は、層A及びBに関して部分的である。実際、A’’及びB’’の排出力は、それぞれA’及びB’のその力よりも強く、このことは、ゲルA’’及びB’’がA’及びB’よりも、より架橋されることを実証し、そして
−本発明のゲル1は、B’’の排出力よりも弱い排出力を有し、そして従って、本発明の架橋方法にゆだねられなかったゲルよりも、良好な注射可能性を有する。
【0097】
1.0Hzでのゲル1のレオロジー粘弾性特性をまた測定する。
【0098】
【表2】
【0099】
実施例3:本発明のゲル2の調製
a)部分的架橋層Cの調製
2.0MDaにほぼ等しい分子質量及び6.3%の湿度レベルを有するヒアルロン酸ナトリウム(NaHA)粉末4.2gを計量し、これに、2.0%の湿度レベルを有するナトリウムカルボキシメチルセルロース(42mPa・s、水中、2%、20℃での)0.3g及び1重量%のNaOH水溶液33.6gを添加した。
【0100】
粉末の水和は、スパチュラを用いた規則的手動均質化により、1時間20分、要した。
【0101】
得られた水和層をHとする。
【0102】
1重量%所NaOH溶液により1:5で希釈された1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)溶液1.80gを、27.0gの層Hに添加し、次に、スパチュラを用いた手動的均質化を15分間、行い、続いて、50℃で1.5時間、恒温浴中にその混合物を導入した。
【0103】
b)部分的架橋層Dの調製
1重量%所NaOH溶液により1:5で希釈された1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)溶液0.10gを、上記で得られた層H3.0gに添加し、次に、スパチュラを用いた手動的均質化を15分間、行い、続いて、50℃で2時間、恒温浴中にその混合物を導入した。
【0104】
c)部分的架橋層C及びDの組合せ及び架橋の継続
部分的架橋層Dを、部分的架橋層Cに添加し、そして室温で15分間、機械的混合にゆだね、その後、50℃で2.5時間、恒温浴中に浸漬した。
【0105】
架橋された製品を、HCl含有リン酸緩衝液によりpH7.0に中和し、ここで24時間、膨潤し、そして次に、未反応のBDDEを除くために、リン酸緩衝溶液により24時間、透析した。
【0106】
10分間の機械的均質化の後、20mg/mlのヒアルロン酸ナトリウム濃度を有するゲル2を得た。
【0107】
実施例4:本発明の注射用製剤1の調製
実施例3で得られたゲル2の塊状物の25%に、0.3重量%の塩酸リドカイン粉末を添加し、そして機械的均質化を、15分間、実施した。
【0108】
このようにして得られたゲルを、1mlの注射器に導入し、そして次に、注射器を、121℃で20分間、オートクレーブにおいて滅菌した。
【0109】
実施例5:本発明の注射用製剤2の調製
実施例3で得られたゲル塊状物2の25%に、30〜50μmの粒度を有する30重量%のリン酸カルシウムヒドロキシアパタイト粉末を添加し、そして機械的均質化を15分間、実施した。
【0110】
このようにして得られたゲルを、1mlの注射器に導入し、そして次に、注射器を、121℃で20分間、オートクレーブにおいて滅菌した。
【0111】
実施6:実施例4の注射用製剤の特徴づけ
実施例4で得られた滅菌製剤は、薄い27G1/2針を通して容易に注射できることが見出され;21.3Nの放出力を、12.5mm/分の速度で測定した。
【0112】
この製剤のpH及びオスモル濃度は、下記で生理学的である:
−pH=6.9
−オスモル濃度=290mOsm/kg H
2O
【0113】
レオロジー特徴づけは、74Paの弾性率及び1.0Hzの周波数で0.25の誘電正接(Tanδ)をもたらした。
【0114】
それらのレオロジー特性は、真皮又は皮下への注射と適合できることを注目することは重要である。
【0115】
8mlの精製水を含む2つの10mlのフラスコF1及びF2に、次の通りに導入した:
− 1mlのRestylane(登録商標)(Galderma Q-Med, Uppsala, Sweden)ゲルをF1に導入し;Restylane(登録商標)は、美容医学では10年以上知られている、20mg/mlでの架橋されたヒアルロン酸に基づく製品である、そして
− 1mlの注射可能製剤1をF2に導入した。
【0116】
F1及びF2を、5秒間、手動的に攪拌した。さらに10秒後、Restylane(登録商標)製品は、水において完全に解離されることが見出され(水中、架橋されたヒアルロン酸粒子の懸濁液)、これは、水中、ゲルの形で常に存在する注射用製剤1についての場合ではない。従って、注射可能製剤1の凝集性レベルは、Restylane(登録商標)製品のそのレベルによりもはるかに高い。
【0117】
実施例7:従来技術(米国特許2010/0028435号)と本発明のゲルの製造の比較
a)発明のゲル2の調製
実施例3を参照のこと。
【0118】
b)米国特許2010/0028435号の実施例4に従っての従来技術のゲルXの調製
2.0MDaにほぼ等しい分子質量及び6.3%の湿度レベルを有するヒアルロン酸ナトリウム(NaHA)粉末3.50gを計量し、これに、1重量%のNaOH水溶液24.0gを添加した。
【0119】
粉末の水和は、1時間を要し、続いてヘラによる10分間の手動的均質化を実施した。
【0120】
700μlのBDDEを、反応媒体に添加し、続いてヘラによる10分間の手動的均質化を実施し、その後、50℃での2時間、恒温浴に浸漬した。
【0121】
架橋された製品を、HCl含有リン酸緩衝溶液によりpH=7.0に中和し、ここでそれを24時間、膨潤した(最終体積=92ml)。
【0122】
このようにして得られたゲルを、250μmのグリッドを通してそれの連続的通過により、粒子に粉砕した。
【0123】
得られた粒子を、Xpとする。
【0124】
2.0MDaにほぼ等しい分子質量及び6.3%の湿度レベルを有するヒアルロン酸ナトリウム(NaHA)粉末3.50gを計量し、これに、1重量%のNaOH水溶液30.5gを添加した。
【0125】
粉末の水和は、1時間を要し、続いてヘラによる10分間の手動的均質化を実施した。
【0126】
263μlのBDDEを、反応媒体に添加し、続いてヘラによる10分間の手動的均質化を実施し、その後、50℃での2時間、恒温浴に浸漬した。
【0127】
得られた粒子を、Xgとする。
【0128】
58gの粒子Xp及び24gの1重量%のNaOH水溶液を、架橋された製品Xgに添加し、続いて、スパチュラを用いた10分間の均質化及び25℃での6時間の架橋反応の継続を行った。
【0129】
架橋された製品を、HCl含有リン酸緩衝溶液によりpH=7.0に中和し、ここでそれを、24時間、膨潤し、そして次に、末反応BDDEを除くために、それをリン酸緩衝溶液により24時間、透析した。
【0130】
30分間の機械的均質化の後、ゲルXを得た。
【0131】
c)ゲル2及びゲルXの生成工程の比較
ゲル2及びゲルYを、1mlのガラス注射器に充填し、そして27G1/2の針を通して押出した(各ゲル/オペレーターによる手動的注射について6回の試験)。ゲル2及びゲルXは、針を通して容易に注射可能であったが、しかしながら、本発明のゲル2が注射機内でより良好な均質性を有することが見出されたことを注目することは重要である。実際、注射の間、試験を行うオペレーターは、注射器プランジャーに適用されるべき力に関して、Xゲルに多くの不規則性を観察し(本発明のゲル2の場合では存在しない);不規則性は、オペレーターにより「プッシュ」(pushs)として特徴づけられた。他方では、ゲルXについて試験される6本の注射器間で、2本の注射器は、針がゲルにより完全にブロックされ/閉塞されたので(本発明のゲル2の場合では存在しない)、完全に排出され得なかった。
【0132】
上記に記載されたように、従来技術は、架橋されたゲルの粒子への転換が製品の排出力を低め、そして従って、針を通してのその注射可能性を増強することを可能にする(強く架橋されたハイドロゲルは、針の穴を通してより通過しやすくする小さなサイズの粒子に粉砕される)ことを教授する。驚くべきことには、部分的架橋層(その1つは、高く架橋され、そして他は低く架橋されている)の粉砕工程にゆだねられていないが、しかし前記2つの部分的架橋層の組合せ及び架橋から得られる架橋された層を有する、本発明のゲル2はまた、容易に注射でき、且つまた、より均質性であることも見出された。従って、本発明の複雑な「多構造化された」(及び同時架橋なしの)構造は、製品を粒子に転換するためにそれを粉砕しないで、従来技術に記載される注射可能性の問題の対処を可能にする。
【0133】
トルイジンブルー染色試験を、ゲルの構造が粒状であるか否かを評価するために、ゲル2及びゲルXの調製工程の間に採取されたゲルサンプルに対して実施した。このために、試験されるべき約0.1gのゲルを、ガラススライド上に配置し、そしてトルイジンブルーの水溶液(100gの脱イオン水当たり0.1gのトルイジンブルー)5滴を添加し、そして次に、第2のガラススライドを、第1のガラススライド上に配置した。次に。結果を、40Xの倍率で顕微鏡下で観察し、そして写真を投影した。
【0134】
以下の色彩試験を実施した:
−ゲル2に関して:3種のサンプルについて中性pHへの中和の後、部分的架橋層C及びD(
図1及び2を参照のこと)について、及び部分的架橋層C及びDから得られる架橋製品(
図3を参照のこと)について;
−ゲルXに関して:2種のサンプルについて中性pHへの中和の後、粒子Xp(
図4を参照のこと)について、及び粒子Xpの同時架橋により得られた架橋製品(
図5を参照のこと)について。
【0135】
NaHA架橋粒子が明確に見える
図4(及びまた、
図5)に比較して、本発明のゲル2に関する
図1−3のゲル構造は粒状ではない。本発明の架橋方法の間、部分的架橋層の非転換は、同時架橋されたNaHAの粒子を含まないハイドロゲルの入手を可能にする。
【0136】
これは、従来技術の製品、及び特に、米国特許第2010/0028435号及びまた、欧州特許第2011816号に記載される製品よりも有意な利点を提供する。実際、文献、及びまた米国特許第2010/0028435号及び欧州特許第2011816号に記載されるように、架橋粒子は、短期及び長期で副作用及び合併症を生む(欧州特許第2011816号においては、架橋粒子は外来物質に対して多かれ少なかれ、強い反応を発生されるものとして特に記載されている)。本発明においては、従って、同時架橋される粒子の不在が、容易な注射可能性を維持しながら、製品の良好な安全性プロフィールに関して、米国特許第2010/0028435号及び欧州特許第2011816号に開示される発明よりも、主要な改善性を提供する。
【0137】
他方では、米国特許第2010/0028435号及び欧州特許第2011816号が、弱く架橋されたNaHAマトリックスと共にそれらの粒子の同時架橋のために、身体内での高く架橋される粒子の移動の制限を主張していることを注目することもまた重要である。これは短期では真実であるが、しかし高く架橋された粒子の移動は、架橋された弱架橋NaHAのマトリックスが再吸収された場合、長期において再び可能になる。この後者の点はさらに、本発明の注射可能ハイドロゲルの改善された安全性プロフィールを確証し、ここで長期での同時架橋された粒子の移動の問題が発生しない(本発明のハイドロゲルは同時架橋された粒子を含まない)。
【0138】
別の主要な利点は、米国特許第2010/0028435号及びまた、欧州特許第2011816号からの同時架橋された粒子の製品に比較して、本発明の製品の組織中への良好な統合(=生体統合/生体移植)である。実際、種々の科学出版物(例えば、Tran C. et al., In vivo bio-integration of three HA fillers in human skin: a histological study, Dermatology 2014, 228:4754;又はMicheels, P. et al., Superficial dermal injection of HA soft tissue fillers: comparative ultrasound study, Dermatol. Surg. 2012, 38:1162-1169)に記載されるように、架橋された粒状NaHAに基づく製品(例えば、米国特許第2010/0028435号及び欧州特許第2011816号に開示される製品)の真皮への注射は、架橋された非粒状NaHAに基づく製品(本発明のハイドロゲルの場合におけるように)に比較して、有意に一層の不均一な分散性をもたらす。
【0139】
本発明のハイドロゲルの調製方法は、米国特許第2010/0028435号及び欧州特許第2011816号に記載される方法に比較して、製品の製造のために有意に短い期間を要することを注目することもまた重要である。本発明のゲル2についての製造時間(約55時間)及び米国特許第2010/0028435号のゲルXの製造時間(約85時間)の比較は、この点を示すことができる。これは、明確な経済的利点を提供し、そしてまた、製造の間、ゲルの細菌汚染の危険性を最少にし、このことが、製造工程の持続期間を高める。
【0140】
実施例8:従来技術(欧州特許第2011816号)と本発明のゲルの製造の比較
a)本発明のゲル2の調製
実施例3を参照のこと。
【0141】
b)欧州特許第2011816号の実施例1に従っての従来技術のゲルYの調製
2.0MDaにほぼ等しい分子質量及び6.3%の湿度レベルを有するヒアルロン酸ナトリウム(NaHA)粉末1.00gを計量し、これに、1重量%のNaOH水溶液6.2gを添加した。
【0142】
粉末の水和は、1時間20分を要し、続いてスパチュラを用いた手動的均質化を実施した。
【0143】
0.15gのBDDEを、反応媒体に添加し、続いてヘラによる10分間の手動的均質化を実施し、その後、50℃での2.5時間、恒温浴に浸漬した。
【0144】
架橋された製品を、脱イオン水に24時間導入し、ここでそれぞれ8時間の3回の連続浴を使用し、未反応のBDDEを除去した。
【0145】
このようにして得られたゲルを、250μmのグリッドを通してそれの連続的通過により、粒子に粉砕し、そして粒子を2時間排水した。
【0146】
得られた粒子を、Ypとする。
【0147】
5.0gの粒子Ypを、2.0MDaにほぼ等しい分子質量及び6.3%の湿度レベルを有するヒアルロン酸ナトリウム(NaHA)粉末0.8gに添加し、これに、1重量%のNaOH水溶液2.0gを添加した。
【0148】
混合物を30分間、手動的に均質化し、その後、0.03gのBDDEを添加し、そして次に、再び30分間、均質化し、その後、反応混合物を、50℃で2.5時間、恒温浴中に浸漬した。
【0149】
得られた架橋製品を、Ygとする。
【0150】
架橋された製品Ygを、HCl含有リン酸緩衝溶液によりpH=7.0に中和し、ここでそれを、24時間、膨潤し、そして次に、末反応BDDEを除くために、それをリン酸緩衝溶液により24時間、透析した。
【0151】
30分間の機械的均質化の後、ゲルYを得た。
【0152】
c)ゲル2及びゲルYの製造工程の比較
実施例7におけるように、ゲル2及びYを、1mlのガラス注射器中に充填し、そして27G1/2の針を通して押出した。2種のゲルは針を通して容易に注射可能であることが見出され、そして実施例7に関して言及されるそれらのコメントと同じコメントが適用される:本発明のゲル2は、針を通してのその注射がゲルYのものよりも、より規則的であったので、より均質であることが見いさされた。驚くべきことには、本発明のゲル2は、注射可能性を促進するために、粒子への何れの粉砕工程にもゆだねられていないが、ゲル2の複雑な「多構造化された」構造は、粒子へのその強く架橋された層の転換工程にゆだねられたゲルYの排出力に類似する低放出力を示す。
【0153】
実施例7におけるように、トルイジンブルー染色を、ゲル2及びYの調製工程の間に採取されたゲルサンプルに対して行った。
【0154】
以下の色彩試験を実施した:
−ゲル2に関して:3種のサンプルについて中性pHへの中和の後、部分的架橋層C及びD(
図1及び2を参照のこと)について、及び部分的架橋層C及びDから得られる架橋製品(
図3を参照のこと)について;
−ゲルYに関して:2種のサンプルについて中性pHへの中和の後、粒子Yp(
図6を参照のこと)について、及び粒子Ypの同時架橋により得られた架橋製品(
図7を参照のこと)について。
【0155】
結論は、実施例7の結論と同じである。NaHA架橋された粒子が明確に見える
図6(及びまた、
図7)に比較して、本発明のゲル2に関する
図1−3のゲル構造は、粒状でない。
【0156】
従って、本発明は、その架橋工程の間、粒子を形成するために、粉砕されなかった(部分的に又は完全に)事実にもかかわらず、容易に注射可能ハイドロゲルの入手を可能にする。従って、ゲルにおける同時架橋された粒子の不在は、次の有意な改善性(欧州特許第2011816号において得られるゲルに比較して)の達成を可能する:
−短及び長期での安全性プロフィールが改善され、特に欧州特許第2011816号におけるように、長期での高く架橋された粒子の移動が存在せず;
−組織中へのゲルの生体統合性(より均等な分布)が、同時架橋された粒子の不在のために、増強される。
【0157】
最終的に、実施例7におけるように、本発明のゲルの製造は、その製造工程が、欧州特許第2011816号に記載されるその工程よりも有意に早く(欧州特許第2011816号のゲルについて83時間に比較して、本発明のゲルについてほぼ55時間)、そしてそれは、欧州特許第2011816号において必要とされるそれらの工程のように、1又は数個の複雑で且つ退屈な製粉工程を必要としないので、経済的利点を有し、そして微粒子及び細菌汚染の危険性を最小限にすることを注目することは重要である。