(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測角方向に対応した測角方向軸と当該測角方向軸に直交する測角直交軸とを座標軸とする平面上に、送信アンテナと、前記送信アンテナに対する前記測角直交軸の方向の位置関係が一定であり、且つ測角方向座標が互いに異なる複数の受信アンテナとが配置され、前記測角方向軸を含む測角面内での受信方向の検出を可能とするアンテナ装置であって、
前記複数の受信アンテナは、それぞれ複数の前記受信アンテナが前記測角方向に並び、且つ測角直交座標が互いに異なる複数の受信アンテナ列を形成し、
前記送信アンテナは、前記位置関係を有して前記各受信アンテナ列に対して設けられ、当該受信アンテナ列とアンテナ対をなし、
前記アンテナ対での前記送信アンテナに対する前記受信アンテナの測角方向座標の差を相対座標とすると、2個の前記受信アンテナの全ての組合せにおける前記受信アンテナ同士での前記相対座標の差の絶対値は、公差が送信波の半波長以下であり項数が前記受信アンテナの総数以上の所定数である等差数列の各項の値をとり、
任意の2つの前記アンテナ対の前記測角方向の位置関係は、いずれか一方の前記アンテナ対における前記受信アンテナ列の前記測角方向の配置範囲が他方の前記アンテナ対における前記受信アンテナ列の前記測角方向の配置範囲を包含する関係であること、
を特徴とするアンテナ装置。
前記公差及び前記任意の2つのアンテナ対における前記送信アンテナの測角方向座標の差は、前記送信波の半波長であること、を特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
測角方向に対応した測角方向軸と当該測角方向軸に直交する測角直交軸とを座標軸とする平面上に、受信アンテナと、前記受信アンテナに対する前記測角直交軸の方向の位置関係が一定であり、且つ測角方向座標が互いに異なる複数の送信アンテナとが配置され、前記測角方向軸を含む測角面内での受信方向の検出を可能とするアンテナ装置であって、
前記複数の送信アンテナは、それぞれ複数の前記送信アンテナが前記測角方向に並び、且つ測角直交座標が互いに異なる複数の送信アンテナ列を形成し、
前記受信アンテナは、前記位置関係を有して前記各送信アンテナ列に対して設けられ、当該送信アンテナ列とアンテナ対をなし、
前記アンテナ対での前記受信アンテナに対する前記送信アンテナの測角方向座標の差を相対座標とすると、2個の前記送信アンテナの全ての組合せにおける前記送信アンテナ同士での前記相対座標の差の絶対値は、公差が送信波の半波長以下であり項数が前記送信アンテナの総数以上の所定数である等差数列の各項の値をとり、
任意の2つの前記アンテナ対の前記測角方向の位置関係は、いずれか一方の前記アンテナ対における前記送信アンテナ列の前記測角方向の配置範囲が他方の前記アンテナ対における前記送信アンテナ列の前記測角方向の配置範囲を包含する関係であること、
を特徴とするアンテナ装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)であるレーダ装置10について、図面に基づいて説明する。本実施形態のレーダ装置10は、当該レーダ装置10が設置された空間に存在する物体を検出する監視装置を構成し、例えば、人を検出対象物体とする。レーダ装置10のアンテナ装置は、受信アンテナを複数並べて構成する。当該アンテナ装置は受信アンテナの配列方向に対応してビームの方向を走査でき、レーダ装置10は監視対象の空間における電波を反射する物体の方向を検出する。
【0014】
レーダ装置10を設置し監視を行う空間は例えば建物の内部(部屋や廊下)、またはその周りの敷地内(庭や駐車場)などとされる。当該監視用途のためレーダ装置10は、近傍の物体から遠方の物体に至るまでその位置を検知できるよう、監視対象の空間において高所から見下ろすように斜め下方に向けて設置される。このように設置した場合、受信アンテナを上下方向に並べる(延在させる)ことで受信アンテナの上下方向の角度分解能、すなわち監視対象の空間の奥行方向および高さ方向の分解能を高めることができる。
【0015】
ここで、送信アンテナ及び受信アンテナとして、延在したアンテナを用いると、その延在方向に関するアンテナパターン(つまり延在方向に沿った平面上での電波の放射又は受信される範囲)の幅が狭くなる一方、ゲインが高まる。つまり、アンテナの放射特性に指向性を持たせることができる。そこで、本実施形態では上下方向に延在させたアレイ型アンテナを用いる。
【0016】
図1は、アレイ型アンテナの例を示す模式的な平面図である。
図1(a)に示すアレイ型アンテナ500は、送受信する電波の波長を考慮した大きさの平面導体からなるパッチ素子501を直線上に並べ、それらの相互間を導体線路502で接続して直鎖状としたものであり、例えば、誘電体からなる基板表面に形成・配置される。なお、図においてアンテナ中心503の位置を“×”印で示しており、アレイ型アンテナの延在方向504を両矢印で示している。1つのアレイ型アンテナにおけるパッチ素子の大きさは相違してもよく、例えば、
図1(b)に示すアレイ型アンテナ510では、3つのパッチ素子のうち両端の2つの面積が中央の1つより小さく設定されている。また、1つのアレイ型アンテナを構成するパッチ素子の数は3つには限られず、例えば、より多くのパッチ素子を用いてもよく、
図1(c)に示すアレイ型アンテナ520では5つのパッチ素子が直鎖状に接続されている。
【0017】
図2は実施形態に係るレーダ装置10の概略のブロック構成図である。レーダ装置10は本発明に係るアンテナ装置20を有する。アンテナ装置20は送信アンテナ21及び受信アンテナ22を有する。レーダ装置10はさらに、受信器23、切替器25、発信器30、アナログ−デジタル(A/D)変換器40、変調信号発生器50、切替信号発生器60、測距測角処理部70及び出力部80を備える。
【0018】
以下、レーダ装置10の各部について説明する。
【0019】
アンテナ装置20は、平面状の基板及び当該基板を保護する筐体などから構成される。送信アンテナ21及び受信アンテナ22は例えば、誘電体からなる基板表面に導体パターンを配置して形成される。送信アンテナ21及び受信アンテナ22はそれぞれ複数個形成される。
図2の構成ではアンテナ装置20はn個の送信アンテナ21−1〜21−n、及びm個(m>n)の受信アンテナ22−1〜22−mを有する。各送信アンテナ21及び各受信アンテナ22は、直線上に並んだ複数のパッチ素子及びそれらの間を接続する導体線路からなる直鎖状の導体パターンを有したアレイ型アンテナである。
【0020】
送信アンテナ21は発信器30から送られてくる信号に従い、マイクロ波帯(例えば24GHzなど)の電波を放射する。受信アンテナ22は物体にて反射した電波を受信する。送信アンテナ21及び受信アンテナ22の具体的な配置については後述するが、受信アンテナ22はn列に配置され、送信アンテナ21は受信アンテナ22の各列に対応して1つずつ設けられ、当該受信アンテナ列とアンテナ対をなす。
【0021】
切替信号発生器60は、アンテナ装置20を構成する複数(本実施形態ではn組)のアンテナ対を時分割に切り替えて送受信するためのタイミングを表す切替信号を発生し、変調信号発生器50、切替器25及び測距測角処理部70に入力する。本実施形態では、切替信号発生器60は4kHzにてアンテナ対を順次、切り替える切替信号を発生するものとする。
【0022】
変調信号発生器50はFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式における変調信号を生成する。例えば、変調信号発生器50は変調信号として三角波信号を発生する。変調信号発生器50は切替信号発生器60から入力される切替信号に同期して対称三角波を生成し、アンテナ対ごとにFMCW方式における1サイクルの周波数掃引を実現する。なお、変調信号は対称三角波の代わりに鋸波としてもよい。
【0023】
発信器30は変調信号発生器50から入力された変調信号に応じて周波数が変化する電波を生成する。例えば、発信器30は変調信号として対称三角波を入力され、周波数のアップ/ダウン掃引を行い、周波数が時間に対し三角波状に変化するFMCW信号を生成する。周波数偏移幅は例えば、24.06〜24.24GHzとすることができる。
【0024】
切替器25は、切替信号発生器60からの切替信号により送信アンテナ21のいずれか1つを選択して発信器30と接続する切替処理を行う。本実施形態では上述したように4kHzにて、送信アンテナ21を順次切り替えて、電波を送出する。
【0025】
受信器23は各受信アンテナ22に対応して設けられる。すなわち受信アンテナ22−1〜22−mそれぞれに対応して、受信器23−1〜23−mが設けられる。各受信器23は、対応する受信アンテナ22から入力される受信信号を検波・増幅し、増幅された検波信号をフィルタリング処理により波形整形してA/D変換器40へ出力する。
【0026】
A/D変換器40は、各受信器23にて波形整形された結果をデジタル値に変換して測距測角処理部70に出力する。A/D変換器40は、m個の受信アンテナ22で同時に受信され受信器23から並列して出力される複数の信号をデジタル値に変換できるように、マルチチャンネルにて入力できるものとする。
【0027】
測距測角処理部70は、A/D変換器40から入力された受信結果を用いて、レーダ装置10に対する物体(人)の距離及び角度を算出する。測距測角処理部70は、切替信号発生器60から入力される切替信号に同期して、電波を放射する送信アンテナ21とアンテナ対をなす受信アンテナ22の受信結果を取得し、測距測角処理に用いる。
【0028】
本発明に係るレーダ装置10は、切替信号発生器60からの切替信号に従って複数のアンテナ対を切り替えてアンテナ対ごとに受信結果を取得する一方、複数のアンテナ対の受信アンテナ22を要素とする仮想アンテナを形成して測距測角処理を行う。つまり、レーダ装置10は、異なるアンテナ対ごとの受信結果を組み合わせて仮想アンテナの受信結果とし、これを用いて測距測角処理を行う。
【0029】
ここで、複数のアンテナ対は時分割で送受信するので、異なるアンテナ対の受信結果は異なるタイミングで得られる。そのため、測距測角処理部70はA/D変換器40から得られるアンテナ対ごとの受信結果をバッファメモリに一時記憶する。例えば、切替信号発生器60の連続するn回の切替信号に対応したn組のアンテナ対各1回ずつの送受信で得られる受信結果を1セットとして、測距測角処理部70はバッファメモリに蓄積された1セットの受信結果に基づいて1回の測距測角処理を行う。なお、バッファメモリは、処理済みの受信結果を順次、新たな受信結果で上書きする構成とすることができる。
【0030】
本実施形態では、測距処理はFMCW方式、測角処理はビームフォーミング法を用いるものとするが、これに限られず適宜置換可能な他の方式を採用しても良い。
【0031】
出力部80は、測距測角処理部70が求めた距離及び角度を外部の機器に出力するための通信インターフェースである。適宜、Ethernet(登録商標)やRS232Cなどの規格に則って実現される。
【0032】
ちなみに、上述のレーダ装置10の構成のうち、切替信号発生器60、変調信号発生器50、発信器30、切替器25、受信器23、A/D変換器40が、複数のアンテナ対を時分割で選択し、選択したアンテナ対により送信波を送信し受信結果を取得する送受信処理手段を構成する。また、測距測角処理部70は、送受信処理手段によりアンテナ対単位での時分割の送信処理で得られた複数の受信結果を、一回の仮想的な送信処理に係る仮想アンテナの受信結果として合成する合成手段、及び合成手段により合成された受信結果に基づいて、対象物体の存在方向に対応する受信方向を検出する検出処理手段を構成する。
【0033】
次に、アンテナ対についてさらに説明する。
図3はアンテナ対を説明するための、アレイ型アンテナを配置したアンテナ装置の模式的な正面図である。当該アンテナ装置は平面上に形成された導体パターンからなる送信アンテナ及び受信アンテナを有する。
【0034】
図3において、直交座標系xyzのy軸,z軸をそれぞれアンテナ装置の平面に沿った横方向、縦方向とし、x軸をアンテナ装置の平面の法線方向とする。なお、
図3のアレイ型アンテナは、yz平面に沿う基板上において送信アンテナ21及び受信アンテナ22が配置されている様子を示している。なお、
図3に示す配置は、アンテナ対を説明するためのものであり、本実施形態のレーダ装置10のアンテナ装置20における送信アンテナ21及び受信アンテナ22の配置そのものではない。
【0035】
図3は、1つの送信アンテナから放射した電波を測角方向に並ぶ複数の受信アンテナで受信することで測角及び測距を行う構成を示しており、具体的には
図3ではz軸方向が測角方向となる。すなわち、アンテナの基板面であるyz平面を定義する座標軸のうちz軸が測角方向軸であり、測角方向軸を含む測角面内での受信方向の検出が行われる。本実施形態では測角面は基板に直交する面、つまりxz平面とする。一方、y軸は測角方向に直交する軸であり、測角直交軸と呼ぶことにする。複数の受信アンテナの送信アンテナに対する測角直交軸方向の位置関係は一定とされ、これにより測距測角処理が不要に複雑化することを避けられる。
【0036】
図3に示す2つの送信アンテナ21及び6つの受信アンテナ22−1〜22−6はそれぞれ
図1を用いて説明したアレイ型アンテナであり、z軸方向に並ぶ3つのパッチ素子を有する例を示している。既に述べたように、測角方向(z軸方向)に延在したアレイ型アンテナを用いることで、xz平面内でのビーム幅を狭める(指向性を持たせる)ことができる。
【0037】
受信アンテナ22−1〜22−3は測角方向であるz軸方向の直線上に一列に配置され、同様に受信アンテナ22−4〜22−6もz軸方向の直線上に一列に配置されている。この測角方向に並ぶ受信アンテナ22の列が受信アンテナ列である。すなわち、受信アンテナ22−1〜22−3が1つの受信アンテナ列220を構成し、受信アンテナ22−4〜22−6がもう1つの受信アンテナ列221を構成する。そして、受信アンテナ列220,221は測角直交座標であるy座標が互いに異なる位置、つまり測角直交軸の方向にずれた位置に配置される。
【0038】
2つの受信アンテナ列に対応して送信アンテナ21は2つ配置され、送信アンテナ21−1と受信アンテナ列220とが1つのアンテナ対をなし、送信アンテナ21−2と受信アンテナ列221とがもう1つのアンテナ対をなす。各受信アンテナ列220,221に対応する送信アンテナ21の測角直交軸方向の位置関係は上述したように一定に設定される。つまり、受信アンテナ列220のy座標と送信アンテナ21−1のy座標との差と、受信アンテナ列221のy座標と送信アンテナ21−2のy座標との差とは同一である。また、アンテナ対同士は基板上にて互いに平行な位置関係に配置される。
【0039】
次に、アンテナ装置20における送信アンテナ21及び受信アンテナ22の本発明にかかる配置方法について述べる。実施形態に係るアンテナ装置20の測角方向軸及び測角直交軸は
図3の説明で述べた定義と同じである。すなわち、z軸が測角方向軸であり、y軸が測角直交軸である。
【0040】
ここで、アレイ型アンテナの配置周期が、送受信される電波の半波長より大きくなると、受信波の到来角度の推定処理にて虚像が生じる。つまり、虚像の影響を排除するためには配置周期を半波長以下とする必要がある。しかし、
図3に示すようにアレイ型アンテナの長手方向と配列方向とが同じ場合には、半波長以下の周期で同一直線上にアレイ型アンテナを配列しようとすると、隣り合うアレイ型アンテナの導体パターンの干渉が起こり易くなる。つまり、測角方向(z軸方向)に延在したアレイ型アンテナである受信アンテナを測角方向に一列に並べる場合には、物理的に受信アンテナが重なり易くなり、受信アンテナの測角方向の配列周期を小さくすることが制約され、その結果、虚像の抑制が難しくなる、またはz軸方向の好適な測角分解能が得られる測角範囲が狭くなるという問題があった。
【0041】
このように一列に並べたときに受信アンテナ同士に干渉が生じる場合に、本発明では干渉する受信アンテナのいずれかを測角直交軸(y軸)の方向にずらした配置として干渉を回避する。これにより測角直交軸方向の位置が異なる受信アンテナが生じることになるが、これに対応して、送信アンテナを増設し、測角直交軸方向の座標が異なる受信アンテナごとに上述したアンテナ対を形成する。以下、具体例を説明する。
【0042】
なお、当該具体例のアンテナ装置20の送信アンテナ21及び受信アンテナ22はそれぞれ、
図3の送信アンテナ及び受信アンテナと同じく3つのパッチ素子を測角方向(z軸方向)に並べたアレイ型アンテナとし、形状及びサイズは互いに共通とする。下記の例では、各アンテナの測角方向のサイズは3λ/2より大きく2λよりは小さい。また下記の例で用いる測角直交軸(y軸)の方向の距離wは各アンテナの測角直交軸の方向のサイズより大きい値とする。
【0043】
なお、パッチ素子は送受信する電波の波長を考慮した大きさであり、アンテナとしての感度を確保しつつ、そのパッチ素子を測角方向に複数個直鎖状に接続することで測角方向の指向性を持たせることが可能となる。
【0044】
また送信アンテナおよび受信アンテナは、
図1(b)のように大きさの異なるパッチ素子を含んでも良いし、
図1(c)のように3つ以外の複数のパッチ素子で構成されても良い。
【0045】
本実施形態のレーダ装置10はz軸方向に延在した受信アンテナを異なる複数のz座標に配置してz軸方向の測角を行う機能を有する点に一つの特徴がある。そこで、以下の説明ではレーダ装置10におけるz軸方向の測角に関する側面を主に述べる。
【0046】
[第1のアンテナ配置例]
ここで説明する第1の例のアンテナ装置20には2つの送信アンテナ(Tx1,Tx2)、及び4つの受信アンテナ(Rx1〜Rx4)が配置される。第1の例のアンテナ装置20は、測角手法としてビームフォーミング法に対応した構成であり、アンテナ同士の間隔について、測角方向に送信電波の波長λの半分(λ/2)の1〜6倍までの各整数倍の間隔が形成されるように受信アンテナ22が配置される。
【0047】
図4は実施形態に係るアンテナ装置20の第1の例を説明するアンテナ装置の模式的な正面図、すなわち送信アンテナ及び受信アンテナが配置される基板をその法線方向から見た図である。
図4(a)は実施形態の第1の例であるアンテナ装置20に関連するアンテナ装置の正面図であり、
図4(b)が実施形態の第1の例であるアンテナ装置20の正面図である。
【0048】
図において“×”印は各アンテナの中心を表し、アンテナの位置はこの“×”印の位置とし、またアンテナ同士の距離又は間隔はこの“×”印を基準点として測る。特に、z座標の差、つまり測角方向であるz軸方向の距離を測角方向距離と呼ぶことにする。
【0049】
図4(a)のアンテナ装置では、受信アンテナRx1を基準にして、受信アンテナRx2〜Rx4のz座標はそれぞれ−λ/2,−2λ,−3λである。この配置では、受信アンテナRx1とRx2との測角方向距離が半波長の1倍、受信アンテナRx3とRx4との測角方向距離が半波長の2倍、受信アンテナRx2とRx3との測角方向距離が半波長の3倍、受信アンテナRx1とRx3との測角方向距離が半波長の4倍、受信アンテナRx2とRx4との測角方向距離が半波長の5倍、受信アンテナRx1とRx4との測角方向距離が半波長の6倍となっており、半波長の1〜6倍の測角方向距離を含む。
【0050】
一方、上述の受信アンテナRx1〜Rx4のz座標ではそれら4つの受信アンテナをz軸方向に一列に配置しようとすると干渉が生じる。この点、受信アンテナRx1〜Rx4を複数の受信アンテナ列に分けることで、互いに重なりを生じずに上述のz座標に配置でき、測角方向距離について半波長の1〜6倍を得ることができる。
【0051】
具体的には、受信アンテナRx1との測角方向距離がλ/2である受信アンテナRx2はRx1から測角直交軸の方向、すなわちy軸方向に距離wだけずらして配置する。例えば、Rx2をRx1に対してy軸の正の向きにずらして配置する。このようにRx1,Rx2をy軸方向にずらして配置することで両者の干渉を防ぐことができる。
【0052】
受信アンテナRx1から測角方向距離が2λである受信アンテナRx3は受信アンテナRx1との重なり無しに受信アンテナRx1と同じy座標に配置できる。
【0053】
受信アンテナRx3との測角方向距離がλである受信アンテナRx4は、Rx3との干渉を避けるために測角直交軸の方向、すなわちy軸方向にずらして配置する。ここで、Rx4とRx2との測角方向距離は5λ/2であるので、Rx4はRx2と同じy座標に配置しても干渉を生じない。よって、Rx4をRx3に対してy軸の正の向きに距離wだけずらして配置する。
【0054】
このように受信アンテナRx1〜Rx4は測角直交軸(y軸)の方向に距離wだけ離れた2つの受信アンテナ列に振り分けて配置することで、受信アンテナ相互の干渉が生じない配置が得られる。
【0055】
2つの受信アンテナ列に対応して2つの送信アンテナTx1,Tx2が配置される。具体的には、受信アンテナRx1,Rx3からなる第1の受信アンテナ列とアンテナ対をなす送信アンテナTx1は、第1の受信アンテナ列からy軸の正の向きにずれた位置に配置される。また、受信アンテナRx2,Rx4からなる第2の受信アンテナ列とアンテナ対をなす送信アンテナTx2は第2の受信アンテナ列からy軸の正の向きにずれた位置に配置される。なお、送信アンテナTx1,Tx2はz軸方向に関し、各受信アンテナ列のz軸方向の配置範囲内に配置される。
【0056】
ここで、既に述べたように、アンテナ対をなす受信アンテナ列と送信アンテナとの測角直交軸方向の位置関係は、アンテナ対によらず一定とされる。よって、第2の受信アンテナ列が第1の受信アンテナ列に対してy軸の正の方向に距離wだけずれて配置されるのに対応して、送信アンテナTx2は送信アンテナTx1に対してy軸の正の方向に距離wだけずれて配置される。
【0057】
図4(b)に示す実施形態の第1の例に係るアンテナ装置20は、
図4(a)における第1の受信アンテナ列(Rx1,Rx3)と送信アンテナTx1とからなる第1のアンテナ対に対し、第2の受信アンテナ列(Rx2,Rx4)と送信アンテナTx2とからなる第2のアンテナ対を測角方向軸(z軸)の正の向きに距離λ/2だけずらした配置を有する。このようにアンテナ対の測角方向の位置を定めることで、第2の受信アンテナ列の測角方向の配置範囲が第1の受信アンテナ列の測角方向の配置範囲を包含し、アンテナ素子が配置される測角方向のサイズが
図4(a)の配置より小さくなる。
【0058】
ちなみに、
図4(b)のアンテナ装置20では、受信アンテナの配置では、受信アンテナRx1を基準にして、受信アンテナRx2〜Rx4のz座標はそれぞれ0,−2λ,−5λ/2となり、その結果、2つの受信アンテナの測角方向距離は受信アンテナの全ての組み合わせに対して、半波長の1、4、5倍のみとなる。つまり、受信アンテナだけに着目すると、測角方向距離が半波長の2倍、3倍、6倍となる受信アンテナの組は存在していない点で
図4(a)と相違するように見える。
【0059】
しかし、上述したように電波の送受信はアンテナ対を単位として行われ、測距測角処理には、アンテナ対をなす送信アンテナと受信アンテナとの測角方向距離が影響を与える。そこで、アンテナ対での送信アンテナに対する受信アンテナの測角方向座標の差を相対座標と呼ぶことにする。
【0060】
測角方向での受信方向の検知を可能とするためには、アンテナ装置20における送信アンテナ21及び受信アンテナ22の配置は、2個の受信アンテナの全ての組合せにおける受信アンテナ同士での相対座標の差の絶対値(記号Δ
Sで表す。)が複数種類存在するように設定される。また、当該種類の数が多く大きなΔ
Sまで存在するほど高い測角分解能が得られる。この点に関し、
図4(b)のアンテナ装置20は以下に説明するように6通りのΔ
Sを得ることができ、
図4(a)と等価である。
【0061】
まず、送信アンテナに対する受信アンテナの測角方向座標の差で定義する相対座標は、受信アンテナRx1における当該相対座標を基準すると、Rx1と同じく送信アンテナTx1とアンテナ対をなす受信アンテナについては、Rx1に対するz座標の相違のみが相対座標の相違を生じ、一方、送信アンテナTx2とアンテナ対をなす受信アンテナについては、当該受信アンテナのRx1に対するz座標の相違と共に、Tx2のTx1に対するz座標の相違が相対座標の相違に寄与する。具体的には、受信アンテナRx1の相対座標を基準値αと置くと、受信アンテナRx2〜Rx4それぞれの相対座標はα−λ/2,α−2λ,α−3λとなる。
【0062】
よって、相対座標の差の絶対値Δ
Sは、受信アンテナの組(Rx1,Rx2)について半波長の1倍、組(Rx3,Rx4)について半波長の2倍、組(Rx2,Rx3)について半波長の3倍、組(Rx1,Rx3)について半波長の4倍、組(Rx2,Rx4)について半波長の5倍、組(Rx1,Rx4)について半波長の6倍となり、上述したように6通り存在する。
【0063】
ちなみに、
図4(b)に示すアンテナ装置20は、2個の受信アンテナの全ての組合せにおける受信アンテナ同士での相対座標の差の絶対値Δ
Sが、公差が送信波の半波長以下であり項数が受信アンテナの総数m以上の所定数である等差数列の各項の値をとる構成の一例となっている。具体的には、m=4に対して、Δ
Sは、公差及び初項がλ/2、項数が6である等差数列をなす。このようにレーダ装置10における所要数のΔ
Sの種類を、それより少ない数の受信アンテナで実現できる。つまり測角距離と角度分解能を確保しつつ、アンテナ数の減少が図られ、サイズの小型化及び消費電力の低減が図られる。
【0064】
図5は
図4(b)に示す実施形態に係るアンテナ装置20との比較例とするアンテナ装置の模式的な正面図である。
図5は、z座標を等間隔(λ/2)に設定された複数の受信アンテナにより、
図4(b)のアンテナ装置20と同数のΔ
Sを実現するアンテナ装置の構成を示している。具体的には、当該構成では7個の受信アンテナRx1〜Rx7を4つの受信アンテナ列に分けて配置し、また4個の送信アンテナを必要とする。これに対して
図4(b)の構成は上述したように受信アンテナの個数は4個であり、また受信アンテナ列は2列で済み、送信アンテナも2個で済む。
【0065】
さらに、
図4(b)のアンテナ装置20は、任意の2つのアンテナ対の測角方向の位置関係が、いずれか一方のアンテナ対における受信アンテナ列の測角方向の配置範囲が他方のアンテナ対における受信アンテナ列の測角方向の配置範囲を包含する関係である構成の一例となっており、これにより、既に述べたようにz軸方向のサイズを
図4(a)の配置より小さくすることができる。なお、
図5の構成ではz座標が最も離れたRx1とRx7との測角方向距離は3λであるのに対し、
図4(b)の構成ではz座標が最も離れたRx1とRx4との測角方向距離は5λ/2である。つまり
図4(b)の構成は
図5の構成と比較しても測角方向(z軸方向)のサイズが小さい。
【0066】
図6は
図4(b)に示すアンテナ装置20の第1の例を用いたレーダ装置10における測角処理の概略のフロー図である。以下、
図6を参照しつつレーダ装置10の測角処理にかかる動作について説明する。
【0067】
図6に示す一連の処理を1回行うごとに、或る1つのタイミングでの測角結果が得られ、レーダ装置10は当該処理を繰り返すことで、例えば、移動する物体が存在する方向の変化を検出することができる。
【0068】
上述したようにレーダ装置10は、切替信号発生器60の発生する切替信号に同期してアンテナ対を順次切り替え、送受信処理を行う。また、レーダ装置10はMIMO(多入力多出力)アンテナの分野では周知な技術である仮想アンテナの考えを用いて受信信号を処理し受信波の到来方向の測角等を行う。仮想アンテナに基づく信号処理では、アンテナ対ごとに異なるタイミングで得られる受信結果を合成するため、アンテナ対ごとの受信結果のうち先に得られたものを一時記憶する。そして、例えば全ての受信アンテナについての受信結果が揃ったら、それを1回の受信結果と見なして測角処理を行う。
【0069】
そこで、レーダ装置10は切替信号発生器60によりアンテナ対を順次選択して、選択されたアンテナ対について送受信処理(ステップS100)と、それにより得られる受信結果をバッファメモリに記憶する処理(ステップS110)とを行う。ここで説明するアンテナ装置20の第1の例ではアンテナ対は2つあるので、ステップS100,S110は2回実行される。
【0070】
例えば、切替信号発生器60の切替信号に従い、切替器25が送信アンテナTx1を選択した場合、発信器30により生成された電磁波は送信アンテナTx1から例えば、物体検知を行う対象空間へ放射される。受信アンテナRx1〜Rx4は当該空間に存在する物体で反射された電波を受信する。受信信号は受信器23により検波、増幅された後、A/D変換器40によりデジタル信号化され、測距測角処理部70に出力される。測距測角処理部70はA/D変換器40から入力されるRx1〜Rx4の受信結果のうち、送信アンテナTx1とアンテナ対をなす受信アンテナ列を構成する受信アンテナRx1,Rx3の受信結果を一時記憶する。
【0071】
同様に、送信アンテナTx2から送信した場合には、受信アンテナRx2,Rx4の受信結果が一時記憶される。
【0072】
なお、切替信号発生器60からの切替信号を受信器23又はA/D変換器40に入力し、電波を送信する送信アンテナとアンテナ対をなす受信アンテナの受信信号のみを検波・増幅処理したり、A/D変換したりして、当該受信アンテナの受信結果のみを測距測角処理部70に入力してもよい。
【0073】
測距測角処理部70は、バッファメモリに記憶されている各受信アンテナ22の受信結果を高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)する(ステップS120)。具体的には、アンテナ対に対応した2回の送受信で得られた受信アンテナRx1〜Rx4の受信結果がFFTにより時間領域から周波数領域に変換される。
【0074】
測距測角処理部70は、FFTした結果を基に相互相関行列R(ω)を算出する(ステップS130)。なお、ωは角周波数であり、R(ω)はωの関数である。受信アンテナRxk(kは1〜4の自然数である。)の受信結果をFFTした結果をX
k(ω)と表すと相互相関行列R(ω)は次式で与えられる。なお、X
k(ω)
*はX
k(ω)の複素共役を意味する。また、物体で反射し受信アンテナに入射する電波は平面波としており、各受信アンテナに同じ振幅で入射する。A(ω)はその電波の周波数ωでの振幅を表す。Δtは隣接する受信アンテナ間での電波到達の遅延時間を表す。
【0076】
(1)式の右辺に現れる行列に着目すると、その対角成分より下の成分に、exp(−jωΔt)からexp(−j6ωΔt)までの6種類の位相成分が含まれている。これは、
図5に示した7個の受信アンテナを等間隔のz座標に配置したアンテナ装置と同様の測角処理を行うことができ、本アンテナ装置20は
図6のアンテナ装置と同様の測角性能を有することを示している。なお、当該行列は自己随伴行列であり、対角成分より上の成分は上述した対角成分より下の成分とは位相の符号が異なるだけで、両者は本質的には同じものである。
【0077】
測距測角処理部70はステップS130で算出された、(1)式に示す相互相関行列R(ω)の左下半分から行列成分を抜き出して、次式に示す仮想的な受信データを作成する(ステップS140)。
【0079】
そして、測距測角処理部70は、ステップS140で作成した仮想的な受信データを用いて、次式で定義する相互相関行列を算出する(ステップS150)。
【0081】
測距測角処理部70は、測角方向軸を含む測角面内での反射電波の到来方向を表す角度をθとし、次式で表すステアリングベクトルV(ω,θ)を算出する(ステップS160)。当該ステアリングベクトルV(ω,θ)の次数(成分の個数)は(2)式に示した仮想的な受信データの成分の個数に対応している。また、本実施形態では測角面はxz平面であり、θはレーダ装置10の真正面方向、つまりx軸の正の向きを0度として定義する。
【0083】
ここでI(ω,θ)はアンテナの指向特性、cは光速である。また、d
k(kは1〜6の自然数である。)は測角方向距離が異なる6通りの受信アンテナの組それぞれでの電波の伝搬経路長の差を表す。
【0084】
測距測角処理部70は、(4)式にて求めたステアリングベクトルV(ω,θ)を用い、次式で定義される重みベクトルW(ω,θ)を算出し、この重みベクトルW(ω,θ)と(3)式の相互相関行列とを用い、次式で定義される方位スペクトルP(ω,θ)を求める(ステップS160)。なお、記号[・]′は[・]の複素共役転置を意味する。
【0086】
測距測角処理部70は、(5)式の方位スペクトルP(ω,θ)にてピークを与える角度θを電波の到来角度と推定し、出力部80に出力する(ステップS170)。
【0087】
一方、測距処理は本実施形態では周知のFMCW方式により行うが、ドップラー方式(2周波CW)など他の周知の方式を用いてもよい。
【0088】
[第2のアンテナ配置例]
上述した第1のアンテナ配置例では、2つの送信アンテナ(Tx1,Tx2)及び4つの受信アンテナ(Rx1〜Rx4)を有するアンテナ装置20を示したが、アンテナ装置20における各アンテナの配置はこのようなものに限られない。
【0089】
全く同じ手順で配置を行うことで同様に、送信アンテナと受信アンテナの数を減らし、それに伴う消費電力の削減を狙うとともに、サイズの小型化を図ることができる。
【0090】
例えば送信アンテナを2つ、受信アンテナを5つ用意すると、半波長の9倍までを有するアンテナ装置を実現できる。
【0091】
あるいは
図7に示すように、送信アンテナを2つ、受信アンテナを6つ用意すると、半波長の13倍までを有するアンテナ装置を実現できる。
【0092】
図7は実施形態に係るアンテナ装置20の第2の例を説明するアンテナ装置の模式的な正面図、すなわち送信アンテナ及び受信アンテナが配置される基板をその法線方向から見た図である。
【0093】
第1のアンテナ配置例の場合と同様に考えると、
図7のアンテナ装置20における相対座標の差の絶対値Δ
Sは、受信アンテナの組(Rx1,Rx2)について半波長の1倍、組(Rx4,Rx5),(Rx5,Rx6)について半波長の2倍、組(Rx3,Rx4)について半波長の3倍、組(Rx4,Rx6)について半波長の4倍、組(Rx2,Rx3),(Rx3,Rx5)について半波長の5倍、組(Rx1,Rx3)について半波長の6倍、組(Rx3,Rx6)について半波長の7倍、組(Rx2,Rx4)について半波長の8倍、組(Rx1,Rx4)について半波長の9倍、組(Rx2,Rx5)について半波長の10倍、組(Rx1,Rx5)について半波長の11倍、組(Rx2,Rx6)について半波長の12倍、組(Rx1,Rx6)について半波長の13倍となり、13通りのΔ
Sを得ることができる。
【0094】
なお、
図7に示すアンテナ装置20は、
図5(b)に示したアンテナ装置20と同様、2個の受信アンテナの全ての組合せにおける受信アンテナ同士での相対座標の差の絶対値Δ
Sが、公差が送信波の半波長以下であり項数が受信アンテナの総数m以上の所定数である等差数列の各項の値をとる構成の一例となっている。具体的には、m=6に対して、Δ
Sは、公差及び初項がλ/2、項数が13である等差数列をなす。このようにレーダ装置10にて必要とされる数のΔ
Sの種類を、それより少ない数の受信アンテナで実現できる。つまりアレイアンテナにおけるアンテナ素子数の減少が図られ、サイズの小型化及び消費電力の低減が図られる。
【0095】
[第3のアンテナ配置例]
これまでに示してきた例では、送信アンテナの個数nより受信アンテナの個数mが多く、受信アンテナの並びについて半波長の整数倍を実現することとしていたが、送信アンテナと受信アンテナを入れ替えたアンテナ配置を有するアンテナ装置20を用いても上述した各アンテナ装置20と同様の測距測角処理を実現できる。
【0096】
すなわち、
図2のレーダ装置10において、アンテナ装置20は、受信アンテナ22の個数mより送信アンテナ21の個数nが多く、それぞれ複数の送信アンテナ21が測角方向軸の方向に並び、且つ測角直交座標が互いに異なる複数の送信アンテナ列を有する構成とすることができる。当該アンテナ装置20におけるアンテナ配置では、測角方向座標の差が送信アンテナ21の測角方向の長さ未満である任意の2つの送信アンテナ21は、互いに異なる送信アンテナ列に配置され、受信アンテナ22は各送信アンテナ列に対して設けられ、当該送信アンテナ列の各送信アンテナ21とアンテナ対をなす。アンテナ対をなす送信アンテナ21と受信アンテナ22との測角直交軸の方向の位置関係は一定とされる。また、2個の送信アンテナの全ての組合せにおける送信アンテナ同士での相対座標の差の絶対値Δ
Sは、公差が送信波の半波長以下であり項数がn以上の所定数である等差数列の各項の値をとるようにアンテナ配置が定められる。任意の2つのアンテナ対の測角方向の位置関係は、いずれか一方のアンテナ対における送信アンテナ列の測角方向の配置範囲が他方のアンテナ対における送信アンテナ列の測角方向の配置範囲を包含する関係とされる。
【0097】
図8は実施形態に係るアンテナ装置20の第3の例を説明するアンテナ装置の模式的な正面図、すなわち送信アンテナ及び受信アンテナが配置される基板をその法線方向から見た図である。
図8(a)は実施形態の第3の例であるアンテナ装置20に関連するアンテナ装置の正面図であり、
図8(b)が実施形態の第3の例であるアンテナ装置20の正面図である。
図8は送信アンテナ21と受信アンテナ22とを入れ替えたアンテナ配置の例を示すものであり、具体的には、当該例は、
図4に示したアンテナ配置において送信アンテナと受信アンテナとを入れ替えたアンテナ装置20に対応しており、
図8(a)が
図4(a)にて送信アンテナ21と受信アンテナ22とを入れ替えた配置を示しており、
図8(b)が
図4(b)にて送信アンテナ21と受信アンテナ22とを入れ替えた配置を示しており、それぞれ送信アンテナ21が4個(Tx1〜Tx4)、受信アンテナが2個(Rx1,Rx2)配置されている。
【0098】
図8(b)では、
図5(b)と同様に送信アンテナ(Tx2,Tx4)と、受信アンテナRx2からなるアンテナ対が、z軸の正の向きに距離λ/2だけずらした配置を有する。
【0099】
このアンテナ装置20を用いたレーダ装置10は、送信アンテナTx1〜Tx4から時分割で電磁波を送信し、送信を行う送信アンテナとアンテナ対を構成する受信アンテナで受信し、受信結果を一時記憶する。そして、全ての送信アンテナ21に対応する受信結果が得られると、測距測角処理部70が測角処理を実施する。
【0100】
図8(b)のアンテナ装置20におけるアンテナ対は(Tx1,Rx1)、(Tx2,Rx2)、(Tx3,Rx1)、(Tx4,Rx2)の4個であるが、これらによる電波の送受信に基づいて、
図4(b)の構成と同様、6通りのΔ
Sが得られ、アンテナ装置20の小型化、低消費電力化が図れる。異なる送信アンテナ列について上述の包含関係が実現するようにz座標を設定することでもアンテナ装置20の小型化が図れる。
【0101】
なお、
図8(b)のアンテナ装置20を備えたレーダ装置10は、Txk(kは1〜4の自然数である。)から送信した際の受信データをFFTした結果をX
k(ω)として扱う以外は
図4(b)のアンテナ装置20を備えたレーダ装置10と基本的に同様の処理で測距測角を行うことが可能である。
【0102】
また、
図7に示したアンテナ装置20において送信アンテナと受信アンテナとを入れ替えたアンテナ配置とすることもできる。
【0103】
このように、送信アンテナと受信アンテナを入れ替えた配置によれば受信器23の数を削減できるので、アンテナ装置20全体を小型化できる。
【0104】
なお、上述の実施形態において、水平方向の測角を行うために、レーダ装置10は上述のアンテナ装置20を複数水平方向に並べた構成とするか、上述のアンテナ装置20を構成するアンテナ対を増設して水平方向に並べたアンテナ装置を備えた構成とすることができる。
【0105】
また、上述の実施形態では、受信アンテナ列での2つの受信アンテナ同士(、又は送信アンテナ列での2つの送信アンテナ同士)の相対座標の差の絶対値Δ
Sの最小値が半波長である例を説明したが、当該値は半波長より小さくすることもでき、半波長以下であれば虚像の発生を避けることができる。