特許第6491257号(P6491257)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コリア・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジーの特許一覧

特許6491257遷移金属塩または遷移金属酸化物を用いたエポキシ樹脂硬化物の解重合のための方法及び組成物
<>
  • 特許6491257-遷移金属塩または遷移金属酸化物を用いたエポキシ樹脂硬化物の解重合のための方法及び組成物 図000008
  • 特許6491257-遷移金属塩または遷移金属酸化物を用いたエポキシ樹脂硬化物の解重合のための方法及び組成物 図000009
  • 特許6491257-遷移金属塩または遷移金属酸化物を用いたエポキシ樹脂硬化物の解重合のための方法及び組成物 図000010
  • 特許6491257-遷移金属塩または遷移金属酸化物を用いたエポキシ樹脂硬化物の解重合のための方法及び組成物 図000011
  • 特許6491257-遷移金属塩または遷移金属酸化物を用いたエポキシ樹脂硬化物の解重合のための方法及び組成物 図000012
  • 特許6491257-遷移金属塩または遷移金属酸化物を用いたエポキシ樹脂硬化物の解重合のための方法及び組成物 図000013
  • 特許6491257-遷移金属塩または遷移金属酸化物を用いたエポキシ樹脂硬化物の解重合のための方法及び組成物 図000014
  • 特許6491257-遷移金属塩または遷移金属酸化物を用いたエポキシ樹脂硬化物の解重合のための方法及び組成物 図000015
  • 特許6491257-遷移金属塩または遷移金属酸化物を用いたエポキシ樹脂硬化物の解重合のための方法及び組成物 図000016
  • 特許6491257-遷移金属塩または遷移金属酸化物を用いたエポキシ樹脂硬化物の解重合のための方法及び組成物 図000017
  • 特許6491257-遷移金属塩または遷移金属酸化物を用いたエポキシ樹脂硬化物の解重合のための方法及び組成物 図000018
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491257
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】遷移金属塩または遷移金属酸化物を用いたエポキシ樹脂硬化物の解重合のための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/16 20060101AFI20190318BHJP
   B29B 17/02 20060101ALI20190318BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   C08J11/16CFC
   B29B17/02ZAB
   C08J3/12 A
【請求項の数】17
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-79578(P2017-79578)
(22)【出願日】2017年4月13日
(65)【公開番号】特開2018-177970(P2018-177970A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2017年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】304039548
【氏名又は名称】コリア・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】コ・ミュンチュ
(72)【発明者】
【氏名】ヨ・ナムホ
(72)【発明者】
【氏名】ヨ・ヒョヌク
(72)【発明者】
【氏名】ク・ボン−チョル
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・サンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ジンウォン
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ジン
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−055498(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102391543(CN,A)
【文献】 特開2004−231695(JP,A)
【文献】 特開2005−139440(JP,A)
【文献】 特表2004−502811(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02178748(FR,A1)
【文献】 Galvanotechnik,Vol.68, No.9,pp.800-803 (1977).
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/00− 17/04
C08J 11/00− 11/28
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂硬化物の解重合用組成物であって、
遷移金属元素を含む遷移金属塩または遷移金属酸化物及び反応溶媒を含み、
前記反応溶媒は、遷移金属を媒介にしたエポキシ樹脂硬化物の化学結合の酸化反応が生じ得る反応溶媒であって、HOを含み、誘電率が65以上であり、かつ中性又は塩基性の液相のHO基盤反応溶媒であり、
前記遷移金属塩または遷移金属酸化物は、エポキシ樹脂硬化物の化学結合から電子を奪う酸化剤であることを特徴とするエポキシ樹脂硬化物の解重合用組成物。
【請求項2】
前記化学結合は、炭素−炭素結合であることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂硬化物の解重合用組成物。
【請求項3】
前記反応溶媒は、遷移金属塩が解離され得る反応溶媒であることを特徴とする請求項1または2に記載のエポキシ樹脂硬化物の解重合用組成物。
【請求項4】
前記反応溶媒は、水単独であることを特徴とする請求項に記載のエポキシ樹脂硬化物の解重合用組成物。
【請求項5】
前記遷移金属は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hgからなる群より選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂硬化物の解重合用組成物。
【請求項6】
前記遷移金属塩または遷移金属酸化物は、KMnO、MnO、KMnO、MnSO、CrO、NaCr、KCr、ZnCr、HCrO、Pyridinium Chlorochromate(クロロクロム酸ピリジニウム)、Pyridinium Dichromate(二クロム酸ピリジニウム)、V、RuCl、RuO、Tetrapropylammonium Perruthenate(過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム)、MoO、K[Fe(CN)]、FeCl、Fe(NO Nonahydrate(九水和物)、MeReO、CuCl、Cu(ClO、Cu(HCONi(HCO、Cu(OAc)、OsO、(NHCe(NOからなる群より選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂硬化物の解重合用組成物。
【請求項7】
前記遷移金属塩または遷移金属酸化物は、組成物全体に対して0.001〜99重量%の範囲で含有されることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂硬化物の解重合用組成物。
【請求項8】
エポキシ樹脂硬化物の解重合方法であって、
請求項1〜のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂硬化物の解重合用組成物を用いてエポキシ樹脂硬化物を解重合することを特徴とするエポキシ樹脂硬化物の解重合方法。
【請求項9】
反応温度は、20〜100℃であることを特徴とする請求項に記載のエポキシ樹脂硬化物の解重合方法。
【請求項10】
解重合用組成物100重量部を基準にしたとき、エポキシ樹脂硬化物を1〜90重量部の範囲で用いることを特徴とする請求項またはに記載のエポキシ樹脂硬化物の解重合方法。
【請求項11】
前記方法は、エポキシ樹脂硬化物を解重合した後に残留した反応溶媒に新たなエポキシ樹脂硬化物を加えて解重合過程を繰り返すことを特徴とする請求項10のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂硬化物の解重合方法。
【請求項12】
前記方法は、エポキシ樹脂硬化物を解重合反応に供する前に、エポキシ樹脂硬化物の反応表面積を増大させるための表面処理を施すことを特徴とする請求項11のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂硬化物の解重合方法。
【請求項13】
前記表面処理として、物理的表面処理と化学的表面処理とのいずれか一方または並行して両方を実施することを特徴とする請求項12に記載のエポキシ樹脂硬化物の解重合方法。
【請求項14】
前記物理的表面処理は、乾式粉砕方法及び湿式粉砕方法から選ばれた一つ以上であることを特徴とする請求項13に記載のエポキシ樹脂硬化物の解重合方法。
【請求項15】
前記化学的表面処理は、pH7未満の酸性組成物にエポキシ樹脂硬化物を含浸させることを特徴とする請求項13に記載のエポキシ樹脂硬化物の解重合方法。
【請求項16】
解重合後に得られたフィラーに遷移金属が残留することを特徴とする請求項15のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂硬化物の解重合方法。
【請求項17】
エポキシ樹脂硬化物からフィラーを分離する方法であって、
請求項1〜のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂硬化物の解重合用組成物を用いてエポキシ樹脂硬化物を解重合する段階;及び
前記解重合の生成物からフィラーを収得する段階;
を含むことを特徴とするエポキシ樹脂硬化物からフィラーを分離する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、遷移金属塩または遷移金属酸化物を用いたエポキシ樹脂硬化物の解重合方法及びそのための組成物に係り、具体的には、遷移金属を含む遷移金属塩または遷移金属酸化物を用いたエポキシ樹脂硬化物を解重合する方法とこれに用いられる組成物、エポキシ樹脂硬化物からフィラーを分離するための方法、これにより得られたフィラーなどに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ単量体を硬化剤と混合させたときに生じるエポキシ基の開環によって形成されたネットワーク高分子からなる熱硬化性樹脂である。エポキシ樹脂は化学成分に対する抵抗性、耐久性に優れ且つ硬化時の体積収縮率が低いため、接着剤、塗料、電子・電気、土木・建築などの産業分野全般において必須な高機能性資材として用いられている。
【0003】
最近、重要な件になっている複合素材分野においてエポキシ樹脂は、多様なフィラー物質と組み合わされて宇宙航空分野、情報通信技術分野、新エネルギー分野などの様々なところで用いられるようになったことから、世界的にその需要が増加しつつある。特に、炭素繊維と混合してなる炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、軽量で且つ優れた物理的特性と耐久性を示すため、自動車分野や宇宙航空分野で核心的な素材として広く用いられている。また、エポキシ樹脂は、他の高分子樹脂物質と混合してより高性能の材料を作製するにも広く用いられている。
【0004】
エポキシ樹脂は、硬化後に3次元的な網状架橋構造を形成し、この構造は化学薬品に非常に強い特性を持っている。これは、材料に優れた耐久性や耐食性を与えるという長所を持っているが、一方では、使用済みの材料を処理しリサイクルするのが至難であるという短所も持っている。
【0005】
結局、現在では大半のエポキシ樹脂硬化物を埋め立てる方式で処理しており、これは、経済的にも多大な損失となり且つ深刻な環境汚染を惹起する恐れがある。
【0006】
近年、エポキシ樹脂とフィラーの複合素材の使用量が次第に増加するにつれ、エポキシ樹脂よりも相対的に高価であるフィラー物質を有効に分離して取り出すために、エポキシ樹脂を選択的に分解する技術に関する研究が活発に進められている。
【0007】
現在、エポキシ樹脂の分解及びフィラー物質の分離に際して最も普遍的に用いられる方法は熱分解である。例えば、炭素繊維をフィラー物質として用いた炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastic、CFRP)の場合、東レ(Toray)、帝人(Teijin)、三菱(Mitsubishi)などの日本企業らの主導下で年間1000トンほどを熱分解にて処理及びリサイクルしている。しかし、熱分解工程による炭素繊維の分離のためには、予めCFRPを機械的に粉砕する前処理工程が必要となるが、数mmの大きさまでCFRPを粉砕する過程で炭素繊維も粉砕されてしまう可能性があり、その結果、リサイクルされる炭素繊維の長さが短くなることで炭素繊維の特性に悪影響を及ぼすという問題が生じるようになった。また、何よりも熱分解工程は500℃以上の高温を要求し、このような高温では有機化合物の燃焼によってダイオキシンといった人体有害物質が生成される問題も生じるようになる。
【0008】
したがって、より低温で有効にエポキシ樹脂を分解するために様々な化学的分解方法が研究されてきた。
例えば、超臨界または準臨界流体下でエポキシ樹脂を分解すると、約250〜400℃程度の熱分解工程温度よりも低温で有効にエポキシ樹脂硬化物を処理することができる。このような方法を用いると、回収するフィラー物質の特性低下が、熱分解方法によるときの特性低下よりも比較的に少なくて済むという長所を持っている。
【0009】
しかし、本発明者らの研究結果によれば、当該方法は依然として高温及び10気圧以上の高圧を必要とするため、このような条件に耐えられる特殊な工程設備が必要となることから、経済性が高くないという制約がある。
【0010】
一方、より一般的でマイルドな工程条件でエポキシ樹脂を分解することができる研究も進められてきているが、例えば、多官能性エポキシ樹脂または酸無水物系硬化剤、あるいは芳香族ジアミン系硬化剤を用いたエポキシ樹脂硬化物などの相対的に分解が難しい多様なエポキシ樹脂硬化物を溶かすことができないという短所があり、依然として反応時間が長く且つ反応エネルギーが多く所要される。また、人体に有害な多くの有機溶媒を反応系の主溶媒として用いるなどの問題点を依然として内包している。
【0011】
特に、有機溶媒をエポキシ樹脂の分解のための主溶媒として用いる従来技術が多数知られている。
【0012】
例えば、アルカリ族金属を含む電解質を入れ、有機溶媒を添加して廃印刷回路基板を解重合することが公開されている(特許文献2)。
【0013】
また、エポキシ樹脂を粉砕及び酸処理した後、封止された反応容器内において有機溶媒及び酸化剤で処理する技術も公開されている(特許文献3)。
【0014】
さらに、エポキシ樹脂を過酸化水素とアセトンを用いて分解することが公開されている(非特許文献2)。
【0015】
また、水分を除去したアルカリ金属化合物と有機溶媒を含む処理液でエポキシ樹脂複合材料を処理する技術が公開されている(特許文献4)。
【0016】
また、エポキシ樹脂プレポリマーを双極子モーメント3.0以上の非プロトン性有機溶媒と接触させ、溶媒にエポキシ樹脂プレポリマーを溶解させることが開示れている(特許文献5)。
【0017】
また、CFRPから炭素繊維を分離するための抽出溶媒またはクラッキング溶媒としてフラン−2−カルボアルデヒド(furan−2−carbaldehyde)を含む有機溶媒を用いることが公開されている(特許文献6)。
【0018】
これらの技術は、比較的低温のマイルドな条件下で有機溶媒にてエポキシを分解することができることを記載している。
【0019】
しかし、本発明者らの研究結果によれば、これらの技術は、有機溶媒自体をエポキシ樹脂を溶解させるための主要手段として用いる有機溶媒反応システムであって、有機溶媒自体が新たに汚染源として作用することから、有機溶媒による汚染問題を解決しなければならないという本質的な限界を持っている。また、分解し難いエポキシ樹脂などへの適用には不向きであるという適用性の問題があったり、反応に多くのエネルギーが必要とされ、反応効率などの面でも依然として満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】韓国特許出願公開第2002−66046号
【特許文献2】韓国特許出願公開第2011−0113428号
【特許文献3】中国特許第102391543号
【特許文献4】日本特許出願公開第2005−255899号
【特許文献5】日本特許出願公開第2013-107973号
【特許文献6】米国特許出願公開第2014−0023581号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Mater. Res. Bull. 2004、39、1549
【非特許文献2】Green Chem.、2012、14、3260
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の例示的な具現例では、一態様において、例えば、200℃以下、好ましくは、100℃以下の条件下でエポキシ樹脂硬化物を極めて簡単且つ高速で解重合することができ、工程コスト及び所要エネルギーを削減することができるエポキシ樹脂の解重合方法及びこれに用いられる組成物を提供することをその目的とする。
【0023】
本発明の例示的な具現例では、他の一態様において、有機溶媒を主溶媒とする反応システムである有機溶媒反応系を代替することができ、これにより有機溶媒が新たな汚染源として作用することによる汚染問題が解決できることで環境汚染や公害を最小化できるエポキシ樹脂の解重合方法及びこれに用いられる組成物を提供することをその目的とする。
【0024】
本発明の例示的な具現例では、他の一態様において、有機溶媒を主溶媒とする反応システムである有機溶媒反応系を使用することなくエポキシ樹脂硬化物の解重合反応効率を高めることができるエポキシ樹脂の解重合方法及びこれに用いられる組成物を提供することをその目的とする。
【0025】
本発明の例示的な具現例では、他の一態様において、相対的に分解し難いエポキシ樹脂硬化物も容易に分解することができるエポキシ樹脂の解重合方法及びこれに用いられる組成物を提供することをその目的とする。
【0026】
本発明の例示的な具現例では、また他の一態様において、エポキシ樹脂硬化物の分解後に回収されたフィラーの特性低下を抑えることで優れた特性を有するリサイクルフィラーが得られるエポキシ樹脂複合体からフィラーを回収する方法、これにより得られたフィラーを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の例示的な具現例では、エポキシ樹脂解重合用組成物であって、遷移金属元素を含む遷移金属塩または遷移金属酸化物;及び反応溶媒;を含むエポキシ樹脂硬化物の解重合用組成物を提供する。前記反応溶媒は、遷移金属を媒介にしたエポキシ樹脂硬化物の化学結合の酸化反応、例えば、炭素−炭素結合の酸化反応が生じ得る反応溶媒である。また、前記遷移金属塩は反応溶媒で解離され得るものであってよい。
【0028】
本発明の例示的な具現例では、エポキシ樹脂硬化物の解重合方法であって、前記エポキシ硬化物の解重合用組成物を用いてエポキシ樹脂硬化物を解重合することを特徴とするエポキシ樹脂硬化物の解重合方法を提供する。
【0029】
本発明の例示的な具現例では、エポキシ樹脂硬化物からフィラーを分離する方法であって、前記エポキシ硬化物の解重合用組成物を用いてエポキシ樹脂硬化物を解重合する段階;及び前記分解生成物からフィラーを収得する段階;を含むエポキシ樹脂硬化物からフィラーを分離する方法及びこれにより分離されたフィラーを提供する。
【発明の効果】
【0030】
本発明の例示的な具現例によれば、例えば、200℃以下、好ましくは、100℃以下の条件下でエポキシ樹脂の解重合を極めて簡単且つ高速で処理することができ、工程コスト及び所要エネルギーを削減することができる。また、有機溶媒を主溶媒とする反応システムを代替することができ、これにより有機溶媒が新たな汚染源として作用することによる汚染問題を解決することで環境汚染や公害を最小化できる。また、有機溶媒を主溶媒とする反応システムを使用することなく解重合反応効率を高めることができる。さらに、相対的に分解し難いエポキシ樹脂硬化物も容易に分解することができる。しかも、エポキシ樹脂複合体の分解後に回収されたフィラーの特性低下を抑えることで優れた特性を有するリサイクルフィラーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】エポキシ樹脂硬化物の例えば、炭素−炭素結合のような化学結合の酸化を示す例示的な反応式1である。
図2A】本発明の実施例1において解重合前のCFRPを撮影した写真である。
図2B】本発明の実施例1において解重合後に回収した炭素繊維を撮影した写真である。
図3】本発明の実施例1における反応系の過マンガン酸カリウム水溶液と比較例3における反応系の硝酸水溶液のpHをそれぞれ測定した結果である。
図4】本発明の実施例1において解重合反応によって生成された二酸化マンガンを濾過及び分離後に撮影した写真である。
図5】本発明の実施例1におけるCFRPに用いられた炭素繊維(原料炭素繊維、V−CFと表示する)と実施例1の結果としての回収された炭素繊維(R−CFと表示する)に対する引張強度測定から得られた結果を比較するグラフである。
図6】本発明の実施例1における解重合前のCFRPのFT−IR分析結果と、炭素繊維及び二酸化マンガンを濾過してから残留した水溶液形態の生成物を抽出及び乾燥させて得られた固形の混合物のFT−IR分析結果である。
図7】本実験2における表4〜6の結果を反応系の誘電率によるエポキシ樹脂の分解率にて示した結果である。
図8A】本実験3においてCFRPに用いられた炭素繊維(CFと表示)のX線光電子分光(XPS)結果を示すグラフである。
図8B】本実験3においてKMnOを用いて解重合後に回収された炭素繊維(R−CFと表示)のX線光電子分光(XPS)結果を示すグラフである。
図8C】本実験3においてCFRPに用いられた炭素繊維(CFと表示)及びKMnOを用いて解重合後に回収された炭素繊維のXPS元素含量の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
用語の定義
本明細書においてエポキシ樹脂硬化物は、硬化されたエポキシ樹脂または硬化されたエポキシ樹脂を含むあらゆる複合材料を意味する。また、エポキシ樹脂硬化物は、完全に硬化されたものだけではなく、硬化反応の途中で生成される一部硬化された中間物質(いわゆる、エポキシ樹脂プレポリマー)をも含むように定義される。
【0033】
当該複合材料は、各種のフィラー及び/または各種の高分子樹脂を含んでいてよい。硬化されたエポキシ樹脂は、分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と硬化剤との硬化反応で生成されたものである。エポキシ樹脂と硬化剤の種類は特に制限されない。エポキシ樹脂は、例えば、多官能性エポキシ樹脂を含んでいてよい。また、硬化剤は、例えば、芳香族基や脂肪族基を有するものを含む。また、例えば、分子内にアミン基、酸無水物基、イミダゾール基、メルカプタン基から選択されたいずれか一つまたは二つ以上の基を1個以上有するものであってよい。
【0034】
本明細書において遷移金属を媒介とする酸化反応とは、遷移金属の酸化数の変化により有機化合物、例えば、エポキシ樹脂硬化物の化学結合、例えば、炭素−炭素結合を構成する電子の一部が遷移金属に移動して酸化が発生する酸化反応を意味する。
【0035】
本明細書においてフィラー(filler)とは、硬化されたエポキシ樹脂とともにエポキシ複合体を構成する充填物質を意味する。
【0036】
本明細書において高分子樹脂とは、エポキシ樹脂の他にエポキシ樹脂複合体を構成する高分子樹脂を意味する。
【0037】
本明細書において反応溶媒は特定の相に制限されない。したがって、主に液相であってよいが、気相を含んでいてよい。また、超臨界相をも含んでいてよい。
【0038】
本明細書においてHOは、主に液相の水であるが、液相に限定されずに気相を含んでいてよい。また、超臨界相をも含んでいてよい。
【0039】
本明細書において水溶液は、特に気体状態または超臨界状態であることを指示しない限り液相である。また、特に他の溶媒が混合されたことを指示しない限り水単独の溶媒である。
【0040】
本明細書において有機溶媒反応系とは、エポキシ樹脂硬化物の分解反応の主溶媒として有機溶媒を用いる反応システムを意味する。
【0041】
本明細書においてHO反応系とは、エポキシ樹脂硬化物の分解反応の主溶媒としてHOを用いる反応システムを意味する。これは、有機溶媒反応系と対比され、解重合反応の際にHO基盤反応溶媒を用いる。なお、このHOを基盤とする反応溶媒には、HO以外に他の溶媒が含まれていてよいが(すなわち、混合溶媒にて適用可能)、該混合溶媒を用いても誘電率が65以上、または、好ましくは70以上、または75以上、または80以上でなければならない。特に好ましい例は、HO基盤反応溶媒がHO単独からなるものである(水の誘電率は約80.2)。
【0042】
本明細書において解重合時間は、解重合反応に供されたエポキシ樹脂硬化物が全て分解されるのに所要される解重合反応時間を意味する。ここで、全て分解されるとは、エポキシ樹脂の硬化物(固形物)が実質的に存在しないこと(エポキシ樹脂残留率5%以下)を意味する。
【0043】
エポキシ樹脂硬化物においてエポキシ樹脂の分解率(%)は、次のように求めることができる。すなわち、
分解率(%)=[(エポキシ樹脂硬化物中のエポキシ樹脂含有量−分解後のエポキシ樹脂残留量)/(エポキシ樹脂複合材料中のエポキシ樹脂含有量)]×100
なお、エポキシ樹脂残留率は100%−分解率(%)である。
【0044】
本明細書において相対的に分解し難いエポキシ樹脂硬化物とは、相対的に分解し難いエポキシ樹脂単量体及び/または硬化剤を用いたエポキシ樹脂硬化物を意味する。例えば、多環類のノボラック樹脂は、BPAに比べて相対的に分解し難いエポキシ樹脂単量体である。また、例えば、芳香族硬化剤、酸無水物系硬化剤は、脂肪族硬化剤に比べて相対的に分解し難い硬化剤である。
【0045】
本明細書において誘電率は、液体誘電率測定器(dielectric constant meter)を利用して測定したものであってよい。
【0046】
例示的な具現例の説明
以下、本発明の例示的な具現例について詳しく説明する。
本発明の例示的な具現例では、エポキシ樹脂解重合用組成物であって、遷移金属元素(周期律表上において3〜12族に属する金属元素)が含まれた遷移金属塩または遷移金属酸化物及び反応溶媒を含むエポキシ樹脂硬化物の解重合用組成物と、当該組成物でエポキシ樹脂硬化物を解重合する方法を提供する。
【0047】
驚くべきことに、エポキシ樹脂硬化物が、有機溶媒基盤反応系を用いずとも、前記特定の化合物及び所定の反応溶媒(特に、HO基盤反応溶媒)が組み合わされてなる組成物で極めて高速且つ簡単に解重合できることが本発明者らによって明らかになった。
【0048】
低温のマイルドな条件下で少ないエネルギーにてエポキシ樹脂硬化物を解重合し、反応効率を高めるためには、反応溶媒及びこれと共に用いる特定の化合物の選択が重要であると考えられる。また、後述するが、前記化合物のエポキシ樹脂硬化物の解重合効率を高めるためには、反応溶媒の誘電率を所定値以上に調節するのが肝要であると考えられる。
【0049】
本発明の例示的な具現例に係る解重合の際、反応溶媒中では遷移金属元素を媒介とする酸化反応が生起すると考えられ、このような酸化反応によってエポキシ樹脂硬化物を構成する、例えば、炭素−炭素結合のような化学結合が切られ、エポキシ樹脂硬化物を解重合すると考えられる。また、このような酸化反応を低いエネルギーにて行うために、反応溶媒の誘電率が所定値以上に調節される必要がある。
【0050】
したがって、本発明の例示的な具現例において、反応効率を高めるために、反応溶媒の誘電率は、65以上、または70以上、または75以上、または80以上でなければならない。
【0051】
例示的な具現例において、このような反応溶媒は、好ましくは、HO基盤反応溶媒である。遷移金属を含む遷移金属塩または遷移金属酸化物を含む組成物を用いてエポキシ樹脂硬化物を解重合するにあたって、共に用いられるHO基盤反応溶媒の誘電率がエポキシ樹脂硬化物の解重合反応効率に影響を及ぼす。
【0052】
その理由は、有機溶媒反応系での有機溶媒と異なり、HO基盤反応溶媒が当該遷移金属塩または遷移金属酸化物の溶解及び/またはイオン解離を促し、遷移金属元素を媒介としたエポキシ樹脂硬化物中の例えば、炭素−炭素結合のような化学結合の酸化反応に関与し、その結果、エポキシ樹脂解重合反応効率に関与するためであると考えられる。
【0053】
例示的な具現例において、HO基盤反応溶媒の誘電率は、少なくとも65以上でなければならず、または70以上、または75以上、または80以上でなければならない。特に好ましい例は、HO基盤反応溶媒がHO単独からなるものであり(水の誘電率は約80.2)、HO基盤反応溶媒がHO単独からなるものであれば、エポキシ樹脂硬化物の分解効率が飛躍的に増大する(後述する実験例2参照)。
【0054】
これと異なり、先述した先行技術に係る有機溶媒基盤反応系では、有機溶媒を主溶媒としてエポキシ樹脂硬化物を直接溶解する。
【0055】
しかし、有機溶媒は、遷移金属塩または遷移金属酸化物を入れても溶解度及びイオン解離度が極めて低いため、エポキシ樹脂硬化物の解重合に寄与することができない。例えば、NMPの場合、誘電率が32で遷移金属塩または遷移金属酸化物が溶解され難い。
【0056】
これに関して、本発明者らは、誘電率によるエポキシ樹脂硬化物の分解効率を調べてみた。その結果、例えば、イオン結合をする遷移金属塩は水と有機溶媒とでイオン解離及び反応性に差を見せ、結果的にエポキシ樹脂硬化物の分解効率に差をもたらした。
【0057】
その理由としては、水と有機溶媒とでの遷移金属塩または遷移金属酸化物の溶解度の差及び/または酸化反応の差が挙げられる。
【0058】
先ず、溶解度の差の場合、水と有機溶媒の極性(すなわち、誘電率)の差によって、例えば、イオン結合物質である遷移金属塩の溶解度に差が生じるようになる。これは、溶媒の双極子−イオン間の結合力がイオン結合物質のイオン−イオン格子エネルギーよりも大きくなければイオンを解離できないからである。
【0059】
一方、遷移金属塩または遷移金属酸化物は、有機化合物、すなわち、本発明の具現例ではエポキシ樹脂硬化物の例えば、炭素−炭素結合のような化学結合から電子を奪う形態で酸化させると同時に遷移金属自体は還元反応が発生するようになる。詳述すると、酸化数+1のアルカリ金属、酸化数+2のアルカリ土類金属と異なり、遷移金属の場合、2種以上の酸化形態(酸化数)を有することができ、このような2種以上の酸化形態が反応中に変化する(すなわち、酸化数の減少)ことによって酸化反応が発生するようになる。例えば、遷移金属塩である過マンガン酸カリウムにあるマンガンの場合(図1の反応式1参照)、+7の酸化数(過マンガン酸カリウム)、+6の酸化数(マンガン酸カリウム)、+4の酸化数(二酸化マンガン)の3種の酸化形態を有するようになり、比較的に不安定な+7の酸化形態が反応中に安定な+4の酸化形態に変化するために、有機化合物であるエポキシ樹脂硬化物の例えば、炭素−炭素結合のような化学結合から電子を奪う形態の酸化反応が発生するようになる。
【0060】
これは、例えば、NaOClのように過酸化形態の陰イオンが酸化反応を発生させるメカニズムとは違いがある。また、リン酸カリウムなどを用いる方法は、酸化反応ではない、塩基を用いたエステル交換反応であるため、本発明の具現例のメカニズムとは違いがある。
【0061】
本発明の例示的な具現例では、遷移金属の酸化物または塩の形態である遷移金属塩用組成物が溶解され易く、金属の解離が発生し易く且つ酸化反応が滑らかに行なわれ得る ように、後述するようにな所定値以上の高い誘電率を有する溶媒を用いる。
【0062】
以上のような点に基づくとき、遷移金属塩または遷移金属酸化物を有効に溶解させ且つ酸化反応を促すことができるように、誘電率の高い溶媒、好ましくは、HO基盤溶媒を用いるのが解重合に必要であることが分かる。また、有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒による汚染や有機溶媒のリサイクル問題が発生するため、環境的な面から、HO基盤溶媒を用いるのが好ましく、特に、HO単独からなる溶媒(HO 100重量%または100体積%)を用いるのが最も好ましい。
【0063】
以上のように酸化反応によって生成される解重合生成物(炭素繊維など)は、OH基を有するようになる。その結果、本発明の例示的な具現例では、エポキシ樹脂硬化物の解重合生成物として、OH基を含むエポキシ樹脂硬化物の解重合生成物を提供する。参考として、後述する実験1では、このようなOH基が形成された解重合生成物のFT−IR分析結果を示し、当該分析結果から、本発明の例示的な具現例に係る解重合によってOH基が多く生成されたことが分かる。
【0064】
以上のようなエポキシ樹脂硬化物の解重合用組成物を用いてエポキシ樹脂硬化物の解重合を行うと、寿命が尽きたエポキシ樹脂硬化物を従来と異なり、例えば、200℃以下、好ましくは100℃以下のマイルドな条件下で少ないエネルギーにて極めて簡単で且つ高速で処理することができる。このことは、従来の熱分解方法(約200〜400度)に比べ反応温度を大きく下げたことを示す。
【0065】
さらには、異なる反応溶媒と化合物を組み合わせた場合、例えば、過マンガン酸カリウム水溶液とアセトンを混合した比較例1(溶けない)のように有機溶媒を用いることで誘電率が低い場合や、硝酸水溶液を用いた比較例2(反応時間12時間)に比べても、顕著に反応効率が高いことが分かる。さらに、従来の有機溶媒基盤反応系技術とは異なり、HO基盤反応系を用いるため、人体に有害な有機溶媒を用いずに済み、環境的に有利である。
【0066】
一方、本発明の例示的な具現例では、前記のような処理を施すことによってエポキシ樹脂硬化物に含有されたフィラー物質を簡易に分離してリサイクルすることができる。これによって得られたフィラーは、分解過程を経たにも係わらずフィラーの特性低下を抑えることができ、リサイクルに非常に有利である。
【0067】
例示的な具現例において、前記遷移金属元素が含まれる遷移金属塩または遷移金属酸化物は、例えば、KMnO、MnO、KMnO、MnSO、CrO、NaCr、KCr、ZnCr、HCrO、Pyridinium Chlorochromate(クロロクロム酸ピリジニウム)、Pyridinium Dichromate(二クロム酸ピリジニウム)、V、RuCl、RuO、Tetrapropylammonium Perruthenate(過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム)、MoO、K[Fe(CN)]、FeCl、Fe(NO Nonahydrate(九水和物)、MeReO、CuCl、Cu(ClO、Cu(HCONi(HCO、Cu(OAc)、OsO、(NHCe(NOなどであってよい。前述したように、エポキシ樹脂硬化物の例えば、炭素−炭素結合のような化学結合から電子を奪うことで解重合を行うために、酸化力の高い遷移金属塩または遷移金属酸化物を用いるのが好ましい。このような側面から、例えば、強い酸化剤である過マンガン酸カリウムが好ましい。また、過マンガン酸カリウムは、適用性に優れ且つ価格も低廉であるため好ましい。
【0068】
一方、本発明の具現例において、前述したように遷移金属を含む遷移金属塩または遷移金属酸化物を用いて解重合する場合、遷移金属を媒介に解重合のための酸化反応が生じるため、その結果として得られる反応生成物であるフィラーでは遷移金属が残留するようになる。
【0069】
例えば、過マンガン酸カリウムを用いてエポキシ樹脂硬化物の解重合を実施する場合、解重合後に得られたフィラーにはマンガンが残留するため、フィラーの元素を分析すると、遷移金属であるマンガンが微量検出される。
【0070】
例示的な具現例において、前記HO基盤溶媒は、前述したように水溶液(HO単独)であるのが好ましい。
【0071】
例示的な具現例において、HO基盤反応溶媒のpH条件を、pH1以上の弱酸性、中性、塩基性に調節する。このようにpH条件を調節すると、HO基盤反応系で酸化反応が生じ易くなると考えられる。
【0072】
非制限的な例示において、HO基盤反応系のpHは1〜14であり、反応性の面から、より具体的には、pH3〜12であるのが好ましい。
【0073】
例示的な具現例において、解重合反応温度は、例えば、250℃未満(例えば、20〜250℃)、または200℃以下(例えば、20〜200℃)、または100℃以下(例えば、20〜100℃、または20〜70℃)であってよい。
【0074】
例示的な具現例において、HO基盤反応溶媒は、液相であっても、気相であっても、超臨界状態であってもよい。液相の場合のものを用いるのが、工程が単純となり且つ反応エネルギーの所要が少なくて済む。本発明の具現例では、液相の場合のものを用いても低温で且つ高速で解重合することができるが、意図的に気相、超臨界状態のものを用いてもよいことは言うまでもない。このように超臨界状態にすると、反応時間がさらに短くできるが、反応装置が複雑になるという短所がある。
【0075】
例示的な具現例において、エポキシ樹脂硬化物を解重合反応に供する前に、エポキシ樹脂硬化物の反応表面積を増大させるべく表面処理する過程をさらに行っていてもよい。前述したように、本発明の例示的な具現例によれば、別途の前処理を行わなくても、低温で反応時間を顕著に減らすことができるが、反応表面積を増大させる表面処理によって、このように減った反応時間をさらに減らすことができる。すなわち、前述した表面処理によってエポキシ樹脂硬化物の面積を増大させ、以降の解重合反応がさらに滑らかに生じることができるようにする。
【0076】
例示的な具現例において、前記表面処理として、物理的表面処理と化学的表面処理とのいずれか一方または両方を並行していてよい。
【0077】
非制限的な例示において、前記物理的表面処理は、例えば、粉砕であってよい。粉砕方法は、乾式粉砕方法及び湿式粉砕方法から選択されたいずれか一方または両方であってよく、ハンマーミル、カッターミル、フレーククラッシャー、フェザーミル、ピン式粉砕機、衝撃式粉砕機、微粉砕機、ジェットミル、ミクロンミル、ボールミル、遊星ミル、ハイドロミル、アクアライザーからなる群より選択された一つまたは二つ以上を利用して粉砕することができる。例示的な具現例において、粉砕されたエポキシ樹脂硬化物は、1μm〜10cmの大きさを有するものであってよい。
【0078】
非制限的な例示において、前記化学的表面処理は、pH7未満の酸性組成物にエポキシ樹脂硬化物を含浸させることであってよい。
【0079】
非制限的な例示において、含浸方法に用いられる酸性組成物は、5.0以下のpH、20〜250℃の温度を有していてよく、酸性組成物にエポキシ樹脂硬化物を含浸させてからエポキシ樹脂硬化物を分離するまでの時間は、0.1〜24時間であってよい。次いで、分離されたエポキシ樹脂硬化物を洗浄する。
【0080】
例示的な具現例において、分解対象になるエポキシ樹脂硬化物は、各種のフィラー及び/または高分子樹脂を含んでいてよい。
【0081】
例示的な具現例において、フィラーは、炭素繊維やその他、黒鉛、グラフェン、酸化グラフェン、還元グラフェン、炭素ナノチューブ、ガラス繊維、無機塩、金属粒子、セラミック素材、単分子有機化合物、単分子ケイ素化合物、シリコン樹脂などから選択される一つ以上であってよい。
【0082】
例示的な具現例において、高分子樹脂は、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、フェノール樹脂、天然ゴム、合成ゴム、アラミド樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアセタール、アクリロニトリルブタジエンスチレン、スチレンアクリロニトリルから選択されたいずれか一つまたは二つ以上であってよい。
【0083】
例示的な具現例において、前記遷移金属塩または遷移金属酸化物は、組成物全体(HO基盤反応溶媒+遷移金属塩)の重量を基準にしたとき、0.001〜99重量%であってよい。非制限的な例示において、HO反応溶媒が例えば水溶液である場合、遷移金属塩または遷移金属酸化物が含まれた水溶液全体を基準にして、遷移金属塩または遷移金属酸化物が0.001〜99重量%の範囲で含まれていてよい。
【0084】
例示的な具現例において、エポキシ樹脂硬化物は、解重合用組成物(HO反応溶媒+遷移金属塩または遷移金属酸化物)の質量100重量部を基準にしたとき、1〜90重量部であってよい。非制限的な例示において、HO反応溶媒が水溶液の場合、遷移金属塩または遷移金属酸化物を含む水溶液100重量部に対してエポキシ樹脂硬化物が1〜90重量部であってよい。
【0085】
例示的な具現例において、前記遷移金属塩が例えばMnOである場合、酸素ガスを水にバブリングしてKMnO水溶液を調製し、これにエポキシ樹脂硬化物を入れる方式にて解重合用組成物をエポキシ樹脂硬化物に提供していてよい。
【0086】
一方、本発明の例示的な具現例では、前述したように遷移金属を含む遷移金属塩または遷移金属酸化物及び反応溶媒を含む解重合用組成物でエポキシ樹脂組成物を解重合する段階;及び解重合後の生成物から、例えば濾過や抽出などによってフィラーを収得する段階;を含むエポキシ樹脂硬化物からフィラーを分離する方法と、これにより得られたフィラーを提供する。
【0087】
エポキシ樹脂硬化物から分離、回収されたフィラーは、エポキシ樹脂硬化物に用いられる前と比べて特性低下を抑えることができ、これにより特性に優れたリサイクルフィラーを得ることができる。
【0088】
例えば、後述する実施例から確認できるように、前記フィラーが炭素繊維である場合、エポキシ樹脂硬化物に含まれた原料フィラー炭素繊維に対する引張強度や伸び率などの特性低下が、例えば、13%以下または10%以下と極めて低いことが分かる。ちなみに、熱分解法を用いてCFRPから回収した炭素繊維の場合、原料炭素繊維に対して15%以上の引張強度の低下を示す(非特許文献1)。これに対し、本発明の具現例に従って解重合した場合、引張強度特性の低下が顕著に少ない炭素繊維を回収することができる。
【0089】
例示的な具現例において、前記方法は、エポキシ樹脂硬化物を解重合した後に残留したHO反応溶媒に新しいエポキシ樹脂硬化物を加えて分解過程を繰り返し行うことができる。
【0090】
以上の方法によってエポキシ樹脂硬化物を解重合して得られた生成物から、例えば、濾過や抽出及び洗浄によってフィラーを分離することができる。
【0091】
以下、本発明の例示的な具現例に係る具体的な実施例について詳細に説明する。なお、本発明が下記の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々の形態の実施例を具現することができ、且つ下記の実施例は、単に本発明の開示が完全になるようにすると共に、当業界における通常の知識を有する者が発明の実施を容易にできるようにするためのものに過ぎないことが理解できるであろう。
【0092】
[実験1]
以下の実施例では水単独の溶媒を用いた。実施例2において超臨界状態の水溶液を用いたことを除いては、他の実施例では水溶液(液相)を用いた。水の誘電率は80.2である。
【0093】
一方、比較例1では、水とアセトンの混合溶媒を用い、誘電率が約44であった。比較例2では硝酸水溶液を用いた。
【0094】
一方、実施例3は、実施例1と比べて廃CFRPの量を15倍増大させたものであり、実施例4は、廃CFRPの量を実施例3と同一にすると共に、過マンガン酸カリウム水溶液の量も増大させたものである。
【0095】
また、実施例5は、廃CFRPの粉砕後に解重合を実施したものであり、実施例6は、廃CFRPを酢酸に含浸後に解重合を実施したものであり、実施例7は、廃CFRPを粉砕及び含浸後に解重合したものである。
【0096】
また、実施例8は、遷移金属酸化物として酸化クロム(VI)(CrO)を用いたものであり、実施例9は、遷移金属酸化物として五酸化バナジウム(V)を用いたものであり、実施例10は、遷移金属塩として塩化ルテニウム(RuCl)を用いたものであり、実施例11は、遷移金属酸化物として酸化モリブデン(MoO)を用いたものであり、実施例12は、遷移金属酸化物としてメチル三酸化レニウム(MTO)を用いたものであり、実施例13は、遷移金属酸化物として四酸化オスミウム(OsO)を用いたものである。
【0097】
[実施例1:過マンガン酸カリウム(KMnO)水溶液を用いたCFRP中のエポキシ樹脂硬化物の解重合及びフィラー(炭素繊維)の分離]
本実施例1で用いられたエポキシ樹脂硬化物は廃CFRPである。前記廃CFRPは、ハロゲン元素を含むビスフェノールAのジグリシジルエーテル形態のエポキシ化合物と芳香族アミン基を含む芳香族硬化剤を用いて生成されたエポキシ樹脂硬化物と炭素繊維からなるものである。このCFRPは芳香族硬化剤を用いるため、一般に相当に分解し難いものと知られている。
【0098】
前記廃CFRP 0.1gを開放されたガラス容器に入れられた2mol/L過マンガン酸カリウム水溶液70mLに投入した後、70度で撹拌した。加圧リアクター(Autoclave)は使用しなかった。
【0099】
図2Aは、本発明実施例1において解重合前のCFRPを撮影した写真であり、図2Bは、本発明実施例1において解重合後に回収した炭素繊維を撮影した写真である。
【0100】
図3は、本発明実施例1における反応系の過マンガン酸カリウム水溶液と比較例3における反応系の硝酸水溶液のpHをそれぞれ測定した結果であり、図4は、本発明実施例1において解重合反応によって生成された二酸化マンガンを濾過及び分離後に撮影した写真である。
【0101】
また、エポキシ樹脂の解重合が完了した時間を表1に、エポキシ樹脂の解重合後に得た過マンガン酸カリウム水溶液のpHを測定した結果を表2に、解重合工程前後の炭素繊維の引張強度の変化を表3と図5に示した。
【0102】
3時間後にエポキシ樹脂が実質的に完全に解重合(残留率5%以下)されたことを確認してから、Advantec社のセルロース濾過紙を利用して水溶液中の炭素繊維と二酸化マンガンを濾過した後、炭素繊維を分離及び洗浄し、乾燥した。乾燥した炭素繊維の熱重量分析装置(TGA)の測定結果から、エポキシ残留物がないことを確認した。
【0103】
また、本発明実施例1の解重合生成物に多量のC−OH結合が形成されていることを確認するために、解重合以前のCFRPと解重合生成物のFT−IR分析を行い、図6に示した。
【0104】
解重合生成物は、実施例1において炭素繊維及び二酸化マンガンを濾過してから残留した水溶液状の生成物をジクロロメタンを利用して抽出した後に乾燥させて得られた固形の混合物である。FT−IR分析の場合、Thermo Scientific社製のNicolet iS 10機器を使用し、固形の混合物と臭化カリウムを用いてペレットを製造した後に500cm−1〜4000cm−1波数区間を測定した。FT−IR結果から、OH基が多く発生したことを確認することができた。
【0105】
[実施例2:超臨界状態の過マンガン酸カリウム(KMnO)水溶液を用いたCFRP中のエポキシ樹脂硬化物の解重合及びフィラー(炭素繊維)の分離]
実施例1で用いられたのと同じCFRP 0.1gを圧力計付き回分式反応器に入れられた2mol/L過マンガン酸カリウム水溶液70mLに投入した後、反応器を密閉してから電気加熱ジャケットを利用して374℃で加熱した。このとき、圧力計に表示された圧力は221barであった。
【0106】
1時間後に反応器を室温まで冷却させてから、反応器内部のエポキシ樹脂が解重合されたかどうかを確認した。
【0107】
1時間単位で反応時間を増やしていき、エポキシ樹脂の分解が完了する時間を表1に表した。
【0108】
2時間後にエポキシ樹脂が実質的に完全に解重合されたことを確認してから、反応器内部の炭素繊維と二酸化マンガンを濾過した後、炭素繊維を分離及び洗浄し、乾燥した。
エポキシ樹脂の解重合が完了した時間を表1に表した。
【0109】
[実施例3:過マンガン酸カリウム(KMnO)水溶液を用いたCFRP中のエポキシ樹脂硬化物の解重合及びフィラー(炭素繊維)の分離:CFRP量増加]
一方、今回は、廃CFRPの量を15倍になるように増加させた(すなわち、1.5g)ことを除いては、実施例1と同一の条件(すなわち、2mol/L過マンガン酸カリウム水溶液70mLに投入した後、70℃で撹拌)にしたときの結果を調べてみた。
【0110】
10時間後にエポキシ樹脂が実質的に完全に解重合されたことを確認してから、水溶液中の炭素繊維と二酸化マンガンを濾過した後、炭素繊維を分離及び洗浄し、乾燥した。
エポキシ樹脂の解重合が完了した時間を表1に表した。
【0111】
[実施例4:過マンガン酸カリウム(KMnO)水溶液を用いたCFRP中のエポキシ樹脂硬化物の解重合及びフィラー(炭素繊維)の分離:解重合条件の変化]
今回は、実施例1で用いた廃CFRP 1.5g(実施例3と同一)を開放されたガラス容器に入れられた4mol/L過マンガン酸カリウム水溶液100mLに投入した後、90℃で撹拌した。加圧リアクター(Autoclave)は使用しなかった。
【0112】
7時間後にエポキシ樹脂が実質的に完全に解重合されたことを確認してから、水溶液中の炭素繊維と二酸化マンガンを濾過した後、炭素繊維を分離及び洗浄し、乾燥した。
【0113】
エポキシ樹脂の解重合が完了した時間を表1に表した。また、本実施例4の結果として回収された炭素繊維の引張強度の測定結果を表3に表した。
【0114】
[実施例5:過マンガン酸カリウム(KMnO)水溶液を用いたCFRP中のエポキシ樹脂硬化物の解重合及びフィラー(炭素繊維)の分離:CFRP粉砕後解重合]
廃CFRP 1.0kgを中国のWellbom社製のBarley Grinder Crusher手動粉砕機で平均直径2.0mmの断片に粉砕したことを除いては、前記実施例4と同一の条件にした。
【0115】
粉砕されたエポキシ樹脂硬化物断片1.5gを開放されたガラス容器に入れられた4mol/L過マンガン酸カリウム水溶液100mLに投入した後、90℃で撹拌した。加圧リアクター(Autoclave)は使用しなかった。
【0116】
4時間後にエポキシ樹脂が実質的に完全に解重合されたことを確認してから、水溶液中の炭素繊維と二酸化マンガンを濾過した後、炭素繊維を分離及び洗浄し、乾燥した。
エポキシ樹脂の解重合が完了した時間を表1に表した。
【0117】
[実施例6:過マンガン酸カリウム(KMnO)水溶液を用いたCFRP中のエポキシ樹脂硬化物の解重合及びフィラー(炭素繊維)の分離:CFRP含浸後解重合]
廃CFRP 1.5gを99%酢酸100mLに入れ、120度で30分間加熱したことを除いては、前記実施例4と同一の条件にした。加熱後、エポキシ樹脂硬化物を分離してから、酢酸20mLで洗浄後に乾燥した。
【0118】
乾燥されたエポキシ樹脂硬化物を開放されたガラス容器に入れられた4mol/L過マンガン酸カリウム水溶液100mLに投入した後、90℃で撹拌した。加圧リアクター(Autoclave)は使用しなかった。
【0119】
5時間後にエポキシ樹脂が実質的に完全に解重合されたことを確認してから、水溶液中の炭素繊維と二酸化マンガンを濾過した後、炭素繊維を分離及び洗浄し、乾燥した。
【0120】
エポキシ樹脂硬化物の解重合が完了した時間を表1に表した。また、本発明実施例6で用いられた炭素繊維の引張強度の測定結果を表3に表した。
【0121】
[実施例7:過マンガン酸カリウム(KMnO)水溶液を用いたCFRP中のエポキシ樹脂硬化物の解重合及びフィラー(炭素繊維)の分離:CFRP粉砕及び含浸後解重合]
廃CFRP 1.0kgをイギリスのGlen Creston社製のMicro Hammer Cutter Mill自動粉砕機で平均直径2.0mmの断片に粉砕したことを除いては、前記実施例6と同一の条件にした。
【0122】
粉砕されたエポキシ樹脂硬化物1.5gを99%酢酸100mLに入れて120℃で30分間加熱した後、エポキシ樹脂硬化物を分離してからアセトン20mLで洗浄後に乾燥した。
【0123】
乾燥されたエポキシ樹脂硬化物を開放されたガラス容器に入れられた4 mol/L過マンガン酸カリウム水溶液100mLに投入した後、90℃で撹拌した。加圧リアクター(Autoclave)は使用しなかった。
【0124】
3時間後にエポキシ樹脂が実質的に完全に解重合されたことを確認してから、水溶液中の炭素繊維と二酸化マンガンを濾過した後、炭素繊維を分離及び洗浄し、乾燥した。
エポキシ樹脂硬化物の解重合が完了した時間を表1に表した。
【0125】
[実施例8:酸化クロム(VI)水溶液を用いたフィラー(グラフェン)を含むエポキシ樹脂硬化物の解重合及びフィラー(グラフェン)の分離]
本実施例8で用いられた硬化物は、クレゾールノボラックのグリシジルエーテル形態のエポキシ化合物と芳香族アミン基を含む硬化剤を用いて生成されたエポキシ樹脂とグラフェンからなる。該CFRPは、ノボラックエポキシ化合物と芳香族硬化剤を用いるため、一般に相当に分解し難いと知られている。
【0126】
前記エポキシ樹脂硬化物0.1gを開放されたガラス容器に入れられた2 mol/L酸化クロム水溶液70mLに投入した後、70℃で撹拌した。加圧リアクター(Autoclave)は使用しなかった。
【0127】
6.5時間後にエポキシ樹脂が実質的に完全に解重合されたことを確認してから、水溶液中のグラフェンと酸化クロム(III)を濾過した後、グラフェンを分離及び洗浄し、乾燥した。
エポキシ樹脂硬化物の解重合が完了した時間を表1に表した。
【0128】
[実施例9:五酸化バナジウム(V)水溶液を用いたフィラー(酸化グラフェン)を含むエポキシ樹脂硬化物の解重合及びフィラー(酸化グラフェン)の分離]
本実施例9で用いられた硬化物は、グリシジルアミン形態のエポキシ化合物と酸無水物基を含む硬化剤を用いて生成されたエポキシ樹脂硬化物と酸化グラフェンからなる。
【0129】
エポキシ樹脂を含む硬化物0.1gを開放されたガラス容器に入れられた2mol/L五酸化バナジウム水溶液70mLに投入した後、70℃で撹拌した。加圧リアクター(Autoclave)は使用しなかった。
【0130】
6時間後にエポキシ樹脂が実質的に完全に解重合されたことを確認してから、水溶液中の酸化グラフェンを濾過して分離後、乾燥した。
エポキシ樹脂硬化物の解重合が完了した時間を表1に表した。
【0131】
[実施例10:塩化ルテニウム(RuCl)水溶液を用いたフィラー(炭素ナノチューブ)を含むエポキシ樹脂硬化物の解重合及びフィラー(炭素ナノチューブ)の分離]
本実施例10で用いられた硬化物は、実施例8と同様にクレゾールノボラックのグリシジルエーテル形態のエポキシ化合物と芳香族アミン基を含む硬化剤を用いて生成されたエポキシ樹脂硬化物と炭素ナノチューブからなる。
【0132】
エポキシ樹脂を含む硬化物0.1gを開放されたガラス容器に入れられた2mol/L塩化ルテニウム水溶液70mLに投入した後、70℃で撹拌した。加圧リアクター(Autoclave)は使用しなかった。
【0133】
5.5時間後にエポキシ樹脂が実質的に完全に解重合されたことを確認してから、水溶液中の炭素ナノチューブを濾過して分離後、乾燥した。
エポキシ樹脂硬化物の解重合が完了した時間を表1に表した。
【0134】
[実施例11:酸化モリブデン(MoO)水溶液を用いたフィラー(ガラス繊維)を含むエポキシ樹脂硬化物の解重合及びフィラー(ガラス繊維)の分離]
本実施例11で用いられた硬化物は、実施例8と同様にクレゾールノボラックのグリシジルエーテル形態のエポキシ化合物と芳香族アミン基を含む硬化剤を用いて生成されたエポキシ樹脂硬化物とガラス繊維からなる。
【0135】
エポキシ樹脂を含む硬化物0.1gを開放されたガラス容器に入れられた2mol/L酸化モリブデン水溶液70mLに投入した後、70℃で撹拌した。加圧リアクター(Autoclave)は使用しなかった。
【0136】
6.5時間後にエポキシ樹脂が実質的に完全に解重合されたことを確認してから、水溶液中のガラス繊維とモリブデンを濾過した後、ガラス繊維を分離及び洗浄し、乾燥した。
エポキシ樹脂硬化物の解重合が完了した時間を表1に表した。
【0137】
[実施例12:メチル三酸化レニウム(MTO)水溶液を用いたフィラー(アルミナ)を含むエポキシ樹脂硬化物の解重合及びフィラー(アルミナ)の分離]
本実施例12で用いられた硬化物は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル形態のエポキシ化合物と脂肪族アミン基を含む硬化剤を用いて生成されたエポキシ樹脂硬化物とアルミナからなる。
【0138】
エポキシ樹脂を含む硬化物0.1gを開放されたガラス容器に入れられた2mol/L MTO水溶液70mLに投入した後、70℃で撹拌した。加圧リアクター(Autoclave)は使用しなかった。
【0139】
7時間後にエポキシ樹脂が実質的に完全に解重合されたことを確認してから、水溶液中のアルミナを濾過して分離後、乾燥した。
エポキシ樹脂硬化物の解重合が完了した時間を表1に表した。
【0140】
[実施例13:四酸化オスミウム(OsO)水溶液を用いたフィラー(シリコンカーバイド)を含むエポキシ樹脂硬化物の解重合及びフィラー(シリコンカーバイド)の分離]
本実施例13で用いられた硬化物は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル形態のエポキシ化合物と脂肪族アミン基を含む硬化剤を用いて生成されたエポキシ樹脂硬化物とシリコンカーバイドからなる。
【0141】
エポキシ樹脂を含む硬化物0.1gを開放されたガラス容器に入れられた2mol/L四酸化オスミウム水溶液70mLに投入した後、70℃で撹拌した。加圧リアクター(Autoclave)は使用しなかった。
【0142】
4.5時間後にエポキシ樹脂が実質的に完全に解重合されたことを確認してから、水溶液中のシリコンカーバイドを濾過して分離後、乾燥した。
エポキシ樹脂硬化物の解重合が完了した時間を表1に表した。
【0143】
[比較例1:過マンガン酸カリウム水溶液とアセトンとの混合液(KMnO+HO+アセトン)を用いたCFRP中のエポキシ樹脂硬化物の解重合及び炭素繊維の分離]
実施例1で用いられたものと同一のCFRP 0.1gを開放されたガラス容器に入れられた2mol/L過酸化水素水と33%(全溶媒中の体積比)アセトンとの混合液11mL(すなわち、全溶媒中でアセトンが33体積%、水体積比は67%)に投入した後、70℃で撹拌した。
【0144】
エポキシ樹脂の解重合の有無を表1に表した。比較例1では、エポキシ樹脂が解重合せず(分解率4.5%、28%、または34%)、炭素繊維を分離することができなかった。
【0145】
本比較例では、反応系の誘電率が低くて過マンガン酸カリウムの溶解及びイオン解離が生じ難く、且つ酸化反応によるOH基の形成が少ないことから、解重合が生じ難い結果が出たと考えられる。実施例と同一のCFRPを用いたにも拘らず(エポキシ樹脂硬化物の硬化剤が芳香族ジアミン系で相当に分解し難い)、実施例とは異なり、全く解重合が生じない結果が出たことに注目される。
【0146】
[比較例2:硝酸水溶液を用いたエポキシ樹脂の分解及び炭素繊維の分離]
実施例1で用いられたものと同一のCFRP 0.1gを開放されたガラス容器に入れられた2mol/L硝酸水溶液に投入した後、70℃で撹拌した。
【0147】
図2にはCFRPが入っている硝酸水溶液のpHを測定した結果を示した。また、エポキシ樹脂の分解が完了した時間を表1に、炭素繊維を濾過した後に得られた硝酸水溶液のpHを測定した結果を表2に表した。
【0148】
12時間後にエポキシ樹脂が完全に解重合されたことを確認してから、水溶液中の炭素繊維を濾過して分離後、乾燥した。
【0149】
[実施例及び比較例のエポキシ分解実験結果及び回収されたフィラーの特性分析]
実施例及び比較例においてエポキシ樹脂の分解に掛かった時間を表1に表した。また、実施例1と比較例2において炭素繊維を濾過した後に得られた過マンガン酸カリウム水溶液及び硝酸水溶液のpHを測定した結果を表2に表した。
【0150】
【表1】
【0151】
【表2】
【0152】
【表3】
【0153】
前記表1の実施例と比較例から分かるように、実施例の場合、反応温度が低いながらも反応時間が相対的に極めて早かった。これに対し、特に比較例1においてアセトンを反応溶媒中で33体積%程度含ませた場合(誘電率が約44)、エポキシ樹脂硬化物の分解が生じないことを確認することができた。
【0154】
一方、硝酸水溶液を用いた比較例2の場合は、過マンガン酸カリウム水溶液を用いた実施例1に比べて、反応時間が4倍と極めて遅かった。また、前記表2から確認することができるように、実施例1で用いた組成物は、硝酸水溶液よりも高いpH値を示し、作業条件がよりマイルドであることを確認した。
【0155】
図5は、本発明実施例1のCFRPに用いられた炭素繊維(原料炭素繊維、V−CFと表示する)と実施例1の結果として回収された炭素繊維(R−CFと表示する)の引張強度の測定から得られた結果を比較するグラフである。
【0156】
実施例1から回収された炭素繊維の引張強度の測定結果から、本発明の具現例の方法を用いてCFRPを分解することで引張強度の低下の少ない(10%以内)炭素繊維をCFRPから回収可能であることを確認した。これは、熱分解法を用いてCFRPから回収した炭素繊維が原料対比15%以上の引張強度の低下を示したこと(非特許文献1)と比較するとき、本発明の具現例による解重合方法によれば、高い特性の炭素繊維が回収可能であることを示す。
【0157】
一方、前記表1の実施例4〜7では、それぞれ同一のエポキシ樹脂硬化物と解重合用組成物を用いているが、実施例5〜7は表面処理工程を含めて実施し、実施例4は表面処理工程を含めずに実施した。実施例4の場合でも解重合が高速でなされたが、表面処理工程を含むことでエポキシ樹脂硬化物がより高速で解重合されることを確認し、粉砕及び含浸工程をいずれも含む実施例7で最も早期にエポキシ樹脂硬化物の解重合が完了することを確認した。
【0158】
このような解重合完了時間の短縮は、表面前処理によってエポキシ樹脂硬化物の反応表面積の増大によって解重合がさらに活性化したことによるものと考えられる。このような解重合の活性化は、粉砕方法を用いた物理的な表面積の増大だけでなく、含浸方法を用いた化学的な表面積の増大によっても発生するようになる。
【0159】
また、前記表3から確認できるように、含浸工程を含む実施例6の結果として回収した炭素繊維の引張強度が、含浸工程を含まない実施例4の結果として回収した炭素繊維の引張強度よりも優れていることを確認した。これは、表面処理工程によってエポキシ樹脂硬化物の解重合に掛かる時間が減ったことにより、解重合工程中で生じ得る炭素繊維の特性低下がさらに低減したことを示す。
【0160】
このような引張強度の測定結果から、本発明の具現例の方法を用いてエポキシ樹脂硬化物を解重合することで、物性に優れている炭素繊維をCFRPから回収可能であることを確認した。
【0161】
[実験2]
本実験2では、反応溶媒として水と多種の有機溶媒(アセトン、イソプロピルアルコール、エタノール)との混合溶媒を用い、混合比率を変えていくことで誘電率を変化させ、それによるエポキシ解重合程度を測定した。化合物は、過マンガン酸カリウム(KMnO)を用いた。表4〜表6に実験条件及び結果を表した。
【0162】
【表4】
【0163】
【表5】
【0164】
【表6】
【0165】
*前記表においてCFPRの解重合反応前のエポキシ樹脂の含有量は19.4重量%(総CFRP中のエポキシ樹脂の重量%)であった。エポキシ残留量は、これを基準にして24時間または5時間後の残留量を表示している。例えば、24時間後の19.1重量%は、24時間解重合反応後の総CFRP中のエポキシ樹脂の重量%が19.1重量%になったということである。一方、5時間後の0重量%は、5時間後に既にエポキシ樹脂の残留量が総CFRP中で0重量%であるということである。これは、24時間後に10重量%以上の相当量のエポキシ樹脂が残留する結果に比べて、顕著な差を示すものである。
【0166】
**分解率は、前述したように次のようにして求めた。
分解率=[(CFRPの解重合反応前のエポキシ樹脂含有量−CFRPの解重合反応後のエポキシ樹脂含有量)/CFRPの解重合反応前のエポキシ樹脂含有量]×100
【0167】
図7は、本実験2における表4〜6の結果を反応系の誘電率によるエポキシ樹脂の分解率で示した結果である。
【0168】
同図から分かるように、誘電率が65以上のときに解重合効率の勾配が急激に増加することが分かる。一方、水単独の場合は、24時間ではなく5時間内に分解率100を達成し、有機溶媒との混合の場合に比べて、水単独の使用時に分解率が飛躍的に増加することを示した。
【0169】
[実験3]
本実験では、実施例1においてCFRPに用いられた炭素繊維とKMnOを用いて解重合して回収された炭素繊維のX線光電子分光(XPS)分析を行った。
【0170】
図8Aは、本実験3においてCFRPに用いられた炭素繊維(CFと表示)のX線光電子分光(XPS)結果を示すグラフである。
【0171】
図8Bは、本実験3においてKMnOを用いて解重合して回収された炭素繊維のX線光電子分光(XPS)結果を示すグラフである。
【0172】
図8Cは、本実験3においてCFRPに用いられた炭素繊維(CFと表示)及びKMnOを用いて解重合して回収された炭素繊維(R−CFと表示)のXPS元素含量結果を示す図である。
【0173】
図8A図8Cから分かるように、過マンガン酸カリウムを用いて回収されたR−CFでは、遷移金属塩の残留物であるMn元素が2.1%以下に検出されることを確認することができる。
【0174】
以上から分かるように、本発明の具現例による解重合用組成物において遷移金属を含む遷移金属塩または遷移金属酸化物と共に用いられる反応溶媒は水単独が特に好ましいことが分かる。水を含み、その他の溶媒を混合する場合には、混合溶媒の誘電率が少なくとも65以上で分解率の急激な増加が現れることを示し、誘電率が高くなって水単独を用いる場合は、反応時間自体が顕著に減りながら飛躍的な反応効率の上昇を示した。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C