(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非酸化物セラミックを構成する金属は、チタン、ジルコニウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、バナジウム、クロミウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ニオビウム、スズ、タングステン、タンタル、インジウム、ランタン、鉛、ストロンチウム、ビスマス、セリウム、モリブデン、及びハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の金属空気電池。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の金属空気電池の実施形態について説明するが、本発明は、以下の実施態様に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、図の一部又は全部において、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大または縮小等して図示した部分がある。上下等の位置関係を示す用語は、単に説明を容易にするために用いられており、本発明の構成を限定する意図は一切ない。
【0022】
<金属空気電池>
図1は、本発明の金属空気電池において、好ましい実施形態の一例である本実施形態を示す図である。本発明の金属空気電池は、
図1に示すように、負極1と、空気極3と、前記負極1及び前記空気極3の間に介在する電解質2と、を有する。本発明の金属空気電池は、負極1と空気極3とが電解質2を挟み込む構造を基本とし、それ以外の構成については、従来の周知の構成を特に限定されることなくとり得ることができる。
【0023】
例えば負極1は、アルミニウム板等の金属板で構成することができる。電解質2は、セパレータとして機能する材料に電解液を保持させたり、電解液をセパレータで仕切る構造とすることができる。また、空気極3は、金属メッシュなどの金属多孔板に、空気極触媒材料を担持させた構造とすることができる。更に、負極1と空気極3の間には、固体電解質等のイオン伝導体等を介在させてもよい。以下、本発明の金属空気電池の各構成について、説明する。
【0024】
<負極>
本発明における負極は、酸化反応により金属イオンと電子を生成して負極活物質として働く金属のうち、理論エネルギー密度を増加させる観点から、アルミニウムを含有するものが使用される。アルミニウムを含有するものとしては、アルミニウム純金属、アルミニウム合金が挙げられる。
【0025】
アルミニウム合金としては、アルミニウムを主体として、アルミニウムにLi、Mg、Sn、Zn、In、Mn、Ga、Bi、Fe等をそれぞれ単独でまたは2種以上合金化させることができる。なかでも、Al−Li、Al−Mg、Al−Sn、Al−Zn等のアルミニウム合金は、高い電池電圧を与えるので、特に好ましい。
【0026】
前記材料は、金属イオンを放出・取り込み可能な負極活物質として作用することができる。負極は、前記材料のみを含有するものであってもよく、前記材料の他に導電性材料および結着剤の少なくとも一方を含有するものであってもよい。例えば、前記材料が箔状、板状、メッシュ(グリッド)状等である場合は、前記材料のみを含有する負極とすることができる。一方、前記材料が粉末状等である場合は、前記材料及び結着剤を含有する負極とすることができる。なお、導電性材料および結着剤については、「空気極」の項に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0027】
負極は、必要に応じて、負極の集電を行う負極集電体を備えていても良い。負極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、銅、ステンレス、ニッケル、カーボン等を挙げることができる。負極集電体の形状としては、例えば、箔状、板状、メッシュ(グリッド)状等を挙げることができる。本発明においては、電池ケースが負極集電体の機能を兼ね備えていてもよい。
【0028】
負極集電体の厚さは、金属空気電池の用途等により異なるものであるが、例えば10μm〜1000μmの範囲内、特に20μm〜400μmの範囲内であることが好ましい。
【0029】
負極の製造方法は、特に限定されず、周知の方法を用いることができる。例えば、市販の板状等の材料(例えば、前述のような材料)をそのまま用いることができる。市販の板状等の材料としては、例えば、アルミニウムを用いる場合は、A1100,A1050、A1085等のように、99%以上がAl成分で、いわゆる純アルミニウムといわれる材料を、所定の形状(例えば、円状、テープ状、板状等)に切り出し、そのまま用いることができる。また、例えば、箔状の金属材料と負極集電体とを重ね合わせて加圧することができる。また、別の方法として、負極活物質と結着剤等とを含有する負極材混合物を調製し、該混合物を負極集電体上に塗布、乾燥する方法等を挙げることができる。
【0030】
負極の厚さは、金属空気電池の用途等により異なるものであるが、材料が箔状、板状等である場合、例えば、2μm〜10mmの範囲内、特に5μm〜2mmの範囲内であることが好ましい。
【0031】
<空気極>
本発明における空気極は、触媒層と正極集電体とを備えることができ、前記触媒層は、空気極触媒材料を含有することができる。触媒層は、空気中から酸素を吸収し、これを酸素と反応させる役割等を有することができる。本発明における空気極は、空気極触媒材料として機能する非酸化物セラミックを含有する。本発明において、「非酸化物セラミック」とは、金属の酸化物のみで構成される酸化物セラミック以外のセラミックをいう。
【0032】
非酸化物セラミックとしては、金属の炭化物、窒化物、ホウ化物、酸窒化物、炭窒化物、又はケイ化物が好ましく、空気極での副生成物の生成を抑制して、充放電サイクル特性の安定性等の電池性能を向上させる観点から、炭化物、窒化物、ホウ化物がより好ましく、炭化物、窒化物が特に好ましい。
【0033】
非酸化物セラミックを構成する金属は、チタン、ジルコニウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、バナジウム、クロミウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ニオビウム、スズ、タングステン、タンタル、インジウム、ランタン、鉛、ストロンチウム、ビスマス、セリウム、モリブデン、及びハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、空気極での副生成物の生成を抑制して、充放電サイクル特性の安定性等の電池性能を向上させる観点から、チタン、ジルコニウム、タンタル、バナジウムがより好ましい。
【0034】
上記の非酸化物セラミックのうち、特に、空気極での副生成物の生成を抑制する観点から、窒化チタン、及び炭化チタンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0035】
前記空気極触媒材料の含有量は、特に限定されないが、例えば、触媒層全体の質量を100wt%とした場合に、電池特性を向上させる観点から、30〜95wt%であることが好ましく、特に、40〜80wt%であることが好ましい。
【0036】
触媒層は、さらに、導電性を向上させるため、導電性材料を含有していてもよい。導電性材料としては、空気極触媒材料に導電性を付与又は空気極触媒材料の導電性を向上できるものであればよく、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素質材料、ポリチアジル、ポリアセチレン等の導電性高分子等を挙げることができる。中でも、空気金属電池の電極材料として用いる場合、表面にメソ細孔を有し、放電析出物を格納するという観点から、炭素質材料が好ましく、特に、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ等が好ましい。導電性材料は、カーボンアロイの担体としても機能することがある。しかし、炭素系の材料を多量に含有させると空気極に副生成物が生成してくる可能性もある。
【0037】
前記導電性材料の含有割合は、特に限定されるものではないが、導電性確保の観点から、触媒層全体の質量を100wt%とした場合に、20wt%未満であることが好ましく、1〜10wt%であることがより好ましい。
【0038】
触媒層は、さらに、空気極触媒材料を固定化するため、結着剤を含有していてもよい。結着剤は、集電を目的としない支持体を含有していてもよい。結着剤としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン・ブタジエンゴム(SBRゴム)等のゴム系樹脂等を挙げることができる。
【0039】
前記結着剤の含有割合は、特に限定されるものではないが、導電性確保の観点から、触媒層全体の質量を100wt%とした場合に、60wt%未満であることが好ましく、5〜50wt%であることがより好ましい。
【0040】
空気極触媒材料、導電性材料、結着剤等を含有するペーストを形成するため、溶媒を用いることができる。溶媒としては、揮発性を有していれば特に限定されず、適宜選択することができる。具体的には、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられる。空気極合材ペーストの乾燥が容易になることから、沸点が200℃以下の溶媒が好ましい。
【0041】
前記溶媒の含有割合は、特に限定されるものではないが、塗布しやすさの観点から、触媒層全体の質量を100wt%とした場合に、60wt%未満であることが好ましく、5〜50wt%であることがより好ましい。
【0042】
空気極触媒材料:導電性材料:結着剤:溶媒の混合比(重量比)は、塗布しやすさの観点から、40〜60:1〜10:5〜15:20〜40であることが好ましい。
【0043】
触媒層の厚さは、金属空気電池の用途等により異なるものであるが、例えば2μm〜500μmの範囲内、特に5μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
【0044】
正極集電体としては、カーボンペーパー、金属メッシュ等の多孔質構造、網目状構造、繊維、不織布、箔状、板状等、従来から集電体として用いられる形態の材料を、特に限定されず用いることができる。中でも、酸素の供給性能が高く、かつ、集電効率に優れるという観点から、カーボンペーパー、金属メッシュ等の多孔質構造が好ましい。例えば、たとえば、SUS、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン等から形成した金属メッシュを用いることができる。その他の正極集電体として、酸素供給孔を有する金属箔を用いることもできる。なお、電池ケースが正極集電体の機能を兼ね備えても良い。
【0045】
正極集電体の厚さは、金属空気電池の用途等により異なるものであるが、例えば10μm〜1000μmの範囲内、特に20μm〜400μmの範囲内であることが好ましい。
【0046】
触媒層は、その内部に正極集電体を含有していてもよい。正極集電体は、触媒層の中央にあってもよいし、触媒層の片面に層状に存在してもよい。正極集電体が触媒層の片面に存在する場合は、正極集電体は、通常、電解質と反対側の空気との接触部側に配置され得る。触媒層の形状は、層状だけでなく、その他の形状のもの(例えば、ペレット状、板状、メッシュ状等)も含む。
【0047】
空気極の製造方法は、特に限定されず、周知の方法を用いることができる。例えば、少なくとも本発明における空気極触媒材料、及び必要に応じて、導電性材料、結着剤、溶媒等を混合した空気極合材ペーストを、正極集電体の表面に塗布、乾燥させることで、触媒層と正極集電体とが積層した空気極を作製することができる。或いは、上記空気極合材ペーストを塗布、乾燥して得られた触媒層を、正極集電体と重ね合わせ、適宜、加圧や加熱等を行うことで、触媒層と正極集電体とが積層した空気極を作製することもできる。空気極合材ペーストを塗布する方法は、特に限定されず、ドクターブレード、スプレー法等の一般的な方法を用いることができる。
【0048】
空気を供給する空間の厚さは、金属空気電池の用途等により異なるものであるが、材料が箔状、板状等である場合、例えば、2μm〜10mmの範囲内、特に5μm〜2mmの範囲内であることが好ましい。
【0049】
<電解質>
本発明における電解質は、負極と空気極との間に保持されている。本発明における電解質は、負極と空気極との間で金属イオンを交換する働き等を有する。本発明における電解質は、イオン液体、及び非水電解液からなる群から選択される少なくとも1種を含有する。副生成物の発生を抑制する観点から、本発明における電解質は、イオン液体を含有することが好ましい。
【0050】
ここで、「イオン液体」とは、アニオンとカチオンの組み合わせからなる化合物であり、室温でも液体で存在する塩を意味する。アニオンとカチオンの組み合わせ次第で多数のイオン液体が考えられる。カチオンとしては、例えば、イミダゾリウム(例えば、ジアルキルイミダゾリウム等)、ピリジニウム(例えば、アルキルピリジニウム等)等の芳香族系アミン由来のもの、アンモニウム(例えば、テトラアルキルアンモニウム等)、ピロリジニウム(例えば、環状のピロリジニウム等)等の脂肪族系アミン由来のものが挙げられる。アニオンとしては、例えば、Cl
−、Br
−、I
−等のハロゲンイオン、BF
4−、PF
6−、CF
3SO
3−、(CF
3SO
2)
2N
−等のフッ化物イオン等が挙げられる。また、最近では、硝酸や酢酸から構成されるイミダゾリウム塩がイオン液体となったり、アルキルスルホン酸などの汎用アニオンや、硫酸、リン酸などの多価アニオンもイオン液体を形成する時がある。つまり、このように非ハロゲン系イオン液体も存在する。また、アミノ酸、糖、糖誘導体、乳酸などの天然由来のイオンがイオン液体を構成しているものも増えてきている。他にも、S(硫黄)含有イオン、カルボン酸イオンをアニオンとするイオン液体、さらに、ホスホニウム、スルホニウムをカチオンとするイオン液体も存在する。
【0051】
また、数十℃以下の融点をもつ疎水性のイオン液体を使用すれば、電解質の揮発によって生じる空気電池の特性の低下を抑制することができる。また、イオン液体は、残留水分等により変化する可能性があるので、使用前には乾燥することが好ましい。乾燥方法は、公知の乾燥方法をとり得る。
【0052】
副生成物の発生の抑制、高いイオン伝導性、難揮発性、高い熱安定性などの観点から、イオン液体のカチオンは、イミダゾリウム、ピリジニウム、アンモニウム、ピロリジニウム、ピラゾリウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、スルホニウム、及びホスホニウムからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記イオン液体のアニオンは、ハロゲンイオン、アミドイオン、イミドイオン、フッ化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、フルオロ硫酸イオン、乳酸イオン、及びカルボン酸イオンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。前記のようなカチオンとアニオンは、自由に組み合わせることができる。カチオンとアニオンは、それぞれ、1種のみを単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせても良い。
【0053】
代表的なカチオンとしては、副生成物を抑制する観点から、イミダゾリウム、ピリジニウム、アンモニウム、ピロリジニウム、ピラゾリウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、スルホニウム、ホスホニウム等が挙げられる。
【0054】
具体的には、前記イミダゾリウムとして、例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMIm)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム(BMIm)等のジアルキルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−アリル−3−メチルイミダゾリウム、1−アリル−3−エチルイミダゾリウム(AEIm)、1−アリル−3−ブチルイミダゾリウム、1,3−ジアリルイミダゾリウム(AAIm)等が挙げられる。
【0055】
前記ピリジニウムとしては、例えば、1−プロピルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム等のアルキルピリジニウム、1−エチル−3−(ヒドロキシメチル)ピリジニウム、1−エチル−3−メチルピリジニウム等が挙げられる。
【0056】
前記アンモニウムとしては、例えば、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム(TMPA)、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム(DEME)、メチルトリオクチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウム等が挙げられる。
【0057】
前記ピロリジニウムとしては、例えば、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム(P13)、N−メチル−N−ブチルピロリジニウム(P14)、N−メチル−N−メトキシメチルピロリジニウム等が挙げられる。
【0058】
前記ピラゾリウムとしては、例えば、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウム、1−プロピル−2,3,5−トリメチルピラゾリウム、1−ブチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウム等が挙げられる。
【0059】
前記ピペリジニウムとしては、例えば、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム(PP13)、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム等が挙げられる。
【0060】
前記モルホリニウムとしては、例えば、N,N−ジメチルモルホリニウム、N−エチル−N−メチルモルホリニウム、N,N−ジエチルモルホリニウムなどが挙げられる。
【0061】
前記スルホニウムとしては、例えば、トリメチルスルホニウム、トリブチルスルホニウム、トリエチルスルホニウムが挙げられる。
【0062】
前記ホスホニウムとしては、例えば、トリブチルヘキサデシルホスホニウム、トリブチルメチルホスホニウム、トリブチル−n−オクチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラ−n−オクチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、トリブチル(2メトキシエチル)ホスホニウム等が挙げられる。
【0063】
上記カチオンと組み合わされてイオン液体を構成するアニオンとしては、副生成物を抑制する観点から、例えば、ハロゲンイオン、アミドイオン、イミドイオン、フッ化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、フルオロ硫酸イオン、乳酸イオン、カルボン酸イオン等が挙げられる。
【0064】
具体的には、前記ハロゲンイオンとしては、例えば、Cl
−、Br
−、I
−等が挙げられる。ハロゲンイオンとして、ハロゲンのオキソ酸イオン(YO
4−、YO
3−、YO
2−、又はYO
−;YはCl、Br、又はIを表す)、AlX
4−(XはCl、BrまたはIであり、それぞれのXは同一または異なる。すなわち、AlX
4−は、例えば、AlCl
4−、AlBr
4−、AlI
4−、AlClBr
3−、AlClI
3−、AlCl
2BrI
−、AlClBr
2I
−、AlClBrI
2−等である。)等のハロゲンを含む化合物も含まれる。
【0065】
前記アミドイオンとしては、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドイオン(N(SO
2CF
3)
2−)、ビス(フルオロスルホニル)アミドイオン等が挙げられる。
【0066】
前記イミドイオンとしては、例えば、ビストリフルオロメチルスルフォニルイミドイオン(TFSI
−)、(CF
3SO
2)
2N
−、(C
2F
5SO
2)
2N
−、(C
3F
7SO
2)
2N
−、(CF
3SO
2)(C
2F
5SO
2)N
−、(CF
3SO
2)(C
3F
7SO
2)N
−、(C
2F
5SO
2)(C
3F
7SO
2)N
−、N(C
4F
9SO
2)
2−等が挙げられる。
【0067】
前記フッ化物イオンとしては、例えば、テトラフルオロホウ酸イオン(BF
4−)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF
6−)、SbF
6−等が挙げられる。
【0068】
前記硫酸イオンとしては、例えば、HSO
4−、メト硫酸イオン(CH
3OSO
3‐)、CH
3SO
3−、C
4H
9OSO
3−、CH
3C
6H
4SO
3−、C
8H
16SO
3−、C
2H
5OSO
3−、C
6H
13OSO
3−、C
8H
17OSO
3−、C
4F
9SO
3−等が挙げられる。
【0069】
前記リン酸イオンとしては、例えば、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF
6−)、C2F
5)
3PF
3−等のフルオロリン酸イオン、次亜リン酸イオン(H
2PO
2−)、(C
2F
5)
3PF
3−、(CH
3)
2PO
4−、(C
2H
5)
2PO
4−、(CH
5)
2PO
4−等が挙げられる。
【0070】
前記フルオロ硫酸イオンとしては、例えば、(CF
3SO
2)
2N
−、CF
3SO
3−等等挙げられる。
【0071】
前記乳酸イオンとしては、例えば、C
2O
3H
−等が挙げられる。
【0072】
前記カルボン酸イオンとしては、例えば、酢酸イオン(CH
3COO
−)、CH
3OCO
2−、C
9H
19CO
2−等が挙げられる。
【0073】
その他にも、チオシアン酸イオン(SCN
−)、硝酸イオン(NO
3−)、炭酸水素イオン(HCO
3−)、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ジシアナミドイオン、B(C
6H
5)
4−、テトラフェニルホウ酸イオン(BPh
4−)、B(C
2O
4)
2−、(CN)
2N
−、C
4BO
8−等が挙げられる。
【0074】
イオン液体は、前記のようなカチオンとアニオンを自由に組み合わせて形成することができる。カチオンとアニオンは、それぞれ、1種のみを単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせても良い。上記カチオンと組み合わされてイオン液体を構成するアニオンとしては、正極反応の可逆性や蓄電性能の観点から、Cl
−、Br
−およびI
−が好ましい。イオン液体の具体例としては、ジアルキルイミダゾリウムハロゲン化物、エチルトリブチルホスホニウムハロゲン化物、テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物等が好ましく、ジアルキルイミダゾリウムハロゲン化物としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド([EMIM]・Cl),1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド([EMIM]・Br),1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド([EMIM]・I),1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド([BMIM]・Cl),1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド([BMIM]・Br),1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド([BMIM]・I)等の1,3−ジアルキルイミダゾリウムハロゲン化物を好適に用いることができる。
【0075】
また、エチルトリブチルホスホニウムハロゲン化物としては、エチルトリブチルホスホニウムクロリド([EBP]・Cl),エチルトリブチルホスホニウムブロミド([EBP]・Br),エチルトリブチルホスホニウムヨージド([EBP]・I)、などを好適に用いることができる。
【0076】
テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物としては、テトラエチルアンモニウムブロミド([E
4N]・Br),トリメチルエチルアンモニウムクロリド([M
3EN]・Cl),テトラブチルアンモニウムクロリド([Bu
4N]・Cl)などを好適に用いることができる。
【0077】
本発明における電解質は、前記イオン液体及び後述する非水溶媒の他に、通常、金属塩を有することができる。このような金属塩としては、負極及び空気極の間を伝導する金属イオンを含有するものであれば、特に制限されることなく用いることができる。例えば、アルミニウム塩等を挙げることができ、アルミニウム塩としては、AlCl
3、臭化アルミニウム等のアルミニウムハロゲン化物等の無機アルミニウム塩や、有機アルミニウム塩を挙げることができる。金属塩を含有させる場合、電解質中に、40〜80重量%が好ましく、50〜70重量%がより好ましい。
【0078】
実用性の高い金属空気電池を提供する観点から、イオン液体と金属塩との組み合わせは、ジアルキルイミダゾリウムハロゲン化物とアルミニウムハロゲン化物との組み合わせが好ましく、例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイドとAlBr
3とを組み合わせたり、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリドとAlCl
3とを組み合わせたりできる。
【0079】
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド([EMIM]・Cl)とAlCl
3とを用いた場合の反応を例として以下に記載する。以下の反応により、イオン対を形成したイオン液体が形成される。
(1)[EMIM]
+Cl
−+AlCl
3=[EMIM]
+[AlCl
4]
−
(2)[EMIM]
+[AlCl
4]
−+AlCl
3=[EMIM]
+[Al
2Cl
7]
−
(3)[EMIM]
+ [Al
2Cl
7]
− +AlCl
3=[Al
3Cl
10]
−
[AlCl
3]と「EMIM」のmol比により、2種類の析出形態が考えられる。一つ目は[AlCl
3]が50mol%以下の場合、Cl
−及び[AlCl
4]
−のように存在していると考えられる。二つ目は[AlCl
3]が50mol%より多い場合(過剰な場合)、[AlCl
4]
− 及び[Al
2Cl
7]
−のように存在していると考えられる。このように、アルミニウム塩とジアルキルイミダゾリウム塩などの有機化合物を混合すると、それらはイオン対を形成し、融体(イオン液体)が得られる。放電時に負極から発生した金属イオン(例えば、負極がアルミニウムの場合、アルミニウムイオン)が、水酸化物イオンよりもイオン液体との方が安定であるため、副生成物の発生が抑制できると考えられる。また、[Al
2Cl
7]
−[Al
3Cl
10]
−のように多量体の陰イオンが存在していると、アルミニウムイオンがAlに還元されやすいと考えられるため、副生成物の発生を抑制できるし、負極としてアルミニウムを用いている場合には、負極としての利用価値もある。
【0080】
本発明における電解質は、粘度調整の観点から、非水電解液を含むことができる。非水電解液としては、特に制限されないものの、エステル類、炭酸エステル類、エーテル類、ニトリル類、および前記の各化合物(エステル類、炭酸エステル類、エーテル類、ニトリル類)に置換基を導入した化合物よりなる群から選ばれる1種以上を含有することが望ましい。好ましいのは、エステル類、炭酸エステル類より選ばれるものである。エステル類の中では、環状構造のエステル類が好ましく、特に5員環のγブチロラクトン(γBL)が好ましい。
【0081】
炭酸エステル類は環状、鎖状構造いずれも用いることができる。環状炭酸エステル類は、5員環構造の炭酸エステル類が好ましく、特にエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニレンカーボネート(VC)、ブチレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等が好ましい。粘度調整の観点から、イオン液体とともに用いることも可能である。鎖状炭酸エステル類は、炭素数7以下の炭酸エステル類が好ましく、特にジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)が好ましい。
【0082】
エーテル類は環状、鎖状構造のいずれも用いることができる。環状エーテル類としては、5員環、および6員環構造のエーテル類が好ましく、中でも二重結合を含まないものが好ましい。鎖状エーテル類としては、炭素原子を5つ以上含むものが好ましい。例えば、テトラヒドロピラン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ブチルエーテル、イソペンチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、メチルアセテート、2−メチルテトラヒドロフラン1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、3−メチルオキサゾリジノン、ギ酸メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。
【0083】
ニトリル類は、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル等を挙げることができる。
【0084】
非水電解液は単独で用いてもよいが、複数種を混合して用いた方が好ましい。特に炭酸エステル類を含むことが好ましく、中でも5員環構造の炭酸エステル類を含むことが好ましく、特にECあるいはPCを含むことが好ましい。
【0085】
非水電解液の好ましい組成は、EC/PC、EC/γBL、EC/EMC、EC/PC/EMC、EC/EMC/DEC、EC/PC/γBLである。
【0086】
本発明における電解質に以下のようなポリマーを添加してゲル化することができる。このようなゲル電解質としては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリルニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリマーが挙げられる。
【0087】
本発明における電解質は、さらに、セパレータを備えていてもよい。セパレータは、空気極と負極の絶縁性を確保するために配置することができる。セパレータに電解質を含浸させることで、空気極と負極との絶縁性及び金属イオン伝導性を確保することができる。セパレータとしては、特に限定されないが、たとえば、ポリプロピレン製不織布、ポリフェニレンスルフィド製不織布等の高分子不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等の微多孔フィルム、これらの織布またはこれらの組み合わせを用いることができる。また、セパレータとして、液体フィルター等の各種フィルター用シート、タオル、ガーゼ、ティッシュ等の各種医療・衛材用シート等を用いることもできる。何枚かを積層させることもできる。
【0088】
セパレータの厚さは、絶縁性確保と電池を薄型化する観点から、0.01mm〜5mmが好ましく、0.05mm〜1mmがより好ましい。
【0089】
<金属空気電池>
本発明の金属空気電池は、通常、空気極、負極、電解質を収納する電池ケースを有することができる。電池ケースの形状は、特に限定されないが、具体的には、コイン型、平板型、円筒型、ラミネート型等の1次電池及び2次電池に適用される所望の形状をとることができる。電池ケースは、大気開放型であっても、密閉型であってもよい。大気開放型の電池ケースは、少なくとも空気極が十分に大気と接触可能な構造を有する。一方、密閉型の電池ケースは、正極活物質である酸素(空気)の導入管および排気管を設けることができる。この場合、電池ケースに導入する気体は、酸素濃度が高いことが好ましく、純酸素であることがより好ましい。また、電池ケースに、電解液等の補充を行うための注入孔等の構造を設けてもよい。
【0090】
本発明の金属空気電池の製造方法について説明する。本発明の金属空気電池の製造方法は、特に限定されるものではなく、周知の方法を用いることができる。たとえば、コインセル型の金属空気電池を製造する場合は、不活性ガス雰囲気下において、まず、負極を電池ケースに配置し、次に、その負極上にセパレータを配置し、次に、そのセパレータ上から、電解液を注液し、次に、触媒層および正極集電体を有する空気極を、触媒層をセパレータ側に向けて配置し、次に、空気極側電池ケースに配置し、これらを最後にかしめる方法等を挙げることができるが、これに限定されない。
【0091】
本発明の金属空気電池は、1次電池用又は2次電池用として用いることができる。本発明の金属空気電池は、通常の1次電池や2次電池が使用できる機器への適用が可能である。たとえば、携帯電話、モバイル機器、ロボット、パーソナルコンピュータ、車載機器、各種家庭電気製品、定置型電源等が挙げられる。そのほか、パソコンや携帯端末等のメモリのバックアップ電源、パソコン等の瞬時停電対策用電源等の用途はもちろんのこと、電気自動車またはハイブリッド自動車、太陽電池と併用したソーラー発電エネルギー貯蔵システム等の用途まで種々の産業分野において様々な用途に好適に用いることができる。
【0092】
本発明の金属空気電池は、アルミニウム空気電池に分類され、理論容量は8100Wh/kgとされている。
【実施例】
【0093】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0094】
(1)充放電特性
下記のようにして得た各金属空気電池の充放電特性を下記の条件で行った。なお、充放電は放電スタートとし、25℃の環境下で充放電を行った。充放電サイクル中、毎回、電解液の補充を行った。1、5および25サイクル後に測定した電池の容量と電圧を、
図8(a)に示した。
・放電条件:0.5mA/cm
2の定電流で電池電圧0.2Vになるまで放電を行った。
・充電条件:0.5mA/cm
2の定電流で電池電圧1.0Vになるまで充電を行った。
【0095】
また、同様にして下記の条件で電圧−時間特性を測定した。その結果を
図8(b)に示した。
・放電条件:2.0mA/cm
2の定電流で電池電圧0.2Vになるまで放電を行った。
・充電条件:2.0mA/cm
2の定電流で電池電圧1.5Vになるまで充電を行った。
【0096】
(2)サイクリックボルタモグラム
下記のようにして得た各金属空気電池について、下記条件にて電気化学測定を実施した。その際、測定される電極面積は、両極ともに1cm
2であった。
【0097】
測定方法はサイクリックボルタンメトリー(0〜2.0V)を採用した。測定は二極式で行った(アルミニウム負極と空気極)。測定装置としては、ガルバノスタット(SP−150、BioLogic社製(フランス))を用いた。測定は、温度25℃(測定開始前に恒温槽にて3時間静置)、酸素置換30minの雰囲気条件、スキャン速度10mV/sで行った。1、5および25サイクル後のサイクリックボルタモグラムを、
図2〜
図7に示した。
【0098】
(3)X線回折測定(XRD)
電極表面について、X線回折装置(株式会社リガクRAD−RU、CuのKアルファ線、40kV、200mA)を用いて、走査間隔は0.03°、走査速度は5.0°/minで10〜90°の範囲で測定した。測定結果を
図9〜
図10に示す。なお、
図9は、電気化学反応後の負極のX線回折パターンを示し、
図10は、電気化学反応後の空気極のX線回折パターンを示す。
【0099】
(4)X線光電子分光法(XPS)
電極表面について、XPS測定装置(PHI5000 VersaProbe II spectrometer、Ulvac−Phi Inc.MN,USA)を用いて測定した。測定結果を
図11に示す。なお、
図9は、電気化学反応後の負極のX線回折パターンを示し、
図10は、電気化学反応後の空気極のX線回折パターンを示す。
【0100】
(5)電界放出走査型電子顕微鏡(FE−SEM)による観察
負極と空気極について、電界放出走査型電子顕微鏡(JSM−7610F,JEOL社製)を用いて、加速電圧15kVで観察を行なった。また、その際に、同じ装置を用いてエネルギー分散型X線分析(EDX)マッピング分析を行なった。それらの結果を
図12に示す。
【0101】
<実施例1−1>
(負極)
厚さ1mmの市販の金属アルミニウム(Al A1050、純度99.5%)を、φ10mmに切り出して負極を製造した。
【0102】
(空気極)
空気極触媒材料としてTiN(Sigma Aldrich Co.)/ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(Sigma Aldrich Co.)/N−メチルピロリドン溶液を重量比1:1:2で秤量し、十分に混合した後、集電体となるニッケルメッシュ(200μm)上に厚さ100μmとなるように塗布し、120℃、1hrで乾燥し、ニッケルメッシュ上に触媒層を形成した。その後、φ10mmに加工し、空気極とした。
【0103】
(電解質)
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリドとAlCl
3との混合物(モル比1:2)を電解質として用いた。電解質は、セパレータ(φ10mm、厚さ100μm、材料:ガーゼ)に染み込ませて、用いた。
【0104】
(金属空気電池の製造)
まず、上記で製造した負極を、内径10mm、長さ30mmのフッ素樹脂金型の片側にはめ込んだ。次に、負極の上から、上記で製造した電解質が染み込んだガーゼを配置した。次に、気泡が入らないように、触媒層側をガーゼと接触するように、上記で製造した空気極を配置して、金属空気電池を製造した。
【0105】
<実施例1−2>
実施例1−1において、空気極を調製する際に、TiN(Sigma Aldrich Co.)/導電性カーボン(アセチレンブラック、デンカ株式会社製)/ポリフッ化ビニリデン(PVDF)/N−メチルピロリドン溶液を重量比9:1:10:20で秤量して空気極を作成したこと以外は、実施例1−1と同じ条件で金属空気電池を製造した。
【0106】
<実施例2−1>
実施例1−1において、空気極を調製する際に、TiNの代わりにTiC(Sigma Aldrich Co.)を用いて空気極を作成したこと以外は、実施例1−1と同じ条件で金属空気電池を製造した。
【0107】
<実施例2−2>
実施例1−2において、空気極を調製する際に、TiNの代わりにTiC(Sigma Aldrich Co.)を用いて空気極を作成したこと以外は、実施例1−2と同じ条件で金属空気電池を製造した。
【0108】
<実施例3−1>
実施例1−1において、空気極を調製する際に、TiNの代わりにTiB
2(Sigma Aldrich Co.)を用いて空気極を作成したこと以外は、実施例1−1と同じ条件で金属空気電池を製造した。
【0109】
<実施例3−2>
実施例1−2において、空気極を調製する際に、TiNの代わりにTiB
2(Sigma Aldrich Co.)を用いて空気極を作成したこと以外は、実施例1−2と同じ条件で金属空気電池を製造した。
【0110】
<実施例4−1>
実施例1−1において、空気極を調製する際に、TiNの代わりに酸窒化ジルコニウム(ZrON)を用いて空気極を作成したこと以外は、実施例1−1と同じ条件で金属空気電池を製造した。これを用いて、前述の充放電特性の測定を行なったところ、
図8(a)と同様の充放電特性を示した。
【0111】
<比較例1>
実施例1−1において、空気極を調製する際に、TiNの代わりに活性炭(AC,キャタラー社製)としたこと以外は、実施例1−1と同じ条件で金属空気電池を製造した。
【0112】
以上の結果を
図2〜
図13に示す。
【0113】
(結果及び考察)
空気極触媒材料としてTiNを用いた場合(
図2、実施例1−1)、進呈したサイクリックボルタモグラムを25サイクルまで示したが、明確な負極又は正極の反応ピークは観察されなかった。一方、空気極触媒材料としてTiCを用いた場合(
図4、実施例2−1)、約1.5Vと約1.0Vに弱い負極及び正極の反応ピークが観察され、これらは、各々負極におけるアルミニウムの溶解と析出に対応するものである。負極−正極の電気化学反応は、繰り返しサイクリックボルタモグラム試験の結果から、25サイクル後においてさえ、この系が安定であることを示し、TiNとTiCが空気極触媒材料として安定であることを裏付けた。更に、空気極触媒材料としてTiB
2を用いた場合(
図6、実施例3−1)、電気化学反応はより弱くなり、ピークは分かりにくくなる。
【0114】
一般的に、導電性カーボンを空気極に添加すると、電流を増加させるが、それにもかかわらず、TiN−CとTiC−Cの両者において、負極と正極の電気化学反応が弱められている(
図3(実施例1−2)、
図5(実施例2−2)、
図7(実施例3−2))。電解質として塩化アルミネートのイオン液体を用いたアルミニウム金属電池は、水中でのブロンステッド酸に匹敵するルイス酸塩基の化学作用を示した。
【0115】
プロトン濃度が水溶液中の化学および電気化学を制御するという事実と同様に、クロロ酸はイオン液体中の種生成、反応性および電気化学の主要な決定要因である。溶融塩またはイオン液体において、Alイオンは50%未満のAlCl
3濃度でAlCl
4−として存在することが知られており、50%を超えるAlCl
3濃度ではAlCl
4−に加えてAl
2Cl
7−も形成され、観察されている。これは、Alの電気析出がAl
2Cl
7−からのみ起こり得るため、重要な要因である。
4Al
2Cl
7−+3e
−=Al+7AlCl
4− (1)
金属空気電池の場合、放電中に水性電解液に次の反応が起こる。
負極:M→ M
x++Xe
- (2)(M:金属)
空気極:O
2+2H
2O+4e
- → 4OH
- (3)
充電中に次の反応が起こる。
負極:M
++xe
- → M (4)
空気極:4OH
- →O
2+2H
2O 4e
- (5)
上記金属還元反応は、KOH水性電解質を有する亜鉛空気電池の場合に可能である。しかしながら、一般にアルミニウム空気電池の場合、Al
3+のAlへの還元は水性電解質中では不可能である。したがって、Alの析出を可能にする能力のため、アルミニウム空気電池における電解質として使用されるのに適したイオン性液体が強く望まれる。
【0116】
適当なイオン性液体を電解質として有するAl空気電池の場合を考えると、放電時には以下の反応が起こる。
負極:Al→ Al
3++3e
- (6)
空気極:4Al
3++3O
2+8e
- → 2Al
2O
3 (7)
その後、充電すると次の反応が起こる。
負極:Al
3+ +3e
- →Al (8)
空気陰極:2Al
2O
3 → 4Al
3++3O
2+8e
- (9)
電解液として1−エチル3−メチルイミダゾリウムクロライドとAlCl
3の混合物を使用したので、本発明では上記のAl反応(式(6)および(8))が可能であり、この点については以下で詳細に議論する。
【0117】
図8は、空気極としてTiCを用いた電池の電気化学的特性を示す。充放電電気化学反応では、安定した電気化学反応を示すため、空気極材料としてTiCを用いた。
図8(a)は、±0.5mAcm
−2の印加電流での充放電曲線を示している。1サイクル目、5サイクル目、50サイクル目のTiC電池の容量は、それぞれ444,432,424mAhg
−1であった。50回の充放電反応の後、セル容量の約95%が保持された。
図8(b)は、各時間ごとに±2.0mA/cm
2の充放電レートを90分間印加することによる電圧対時間プロットを示す。このプロットから、電池は明らかに安定しており、長期間の使用可能性は約1週間である。
図8(a)および(b)に示す結果から、この電池の電池容量および電池耐久性は、大気雰囲気下での繰り返しの電気化学反応の後に非常に安定である。この重要な要因は、電池の実用性を考慮すると有益であると期待される。CV実験において安定した電気化学反応が観察されたので、この結果は、電池容量もまた安定であることを示唆している。
【0118】
図9は、イオン性液体(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド/AlCl
3混合物のモル比1:2)を使用した際の充放電の電気化学反応後のアルミニウム負極のXRDパターンを示しており、TiN、TiC、およびTiB
2空気陰極を使用した場合である。典型的にはアルミニウム空気電池の主な副生成物であり、長期間の電池操作を抑制する原因となる水酸化アルミニウムおよび酸化アルミニウムは、この図から、観察されなかった。同様に、電解質としてのイオン性液体を他のタイプの空気陰極材料と組み合わせて使用することによる従来の研究では、副産物は観察されていない。
【0119】
図10(a)は、電気化学反応後の異なる空気陰極のXRDパターンを示す。空気陰極として活性炭、TiB
2、およびTiB
2−Cを使用すると、それぞれの場合にAl(OH)
3副生成物が観察された。活性炭の場合、Al
2O
3も検出された。密接に観察すると、少量のAl(OH)
3がTiNおよびTiC系の空気陰極で観察された(
図10(b))。特に、TiNおよびTiC系のアルミニウム空気電池サンプルは、1週間以上の電気化学反応の後に採取された。このように、副産物の生成は完全には解消されなかったが、我々の知る限りでは、アルミニウム空気電池の空気極における副生成物の蓄積を抑制する最初の報告であり、これらの電池の実用性を考慮すると有益である。
【0120】
イオン液体では、上記の反応(7)および(9)が起こり、これがAl
2O
3の生成をもたらす。従って、本電池システムの空気極では、副生成物の蓄積が抑制されているので、以下の反応が起こり得る。
O
2+2e
-+EMI−Cl → [EMI−O
2*−]+Cl
- (10)
1−エチル3−メチルイミダゾリウムクロライドは親水性のイオン液体であるため、湿度(水)の影響も考慮する必要がある。したがって、周囲雰囲気からの湿気を吸収し、その結果、電解液中に水が存在する。水性電解質の場合、酸素還元反応は、2つの主要な可能性のある経路、すなわち過酸化物(H
2O
2)を生成するための2eの移動を伴うものと、過酸化水素の直接的な4e移転による水の生産を伴う。これらの2つの経路は、式(11)および(12)で示される。
直接4e
−経路:O
2+4H
+ +
4e
- → 2H
2O (11)
2e
−経路:O
2+2H
+ +
2e
- → 2H
2O
2 (12)
2H
2O
2+2H
+ +2e
- → 2H
2O (13)
金属窒化物および金属炭化物の両方が、直接的な4e経路を含む酸素還元および酸素発生の反応のための優れた電極触媒として報告されている。したがって、反応(10)および(11)は、本電池システムにおいても起こり得る。
【0121】
図11は、電気化学反応後のACおよびTiCの空気極のXPSスペクトルを示す。一般に、Alの2pピークは約73eVで観測される。ACまたはTiCからなる空気陰極は、74eVよりわずかに高いピークを示し、Alが酸化アルミニウムまたは塩化アルミニウムとして存在することを示している(
図11(a))。これらの2つの空気正極材料間の副産物蓄積の差を決定することは困難である。
図11(b)は、両方の空気陰極についての炭素の1s軌道のXPSスペクトルを示す。これらの2つの陰極の間に285eVのピーク付近で明白な違いは観察されなかった。しかし、AC空気陰極では約290eVに金属炭酸塩の形で存在する炭素原子に相当する追加のピークが観察された。この結果から、AC陰極での副生成物の蓄積は、おそらく炭酸アルミニウムから生じる。TiC空気陰極については、この化学反応は何らかの形で抑制された。しかし、合理的な結論に達するためには、副生成物蓄積の推論に関するこの推測をさらに検討する必要がある。
【0122】
ACおよびTiC空気極材料の形態を調べた。
図12は、電気化学反応前後のACおよびTiC空気極のFE−SEM画像を示す。電気化学反応後の空気極サンプルについては、電解質に面する側の画像が記録された。
図12(a)および(d)は、それぞれ電気化学反応前のACおよびTiC空気極のFE−SEM画像を示す。
図12(b)は電気化学反応後のAC空気陰極の表面を示し、
図12(c)は
図12(b)に存在するAl原子のEDXマッピング像を示す。同様に、
図12(e)は電気化学反応後のTiC空気極の表面を示し、
図12(f)は
図12(e)に存在するAl原子のEDXマッピング像を示す。Al(OH)
3やAl
2O
3のような副産物は大気中の空気極上に大きな結晶の形で蓄積しないことを示しており、基本的にはアルミニウム原子は全面に均一に分布している。AC空気陰極の場合、Al(OH)
3またはAl
2O
3相がXRDによって検出された(
図10(a))。
【0123】
表1は、EDX分析で観察されたサンプルの空気極材料の原子百分率をまとめたものである。(a)は電気化学反応前のAC空気極を、(b)電気化学反応後のAC空気極を示す。(d)は電気化学反応前のTiC空気極を、(e)は電気化学反応後のTiC空気極を示す。
【0124】
【表1】
【0125】
表1では、全体としてSEM観察の目的で試料表面に導電性炭素被膜が施されているため、炭素原子の割合は大きかった。フッ化物原子は空気陰極の製造に使用される成分材料であるPVDFに相当する。しかしながら、電気化学的反応後のAC空気陰極と比較して、アルミニウムと塩化物の両方の割合がTiC空気陰極についてより小さくなっており、アルミニウムおよび塩化物原子の存在がTiC空気陰極上で確認されても、これらの原子は、炭化チタンのような非酸化物セラミック材料よりも、活性炭のような炭素質材料に一層蓄積する傾向がある。さらに、クロライド/アルミニウムの原子百分比は、TiNがACよりも大きく、塩化物/アルミニウムの比率が不均一であるため、Al
2O
3またはAl(OH)
3などの副生成物が少ない理由となり得る。
【0126】
図13(a)は、電気化学反応が起こる前の空気極としてのTiNを有する完全なアルミニウム空気電池のナイキストプロットを示す。
図13(b)は、このプロセスをシミュレートするための等価回路を示す。表2には、同等の要素についてEC Labソフトウェアによって得られたシミュレーション値をまとめた。
【0127】
【表2】
【0128】
一般に、R1は電解液の抵抗(Rs、溶液の抵抗)とみなされ、R2は電極−電解質界面における電荷キャリアの移動抵抗(Rc、電荷移動の抵抗)である。R3はイオン拡散抵抗とみなされる。空気極電極に導電性カーボンを添加した場合、電池の導電性が向上して抵抗が低下した。全体として、R1、R2、R3と比較して、より高いことが分かり、これらの抵抗値の増加の程度は、電気化学反応の進行とともにより迅速であった。Al(OH)
3やAl
2O
3のような副生成物の量が少ないにもかかわらず、これらの副生成物が電池の高抵抗と抵抗増加に寄与することが示唆される。TiB
2については、TiN系およびTiC系の電池と比較して抵抗および抵抗の増加が大きく、Al(OH)
3が副産物として検出されると、抵抗およびその増加が、TiN系やTiC系の電池と比較して、より支配的であることが示された。