(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱分解対流部の前記出口と流体連通する入口、前記熱分解部と流体連通する蒸気留分の出口、および、液体留分の出口、を有する気液分離部をさらに備えた請求項1に記載の統合システム。
前記水素化処理ゾーンの前記反応装置と流体連通する高圧分離器であって、前記水素化処理ゾーンの前記反応装置と流体連通するガス部分の出口と、液体部分の出口とを有する高圧分離器、および
前記高圧分離器の前記液体部分の出口と流体連通する低圧分離器であって、ガス部分の出口と、前記熱分解対流部の前記入口と流体連通する液体部分の出口とを有する低圧分離器、をさらに備えた請求項1に記載の統合システム。
【背景技術】
【0003】
低級オレフィン(すなわち、エチレン、プロピレン、ブチレン及びブタジエン)および芳香族化合物(すなわち、ベンゼン、トルエンおよびキシレン)は、石油化学製品および化学工業において広く使用される基本的な中間体である。熱分解、または蒸気熱分解は、典型的な例では、蒸気の存在下で、かつ、酸素非存在下におけるこれらの物質の形成のための主要なタイプのプロセスである。蒸気熱分解用の供給原料には、石油ガス、およびナフサ、ケロシンおよびガス油などの留出物を含むことができる。通常、これらの供給原料の入手可能性は、限られており、原油製油所において高価で、エネルギー大量消費型プロセスステップが必要となる。
【0004】
蒸気熱分解反応装置用の供給原料として重質炭化水素を使って調査を行った。従来の主要な重質炭化水素熱分解操作の主な欠点は、コークス形成である。例えば、重質液体炭化水素の水蒸気分解プロセスは、米国特許第4,217,204号で開示されている。この特許では、コークス形成を最小限にするために、溶融塩のミストが水蒸気分解反応ゾーン中に導入される。一例では、3.1重量%のコンラドソン残留炭素分を有するアラビア軽質原油を使って、溶融塩の存在下で、624時間にわたり熱分解装置の操作を継続できた。溶融塩の添加のない比較例では、水蒸気分解反応装置は、反応装置中でのコークス形成が原因で管が詰まり、たった5時間後には運転不能となった。
【0005】
さらに、蒸気熱分解反応装置用の供給原料として重質炭化水素を使ったオレフィンおよび芳香族化合物の収量と分布は、軽質炭化水素供給原料を使った場合とは異なる。重質炭化水素は、より高い鉱山局相関インデックス(BMCI)により示されるように、軽質炭化水素より芳香族化合物含量が多い。BMCIは、供給原料の芳香族性の測定値であり、以下のように計算される。
BMCI=87552/VAPB+473.5*(sp.gr.)−456.8(1)
式中、
VAPB=容積平均沸点(ランキン目盛)、
sp.gr.=供給原料の比重。
【0006】
BMCIが小さくなると、エチレンの収量は、増加することが期待される。従って、蒸気熱分解でより高い収量で目的のオレフィンを得る一方で、反応装置のコイル部中でのより多くの望ましくない生成物およびコークスの形成を避けるために、通常、高パラフィン系または低芳香族系の原料の供給が好ましい。
【0007】
蒸気分解装置中での絶対コークス形成速度が、Cai et al.、「Coke Formationin Steam Crackers for Ethylene Production」、Chem.Eng.&Proc.、vol.41、 (2002)、 199−214、で報告されている。一般的には、絶対コークス形成速度は、昇順で、オレフィン>芳香族化合物>パラフィン類の順である(オレフィンは、重質オレフィンを表す)。
【0008】
これらの石油化学製品に対する増大する需要に対応できるようにするために、粗原油(raw crude oil)などの他のタイプの大量に入手可能な供給原料が、生産者にとって魅力的になっている。原油供給原料の使用は、精油所がこれらの石油化学製品生産のボトルネックになる可能性を最小化するか、または除くことができるであろう。
【0009】
蒸気熱分解プロセスは、よく発達し、その意図された目的に対しては適切であるが、供給原料の選択は、極めて限定されてきた。
【発明を実施するための形態】
【0015】
残留物バイパスを含む水素化処理および蒸気熱分解統合プロセスならびにシステムを含むプロセスフロー図を
図1に示す。通常、統合システムは、供給原料分離ゾーン20、選択的接触水素化処理ゾーン、蒸気熱分解ゾーン30および生成物分離ゾーンを含む。
【0016】
供給原料分離ゾーン20は、供給原料流1を受け入れるための入口、受け入れられなかった部分22の排出用出口、および残りの炭化水素部分2の排出用出口を含む。分離ゾーン20のカットポイントは、残留燃料油と適合するように、例えば、約540℃に設定できる。分離ゾーン20は、フラッシュ分離器などの単段分離装置であってもよい。
【0017】
さらなる実施形態では、分離ゾーン20は、サイクロン型相分離装置、または蒸気および液体の物理的または機械的分離に基づく他の分離装置を含むか、またはこれらから実質的に構成されてもよい(すなわち、フラッシュゾーンがない場合に動作する)。気液分離装置の一例が、
図2A〜2Cにより図示され、また、これらに基づき説明される。また、気液分離装置の類似の配置が米国特許公開第2011/0247500号に記載されている。この特許は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。分離ゾーンが蒸気と液体の物理的または機械的分離に基づく分離装置を含むか、または実質的にこれらから構成される実施形態では、カットポイントは、装置に入る物質の気化温度および流体速度に基づいて調節できる。
【0018】
選択的水素化処理ゾーンは、炭化水素部分21ならびに蒸気熱分解生成物流から再利用される水素2、および必要に応じ補充用水素の混合物3を受け取る入口を備えた水素化反応ゾーン4を含む。水素化反応ゾーン4は、水素化処理流出物5を排出する出口をさらに含む。
【0019】
水素化反応装置からの反応装置流出物5は、熱交換器(図示せず)中で冷却され、高圧分離器6に送られる。分離器の塔頂流7は、アミンユニット12中で浄化され、生じた水素リッチガス流13は、リサイクルコンプレッサー14に送られ、リサイクルガス15として水素化反応装置で使用される。高圧分離器6からの実質的に液相である塔底流8は、冷却されて低圧冷間分離器9に導入され、ここでガス流と液体流10に分けられる。低圧冷間分離器からのガスは、水素、H
2S、NH
3およびC
1〜C
4炭化水素などのいずれかの軽質炭化水素を含む。典型的な例では、これらのガスは、フレア処理または燃料ガス処理などのさらなる処理のために送られる。特定の本明細書の実施形態では、水素は、水素、H
2S、NH
3およびC
1〜C
4炭化水素などのいずれかの軽質炭化水素を含むガス流11を、蒸気分解装置生成物44と組み合わせることにより回収される。液体流10の全体または一部は、蒸気熱分解ゾーン30への供給原料の機能を果たす。
【0020】
通常、蒸気熱分解ゾーン30は、対流部32、および当技術分野で既知の蒸気熱分解単位操作、すなわち、蒸気の存在下で熱分解供給原料を対流部へ装填すること、に基づいて操作できる熱分解部34を含む。さらに、本明細書記載の特定の任意選択の実施形態では、(
図1の点線で示すように)、気液分離部36は、部分32と34との間に設けられる。対流部32からの加熱水蒸気分解供給原料が通過する気液分離部36は、蒸気と液体の物理的または機械的分離に基づく分離装置であってよい。
【0021】
一実施形態では、気液分離装置は、
図2A〜2Cにより図示され、また、これらに基づき説明される。また、気液分離装置の類似の配置が米国特許公開第2011/0247500号に記載されている。この特許は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。この装置では、蒸気と液体がサイクロン型配列中を通過し、それにより、装置は、等温的に、かつ、極めて短い滞留時間で動作する。一般に、蒸気は、円形パターンで旋回されて力を生じ、そこでは、より重い滴および液体が捕捉されて、例えば、熱分解燃料油ブレンドに付加されて燃料油38として液体出口まで向かわされ、蒸気は、蒸気出口を通って装填物37として熱分解部34へ向かわされる。気化温度および流体速度を変えて、大凡の温度カットオフポイントを、例えば、特定の実施形態では、残油燃料油ブレンドに適合する、例えば、約540℃に調節する。
【0022】
急冷ゾーン40は、蒸気熱分解ゾーン30の出口と流体連通している入口、急冷溶液42を受け入れるための入口、急冷混合生成物流44を排出する出口および急冷溶液46を排出する出口を含む。
【0023】
通常、中間体急冷混合生成物流44は、中間体生成物流65および水素62に変換され、これは、本プロセスで精製され、リサイクル水素2として水素化反応ゾーン4で使用される。通常、中間体生成物流65は、分離ゾーン70中で最終産物と残油に分留される。この分離ゾーンは、例えば、当業者には既知の、脱エタン塔、脱プロパン塔および脱ブタン塔を含む複数の分留塔などのひとつまたは複数の分離ユニットであってよい。例えば、適切な装置は、「エチレン」、ウルマン工業化学百科事典、12巻、531−581ページ、特に、
図24、
図25および
図26に記載されている。この文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
通常、生成物分離ゾーン70は、生成物流65流体と連通している入口、および複数の生成物出口73〜78を含む。これらの出口には、メタン排出用の出口78、エチレン排出用の出口77、プロピレン排出用の出口76、ブタジエン排出用の出口75、混合ブチレン排出用の出口74、および熱分解ガソリン排出用の出口73が含まれる。さらに、熱分解燃料油71排出用出口が備えられる。供給原料分離ゾーン20から排出された部分22および任意選択で、気液分離部36から排出された部分38は、熱分解燃料油71と組み合わされ、この混合流は、熱分解燃料油ブレンド72、例えば、低硫黄燃料油ブレンドとして取り出され、敷地外の精油所でさらに処理されるか、または任意選択の発電ゾーン120用の燃料として使用され得る。6つの生成物出口が示されているが、例えば、採用される分離ユニットの配置および収量や分布要件に応じて、さらに少ない、またはさらに多い出口を備えてもよいことに留意されたい。
【0025】
任意選択の発電ゾーン120を設けることができ、これは、 燃料油72を受け入れる入口、および残りの部分、例えば、規格外品質の水素不足供給原料を排出するための出口を含む。任意選択の燃料ガス脱硫ゾーン120は、発電ゾーン110からの残りの部分を受け入れる入口、および脱硫燃料ガスを排出するための出口を含む。
【0026】
図1に示す配置を採用したプロセスの実施形態では、原油供給原料1は、供給原料分離ゾーン20に導入され、排出部分22および残留炭化水素留分21を生成する。炭化水素留分21は、有効量の水素2および15(さらに必要に応じ補充用水素源)と混合されて混合流3が形成され、300℃〜450℃の範囲の温度で混合物3が選択的水素化反応ゾーン4の入口に装填される。特定の実施形態では、水素化反応ゾーン4は、同一所有者の米国特許公開第2011/0083996号ならびに国際公開第WO2010/009077号、同WO2010/009082号、同WO2010/009089号および同WO2009/073436号に記載されている1つまたは複数の単位操作を含む。これらの全ての特許は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。例えば、水素化処理ゾーンは、有効量の水素化脱金属触媒を含む1つまたは複数のベッド、および水素化脱芳香族化、水素化脱窒素、水素化脱硫および/または水素添加分解機能を有する有効量の水素化反応触媒を含む1つまたは複数のベッドを含むことができる。追加の実施形態では、水素化反応ゾーン200は、3つ以上の触媒ベッドを含む。さらなる実施形態では、水素化反応ゾーン4は、例えば、異なる機能の1つまたは複数の触媒ベッドをそれぞれ含む複数の反応容器を含む。
【0027】
水素化反応ゾーン4は、供給原油原料を水素化脱金属化、水素化脱芳香族化、水素化脱窒素化、水素化脱硫化、および/または水素化分解化するのに効果的なパラメータ下で動作する。特定の実施形態では、水素化処理は、以下の条件を使って行われる:300℃〜450℃の範囲の動作温度、30bar〜180barの範囲の動作圧力、および0.1h
−1〜10h
−1の範囲の液空間速度。特に、水素化処理ゾーンで供給原料として原油を使う場合、例えば、常圧残油に対して採用される同じ水素化処理単位操作に比べて、利点が立証される。例えば、370℃〜375℃の範囲の開始温度また動作温度で、失活速度は、凡そ1℃/月である。対照的に、残油が処理された場合は、失活速度は、約3℃/月〜4℃/月に近くなるであろう。常圧残油の処理には、典型的な例では、凡そ200barsの圧力を採用するが、一方、原油が処理される本プロセスでは、100barsの低い圧力で動作可能である。さらに、供給原料の水素含量の増加のために高レベルの飽和を実現するために、このプロセスは、常圧残油に比べて、高スループットで動作させることができる。常圧残油に対するLHSVは、通常0.25であるのに対し、このLHSVは0.5に達し得る。予想外の知見は、原油を処理する際、失活速度が通常観察される方向とは逆になることである。低スループット(0.25hr
−1)時の失活は、4.2℃/月であり、高スループット(0.5hr
−1)時の失活は、2.0℃/月である。産業界で考えられる全ての原料供給で、逆の現象が観察される。これは、触媒の洗浄効果に起因すると考えることができる。
【0028】
水素化処理ゾーン4からの反応装置流出物5は、交換器(図示せず)中で冷却され、高圧冷間または熱間分離器6に送られる。分離器の塔頂流7は、アミンユニット12中で洗浄され、得られた水素リッチガス流13は、リサイクルコンプレッサー14に通され、水素化反応ゾーン4でリサイクルガス15として使用される。高圧分離器6からの実質的に液相である分離器塔底流8は、冷却された後、低圧冷間分離器9に導入される。水素、H
2S、NH
3およびC
1〜C
4炭化水素を含みうるいずれかの軽質炭化水素などの残留ガス流11は、通常、低圧冷間分離器から放出でき、フレア処理または燃料ガス処理などのさらなる処理用に送られる。本プロセスの特定の実施形態では、水素は、流れ11(点線で示される)を、蒸気分解装置生成物からの熱分解ガスである流れ44と組み合わせることにより回収される。低圧分離器9からの塔底流10は、任意選択で、分離ゾーン20に送られるか、または直接に蒸気熱分解ゾーン30へ送られる。
【0029】
水素化処理流出物10は、低減含量の混入物(すなわち、金属、硫黄および窒素)、増加したパラフィン度、低下したBMCI、および増加した米国石油協会(API)比重度を有する。
【0030】
水素化処理流出物10は、例えば、蒸気入口を介して導入される効果的な量の蒸気の存在下で、対流部32の入口に送られる。対流部32では、混合物は、例えば、1つまたは複数の廃棄熱流または他の適切な加熱配置を使って所定の温度に加熱される。熱分解供給原料流および蒸気の加熱混合物は、熱分解部34に送られ、混合生成物流39を生成する。特定の実施形態では、部分32からの加熱混合物は、気液分離部36を通過する。この気液分離部36では、部分38が熱分解燃料油71との混合に適する燃料油成分として使用可能という理由で排出される。
【0031】
蒸気熱分解ゾーン30は、熱分解流出物4をエチレン、プロピレン、ブタジエン、混合ブテンおよび熱分解ガソリンなどの目的の生成物にするのに効果的なパラメータ下で動作する。特定の実施形態では、水蒸気分解が次の条件下で行われる:対流部および熱分解部で400℃〜900℃の範囲の温度、対流部での0.3:1〜2:1の範囲の蒸気/炭化水素比率;および対流部および熱分解部での0.05秒〜2秒の範囲の滞留時間。
【0032】
特定の実施形態では、気液分離部36は、
図2A〜2Cに示すような1つまたは複数の気液分離装置80を含む。気液分離装置80は経済的に動作し、かつ、電力または薬品供給の必要がないためメンテナンスフリーである。通常、装置80は、気液混合物の受け入れ用入口ポート、分離された蒸気および液体をそれぞれ排出および収集するための蒸気出口ポートおよび液体出口ポート、などの3つのポートを含む。装置80は、球状流(global flow)予備回転部(予備回転部)による流入混合物の線形速度から回転速度への変換、蒸気を液体(残油)から予備分離するための制御された遠心効果、および液体(残油)から蒸気の分離を促進するサイクロン効果、を含む現象の組み合わせに基づいて動作する。これらの効果を達成するために、装置80は、予備回転部88、制御されたサイクロン型垂直部90および液体収集/沈降分離部92を含む。
【0033】
図2Bに示すように、予備回転部88は、断面(S1)と断面(S2)との間に、制御された予備回転要素、および断面(S2)と断面(S3)との間に配置され、制御されたサイクロン型垂直部90への連結要素を含む。直径(D1)である入口32から来る気液混合物は、断面(S1)で接線方向に装置に入る。流入流のための入口断面(S1)の面積は、下式に従う入口82の面積の少なくとも10%である:
【数1】
【0034】
予備回転要素88は、曲線流路を規定し、入口断面S1から出口断面S2まで連続的に減少するか、または増加する断面により特徴付けられる。特定の実施形態では、制御された予備回転要素の出口断面(S2)と入口断面(S1)との間の比率(S2/S1)は、0.7〜1.4の範囲にある。
【0035】
混合物の回転速度は、予備回転要素88の中心線の曲率半径(R1)に依存し、中心線は、予備回転要素88の連続的に変化する断面の中心点を結ぶ曲線として定義される。特定の実施形態では、150°〜250°の開角(αR1)範囲で、曲率半径(R1)は、R1/D1として2〜6の範囲である。
【0036】
入口断面S1の断面形状は、ほぼ正方形として示したが、矩形、丸みを帯びた矩形、円、楕円、または他の直線構成形状、曲線形状または前述の形状の組み合わせであってよい。特定の実施形態では、流体が通過する予備回転要素88の曲線形流路に沿った断面形状は、例えば、ほぼ正方形から長方形へと連続的に変化する。長方形へと連続的に変化する要素88の断面は、好都合にも、開口面積を最大化し、従って、早期の段階での液体混合物からガスの分離および均一速度プロファイルの達成、ならびに流体流中の剪断応力の最小化を可能とする。
【0037】
制御された予備回転要素88の断面(S2)からの流体流は、部分(S3)から連結要素を経由して制御されたサイクロン型垂直部90へ送られる。連結要素は、開口領域を含み、制御されたサイクロン型垂直部90の入口に向かって開かれて連結されるか、またはこの入口と一体化している。流体流は制御されたサイクロン型垂直部90に高回転速度で入り、サイクロン効果を作り出す。特定の実施形態では、連結要素の出口断面(S3)と入口断面(S2)との比率(S3/S1)は、2〜5の範囲にある。
【0038】
高回転速度の混合物は、サイクロン型垂直部90に入る。動力学的エネルギーは減少し、蒸気が、サイクロン効果により液体から分離する。サイクロンは、サイクロン型垂直部90に上位レベル90aおよび下位レベル90bを形成する。上位レベル90aでは、混合物は高濃度の蒸気を特徴とし、一方、低位レベル90bでは、混合物は高濃度の液体を特徴とする。
【0039】
特定の実施形態では、サイクロン型垂直部90の内径D2は、D2/D1として2〜5の範囲であり、その高さに方向に一定であってよく、上部90aの長さ(LU)は、LU/D2として1.2〜3の範囲であり、低部90bの長さ(LL)は、LL/D2として2〜5の範囲である。
【0040】
蒸気出口84に近接するサイクロン型垂直部90の端部は、蒸気熱分解ユニットの熱分解部に連結された部分的開口放出上昇管に連結される。特定の実施形態では、部分的開口放出管の直径(DV)は、DV/D2として、0.05〜0.4の範囲である。
【0041】
従って、特定の実施形態では、また、流入混合物の性質に応じて、その中の大容積分率の蒸気が装置80の出口84から直径DVの部分的開口放出管を通って出て行く。低蒸気濃度の、または蒸気を含まない液相(例えば、残油)が断面積S4のサイクロン型垂直部90の底部分を通って出て行き、液体収集器および沈降管92中に集められる。
【0042】
特定の実施形態では、サイクロン型垂直部90と、液体収集器および沈降管92との間の連結領域は、90
oの角度である。特定の実施形態では、液体収集器と沈降管92の内径は、D3/D1として2〜4の範囲であり、管長さ全体にわたり一定で、液体収集器と沈降管92の長さ(LH)は、LH/D3として、1.2〜5の範囲である。低蒸気体積分率の液体は、直径DLの管86を通って装置から取り出される。特定の実施形態では、管86は、DL/D3として、0.05〜0.4の範囲であり、沈降管の底部または底部の近くに配置される。
【0043】
種々の部材が別々に、また、別々の部分と一緒に記載されているが、装置80は、例えば、鋳造または型成形された一体化構造として形成でき、または、例えば、本明細書記載の部材および部分に正確に対応しても、そうでなくてもよい別々の部品を溶接または他の方法で一緒に結合させて、組み立てることができることは当業者には理解されよう。
【0044】
種々の寸法が直径として記述されているが、これらの値は、構成部品が円筒形でない場合の実施形態における等価な有効径であってもよいことは理解されよう。
【0045】
混合生成物流39は、別の入口を介して導入される急冷溶液42(例えば、水および/または熱分解燃料油)と共に急冷ゾーン40の入口に送られ、例えば、約300℃の低下した温度の中間体急冷混合生成物流44を生成し、消費された急冷溶液46が排出される。典型的な例では、分解装置からのガス混合物流出物39は、水素、メタン、炭化水素、二酸化炭素および硫化水素の混合物である。水またはオイル急冷により冷却後、混合物44は、通常、4〜6段の多段コンプレッサーゾーン51で圧縮され、圧縮ガス混合物52を生成する。圧縮ガス混合物52は、苛性処理ユニット53で処理され、硫化水素および二酸化炭素不含のガス混合物54が生成される。ガス混合物54は、コンプレッサーゾーン55でさらに圧縮され、得られた熱分解ガス56は、通常、ユニット57中で極低温処理を受けて脱水され、モレキュラーシーブを使ってさらに乾燥される。
【0046】
ユニット57からの低温分解ガス流58は、脱メタン塔59に送られ、そこから、分解ガス流由来の水素とメタンを含む塔頂流60が生成される。その後、脱メタン塔59からの塔底流65は、さらなる処理のために、脱エタン塔、脱プロパン塔および脱ブタン塔などの分留塔を含む生成物分離ゾーン70に送られる。脱メタン塔、脱エタン塔、脱プロパン塔および脱ブタン塔の異なる配置を含むプロセス構成も採用可能である。
【0047】
本明細書に記載のプロセスでは、脱メタン塔59でのメタンの分離およびユニット61中の水素回収後、通常、80〜95vol%の純度の水素62が得られる。ユニット61中での回収方法には、極低温回収(例えば、約−157℃の温度で)が含まれる。その後、水素流62は、圧力スイング吸着(PSA)ユニットなどの水素精製ユニット64に送られて99.9%+の純度の水素流2が得られるか、または膜分離ユニットに送られて約95%の純度の水素流2が得られる。精製された水素流2は、次に、水素化処理ゾーン用に必要な水素の主要成分として機能するように再利用される。さらに、少量の部分がアセチレン、メチルアセチレンおよびプロパジエンの水素添加反応用に利用できる(図示せず)。さらに、本明細書に記載のプロセスでは、メタン流63は、任意選択で、蒸気分解装置に再利用して、バーナーおよび/またはヒーター用の燃料として使用できる。
【0048】
脱メタン塔59からの塔底流65は、生成物分離ゾーン70の入口に運ばれ、それぞれ、出口78、77、76、75、74および73、を経由して排出されるメタン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、混合ブチレンおよび熱分解ガソリンに分離される。通常、熱分解ガソリンは、C5〜C9炭化水素を含み、ベンゼン、トルエンおよびキシレンがこの留分から抽出できる。供給原料分離ゾーン100から排出された部分22および任意選択で、気液分離部36からの未蒸発重質液体留分38が、分離ゾーン70からの熱分解燃料油71(例えば、最低沸点のC10化合物(「C10+」流とし知られる)より高い沸点の物質)と組み合わされ、この混合流は、例えば、敷地外の精油所(図示せず)でさらに処理される熱分解燃料油ブレンド72として取り出される。
【0049】
任意選択の特定の実施形態では、燃料油72を発電ゾーン110に送って発電し(例えば、燃料源として燃料油72を採用できる1種または複数種の蒸気タービンで)、残りの部分を燃料ガス脱硫ゾーン120に送って脱硫ガスを生成できる。
【0050】
図1に関して記載のシステムの利点には、このプロセスを効果的に利用して生成物の水素含量の改善を行うことができること、などの水素化処理における改善が含まれる。例えば、本明細書記載のシステムは、より小さい気孔サイズの水素処理触媒を使用し、この触媒はより活性な水素処理反応に大きく寄与する。さらに、水素処理ゾーンの全体の水素消費が著しく低減される。水素は不飽和重質残油の品質向上には消費されず、熱分解反応を受けている留分、例えば、540℃超で沸騰させて得られる留分に対し利用される。より重質の留分、例えば、540℃超で沸騰させて得られる留分を使ってプラント用に発電する一方で、残りの部分を燃料油として回収する。
【0051】
特定の実施形態では、選択的水素化処理または水素処理プロセスでは、芳香族化合物、特に多環芳香族化合物を飽和とその後の穏やかな水素添加分解により、供給原料のパラフィン含量を高める(またはBMCIを下げる)ことができる。原油を水素処理する場合、金属、硫黄および窒素などの混入物は、供給原料を、脱金属、脱硫および/または脱窒素の触媒機能を有する一連の層状触媒を通過させることにより、除去できる。
【0052】
一実施形態では、触媒が水素化脱金属(HDM)および水素化脱硫(HDS)を遂行する順序は以下の通りである。
a.水素化脱金属触媒。HDM部の触媒は、通常、約140〜240m
2/gの表面積のガンマアルミナ支持体に坦持される。この触媒は、例えば、1cm
3/gを超える非常に高い気孔容積を持つとして最もよく表現される。孔径それ自体は、通常、主にマクロ多孔性である。これは、触媒表面上での金属および任意のドーパントの取り込み用の大きな容積を与えるのに必要である。典型的な例では、触媒表面上の活性金属は、Ni/Ni+Moの比率が0.15未満のニッケルおよびモリブデンの硫化物である。かなりのニッケルおよびバナジウムが除去の間に供給原料自体から沈着し、触媒として機能することが予想されるので、HDM触媒上のニッケルの濃度は、他の触媒より低い。使われるドーパントは、リン(例えば、米国特許公開第2005/0211603号を参照されたい。この特許は、参照によって本明細書に組み込まれる)、ホウ素、シリコンおよびハロゲンの内の1種または複数種であってよい。触媒は、アルミナ押出成形品またはアルミナビーズの形であってよい。特定の実施形態では、金属の取り込みがベッドの上部で30〜100%の範囲になるので、アルミナビーズを使って、反応装置中の触媒HDMベッドの取り出しを容易にする。
b.また、中間触媒を使って、HDMとHDS機能との間の移行を行わせることができる。それは中間金属充填材および孔径分布を有する。HDM/HDS反応装置中の触媒は実質的には押出成形品の形態のアルミナ支持体、任意選択で、VI族(例えば、モリブデンおよび/またはタングステン)の少なくとも1種の触媒金属、および/またはVIII族(例えば、ニッケルおよび/またはコバルト)の少なくとも1種の触媒金属から構成される。また、触媒は、任意選択で、ホウ素、リン、ハロゲンおよびシリコンから選択される少なくとも1種のドーパントを含む。物理学的性質には、約140〜200m
2/gの表面積、少なくとも0.6cm
3/gの気孔体積、およびメソポーラスであり、12〜50nmの範囲の気孔が含まれる。
c.HDS部の触媒は、HDM範囲のより高端側に近い、例えば、約180〜240m
2/gの範囲の典型的表面積を備えたガンマアルミナベース支持材料を有するものを含んでもよい。この必要とされるHDSのより広い表面は、例えば、1cm
3/gより小さい、比較的小さい気孔容積を生ずる。触媒は、モリブデンなどの少なくとも1種のVI族元素、およびニッケルなどの少なくとも1種のVIII族元素を含む。また、触媒は、ホウ素、リン、シリコンおよびハロゲンから選択される少なくとも1種のドーパントを含む。特定の実施形態では、コバルトを使って、比較的高いレベルの脱硫を行える。活性相用の金属充填材は、必要な活性がより高いので、より多くなり、その結果、モル比率Ni/Ni+Moは、0.1〜0.3の範囲であり、(Co+Ni)/Moモル比率は、0.25〜0.85の範囲である。
d.例えば、Appl.Catal.A General、204(2000)251、に記載のように、最終触媒(任意選択で、第2および第3触媒を置換してもよい)は、(水素化脱硫の一次機能よりは)供給原料の水素添加を行うように設計される。また、触媒はNiにより活性化されるであろうし、また、支持体は、大きな気孔のガンマアルミナとなろう。物理学的性質には、HDM範囲のより高端側に近い、例えば、180〜240m
2/gの表面積が含まれる。この必要とされるHDSのより広い表面は、例えば、1cm
3/gより小さい、比較的小さい気孔容積を生ずる。
【0053】
本明細書記載の方法とシステムは、既知の蒸気熱分解プロセスに対し改善できる:
オレフィンおよび芳香族化合物などの石油化学製品の生産のための供給原料として原油の使用;
オレフィンの高収率のために、蒸気熱分解ゾーンへの供給原料の水素含量が富化される;
コークス前駆体は、最初の全原油からかなり除去され、これにより、ラジアンとコイル中でのコークス形成の低減が可能となる;
また、金属、硫黄および窒素化合物などのさらなる不純物も、出発供給原料から著しく除去され、最終生成物の後処理の必要性がなくなる。
【0054】
さらに、水蒸気分解ゾーンから生成された水素が水素化処理ゾーンに再利用され、新しい水素の要求量が最小限になる。特定の実施形態では、本明細書記載の統合システムは、操作を開始するためのみに新しい水素を必要とする。反応が平衡に達してしまうと、水素精製システムは、全システムの動作を維持するのに充分な高純度の水素を提供できる。
【0055】
本発明の方法とシステムが、上記および添付図で説明されてきたが、当業者なら変更は明白であり、発明の保護の範囲は、以下の請求項により規定されるべきものである。