特許第6491264号(P6491264)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6491264エレベータの自動診断方法およびエレベータの自動診断装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491264
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】エレベータの自動診断方法およびエレベータの自動診断装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20190318BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   B66B5/00 G
   B66B3/00 Q
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-109919(P2017-109919)
(22)【出願日】2017年6月2日
(65)【公開番号】特開2018-203443(P2018-203443A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2017年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】田村 聡
(72)【発明者】
【氏名】西田 岳人
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−182555(JP,A)
【文献】 特開2011−195284(JP,A)
【文献】 特開2002−012378(JP,A)
【文献】 特開2004−338861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00−5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定期間ごとに到来する自動診断運転開始時刻になると、管理対象のエレベータ内の機器に関する複数の動作項目の自動診断運転を開始し、利用者による呼びが発生する都度、前記自動診断運転を中断し、前記呼びへの応答が完了すると前記自動診断運転を再開し、予め設定された自動診断運転終了時刻が到来すると、前記自動診断運転が完了したか否かに関わらず、前記自動診断運転を終了させるエレベータの自動診断装置が、
前記エレベータの通常運転時に取得された、前記自動診断運転に関わる項目の最新の動作状態情報、およびその動作状態情報の取得日時情報を保持し、
前記自動診断運転が終了したときに、未実施の項目があり、当該未実施の項目に対応する所定期間内の動作状態情報が保持されているときには、当該対応する動作状態情報を当該項目の診断結果として利用して前記自動診断運転の診断結果情報を生成する
ことを特徴とするエレベータの自動診断方法。
【請求項2】
所定期間ごとに到来する自動診断運転開始時刻になると、管理対象のエレベータ内の機器に関する複数の動作項目の自動診断運転を開始し、利用者による呼びが発生する都度、前記自動診断運転を中断し、前記呼びへの応答が完了すると前記自動診断運転を再開し、予め設定された自動診断運転終了時刻が到来すると、前記自動診断運転が完了したか否かに関わらず、前記自動診断運転を終了させるエレベータの自動診断装置が、
複数回の自動診断運転を、それぞれ異なる自動診断運転開始時刻と自動運転終了時刻との組み合わせで実行させ、該当する自動運転終了時刻までに自動診断運転が完了したときの自動診断運転開始時刻と自動運転終了時刻との組み合わせを、次回の自動診断運転時に用いる
ことを特徴とするエレベータの自動診断方法。
【請求項3】
所定期間ごとに到来する自動診断運転開始時刻になると、管理対象のエレベータ内の機器に関する複数の動作項目の自動診断運転を開始し、利用者による呼びが発生する都度、前記自動診断運転を中断し、前記呼びへの応答が完了すると前記自動診断運転を再開し、予め設定された自動診断運転終了時刻が到来すると、前記自動診断運転が完了したか否かに関わらず、前記自動診断運転を終了させる診断運転実行部と、
前記エレベータの通常運転時に取得された、前記自動診断運転に関わる項目の最新の動作状態情報、およびその動作状態情報の取得日時情報を保持する動作状態情報保持部と、
前記自動診断運転が終了したときに、未実施の項目があり、当該未実施の項目に対応する所定期間内の動作状態情報が前記動作状態情報保持部に保持されているときには、当該対応する動作状態情報を当該項目の診断結果として利用して前記自動診断運転の診断結果情報を生成する診断結果情報生成部と
を備えることを特徴とするエレベータの自動診断装置。
【請求項4】
所定期間ごとに到来する自動診断運転開始時刻になると、管理対象のエレベータ内の機器に関する複数の動作項目の自動診断運転を開始し、利用者による呼びが発生する都度、前記自動診断運転を中断し、前記呼びへの応答が完了すると前記自動診断運転を再開し、予め設定された自動診断運転終了時刻が到来すると、前記自動診断運転が完了したか否かに関わらず、前記自動診断運転を終了させる診断運転実行部と、
複数回の自動診断運転を、それぞれ異なる自動診断運転開始時刻と自動運転終了時刻との組み合わせで実行させ、該当する自動運転終了時刻までに自動診断運転が完了したときの自動診断運転開始時刻と自動運転終了時刻との組み合わせを、次回の自動診断運転時に用いる診断運転時間登録部と
を備えることを特徴とするエレベータの自動診断装置。
【請求項5】
前記診断運転実行部は、前記自動診断運転の実行中に、前記エレベータの乗りかご内に設置された表示装置または乗場に設置された表示装置に、実行中の自動診断運転に関する報知情報を表示させる
ことを特徴とする請求項3または4に記載のエレベータの自動診断装置。
【請求項6】
実行した自動診断運転が完了せずに前記自動診断運転終了時刻が到来して終了されたときには、所定期間ごとに到来する、前記自動診断運転開始時刻および前記自動診断運転終了時刻を変更する診断運転時間登録部をさらに備える
ことを特徴とする請求項3〜5いずれか1項に記載のエレベータの自動診断装置。
【請求項7】
複数回の自動診断運転を、それぞれ異なる自動診断運転開始時刻と自動運転終了時刻との組み合わせで実行させ、該当する自動運転終了時刻までに自動診断運転が完了したときの自動診断運転開始時刻と自動運転終了時刻との組み合わせを、次回の自動診断運転時に用いる診断運転時間登録部をさらに備える
ことを特徴とする請求項3に記載のエレベータの自動診断装置。
【請求項8】
前記診断運転時間登録部は、該当する自動運転終了時刻までに自動診断運転が完了した自動診断運転開始時刻と自動診断運転終了時刻との組み合わせが複数あるときには、これらの中間時刻または直近の自動診断運転時刻と自動診断運転終了時刻との組み合わせを、次回の自動診断運転時に用いる
ことを特徴とする請求項4または7に記載のエレベータの自動診断装置。
【請求項9】
前記エレベータの通常運転時に取得された、前記自動診断運転に関わる項目の最新の動作状態情報、およびその動作状態情報の取得日時情報を保持する動作状態情報保持部と、
前記自動診断運転が終了されたときに、未実施の項目があり、当該未実施の項目に対応する所定期間内の動作状態情報が前記動作状態情報保持部に保持されているときには、当該対応する動作状態情報を当該項目の診断結果として利用して診断結果情報を生成する診断結果情報生成部とをさらに備える
ことを特徴とする請求項4に記載のエレベータの自動診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータの自動診断方法およびエレベータの自動診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータでは、各種構成機器が正常に動作するか否かを自動で診断するための複数項目に関する自動診断運転が、所定期間ごとに実行されている。このような自動診断運転による診断結果を遠隔から監視することで、保守員が直接エレベータに出向いて点検作業を行うことなく、保守管理を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−270760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した自動診断運転は、その実行中に利用者によるエレベータ呼びが発生すると、一時中断され、当該呼びに対する応答が終了すると再開される。この中断と再開とが頻繁に繰り返される状態が続くと制御システムにとって好ましくないため、一連の自動診断運転中に所定回数(例えば3回)の中断が発生すると、当該回の自動診断運転が強制終了されるように設定されている。
【0005】
しかし、このような設定により自動診断運転が強制終了されたときに、未実施の診断項目があると、当該項目についての診断結果が取得できない。そのため、遠隔から手動により再度自動診断運転を実行させる操作等が必要になり、処理が煩雑になるという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、所定期間ごとに、機器動作状態を診断するための複数項目に関する自動診断運転が実行されるエレベータにおいて、各回の自動診断運転を所定時間内で終了させつつ精度の高い診断結果情報を生成するエレベータの自動診断方法およびエレベータの自動診断装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための実施形態によればエレベータの自動診断方法は、所定期間ごとに到来する自動診断運転開始時刻になると、管理対象のエレベータ内の機器に関する複数の動作項目の自動診断運転を開始し、利用者による呼びが発生する都度、前記自動診断運転を中断し、前記呼びへの応答が完了すると前記自動診断運転を再開し、予め設定された自動診断運転終了時刻が到来すると、前記自動診断運転が完了したか否かに関わらず、前記自動診断運転を終了させる。また、エレベータの通常運転時に取得された、前記自動診断運転に関わる項目の最新の動作状態情報、およびその動作状態情報の取得日時情報を保持し、前記自動診断運転が終了したときに、未実施の項目があり、当該未実施の項目に対応する所定期間内の動作状態情報が保持されているときには、当該対応する動作状態情報を当該項目の診断結果として利用して前記自動診断運転の診断結果情報を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態による自動診断装置を利用したエレベータシステムの構成を示す全体図。
図2】一実施形態による自動診断装置で取得されたエレベータの動作状態情報の一例を示す表。
図3】一実施形態による自動診断装置の動作を示すフローチャート。
図4】一実施形態による自動診断装置で取得された自動診断運転による診断結果を示す表。
図5】一実施形態による自動診断装置で取得された自動診断運転による診断結果に、動作状態情報が追加された状態を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〈一実施形態によるエレベータシステムの構成〉
本発明の一実施形態によるエレベータの自動診断装置を利用したエレベータシステムの構成について、図1を参照して説明する。本実施形態によるエレベータシステム1は、建物A内のエレベータ10Aの動作を監視する建物A遠隔監視装置20A、建物B内のエレベータ(図示せず)の動作を監視する建物B遠隔監視装置20B、および建物C内のエレベータ(図示せず)の動作を監視する建物C遠隔監視装置20Cと、これら複数の遠隔監視装置20A〜20Cにネットワーク30を介して接続された中央監視局装置40とを備える。図1では、建物A遠隔監視装置20Aにより監視されるエレベータとして、1台のエレベータ10Aが接続されている場合を示すが、建物A内の複数台のエレベータを監視対象としてもよい。建物B遠隔監視装置20B、建物C遠隔監視装置20Cも同様に、建物B、建物C内の所定台数のエレベータを監視している。
【0010】
エレベータ10Aは、エレベータ制御装置11と、エレベータ制御装置11の制御により動作するかご内表示装置12、かご内操作盤13、乗場表示装置14、および乗場操作盤15とを有する。エレベータ制御装置11は、呼び登録部111と、運転制御部112と、動作状態情報取得部113と、自動診断装置114とを有する。
【0011】
呼び登録部111は、かご内操作盤13または乗場操作盤15における利用者の操作に基づいて、かご呼びおよび乗場呼びを登録する。運転制御部112は、呼び登録部111に登録されたかご呼びおよび乗場呼びに基づいてエレベータ10Aを運転させるために、エレベータ10A内の各機器の動作を制御する。動作状態情報取得部113は、エレベータ10Aの通常運転時に取得された、各機器の動作状態情報を取得する。
【0012】
自動診断装置114は、動作状態情報保持部114aと、診断運転実行部114bと、診断結果情報生成部114cとを有する。動作状態情報保持部114aは、動作状態情報取得部113で取得した情報のうち、後述する自動診断運転に関わる項目の最新の動作状態情報、およびその動作状態情報の取得日時情報を保持する。診断運転実行部114bは、後述する建物A遠隔監視装置20Aから自動診断運転開始指示を受信すると、エレベータ10A内の機器に関する複数の動作項目の自動診断運転を開始する。また、利用者による呼びが発生する都度、自動診断運転を中断し、呼びへの応答が完了すると前記自動診断運転を再開する。そして、建物A遠隔監視装置20Aから自動診断運転終了指示を受信すると、自動診断運転が完了したか否かに関わらず、自動診断運転を終了させる。診断結果情報生成部114cは、診断運転実行部114bで実行された自動診断運転により得られた診断結果を取得し、診断結果情報を生成する。
【0013】
建物A遠隔監視装置20Aは、診断運転時間記憶部21と、診断運転制御部22とを有する。診断運転時間記憶部21は、後述する中央監視局装置40から送信される、エレベータ10Aの診断運転の開始時刻情報および終了時刻情報を記憶する。診断運転制御部22は、診断運転時間記憶部21に記憶された診断運転の開始時刻が到来したと判断すると、自動診断運転開始指示をエレベータ制御装置11に送信する。また、診断運転の終了時刻が到来したと判断すると、自動診断運転終了指示をエレベータ制御装置11に送信する。
【0014】
建物B遠隔監視装置20B、および建物C遠隔監視装置20Cも、建物A遠隔監視装置20Aと同様の構成を有する。
【0015】
中央監視局装置40は、監視対象の建物ごとの自動診断運転時間に関する情報(所定期間、例えば1か月ごとの所定日の自動診断運転開始時刻情報および自動診断運転終了時刻情報)を保持し、各遠隔監視装置に、対応する診断運転時間に関する情報を送信する。
〈一実施形態によるエレベータシステムの動作〉
次に、本実施形態によるエレベータシステム1の動作について説明する。本実施形態において、自動診断装置114の診断運転実行部114b内には、管理対象のエレベータ10A内の所定機器の動作に関する正常/異常を自動診断するための自動診断項目の情報が保持されている。ここでは、自動診断項目として、昇降路内に設置された複数のリミットスイッチのON/OFF動作、巻上げ機に備えられたブレーキの動作、および各階床におけるドアの開閉動作の診断が設定されているものとする。
【0016】
また、動作状態情報保持部114aには、動作状態情報取得部113で取得された情報のうち、診断運転実行部114bに設定された自動診断項目に関わる項目の最新の動作状態情報、およびその動作状態情報の取得日時情報が保持されている。例えば、図2に示すように、昇降路内に設置されたリミットスイッチ(SW1)の最新の動作状態情報「正常」、およびその取得日時情報「xxxx年2月27日10時29分21秒」と、リミットスイッチ(SW2)の最新の動作状態情報「正常」、およびその取得日時情報「xxxx年3月17日8時18分45秒」と、ブレーキの最新の動作状態情報「正常」、およびその取得日時情報「xxxx年3月17日10時40分50秒」と、1階のドア開閉動作状態情報「正常」、およびその取得日時情報「xxxx年3月17日16時17分12秒」と、2階のドア開閉動作状態情報「正常」、およびその取得日時情報「xxxx年3月18日12時2分11秒」・・・最上階のドア開閉動作状態情報「正常」、およびその取得日時情報「xxxx年3月19日13時10分43秒」とが保持されている。
【0017】
そして、エレベータ10Aの通常運転時に、設定された診断項目に対応する機器の新たな動作状態情報が動作状態情報取得部113で取得されると、動作状態情報保持部114aに保持されている該当情報が更新される。
【0018】
このように、動作状態情報保持部114aに最新の各種動作状態情報が保持されている状態で実行される自動診断運転について説明する。まず、中央監視局装置40の診断運転時間登録部41に登録されている建物Aの自動診断運転時間に関する情報が建物A遠隔監視装置20Aに送信され、建物Bの自動診断運転に関する情報が建物B遠隔監視装置20Bに送信され、建物Cの自動診断運転に関する情報が建物C遠隔監視装置20Cに送信される。以下、建物A遠隔監視装置20Aで実行される処理を例に説明する。
【0019】
建物A遠隔監視装置20Aでは、中央監視局装置40から受信した建物Aの自動診断運転時間に関する情報(例えば、自動診断運転開始時刻が毎月20日の1時50分00秒、自動診断運転終了時刻が毎月20日の1時59分59秒)が、診断運転時間記憶部21に記憶される。そして、診断運転制御部22により、診断運転時間記憶部21に記憶された自動診断運転に関する情報に基づいて、自動診断運転の開始時刻が到来したか否かが監視される。診断運転制御部22において診断運転開始時刻が到来したと判断されると、エレベータ10Aのエレベータ制御装置11に自動診断運転開始指示が送信される。エレベータ制御装置11で実行される自動診断運転について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0020】
エレベータ制御装置11において、建物A遠隔監視装置20Aから自動診断運転開始指示が受信されると(S1の「YES」)、自動診断装置114の診断運転実行部114bにおいて、予め設定された項目に関する自動診断運転が開始される(S2)。
【0021】
本実施形態においては、自動診断項目として、昇降路内に設置された複数のリミットスイッチのON/OFF動作、巻上げ機に備えられたブレーキの動作、および各階床におけるドアの開閉動作の診断が設定されており、これらの診断を行うための自動診断運転が、予め設定された順序で実行される。
【0022】
ここで、リミットスイッチは、乗りかごの位置を検出するために昇降路内の複数箇所に設置されている。これらのリミットスイッチの診断では、乗りかごを通常の定格速度で走行させながら当該乗りかごに設置された検出器で順次リミットスイッチをON/OFFさせることで、各リミットスイッチが適切な位置にあり正常に動作するか否かを確認する。
【0023】
また、ブレーキの診断では、乗りかごを昇降路内の最上階の位置に停止させ、ブレーキを開放することなくトルクを印加することで、ブレーキの保持力を確認する。
【0024】
また、ドアの開閉動作の診断では、乗りかごを各階の乗場に順次停止させ、乗りかごに備えられたドア制御装置によりドアが正常に開閉するか否かを確認する。
【0025】
これらの自動診断運転が順次実行されている間に、利用者によりかご内操作盤13または乗場操作盤15が操作されてかご呼びまたは乗場呼びが発生し、呼び登録部111に登録されると(S3の「YES」)、診断運転実行部114bにより、実行中の自動診断運転が中断される。自動診断運転が中断されることにより、運転制御部112により、登録された呼びに応答するための運転が実行される(S4)。当該呼びへの応答が完了すると(S5の「YES」)、診断運転実行部114bにより、中断した項目から自動診断運転が再開される(S6)。ステップS4〜S6の処理は、自動診断運転中に呼びが発生する都度、自動診断運転が終了するまで何度でも繰り返される(S7の「NO」)。
【0026】
診断運転実行部114bにおいて、自動診断終了指示が取得される前に全ての自動診断項目に対する自動診断運転が完了すると(S7の「NO」、S8の「YES」)、実施した自動診断運転の結果に基づいて、診断結果情報生成部114cにおいて正常に完了したことを示す自動診断結果情報が生成される(S9)。生成された自動診断結果情報は、建物A遠隔監視装置20Aに送信され、エレベータ10Aの遠隔監視に用いられる。
【0027】
また、自動診断運転中に頻繁に呼びが発生して自動診断運転の中断と再開とが繰り返されたことにより、自動診断運転が完了しないうちに建物Aの自動診断運転終了時刻が到来した場合について説明する。建物A遠隔監視装置20Aの診断運転制御部22において、エレベータ制御装置11から自動診断結果情報が受信されていない状態で、診断運転時間記憶部21に記憶された診断運転の終了時刻が到来したと判断されると、エレベータ制御装置11に自動診断運転終了指示が送信される。
【0028】
エレベータ制御装置11では、建物A遠隔監視装置20Aから自動診断運転終了指示が受信されると(S7の「YES」)、診断運転実行部114bにより自動診断運転が強制的に終了される(S10)。自動診断運転が終了されると、診断結果情報生成部114cにおいて、診断結果情報が生成される。ここで、診断結果情報内に未実施の診断項目があるか否かが判断される(S11)。
【0029】
例えば、自動診断運転が強制的に終了された日時がxxxx年3月20日1時59分59秒であり、このときに図4に示すように診断結果情報が生成されたものとする。この診断結果情報では、リミットスイッチ(SW1およびSW2)のON/OFF動作、ブレーキの動作、および1階のドア開閉動作については自動診断が正常に実施済みであり、2階〜最上階のドア開閉動作については自動診断が未実施であり診断結果が得られていないことが示されている。
【0030】
この場合、まず、自動診断運転の項目のうち「2階のドア開閉動作」が未実施であることが認識される。「2階のドア開閉動作」が未実施であることが認識されると、動作状態情報保持部114aに保持されている動作状態情報から、最新の2階のドア開閉動作状態情報およびその取得日時が確認され、現在から所定期間内(例えば3日以内)に正常に動作していたか否かが判断される。
【0031】
動作状態情報保持部114aには、図2に示すように、2階のドア開閉動作状態情報「正常」、およびその取得日時「xxxx年3月18日12時2分11秒」が保持されている。これにより、自動診断運転の終了時点からさかのぼって過去3日以内に2階のドアが正常に開閉動作していたことが確認され、この動作状態情報を用いて自動診断結果情報が更新される。つまり、2階のドア開閉動作の診断結果が、「不明」から「正常」に更新される。
【0032】
同様に、未実施として認識される3階〜最上階のドア開閉動作についても動作状態情報保持部114aの情報が確認され、過去3日以内に正常に動作していたことが確認されれば、該当する診断結果が「正常」として更新される(S12、S13)。更新後の自動診断結果情報の一例を、図5に示す。
【0033】
このように、動作状態情報保持部114aの情報に基づいて更新した診断結果情報を生成したときには、「自動診断運転は途中で終了したが通常運転の動作状態情報に基づいて全項目問題ないことを確認した」ことが通知される。また、動作状態情報保持部114aに保持されていた最新の動作状態情報が3日以内の情報ではなかったこと等により、通常運転の動作状態情報を用いても自動診断の項目がすべて取得できなかったときには、「自動診断運転が途中で終了し、完了しなかった」ことが通知される。
【0034】
以上の本実施形態によれば、予め設定された自動診断運転開始時刻から終了時刻までの間は、利用者の呼びによる自動診断運転の中断と再開とを何度でも繰り返し実行可能になる。また、自動診断運転終了時刻になっても自動診断が完了していない場合は、未実施の診断項目については通常運転時の動作状態情報を用いて診断結果を更新することができ、自動診断結果情報の精度を高めることができる。
【0035】
上述した実施形態においては、自動診断運転が終了したときに、未実施の項目について、過去3日以内の動作状態情報を利用可能とした場合について説明したが、この期間には限定されず、これより短い期間または長い期間で設定してもよい。
【0036】
また、上述したエレベータシステム1において、自動診断装置114により自動診断運転が実行されているときに、当該エレベータ10Aのかご内表示装置12および乗場表示装置14の少なくともいずれか一方に実行中の自動診断運転に関する報知情報を表示させるようにしてもよい。例えば、リミットスイッチの動作に関する診断運転中であれば、「リミットスイッチ 自動診断中」と表示させることで、乗りかご内や乗場にいる利用者に診断運転が実行されていることを認識させることができる。これにより、利用者がエレベータの利用をやめる可能性があり、呼びの登録により自動診断運転が中断される機会を減らすことができる。
【0037】
また、上述した実施形態において、未実施の項目がある状態で自動診断運転が途中で終了した場合には、診断運転実行部114bにより、次回の自動診断運転時に当該項目を優先した順序で自動診断運転が実施されるようにしてもよい。
【0038】
また、上述した実施形態において、中央監視局装置40が各建物の遠隔監視装置20A〜20Cで受信された診断結果情報を取得し、前回の自動診断運転が完了せずに自動診断運転終了時刻が到来して終了されたエレベータに関しては、次回の自動診断運転の自動診断運転開始時刻および自動診断運転終了時刻を変更し、該当する遠隔監視装置20Aに通知するようにしてもよい。
【0039】
また、中央監視局装置40が、複数回の自動診断運転を、それぞれ異なる自動診断運転開始時刻と自動運転終了時刻との組み合わせで実行させるように、各建物の遠隔監視装置20A〜20Cに自動診断運転に関する情報を送信し、該当する自動運転終了時刻までに自動診断運転が完了したときの自動診断運転開始時刻と自動運転終了時刻との組み合わせを、該当するエレベータの次回の自動診断運転時に用いるようにしてもよい。この場合、該当する自動運転終了時刻までに自動診断運転が完了した自動診断運転開始時刻と自動診断運転終了時刻との組み合わせが複数あるときには、これらの中間時刻または直近の自動診断運転時刻と自動診断運転終了時刻との組み合わせを、該当するエレベータの次回の自動診断運転時に用いるようにしてもよい。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1…エレベータシステム、10A…エレベータ、11…エレベータ制御装置、12…かご内表示装置、13…かご内操作盤、14…乗場表示装置、15…乗場操作盤、20A…建物A遠隔監視装置、20B…建物B遠隔監視装置、20C…建物C遠隔監視装置、21…診断運転時間記憶部、22…診断運転制御部、30…ネットワーク、40…中央監視局装置、41…診断運転時間登録部、111…呼び登録部、112…運転制御部、113…動作状態情報取得部、114…自動診断装置、114a…動作状態情報保持部、114b…診断運転実行部、114c…診断結果情報生成部
図1
図2
図3
図4
図5