(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491283
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】パーキング・ブレーキの電気機械アクチュエータのための遊星キャリア、アクチュエータ、及び、組み立て方法
(51)【国際特許分類】
F16H 1/28 20060101AFI20190318BHJP
F16D 65/18 20060101ALI20190318BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20190318BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20190318BHJP
F16D 125/50 20120101ALN20190318BHJP
【FI】
F16H1/28
F16D65/18
B60T13/74 G
F16D121:24
F16D125:50
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-148624(P2017-148624)
(22)【出願日】2017年7月31日
(62)【分割の表示】特願2015-547079(P2015-547079)の分割
【原出願日】2013年12月18日
(65)【公開番号】特開2017-203553(P2017-203553A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2017年8月29日
(31)【優先権主張番号】1262291
(32)【優先日】2012年12月19日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513084458
【氏名又は名称】シャシー・ブレークス・インターナショナル・ベスローテン・フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルロン、フィリップ
【審査官】
岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第7021415(US,B2)
【文献】
特開2004−108451(JP,A)
【文献】
特開2011−116338(JP,A)
【文献】
実公昭45−029138(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/28
B60T 13/74
F16D 65/18
F16D 121/24
F16D 125/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のパーキング・ブレーキを作動させるための電気機械アクチュエータ(17)であって、前記アクチュエータがアクチュエータ・ケーシング(18)を備え、前記アクチュエータ・ケーシング(18)に、
出力モータ・シャフトを備える電気モータ、及び
前記アクチュエータの出力要素(64)を回転させるように駆動させるために前記モータの前記出力シャフトによって回転するように駆動するギア付き減速機構
が少なくとも部分的に収容され、
前記減速機構が、遊星ピニオン(52)を担持する遊星キャリア(50)を含む遊星ギア・トレーンを備える少なくとも1つの減速ステージを備え、
前記遊星ピニオン(52)の各々が、
前記遊星キャリアのフレーム(54)に属する2つの平行な支持プレート(56、58)の間に収容され、且つ
その2つの対向する軸方向端部によって連結された前記2つの支持プレート(56、58)の間に設置された回転ガイド・ピン(74)を中心として直接回転できるように前記遊星キャリア(50)上に設置され、
各回転ガイド・ピン(74)が、荷重の衝撃及びトルクの衝撃を吸収するための弾性変形可能手段を構成するように一時的に弾性変形することができる管状ピンであって、且つ、前記フレーム(54)が成形によって製造されたフレームである
ことを特徴とする電気機械アクチュエータ(17)。
【請求項2】
前記遊星キャリア(50)の前記フレーム(54)が、プラスチック材料成形によって製造されたフレームである、請求項1に記載の電気機械アクチュエータ(17)。
【請求項3】
前記遊星キャリア(50)の前記フレーム(54)が、多数の部品で成形されたフレームである、請求項1又は2に記載の電気機械アクチュエータ(17)。
【請求項4】
各管状回転ガイド・ピン(74)が、
前記2つの支持プレート(56、58)を通って軸方向に延在し、
前記2つの支持プレートのうちの第1の支持プレート(58)の外側面に対向する一部分(78)に対して軸方向に支承する径方向ストップ・カラー(76)を装備する第1の軸方向端部を備え、
前記2つの支持プレートのうちの前記第2の支持プレート(56)に対する関係において軸方向に固定化される第2の軸方向端部(82)を備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の電気機械アクチュエータ(17)。
【請求項5】
前記第2の軸方向端部(82)が、この第2の軸方向端部(82)の少なくとも1つの押し付け区域(84)により前記第2の支持プレート(56)に対する関係において軸方向に固定化され、前記少なくとも1つの押し付け区域(84)が、前記第2の支持プレート(56)の外側面に対向する一部分(80)の方を向くように径方向外向きに延在する、請求項4に記載の電気機械アクチュエータ(17)。
【請求項6】
前記第2の軸方向端部(82)が、少なくとも2つの押し付け区域(84)により前記第2の支持プレート(56)に対する関係において軸方向に固定化され、前記少なくとも2つの押し付け区域(84)が、前記第2の軸方向端部(82)に対して径方向において対向し、それらの各々が、前記第2の支持プレート(56)の外側面に対向する一部分(80)の方を向くように径方向外向きに延在する、請求項4又は5に記載の電気機械アクチュエータ(17)。
【請求項7】
各管状回転ガイド・ピン(74)が鋼で作られ、各管状回転ガイド・ピンの軸方向長さが5mmから20mmの間であって、各管状回転ガイド・ピンの外径が5mmから15mmの間であって、且つ、各管状回転ガイド・ピンの径方向厚さが0.5mmから2mmの間である、請求項1から6までのいずれか一項に記載の電気機械アクチュエータ(17)。
【請求項8】
各管状回転ガイド・ピンの軸方向長さが12mmから18mmの間であって、各管状回転ガイド・ピンの外径が7mmから10mmの間であって、且つ、各管状回転ガイド・ピンの径方向厚さが0.6mmから1mmの間である、請求項7に記載の電気機械アクチュエータ(17)。
【請求項9】
各管状回転ガイド・ピン(74)が、弾性変形可能要素で充填されている、請求項1から8までのいずれか一項に記載の電気機械アクチュエータ(17)。
【請求項10】
前記遊星キャリア(50)の回転軸(A1)を中心として角度的に規則的に分布される4つの遊星(52)を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の電気機械アクチュエータ(17)。
【請求項11】
前記遊星キャリア(50)が、前記アクチュエータの前記出力要素を構成する、請求項1に記載の電気機械アクチュエータ(17)。
【請求項12】
前記遊星キャリア(50)の回転軸(A1)が、前記モータの前記出力シャフトの回転軸(A2)に対する関係において径方向にオフセットされる、請求項1に記載の電気機械アクチュエータ(17)。
【請求項13】
自動車のパーキング・ブレーキを作動させるための電気機械アクチュエータ(17)の製造方法であって、前記電気機械アクチュエータ(17)がアクチュエータ・ケーシング(18)を備え、前記アクチュエータ・ケーシング(18)に、
出力モータ・シャフトを備える電気モータ、及び
前記アクチュエータの出力要素(64)を回転させるように駆動させるために前記モータの前記出力シャフトによって回転するように駆動するギア付き減速機構
が少なくとも部分的に収容され、
前記減速機構が、遊星ピニオン(52)を担持する遊星キャリア(50)を含む遊星ギア・トレーンを備える少なくとも1つの減速ステージを備え、
前記遊星ピニオン(52)の各々が、
前記遊星キャリアのフレーム(54)に属する2つの平行な支持プレート(56、58)の間に収容され、
その2つの対向する軸方向端部により連結させた前記2つの支持プレートの間に設置された管状回転ガイド・ピン(74)を中心として直接回転できるように前記遊星キャリア上に設置されている、製造方法において、
成形によって遊星キャリア・フレーム(54)を生産するステップと、
前記2つの支持プレート(56、58)の間に少なくとも1つの遊星(52)を導入するステップと、
前記2つの支持プレートのうちの第1の支持プレートと、前記遊星と、前記支持プレートのうちの前記第2の支持プレートとを継続的に通して、荷重の衝撃及びトルクの衝撃を吸収するための弾性変形可能手段を構成するように一時的に弾性変形することができる管状ピンである管状回転ガイド・ピンを軸方向に挿入するステップと、
前記2つの支持プレート(56、58)に対する関係において前記管状回転ガイド・ピン(74)を順に軸方向に固定化するステップと
を継続的に含むことを特徴とする製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の電気機械アクチュエータ(17)の製造方法であって、
各管状回転ガイド・ピン(74)が、
前記2つの支持プレート(56、58)を通って軸方向に延在し、
前記2つの支持プレート(56、58)のうちの第1の支持プレート(58)の外側面に対向する一部分(78)に対して軸方向に支承する径方向ストップ・カラー(76)を装備する第1の軸方向端部を備え、
前記2つの支持プレートのうちの前記第2の支持プレート(56)に対する関係において軸方向に固定化される第2の軸方向端部(82)を備え、
前記軸方向に挿入するステップは、前記径方向ストップ・カラー(76)が前記第1の支持プレート(58)の前記外側面に対向する前記一部分(78)に対して軸方向に支承するときに完了する
ことを特徴とする製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の電気機械アクチュエータ(17)の製造方法であって、
前記固定化するステップは、前記第2の支持プレートの外側面に対向する一部分(80)の方を向くように径方向外向きに前記第2の軸方向端部(82)の少なくとも一部分(84)を押し付けることにより、前記第2の支持プレート(56)に対する関係において前記管状回転ガイド・ピン(74)の前記第2の軸方向端部(82)を固定化するステップからなることを特徴とする製造方法。
【請求項16】
自動車ブレーキを組み立てるための方法であって、
請求項13から15までのいずれか一項に記載の電気機械アクチュエータ(17)の製造方法に従って、電気機械アクチュエータ(17)を製造するステップと、
このようにして製造された前記電気機械アクチュエータ(17)を、電気機械式に作動されるパーキング・ブレーキを備えるディスク・ブレーキ(10)のキャリパ(12)の後面上に固定するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1から12のいずれか一項に記載の電気機械アクチュエータ(17)を備える、自動車のブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧作動式ディスク・ブレーキに組み込まれる、非常ブレーキとしても機能することができる、自動車のパーキング・ブレーキを作動させるための電気機械アクチュエータの減速機構(hydraulically controlled)の遊星ギア・トレーン(planetary gear train)のための遊星キャリアに関する。
【0002】
本発明はまた、このタイプの遊星キャリアを統合する減速機構を備える、自動車のパーキング・ブレーキを作動させるための電気機械アクチュエータに関する。
【0003】
本発明はまた、このタイプの遊星キャリアを組み立てるための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
電気機械パーキング・ブレーキを備える液圧的に制御される(hydraulically controlled)ディスク・ブレーキの構造が、特に、特許文献1により知られている。
【0005】
知られているように、ブレーキは、回転ディスクと協働することができる対向する2つの摩擦パッドを支持して摺動可能に誘導することができるキャリパを備える。
【0006】
このディスク・ブレーキは、ディスク・ブレーキを主として液圧的に作動させることとは別に、パーキング・ブレーキ又は非常ブレーキとしてのディスク・ブレーキの作動及び動作のための電気機械手段を備える。
【0007】
この目的のために、ブレーキは液圧作動式ブレーキのピストン内に配置されるねじ/ナットの対又はグループを備え、一方で、ねじ/ナットのグループのねじを双方向に回転させるように駆動させるための電気機械アクチュエータと称される電気ギア付きモータ組立体を備える。
【0008】
このアクチュエータに属する電気モータを用いてパーキング・ブレーキを作動させるには、ねじ/ナットのグループのねじに非常に大きいスクリューイング・トルク(screwing torque)を加えることが必要であり、例えば約2トンといったような非常に大きい力が発生すると、このトルクはねじ/ナットのグループにより、ピストンに加えられる軸方向の締め付けスラスト力(clamping axial thrust)へと変化される。
【0009】
可能な限り小さい寸法を有する電気駆動モータを使用しながら、ねじの回転の角度ストロークを短くしてこのようなスクリューイング・トルクを発生させるためには、電気機械アクチュエータの出力要素を回転させるように駆動させることを目的としてモータの出力シャフトによって回転するように駆動される減速機構をアクチュエータ内に設けることが必要となる。
【0010】
多様なデザインのこのような減速機構の間では、特には、ギア付き減速機構の間では、遊星ギア・トレーンを備える少なくとも1つの減速ステージを必要とするような多様な解決策が知られている。
【0011】
遊星ギア・トレーンを備える減速ステージは1つ又は複数の遊星ピニオンを担持する遊星キャリアを備え、この1つ又は複数の遊星ピニオンの各々が固定された太陽ギアに嵌合され、この固定された太陽ギアは内側に歯を有してアクチュエータのケーシングに属し、このケーシングは電気モータも収容することができる。
【0012】
このようなデザインでは、遊星キャリアが、ねじ/ナットのグループのねじを直接又は間接的に回転させるように駆動させる電気機械アクチュエータの出力要素を構成し、対して、電気モータが、遊星ギア・トレーンの遊星ピニオンに嵌合される中央太陽ピニオンを直接又は間接的に駆動させる。
【0013】
減速機構の多様な構成要素に加えられる、及び特には遊星ギア・トレーンに加えられる荷重の値が非常に高いことにより、並びに、これらの荷重が「準瞬間的」に加えられることにより、電気機械アクチュエータの構成要素のセット、及び特には遊星ギア・トレーンの多様な構成要素が荷重下で非常に大きい衝撃力を受けることから、弾性変形によって力を減衰又は吸収するための手段を設けることが必要となる。
【0014】
既知の解決策の中でも、特に、特許文献1に示される、歯付きベルトが電気モータの出力ピニオンを遊星ギア・トレーンに回転可能に接続するのに使用され得る。
【0015】
また、弾性変形可能手段を間に配置して遊星ギア・トレーンの太陽ギアを電気機械アクチュエータのケーシング内に設置することも知られている。
【0016】
これらの2つの解決策は、具体的には、電気機械アクチュエータの全体の大きさ及びそのアクチュエータの様々な構成要素を収容するケーシングの全体の大きさを増大させて結果的にばね下質量も増大させるという欠点を有する。
【0017】
電気モータ及び遊星ギア・トレーンの平行な回転軸を基準とした特に径方向において、このような電気機械アクチュエータのすべての寸法が、ディスク・ブレーキによりその制動を保証することになるホイール内に少なくとも部分的に統合されなければならないディスク・ブレーキの全体の寸法を決定することにおいて有害となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第7,021,415号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、この問題の解決策を提供すること及びすぐ上で説明した欠点を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的のために、本発明は、自動車のパーキング・ブレーキを作動させるための電気機械アクチュエータの減速機構の遊星ギア・トレーンのための遊星キャリアを提案し、この遊星キャリアが遊星ピニオンを担持し、これらの遊星ピニオンの各々が、
− 遊星キャリアのフレームに属する2つの平行な支持プレートの間に収容され、
− それぞれ、遊星ピニオンをその2つの対向する軸方向端部によって連結させるための2つの支持プレートの間に設置される回転ガイド・ピンを中心として遊星キャリア上に回転可能に設置され、
各ガイド・ピンが管状ピンであること、及び、フレームが成形(モールド)によって作られるフレームであることを特徴とする。
【0021】
遊星キャリアの別の特徴によると、
− フレームがプラスチック材料成形によって作られ、具体的には多数の部品で成形されるフレームであり、
− 各管状ガイド・ピンが、
−− 2つの支持プレートを通って軸方向に延在し、
−− 2つの支持プレートのうちの第1の支持プレートの外側面に対向する部分に対して軸方向において支承する径方向ストップ・カラーを装備する第1の軸方向端部を備え、
−− 2つの支持プレートのうちの第2の支持プレートを基準として軸方向において固定化される第2の軸方向端部を備え、
− 第2の軸方向端部がこの第2の軸方向端部の少なくとも1つの押し付け区域(crimped zone)により第2の支持プレートを基準として軸方向において固定化され、第2の支持プレートの外側面に対向する一部分の方を向くように径方向外向きに延在し、
− 各管状回転ガイド・ピンが鋼で作られ、各管状回転ガイド・ピンの軸方向長さが5mmから20mmの間であり、各管状回転ガイド・ピンの外径が5mmから15mmの間であり、各管状回転ガイド・ピンの径方向厚さが0.5mmから2mmの間であり、
− 各管状回転ガイド・ピンの軸方向長さが12mmから18mmの間であり、各管状回転ガイド・ピンの外径が7mmから10mmの間であり、各管状回転ガイド・ピンの径方向厚さが0.6mmから1mmの間であり、
− 第2の軸方向端部が少なくとも2つの押し付け区域により第2の支持プレートを基準として軸方向において固定化され、少なくとも2つの押し付け区域が第2の軸方向端部に対して径方向において対向し、それらの各々が第2の支持プレートの外側面に対向する一部分の方を向くように径方向外向きに延在し、
− 各管状回転ガイド・ピンが弾性変形可能要素で充填され、
− 遊星キャリアが遊星キャリアの回転軸を中心として角度的に規則的に分布される4つの遊星を備える。
【0022】
本発明はまた、自動車のパーキング・ブレーキを作動させるための電気機械アクチュエータを提案し、このアクチュエータがアクチュエータ・ケーシングを備え、このアクチュエータ・ケーシングが、
− 出力モータ・シャフトを備える電気モータと、
− アクチュエータの出力要素を回転させるように駆動させるためにモータの出力シャフトによって回転するように駆動させられるギア付き減速機構と
を少なくとも部分的に収容し、
減速機構が、本発明による遊星キャリアを有する遊星ギア・トレーンを備える少なくとも1つの減速ステージを備える。
【0023】
アクチュエータの別の特徴によると、
− 遊星キャリアがアクチュエータの出力要素を構成し、
− 遊星キャリアの回転軸がモータの出力シャフトの回転軸を基準として径方向にオフセットされる。
【0024】
本発明は、自動車のパーキング・ブレーキを作動させるための電気機械アクチュエータの減速機構の遊星ギア・トレーンのための、遊星キャリアを組み立てるための方法をさらに提案し、この遊星キャリアが遊星ピニオンを担持し、この遊星ピニオンの各々が、
− 遊星キャリアのフレームに属する2つの平行な支持プレートの間に収容され、
− 遊星ピニオンをその2つの対向する軸方向端部によって連結させるための2つの支持プレートの間に設置される管状回転ガイド・ピンを中心として遊星キャリア上に回転可能に設置され、
上記方法が、
− 遊星キャリア・フレームを作るステップと、
− 2つの支持プレートの間に少なくとも1つの遊星を導入するステップと、
− 2つの支持プレートのうちの第1の支持プレートと、遊星と、支持プレートのうちの第2の支持プレートとを継続的に通して、管状回転ガイド・ピンを軸方向に挿入するステップと、
− 2つの支持プレートを基準として管状ガイド・ピンを軸方向に固定化するステップと
を含むことを特徴とする。
【0025】
その各管状ガイド・ピンが、
−− 2つの支持プレートを通って軸方向に延在し、
−− 2つの支持プレートのうちの第1の支持プレートの外側面に対向する一部分に対して軸方向において支承する径方向ストップ・カラーを装備する第1の軸方向端部を備え、
−− 2つの支持プレートのうちの第2の支持プレートを基準として軸方向に固定化される第2の軸方向端部を備える
ような遊星キャリアを組み立てるために、
本方法が、軸方向に挿入するステップが径方向ストップ・カラーにより第1の支持プレートの外側面に対向する一部分に対して軸方向において支承するときに完了することを特徴とする。
【0026】
固定化するステップが、第2の支持プレートの外側面に対向する一部分に対向するように第2の軸方向端部の少なくとも一部分を径方向外向きに押し付けることにより、第2の支持プレートを基準として管状ガイド・ピンの第2の軸方向端部を固定化することで構成される。
【0027】
本発明はまた、自動車ブレーキを組み立てるための方法を提案し、上記方法が、
− 上記方法に従って遊星キャリアを組み立てるステップと、
− このようにして組み立てられた遊星キャリアを備える本発明による電気機械アクチュエータを作るステップと、
− このようにして作られた電気機械アクチュエータを、電気機械式に作動されるパーキング・ブレーキを備えるディスク・ブレーキのキャリパの後面上に固定するステップと
を含むことを特徴とする。
【0028】
添付図面を参照しながら提示される本発明の例示の実施例の以下の詳細な説明を読むことにより本発明の別の特徴及び利点が明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明による電気機械アクチュエータを備えるパーキング・ブレーキを備えるディスク・ブレーキを示す概略斜視図である。
【
図2】
図1と同様に、
図1のブレーキの主要構成要素を示す分解図である。
【
図3A】
図1及び
図2に示される電気機械アクチュエータのケーシングを示す拡大斜視図である。
【
図4】本発明による遊星キャリアを示す斜視図である。
【
図5】
図4の遊星キャリアを示す別の角度からの斜視図である。
【
図6】
図4の遊星キャリアの主要構成要素を示す拡大斜視図である。
【
図7】
図4の遊星キャリアの支持プレートを備えるフレームを示す拡大斜視図である。
【
図8】径方向に対向する2つの遊星の回転軸を通過する平面に沿う、軸方向セクションにおける、
図4の遊星キャリアを示す拡大図である。
【
図9A】遊星キャリアの組み立て前の遊星キャリアの管状回転ガイド・ピンを示す拡大斜視図である。
【
図9B】遊星キャリアの組み立て後の遊星キャリアの管状回転ガイド・ピンを示す拡大斜視図である。
【
図10】本発明による遊星キャリアの変形形態を示す等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下の説明では、同一、類似又は同様の要素及び構成要素が同一の参照符号によって示される。
【0031】
図1及び
図2がディスク・ブレーキ10を示しており、ここでは、ディスク・ブレーキ10は、ブレーキ・パッドなしで、及びさらにはこれらのパッドを摺動させて軸方向に誘導する及びリターンさせるための関連する手段なしで示される。
【0032】
ディスク・ブレーキが、基本的に、リア・ケーシング14を備えるキャリパ12によって形成され、リア・ケーシング14内に、液圧ブレーキ・ピストン16が後方から前方につまり
図1の考察では左側から右側に軸A1に沿って軸方向に摺動するように設置される。
【0033】
後方では、ディスク・ブレーキ10がギア付きモータ又は電気機械アクチュエータのグループ17を備え、そのケーシング18が、本明細書で後で詳細に説明されるように、電気モータと、遊星ギア・トレーンを備えるギア付き減速機構とを収容する。
【0034】
ケーシング18がキャリパ12の後方横方向面に接続されてその上に固定され、ケーシング18がその開いた前方端部横方向面20を介してキャリパ12の後方横方向面に対して軸方向に支承し、この固定がここではねじ22によって保証される。
【0035】
キャリパ12のリア・ケーシング14が軸方向液圧キャビティ(axial hydraulic cavity)24を区分し、その中にピストン16が軸A1に沿って軸方向において双方向に緊密に摺動するように設置される。
【0036】
ブレーキ・ピストン16は軸方向において後方が開いている概略円筒形ポット形状の一部分であり、その前方外側横方向面26を介して、関連付けられるディスク(図示せず)を有するブレーキ・パッドと協働することができる。
【0037】
知られているように、チャンバ24への加圧液圧流体の供給物が、キャリパ12のリア・ケーシング14を基準としてピストン16の前方の方に向かう軸方向スラスト力によりブレーキの液圧作動を引き起こす。
【0038】
知られているように、「パーキング」と称されるオペレーション又はさらには非常ブレーキ・オペレーションでのピストン16のこの機械的作動のために、ピストン16及びチャンバ24は、後方駆動ねじ28及び前方軸方向スラスト・ナット30を備えるナット/ねじのグループを収容する。
【0039】
双方向に回転されるように駆動されるために、ねじ28は後方セクション32を備え、この後方セクション32は組み立て位置においてねじ28の回転駆動ヘッドを構成するためにナット12の後方横方向面からアクセス可能である、ねじ28は電気機械アクチュエータ17の移動出力要素によって双方向に回転されるように駆動される。
【0040】
図3A及び
図3Bに見られるように、ケーシング18は内部に2つの主要凹部を区分するプラスチック材料成形部品であり、これらの主要凹部は各々が概略円筒形ポット形状であり、平行な軸A1及びA2を有する。
【0041】
ケーシング18は、配置されて溶接又は接着されるリア・カバー34によって閉じられる。
【0042】
カバー34が定位置に配置される前、2つの凹部36及び38は軸方向の後方が開いている。
【0043】
図3A及び
図3Bの考察では左側である第1の凹部36は遊星ギア・トレーンを収容するために設けられ、この遊星ギア・トレーンの、内部に歯を有する外側太陽ギア40がここでは成形によりケーシング18と一体に形成される。
【0044】
第1の凹部36が環状基部壁42によって軸方向において前方が閉じられる。
【0045】
環状基部壁42は、遊星ギア・トレーンの移動出力要素を通過させるための中央孔44を備える。
【0046】
また、図の考察では右側である第2の凹部38は軸方向において後方が開いており、電気駆動モータ(図示せず)を収容するように設計され、この電気駆動モータの出力ピニオンが第1の凹部36内に収容される遊星ギア・トレーンの太陽ピニオンにギア付き手段(図示せず)により接続される。
【0047】
電気モータを収容する第2の凹部38は基部壁46により軸方向において前方が閉じられる。
【0048】
本発明によるこのデザインのおかけで、
図1に具体的に見られるように、そのケーシング18と併せた電気機械アクチュエータ17の全体デザインが特にコンパクトになり、キャリパの後方横方向面から後方に向かう軸方向長さが短縮され、モータの回転軸A2に沿って軸方向に延在する、電気モータを収容するケーシングの前方軸方向部分の大部分が前方においてナットの後方横方向面を越え且つケーシング14の長さ方向に沿う。
【0049】
組み立て位置での本発明による遊星ギア・トレーン50は次に下記で詳細に説明するように第1の凹部36内に収容される。
【0050】
非限定の実例では、ここでは
図4から
図8に示される遊星ギア・トレーンの遊星キャリア50は、遊星キャリア50の主軸A1を中心として角度的に規則的に分布される4つの遊星ピニオン52を有する遊星ギア・トレーンである。
【0051】
遊星キャリア50は、遊星52を収容してその遊星52を回転可能に担持する概略「ケージ」形態のフレーム54を備える。
【0052】
フレーム54は、基本的に、具体的には前方プレート56及び後方支持プレート58である2つの平行な支持プレートによって形成される。
【0053】
2つの平行な支持プレート56及び58は軸A1に対して垂直な平面内を延在し、軸方向の横材60によって互いに軸方向に接続され、それにより支持プレート56と58との間にスペーサが形成され、これらのスペーサはここではその個数は4つであり、支持プレート56及び58の径方向周囲部のところで角度的に規則的に分布される。
【0054】
横材60は角度方向においてそれらの間に4つの周囲窓62を区分し、それらの各々を通って遊星ピニオン52が径方向に突出して太陽ギア40に嵌合される。
【0055】
遊星キャリアのケージ形態のフレーム54は、例えば、多数の部品で成形されるプラスチック材料で形成される。
【0056】
前方支持プレート56は移動出力ピニオン64を中心で担持し、移動出力ピニオン64は軸方向において前方に向かって突出し、フレーム54に接続される。
【0057】
前方支持プレート56の外側面がケーシング18の凹部36内で遊星キャリア50を中心に配置するための中央環状カラー65を備え、遊星キャリア50は遊星ギア・トレーンの設置位置において基部壁42の孔44内で中心に配置される。
【0058】
外側面はまた、遊星キャリアの前方に向かう方向において、第1の凹部36の基部壁42の内側面に対向する一部分に対して軸方向に支承するための4つのスタッド66を備える。
【0059】
遊星キャリア50の設置位置では、遊星ピニオン52がケーシング18の第1の凹部36の太陽ギア40に嵌合される。
【0060】
前方支持プレート56は、その周囲部の近傍に、角度的に規則的に分布される4つの軸方向貫通孔68を備える。
【0061】
同様に、後方支持プレート58も4つの軸方向貫通孔70を備え、軸方向孔68及び70は対となるように軸方向において位置合わせされる。
【0062】
孔68及び70の内径はここでは等しい。
【0063】
各遊星ピニオン52が、関連付けられる回転ガイド・ピン又はジャーナル74により遊星キャリア50のフレーム54を基準として回転可能に設置されるための内側孔72を備える。
【0064】
各遊星ピニオン52は、関連付けられるガイド・ピン74により2つの前方支持プレート56及び後方支持プレート58に対向する内側面の間のフォーク組立体によりフレーム54を基準として設置され、関連付けられるガイド・ピン74は位置合わせされる孔68及び70の対及び遊星ピニオン52の内側孔72を通るように軸方向に延在する。
【0065】
本発明によると、各ピン74は、一定の径方向厚さを有する鋼管の1セクションから形成される管状要素である。
【0066】
図の、特には
図9Aに見られるように、各管状ピン74は、その後方軸方向端部に、径方向外向きに延在するカラー76を備える。
【0067】
カラー76は、組み立て位置において、フレーム54を基準として管状軸74の軸方向位置を決定するストップ・カラーである。
【0068】
この目的のために、ストップ・カラー76の前面77が、後方支持プレート58の外側面78に対向する一部分に対して軸方向前方に向かって支承する。
【0069】
各管状ピン74の前方軸方向外側セクションが前方支持プレート56の関連付けられる孔68を通って軸方向に延在し、その結果、上記ピンの前方軸方向端部82が、関連付けられる孔68を囲む前方支持プレート56の外側面80を越えて軸方向に突出するようになる。
【0070】
各管状ピン74は、フレーム54を基準として軸方向において固定化されるために、ここでは、その前方軸方向端部82の4つの押し付け部分84によって固定される。
【0071】
各押し付け部分84は押し付けツール(図示せず)を用いる塑性変形によって作られ、外側表面80に対向する一部分に対向して延在するように径方向外側に変形される。
【0072】
各管状ピン74は、その管状のデザインのおかげで、中実の金属回転ガイド・ピン又はジャーナルと比較すると、荷重下で一時的に弾性変形する能力を有することになり、それにより、減速機構及び特には遊星ギア・トレーンの構成要素に加えられる荷重の衝撃及び特にはトルクの衝撃を吸収するための弾性変形可能手段が構成される。
【0073】
遊星キャリア50の様々な構成要素は以下のようにして組み立てられるか又は設置される。
【0074】
各遊星ピニオン52が、上記ピニオンの内側孔72を位置合わせされる孔68及び70の対に位置合わせすることにより、窓62を通してフレーム54の径方向内側に導入される。
【0075】
次いで、
図9Aに示されるその初期配置で、管状ピン74が挿入され、ここでは、その前方軸方向端部82は、孔70と、孔72と、孔68を通して継続的に軸方向において平坦であり、変形されていない。
【0076】
その管状回転ガイド・ピン74を用いて遊星ピニオン52を設置して組み立てるオペレーションは、変形された押し付け部分84を作ることを目的として押し付けオペレーションを実施することによって完了し、それにより、この押し付けオペレーションにより管状ピン74が変形することが一切なくなり、それにより具体的には、上記ピンの中央セクションの周囲表面75が、関連付けられる遊星ピニオン52を回転可能に誘導するためのその円筒度を維持する。
【0077】
本発明はすぐ上で説明した実施例のみに限定されない。
【0078】
一変形形態(図示せず)では、遊星ピニオンの数は4つ以外であってもよい。
【0079】
同様に、押し付け部分84の数も4つ以外であってもよい。
【0080】
各管状ピンの荷重下での弾性変形特性及び吸収特性を得るために、各管状ピンは、一変形形態(図示せず)では、エラストマ材料で例えば作られる弾性変形可能要素で充填されてもよい。
【0081】
同様の目的のために、各管状回転ガイド・ピンは、「コンパウンド」マウンティング(compound mounting)と称される2つの管状部品を同心に設置する形態で作られ得、ここでは、管状要素の内側管は連続的であっても軸方向において分割されてもよい。
【0082】
また、本発明は、遊星キャリアのフレームを基準として各管状ガイド・ピンを設置して軸方向に固定化及び回転方向に固定化するための、すぐ上で説明して示した手段のみに限定されない。
【0083】
例えば、押し付け部分84が、金属スピニングによって形成される、径方向カラー76に類似する径方向カラーに置き換えられてもよい。
【0084】
寸法及び力に応じて、各管状ピン74は、その2つの対向する軸方向端部セクションを2つの前方支持プレート及び後方支持プレートの関連付けられる孔の中に圧着することにより、軸方向において固定されて固定化されてもよい。
【0085】
本発明の範囲から逸脱することなく、各前方支持プレート及び/又は後方支持プレートは「中実」でなくてもよく、例えば、星形状となるように構成される径方向アームを有する構造の形態で作られてもよい。
【0086】
例えば、図に示されない実施例では、各管状ピン74は有利には鋼で作られ、例えば鋼板で作られ、好適にはXES又はXSで作られ、或いは有利には、ばね鋼、例えば鋼XC70で作られる。
【0087】
成形プラスチック材料で作られるフレーム54を実装することにより、好適には機械加工に頼ることなく、遊星を確実に正確に位置決めすることが可能となる。
【0088】
2つの平行な支持プレート56及び58は有利には単一の成形部品を形成し、それにより精度がさらに向上し、その結果としてギア付きモータのグループの機械的な収率もさらに向上する。
【0089】
図10に示される実例では、フレーム54が位置合わせされる孔68及び/又は70の対に向かう通路90を備え、上記通路の幅は管状ピン74の外形未満であり、それにより、弾性嵌合(elastic fitting)により、つまり、各ピン74を径方向に導入するときに通路90の縁部を弾性変形させることにより、フレーム54の軸A1に対して垂直に管状ピン74を強制的に導入することが可能となる。
図10に示される実例では、遊星のうちの3つの遊星が定位置であり、対して、1つの遊星はまだその機能的位置に導入されていない。
【0090】
径方向に嵌合して設置することが可能であることにより、押し付け部分84を押し付けることによりピン74/ピニオン52の各サブアセンブリを予め作っておくことが可能となる。