【実施例】
【0050】
実施例1.キノリン酸を生産する菌株作製
1−1.キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ除去菌株の作製
大腸菌K12 W3110の染色体DNAをテンプレートにしたPCRを介して、キノリン酸分解経路のnadC遺伝子を得た。アメリカ国立保健院の遺伝子銀行(NIH GenBank)から、nadC遺伝子の塩基配列情報(NCBI登録番号「GI:89106990」)を得て、nadC塩基配列11に基づいて、nadC遺伝子の下流(downstream)部分を増幅する配列番号12及び13のプライマー、nadCの上流(upstream)及び下流部分とloxpCmとを増幅する配列番号14及び15のプライマー、上流部分を増幅する配列番号16及び17のプライマーを合成した。
【0051】
大腸菌K12 W3110の染色体DNAをテンプレートにして、配列番号12及び13オリゴヌクレオチド、並びに16及び17のオリゴヌクレオチドをプライマーにしてPCRを行い、それぞれ0.5kb及び0.3kbのnadC遺伝子の上流部分及び下流部分を増幅した。また、loxpCmを含んでいるプラスミドベクターpLoxpCat2ベクター(Genbank Accession No.AJ401047)をテンプレートにして、配列番号14及び15のオリゴヌクレオチドをプライマーにしてPCRを行い、1.0kbの両末端に、nadC遺伝子と相同配列を有するloxpCm遺伝子を増幅した。重合酵素は、PfuUltra
TM DNAポリメラーゼ(Stratagene社、米国)を使用し、PCRは、96℃で30秒の変性、53℃で30秒のアニーリング、及び72℃で1分の伸張で構成されたサイクルを30回反復して行った。
【0052】
その後、前記のPCR反応を介して得られたnadC−上流切片、nadC−下流切片、loxpCm切片をテンプレートにしてPCRを行い、PCR条件は、96℃での60秒の変性、50℃での60秒の変性、及び72℃での1分の伸張で構成されたサイクル10回、及び配列番号12及び17のプライマー添加後サイクル20回であった。その結果、1.8kbのnadC遺伝子上流−loxpCm−下流を含んだnadC欠損カセットを獲得した。
【0053】
作製されたnadC欠損カセットをラムダレッド組み換え酵素(lambda red recombinase)発現ベクターであるpKD46を含んだ大腸菌K12 W3110上において、電気穿孔を介して形質転換させ、選別マーカーであるクロラムフェニコールが含有されたLB(Luria-Bertani)平板培地(トリプトン10g/L、酵母抽出物5g/L、NaCl 10g/L及びアガール1.5%)上に塗抹し、37℃で一晩中培養した後、クロラムフェニコールに対する耐性を示す菌株を選別した。
【0054】
選別された菌株を直接テンプレートにし、配列番号13及び16のプライマーを利用して、同じ条件でPCRを行った後、1.0%アガロースゲル上で、遺伝子の大きさが、野生菌株の場合、1.6kbであり、nadC除去菌株の場合、1.3kbであるということを確認することにより、nadC遺伝子の欠失を確認した。それをW3110−ΔnadCと命名した。
【0055】
また、前述のところと同一方法で、K12 MG1655菌株を基にnadC遺伝子を欠失させ、それをMG1655−ΔnadCと命名した。
【0056】
1−2.KefA除去菌株の作製
米国国立保健院の遺伝子銀行(NIH GenBank)から、配列番号10のkefA遺伝子の塩基配列(NCBI登録番号「GI::89107872」)を得て、それに基づいて、kefA遺伝子の下流部分を増幅する配列番号2及び3のプライマー、kefAの上流部分及び下流部分、とFRT−KMとを増幅する配列番号4及び5のプライマー、上流部分を増幅する配列番号6及び7のプライマーを合成した。
【0057】
大腸菌W3110の染色体DNAをテンプレートにして、配列番号2及び3プライマー、並びに6及び7のプライマーを利用してPCRを行い、それぞれ0.8Kb及び0.6KbのkefA遺伝子の上流部分及び下流部分を増幅した。また、FRT−Kmを含むpKD4ベクターをテンプレートにして、配列番号4及び5のオリゴヌクレオチドをプライマーにしてPCRを行い、1.4Kbの両末端に、kefAと相同配列を有するFRT−Km遺伝子を増幅した。重合酵素は、PfuUltra
TM DNAポリメラーゼ(Stratagene)を使用し、PCRは、96℃で30秒の変性、53℃で30秒のアニーリング、及び72℃で2分の伸張で構成されたサイクルを30回反復して行った。その後、前記のPCR反応を介して得られたkefA−上流切片、kefA−下流切片、FRT−Km切片をテンプレートにしてPCRを行い、PCR条件は、96℃での60秒の変性、50℃での60秒の変性、及び72℃での2分の伸張で構成されたサイクル10回、及び配列番号6及び7のプライマー添加後サイクル20回であった。その結果、2.6kbのkefA上流−FRT−Km−kefA下流を含んだkefA除去カセットを獲得した。
【0058】
作製されたkefA除去カセットを、ラムダレッド組み換え酵素(lambda red recombinase)発現ベクターであるpKD46を含んだ大腸菌W3110−ΔNadC上において、電気穿孔を介して形質転換させ、選別マーカーであるカナマイシンが含有されたLB(Luria-Bertani)平板培地(トリプトン10g/L、酵母抽出物5g/L、NaCl 10g/L及びアガール1.5%)上に塗抹し、37℃で一晩中培養した後、カナマイシンに対する耐性を示す菌株を選別した。選別された菌株を直接テンプレートにし、配列番号8及び9のプライマーを利用して、前記のような条件でPCRを行った後、1.0%アガロースゲル上で、遺伝子の大きさが野生菌株の場合、4.2kbであり、kefA除去菌株の場合、1.5kbであるということを確認することにより、kefA遺伝子の欠失を確認した。かように作製された菌株をW3110−ΔnadCΔkefAと命名した。
【0059】
また、前記作製されたkefA除去カセットを利用して、同一方法で、MG1655−ΔnadC菌株において、kefA遺伝子を欠失させ、それをMG1655−ΔnadCΔkefAと命名した。
【0060】
1−3.大腸菌L−アスパラギン酸酸化酵素発現用プラスミドの作製
大腸菌由来の野生型L−アスパラギン酸酸化酵素をコーディングするnadB遺伝子を、発現ベクターにクローニングした。そのために、テンプレートとしては、大腸菌K12 W3110菌株(ATCC No.23257)の染色体を使用した。遺伝子配列は、米国国立保健院の遺伝子銀行(NIH GenBank)から、配列番号18の遺伝子の塩基配列(NCBI登録番号「GI:89109380」)を活用した。nadB遺伝子のORF部分を増幅し、制限酵素認識部位NdeIと制限酵素認識部位BamHIを有する配列番号19及び20のプライマーを合成した。
【0061】
前記大腸菌K12 W3110の染色体DNAをテンプレートとして、配列番号19及び20のオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用してPCRを行った。重合酵素は、PfuUltra
TM DNAポリメラーゼ(Stratagene社、米国)を使用し、PCRは、96℃で30秒変性、50℃で30秒アニーリング及び72℃で2分の伸張で構成されたサイクルを30回反復して遂行した。PCRを介して、nadBORF遺伝子と、制限酵素NdeI及び制限酵素BamHIの認識部位とを含んだ約1.9kbの増幅された遺伝子を得た。
【0062】
前記PCRを介して得られたnadB遺伝子は、アガロースゲル溶出(agarose gel elution)を介して回収した後、制限酵素NdeI及び制限酵素BamHIで処理した。その後、制限酵素NdeI及び制限酵素BamHIで処理したpProLar(CloneTech社、米国)ベクターに接合(ligation)し、pProプローモーターに連結されたnadB遺伝子から、L−アスパラギン酸酸化酵素が発現されるようにした。前記の方法によって作製されたベクターをpPro−nadBベクターと命名した。
【0063】
1−4.アスパラギン酸酸化酵素及びキノリン酸シンターゼ発現用プラスミド作製
(1)pPro−nadB_pCysK−nadAベクター作製
まず、大腸菌W3110の染色体DNAをテンプレートにしたPCRを介して、キノリン酸シンターゼをコーディングする遺伝子nadAを得た。米国国立保健院の遺伝子銀行(NIH GenBank)から、配列番号21のnadA遺伝子の塩基配列情報(NCBI登録番号「GI:89107601」)を活用した。それに基づいて、nadA遺伝子のATG部分と、TAAを含むORF部分とを増幅し、制限酵素ApaI及び制限酵素NotIの認識部位を有する配列番号22及び23のプライマーを合成した。
【0064】
大腸菌W3110の染色体DNAをテンプレートにして、前記配列番号22及び23のオリゴヌクレオチドをプライマーにしてPCRを行った。重合酵素は、PfuUltra
TM DNAポリメラーゼ(Stratagene社、米国)を使用して、PCRは、96℃での30秒の変性、50℃での30秒のアニーリング、及び72℃での2分の伸張から構成されたサイクルを30回反復して遂行した。その結果、nadA遺伝子と、制限酵素ApaI及び制限酵素NotIの認識部位とを含んだ約1.0kbの増幅された遺伝子を獲得した。
【0065】
また、大腸菌W3110の染色体DNAをテンプレートにしたPCRを介して、cysKプローモーターを得た。米国国立保健院の遺伝子銀行(NIH GenBank)から、cysK遺伝子の上流0.3kb内に位置したプローモーターの塩基配列情報を得て(配列番号24)、それに基づいて、cysKプローモーターと、前述のところにおいて増幅されたnadA遺伝子とを接合させるために、制限酵素BamHIと制限酵素ApaIとの認識部位を有する配列番号25及び26のプライマーを合成した。
【0066】
大腸菌W3110の染色体DNAをテンプレートにして、前記配列番号25及び26のオリゴヌクレオチドをプライマーにしてPCRを行った。重合酵素は、PfuUltra
TM DNAポリメラーゼ(Stratagene)を使用し、PCR条件は、96℃で30秒の変性、50℃で30秒のアニーリング、及び72℃で1分の伸張で構成されたサイクルを30回反復した。その結果、cysKプローモーターと、制限酵素BamHI及び制限酵素ApaIとを含んだ約0.3kbの増幅された遺伝子を獲得した。
【0067】
前記PCRを介して獲得したnadA遺伝子を、制限酵素ApaI及び制限酵素NotIで処理し、増幅されたcysKプローモーター切片を、ApaI及びBamHIで処理した。制限酵素で処理したnadA及びcysKプローモーターの切片を制限酵素NotI及び制限酵素BamHIで処理した前記1−2で得たpPro−nadBベクターに、接合を介してクローニングし、最終的に、構成的プローモーターであるpProプローモーターによって発現調節を受けるnadB遺伝子、及びcysK遺伝子プローモーターによって発現調節を受けるnadA遺伝子がクローニングされた5.9KbのpPro−nadB_pCysK−nadAベクターを作製した。
【0068】
(2)pPro−nadB_pCJ1−nadAベクター作製
キノリン酸生合成過程において、最も末端にあるキノリン酸シンターゼをコーディングするnadA遺伝子の発現をさらに強化させるために、前記のpCysKプローモーターの代わりに、K12 W3110において活性がさらに強いpCJ1プローモーターを利用した。韓国特許公開公報KR2006−0068505Aを基に、pCJ1プローモーターを含んだプラスミドをDNAをテンプレートにしたPCRを介して、pCJ1プローモーターを得た。pCJ1プローモーターと、前述のところで増幅されたnadA遺伝子とを接合させるために、制限酵素BamHI及び制限酵素ApaIの認識部位を有する配列番号27及び28のプライマーを合成した。
【0069】
大腸菌W3110の染色体DNAをテンプレートにして、前記配列番号27及び28のオリゴヌクレオチドをプライマーにしてPCRを行った。重合酵素は、PfuUltra
TM DNAポリメラーゼ(Stratagene)を使用し、PCR条件は、96℃での30秒の変性、50℃での30秒のアニーリング、及び72℃での1分の伸張で構成されたサイクルを30回反復した。その結果、pCJ1プローモーターと、制限酵素BamHI及び制限酵素ApaIを含んだ約0.3kbの増幅された遺伝子を獲得した。
【0070】
前記PCRを介して獲得したnadA遺伝子を、制限酵素ApaI及び制限酵素NotIで処理し、増幅されたpCJ1プローモーター切片を、ApaI及びBamHIで処理した。前記制限酵素で処理したnadA及びpCJ1プローモーターの切片を、制限酵素NotI及び制限酵素BamHIで処理した前記1−2で得られたpPro−nadBベクターに、接合を介してクローニングし、最終的に、構成的プローモーターであるpProプローモーターによって発現調節を受けるnadB遺伝子と、pCJ1遺伝子プローモーターによって発現調節を受けるnadA遺伝子とがクローニングされた5.9KbのpPro−nadB_pCJ1−nadA組み換えベクターを作製した。
【0071】
実施例2.キノリン酸生産菌株の生成能評価
2−1.キノリン酸生産菌株の生産能力の比較のための力価確認
キノリン酸生産能を評価するために、nadB、nadAが強化されたプラスミドを、W3110−ΔnadC,MG1655−ΔnadC菌株にそれぞれ導入した。導入方法は、CaCl
2方法を利用して形質転換し、37℃の培養器で、LB−Km(酵母抽出物10g/L、NaCl5g/L、トリプトン10g/L、アガール1.5%、カナマイシン50μg/L)平板培地に塗抹し、一晩中培養した。その後、カナマイシン耐性を有する得られた単一コロニーを、25mLのキノリン酸力価培地に1白金耳ずつ接種し、33℃で250rpmで、24ないし72時間培養した。下記表1は、キノリン酸生産用培地の組成を示している。
【0072】
【表1】
【0073】
培養液中のキノリン酸をHPLCで分析し、その結果を下記表2に示した。それは、菌株のキノリン酸生成能を示している。表2から確認することができるように、キノリン酸基盤菌株及びnadBAの発現程度によって、キノリン酸生産の差を確認した。特に、pCysKプローモーターより発現強度が強いpCJ1において、nadA遺伝子発現を強化させた場合、大腸菌K12野生型基盤のW3110−ΔnadC及びMG1655−ΔnadCにおいて、キノリン酸の生産が大きく増加するということを確認した。
【0074】
【表2】
【0075】
2−2.KefA除去菌株キノリン酸生成能の評価
kefA除去菌株のキノリン酸生成能を比較するために、前記1−4で作製されたW3110−ΔnadCΔkefA,MG1655−ΔnadCΔkefA菌株を、それぞれpPro−nadB_pCJ1−nadAプラスミドにおいて、CaCl
2方法を利用して形質転換した。形質転換された前記各菌株を、37℃の培養器において、LB−Km(酵母抽出物10g/L、NaCl5g/L、トリプトン10g/L、アガール1.5%、カナマイシン50μg/L)平板培地に塗抹し、一晩中培養した。その後、カナマイシン耐性を有するコロニーを得た単一コロニーを、25mLのキノリン酸力価培地(表1)に、1白金耳ずつ接種し、33℃で250rpmで、24ないし72時間培養した。
【0076】
培養液中のキノリン酸をHPLCによって分析し、結果を表3に示した。下記表3に表示されているように、kefA除去菌株において、対照群対比でキノリン酸濃度が上昇し、特に、野生型菌株基盤において、kefA欠損によるキノリン酸濃度上昇が15%以上レベルであると確認された。
【0077】
【表3】
【0078】
2−3.KefA活性低下効果の確認
(1)KefA開始コドン(start codon)置換プラスミド作製
キノリン酸生産菌株において、KefAの弱化効果を確認するために、kefAが弱化されたプラスミドを作製した。遺伝子配列は、米国国立保健院の遺伝子銀行(NIH GenBank)の配列番号10の遺伝子の塩基配列(NCBI登録番号「GI::89107872」)を活用した。kefA開始コドンを、ATGからTTGに変異させ、kefA遺伝子のORF部分を増幅し、制限酵素認識部位blunt及び制限酵素認識部位BamHIを有する配列番号32及び33のプライマーを合成した。また、kefA遺伝子の自家プローモーター部位を増幅し、制限酵素認識部位SacI及び制限酵素認識部位bluntを有する配列番号34及び35のプライマーを合成した。
【0079】
大腸菌K12 W3110菌株(ATCC No.23257)の染色体DNAをテンプレートにして、配列番号32及び33のオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用してPCRを行った。重合酵素は、PfuUltra
TM DNAポリメラーゼ(Stratagene)を使用し、PCRは、96℃で30秒変性、50℃で30秒アニーリング及び72℃で30秒の伸張で構成されたサイクルを30回反復して行った。PCRを介して、kefAORF部位と、制限酵素BamHIの認識部位とを含んだ約0.15kbの増幅された遺伝子を得た。
【0080】
また、K12 W3110染色体DNAをテンプレートとして、配列番号34及び35のオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用してPCRを行った。重合酵素は、PfuUltra
TM DNAポリメラーゼ(Stratagene)を使用し、PCRは、96℃で30秒変性、50℃で30秒アニーリング及び72℃で30秒の伸張で構成されたサイクルを30回反復して行った。PCRを介して、kefA自家プローモーター部位と、制限酵素SacIIの認識部位とを含んだ約0.15kbの増幅されたpKefAプローモーターを得た。
【0081】
前記PCRを介して得られたkefAORF部位とpKefAプローモーターは、アガロースゲル溶出(agarose gel elution)を介して回収した後、それぞれBamHI制限酵素及びSacI制限酵素で処理した。その後、制限酵素BamHI及び制限酵素SacIで処理したpSG76C(J. Bacteriol. 179 (13), 4426-4428 (1997),NCBI genebank Y09892)ベクターに接合(ligation)した。
【0082】
それを介して、自家プローモーターを有しながら、開始コドンがATGからTTGに置換されたkefAORF部位を有したベクターを作製し、pSG76C_kefA*(ATG→TTG)ベクターと命名した。
【0083】
(2)kefA開始コドン置換菌株の作製、及びキノリン酸生成能の評価
前記(1)で作製されたpSG76C_kefA*(ATG→TTG)ベクターを、大腸菌W3110−ΔNadC上において、電気穿孔を介して形質転換させ、選別マーカーであるクロラムフェニコールが含有されたLB(Luria-Bertani)平板培地(トリプトン10g/L、酵母抽出物5g/L、NaCl 10g/L及びアガール1.5%)上に塗抹し、37℃で一晩中培養した後、クロラムフェニコールに対する耐性を示す菌株を選別した。選別された菌株を直接テンプレートにして、配列番号33及び34のプライマーを利用して、同じ条件でPCRを行った後、1.0%アガロースゲル上において、0.30kbサイズのPCR産物を獲得し、シーケンシングを介して、kefAの開始コドンがATGからTTGに置換された菌株を最終的に選別した。それを、W3110−DnadC_kefA*(ATG→TTG)と命名した。
【0084】
また、前記pSG76C_kefA*(ATG→TTG)ベクターを利用して、同一方法で、MG1655−ΔnadCを形質転換させ、kefAの開始コドン置換を確認し、それを、MG1655−ΔnadC_kefA*(ATG→TTG)と命名した。
【0085】
それぞれ形質転換された菌株のキノリン酸の生成能を比較するために、下記表4の菌株のクロラムフェニコール耐性を有する得られた単一コロニーを、25mLのキノリン酸力価培地(表1)に1白金耳ずつ接種し、33℃で250rpmで、24ないし72時間培養した。培養液中のHPLCによるキノリン酸分析結果を、表4に示した。結果として、kefA弱化菌株、すなわち、kefAの開始コドンが置換された菌株が生産したキノリン酸濃度が、対照群対比で10%レベル上昇した。
【0086】
【表4】
【0087】
実施例3.kefA除去菌株kefA及び強化菌株のキノリン酸敏感性の評価
3.1 キノリン酸生産菌株のキノリン酸に対する敏感性評価
前述のキノリン酸生産能評価結果を基に、KefA除去が、外部のキノリン酸の細胞内部への再流入を弱化させ、キノリン酸の生産能が上昇したと予測した。それに基づいて、kefA除去菌株とkefA強化菌株とのキノリン酸敏感性を評価した。
【0088】
まず、生産菌株に生育低下を起こすように、KOHでPH7.0で、適正な13g/Lキノリン酸添加有無による影響性を把握した。そのために、キノリン酸生産菌株の単一コロニーを、25mLのLB+1%グルコース(酵母抽出物10g/L、NaCl 5g/L、トリプトン10g/L、カナマイシン50μg/L、10g/Lグルコース)液体培地に1白金耳ずつ接種し、37℃で250rpmで、16ないし24時間培養し、OD600、消耗糖及び残存キノリン酸を測定した。
【0089】
【表5】
【0090】
前記の表5から分かるように、追加して培地にキノリン酸を添加した場合、細胞内部にキノリン酸が流入されながら、生育及び糖消耗速度が40%レベル低下するということを確認した。
【0091】
それにより、前記操作したnadCが欠損され、nadBAが強化された、W3110ΔnadCΔkefAに対するpPro−nadB_pCJ1−nadAプラスミド導入菌株を、ブダペスト条約下で、2013年11月07日付けで、韓国微生物保存センター(KCCM)に寄託し、寄託番号KCCM11470Pを受けた。
【0092】
3.2 kefA除去菌株kefA及び強化菌株のキノリン酸に対する敏感性評価
(1)KefAタンパク質の過発現ベクター作製
大腸菌由来のkefA遺伝子を過発現するベクターを作製するために、テンプレートとしては、大腸菌K12 W3110菌株(ATCC No23257)の染色体をテンプレートとして利用し、遺伝子配列は、米国国立保健院の遺伝子銀行(NIH GenBank)の配列番号10の遺伝子塩基配列(NCBI登録番号「GI::89107872」)を活用した。kefA遺伝子のORF部分を増幅し、制限酵素認識部位EcoRV及び制限酵素認識部位HindIIIを有する配列番号36及び37のプライマーを合成した。
【0093】
前記大腸菌K12 W3110の染色体DNAをテンプレートとして、配列番号36及び37のオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用してPCRを行った。重合酵素は、PfuUltra
TM DNAポリメラーゼ(Stratagene)を使用し、PCRは、96℃で30秒変性、50℃で30秒アニーリング及び72℃で2分の伸張で構成されたサイクルを30回反復して行った。PCRを介して、kefAORF遺伝子と、制限酵素EcoRV及び制限酵素HindIIIの認識部位とを含んだ約3.3kbの増幅された遺伝子を得た。
【0094】
前記PCRを介して得られたkefA遺伝子は、アガロースゲル溶出(agarose gel elution)を介して回収した後、制限酵素EcoRV及び制限酵素HindIIIで処理した。その後、制限酵素EcoRV及び制限酵素HindIIIで処理したpCL1920_pRhtBベクターに接合(ligation)した。それを介して、pRhtBプローモーターに連結されたkefA遺伝子から発現されるようにした。前記の方法によって作製されたベクターを、pCL_pRhtB−kefAベクターと命名した。
【0095】
(2)KefA除去菌株、及びKefA強化菌株キノリン酸敏感性の評価
KefA膜タンパク質が、キノリン酸流入に影響を及ぼすか否かということを把握するために、前記の2−4.(1)の方法と同一方法で、kefA遺伝子の除去菌株と強化菌株とのキノリン酸敏感性評価を行った。
【0096】
【表6】
【0097】
前記表6から分かるように、LB液体培地上でも、kefA遺伝子を強化させた場合、キノリン酸生産菌株の生育及び糖消耗速度が、W3110−ΔnadCにnadBA遺伝子が強化された対照群菌株対比で40%レベル顕著に低減し、キノリン酸生産も、全くないということを確認した。また、培地に追加してキノリン酸を添加した条件で、kefA除去菌株の場合、対照群菌株対比で、生育及び糖消耗速度が110%レベル向上し、kefA強化菌株は、対照群菌株対比で、生育及び糖消耗速度が50%レベル低下した。
【0098】
前記結果を介して、KefA膜タンパク質が、細胞内部でキノリン酸流入に関与すると判断される。また、kefA除去によって、キノリン酸生産菌株のキノリン酸に対する敏感性が低くなり、同時にキノリン酸生産増加までなされるということを確認した。