特許第6491341号(P6491341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491341
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】テキスタイル印刷
(51)【国際特許分類】
   G03G 8/00 20060101AFI20190318BHJP
   D06B 1/00 20060101ALI20190318BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20190318BHJP
   C09D 11/10 20140101ALI20190318BHJP
   C09D 133/08 20060101ALI20190318BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20190318BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20190318BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20190318BHJP
   D06C 23/00 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   G03G8/00
   D06B1/00
   C09D201/00
   C09D11/10
   C09D133/08
   C09D175/04
   B32B27/12
   B32B27/16 101
   D06C23/00
【請求項の数】15
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-538350(P2017-538350)
(86)(22)【出願日】2015年4月7日
(65)【公表番号】特表2018-510973(P2018-510973A)
(43)【公表日】2018年4月19日
(86)【国際出願番号】EP2015057514
(87)【国際公開番号】WO2016162052
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2017年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】596097844
【氏名又は名称】エイチピー・インディゴ・ビー・ブイ
【氏名又は名称原語表記】HP Indigo B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】オル−チェン,ダフナ
(72)【発明者】
【氏名】ロン,ハノッチ
(72)【発明者】
【氏名】エイアル,ジョセフ
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−139900(JP,A)
【文献】 特開2009−256553(JP,A)
【文献】 特開平11−295915(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0012799(US,A1)
【文献】 特開2003−089756(JP,A)
【文献】 特開平10−018166(JP,A)
【文献】 特開2008−255522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06B 1/00− 23/30
D06C 3/00− 29/00
D06G 1/00− 5/00
D06H 1/00− 7/24
D06J 1/00− 1/12
B32B 1/00− 43/00
C09D 1/00− 10/00
101/00−201/10
G03G 8/00
B41J 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テキスタイル上に洗濯耐性のあるイメージを印刷する方法であって、
液体電子写真インクを用いてテキスタイル基材上にイメージを電子写真的に印刷し、
印刷された電子写真インクに対してポリマーおよび架橋剤を含有するコーティング組成物を適用し、そして
適用されたコーティング組成物を架橋することを含有する方法。
【請求項2】
液体電子写真インクが:
着色剤、
酸性ポリマー樹脂、
チャージアジュバント、
チャージディレクタ、および
液体キャリア
を含む、請求項の方法。
【請求項3】
ポリマーコーティングが水性ポリマー溶液または分散液として適用される、請求項1または2の方法。
【請求項4】
ポリマーコーティングが架橋性部分を有するポリマーを含む、請求項1からのいずれか1の方法。
【請求項5】
ポリマーコーティングが−CNおよび/またはカルボキシル基を有するポリマーを含む、請求項1からのいずれか1の方法。
【請求項6】
ポリマーコーティングがアクリル系ポリマーまたはポリウレタン系ポリマーから選択されるポリマーを含む、請求項またはの方法。
【請求項7】
ポリマーがスチレンアクリルポリマーまたはポリウレタンポリマーである、請求項の方法。
【請求項8】
ポリマーコーティングが熱および/またはUVに対する曝露によって架橋される、請求項1からのいずれか1の方法。
【請求項9】
テキスタイル基材が電子写真印刷に先立ってプライマーポリマーコーティングで処理される、請求項1からのいずれか1の方法。
【請求項10】
プライマーポリマーコーティングがヘテロ原子含有基を有するプライマーポリマーを含む、請求項の方法。
【請求項11】
プライマーポリマーがエチレンアクリル酸、ポリエチレンイミン、およびポリアミド樹脂から選択される、請求項10の方法。
【請求項12】
テキスタイル基材が合成テキスタイル基材である、請求項1から11のいずれか1の方法。
【請求項13】
テキスタイル基材、
基材上に電子写真的に印刷された印刷液体インク層、および
電子写真的に印刷されたインク層上に堆積された架橋ポリマーコーティング
を含む、洗濯耐性のある印刷されたテキスタイル。
【請求項14】
テキスタイル基材がその上に堆積されたプライマーポリマーコーティングを含み、そして電子写真的に印刷された液体インク層がプライマーを有する基材上に印刷されている、請求項14の洗濯耐性のある印刷されたテキスタイル。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか1の方法によって得られる、洗濯耐性のある印刷されたテキスタイル。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
ゼログラフィー(静電写真)印刷または電子写真印刷は典型的には、感光性表面上にイメージを生成し、帯電した粒子を有するインクを感光性表面に対して適用して帯電粒子がイメージに対して選択的に結合するようにし、次いで帯電粒子をイメージの形で印刷基材へと転写することを包含している。
【0002】
「乾式」のゼログラフィーにおいては、静電イメージが感光性ドラムまたはベルト上に生成される。イメージは顔料着色された乾燥パウダーまたはトナーを用いて現像され、次いで基材、典型的には紙へと転写される。次いでイメージが、基材表面上の乾燥パウダーのトナーが粉末として適用された個所において、基材上へと溶融される。トナーは次いで、トナーを基材に対して融着するように溶融し、イメージを形成する。「湿式」のゼログラフィーでは、キャリア液体中に帯電トナー粒子を含む静電インク組成物を、選択的に帯電された感光性表面に対して接触させることができる。帯電したトナー粒子は潜像イメージ中のイメージ領域に対して付着するが、バックグラウンド領域はきれいなままである。イメージは次いで、次いでイメージは印刷基材(例えば紙)に対して直接に転写され、またはより一般的には、軟質の膨潤ブランケットでありうる中間転写部材にまず転写され、次いで印刷基材へと転写される。
【0003】
電子写真印刷は一般に、イメージを紙のような基材上に印刷するために使用されている。
【0004】
テキスタイル印刷(捺染)は、布帛に対して色を、例えば明確な模様やデザインでもって適用するための方法である。色は典型的には繊維に結合され、洗浄や摩擦に抵抗する。印刷時には、木製のブロック、ステンシル、凹版、ローラー、またはスクリーンを用いて、布帛に対して色を配置することができる。スクリーン印刷は、今日最も一般的な技術の一つである。二つの種類が存在している:ロータリースクリーン印刷およびフラット(ベッド)スクリーン印刷である。ブレード(スキージ)が印刷用ペーストをスクリーンの開口部を介して、布帛上へと押しつける。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本開示について開陳し記述するに先立って理解されるべきことは、本開示が本書に開示された特定のプロセス工程や物質に限定されるものではないということである。というのは、そうしたプロセス工程や物質は幾らか変更されてよいからである。またやはり理解されるべきことは、本書において使用される術語は、特定の実施形態を記述する目的で使用されているということである。範囲は添付の請求項およびそれらの均等物によって限定されることを意図したものであるから、用語は限定的であることを意図したものではない。
【0006】
本明細書および添付の請求項で用いられるところでは、「一つの」、「ある」、および「その」といった単数形は、文脈が明らかに別のことを示しているのでない限り、複数の指示対象をも含んでいることが留意される。
【0007】
本書で使用するところでは、「キャリア流体」、「キャリア液体」、「キャリア」または「キャリアビヒクル」は、ポリマー、粒子、着色剤、チャージディレクタ、および他の添加剤を分散させて、液体静電組成物、ゼログラフィー組成物または電子写真組成物を形成することのできる、流体のことを参照している。キャリア液体は、界面活性剤、共溶媒、粘度調節剤、および/または他の考えられる成分といった、種々の異なる剤の混合物を含んでよい。
【0008】
本書で使用するところでは、「電子写真組成物」または「ゼログラフィー組成物」は、液状形態または粉末形態であってよい組成物を参照するものであり、これは典型的には、電子写真印刷プロセスで使用するのに適しており、また顔料を使用しない。電子写真組成物は、樹脂の帯電可能な粒子を含んでいてよい。
【0009】
本書で使用するところでは、「コポリマー」は、少なくとも二つのモノマーから重合されたポリマーを参照している。
【0010】
本書で使用するところでは、「メルトフローレート」は一般に、特定の温度および負荷において規定の大きさのオリフィスを介して樹脂が押し出される速度(流動性)を参照しており、通常は温度/負荷、例えば190℃/2.16kgのように報告される。流動性は、材料のグレードを差別化し、または成形の結果としての材料の劣化の尺度をもたらすために使用可能である。本開示において、「メルトフローレート」は当技術分野で既知の、ASTMD1238−04cの押し出し式プラストメーターによる熱可塑性樹脂のメルトフローレートの標準試験法に従って測定される。特定のポリマーのメルトフローレートが特定された場合、特に明記しない限り、それは静電組成物の他の成分のいずれをも含まない、そのポリマー単独でのメルトフローレートである。
【0011】
本書で使用するところでは、「酸性度」、「酸価数」または「酸価」は、材料の1グラムを中和するのに要する水酸化カリウム(KOH)の質量をミリグラムで参照している。ポリマーの酸性度は標準的な技法によって、例えばASTMD1386に記載のようにして測定可能である。特定のポリマーの酸性度が特定された場合、特に明記しない限り、それは静電組成物の他の成分のいずれをも含まない、そのポリマー単独での酸性度である。
【0012】
本書で使用するところでは、「溶融粘度」は一般に、所与の剪断応力または剪断速度における、剪断速度に対する剪断応力の比を参照する。試験は一般的に、キャピラリーレオメーターを用いて行われる。レオメーターのバレル内に充填したプラスチックは加熱され、プランジャーを用いてダイから押し出される。装置に応じて、プランジャーは一定の力または一定の速度のいずれかで押し下げられる。系の動作が定常状態に達したら、測定値を求める。行われている一つの方法は、140℃におけるブルックフィールド粘度を測定することであり、当技術分野で既知のように単位はmPa・sまたはセンチポイズである。代替的に、溶融粘度はレオメーターを用いて、例えばThermalAnalysis Instrumentsから商業的に入手可能なAR−2000レオメーター:25mmスチール製プレートの標準的なスチール平行プレートの配置を使用し、プレート上のプレートの等温流動を120℃、0.01Hzの剪断速度で求めることによって測定可能である。特定のポリマーの溶融粘度が特定された場合、特に明記しない限り、それは静電組成物の他の成分のいずれをも含まない、そのポリマー単独での溶融粘度である。
【0013】
本書においては、特定のモノマーが、ポリマーの特定の重量パーセントを構成するものとして記載されうる。このことは、ポリマー中でそのモノマーから形成された繰り返し単位が、ポリマーの当該重量パーセントを構成することを示す。
【0014】
本書が標準試験について言及する場合、特に明記しない限り、参照される試験のバージョンは、本件特許出願の出願時に最も近いものである。
【0015】
本書で使用するところでは、「ゼログラフィー」、「静電印刷」、または「電子写真印刷」は一般に、写真イメージング基板から直接に、または中間転写部材を介して間接的に、印刷部材へと転写されるイメージを提供するプロセスを参照する。従って、イメージはそれが適用される写真イメージング基板に実質的に吸着されるものではない。加えて、「ゼログラフィー」、「静電印刷」、または「電子写真印刷」は一般に、上記したようにして電子写真印刷または静電印刷を行うことができる印刷機を参照する。「液体電子写真印刷」は電子写真印刷の特定的な種類であり、そこでは電子写真プロセスに、粉末トナーではなく液体組成物が用いられる。静電印刷プロセスは、静電組成物に電場、例えば電場勾配が50〜400V/μmまたはそれ超、幾つかの例では600〜900V/μmまたはそれ超である電場を受けさせることを包含してよい。
【0016】
本書で使用するところでは、「置換された」は、化合物の水素原子または部分が、置換基として参照される基の一部である炭素原子またはヘテロ原子のような他の原子によって置き換えられることを示してよい。置換基には、例えば、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルケニル、アルケノキシ、アルキニル、アルキノキシ、チオアルキル、チオアルケニル、チオアルキニル、チオアリールなどが含まれる。
【0017】
本書で使用するところでは、「ヘテロ原子」は、窒素、酸素、ハロゲン、リン、または硫黄を参照してよい。
【0018】
本書で使用するところでは、「アルキル」、またはアルカリールにおける「アルカ」のような類似の表現は、分岐、未分岐、または環状の飽和炭化水素基を参照してよく、これらは幾つかの例では、例えば、1から約50の炭素原子、または1から約40の炭素原子、または1から約30の炭素原子、または1から約10の炭素原子、または1から約5の炭素原子を含んでいる。
【0019】
用語「アリール」は、単一の芳香環、または縮合され、直接に連結され、または(異なる芳香環がメチレンやエチレン部分のような共通の基に結合するように)間接的に連結された多重の芳香環を含有する基を参照してよい。本書で記載するアリール基は、限定するものではないが、5から約50の炭素原子、または5から約40の炭素原子、または5から30の炭素原子またはそれ超を含んでよく、そしてフェニルおよびナフチルから選択されてよい。
【0020】
本書で使用するところでは、用語「約」は、ある所与の値が端点よりも少し上でもまたは少し下でもよいと規定して、試験方法または装置における変動を許容することにより、数値範囲の端点に柔軟性を提供するために使用される。この用語の柔軟性の度合いは、具体的な変数によって定まる可能性があり、また当業者の常識のうちにあって、経験と本書の関連する記載に基づいて決定される。
【0021】
本書で使用するところでは、便宜上、一般的なリストでは、複数の品目、構成要素、組成要素、および/または物質が提示されてよい。しかしながらこうしたリストは、羅列された各々の要素が別々に、唯一の要素として個別に識別されているかのように解釈されるべきである。よって、逆の表示がなければ、こうしたリストの個々の要素のどれ一つも、それらが共通の群に提示されていることのみをもって、同じリストの任意の他の要素の事実上の均等物として解釈されるべきではない。
【0022】
濃度、量、および他の数値データは本書において、範囲形式で表現または提示されてよい。そうした範囲形式は、単に便宜上と簡潔さのために使用されるものであり、よって範囲の端として明確に示された数値だけでなく、その範囲内に包含される全ての個々の数値または部分範囲をも、あたかも各々の数値および部分範囲が明示的に示されているかのようにして含むよう、柔軟に解釈されるべきであることが理解されよう。例を示せば、「約1重量%から約5重量%」の数値範囲は、明示的に示された約1重量%から約5重量%の値だけを含むようにではなく、示された範囲内の個々の値および部分範囲をも含むように解釈されるべきである。よって、この数値範囲に含まれるものは、2、3.5、および4といった個別の値と、1〜3、2〜4、および3〜5等といった部分範囲である。これと同じ原則が、単一の数値を示す範囲に対しても適用される。さらにまた、このような解釈は、範囲の広さや記述されている特性とは無関係に適用されるべきである。
【0023】
本書で使用するところでは、重量%の値は組成物中における固形分対固形分(w/w)の百分率を参照するものとして理解されるべきであり、存在しているキャリア液体の重量を含まない。
【0024】
一側面において、本開示はテキスタイル上にイメージを印刷する方法を提供する。この方法は、電子写真インク組成物を用いて電子写真的にイメージをテキスタイル基材上に印刷し、印刷された電子写真インクに対してポリマーと架橋剤を含むコーティング組成物を適用し、適用されたコーティング組成物を架橋することを含む。
【0025】
別の側面において、本開示は、
テキスタイル基材、
基材上に電子写真的に印刷された印刷インク層、および
電子写真的に印刷されたインク層上に堆積された架橋ポリマーコーティング
を含む、印刷されたテキスタイルを提供する。
【0026】
ポリマーを含有する架橋コーティング組成物を、電子写真インクで形成された印刷イメージ上に適用することにより、電子写真的に印刷された耐久性のイメージをテキスタイル基材(以下を参照)上に形成することが可能になる。電子写真印刷は典型的に、スクリーン印刷のような従来方法によるテキスタイル印刷よりも少ない処理工程を包含するものであるから、これによってテキスタイル基材を効率的且つ費用対効果よく印刷することができるようになる。さらにまた、有害な溶媒の使用を回避することができ、テキスタイルを環境にやさしい仕方で印刷することができる。
【0027】
本書に記載の方法はまた、テキスタイル基材上に耐久性のある電子写真イメージを形成することを可能にしうる。例えばそのイメージは、一回またはより多くの洗濯サイクルに対して十分に耐性を有しうる。幾つかの例では、本書に記載の方法は、テキスタイル基材に洗剤耐性のあるイメージを電子写真的に印刷することを許容しうる。
【0028】
電子写真インクは、テキスタイル基材の表面上に印刷されてよい。幾つかの例では、電子写真インクのバルク(大部分)は、基材の繊維によって吸収されない。何らかの理論によって拘束されることを望むものではないが、架橋コーティングは電子写真的に印刷されたイメージに付着し、例えば洗濯サイクル(単数または複数)の間に遭遇する洗剤、熱、および/または摩耗による剥離からイメージを保護する。
【0029】
電子写真インクは、電子写真印刷機を用いて、テキスタイル上に印刷されてよい。印刷されたテキスタイル基材は、コーティングに先立って乾燥されてよい。コーティングは、任意の適切な厚みで適用してよい。例えばコーティングは、0.5から50マイクロメートル、例えば1から10マイクロメートルの厚みの架橋ポリマー層を形成してよい。
【0030】
一例では、ポリマーコーティングは、水性ポリマー溶液または水性ポリマー分散液として適用される。ポリマーコーティングは、任意の適切な方法を用いて適用されてよい。例えばそれは、印刷されたテキスタイル上に、展着、ナイフコーティング、ローラーコーティング、ワイヤーロッド延伸、浸漬、噴霧、噴射、または(例えば間接的な)グラビアコーティングされてよい。
【0031】
一例では、ポリマーコーティングは、少なくとも一つの架橋性部分を有するポリマーを含む。架橋性部分は、不飽和基であってよい。適切な不飽和基には、CN基および/またはC=O基が含まれる。一例では、ポリマーコーティングはカルボキシル基を有するポリマーを含む。一例では、ポリマーコーティングは、イソシアヌレート基またはイソシアネート基を有するポリマーを含む。架橋性部分は、架橋してエステル結合を形成してよい。幾つかの例では、ポリマーは、アクリル系またはポリウレタン系ポリマーから選択されてよい。一例では、ポリマーはスチレンアクリルポリマーまたはポリウレタンポリマーである。具体例には、ACTEGA ACTDigiles、Water Lac 1960アクリルエマルジョン、Water Lac 1320アクリルエマルジョン、AVCOCHEMICALS LTDのPLASTOPRINT PM(ポリウレタン熱可塑性コーティング)、AVCO CHEMICALS LTDのAVCOPRINT ABZ−500スチレン(アクリル系)、AVCO CHEMICALS LTDのAVCOPRINT SAZSPSYNTOPRET OL−V(熱可塑性ポリウレタン)、およびAVCO CHEMICALS LTDのAVCOPRINTSAZ(アクリル系)が含まれる。
【0032】
ポリマーコーティングは、架橋剤を含む。適切な架橋剤には、ブロック化(ポリ)イソシアネートが含まれる。架橋剤は、任意の適切な量で使用してよい。例えばそれは、ポリマーコーティング中の架橋剤とポリマーの合計量の重量%までの量、例えば2または2.5から5重量%で添加されてよい。
【0033】
幾つかの例では、ポリマーコーティングは熱および/またはUVに対する曝露によつて架橋される。熱が使用される場合、コーティングされたテキスタイルは、50℃を超える温度、例えば70から200℃の温度に曝露されてよい。
【0034】
幾つかの例では、印刷されたテキスタイル基材上に形成された架橋ポリマーコーティングは、耐水性コーティングである。コーティングの耐水性は、印刷されたイメージの洗濯耐性または洗剤耐性を増大させうる。
【0035】
テキスタイル基材は、電子写真印刷に先立ってプライマーポリマーコーティングで処理されてよい。プライマーポリマーは、ヘテロ原子またはヘテロ原子含有基のような極性基を含んでよい。適切なヘテロ原子には、O、N、Sまたはハロゲン(例えばF、Cl、Br)が含まれる。幾つかの例では、プライマーポリマーはヒドロキシル、カルボニル、またはアミン基を含む。プライマーポリマーは、電子写真インク組成物中の酸性ポリマーと、例えば水素結合を形成する基を含んでよい。何らの理論にも拘束されるものではないが、この相互作用は、印刷イメージの洗剤耐性を改善させうる。適切なプライマーポリマーの例には、エチレンアクリル酸、ポリエチレンイミン、およびポリアミド樹脂が含まれる。プライマーポリマーコーティングは、水性分散液として適用されてよい。これは、電子写真工程に先立って乾燥されてよい。
【0036】
任意の適切な電子写真インクが用いられてよい。例えば、電子写真インクは粉末インクまたは液体インクであってよい。このインクは、着色剤とポリマーを含有するトナー粒子を含む。このインクはまた、チャージディレクタおよび/またはチャージアジュバントを含んでよい。
【0037】
着色剤
着色剤は、顔料、染料、およびこれらの組み合わせから選択してよい。着色剤は透明、単色、または利用可能な色の任意の組み合わせから構成されるものであってよい。着色剤は、シアン着色剤、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、およびブラック着色剤から選択されてよい。電子写真組成物は複数の着色剤を含んでよい。電子写真組成物は、相互に異なる第一の着色剤と第二の着色剤を含んでよい。さらなる着色剤もまた、第一および第二の着色剤と共に存在してよい。電子写真組成物は第一および第二の着色剤を含んでよく、ここでそれぞれの着色剤は独立して、シアン着色剤、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、およびブラック着色剤から選択される。幾つかの例では、第一の着色剤はブラック着色剤を含み、第二の着色剤は非ブラック顔料、例えばシアン着色剤、イエロー着色剤、およびマゼンタ着色剤から選択される着色剤を含む。着色剤は、フタロシアニン着色剤、インジゴイド着色剤、インダントロン着色剤、モノアゾ着色剤、ジアゾ着色剤、無機塩および錯体、ジオキサジン着色剤、ペリレン着色剤、アントラキノン着色剤、およびこれらの任意の組み合わせから選択してよい。
【0038】
ポリマー樹脂
電子写真インク組成物は(例えばトナー粒子)は、ポリマー樹脂を含むことができる。ポリマー樹脂は、熱可塑性ポリマーを含んでよい。熱可塑性ポリマーは場合により、熱可塑性樹脂と称される。ポリマー樹脂は、エチレンおよびアクリル酸またはメタクリル酸のいずれかであるエチレン系不飽和酸のコポリマーを含んでよい。幾つかの例では、樹脂のポリマーは、エチレンまたはプロピレンアクリル酸コポリマー;エチレンまたはプロピレンメタクリル酸コポリマー;エチレン酢酸ビニルコポリマー;エチレンまたはプロピレン(例えば80重量%から99.9重量%)およびメタクリル酸またはアクリル酸(例えば0.1重量%から20重量%)のアルキル(例えばC1からC5)エステルのコポリマー;エチレン(例えば80重量%から99.9重量%)、アクリル酸またはメタクリル酸(例えば0.1重量%から20.0重量%)、およびメタクリル酸またはアクリル酸のアルキル(例えばC1からC5)エステル(例えば0.1重量%から20重量%)のコポリマー;エチレンまたはプロピレン(例えば70重量%から99.9重量%)と無水マレイン酸(例えば0.1重量%から30重量%)のコポリマー;ポリエチレン;ポリスチレン;アイソタクチックポリプロピレン(結晶性);エチレンエチレンエチルアクリレートコポリマー;ポリエステル;ポリビニルトルエン;ポリアミド;スチレン/ブタジエンコポリマー;エポキシ樹脂;アクリル樹脂(例えばアクリル酸またはメタクリル酸と、少なくとも一つのアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルのコポリマー、ここでアルキルは1から約20の炭素原子を有してよく、メチルメタクリレート(例えば50%から90%)/メタクリル酸(例えば0重量%から20重量%)/エチルヘキシルアクリレート(例えば10重量%から50重量%)のごときである);エチレン−アクリレートターポリマー:エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸(MAH)またはグリシジルメタクリレート(GMA)ターポリマー;エチレン−アクリル酸イオノマー、およびこれらの組み合わせから選択されてよい。
【0039】
樹脂は、酸性側基を有するポリマーを含んでよい。酸性側基を有するポリマーの例について説明する。酸性側基を有するポリマーは、50mgKOH/gまたはそれ超の酸価、幾つかの例では60mgKOH/gまたはそれ超の酸価、幾つかの例では70mgKOH/gまたはそれ超の酸価、幾つかの例では80mgKOH/gまたはそれ超の酸価、幾つかの例では90mgKOH/gまたはそれ超の酸価、幾つかの例では100mgKOH/gまたはそれ超の酸価、幾つかの例では105mgKOH/gまたはそれ超の酸価、幾つかの例では110mgKOH/gまたはそれ超の酸価、幾つかの例では115mgKOH/gまたはそれ超の酸価を有してよい。酸性側基を有するポリマーは、200mgKOH/gまたはそれ未満の酸価、幾つかの例では190mgKOH/gまたはそれ未満、幾つかの例では180mgKOH/gまたはそれ未満、幾つかの例では130mgKOH/gまたはそれ未満、幾つかの例では120mgKOH/gまたはそれ未満の酸価を有してよい。KOH/gで求めたポリマーの酸価は、技術分野において既知の標準的な手順を用いて、例えばASTMD1386に記載された手順を用いて測定可能である。
【0040】
樹脂はポリマー、幾つかの例では酸性側基を有するポリマーを含んでよく、これは約70g/10分未満、幾つかの例では約60g/10分またはそれ未満、幾つかの例では約50g/10分またはそれ未満、幾つかの例では約40g/10分またはそれ未満、幾つかの例では30g/10分またはそれ未満、幾つかの例では20g/10分またはそれ未満、幾つかの例では10g/10分またはそれ未満のメルトフローレートを有する。幾つかの例では、粒子中の酸性側基および/またはエステル基を有する全てのポリマーのそれぞれは個々に、90g/10分未満、80g/10分またはそれ未満、幾つかの例では80g/10分またはそれ未満、幾つかの例では70g/10分またはそれ未満、幾つかの例では70g/10分またはそれ未満、幾つかの例では60g/10分またはそれ未満のメルトフローレートを有する。
【0041】
酸性側基を有するポリマーは、約10g/10分から約120g/10分、幾つかの例では約10g/10分から約70g/10分、幾つかの例では約10g/10分から40g/10分、幾つかの例では20g/10分から30g/10分のメルトフローレートを有することができる。酸性側基を有するポリマーは、幾つかの例では、約50g/10分から約120g/10分、幾つかの例では60g/10分から約100g/10分のメルトフローレートを有することができる。メルトフローレートは、例えばASTMD1238に記載されているような、技術分野において既知の標準的な手順を用いて測定可能である。
【0042】
酸性側基は遊離酸の形態でよく、またはアニオンの形態で一つまたはより多くの対イオンと関連していてよく、対イオンは典型的には金属対イオン、例えば、リチウム、ナトリウム、およびカリウムといったアルカリ金属、マグネシウムおよびカルシウムといったアルカリ土類金属、および亜鉛のような遷移金属から選択された金属である。酸性側基を有するポリマーは、エチレンおよびアクリル酸またはメタクリル酸のいずれかであるエチレン系不飽和酸のコポリマーのような樹脂;およびそのイオノマー、少なくとも部分的に金属イオン(例えばZn、Na、Li)で中和されたメタクリル酸およびエチレン−アクリル酸またはメタクリル酸コポリマーといった、SURLYN登録商標イオノマーのようなイオノマーから選択可能である。酸性側基を含むポリマーは、エチレンおよびアクリル酸またはメタクリル酸のいずれかであるエチレン系不飽和酸のコポリマーであることができ、ここでアクリル酸またはメタクリル酸のいずれかであるエチレン系不飽和酸は、コポリマーの5重量%から約25重量%、幾つかの例ではコポリマーの10重量%から約20重量%を構成する。
【0043】
樹脂は、酸性側基を有する二つの異なるポリマーを含んでよい。酸性側基を有する二つのポリマーは異なる酸価を有してよく、それらは上述した範囲内に入ってよい。樹脂は、10mgKOH/gから110mgKOH/g、幾つかの例では20mgKOH/gから110mgKOH/g、幾つかの例では30mgKOH/gから110mgKOH/g、幾つかの例では50mgKOH/gから110mgKOH/gの酸価を有する、酸性側基を有する第一のポリマーと、110mgKOH/gから130mgKOH/gの酸価を有する、酸性側基を有する第二のポリマーとを含んでよい。
【0044】
樹脂は、酸性側基を有する二つの異なるポリマーを含んでよい:約10g/10分から約50g/10分のメルトフローレートおよび10mgKOH/gから110mgKOH/g、幾つかの例では20mgKOH/gから110mgKOH/g、幾つかの例では30mgKOH/gから110mgKOH/g、幾つかの例では50mgKOH/gから110mgKOH/gの酸価を有する、酸性側基を有する第一のポリマー、および約50g/10分から約120g/10分のメルトフローレートおよび110mgKOH/gから130mgKOH/gの酸価を有する、酸性側基を有する第二のポリマーである。第一および第二のポリマーは、エステル基を欠いていてもよい。
【0045】
酸性側基を有する第一のポリマーの、酸性側基を有する第二のポリマーに対する比率は、約10:1から約2:1であることができる。この比率は約6:1から約3:1、幾つかの例では約4:1であることができる。
【0046】
樹脂は15000ポアズまたはそれ未満の溶融粘度、幾つかの例では10000ポアズまたはそれ未満の溶融粘度、幾つかの例では1000ポアズまたはそれ未満の溶融粘度、幾つかの例では100ポアズまたはそれ未満の溶融粘度、幾つかの例では50ポアズまたはそれ未満の溶融粘度、幾つかの例では10ポアズまたはそれ未満の溶融粘度を有するポリマーを含んでよく;このポリマーは本書に記載した酸性側基を有するポリマーであってよい。樹脂は15000ポアズまたはそれ超の、幾つかの例では20000ポアズまたはそれ超の、幾つかの例では50000ポアズまたはそれ超の、幾つかの例では70000ポアズまたはそれ超の溶融粘度を有する第一のポリマーを含んでよく;そして幾つかの例では、樹脂は第一のポリマーの溶融粘度未満の溶融粘度、幾つかの例では15000ポアズまたはそれ未満の溶融粘度、幾つかの例では10000ポアズまたはそれ未満の溶融粘度、幾つかの例では1000ポアズまたはそれ未満、幾つかの例では100ポアズまたはそれ未満、幾つかの例では50ポアズまたはそれ未満、幾つかの例では10ポアズまたはそれ未満の溶融粘度を有する第二のポリマーを含んでよい。この樹脂は、60000ポアズを超える溶融粘度、幾つかの例では60000ポアズから100000ポアズ、幾つかの例では65000ポアズから85000ポアズの溶融粘度を有する第一のポリマーと、15000ポアズから40000ポアズ、幾つかの例では20000ポアズから30000ポアズの溶融粘度を有する第二のポリマーと、および15000ポアズまたはそれ未満の溶融粘度、幾つかの例では10000ポアズまたはそれ未満の溶融粘度、幾つかの例では1000ポアズまたはそれ未満の溶融粘度、幾つかの例では100ポアズまたはそれ未満、幾つかの例では50ポアズまたはそれ未満、幾つかの例では10ポアズまたはそれ未満の溶融粘度を有する第三のポリマーとを含んでよく;第一のポリマーの例はNucrel960(DuPontから)、第二のポリマーの例はNucrel 699(DuPontから)、そして第三のポリマーの例はAC−5120またはAC−5180(Honeywellから)である。第一、第二、および第三のポリマーは本書に記載のように酸性側基を有するポリマーであってよい。溶融粘度はレオメーター、例えばThermalAnalysis Instrumentsから商業的に入手可能なAR−2000レオメーター:25mmスチール製プレートの標準的なスチール平行プレートの配置を使用し、プレート上のプレートの等温流動を120℃、0.01hzの剪断速度で求めることによって測定可能である。
【0047】
組成物中の樹脂が単一種のポリマーを含む場合には、そのポリマーは(静電インク組成物の他の成分を除き)6000ポアズまたはそれ超の溶融粘度、幾つかの例では8000ポアズまたはそれ超の溶融粘度、幾つかの例では10000ポアズまたはそれ超の溶融粘度、幾つかの例では12000ポアズまたはそれ超の溶融粘度を有してよい。樹脂が複数のポリマーを含む場合には、樹脂の全てのポリマーは一緒になって(静電インク組成物の他の成分を除き)6000ポアズまたはそれ超の溶融粘度、幾つかの例では8000ポアズまたはそれ超の溶融粘度、幾つかの例では10000ポアズまたはそれ超の溶融粘度、幾つかの例では12000ポアズまたはそれ超の溶融粘度を有する混合物を形成してよい。溶融粘度は標準的な技術を用いて測定可能である。溶融粘度はレオメーター、例えばThermalAnalysis Instrumentsから商業的に入手可能なAR−2000レオメーター:25mmスチール製プレートの標準的なスチール平行プレートの配置を使用し、プレート上のプレートの等温流動を120℃、0.01hzの剪断速度で求めることによって測定可能である。
【0048】
樹脂は、エチレンおよびアクリル酸またはメタクリル酸のいずれかであるエチレン系不飽和酸のコポリマー;またはそのイオノマー、少なくとも部分的に金属イオン(例えばZn、Na、Li)で中和されたメタクリル酸およびエチレン−アクリル酸またはメタクリル酸コポリマーといった、SURLYN登録商標イオノマーのようなイオノマーから選択される、酸性側基を有する二つの異なるポリマーを含んでよい。樹脂は、(i)エチレンおよびアクリル酸またはメタクリル酸のいずれかであるエチレン系不飽和酸のコポリマーであり、ここでアクリル酸またはメタクリル酸のいずれかであるエチレン系不飽和酸がコポリマーの8重量%から約16重量%、幾つかの例ではコポリマーの10重量%から16重量%を構成する第一のポリマー;および(ii)エチレンおよびアクリル酸またはメタクリル酸のいずれかであるエチレン系不飽和酸のコポリマーであり、ここでアクリル酸またはメタクリル酸のいずれかであるエチレン系不飽和酸がコポリマーの12重量%から約30重量%、幾つかの例ではコポリマーの14重量%から約20重量%、幾つかの例ではコポリマーの16重量%から約20重量%、幾つかの例ではコポリマーの17重量%から19重量%を構成する第二のポリマーを含んでよい。
【0049】
樹脂は、上記したような酸性側基を含むポリマー(エステル側基を含まなくてよい)と、エステル側基を有するポリマーとを含んでよい。エステル側基を有するポリマーは、熱可塑性樹脂であってよい。エステル側基を有するポリマーはさらに、酸性側基を含んでいてよい。エステル側基を有するポリマーは、エステル側基を有するモノマーと、酸性側基を有するモノマーのコポリマーであってよい。このポリマーは、エステル側基を有するモノマーと、酸性側基を有するモノマーと、そして酸性側基およびエステル側基を持たないモノマーのコポリマーであってよい。エステル側基を有するモノマーは、エステル化されたアクリル酸またはエステル化されたメタクリル酸から選択されるモノマーであってよい。酸性側基を有するモノマーは、アクリル酸またはメタクリル酸から選択されるモノマーであってよい。酸性側基およびエステル側基を持たないモノマーはアルキレンモノマーであってよく、エチレンまたはプロピレンを含むがこれらに限定されるものではない。エステル化されたアクリル酸またはエステル化されたメタクリル酸はそれぞれ、アクリル酸のアルキルエステルまたはメタクリル酸のアルキルエステルであってよい。アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルのアルキル基は、1から30の炭素、幾つかの例では1から20の炭素、幾つかの例では1から10の炭素を有するアルキル基であってよく;幾つかの例ではメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、t−ブチル、イソブチル、n−ブチル、およびペンチルから選択される。
【0050】
エステル側基を有するポリマーは、エステル側基を有する第一のモノマーと、酸性側基を有する第二のモノマーと、そして酸性側基およびエステル側基を持たないアルキレンモノマーである第三のモノマーとのコポリマーであってよい。エステル側基を有するポリマーは、(i)エステル化されたアクリル酸またはエステル化されたメタクリル酸、幾つかの例ではアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルから選択される、エステル側基を有する第一のモノマーと、(ii)アクリル酸またはメタクリル酸から選択される酸性側基を有する第二のモノマーと、そして(iii)エチレンおよびプロピレンから選択されるアルキレンモノマーである第三のモノマーのコポリマーであってよい。第一のモノマーは、コポリマーの1重量%から50重量%、幾つかの例では5重量%から40重量%、幾つかの例ではコポリマーの5重量%から20重量%、幾つかの例ではコポリマーの5重量%から15重量%を構成してよい。第二のモノマーは、コポリマーの1重量%から50重量%、幾つかの例ではコポリマーの5重量%から40重量%、幾つかの例ではコポリマーの5重量%から20重量%、幾つかの例ではコポリマーの5重量%から15重量%を構成してよい。第一のモノマーはコポリマーの5重量%から40重量%を構成することができ、第二のモノマーはコポリマーの5重量%から40重量%を構成し、そして第三のモノマーはコポリマーの重量の残りを構成する。幾つかの例では、第一のモノマーはコポリマーの5重量%から15重量%を構成し、第二のモノマーはコポリマーの5重量%から15重量%を構成し、第三のモノマーはコポリマーの重量の残りを構成する。幾つかの例では、第一のモノマーはコポリマーの8重量%から12重量%を構成し、第二のモノマーはコポリマーの8重量%から12重量%を構成し、第三のモノマーはコポリマーの重量の残りを構成する。幾つかの例では、第一のモノマーはコポリマーの約10重量%を構成し、第二のモノマーはコポリマーの約10重量%を構成し、そして第三のモノマーはコポリマーの重量の残りを構成する。ポリマーは、DuPont登録商標から入手可能なBynel2022およびBynel 2002を含む、Bynel登録商標クラスのモノマーから選択されてよい。
【0051】
エステル側基を有するポリマーは、電子写真組成物中において、樹脂ポリマー、例えば熱可塑性樹脂ポリマーの合計量、例えば酸性側基を有するポリマー(単数または複数)およびエステル側基を有するポリマーの合計量の、1重量%またはそれ超を構成してよい。エステル側基を有するポリマーは、電子写真組成物中において、例えば熱可塑性樹脂ポリマーである樹脂ポリマーの合計量の5重量%またはそれ超、幾つかの例では例えば熱可塑性樹脂ポリマーである樹脂ポリマーの合計量の8重量%またはそれ超、幾つかの例では例えば熱可塑性樹脂ポリマーである樹脂ポリマーの合計量の10重量%またはそれ超、幾つかの例では例えば熱可塑性樹脂ポリマーである樹脂ポリマーの合計量の15重量%またはそれ超、幾つかの例では例えば熱可塑性樹脂ポリマーである樹脂ポリマーの合計量の20重量%またはそれ超、幾つかの例では例えば熱可塑性樹脂ポリマーである樹脂ポリマーの合計量の25重量%またはそれ超、幾つかの例では例えば熱可塑性樹脂ポリマーである樹脂ポリマーの合計量の30重量%またはそれ超、幾つかの例では例えば熱可塑性樹脂ポリマーである樹脂ポリマーの合計量の35重量%またはそれ超を構成してよい。エステル側基を有するポリマーは、電子写真組成物中において、樹脂ポリマー、例えば熱可塑性樹脂ポリマーの合計量の5重量%から50重量%、幾つかの例では電子写真組成物中において、例えば熱可塑性樹脂ポリマーである樹脂ポリマーの合計量の10重量%から40重量%、幾つかの例では電子写真組成物中において、例えば熱可塑性樹脂ポリマーである樹脂ポリマーの合計量の5重量%から30重量%、幾つかの例では電子写真組成物中において、例えば熱可塑性樹脂ポリマーである樹脂ポリマーの合計量の5重量%から15重量%、幾つかの例では電子写真組成物中において、例えば熱可塑性樹脂ポリマーである樹脂ポリマーの合計量の15重量%から30重量%を構成してよい。
【0052】
エステル側基を有するポリマーは、50mgKOH/gまたはそれ超の酸価、幾つかの例では60mgKOH/gまたはそれ超の酸価、幾つかの例では70mgKOH/gまたはそれ超の酸価、幾つかの例では80mgKOH/gそれ超の酸価を有してよい。エステル側基を有するポリマーは、100mgKOH/gまたはそれ未満の酸価、幾つかの例では90mgKOH/gまたはそれ未満の酸価を有してよい。エステル側基を有するポリマーは、60mgKOH/gから90mgKOH/g、幾つかの例では70mgKOH/gから80mgKOH/gの酸価を有してよい。
【0053】
エステル側基を有するポリマーは、約10g/10分から約120g/10分、幾つかの例では約10g/10分から約50g/10分、幾つかの例では約20g/10分から約40g/10分、幾つかの例では約25g/10分から約35g/10分のメルトフローレートを有してよい。
【0054】
樹脂のポリマー、ポリマー(複数)、コポリマー、またはコポリマー(複数)は幾つかの例では、Nucrelトナー群(例えばNucrel 403TM、Nucrel407TM、Nucrel 609HSTM、Nucrel 908HSTM、Nucrel 1202HCTM、Nucrel30707TM、Nucrel 1214TM、Nucrel 903TM、Nucrel 3990TM、Nucrel910TM、Nucrel 925TM、Nucrel 699TM、Nucrel 599TM、Nucrel960TM、Nucrel RX 76TM、Nucrel 2806TM、Bynell 2002、Bynell2014、Bynell 2020、およびBynell 2022(E.I.du PONTから市販))、Aclynトナー群(例えばAclyn 201 、Aclyn246、Aclyn 285、およびAclyn 295)、およびLotaderトナー群(例えばLotader 2210、Lotader3430、およびLotader 8200(Arkemaから市販))から選択可能である。
【0055】
樹脂は電子写真組成物の固形分の約5から90重量%、幾つかの例では約50から80重量%を構成可能である。樹脂は電子写真組成物の固形分の約60から95重量%、幾つかの例では約70から95重量%を構成可能である。
【0056】
チャージディレクタおよびチャージアジュバント
電子写真組成物および/または印刷基材上に印刷されるインクは、チャージディレクタを含むことができる。チャージディレクタは、静電組成物の粒子に対して所望の極性の帯電を付与しおよび/または静電組成物の粒子に対する十分な静電帯電を維持するために、静電組成物に添加することができる。チャージディレクタは、限定するものではないが、脂肪酸の金属塩、スルホコハク酸の金属塩、オキシリン酸の金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸の金属塩、芳香族カルボン酸またはスルホン酸の金属塩などを含むイオン性化合物、ならびにポリオキシエチレン化アルキルアミン、レシチン、ポリビニルピロリドン、多価アルコールの有機酸エステルなどといった双性イオンおよび非イオン性化合物を含んでよい。チャージディレクタは、油溶性石油スルホネート(例えば中性カルシウムPetronateTM、中性バリウムPetronateTM、および塩基性バリウムPetronateTM)、ポリブチレンスクシンイミド(例えばOLOATM1200およびAmoco575)、およびグリセリドの塩(例えば不飽和および飽和酸置換基を有するリン酸化モノグリセリドおよびジグリセリドのナトリウム塩)から選択することが可能であるが、これらに限定されるものではなく、また限定されるものではないが、スルホン酸のバリウム、ナトリウム、カルシウム、およびアルミニウム塩を含むスルホン酸塩から選択することが可能である。スルホン酸には、限定するものではないが、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、およびアルキルコハク酸のスルホン酸(例えばWO2007/130069参照)が含まれてよい。チャージディレクタは、静電組成物の樹脂含有粒子に対して負の帯電または正の帯電を付与する。
【0057】
チャージディレクタは、一般式[R−O−C(O)CHCH(SO)C(O)−O−R]のスルホコハク酸部分を含むことができ、式中RおよびRの各々はアルキル基である。幾つかの例では、チャージディレクタは単塩および一般式MAnのスルホコハク酸塩のナノ粒子を含み、式中Mは金属、nはMの価数、そしてAは一般式[R−O−C(O)CHCH(SO)C(O)−O−R]のイオンであり、式中RおよびRの各々はアルキル基であり、あるいはWO2007/130069において見出されているような他のチャージディレクタであり、WO2007/130069はその全体を、参照によって本書に取り込むものとする。WO2007/130069に記載されているように、一般式MAnのスルホコハク酸塩は、ミセル形成性の塩の一例である。チャージディレクタは、一般式HAの酸を実質的に含まないかまたは含まないものでよく、ここでAは上記の通りである。チャージディレクタは、少なくとも幾つかのナノ粒子を取り囲む、前記スルホコハク酸塩のミセルを含んでよい。チャージディレクタは大きさが200nmまたは未満、幾つかの例では2nmまたは超の、少なくとも幾つかのナノ粒子を含んでよい。WO2007/130069に記載されているように、単塩はそれ自体ではミセルを形成しない塩であるが、ミセル形成性の塩とのミセルのコアを形成してよい。単塩を構成するイオンはすべて親水性である。単塩は、Mg、Ca、Ba、NH、tert−ブチルアンモニウム、Li、およびAl+3からなる群またはこれらの任意の部分群より選択されたカチオンを含んでよい。単塩は、SO2−、PO3−、NO3−、HPO2−、CO2−、アセテート、トリフルオロアセテート(TFA)、Cl、BF、F、ClO、およびTiO4−からなる群またはこれらの任意の部分群から選択されたアニオンを含んでよい。単塩は、CaCO、BaTiO、Al(SO)、Al(NO)、Ca(PO)、BaSO、BaHPO、Ba(PO)、CaSO、(NH)CO、(NH)SO、NHOAc、tert−ブチルアンモニウムブロミド、NHNO、LiTFA、Al(SO)、LiClOおよびLiBF、またはこれらの任意の部分群から選択されてよい。チャージディレクタはさらに、塩基性バリウムペトロネート(BBP)を含んでよい。
【0058】
式[R−O−C(O)CHCH(SO)C(O)−O−R]において、幾つかの例ではRおよびRの各々は脂肪族アルキル基である。幾つかの例では、RおよびRは独立してC6〜25のアルキルである。幾つかの例では、上記脂肪族アルキル基は直鎖である。幾つかの例では、上記脂肪族アルキル基は分岐している。幾つかの例では、上記脂肪族アルキル基は6を超える炭素原子の直鎖を含む。幾つかの例では、RおよびRは同じである。幾つかの例では、少なくともRおよびRの一方はC1327である。幾つかの例では、MはNa、K、Cs、Ca、またはBaである。式[R−O−C(O)CHCH(SO)C(O)−O−R]および/または式MAnは、WO2007/130069の任意の部分で定義されたごとくであってよい。
【0059】
チャージディレクタは、(i)大豆レシチン、(ii)塩基性バリウムペトロネート(BPP)のようなバリウムスルホン酸塩、および(iii)イソプロピルアミンスルホン酸塩を含んでよい。塩基性バリウムペトロネートは、21〜26の炭化水素のアルキルのバリウムスルホン酸塩であり、例えばChemturaから入手可能である。イソプロピルアミンスルホン酸塩の例は、ドデシルベンゼンスルホン酸イソプロピルアミンであり、これはCrodaから入手可能である。
【0060】
静電組成物において、チャージディレクタは静電組成物および/または印刷基材上に印刷されたインクの固形分の約0.001重量%から20重量%、幾つかの例では0.01重量%から20重量%、幾つかの例では0.01から10重量%、幾つかの例では0.01重量%から1重量%を構成することができる。チャージディレクタは液体電子写真組成物および/または印刷基材上に印刷されたインクの固形分の約0.001重量%から0.15重量%、幾つかの例では0.001重量%から0.15重量%、幾つかの例では液体静電組成物および/または印刷基材上に印刷されたインクの固形分の0.001重量%から0.02重量%を構成することができる。幾つかの例では、チャージディレクタは静電組成物に対して負の帯電を付与する。粒子の電導度は、50から500pmho/cm、幾つの例では200〜350pmho/cmの範囲にわたる。
【0061】
液体電子写真組成物および/または印刷基材上に印刷されたインクは、チャージアジュバント(帯電制御補助剤)を含むことができる。チャージアジュバントはチャージディレクタと共に存在してよく、チャージディレクタとは異なるものであってよく、静電組成物の粒子、例えば樹脂含有粒子の帯電を増大および/または安定化するように作用してよい。チャージアジュバントは、バリウムペトロネート、カルシウムペトロネート、ナフテン酸のCo塩、ナフテン酸のCa塩、ナフテン酸のCu塩、ナフテン酸のMn塩、ナフテン酸のNi塩、ナフテン酸のZn塩、ナフテン酸のFe塩、ステアリン酸のBa塩、ステアリン酸のCo塩、ステアリン酸のPb塩、ステアリン酸のZn塩、ステアリン酸のAl塩、ステアリン酸のCu塩、ステアリン酸のFe塩、金属カルボキシレート(例えば、Alトリステアレート、Alオクタノエート、Liヘプタノエート、Feステアレート、Feジステアレート、Baステアレート、Crステアレート、Mgオクタノエート、Caステアレート、Feナフテネート、Znナフテネート、Mnヘプタノエート、Znヘプタノエート、Baオクタノエート、Alオクタノエート、Coオクタノエート、Mnオクタノエート、およびZnオクタノエート)、Coリノリエート、Mnリノリエート、Pbリノリエート、Znリノリエート、Caオレエート、Coオレエート、Znパルミテート、Caレシネート、Coレシネート、Mnレシネート、Pbレシネート、Znレシネート、2−エチルヘキシルメタクリレート−コ−メタクリル酸カルシウムおよびアンモニウ塩のABジブロックコポリマー、アルキルアクリルアミドグリコレートアルキルエーテルのコポリマー(例えば、メチルアクリルアミドグリコレートメチルエーテル−コ−ビニルアセテート)、およびヒドロキシビス(3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸)アルミネートモノハイドレートを含むことができるが、これらに限定されるものではない。幾つかの例では、チャージアジュバントはアルミニウムジステアレートおよび/またはアルミニウムトリステアレート、および/またはアルミニウムジパルミテートおよび/またはアルミニウムトリパルミテートである。
【0062】
チャージアジュバントは、液体電子写真組成物および/または印刷基材上に印刷されたインクの固形分の約0.1から5重量%を構成可能である。チャージアジュバントは、液体電子写真組成物および/または印刷基材上に印刷されたインクの固形分の約0.5から4重量%を構成可能である。チャージアジュバントは、液体電子写真組成物および/または印刷基材上に印刷されたインクの固形分の約1から3重量%を構成可能である。
【0063】
幾つかの例では、電子写真組成物は液体電子写真組成物である。液体電子写真組成物は、着色剤および上述したポリマー樹脂を含んでよい。加えて、組成物は液体キャリアを含んでよい。この組成物中には、チャージアジュバントおよび/またはチャージディレクタも存在してよい。液体電子写真組成物に適切な液体キャリアは以下に記載される。
【0064】
液体キャリア
一般に、キャリア液体は静電組成物の他の成分のための分散媒体として作用することができる。例えばキャリア液体は、炭化水素、シリコーンオイル、植物油、その他であるか、これらを含むものであることができる。キャリア液体は、トナー粒子のための媒体として使用可能な、絶縁性の非極性非水系液体を含みうるが、これに限定されるものではない。キャリア液体は、約10オームcmを超える抵抗値を有する化合物を含むことができる。キャリア液体は約5未満の、幾つかの例では約3未満の誘電率を有してよい。キャリア液体は炭化水素を含むことができるが、これらに限定されるものではない。炭化水素は、脂肪族炭化水素、異性化脂肪族炭化水素、分岐鎖脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、およびこれらの組み合わせを含み得るが、これらに限定されるものではない。キャリア液体の例には、脂肪族炭化水素、イソパラフィン系化合物、パラフィン系化合物、脱芳香族炭化水素化合物、および類似物が含まれるが、これらに限定されるものではない。特に、キャリア液体は、Isopar−GTM、Isopar−HTM、Isopar−LTM、Isopar−MTM、Isopar−KTM、Isopar−VTM、Norpar12TM、Norpar 13TM、Norpar 15TM、Exxol D40TM、ExxolD80TM、Exxol D100TM、Exxol D130TM、およびExxol D140TM(それぞれEXXON CORPORATIONにより市販されている);Teclen N−16TM、TeclenN−20TM、Teclen N−22TM、Nisseki Naphthesol LTM、NissekiNaphthesol MTM、Nisseki Naphthesol HTM、#0 Solvent LTM、#0Solvent MTM、#0 Solvent HTM、Nisseki lsosol 300TM、Nissekilsosol 400TM、AF−4TM、AF−5TM、AF−6TMおよびAF−7TM(それぞれNIPPON OILCORPORATIONにより市販されている);IP Solvent 1620TMおよびIP Solvent2028TM(それぞれIDEMITSU PETROCHEMICAL CO., LTD.により市販されている);Amsco OMSTMおよびAmsco460TM(それぞれAMERICAN MINERAL SPIRITS CORP.により市販されている);およびElectron、Positron、NewII、Purogen HF(100%合成テルペン)(ECOLINKTMにより市販)を含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0065】
印刷前に、キャリア液体は静電組成物の約20重量%から99.5重量%、幾つかの例では静電組成物の50重量%から99.5重量%を構成可能である。印刷前に、キャリア液体は静電組成物の約40から90重量%を構成してよい。印刷前に、キャリア液体は、静電組成物の約60重量%から80重量%を構成してよい。印刷前に、キャリア液体は静電組成物の約90重量%から99.5重量%、幾つかの例では静電組成物の95重量%から99重量%を構成してよい。
【0066】
インクは、印刷基材上に印刷された場合、実質的にキャリア液体を含まなくてよい。静電印刷プロセスにおいて、および/またはその後において、キャリア液体は、例えば印刷中の電気泳動プロセスおよび/または蒸発によって除去してよく、それによって実質的に固形分のみが印刷基材に転写されるようになる。実質的にキャリア液体を含まないとは、印刷基材上に印刷されたインクが、5重量%未満のキャリア液体、幾つかの例では、2重量%未満のキャリア液体、幾つかの例では1重量%未満のキャリア液体、幾つかの例では0.5重量%未満のキャリア液体を含んでいることを示してよい。幾つかの例では、印刷基材上に印刷されたインクは、キャリア液体を含まない。
【0067】
テキスタイル基材
テキスタイル基材は、任意の適切なテキスタイルまたは布帛基材であってよい。テキスタイル基材は織布または不織布であってよい。テキスタイル基材は糸から、例えば天然繊維または合成繊維の紡績糸またはフィラメントから形成されていてよい。テキスタイルまたは布帛基材は、下部支持基材またはテキスタイル/布帛支持基材とも呼ぶことができる。「支持」という用語はまた、コーティングおよび印刷されるイメージを担持するという、基材の物理的な目的をも参照している。印刷物の適用が所望とされる場合、任意のテキスタイル、布帛材料、布帛衣料、または他の布帛製品について、本書に記載の原理から利益を得ることができる。より具体的には、本開示において有用なテキスタイルまたは布帛基材には、天然および/または合成であってよい繊維を有する基材が含まれる。用語「テキスタイル」は例えば、布地、布帛材料、布帛衣料、または他の布帛製品を含む。テキスタイル構造は縦糸と横糸を有してよく、織布、不織布、編地、タフテッド、編み物、ノット地および圧縮構造であってよい。「縦糸」および「横糸」という用語は製織用語であり、テキスタイルの技術分野において通常の意味を有する。本書で使用するところでは、例えば縦糸は織機上で長さ方向の糸または長手糸を参照し、これに対して横糸は織機上で交差方向または横方向の糸を参照する。
【0068】
留意すべきことに、用語「テキスタイル」または「布帛」基材は、一般に紙として知られた任意の種類の材料を含まない。紙は、水の懸濁液から細かいスクリーン上に抄紙することによって、種々の植物繊維(木材または植物繊維の混合物など)と合成繊維で作成されたシート、ロール、および他の物理的形態を取る。
【0069】
さらにまた、テキスタイル基材は、フィラメント形態、布帛材料の形態の両方のテキスタイル、さらには最終物品(被服、ブランケット、テーブルクロス、ナプキン、寝装材料、カーテン、カーペット、靴、その他)へと作成された形態の布帛をも含む。幾つかの例では、テキスタイル基材は織物、編物、不織、またはタフテッド構造を有する。
【0070】
テキスタイル基材は織布であることができ、そこでは縦糸と横糸が相互に約90°の角度で配置されている。この織布には、限定するものではないが、平織り構造の布帛、綾織りが布帛表面上に斜交するラインを生み出している綾織り構造の布帛、または繻子織りが含まれる。テキスタイル基材は編地であることができ、縦編地と横編地の一方または双方を含むループ構造を有する。横編地は、布帛の一つの横列のループが同じ糸から形成されたものであることを参照している。縦編地は、布帛構造中のすべてのループが主として布帛の長手方向に導入された個別の糸から形成されていることを参照している。テキスタイル基材はまた不織布であることができ、これは例えば、化学処理プロセス(例えば溶剤処理)、機械的処理プロセス(例えばエンボス加工)、熱的処理プロセス、またはこれらのプロセスの二つまたはより多くの組み合わせによって、一緒に結合されおよび/または一緒に相互固定された、複数の繊維またはフィラメントを含む可撓性の布帛である。
【0071】
テキスタイル基材は、天然繊維および合成繊維の一方または双方を含むことができる。使用してよい天然繊維には、限定するものではないが、毛、綿、絹、麻、ジュート、亜麻、または大麻が含まれる。使用してよい追加的な繊維には、限定するものではないが、レーヨン繊維または再生可能資源から誘導された熱可塑性脂肪族高分子繊維が含まれ、これには限定するものではないが、コーンスターチ、タピオカ製品、またはサトウキビが含まれる。これらの追加的な繊維は「天然」繊維として参照可能である。幾つかの例では、テキスタイル基材に用いられる繊維には、上に列挙した天然繊維の二つまたはより多くの組み合わせ、上に列挙した任意の天然繊維と別の天然繊維または合成繊維の組み合わせ、上に列挙した天然繊維の二つまたはより多くの混合物、または上に列挙した任意の天然繊維と別の天然繊維または合成繊維の混合物が含まれる。
【0072】
テキスタイル基材に使用してよい合成繊維はポリマー繊維であり、限定するものではないが、ポリ塩化ビニル(PVC)繊維、ポリエステルから作成されたポリ塩化ビニル(PVC)不含繊維、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアラミド、例えばKevlar登録商標、ポリテトラフルオロエチレン、例えばTeflon登録商標(両方ともE.I. du Pontde Nemours and Companyの商標)、ガラス繊維、ポリトリメチレン、ポリカーボネート、ポリエステルテレフタレート、またはポリブチレンテレフタレートが含まれる。幾つかの例では、テキスタイル基材に用いられる繊維には、これらの繊維の二つまたはより多くの組み合わせ、これらの繊維の任意のいずれかと別のポリマー繊維または天然繊維の組み合わせ、これらの繊維の二つまたはより多くの混合物、またはこれらの繊維の任意のいずれかと別のポリマー繊維または天然繊維の混合物が含まれる。幾つかの例では、合成繊維には変成繊維が含まれる。「変成繊維」という用語は、限定するものではないが、他のポリマーのモノマーとの共重合、ポリマー繊維および布帛表面の一方または双方に化学的官能基を接触させるための化学的グラフト化反応、プラズマ処理、溶剤処理、例えば酸エッチング、および生物学的処理、例えば酵素処理または生物学的劣化を防止するための抗菌処理の一つまたはより多くといった、化学的または物理的処理を受けた、ポリマー繊維および全体としての布帛の一方または双方を参照している。用語「PVC不含」は、基材中にポリ塩化ビニル(PVC)ポリマーまたは塩化ビニルモノマー単位が含まれていないことを意味する。幾つかの例では、テキスタイル基材は合成ポリエステル繊維である。
【0073】
テキスタイル基材は、天然繊維と合成繊維の両者を含むことができる。幾つかの例では、合成繊維の量は、繊維の合計量の約20%から約90%を表す。幾つかの他の例では、天然繊維の量は、繊維の合計量の約10%から約80%を表す。幾つかの他の例では、テキスタイル基材は織布構造中に天然繊維と合成繊維を含み、天然繊維の量が繊維の合計量の約10%であり、合成繊維の量が繊維の合計量の約90%である。テキスタイル基材はさらに添加剤を含んでよく、それには限定するものではないが、例えば着色剤(例えば顔料、染料、付色剤)、帯電防止剤、増白剤、造核剤、抗酸化剤、UV安定剤、フィラー、および潤滑剤の一つまたはより多くが含まれる。代替的に、テキスタイル基材はコーティング組成物を適用する前に、上記に列挙した物質を含有する溶液中で予備処理してよい。これらの添加剤および処理は、布帛の種々の性質を改善するために含有される。
【0074】
テキスタイルの例には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、および/またはポリエステルといった合成布帛が含まれる。合成布帛は、織布または不織布であってよい。一例では、PETの基材が、例えばその一方(例えば背面または前面)の側または両側上において、ナイロンおよび/またはポリエステルのようなコーティングで被覆される。背面被覆PETの例:製品コード:PS2268。100%ポリエステルのサテンで背面被覆されている。両面被覆PETの例:製品コード:P2008は100%の浸漬コーティングされたナイロンタフタで両面被覆されており、製品コード:PN7702A9は蛍光物質を含まないナイロン/ポリエステルのブレンドのタフタで両面被覆されている:HUZHOU SINYLABEL MATERIAL CO.,LTD製造。また製品コード:7280Nは白色の浸漬コーティングされたナイロン/ポリエステルブレンドのタフタで縁部にスリットがある:ColeFabrics Far East製造。
【実施例】
【0075】
対照例1(対照試料)
【0076】
評価に先立ち、イメージとテキストを上記二種の布帛上に印刷した。イメージは液体トナー(HPインディゴws6600デジタル印刷機により適用のLEPインク)および粉末トナー(HPカラーLaserJet5550プリンタにより適用)を用いて印刷した。印刷の保護の効率は、ISO6330に詳細に記載されている家庭用洗濯および乾燥プロトコルを適用することによって試験した。家庭用洗濯および乾燥プロトコルの1サイクルを適用した後、布帛基材上には両方の種類のトナーにより印刷されたイメージの10%未満が残っていた。
【0077】
比較例2(液体トナー印刷、印刷前にプライマー処理した布帛)
【0078】
HPインディゴws6600デジタル印刷機の印刷システムにより適用されたLEPインクを用いて、プライマー処理され背面側を被覆されたPET布帛上に、イメージとテキストを印刷した。MichelmanDigiPrime登録商標060プライマーを機上で、インラインプライマー処理(ILP)システム(HPインディゴ印刷機の一部)を用いて塗布した。被覆速度は間接的グラビアコーティング法を用いて30m/分であり、350LCMのAniloxローラを40℃で30m/分の速度とした。家庭用洗濯および乾燥プロトコルの1サイクル後、インクの20%が布帛表面上に残っていた。
【0079】
比較例3(プライマー処理しない布帛上に乾式トナー、続いて耐水性コーティングで基材を被覆)
【0080】
HPカラーLaserJet5550プリンタにより印刷された粉末トナーにより、プライマー処理しない両側被覆のPET布帛上に、イメージとテキストを印刷した。水性のオーバープリントワニス(OPV)であるEPOTECのWater Lac 1960アクリルエマルジョンを浸漬コーティングによって塗布した。このコーティングをオーブン中で30分間、60℃で乾燥した。家庭用洗濯および乾燥の1サイクル後、インクの20%が布帛表面上に残っていた。二回目の洗濯サイクル中に、水性OPVは液体トナーを保護できず、結果は対照と類似していた。
【0081】
比較例4(プライマー処理した布帛上に液体トナー印刷、続いて耐水性コーティングで基材を被覆)
【0082】
液体トナー(HPインディゴws6600デジタル印刷機により適用されたLEPインク)を用いて、Michelman topaz 17溶液でプライマー処理された両側被覆のPET布帛上に、イメージとテキストを印刷した。プライマーは、実験室用LaboCombi 400コーターを使用して塗布した。被覆速度は30m/分であった。プライマーは、140 LCMのAniloxを装着した間接的グラビアコーティング法を用いて塗布し、70℃で乾燥した。EPOTECの水性OPVであるWaterLac 1960アクリルエマルジョンを浸漬コーティングにより塗布した。コーティングはオーブン中で10分間、60℃で乾燥した。家庭用洗濯および乾燥の1サイクル後、インクの約40%が布帛表面上に残っており、二回目のサイクルの後にイメージの20%が残っていた。類似の保護プロトコルは、粉末トナーを用いて印刷されたイメージを保護できなかった。
【0083】
実施例5(プライマー処理しない布帛上に粉末トナー印刷、印刷後に基材を硬化性水性コーティングで被覆し、次いで加熱硬化)
【0084】
HPカラーLaserJet5550プリンタにより適用された粉末トナーを用いて、プライマー処理していない両側被覆PET布帛上に、イメージとテキストを印刷した。AvcoChemicals LTDからの水性の架橋性OPVであるAVCO−AVCOPRINT ABZ−500スチレン(アクリル系)をロッドのドローダウンコーティングによって塗布した。コーティングはオーブン中で3分間、150℃で加熱硬化した。家庭用洗濯および乾燥の1サイクル後、インクの約40%が布帛表面上に残っており、三回目のサイクルの後にイメージの20%が残っていた。
【0085】
実施例6(プライマー処理しない布帛上に液体印刷、印刷後に基材を硬化性水性コーティングで被覆し、次いで加熱硬化)
【0086】
液体トナー(HPインディゴws6600デジタル印刷機により適用されたLEPインク)を用いて、プライマー処理していない両側被覆PET布帛上に、イメージとテキストを印刷した。水性の架橋性OPV(AVCO−AVCOPRINT SAZ−SPSYNTOPRET OL−V(熱可塑性ポリウレタン))をロッドのドローダウンコーティングによって塗布した。コーティングはオーブン中で3分間、150℃で加熱硬化した。家庭用洗濯および乾燥の10サイクル後、インクの約80%が布帛表面上に残っていた。類似の結果が、AvcoChemicals LTDからのAVCO−PLASTOPRINT PM(ポリウレタン熱可塑性コーティング)を用いて得られた。
【0087】
実施例7(プライマー処理した布帛上に液体印刷、印刷後に基材を硬化性水性コーティングで被覆し、次いで加熱硬化)
【0088】
液体トナー(HPインディゴws6600デジタル印刷機により適用されたLEPインク)を用いて、両側被覆PET布帛上に、イメージとテキストを印刷した。Michelman DigiPrime登録商標060プライマーを塗布した。プライマーは機上で、インラインプライマー処理(ILP)システム(HPインディゴ印刷機の一部)を用いて塗布した。被覆速度は間接的グラビアコーティング法を用いて30m/分であり、350LCMのAniloxローラを40℃で30m/分の速度とした。印刷後に、水性の架橋性OPVであるAVCO−AVCOPRINTABZ−500スチレン(アクリル系)を、ワイヤロッドのドローダウンコーティングによって塗布した。コーティングはオーブン中で1.5分間、150℃で加熱硬化した。家庭用洗濯および乾燥の10サイクル後、インクの100%が布帛表面上に残っていた。類似の結果が、AvcoChemicals LTDからのAVCO−PLASTOPRINT PM(ポリウレタン熱可塑性コーティング)、AVCO−AVCOPRINT SAZ−SPSYNTOPRET OL−V(熱可塑性ポリウレタン)、およびAVCO−AVCOPRINT SAZ(アクリル系)を用いて得られた。
【0089】
上記の例の結果を以下の表に概括する:
【表1】