(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
マフラに用いられる弁装置には、内燃機関の回転数が低く排ガスの圧力が低い状態で閉弁して騒音を低減する騒音低減機能が求められる一方、内燃機関の回転数が高く排ガスの圧力が高い状態で開弁して圧力損失を低減する圧損低減機能が求められる。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のマフラの弁装置では、弁体の開度が大きくなるほど弁体に対する閉方向に加わる荷重が大きくなる。このため、第3状態よりも排気音が静かな第1状態及び第2状態の期間を十分に確保するために、コイルバネの付勢力を高めに設計して弁体の開き始めにおける荷重を大きくすると、第3状態において弁体が十分に開きにくくなる。したがって、第3状態における圧力損失が大きくなる。
【0010】
逆に、第3状態の圧力損失を抑制するために、コイルバネの付勢力を低めに設計して弁体の開き始めにおける荷重を小さくすると、第1状態及び第2状態の期間を十分に確保することができない。
【0011】
本開示の一局面は、第1状態及び第2状態の期間を十分に確保しつつ、第3状態における圧力損失を抑制することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様においては、マフラであって、ケーシングと、第1の弁装置と、第2の弁装置と、を備える。ケーシングは、排気音を低減するための排気流路を内部に有する。第1の弁装置及び第2の弁装置は、弁体、支持体及び維持機構を有する。弁体は、排気流路を開閉するための部材である。支持体は、弁体を回転移動可能に支持する。維持機構は、排気流路を流れる排ガスの圧力に反して弁体を閉位置に維持させるための外力を弁体に加える。第1の弁装置及び第2の弁装置が有する維持機構は、弁体の開き始めにおいて弁体に対する閉方向に加わる荷重が互いに異なる。第1の弁装置及び第2の弁装置のうち少なくとも一方の維持機構は、弁体の開き始めにおいて弁体に対する閉方向に加わる荷重が極大になる第1種の維持機構である。
【0013】
この第1種の維持機構を用いることで、第2種の維持機構を用いた場合と比較して、低圧時に弁体が開き始めるのに要する排ガスの圧力を高くしつつ高圧時の弁体の開き不足を抑制することができる。ここでいう第2種の維持機構とは、弁体の開度が大きくなるほど弁体に対する閉方向に加わる荷重が大きくなる維持機構である。したがって、上記構成によれば、第1の弁装置及び第2の弁装置のいずれの維持機構も第2種の維持機構である構成と比較して、第1状態及び第2状態の期間を十分確保しつつ、第3状態における圧力損失を抑制することができる。
【0014】
本開示の一態様は、第1の弁装置及び第2の弁装置のいずれか一方が、他方の上流に設けられていてもよい。
このような構成によれば、第1の弁装置及び第2の弁装置のいずれか一方が他方の上流に設けられていない構成、つまり、第1の弁装置が開閉する排気流路と第2の弁装置が開閉する排気流路とが並列である構成と比較して、マフラの構成を簡素にすることができる。
【0015】
本開示の一態様は、次のような構成でもよい。すなわち、マフラは、第1のアウトレットパイプと第2のアウトレットパイプとを備える。第1のアウトレットパイプと第2のアウトレットパイプとは長さが異なる。排気流路は、第1のアウトレットパイプの下流側開口に至る第1の分岐流路と、第2のアウトレットパイプの下流側開口に至る第2の分岐流路と、に分岐する。第1の弁装置は、第1の分岐流路を開閉し、第2の弁装置は、第2の分岐流路を開閉する。
【0016】
この構成では、第1のアウトレットパイプと第2のアウトレットパイプとは長さが異なるため、共振する周波数帯が異なる。よって、それぞれのアウトレットパイプから発せられる排気音の大きさや高さが異なり得る。このように、第1のアウトレットパイプの長さと第2のアウトレットパイプの長さとを変えることで、2つのアウトレットパイプの長さが同一である構成と比較して、第1状態から第3状態にかけて発せられる排気音を所望の音に調整しやすくすることができる。
【0017】
本開示の一態様は、第1の弁装置及び第2の弁装置のいずれか一方の維持機構が、第2種の維持機構であってもよい。
第2種の維持機構は、弁体が開いた後における排ガスの圧力の上昇に伴う弁体の開度の変化が、第1種の維持機構と比較して緩やかになる。したがって、特に第3状態において、排ガスの圧力の上昇に伴い排気音が徐々に変化するようにすることができる。
【0018】
本開示の一態様は、第1の弁装置及び第2の弁装置のいずれの維持機構も第1種の維持機構であってもよい。
このような構成によれば、第1の弁装置及び第2の弁装置のうちの少なくとも一方の維持機構が第2種の維持機構である構成と比較して、第1状態及び第2状態の期間を十分確保しつつ、第3状態における圧力損失を抑制することができる。
【0019】
本開示の一態様は、第1種の維持機構が、リンクと、付勢部材と、を備えてもよい。リンクは、互いに回転移動可能に接続された第1のリンク形成部材及び第2のリンク形成部材を備える。リンクは、第1のリンク形成部材が支持体によって回転移動可能に支持され第2のリンク形成部材が弁体によって回転移動可能に支持される配置で、支持体及び弁体を連結する。付勢部材は、弁体を閉方向へ付勢するための部材である。
【0020】
このような構成によれば、第1種の維持機構が有する、弁体の開き始めにおいて弁体に対する閉方向に加わる荷重が極大になるという荷重特性を安定化することができる。
本開示の一態様は、第1種の維持機構が、リンクと、付勢部材と、を備えてもよい。リンクは、互いに回転移動可能に接続された第1のリンク形成部材及び第2のリンク形成部材を備える。リンクは、第1のリンク形成部材が支持体によって回転移動可能に支持され第2のリンク形成部材が弁体によって回転移動可能に支持される第1の配置で、支持体及び弁体を連結する。付勢部材は、弁体を閉方向へ付勢するための部材である。リンクは、第1のリンク形成部材の長さであって支持体に対する回転軸線と第2のリンク形成部材に対する回転軸線との間の距離であるリンク長さと、第2のリンク形成部材の長さであって弁体に対する回転軸線と第1のリンク形成部材に対する回転軸線との間の距離であるリンク長さと、が異なる。リンクは、第1のリンク形成部材が弁体によって回転移動可能に支持され第2のリンク形成部材が支持体によって回転移動可能に支持される第2の配置でも、支持体及び弁体を連結可能な形状である。第1の弁装置のリンクは、第1の配置で支持体及び弁体を連結し、第2の弁装置のリンクは、第2の配置で支持体及び弁体を連結する。
【0021】
このような第1種の維持機構では、長さの異なる第1のリンク形成部材及び第2のリンク形成部材の配置を入れ替えることで、弁体の開き始めにおいて弁体に対する閉方向に加わる荷重であるセット荷重等を変えることができる。よって、セット荷重が異なる第1の弁装置及び第2の弁装置を同じ部品で製造することが可能となる。したがって、部品点数を減らすことができるため、製造コストを減少させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
図1に示す第1実施形態のマフラ1は、車両に搭載された内燃機関から排出される排ガスの排気流路の一部を構成する。マフラ1は、ケーシング10を備える。ケーシング10は、筒状のシェル部材11と、シェル部材11の両端開口部を閉塞する後蓋部材12及び前蓋部材13と、を備える。ケーシング10は、排気音を低減するための排気流路を内部に有する。具体的には、ケーシング10の内部は、第1セパレータ21と第2セパレータ22とにより、第1室31、第2室32及び第3室33の3室に区画されている。
【0025】
第1室31は、後蓋部材12と第1セパレータ21との間に形成される。第2室32は、第1セパレータ21と第2セパレータ22との間に形成される。第3室33は、第2セパレータ22と前蓋部材13との間に形成される。第1セパレータ21には、第1室31と第2室32とを連通する連通孔211が形成されている。第2セパレータ22には、第2室32と第3室33とを連通する連通孔221が形成されている。
【0026】
また、マフラ1は、内燃機関からの排気ガスが導入されるインレットパイプ41を備える。インレットパイプ41は、前蓋部材13、第2セパレータ22及び第1セパレータ21を貫通して設けられている。インレットパイプ41は、ケーシング10の内部において2つの下流端に分岐している。一方の下流端は、第1室31に開口し、他方の下流端は、第3室33に開口している。第3室33に開口した下流端には、後述する第1の弁装置100が設けられている。また、第3室33におけるインレットパイプ41の外周面には、インレットパイプ41の内部空間と第3室33とを連通する貫通孔411が形成されている。
【0027】
また、マフラ1は、図示しないテールパイプに接続されて排気ガスをケーシング10から排出するアウトレットパイプ42を備える。アウトレットパイプ42は、後蓋部材12及び第1セパレータ21を貫通し、その上流端を第2室32に開口して設けられている。
【0028】
アウトレットパイプ42の上流端には、アウトレットパイプ42の上流の排気流路を形成するケース43が接続されている。ケース43における下流部431は、アウトレットパイプ42の上流端の外径と同程度の内径の筒状である。下流部431には、アウトレットパイプ42の上流端が挿入された状態で固定されている。一方、ケース43における上流部432は、後述する第2の弁装置200が収容される部分であり、下流部431よりも内径が大きい筒状である。上流部432と下流部431とは、内径が徐々に変化する中間部により連結されている。上流部432における上流端は、第2セパレータ22を貫通し、第3室33に開口している。また、上流部432における上流端には、当該上流端の開口における外縁部を覆うとともに中央に円孔を形成する環状のフランジ433が設けられている。第2の弁装置200は、フランジ433に囲まれた開口432を開閉する。フランジ433には、第2の弁装置200により開口432が閉じられた状態においても第3室33とケース43の内部とを連通する貫通孔434が形成されている。
【0029】
なお、
図1に示されるマフラ1の構成、特に、第1の弁装置100及び第2の弁装置200は、模式的なものであり、正確な構造を示すものではない。第1の弁装置100及び第2の弁装置200の具体的な構造は以下で述べられている。
【0030】
図2、
図3A及び
図3Bに示すように、第1の弁装置100は、弁体110と、支持体120と、閉弁機構130と、を備える。
弁体110は、概略円板状の本体部111と、本体部111の左右両側から立ち上がるように形成された左右一対の側板112と、を備える。
【0031】
支持体120は、概略円環状の本体部121と、本体部121の左右両側から立ち上がるように形成された左右一対の側板122と、を備える。支持体120は、弁体110を第1の回転軸線C1を中心に回転移動可能に支持する。
【0032】
閉弁機構130は、排ガスの圧力に反して弁体110を閉位置に維持させるための外力を弁体110に加える。この閉弁機構130は、
図6Bにおいて実線で示すように、弁体110の開き始めにおいて弁体110に対する閉方向に加わる荷重が極大になる荷重特性(以下「第1の荷重特性」という。)を有する。ここでいう極大とは、弁体110に対する閉方向に加わる荷重を弁体110の開度の関数とみたときの局所的な最大を意味し、必ずしも全域的な最大に一致するとは限られない。
【0033】
閉弁機構130は、リンク140と、付勢部材170と、を備える。リンク140は、互いに回転移動可能に接続された第1のリンク形成部材150及び第2のリンク形成部材160を備える。リンク140は、第1のリンク形成部材150が支持体120によって回転移動可能に支持され第2のリンク形成部材160が弁体110によって回転移動可能に支持される配置である第1の配置で、支持体120及び弁体110を連結する。
【0034】
第1のリンク形成部材150は、互いに対向する左右一対の対向板151と、これら一対の対向板151を連結する連結板152と、を備える。第1のリンク形成部材150は、支持体120により第2の回転軸線C2を中心に回転移動可能に支持される。また、第1のリンク形成部材150は、第2のリンク形成部材160と第3の回転軸線C3を中心に回転移動可能に連結される。
【0035】
第2のリンク形成部材160は、互いに対向する左右一対の対向板161と、これら一対の対向板161を連結する連結板162と、を備える。第2のリンク形成部材160は、第1のリンク形成部材150に加え、弁体110と第4の回転軸線C4を中心に回転移動可能に連結される。
【0036】
このように、弁体110、支持体120、第1のリンク形成部材150及び第2のリンク形成部材160が、4つの回転軸線C1〜C4を介して互いに回転移動可能に連結され、リンク式のトグル機構(換言すればリンク機構)が構成されている。
【0037】
付勢部材(本実施形態ではコイルバネ)170は、第4の回転軸線C4を中心軸とする軸部に取り付けられており、弁体110及び第2のリンク形成部材160を閉弁時の位置関係(換言すれば角度)に近づける方向に付勢する。
【0038】
リンク140は、第1のリンク形成部材150の長さ(具体的にはリンク長さ)と、第2のリンク形成部材160の長さ(具体的にはリンク長さ)と、が異なるように設計されている。ここでいう第1のリンク形成部材150のリンク長さとは、第2の回転軸線C2と第3の回転軸線C3との間の距離であり、換言すれば第1のリンク線L1の長さである。また、第2のリンク形成部材160のリンク長さとは、第3の回転軸線C3と第4の回転軸線C4との間の距離であり、換言すれば第2のリンク線L2の長さである。この例では、第2のリンク形成部材160のリンク長さL2が、第1のリンク形成部材150のリンク長さL1よりも長い。
【0039】
また、リンク140は、第1のリンク形成部材150における支持体120によって支持される部分の第2の回転軸線C2に沿った幅と、第2のリンク形成部材160における弁体110によって支持される部分の第4の回転軸線C4に沿った幅と、が同一の幅W1に設計されている。具体的には、第1のリンク形成部材150の各対向板151は、一定の幅W1で平行に形成されている。これに対し、第2のリンク形成部材160の対向板161には、幅W1で平行に位置する一対の第1の板部163が形成されている。また、対向板161には、幅W1よりも広い幅W2で平行に位置する一対の第2の板部164が形成されている。さらに、対向板161には、第1の板部163と第2の板部164とを連結する一対の第3の板部165が形成されている。第2のリンク形成部材160の対向板161における第2の板部164は、第1のリンク形成部材150の対向板151の端部を外側から挟むように位置する。
【0040】
このため、
図4A及び
図4Bに示すように、トグル機構の特性が異なる弁装置100Rを同じ部品で製造することが可能となる。弁装置100Rは閉弁機構130Rを備える。閉弁機構130Rでは、閉弁機構130における配置である第1の配置とは逆向きの配置である第2の配置で、リンク140が使用されている。具体的には、第1のリンク形成部材150が弁体110によって回転移動可能に支持され、第2のリンク形成部材160が支持体120によって回転移動可能に支持される。つまり、リンク140は、長さの異なる第1のリンク形成部材150及び第2のリンク形成部材160の配置を入れ替え可能な形状である。
【0041】
一方、
図5に示すように、第2の弁装置200は、弁体230と、支持体240と、付勢部材250と、を備える。
弁体230は、概略円板状の本体部231と、本体部231の左右両側から立ち上がるように形成された左右一対の側板232と、を備える。
【0042】
支持体240は、概略円環状の本体部241と、本体部241の左右両側から立ち上がるように形成された左右一対の側板242と、を備える。支持体240は、弁体230を回転軸線Dを中心に回転移動可能に支持する。
【0043】
付勢部材(本実施形態ではコイルバネ)250は、回転軸線Dを中心軸とする軸部に取り付けられており、排ガスの圧力に反して弁体230を閉位置に維持させるための外力を弁体230に加える。
【0044】
つまり、第2の弁装置200は、弁体230及び支持体240の基本的な構成は第1の弁装置100と同じであるが、閉弁機構130に代えて付勢部材250のみを備える点で、第1の弁装置100と相違する。このため、
図6Bにおいて破線で示すように、第2の弁装置200、特に付勢部材250は、弁体230の開度が大きくなるほど弁体230に対する閉方向に加わる荷重が大きくなる荷重特性(以下「第2の荷重特性」という。)を有する。
【0045】
また、本実施形態では、第1の弁装置100の閉弁機構130及び第2の弁装置200の付勢部材250は、弁体110,230の開き始めにおいて弁体110,230に対する閉方向に加わる荷重が互いに異なるように設計されている。具体的には、後述するように、第1の弁装置100が第2の弁装置200よりも後に開弁するように設計されている。
【0046】
[1−2.作用]
次に、マフラ1の作用について
図1を用いて説明する。まず、内燃機関の回転数が低い状態では、排ガスの圧力が低く、インレットパイプ41内と第3室33内との圧力差が小さい。この状態でインレットパイプ41内の排ガスの圧力が第1の弁装置100の弁体110に及ぼす作用力は、第1の弁装置100の閉弁機構130による荷重及び第3室33内の排ガスの圧力が弁体110に及ぼす作用力よりも小さい。このため、インレットパイプ41の第3室33に開口した下流端は、第1の弁装置100により閉塞されている。
【0047】
同様に、アウトレットパイプ42内と第3室33内との圧力差は小さく、この状態で第3室33内の排ガスの圧力が第2の弁装置200の弁体230に及ぼす作用力は、第2の弁装置200の付勢部材250による荷重及びアウトレットパイプ42内の排ガスの圧力が弁体230に及ぼす作用力よりも小さい。このため、アウトレットパイプ42の上流側開口は、第2の弁装置200により閉塞されている。つまり、内燃機関の回転数が低い状態では、第1の弁装置100及び第2の弁装置200が共に閉弁している第1状態が実現される。
【0048】
第1状態において、内燃機関の排ガスは、
図1において矢印で示すように、インレットパイプ41に形成された貫通孔411を介して第3室33に導入される。また、排ガスは、インレットパイプ41の第1室31に開口した下流端から第1室31に導入される。その結果、排ガスは、拡張・共鳴効果により消音される。
【0049】
第1室31の排ガスは、第1セパレータ21の連通孔211を介して第2室32に導入されることにより、更に拡張・共鳴効果により消音される。
その後、第2室32の排ガスは、第2セパレータ22の連通孔221を介して第3室33に導入される。その結果、排ガスは、更に拡張・共鳴効果により消音される。
【0050】
一方、第3室33の排ガスは、ケース43のフランジ433の貫通孔434を介してアウトレットパイプ42内に流入し、ケーシング10から排出される。
内燃機関の回転数が上昇して排ガスの圧力が高くなると、第3室33内の排ガスの圧力が第2の弁装置200の弁体230に及ぼす作用力が、第2の弁装置200の付勢部材250による荷重及びアウトレットパイプ42内の排ガスの圧力が弁体230に及ぼす作用力よりも大きくなる。その結果、第2の弁装置200が開弁する。一方、第1の弁装置100の閉弁機構130による付勢力は、第1の弁装置100が第2の弁装置200よりも後に開弁するように設計されている。このため、一方の弁装置(具体的には第2の弁装置200)のみが開弁している第2状態が実現される。これにより、大きい流路面積が確保された状態で、排ガスがアウトレットパイプ42内に導入されるようになる。
【0051】
内燃機関の回転数が上昇して排ガスの圧力が更に高くなると、インレットパイプ41内の排ガスの圧力が第1の弁装置100の弁体110に及ぼす作用力が、第1の弁装置100の閉弁機構130による荷重及び第3室33内の排ガスの圧力が弁体110に及ぼす作用力よりも大きくなる。その結果、第1の弁装置100が開弁し、第1の弁装置100及び第2の弁装置200が共に開弁している第3状態が実現される。これにより、排ガスが、インレットパイプ41の第3室33に開口した下流端から第3室33に導入されるようになる。
【0052】
[1−3.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)本実施形態では、内燃機関の回転数が上昇するにつれて、マフラ1の状態が、第1状態から第2状態へ遷移し、更に第2状態から第3状態へと遷移する。このため、これらの各状態に応じて3段階の排気音を発生させることができる。
【0053】
(2)本実施形態の構成によれば、第3状態よりも排気音が静かな第1状態及び第2状態の期間を十分確保しつつ、第3状態における圧力損失を抑制することができる。
すなわち、比較例として、第1の弁装置100が閉弁機構130に変えて付勢部材のみを備える構成を想定する。この構成では、
図6Aに示すように、2つの弁装置100,200が共に第2の荷重特性を有する。この構成では、第1状態及び第2状態の期間を十分に確保するために、付勢部材の付勢力を高めに設計して弁体110,230の開き始めにおける荷重を大きくすると、第3状態において弁体110,230が十分に開きにくくなる。したがって、第3状態における圧力損失が大きくなる。逆に、第3状態の圧力損失を抑制するために、付勢部材の付勢力を低めに設計して弁体110,230の開き始めにおける荷重を小さくすると、第1状態及び第2状態の期間を十分に確保することができない。
【0054】
これに対し、本実施形態では、第1の弁装置100は閉弁機構130を備える。閉弁機構130は、弁体110の開き始めにおいて弁体110に対する閉方向に加わる荷重が極大になる第1の荷重特性を有する。このため、閉弁機構130に代えて付勢部材のみを用いた場合と比較して、低圧時に弁体110が開き始めるのに要する排ガスの圧力を高くすることができる。また、弁体110の開度の増加に伴う弁体110に対する閉方向に加わる荷重の増加が抑制されるため、高圧時の弁体110の開き不足を抑制することができる。したがって、本実施形態の構成によれば、第1の弁装置100及び第2の弁装置200の両方が付勢部材のみを弁体を閉位置に維持する維持機構として備える構成と比較して、第1状態及び第2状態の期間を十分確保しつつ、第3状態における圧力損失を抑制することができる。
【0055】
(3)本実施形態では、第1の弁装置100は、インレットパイプ41の第3室33に開口した下流端に設けられ、第2の弁装置200は、アウトレットパイプ42の上流端に設けられている。つまり、第1の弁装置100は、第2の弁装置200の上流に設けられている。したがって、第1の弁装置100及び第2の弁装置200のいずれか一方が他方の上流に設けられていない構成、つまり、第1の弁装置100が開閉する排気流路と第2の弁装置200が開閉する排気流路とが並列である構成と比較して、マフラの構成を簡素にすることができる。
【0056】
(4)本実施形態では、第2の弁装置200の付勢部材250は、弁体230の開度が大きくなるほど弁体230に対する閉方向に加わる荷重が大きくなる第2の荷重特性を有する。このため、弁体230が開いた後における排ガスの圧力の上昇に伴う弁体230の開度の変化が、閉弁機構130と比較して緩やかになる。したがって、特に第3状態において、排ガスの圧力の上昇に伴い排気音が徐々に変化するようにすることができる。
【0057】
(5)本実施形態では、閉弁機構130は、リンク140と付勢部材170とを備える。リンク140は、第1のリンク形成部材150が支持体120によって回転移動可能に支持され第2のリンク形成部材160が弁体110によって回転移動可能に支持される配置で、支持体120及び弁体110を連結する。付勢部材170は、弁体110を閉方向へ付勢する。したがって、第1の荷重特性を安定化することができる。
【0058】
すなわち、第1の荷重特性は、例えば弁体を閉方向へ付勢する付勢部材と、弁体が閉位置から開方向へ回転移動する際に抵抗となる抵抗部材と、を備える構成でも得ることができる。ここでいう抵抗部材は、例えば、開方向への弁体の回転移動を妨げるように位置し、弁体の回転移動に伴い弾性変形することで弁体の回転移動を許容する部材(例えば板バネなどの弾性部材)であってもよい。第2の弁装置200と同様の構成において、弾性変形可能な金属製の帯状板材の長手方向における一端近傍を支持体に固定する。そして、帯状板材の長手方向における他端近傍を、開方向への弁体の回転移動を妨げるように弁体に係合させる。この構成では、帯状板材における弁体に係合する部位である係合部を外側に押しのけるように弾性変形させるのに要する力が、弁体の回転移動に対する抵抗として作用する。その結果、第1の荷重特性が得られる。しかしながら、この構成では、係合部の弁体への係合の仕方によって荷重特性が変化し得る。
【0059】
これに対して、本実施形態の閉弁機構130によれば、帯状板材を用いる上記構成と比較して、第1の荷重特性を安定化することができる。
なお、本実施形態では、閉弁機構130及び付勢部材250が維持機構の一例に相当し、閉弁機構130が第1種の維持機構の一例に相当し、付勢部材250が第2種の維持機構の一例に相当する。
【0060】
[2.第2実施形態]
[2−1.構成]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0061】
図7に示す第2実施形態のマフラ5は、ケーシング50を備える。ケーシング50は、筒状のシェル部材51と、シェル部材51の両端開口部を閉塞する後蓋部材52及び前蓋部材53と、を備える。ケーシング50の内部は、第1セパレータ61と第2セパレータ62とにより、第1室71、第2室72及び第3室73の3室に区画されている。
【0062】
第1セパレータ61には、第1室71と第2室72とを連通する2つの連通孔611,612が形成されている。連通孔611は、連通孔612よりも大きく形成されている。第1セパレータ61には、連通孔611を開閉するために、第1実施形態と同様の第1の弁装置100が設けられている。
【0063】
第2セパレータ62には、第2室72と第3室73とを連通する2つの連通孔621,622が形成されている。連通孔621は、連通孔622よりも大きく形成されている。第2セパレータ62の連通孔621は、第1セパレータ61の連通孔611と同程度の大きさである。また、第2セパレータ62の連通孔622は、第1セパレータ61の連通孔612と同程度の大きさである。さらに、第2セパレータ62における連通孔621の位置と第1セパレータ61における連通孔611の位置とは、略同位置である。また、第2セパレータ62における連通孔622の位置は、第1セパレータ61における連通孔612の位置と略同位置である。第2セパレータ62には、連通孔621を開閉するために、第1実施形態と同様の第2の弁装置200が設けられている。
【0064】
また、マフラ5は、インレットパイプ81を備える。インレットパイプ81は、前蓋部材53及び第2セパレータ62を貫通し、その下流端を第2室72に開口して設けられている。
【0065】
さらに、マフラ5は、第1のアウトレットパイプ91と第2のアウトレットパイプ92とを備える。
第1のアウトレットパイプ91は、後蓋部材52を貫通し、その上流端を第1室71に開口して設けられている。
【0066】
第2のアウトレットパイプ92は、後蓋部材52、第1セパレータ61及び第2セパレータ62を貫通し、その上流端を第3室73に開口して設けられている。つまり、第2のアウトレットパイプ92は、第1のアウトレットパイプ91よりも長く形成されている。なお、本実施形態では、第1のアウトレットパイプ91と第2のアウトレットパイプ92とは内径が同一である。
【0067】
このように、排気流路は、第1の分岐流路と第2の分岐流路とに分岐している。第1の分岐流路は、第2室72から第1セパレータ61の連通孔611を介して第1室71に流入し、第1室71から第1のアウトレットパイプ91の下流側開口に至る分岐流路である。第2の分岐流路は、第2室72から第2セパレータ62の連通孔621を介して第3室73に流入し、第3室73から第2のアウトレットパイプ92の下流側開口に至る分岐流路である。
【0068】
なお、
図7に示されるマフラ5の構成、特に、第1の弁装置100及び第2の弁装置200は、模式的なものであり、正確な構造を示すものではない。
[2−2.作用]
次に、マフラ5の作用について
図7を用いて説明する。まず、内燃機関の回転数が低い状態では、排ガスの圧力が低く、第2室72内と第1室71内との圧力差が小さい。この状態で第2室72内の排ガスの圧力が第1の弁装置100の弁体110に及ぼす作用力は、第1の弁装置100の閉弁機構130による荷重及び第1室71内の排ガスの圧力が弁体110に及ぼす作用力よりも小さい。このため、第1セパレータ61の連通孔611は、第1の弁装置100により閉塞されている。
【0069】
同様に、第2室72内と第3室73内との圧力差は小さく、この状態で第2室72内の排ガスの圧力が第2の弁装置200の弁体230に及ぼす作用力は、第2の弁装置200の付勢部材250による荷重及び第3室73内の排ガスの圧力が弁体230に及ぼす作用力よりも小さい。このため、第2セパレータ62の連通孔621は、第2の弁装置200により閉塞されている。つまり、内燃機関の回転数が低い状態では、第1状態が実現される。
【0070】
第1状態において、内燃機関の排ガスは、
図7において矢印で示すように、インレットパイプ81から第2室72に導入されることにより、拡張・共鳴効果により消音される。第2室72の排ガスは、第1セパレータ61の連通孔612を介して第1室71に導入されることにより、更に拡張・共鳴効果により消音される。第1室71の排ガスは、第1のアウトレットパイプ91内に流入し、ケーシング50から排出される。
【0071】
また、第2室72の排ガスは、第2セパレータ62の連通孔622を介して第3室73に導入されることにより、更に拡張・共鳴効果により消音される。第3室73の排ガスは、第2のアウトレットパイプ92内に流入し、ケーシング50から排出される。
【0072】
内燃機関の回転数が上昇して排ガスの圧力が高くなると、第2室72内の排ガスの圧力が第2の弁装置200の弁体230に及ぼす作用力が、第2の弁装置200の付勢部材250による荷重及び第3室73内の排ガスの圧力が弁体230に及ぼす作用力よりも大きくなる。その結果、第2の弁装置200が開弁し、第2室72の排ガスは、大きい流路面積が確保された状態で第3室73に導入されるようになる。一方、第1の弁装置100は、この状態ではまだ閉弁している。つまり、第2状態が実現される。
【0073】
内燃機関の回転数が上昇して排ガスの圧力が更に高くなると、第2室72内の排ガスの圧力が第1の弁装置100の弁体110に及ぼす作用力が、第1の弁装置100の閉弁機構130による荷重及び第1室71内の排ガスの圧力が弁体110に及ぼす作用力よりも大きくなる。その結果、第1の弁装置100が開弁し、第3状態が実現される。これにより、第2室72の排ガスは、大きい流路面積が確保された状態で第1室71に導入されるようになる。
【0074】
[2−3.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1)、(2)、(4)及び(5)に加え、以下の効果が得られる。
【0075】
本実施形態では、第1のアウトレットパイプ91と第2のアウトレットパイプ92とは長さが異なり、排気流路は、第1の分岐流路と第2の分岐流路とに分岐する。そして、第1の弁装置100は、第1の分岐流路を開閉し、第2の弁装置200は、第2の分岐流路を開閉する。
【0076】
この構成では、第1のアウトレットパイプ91と第2のアウトレットパイプ92とは長さが異なるため、共振する周波数帯が異なる。よって、それぞれのアウトレットパイプ91,92から発せられる排気音の大きさや高さが異なり得る。このように、第1のアウトレットパイプ91の長さと第2のアウトレットパイプ92の長さとを変えることで、2つのアウトレットパイプ91,92の長さが同一である構成と比較して、第1状態から第3状態にかけて発せられる排気音を所望の音に調整しやすくすることができる。
【0077】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0078】
(1)第1の弁装置100及び第2の弁装置200の設置位置は、上記各実施形態における設置位置に限られるものではない。例えば、上記各実施形態における第1の弁装置100と第2の弁装置200との設置位置を入れ替えた構成であってもよい。また、上記各実施形態では、第2の弁装置200が第1の弁装置100よりも先に開弁する構成を例示したが、弁装置の開弁の順序はこれに限られるものではない。例えば、第1の弁装置100が第2の弁装置200よりも先に開弁する構成であってもよい。
【0079】
(2)上記各実施形態では、第1の弁装置100が、弁体110の開き始め、換言すれば、弁体110の開度が最大開度よりも小さい第1の開度において弁体110に対する閉方向に加わる荷重が極大になる第1種の維持機構を有していた。一方、第2の弁装置200が、弁体の開度が大きくなるほど弁体に対する閉方向に加わる荷重が大きくなる第2種の維持機構を有していた。しかし、弁装置の組み合わせはこれに限られるものではない。
【0080】
例えば、第1の弁装置及び第2の弁装置のいずれも第1種の維持機構を有していてもよい。このような構成によれば、第1の弁装置及び第2の弁装置のうちの少なくとも一方が第2種の維持機構を有する構成と比較して、第1状態及び第2状態の期間を十分確保しつつ、第3状態における圧力損失を抑制することができる。
【0081】
また、第1の弁装置及び第2の弁装置の両方が第1種の維持機構を有する構成は、例えば、次のように実現されてもよい。
すなわち、第1の弁装置として、
図3A及び
図3Bに示す第1の弁装置100を使用する一方、第2の弁装置として
図4A及び
図4Bに示す弁装置100Rを使用する。このような構成によれば、長さの異なる第1のリンク形成部材150及び第2のリンク形成部材160の配置を入れ替えることで、弁体の開き始めにおいて弁体に対する閉方向に加わる荷重であるセット荷重等を変えられる。よって、セット荷重が異なる第1の弁装置及び第2の弁装置を同じ部品で製造することが可能となる。したがって、部品点数を減らすことができるため、製造コストを減少させることができる。
【0082】
また、第1種の維持機構を有する2つの弁装置の組合せはこれに限られるものではない。例えば、第1の弁装置100及び弁装置100R以外の組合せ、換言すれば、第1種の維持機構を有する2つの弁装置であって第1のリンク形成部材150及び第2のリンク形成部材160の配置を入れ替えた関係にない2つの弁装置が使用されてもよい。
【0083】
(3)上記各実施形態では、付勢部材170は、第4の回転軸線C4を中心軸とする軸部に取り付けられ、弁体110及び第2のリンク形成部材160を閉弁時の位置関係(換言すれば角度)に近づける方向に作用していた。しかし、付勢部材170の取付位置はこれに限られるものではない。付勢部材170は、例えば、第2の回転軸線C2を中心軸とする軸部に取り付けられ、支持体120及び第1のリンク形成部材150を閉弁時の位置関係に近づける方向に作用してもよい。また例えば、第3の回転軸線C3を中心軸とする軸部に取り付けられ、第1のリンク形成部材150及び第2のリンク形成部材160を閉弁時の位置関係に近づける方向に作用してもよい。
【0084】
(4)上記各実施形態では、付勢部材250としてコイルバネを例示したが、付勢部材はこれに限定されるものではない。付勢部材は、例えば他の種類のバネや、バネ以外の弾性体であってもよい。また、第2種の維持機構は付勢部材250に限られるものではなく、例えば、弁体に対して閉方向に荷重を加える錘であってもよい。
【0085】
(5)上記各実施形態では、第1種の維持機構として閉弁機構130を例示したが、第1種の維持機構はこれに限られるものではない。第1種の維持機構は、例えば、弁体を閉方向へ付勢する付勢部材と、弁体が閉位置から開方向へ回転移動する際に抵抗となる抵抗部材と、を備える構成であってもよい。具体的には、第1種の維持機構は、例えば、弾性変形可能な金属製の帯状板材を抵抗部材として備える。そして、帯状板材の長手方向における一端近傍を支持体に固定する。また、帯状板材の長手方向における他端近傍を、開方向への弁体の回転移動を妨げるように弁体に係合させる。この構成では、帯状板材における弁体に係合する部位である係合部を外側に押しのけるように弾性変形させるのに要する力が、弁体の回転移動に対する抵抗として作用する。その結果、第1の荷重特性が得られる。
【0086】
(6)上記各実施形態では、マフラ1,5は、2つの弁装置100,200を備えていたが、弁装置の数はこれに限られるものではない。マフラは、例えば3つ以上の弁装置を備えていてもよい。
【0087】
(7)マフラの構造は上記各実施形態における構造に限られるものでない。
例えば、
図8に示すマフラ6は、ケーシング65を備える。ケーシング65は、シェル部材66と、シェル部材66の両端開口部を閉塞する後蓋部材67及び前蓋部材68と、を備える。ケーシング65の内部は、第1セパレータ69と第2セパレータ70とにより、第1室75、第2室76及び第3室77の3室に区画されている。第1セパレータ69には、第1室75と第2室76とを連通する連通孔691が形成されている。また、第2セパレータ70には、第2室76と第3室77とを連通する連通孔701が形成されている。
【0088】
マフラ6は、第1実施形態と同様のインレットパイプ41を備える。この例におけるインレットパイプ41の配置等は第1実施形態と同様である。特に、第3室77に開口したインレットパイプ41の下流端には第1の弁装置100が設けられている。
【0089】
また、マフラ6は、第1のアウトレットパイプ93と第2のアウトレットパイプ94とを備える。
第1のアウトレットパイプ93は、後蓋部材67を貫通して設けられている。第1のアウトレットパイプ93の上流端には、第1実施形態と同様のケース43が接続されている。ケース43における上流部432には、第2の弁装置200が収容される。上流部432における上流端は、第1セパレータ69を貫通し、第2室76に開口している。
【0090】
第2のアウトレットパイプ94は、J字状に湾曲した形状を有し、その上流端を第2室76に開口し、その下流端をマフラ6外に開口して設けられている。第2のアウトレットパイプ94は、第2セパレータ70を2箇所貫通し、第1セパレータ69及び後蓋部材67のそれぞれを1箇所貫通する。第2のアウトレットパイプ94は、第1のアウトレットパイプ93よりも長く形成されている。
【0091】
この構成では、第2のアウトレットパイプ94を湾曲させているため、第2のアウトレットパイプが直線状の構成と比較して、第2のアウトレットパイプ94を長く形成することができる。その結果、所望の音に調整しやすくすることができる。
【0092】
また、
図9に示すマフラ7は、ケーシング82を備える。ケーシング82は、シェル部材83と、シェル部材83の両端開口部を閉塞する後蓋部材84及び前蓋部材85と、を備える。ケーシング82の内部は、第1セパレータ86と第2セパレータ87とにより、第1室88、第2室89及び第3室90の3室に区画されている。
【0093】
第1セパレータ86には、第1室88と第2室89とを連通する2つの連通孔861,862が形成されている。第1セパレータ86には、連通孔861を開閉するために、第1実施形態と同様の第1の弁装置100が設けられている。また、第2セパレータ87には、第2室89と第3室90とを連通する2つの連通孔871,872が形成されている。第2セパレータ87には、連通孔871を開閉するために、第1実施形態と同様の第2の弁装置200が設けられている。
【0094】
マフラ7は、第2実施形態と同様のインレットパイプ81を備える。この例におけるインレットパイプ81の配置等は第2実施形態と同様である。
また、マフラ7は、第1のアウトレットパイプ95と第2のアウトレットパイプ96とを備える。
【0095】
第1のアウトレットパイプ95は、後蓋部材84を貫通し、その上流端を第1室88に開口して設けられている。
第2のアウトレットパイプ96は、J字状に湾曲した形状を有し、その上流端を第3室90に開口し、その下流端をマフラ7外に開口して設けられている。第2のアウトレットパイプ96は、第2セパレータ87を2箇所貫通し、前蓋部材85を1箇所貫通する。第2のアウトレットパイプ96は、第1のアウトレットパイプ95よりも長く形成されている。
【0096】
この例では、第1のアウトレットパイプ95は後蓋部材84を貫通するのに対し、第2のアウトレットパイプ96は前蓋部材85を貫通する。換言すれば、第1のアウトレットパイプ95の下流端と第2のアウトレットパイプ96の下流端とは、ケーシング82を基準として反対側に位置する。つまり、マフラ7は、デュアルタイプマフラである。
【0097】
また、上記各実施形態では、インレットパイプ41,81は前蓋部材13,68を貫通して設けられていたが、インレットパイプの設置位置はこれに限られるものではない。インレットパイプは、例えば、シェル部材を貫通して設けられていてもよい。同様に、アウトレットパイプの設置位置も上記各実施形態における設置位置に限られるものではない。
アウトレットパイプは、例えば、シェル部材を貫通して設けられていてもよい。
【0098】
(8)上記第2実施形態では、第1のアウトレットパイプ91と第2のアウトレットパイプ92とは内径が同一であった。しかし、2つのアウトレットパイプの構成はこれに限られるものではない。2つのアウトレットパイプは、例えば、長さが異なり、かつ、内径も異なっていてもよい。アウトレットパイプの内径が変われば、共振する周波数帯が変わるため、アウトレットパイプから発せられる排気音の大きさや高さが変わり得る。したがって、第1のアウトレットパイプと第2のアウトレットパイプとの長さに加えて内径も変えることで、2つのアウトレットパイプの長さだけが異なる構成と比較して、第1状態から第3状態にかけて発せられる排気音を所望の音に調整しやすくすることができる。
【0099】
(9)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。