特許第6491373号(P6491373)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6491373
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】吸着剤による水処理装置及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/28 20060101AFI20190318BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20190318BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   C02F1/28 D
   B01J20/20 B
   B01J20/28 Z
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-25840(P2018-25840)
(22)【出願日】2018年2月16日
【審査請求日】2018年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 直哉
(72)【発明者】
【氏名】山口 太秀
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−263039(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/063097(WO,A1)
【文献】 特開2016−052654(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/163620(WO,A1)
【文献】 特開2016−036803(JP,A)
【文献】 特開平10−309567(JP,A)
【文献】 特開2018−130665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/28
B01J 20/20
B01J 20/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末活性炭の貯留槽と、この貯留槽から取り出された粉末活性炭を水と混和して活性炭スラリーを得る混和槽と、この活性炭スラリーを粉砕して微粉炭スラリーとする湿式粉砕機と、得られた微粉炭スラリーを貯留するバッファ槽と、このバッファ槽から取り出された微粉炭スラリーと前記湿式粉砕機を経由しない活性炭スラリーを、被処理水中に注入する注入手段とを備えたことを特徴とする吸着剤による水処理装置。
【請求項2】
粉末活性炭の貯留槽と、この貯留槽から取り出された粉末活性炭を水と混和して活性炭スラリーを得る混和槽と、この活性炭スラリーを粉砕して微粉炭スラリーとする湿式粉砕機と、得られた微粉炭スラリーを貯留するバッファ槽と、このバッファ槽から取り出された微粉炭スラリーと活性炭スラリーとを、被処理水の水質に応じて注入比率を制御しつつ被処理水中に注入する注入手段とを備えたことを特徴とする吸着剤による水処理装置。
【請求項3】
前記混和槽の出側に、活性炭スラリーを湿式粉砕機に供給する第1の管路と、活性炭スラリーを湿式粉砕機を経由することなく注入手段に供給する第2の管路とを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の吸着剤による水処理装置。
【請求項4】
前記混和槽の出側に、活性炭スラリーを湿式粉砕機に供給する第1の管路と、活性炭スラリーを湿式粉砕機を経由することなくバッファ槽に供給する第2の管路とを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の吸着剤による水処理装置。
【請求項5】
第1の管路と第2の管路との分岐位置に、分流機構を設けたことを特徴とする請求項3または4に記載の吸着剤による水処理装置。
【請求項6】
粉末活性炭を混和槽で水と混和して活性炭スラリーとし、この活性炭スラリーを湿式粉砕機により粉砕した微粉炭スラリーと、前記混和槽から引き出され湿式粉砕機を経由しない活性炭スラリーとを被処理水中に注入し、被処理水中の吸着質を活性炭に吸着させて除去することを特徴とする吸着剤による水処理方法。
【請求項7】
粉末活性炭を混和槽で水と混和して活性炭スラリーとし、この活性炭スラリーと、この活性炭スラリーを湿式粉砕機により粉砕した微粉炭スラリーとを、被処理水の水質に応じて注入比率を制御しつつ被処理水中に注入し、被処理水中の吸着質を活性炭に吸着させて除去することを特徴とする吸着剤による水処理方法。
【請求項8】
粉末活性炭の粒径D50を10〜30μmとし、微粉炭スラリー中の微粉炭粒径D50を1μm以下としたことを特徴とする請求項6または7に記載の吸着剤による水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水処理場などで用いられる吸着剤による水処理装置及び水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浄水処理においては、通常の水処理では除去することが難しいトリハロメタン前駆物質、ハロ酢酸前駆物質などの有機物や、異臭味の原因の1つである臭気物質など、通常の凝集分離では除去が難しい物質を除去するために、活性炭処理法が採用されている。この活性炭処理法は、粉末活性炭を吸着剤として被処理水に投入し、上記の臭気物質などの吸着質を活性炭に吸着させて除去する方法である。投入された粉末活性炭は、後段で凝集分離される。
【0003】
粉末活性炭としては通常、粒径D50が10〜30μm程度の市販品が用いられているが、活性炭吸着効率を高めるためには粒径を小さくすることが好ましい。そこで特許文献1には、市販の乾燥状態の粉末活性炭をオンサイトで乾式粉砕し、D50が2.3〜8.5μmとなるように微粉化したうえ、被処理水に投入する方法が開示されている。
【0004】
この方法を実施するためには、オンサイトに粉砕機を設置することとなるが、粉砕機の処理能力には上限がある。このため被処理水中の吸着質濃度が変動するおそれのある水源を利用している処理場では、複数台の粉砕機を設置し、水源の水質が悪化した場合にも対応できるようにしている。ところが、全粉砕機を稼動させるのは被処理水中の吸着質濃度が最大となった場合のみであり、その他のほとんどの場合には全粉砕機を稼動させる必要はない。このため平常時には粉砕機台数が過多となっており、設備コストの増大原因となっていた。
【0005】
またこの方法では乾燥粉砕された粉末活性炭を被処理水中に投入しているため、粉末活性炭を水中に均一分散させるために長時間が必要となり、被処理水中の吸着質濃度の急激な変動に対応しにくいという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−52654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、粉砕機の設置台数を抑制しつつ、被処理水中の吸着質濃度が最大となった場合にも迅速に対応できる、吸着剤による水処理装置及び水処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた請求項1の吸着剤による水処理装置は、粉末活性炭の貯留槽と、この貯留槽から取り出された粉末活性炭を水と混和して活性炭スラリーを得る混和槽と、この活性炭スラリーを粉砕して微粉炭スラリーとする湿式粉砕機と、得られた微粉炭スラリーを貯留するバッファ槽と、このバッファ槽から取り出された微粉炭スラリーと前記湿式粉砕機を経由しない活性炭スラリーを、被処理水中に注入する注入手段とを備えたことを特徴とするものである。
また、上記の課題を解決するためになされた請求項2の吸着剤による水処理装置は、粉末活性炭の貯留槽と、この貯留槽から取り出された粉末活性炭を水と混和して活性炭スラリーを得る混和槽と、この活性炭スラリーを粉砕して微粉炭スラリーとする湿式粉砕機と、得られた微粉炭スラリーを貯留するバッファ槽と、このバッファ槽から取り出された微粉炭スラリーと活性炭スラリーとを、被処理水の水質に応じて注入比率を制御しつつ被処理水中に注入する注入手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
なお、前記混和槽の出側に、活性炭スラリーを湿式粉砕機に供給する第1の管路と、活性炭スラリーを湿式粉砕機を経由することなく注入手段に供給する第2の管路とを設けることができる。また前記混和槽の出側に、活性炭スラリーを湿式粉砕機に供給する第1の管路と、活性炭スラリーを湿式粉砕機を経由することなくバッファ槽に供給する第2の管路と設けることができる。さらにこれらの第1の管路と第2の管路との分岐位置に、分流機構を設けることが好ましい。
【0010】
また上記の課題を解決するためになされた請求項6の吸着剤による水処理方法は、粉末活性炭を混和槽で水と混和して活性炭スラリーとし、この活性炭スラリーを湿式粉砕機により粉砕した微粉炭スラリーと、前記混和槽から引き出され湿式粉砕機を経由しない活性炭スラリーとを被処理水中に注入し、被処理水中の吸着質を活性炭に吸着させて除去することを特徴とするものである。
また、上記の課題を解決するためになされた請求項7の吸着剤による水処理方法は、粉末活性炭を混和槽で水と混和して活性炭スラリーとし、この活性炭スラリーと、この活性炭スラリーを湿式粉砕機により粉砕した微粉炭スラリーとを、被処理水の水質に応じて注入比率を制御しつつ被処理水中に注入し、被処理水中の吸着質を活性炭に吸着させて除去することを特徴とするものである。
【0011】
なお、粉末活性炭の粒径D50を10〜30μmとし、微粉炭スラリー中の微粉炭粒径D50を1μm以下とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、粉末活性炭を水と混和して活性炭スラリーとしたうえで、この活性炭スラリーを湿式粉砕して微粉炭スラリーとする。このため粉砕機の発熱を抑えることができ粉塵爆発などの危険がなくなり、乾式粉砕機よりも処理能力を高めることができる。しかも微粉炭スラリーを貯留するバッファ槽を設けたので、微粉炭スラリーを必要としない時間に粉砕機を作動させて微粉炭スラリーを予め貯留しておくことができる。従って従来よりも粉砕機の設置台数を抑制することができる。
【0013】
また本発明によれば、活性炭スラリーと微粉炭スラリーとを被処理水中に注入することができるので、被処理水中の吸着質濃度が増加した場合には活性炭吸着効率の高い微粉炭スラリーのほか、活性炭スラリーの量を増加させることにより、処理水質を維持することができる。また被処理水中の吸着質濃度が急速に増加した場合にも、バッファ槽に貯留されていた微粉炭スラリーの被処理水への注入量を高めることにより、迅速な対応が可能である。
【0014】
また本発明によれば、バッファ槽における活性炭スラリーと微粉炭スラリーとの混和が液−液混和になるので、粒径の異なる活性炭を短時間に効率よく混和することができる。さらに被処理水への注入もスラリー状態で行われるので液−液混和となり、被処理水中に速やかに均一分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態の装置構成を示す説明図である。
図2】注入手段の説明図である。
図3】他の注入手段の説明図である。
図4】本発明の第2の実施形態の装置構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態の装置構成を示す図であり、1は粉末活性炭の貯留槽であって、D50が10〜30μmの市販の粉末活性炭が貯留されている。2はこの貯留槽1から取り出された粉末活性炭を水と混和して活性炭スラリーを得る混和槽である。混和槽2には撹拌手段3が設けられている。貯留槽1を混和槽2から離れた場所に設置し、粉末活性炭を混和槽2までポンプ輸送することも可能であるが、本実施形態では貯留槽1は混和槽2の近傍に設置されている。
【0017】
混和槽2で得られた活性炭スラリーは、管路4に設けられたポンプ5によって分流機構6へ送られる。本実施形態ではポンプ5はスクリューポンプであるが、スラリーの搬送性能に優れた一軸偏芯ポンプを使用することもできる。
【0018】
分流機構6は、管路4を流れてきた活性炭スラリーを第1の管路7と第2の管路8とに分流させる。分流機構6としては市販の一般的なスラリー分流機構を用いることができ、管路4に設けられた流量計9と第1の管路7に設けられた流量計10により各管路内を流れる活性炭スラリーの流量を測定し、第1の管路7に設けられたスラリー流量制御弁11の開度を制御して、第1の管路7と第2の管路8への分流比率を制御している。
【0019】
第1の管路7には、湿式粉砕機12が設けられている。この湿式粉砕機12は第1の管路7を通じて送られて来る活性炭スラリーを湿式粉砕し、微粉炭スラリーとする装置である。この湿式粉砕機12は乾式粉砕機とは異なり発熱を抑えることができるとともに、粉塵爆発などの危険がなく、乾式粉砕機よりも粉砕処理能力を高めることができる。また、乾式粉砕機とは異なり、活性炭を酸化させてしまうおそれもない。湿式粉砕機12としては、例えば湿式ビーズミルを用いることができる。粉砕された微粉炭スラリー中の微粉炭の粒径は特に限定されるものではないが、D50を1μm以下とすることが好ましく、これにより微粉炭の比表面積が大幅に増大するので、吸着効率を高めることができる。
【0020】
湿式粉砕機12により活性炭スラリーを湿式粉砕して得られた微粉炭スラリーは、バッファ槽13に貯留される。バッファ槽13は撹拌手段14を備えており、微粉炭スラリーを撹拌している。このように本発明ではバッファ槽13に微粉炭スラリーを貯留しておくことができるので、微粉炭スラリーを必要としない期間中にも湿式粉砕機11を稼働させて微粉炭スラリーを備蓄しておくことができ、湿式粉砕機12の台数を増加させなくてもよい利点がある。バッファ槽13に貯留された微粉炭スラリーは必要に応じて注入手段15に送られ、被処理水に注入される。
【0021】
一方、第2の管路8を流れてきた活性炭スラリーは流量制御弁16を介して注入手段14に送られ、被処理水に注入される。活性炭スラリーと微粉炭スラリーとの注入比率は被処理水の水質に応じて制御される。
【0022】
例えば、通常時には吸着性能に優れた微粉炭スラリーのみによる処理を行うことができる。微粉炭スラリーは活性炭スラリーよりも少量で同等の吸着効果を発揮するので、活性炭の使用量を削減してランニングコストを引き下げることができる。そして原水の吸着質濃度が微粉炭スラリーのみで処理可能なレベル(想定通常値)を超過した場合には、活性炭スラリーを併せて注入する。これにより大量の活性炭が原水中に注入されることとなり、水質の悪化を防止することができる。
【0023】
このほか、通常時にも微粉炭スラリーと活性炭スラリーとを併用注入することもできる。この場合には、活性炭購入費、粉砕動力費、活性炭使用量などからランニングコストを最小限にする注入比率を判断し、注入比率を制御すればよい。
【0024】
本発明では被処理水への活性炭の注入はスラリー状態で行われるので液−液混和となり、被処理水中に活性炭を速やかに均一分散させることができる。このため被処理水中の吸着質濃度が急激に増加した場合にも対応可能である。
【0025】
注入手段15としては、図2に示すように被処理水が流れる管路17にノズルから注入するものとしても、あるいは図3に示すように被処理水が供給される水槽18に注入し、撹拌する構造としてもよい。このように、粒径が異なる活性炭スラリーと微粉炭スラリーとが注入された被処理水中の吸着質は、活性炭に吸着され除去される。なお被処理水には後段で凝集剤が添加され、活性炭は凝集分離される。本発明においては粒径が小さい微粉炭が用いられるので、フロック化し易い利点がある。
【0026】
以上に説明した第1の実施形態では、第2の管路8を流れてきた活性炭スラリーと、バッファ槽13から送り出された微粉炭スラリーを、それぞれ別の注入手段15に送り、個別に被処理水に注入した。しかし図4に示す第2の実施形態では、第2の管路8を流れてきた活性炭スラリーをバッファ槽13に送り込み、バッファ槽13の撹拌手段14により混和したうえ、同一の注入手段15から被処理水に注入する。いずれの実施形態を採用しても、被処理水に注入される活性炭スラリーと微粉炭スラリーの量が変わらなければ、吸着効率はほぼ同様である。
【0027】
以上に説明したように、本発明によれば、従来のように被処理水中の吸着質濃度が最大となった場合に対応できるように多数の粉砕機を設置しておく必要がなく、粉砕機の設置台数を従来に半分程度にまで削減することができる。また微粉炭スラリーをバッファ槽13に貯留しておくことができるので、被処理水中の吸着質濃度が急激に増加してきた場合にも確実に対応し、処理水の水質を安定に維持することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 貯留槽
2 混和槽
3 撹拌手段
4 管路
5 ポンプ
6 分流機構
7 第1の管路
8 第2の管路
9 流量計
10 流量計
11 スラリー流量制御弁
12 湿式粉砕機
13 バッファ槽
14 撹拌手段
15 注入手段
16 流量制御弁
17 管路
18 水槽
【要約】
【課題】粉砕機の設置台数を抑制しつつ、被処理水中の吸着質濃度が最大となった場合にも迅速に対応できる、吸着剤による水処理装置及び水処理方法を提供する。
【解決手段】本発明の水処理装置は、粉末活性炭の貯留槽1と、貯留槽1から取り出された粉末活性炭を水と混和して活性炭スラリーを得る混和槽2と、この活性炭スラリーを粉砕して微粉炭スラリーとする湿式粉砕機12と、得られた微粉炭スラリーを貯留するバッファ槽13と、バッファ槽13から取り出された微粉炭スラリーと、前記活性炭スラリーとを被処理水中に注入する注入手段15とを備え、粒径の異なる活性炭を吸着剤として用いる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4