特許第6491387号(P6491387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6491387
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】化粧ブラシ
(51)【国際特許分類】
   A45D 33/36 20060101AFI20190318BHJP
   A45D 34/04 20060101ALI20190318BHJP
   A46B 5/00 20060101ALI20190318BHJP
   B05C 17/10 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   A45D33/36 Z
   A45D34/04 510A
   A46B5/00 A
   B05C17/10
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-151846(P2018-151846)
(22)【出願日】2018年8月10日
【審査請求日】2018年9月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518287618
【氏名又は名称】山下 一昭
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】山下 一昭
【審査官】 長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/115825(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0374099(US,A1)
【文献】 特開2007−21230(JP,A)
【文献】 特開2008−142558(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0000222(US,A1)
【文献】 特表2017−532122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/36
A45D 34/04
A46B 5/00
B05C 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシボディ(1)と、ブラシボディ(1)で固定支持される塗付チップ(2)とを備えており、
塗付チップ(2)は、エラストマーを素材にして扁平板状に形成されるチップ本体(4)と、チップ本体(4)の外面に静電植毛加工を施して形成される塗付層(5)とを備えており、
チップ本体(4)には一対の塗付面(6)が設けられており、塗付面(6)のそれぞれに幅方向に連続する複数の溝部(7)が形成されており、
一方の塗付面(6)に形成される溝部(7)と、他方の塗付面(6)に形成される溝部(7)とが、互い違い状に凹み形成されていることを特徴とする化粧ブラシ。
【請求項2】
チップ本体(4)がチップ基端(4a)側で厚く、チップ先端(4b)に近づくほど薄く形成されている請求項1に記載の化粧ブラシ。
【請求項3】
一方の塗付面(6)に形成される溝部(7)と、他方の塗付面(6)に形成される溝部(7)のそれぞれが、塗付チップ(2)の厚み中心を通る仮想中心軸線(P)と直交する直線溝で形成されている請求項1、または2に記載の化粧ブラシ。
【請求項4】
塗付面(6)と正対する側から見て、溝部(7)が山谷状ないし連続波形状に形成してある請求項1、または2に記載の化粧ブラシ。
【請求項5】
一対の塗付面(6)のそれぞれが、塗付チップ(2)の厚み中心を通る仮想中心軸線(P)に対して、同じ角度で傾斜するように形成されている請求項から4のいずれかひとつに記載の化粧ブラシ。
【請求項6】
一対の塗付面(6)に形成される複数の溝部(7)が、チップ基端(4a)からチップ先端(4b)寄りにわたって形成されており、
チップ本体(4)のチップ先端(4b)と、チップ先端(4b)寄りの溝部(7)との間に、面状の仕上げ塗付面(8)が形成されている請求項から5のいずれかひとつに記載の化粧ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チークブラシやフェイスブラシ、あるいはシャドウブラシとして使用されるチップ構造の化粧ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
チップ構造の化粧ブラシは、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1の化粧ブラシは支持具と、支持具に装着されるチップ構造の塗付体を備えている。塗付体は発泡ウレタンなどの弾性発泡材からなる芯材と、芯材の外面に配置される塗付要素と、芯材の内部に配置される保形体などで構成される。塗付要素は、ベルベットやパイル生地などの起毛生地を袋状に縫着、ないし熱溶着して形成されており、起毛面が露出する状態で芯材に装着されている。保形体は、プラスチック材を扁平な棒状に成形して形成されており、塗付体が過剰に変形するのを防いで、外形を適正な状態に保持するために設けられている。化粧ブラシを使用する場合には、固形あるいは半固形の化粧材の表面を起毛面で払拭して、粉状の化粧材を起毛面に保持させ、さらに起毛面で顔肌を払拭することにより粉状の化粧材を顔肌に塗付する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−57791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の化粧ブラシは、ブラシ穂が獣毛を束ねて形成された筆構造の化粧ブラシに比べて低コスト化できるうえ、化粧ブラシの用途に応じた外形形状に設定できる利点がある。しかし、芯材の内部に変形防止用の保形体が設けられているため、塗付体の起毛面が肌に押付けられる場合に肌反力が大きくなることが避けられず、筆構造の化粧ブラシのような柔軟でソフトな肌触り感が得られにくい。
【0005】
本発明の目的は、塗付チップが肌面に押付けられる場合の肌反力を極力小さくして、柔軟でソフトな肌触り感を発揮できる使い勝手に優れた化粧ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る化粧ブラシは、ブラシボディ1と、ブラシボディ1で固定支持される塗付チップ2を備えている。塗付チップ2は、エラストマーを素材にして扁平板状に形成されるチップ本体4と、チップ本体4の外面に静電植毛加工を施して形成される塗付層5を備えている。チップ本体4には一対の塗付面6が設けられており、塗付面6のそれぞれに幅方向に連続する複数の溝部7が形成されている。一方の塗付面6に形成される溝部7と、他方の塗付面6に形成される溝部7とは、互い違い状に凹み形成されている。
【0007】
図1に示すように、チップ本体4はチップ基端4a側で厚く、チップ先端4bに近づくほど薄く形成されている形態を採ることができる。
【0008】
一方の塗付面6に形成される溝部7と、他方の塗付面6に形成される溝部7のそれぞれが、塗付チップ2の厚み中心を通る仮想中心軸線Pと直交する直線溝で形成されている形態を採ることができる。
【0009】
塗付面6と正対する側から見て、溝部7は山谷状ないし連続波形状に形成することができる(図5参照)。
【0011】
一対の塗付面6のそれぞれは、塗付チップ2の厚み中心を通る仮想中心軸線Pに対して、同じ角度で傾斜するように形成されている形態を採ることができる(図1参照)。
【0012】
一対の塗付面6に形成される複数の溝部7は、チップ基端4a側からチップ先端4b寄りにわたって形成されており、チップ本体4のチップ先端4bと、チップ先端4b寄りの溝部7との間に、面状の仕上げ塗付面8が形成されている形態を採ることができる(図2参照)。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る化粧ブラシでは、塗付チップ2をエラストマー材で扁平板状に形成されるチップ本体4と、チップ本体4の外面に静電植毛加工を施して形成される塗付層5で構成し、チップ本体4の一対の塗付面6のそれぞれに複数の溝部7を形成するようにした。こうした化粧ブラシによれば、塗付層5に保持されている化粧材を顔肌に塗付する場合に、肌反力を受けたチップ本体4が複数の溝部7で屈曲することにより、チップ本体4の全体を容易に湾曲変形させることができる。また、チップ本体4が湾曲変形することで、塗付チップ2に作用する肌反力を吸収し軽減させることができる。従って、従来のチップ構造の化粧ブラシに比べて、柔軟でソフトな肌触り感を発揮できる使い勝手に優れた化粧ブラシを提供できる。また、塗付チップ2の塗付面6に複数の溝部7を形成したので、化粧材を塗付層5に保持させる場合に、塗付面6と各溝部7の隣接縁で化粧材を効果的に削ぎ取って、充分な量の化粧材を塗付層5に容易に保持させることができる。とくに、固形の化粧材を化粧ブラシに保持させる場合に、化粧材を効率良く、しかも軽やかに粉化して、粉化された充分な量の化粧材を塗付層5に速やかに保持させることができる。
【0014】
チップ本体4はチップ基端4a側で厚く、チップ先端4bに近づくほど薄く形成するようにした。こうした化粧ブラシによれば、チップ本体4をチップ基端4a側では曲がりにくくし、チップ先端4bに近づくほど変形抵抗を小さくして、曲がりやすくすることができる。また、化粧材を顔肌に塗付する場合には、チップ本体4の中途部からチップ先端4bの間の塗付層5で顔肌を払拭して化粧材を塗付することが多いので、肌反力を受けたチップ本体4の湾曲変形を促進して、塗付チップ2に作用する肌反力を吸収し軽減させることができる。従って、チップ本体4が、チップ基端4a側からチップ先端4bにわたって均一な厚みに形成してある場合に比べて、チップ本体4をより小さな肌反力で湾曲変形させて、化粧ブラシの肌触り感をさらに柔軟でソフトなものとすることができる。
【0015】
各塗付面6に形成される溝部7は、塗付チップ2の厚み中心を通る仮想中心軸線Pと直交する直線溝で形成するようにした。こうした化粧ブラシによれば、肌反力を各塗付面6とほぼ直交する向きに作用させて、チップ本体4を各溝部7において整然と屈曲させることができる。従って、チップ本体4が湾曲変形するときの肌反力を最小限化して、化粧ブラシの肌触り感をさらに柔軟でソフトなものとすることができる。なお、例えば複数の溝部7が仮想中心軸線Pに対して斜めに交差する状態で形成してある場合には、各溝部7と塗付面6を同時に湾曲させる必要があるので、塗付チップ2に作用する肌反力が、塗付面6の湾曲抵抗の分だけ大きくなることが避けられない。
【0016】
溝部7が山谷状ないし連続波形状に形成されていると、溝部7が直線溝で形成されている場合に比べて、塗付面6における溝部7の全長を大きくできるので、固形の化粧材を溝部7で効果的に削ぎ取って、粉状の化粧材をさらに効果的に塗付層5に保持させることができる。また、チップ本体4が肌反力を受けて湾曲変形するとき、溝部7と塗付面6が同時に湾曲するので、その分だけ化粧ブラシの腰を強くすることができる。従って、柔軟でソフトな肌触り感をある程度備えていながら、腰の強い化粧ブラシを望むユーザーの好みに対応することができる。
【0017】
一方の塗付面6に形成される溝部7と、他方の塗付面6に形成される溝部7とが、互い違い状に凹み形成されていると、化粧材を顔肌に塗付するとき、顔肌に接していない側の塗付面6では各溝部7を屈曲収縮させ、顔肌に接している側の塗付面6では各溝部7を拡開させた状態で、チップ本体4を整然と湾曲させることができる。また、屈曲収縮する各溝部7によって、湾曲変形するチップ本体4の肌触り感を柔軟でソフトなものとしながら、拡開状に変形する各溝部7の変形応力で、湾曲変形するチップ本体4に適度の腰の強さを付与することができる。従って、化粧材の顔肌への塗付を、柔軟でソフトな肌触り感を発揮しながら、メリハリの利いた状態で適確に、しかも手早く行うことができる。因みに、一方の塗付面6に形成される溝部7と、他方の塗付面6に形成される溝部7が対向状に形成されている場合には、対向する溝部7の間の肉厚が必要以上に小さくなる。そのため、肌反力を受けたチップ本体4は、顔肌に最も近い位置にある溝部7で折れ曲がりやすくなり、化粧材を顔肌に適確に塗付し、塗り延ばすことが困難となる。
【0018】
一対の塗付面6のそれぞれは、塗付チップ2の厚み中心を通る仮想中心軸線Pに対して、同じ角度で傾斜するように形成した。こうした化粧ブラシによれば、チップ本体4を前後に均等に湾曲変形させることができるので、使用者は前側の塗付層5と後側の塗付層5を意識しながら区別して使用する必要がなく、どちらの塗付層5であっても、粉状の化粧材を均等に保持させて顔肌に塗付できる。
【0019】
チップ本体4のチップ先端4bと、チップ先端4b寄りの溝部7との間に、面状の仕上げ塗付面8を形成するようにした。こうした化粧ブラシによれば、顔肌に塗付された粉状の化粧材の塗付部に沿って、仕上げ塗付面8で顔肌を優しく払拭することにより、化粧材の塗付むらをなくすことができる。さらに、粉状の化粧材の塗付部の周縁に沿って、仕上げ塗付面8で顔肌を優しく払拭することにより、化粧材の塗付部の輪郭をぼかして、違和感のない自然な塗付状態に仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施例1に係る化粧ブラシを示す、図2におけるA−A線断面図である。
図2】実施例1に係る化粧ブラシの正面図である。
図3】チップ本体の斜視図である。
図4】化粧ブラシの使用状態を示す説明図である。
図5】本発明の実施例2に係る化粧ブラシの一部破断正面図である。
図6】本発明の実施例3に係る化粧ブラシの一部破断正面図である。
図7】本発明の実施例4に係る化粧ブラシの縦断側面図である。
図8】本発明の実施例5に係る化粧ブラシの縦断側面図である。
図9】本発明の実施例6に係る化粧ブラシを示す、要部の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施例1) 図1から図4に、本発明に係る化粧ブラシをチークブラシに適用した実施例1を示す。本発明における前後、左右、上下とは、図1および図2に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表記に従う。図2において、チークブラシはプラスチック成型品からなるブラシボディ1と、ブラシボディ1の下端部に固定される塗付チップ2とを備える。図2および図4に示すようにブラシボディ1は、親指と人差し指でつまむのに適した前後厚みが5〜6mmの縦長四角形状に形成されており、その下部に塗付チップ2を固定するための取付け穴3が凹み形成されている。
【0022】
塗付チップ2は、弾性に富むエラストマーを素材にして扁平板状に形成されるチップ本体4と、チップ本体4の外面に形成される塗付層5で構成される。弾性に富むエラストマーとしてはウレタンゴムやシリコーンゴムが適している。チップ本体4は、その正面視形状が花弁状に形成されており、肌触りを柔らかくするために下端縁が下突湾曲状に丸められている。チップ本体4の前面および後面はそれぞれ塗付面6になっており、各塗付面6に形成された塗付層5で化粧材を保持することができる。塗付層5は、チップ本体4に静電植毛加工を施して形成されており、植毛材としてはシルクパイル、獣毛パイルなどの肌触りに優れた天然材の短繊維を使用するのが好ましいが、必要があればナイロンパイルなどの化学繊維材の短繊維を使用してもよい。
【0023】
塗付チップ2を顔肌に押付けて化粧材を塗付する場合の肌反力を極力小さくして、柔軟でソフトな肌触り感を発揮できるようにするために、チップ本体4の前後厚みは、チップ基端4a側で厚く、チップ先端4bに近づくほど薄くなるように形成されている。さらに、塗付チップ2の前後一対の塗付面6のそれぞれに、塗付面6の幅方向に連続する複数の溝部7が形成されている。前後の塗付面6における溝部7は、チップ基端4aからチップ先端4b寄りにわたって5個ずつ形成されており、チップ先端4bとチップ先端4b寄りの最下部の溝部7との間に、面状の仕上げ塗付面8が形成されている。塗付層5を形成する先の短繊維は、塗付面6および溝部7の表面全体にわたって起毛状に固定されている(図1の拡大図参照)。
【0024】
図1に示すように、一対の塗付面6は、塗付チップ2の厚み中心を通る仮想中心軸線Pに対して同じ角度(5度)で傾斜されており、チップ本体4を前後に均等に湾曲変形することができるように構成されている。ここでは、チップ本体4のチップ基端4aにおける前後厚みは5mmとしている。図3に示すように、前側の塗付面6に形成される溝部7と後側の塗付面6に形成される溝部7のそれぞれは、先の仮想中心軸線Pと直交する直線溝で形成されている。さらに、前側の塗付面6に形成される溝部7と後側の塗付面6に形成される溝部7の形成位置を溝ピッチM(3mm)の半分だけ上下にずらせて、前側の溝部7と後側の溝部7を互い違い状に凹み形成している。溝部7の塗付面6からの凹み深さDは1mmとする。各溝部7の形成位置が溝ピッチMの半分だけずらしてあるので、前側の仕上げ塗付面8の上下長さは、後側の仕上げ塗付面8の上下長さより僅かに長くなっている。上記のように、前後の塗付面6に複数の溝部7を形成することにより、チップ本体4の厚み方向への曲げ変形を促進し、かつ化粧材を効果的に削ぎ取ることができる。
【0025】
以上のように構成した塗付チップ2は、その上端に設けた装着部9をブラシボディ1の取付け穴3に嵌め込んで接着剤で固定することにより、ブラシボディ1と一体化される。なお、装着部9には塗付層5は形成されていない。ブラシボディ1の下端から塗付チップ2の下端までの上下長さは21mmとする。以上のように構成した化粧ブラシは、例えば固形の化粧材が充填されたパウダーファンデーションコンパクトの内部に設けた収納凹部に収容される。従って、化粧材を顔肌に塗付する場合には、コンパクト容器の蓋を開放するだけで直ちに使用することができる。また、化粧材容器と化粧ブラシを化粧ポーチなどに別々に収納する場合には、ブラシボディ1に着脱されるキャップで塗付チップ2の外周面を覆って保護すればよい。
【0026】
化粧ブラシを使用するときは、塗付チップ2の塗付層5および塗付面6を、固形の化粧材の表面に密着させながら払拭して、粉状の化粧材を塗付層5および溝部7に保持させる。このとき、各溝部7と塗付面6の隣接縁と化粧材の表面の間に大きな摩擦力が発生するので、固形の化粧材から、粉状の化粧材を効果的に塗付層5および溝部7に保持させることができる。また、塗付層5がシルクパイルで形成してある場合には、シルクパイルの断面が略三角形になっているので、粉状の化粧材をさらに効果的に生成させて塗付層5に保持させることができる。
【0027】
化粧ブラシは図4に示すように、化粧材が保持された塗付層5の側を、化粧下地が塗ってある顔肌に沿って滑らせて、塗付層5に保持されていた粉状の化粧材を顔肌に塗付する。このように、粉状の化粧材を顔肌に塗付する場合には、前後厚みが小さなチップ先端4b側を顔肌に密着させた状態で、塗付チップ2の全体を大きく湾曲変形させることができる。詳しくは、顔肌に接していない側の溝部7が収縮し、顔肌に接している側の溝部7が拡開した状態で、塗付チップ2の全体を大きく湾曲変形させることができる。
【0028】
以上のように実施例1では、塗付チップ2をエラストマー材で扁平板状に形成されるチップ本体4と、チップ本体4の外面に静電植毛加工を施して形成される塗付層5で構成した。また、チップ本体4の一対の塗付面6のそれぞれに複数の溝部7を形成するようにした。こうしたチークブラシによれば、塗付層5に保持されている化粧材を顔肌に塗付する場合に、肌反力を受けたチップ本体4が複数の溝部7で屈曲することにより、チップ本体4の全体を容易に湾曲変形させることができる。また、チップ本体4が湾曲変形することで、塗付チップ2に作用する肌反力を吸収し軽減させることができる。従って、従来のチップ構造の化粧ブラシに比べて、柔軟でソフトな肌触り感を発揮できる使い勝手に優れたチークブラシを提供できる。また、塗付チップ2の塗付面6に複数の溝部7を形成したので、化粧材を塗付層5に保持させる場合に、塗付面6と各溝部7の隣接縁で化粧材を効果的に削ぎ取って、充分な量の化粧材を塗付層5に容易に保持させることができる。とくに、固形の化粧材をチークブラシに保持させる場合に、化粧材を効率良く、しかも軽やかに粉化して、粉化された充分な量の化粧材を塗付層5に速やかに保持させることができる。
【0029】
チップ本体4はチップ基端4a側で厚く、チップ先端4bに近づくほど薄く形成するようにしたので、チップ本体4をチップ基端4a側では曲がりにくくし、チップ先端4bに近づくほど変形抵抗を小さくして、曲がりやすくすることができる。さらに、化粧材を顔肌に塗付する場合には、チップ本体4の中途部からチップ先端4bの間の塗付層5で顔肌を払拭して化粧材を塗付することが多いので、肌反力を受けたチップ本体4の湾曲変形を促進して、塗付チップ2に作用する肌反力を吸収し軽減させることができる。従って、チップ本体4が、チップ基端4a側からチップ先端4bにわたって均一な厚みに形成してある場合に比べて、チップ本体4をより小さな肌反力で湾曲変形させて、化粧ブラシの肌触り感をさらに柔軟でソフトなものとすることができる。
【0030】
各塗付面6に形成される溝部7を、塗付チップ2の厚み中心を通る仮想中心軸線Pと直交する直線溝で形成するようにしたので、肌反力を各塗付面6とほぼ直交する向きに作用させて、チップ本体4を各溝部7において整然と屈曲させることができる。従って、チップ本体4が湾曲変形するときの肌反力を最小限化して、チークブラシの肌触り感をさらに柔軟でソフトなものとすることができる。なお、例えば複数の溝部7が仮想中心軸線Pに対して斜めに交差する状態で形成してある場合には、各溝部7と塗付面6を同時に湾曲させる必要があるので、塗付チップ2に作用する肌反力が、塗付面6の湾曲抵抗の分だけ大きくなるのを避けられない。
【0031】
一方の塗付面6に形成される溝部7と、他方の塗付面6に形成される溝部7を、互い違い状に凹み形成するようにしたので、化粧材を顔肌に塗付するとき、顔肌に接していない側の塗付面6では各溝部7を屈曲収縮させ、顔肌に接している側の塗付面6では各溝部7を拡開させた状態で、チップ本体4を整然と湾曲させることができる。また、屈曲収縮する各溝部7によって、湾曲変形するチップ本体4の肌触り感を柔軟でソフトなものとしながら、拡開状に変形する各溝部7の変形応力で、湾曲変形するチップ本体4に適度の腰の強さを付与することができる。従って、化粧材の顔肌への塗付を、柔軟でソフトな肌触り感を発揮しながら、メリハリの利いた状態で適確に、しかも手早く行うことができる。また、塗付チップ2による粉状の化粧材の保持と、顔肌への塗付を適確に行って、使い勝手に優れた化粧ブラシとすることができる。因みに、一方の塗付面6に形成される溝部7と、他方の塗付面6に形成される溝部7が対向状に形成してある場合には、対向する溝部7の間の肉厚が必要以上に小さくなる。そのため、肌反力を受けたチップ本体4は、顔肌に最も近い位置にある溝部7で折れ曲がりやすくなり、化粧材を顔肌に適確に塗付し、塗り延ばすのが困難となる。
【0032】
一対の塗付面6のそれぞれを、塗付チップ2の厚み中心を通る仮想中心軸線Pに対して、同じ角度で傾斜するように形成したので、チップ本体4を前後に均等に湾曲変形させることが可能となり、使用者は前側の塗付層5と後側の塗付層5を意識しながら区別して使用する必要がなく、どちらの塗付層5であっても、粉状の化粧材を均等に保持させて顔肌に塗付けることができる。
【0033】
チップ本体4のチップ先端4bと、チップ先端4b寄りの溝部7との間に、面状の仕上げ塗付面8を形成したので、顔肌に塗付された粉状の化粧材の塗付部に沿って、仕上げ塗付面8で顔肌を優しく払拭することにより、化粧材の塗付むらをなくすことができる。さらに、粉状の化粧材の塗付部の周縁に沿って、仕上げ塗付面8で顔肌を優しく払拭することにより、化粧材の塗付部の輪郭をぼかして、違和感のない自然な塗付状態に仕上げることができる。
【0034】
チークブラシをプラスチック製のブラシボディ1と、塗付チップ2で構成し、塗付チップ2をエラストマー製のチップ本体4と、チップ本体4の外面に静電植毛された短繊維からなる塗付層5で構成した。換言すると、水洗いしても機能が損なわれない素材のみで塗付チップ2を形成した。そのため、塗付要素がベルベットで形成してある従来のチップ構造の塗付体とは異なり、チークブラシの全体を問題なく水洗い洗浄できる。従って、塗付し残した粉状の化粧材が短繊維の間に溜まって変質し、嫌な臭いを発生するような場合には、チークブラシの全体を水洗い洗浄することで、粉状の化粧材の全てを除去して、塗付チップ2を常に衛生的な状態に保つことができる。
【0035】
(実施例2) 図5に本発明の実施例2に係るチークブラシ(化粧ブラシ)を示す。実施例2に係るチークブラシでは、塗付面6と正対する側から見て溝部7を山谷状に形成した。他は実施例1のチップ本体4と同様であるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例においても同じとする。
【0036】
上記のように溝部7が山谷状に形成された化粧ブラシによれば、溝部7が直線溝で形成されている場合に比べて、塗付面6における溝部7の全長を大きくできるので、固形の化粧材を溝部7で効果的に削ぎ取って、粉状の化粧材をさらに効果的に塗付層5に保持させることができる。また、チップ本体4が肌反力を受けて湾曲変形するとき、溝部7と塗付面6が同時に湾曲するので、その分だけ化粧ブラシの腰を強くして、柔軟でソフトな肌触り感をある程度備えていながら、腰の強い化粧ブラシを望むユーザーの好みに対応することができる。また、硬軟2種の塗付チップ2を備えた2個の化粧ブラシを用意し、あるいはブラシボディ1の両端に硬軟2種の塗付チップ2が固定してある化粧ブラシを用意しておくことにより、使用者の好みに応じて塗付チップ2を使い分けることができる。
【0037】
(実施例3) 図6に本発明の実施例3に係るチークブラシ(化粧ブラシ)を示す。実施例3に係るチークブラシでは、塗付面6と正対する側から見て溝部7を連続波形状に形成した。このように溝部7が連続波形状に形成されていると、塗付面6における溝部7の全長を大きくできるので、固形の化粧材を溝部7で効果的に削ぎ取って、粉状の化粧材をさらに効果的に塗付層5に保持させることができる。また、実施例2で説明した化粧ブラシと同様に、チップ本体4が肌反力を受けて湾曲変形するとき、溝部7と塗付面6が同時に湾曲するので、その分だけ化粧ブラシの腰を強くして、柔軟でソフトな肌触り感をある程度備えていながら、腰の強い化粧ブラシを望むユーザーの好みに対応することができる。また、硬軟2種の塗付チップ2を備えた2個の化粧ブラシを用意し、あるいはブラシボディ1の両端に硬軟2種の塗付チップ2が固定してある化粧ブラシを用意しておくことにより、使用者の好みに応じて塗付チップ2を使い分けることができる。
【0038】
(実施例4) 図7に本発明の実施例4に係るチークブラシ(化粧ブラシ)を示す。そこでは、塗付面6を部分円弧状に形成して、隣接する塗付面6の間に溝部7が形成されるようにした。このように、塗付面6が部分円弧状に形成されていると、塗付チップ2を顔肌に押付けて化粧材を塗付する場合の、塗付面5と顔肌の接触面積が小さくなり、さらに、部分円弧状の塗付面5と顔肌の滑りが促進されるので、塗付チップ2に作用する肌反力を極力小さくして、柔軟でソフトな肌触り感を発揮した状態で、粉状の化粧材の顔肌への塗付を適確に行うことができる。
【0039】
(実施例5) 図8に本発明の実施例5に係るチークブラシ(化粧ブラシ)を示す。そこでは、チップ本体4の前後厚みをチップ基端4a側とチップ先端4b側で同じに設定した。また、溝部7の凹み深さDをチップ基端4a側では浅くし、チップ先端4bに近づくにつれ深く設定して、各溝部7の内奥を結ぶ直線を、塗付チップ2の厚み中心を通る仮想中心軸線Pに対して同じ角度(5度)で傾斜させて、チップ本体4を前後に均等に湾曲変形できるようにした。このように、チップ本体4の前後厚みがチップ基端4a側とチップ先端4b側で同じに設定してある場合でも、溝部7の凹み深さDをチップ先端4bに近づくにつれ深く設定することにより、肌反力を受けたチップ本体4を容易に湾曲変形させて肌反力を吸収させることができる。
【0040】
(実施例6) 図9に本発明の実施例6に係るチークブラシ(化粧ブラシ)を示す。そこでは、各溝部7を断続する横長の溝要素7aで形成する点が、実施例1のチークブラシと異なる。溝要素7aの両端は半円状に丸められており、左右に隣接する溝要素7aは小さな隙間を介して断続されている。また、実施例1のチップ本体4と同様に、前側の溝部7と後側の溝部7の形成位置を溝ピッチMの半分だけ上下にずらせて、前側の溝部7と後側の溝部7とを互い違い状に凹み形成するようにしている。このように、各溝部7が断続する横長長円状の溝要素7aで形成されていると、上下の塗付面6が左右に隣接する溝要素7aの間で連続するので、塗付チップ2に作用する肌反力が、実施例1の塗付チップ2に作用する肌反力より僅かに大きくなるが、その差は僅かでしかない。そのため、溝部7が直線溝で形成してある実施例1のチークブラシとほぼ同等に湾曲変形させて、チップ本体4を各溝部7において整然と屈曲させることができる。従って、チップ本体4が湾曲変形するときの肌反力を小さくして、チークブラシの肌触り感を柔軟でソフトなものとすることができる。
【0041】
上記の実施例では、ブラシボディ1をプラスチック成形品で形成したが、その必要はなはなく、アルミニウム板材を絞り成形して形成してあってもよい。ブラシボディ1、および塗付チップ2の外形形状は、化粧ブラシの用途に応じて必要形状に形成してあればよく、実施例で説明した外形形状である必要はない。一対の塗付面6は、塗付チップ2の厚み中心を通る仮想中心軸線Pに対して前後対称に傾斜させる必要はなく、異なる角度で傾斜させてあってもよい。溝部7は、塗付面6の片方にのみ形成することができるが、その場合には、溝部7が形成してある側の塗付層5に化粧材を保持させた状態で顔肌に塗付したのち、溝部7が形成されていない側の塗付面6で、顔肌に塗付された塗付部を優しく払拭することにより、化粧材の塗付むらを効果的になくすことができる。なお、本発明の化粧ブラシは、液状の化粧材の塗付用としても利用でき、例えばリップブラシに適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ブラシボディ
2 塗付チップ
4 チップ本体
4a チップ基端
4b チップ先端
5 塗付層
6 塗付面
7 溝部
8 仕上げ塗付面
【要約】
【課題】塗付チップが肌面に押付けられる場合の肌反力を極力小さくして、柔軟でソフトな肌触り感を発揮できる使い勝手に優れた化粧ブラシを提供する。
【解決手段】本発明に係る化粧ブラシは、ブラシボディ1と塗付チップ2とを備える。塗付チップ2は、エラストマー材で扁平板状に形成されるチップ本体4と、チップ本体4の外面に静電植毛加工を施して形成される塗付層5とを備える。チップ本体4に一対の塗付面6が設けられており、塗付面6のそれぞれに幅方向に連続する複数の溝部7が形成されている。一方の塗付面6に形成される溝部7と、他方の塗付面6に形成される溝部7とは、互い違い状に凹み形成されている。チップ本体4はチップ基端4a側で厚く、チップ先端4bに近づくほど薄く形成されており、溝部7は、塗付チップ2の厚み中心を通る仮想中心軸線Pと直交する直線溝で形成する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
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図6
図7
図8
図9