特許第6491411号(P6491411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー.の特許一覧

<>
  • 特許6491411-ハードマスク表面処理 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491411
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】ハードマスク表面処理
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20190318BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   H01L21/30 563
   H01L21/302 105A
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-7972(P2014-7972)
(22)【出願日】2014年1月20日
(65)【公開番号】特開2014-197668(P2014-197668A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2017年1月4日
(31)【優先権主張番号】13/745,752
(32)【優先日】2013年1月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デヤン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・トレフォナス・サード
(72)【発明者】
【氏名】ジェチアン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ペン―ウェイ・チュアン
【審査官】 今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−537502(JP,A)
【文献】 特表2011−508254(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/059652(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0223418(US,A1)
【文献】 米国特許第6303270(US,B1)
【文献】 特開2007−256928(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/001901(WO,A2)
【文献】 国際公開第2013/006314(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30、20/302、21/3065
21/3205−21/3213
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(−M−O−)リンケージ(式中、Mは3族〜14族の金属であり、n>1である)を有する無機ドメインを含むハードマスク層の表面を処理するためのプロセスであって、表面処理組成物とハードマスクの表面を接触させてハードマスク表面をコーティングし、表面処理組成物が有機溶媒並びに、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基およびβジケト基からなる群から選択される表面処理部分を含む表面処理剤を含み;前記表面処理剤の前記表面処理部分を前記ハードマスク層の前記表面と相互作用させ;並びに、前記ハードマスク層の前記表面から、前記ハードマスク層の前記表面に結合していない未反応の前記表面処理剤を除去して、前記表面処理剤が結合されている表面を有する前記ハードマスク層を生成することを含む、プロセス。
【請求項2】
Mが、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タングステン、タンタル、モリブデンおよびアルミニウムから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ハードマスク表面が、表面処理組成物との接触前に第1の水接触角を有し、かかる接触後に第2の水接触角を有し、第2の水接触角が第1の水接触角より大きい、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記相互作用工程が、コーティングしたハードマスク表面を加熱することによって行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記除去工程後のハードマスク表面が60〜70°の水接触角を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記除去工程がリンス工程を用いることによって行われる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記表面処理剤がポリマー性であり、表面処理部分を含む1つまたは複数のペンダント基、表面処理部分を含む末端基、および1つまたは複数の表面処理部分を含むポリマー骨格を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記表面処理剤がポリマー性であり、かつ重合単位として、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレートエステルおよびヒドロキシスチレンモノマーから選択されるモノマーを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ハードマスク層が電子装置基板上に配置される、請求項1〜8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
電子装置基板上に配置されたハードマスク層であって、(−M−O−)リンケージ(式中、Mは3族〜14族の金属であり、n>1である)を有し、≧60°の水接触角を有する表面を有する多数の無機ドメインを含み、
面処理剤の表面処理部分が前記ハードマスク層の前記表面と結合されており、前記ハードマスク層の前記表面が、表面処理部分が前記ハードマスク層の前記表面と結合されていない未反応の表面処理剤を含有せず、並びに、
前記表面処理部分が、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基およびβジケト基からなる群から選択される、ハードマスク層。
【請求項11】
オキシ金属ハードマスク層を有する基板を提供することと;有機溶媒、保護ヒドロキシルおよび保護カルボキシルから選択される表面処理部分を含む表面処理剤ならびに熱酸発生剤および光酸発生剤から選択される1つまたは複数の酸発生剤を含む表面処理組成物によりハードマスク表面をコーティングすることと;前記表面処理部分が前記酸発生剤から発生した酸によって脱保護さていれる第1の領域および、前記表面処理部分が脱保護されていない第2の領域を含むパターンを形成するのに十分な条件へ表面処理組成物コーティングをさらすことと;前記第1の領域における前記ハードマスク層の前記表面と前記表面処理剤の前記脱保護された表面処理部分を相互作用させ;並びに、前記第1および第2の領域における前記ハードマスク層の前記表面から、前記ハードマスク層の前記表面に結合していない未反応の前記表面処理剤および前記酸発生剤を除去して、前記ハードマスク層の前記表面に前記表面処理剤が結合されている前記第1の領域および前記ハードマスク層の前記表面に前記表面処理剤が結合されていない前記第2の領域のパターンであって、前記第1の領域の表面エネルギーが前記第2の領域の表面エネルギーより低いパターンを有するハードマスク層を生成することを含む、パターン形成されたハードマスク層を形成するプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に半導体製造の分野に、より詳細には半導体の製造において使用されるハードマスクの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
193nmの液浸リソグラフィーにおける限界寸法およびピッチの両方の連続的な減少により、集積回路製造の特定の層中でのハードマスクの使用は、ハードマスク材料の優れたエッチング選択性のおかげで、ますます人気となった。特定の金属のハードマスク(窒化チタン等)は、通常、加工されたウエハ上への化学気相堆積(CVD)によって適用される。CVDまたはスピンオン技法のいずれかを介して適用された非晶質炭素ハードマスク、およびシリコンハードマスク(またはシリコン反射防止コーティングもしくはSiARC)は、集積回路製造における従来技術の中のものである。スピンオン金属ハードマスクは、従来のアプローチと比較して可能な経費削減に加えて、製造プロセスの単純化に部分的に起因して、現在集積回路産業において魅力あるものとなっている。
【0003】
オキシ金属ハードマスクは、(−M−O−)リンケージ(オキシ金属ドメイン)(式中、Mは金属であり、n>1である)を備えた多数の無機ドメインを含むフィルムとして一般的に特徴づけられ、少量の他の元素(炭素等)から構成され得る。他のハードマスク(混合ドメインハードマスク等)はオキシ金属ドメインおよび金属窒化物ドメインの両方を含有する。典型的には、オキシ金属ハードマスクは1つまたは複数の金属(Hf、Zr、Ti、W、Al、TaおよびMo等)を含有することができる。オキシ金属ドメイン含有するハードマスクフィルムの耐エッチング性は、使用される特定の金属に加えて、存在する(−M−O−)ドメインのレベルに部分的に依存し、かかるドメインのレベルの増加はより高い耐エッチング性を提供する。
【0004】
硬化したオキシ金属ハードマスクフィルムは、多くの場合、続いて適用される有機層(フォトレジスト等)よりもはるかに高い表面エネルギー(またはより少ない水接触角)を有する。かかる表面エネルギーのミスマッチは、オキシ金属ハードマスク層と続いて適用される有機層との間で接着不良を引き起こす。続いて適用されるフォトレジスト層のケースにおいて、かかる表面エネルギーのミスマッチは深刻なパターン崩壊をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表面処理は半導体製造において公知である。例えば、多くの場合シリコンまたは酸化ケイ素の表面はヘキサメチルジシラザン(HMDS)により処理されて、それらの上にコーティングされた有機層への接着を改善する。しかしながら、HMDSによるオキシ金属ハードマスクの処理は、続いて適用されるフォトレジストにおけるパターン崩壊を防止することに効果的に働かない。したがって、オキシ金属ハードマスクと続いて適用される有機層(フォトレジスト等)との間の水接触角ミスマッチを減少させる、金属ハードマスクのための効果的な表面処理の必要性が残る。これらの必要性および他のものは以下の発明によって満たされた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(−M−O−)リンケージ(式中、Mは3族〜14族の金属であり、n>1である)を有する無機ドメインを含むオキシ金属ハードマスク層の表面を処理するためのプロセスであって、表面処理組成物とハードマスクの表面を接触させてハードマスク表面をコーティングし、表面処理組成物が有機溶媒および表面処理部分を含む表面処理剤を含むプロセスを提供する。かかる処理は、ハードマスク表面エネルギーがその後に適用される有機層へ実質的にマッチするように、ハードマスク表面エネルギーを変化(低下)させる。好ましくは、ハードマスク層は電子装置基板上に配置される。オキシ金属ハードマスク層は、(−M−O−)リンケージ(式中、Mは3族〜14族の金属であり、n>1である)を有する多数の無機ドメインを含むことが好ましい。表面処理組成物との接触前に、ハードマスク表面は第1の水接触角を有し、かかる接触後に第2の水接触角を有し、第2の水接触角は第1の水接触角より大きい。好ましくは、第2の水接触角は、≧55°、より好ましくは55〜70°、およびなおより好ましくは60〜70°である。
【0007】
電子装置基板上に配置されたオキシ金属ハードマスク層も本発明によって提供され、ハードマスク層は、(−M−O−)リンケージ(式中、Mは3族〜14族の金属であり、n>1である)を有し、≧55°の水接触角を有する表面を有する多数の無機ドメインを含む。好ましくは、水接触角は、55〜70°、およびなおより好ましくは60〜70°である。
【0008】
本発明は、オキシ金属ハードマスク層を有する基板を提供することと;有機溶媒ならびに保護ヒドロキシルおよび保護カルボキシルから選択される表面処理部分を含む表面処理剤を含む表面処理組成物によりハードマスク表面をコーティングすることと;比較的より低い表面エネルギーの第1の領域および比較的より高い表面エネルギーの第2の領域のパターンを有するハードマスク層を形成するのに十分な条件へ表面処理組成物コーティングをさらすこととを含む、パターン形成されたハードマスクを形成する方法をさらに提供する。第1の領域は≧55°の静水接触角を有することが好ましい。さらに第2の領域は≦50°の静水接触角を有することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の表面処理組成物により処理したオキシハフニウムハードマスク層上に配置されたフォトレジスト層について、かかる表面処理のないオキシハフニウムハードマスク層上のフォトレジスト層と比較した、限界寸法vs用量応答を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書の全体にわたって使用される時に、文脈が特別に明らかに示さない限り、以下の略称は以下の意味を有する。ca.=およそ;℃=摂氏度;g=グラム;mg=ミリグラム;mmol=ミリモル;L=リットル;mL=ミリリットル;μL=マイクロリットル;mJ=ミリジュール;cm=センチメートル;nm=ナノメートル;Å=オングストローム;Et=エチル;i−Pr=イソ−プロピル;n−Bu=n−ブチル;t−Bu=tert−ブチル;sec.=秒;min.=ミリセカンド;min.=分;およびrpm=毎分回転数。特に断りのない限り、すべての量は重量によるパーセント(wt%)であり、すべての比はモル比である。すべての数値範囲は、かかる数値範囲が100%まで加えるように制約されることが明らかである場合以外は、任意の順序で包括的であり組み合わせ可能である。
【0011】
本明細書において使用される時、「オキシ金属ハードマスク」は、(−M−O−)ドメイン(式中、Mは金属であり、nは>1の整数である)を含む任意の金属ハードマスクを指し、多数の(−M−O−)ドメインを有するオキシ金属ハードマスクならびに金属窒化物ドメインおよび(−M−O−)ドメインの両方を有する混合ドメインハードマスクの両方を含む。オキシ金属ハードマスクは任意で1つまたは複数の他の元素(炭素等)を含むことができ、好ましくは、(−M−O−)ドメインと比較して、比較的少量で存在する。「ドメイン」は、本明細書において使用される時、特定のリンケージ((−M−O−)リンケージ等)の対応するブロックによって形成されたコンパクトな結晶性、半結晶性または非晶性の領域を意味する。「コポリマー」という用語は、2以上の異なるモノマーのポリマーを指す。「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートの両方を指し、「(メタ)アクリルの」はアクリルのおよびメタクリルのの両方を指す。本明細書において使用される時、「ペンダント基」という用語は、ポリマー骨格へ付加されるが、その一部を形成しない基を指す。「オリゴマー」という用語は、さらに硬化され得る、二量体、三量体、四量体および他の比較的低い分子量の材料を指す。「オリゴマー」という用語は、さらに硬化することが可能な二量体、三量体、四量体および他の比較的低い分子量の材料を指す。用語「ポリマー」は用語「オリゴマー」を含む。冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は単数および複数を指す。
【0012】
オキシ金属ハードマスク表面の処理に使用される本発明の表面処理組成物は有機溶媒および表面処理剤を含み、表面処理剤は1つまたは複数の表面処理部分を含む。表面処理剤が選択される溶媒または溶媒の混合物中で可溶性であるならば、様々な有機溶媒を好適に使用することができる。かかる溶媒には、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アルコール、ラクトン、エステル、グリコールおよびグリコールエーテルが含まれるが、これらに限定されない。有機溶媒の混合物を使用することができる。例示的な有機溶媒には、トルエン、キシレン、メシチレン、アルキルナフタレン、2−メチル−1−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチルエステル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテー卜およびプロピレングリコールメチルエーテルが限定されずに含まれる。本発明の好適な溶媒は表面処理剤よりも比較的高い蒸気圧を有し、その結果、溶媒は表面処理剤を残してハードマスクの表面から除去され得る。有機溶媒は遊離カルボン酸基またはスルホン酸基を有していないことが好ましい。
【0013】
様々な表面処理剤を本表面処理組成物中で使用することができる。かかる表面処理剤は、ポリマー性または非ポリマー性であり得、1つまたは複数の表面処理部分を含む。例示的な表面処理部分には、ヒドロキシル基(−OH)、チオール基(−SH)、カルボキシル基(−COH)、βジケト基(−C(O)−CH−C(O)−)、保護カルボキシル基および保護ヒドロキシル基が含まれる。アミノ基は働くだろうが、かかる基がその後に適用されたコーティング(化学増幅型フォトレジスト等)の機能に影響を与え得るので、表面処理剤はアミノ基を含まないことが好ましく、好ましくは窒素を含まない。好ましい表面処理部分には、ヒドロキシル基、カルボキシル基、βジケト基、保護カルボキシル基および保護ヒドロキシル基が含まれ、より好ましくは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、保護カルボキシル基および保護ヒドロキシル基、およびなおより好ましくは、ヒドロキシル基、カルボキシル基および保護カルボキシル基である。
【0014】
保護カルボキシル基とは、カルボキシル基をもたらす特定の条件下で切断可能な任意の基である。かかる保護カルボキシル基は、熱、酸、塩基またはその組み合わせによって、好ましくは熱、酸またはその組み合わせによって、およびより好ましくは熱によって、切断することができる。例示的な保護カルボキシル基には、エステル(ベンジルエステル、およびエステル基のアルコキシ酸素へ直接結合される第4級炭素を有するエステル等)が含まれる。保護カルボキシル基は、エステル基のアルコキシ酸素へ直接結合される第4級炭素を有するエステルであることが好ましく、より好ましくは、エステルは式Y−C(O)−O−CR’R’’R’’’(式中、Yは有機残基であり、R’、R’’およびR’’’の各々はC1−10アルキルから独立して選択される)を有する。好ましい保護カルボキシル基には、1−アルキルシクロペンチルエステル(1−メチルシクロペンチルエステルおよび1−エチルシクロペンチルエステル等);2,3−ジメチル−2−ブチルエステル;3−メチル−3−ペンチルエステル;2,3,3−トリメチル−3−ブチルエステル;1,2−ジメチルシクロペンチルエステル;2,3,4−トリメチル−3−ペンチルエステル;2,2,3,4,4−ペンタメチル−3−ペンチルエステル;およびアダマンチルエステル(ヒドロキシアダマンチルエステルおよびC1−12アルキルアダマンチルエステル等)が限定されずに含まれる。前述の保護カルボキシル基の各々は1つまたは複数の熱、酸または塩基によって切断することができる。好ましくは、保護カルボキシル基は、熱、酸または熱および酸の組み合わせを使用して、およびより好ましくは熱によって、切断される。保護カルボキシル基は、≦4および好ましくは≦1のpHで切断することができる。≦4(1〜4等)のpHへ曝露された場合、かかる保護カルボキシル基は、≦125℃(室温〜125℃等)の温度で切断され得る。あるいは、保護カルボキシル基がエステル基のアルコキシ酸素へ直接結合される第4級炭素を有するエステルである場合、それは適切な温度(≧125℃、好ましくは125〜250℃、およびより好ましくは150〜250℃等)まで加熱することによって切断することができる。保護カルボキシル基がエステル基のアルコキシ酸素へ直接結合される第4級炭素を有するエステルであれば、多様なpH価(6〜8等)での加熱によって切断することができる。かかる保護カルボキシル基およびそれらの使用および脱保護の条件は当該技術分野において周知である。例えば、米国特許第6,136,501号は、エステル基のアルコキシ酸素へ直接結合される第4級炭素を有するエステル基を含む様々な保護カルボキシル基を開示する。
【0015】
保護ヒドロキシル基とは、ヒドロキシル基をもたらす特定の条件下で切断可能な任意の基である。かかる保護ヒドロキシル基は、熱、酸、塩基またはその組み合わせによって、および好ましくは熱によって切断することができる。例示的な保護ヒドロキシル基には、エーテル(メトキシメチルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、tert−ブチルエーテル、アリルエーテル、ベンジルエーテル、tert−ブチルジメチルシリルエーテル、tert−ブチルジフェニルシリルエーテル、アセトニドおよびベンジリデンアセタール等);およびエステル(ピバリン酸エステルおよび安息香酸エステル等);およびカルボネート(tert−ブチルカルボネート等)が含まれる。前述の保護ヒドロキシル基の各々は、熱によっておよび/または酸性またはアルカリ性の条件下で切断することができる。より好ましくは、保護ヒドロキシル基は、酸、または酸および熱の組み合わせを使用して切断される。例えば、これらの保護ヒドロキシル基は、≦4および好ましくは≦1のpHで切断することができる。1〜4の範囲中のpHへ曝露された場合、かかる保護ヒドロキシル基は室温で切断され得る。あるいは、保護ヒドロキシル基(カルボネート等)は加熱(100〜250℃等)によって切断することができる。かかる保護ヒドロキシル基およびそれらの使用の条件は当該技術分野において周知である。
【0016】
本表面処理剤は、ポリマー性または非ポリマー性であり得、好ましくはポリマー性である。表面処理剤は少なくとも1つの表面処理部分を含む。ポリマー性表面処理剤は、1つまたは複数の表面処理部分を含むペンダント基、1つまたは複数の表面処理部分を含む末端基、および1つまたは複数の表面処理部分を含むポリマー骨格のうちの1つまたは複数のものを含む。ポリマー性表面処理剤は、表面処理部分を含むペンダント基、表面処理部分を含む末端基またはその組み合わせを含むことが好ましく、より好ましくは、ポリマー性表面処理剤は、表面処理部分を含むペンダント基を含む。典型的にはポリマー性表面処理剤は、≦50,000ダルトン、好ましくは≦30,000ダルトン、より好ましくは≦25,000ダルトン、およびさらにより好ましくは≦20,000ダルトンの分子量を有する。典型的には、ポリマー性表面処理剤は、500〜50,000ダルトン、好ましくは500〜30,000、より好ましくは500〜25,000、およびなおより好ましくは750〜20,000ダルトンの分子量を有する。
【0017】
表面処理部分を含むモノマーが、ポリマーの形成に使用したモノマーの全モルに基づいて、≦10mol%、好ましくは≦8mol%、およびより好ましくは≦5mol%の量で存在すれば、表面処理部分を含む任意のポリマーを表面処理剤として好適に使用することができる。したがって、ポリマー性表面処理剤は、表面処理部分を含まないモノマーに加えて、1つまたは複数の表面処理部分を含有するモノマーを含むだろう。1つの好ましい実施形態において、ポリマー性表面処理剤は重合単位としてエチレン性不飽和モノマーを含む。ポリマー性表面処理剤は、重合単位として、(メタ)アクリレートモノマーおよびビニル芳香族モノマー(スチレンモノマー等)から選択される1つまたは複数のモノマーを含むことがさらに好ましい。(メタ)アクリレートモノマーおよびビニル芳香族モノマーの各々は、1つまたは複数の表面処理部分により任意で置換することができる。
【0018】
1つまたは複数の表面処理部分を含む好ましいモノマーには、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシ置換(メタ)アクリレートエステル、エステル基のアルコキシ酸素へ直接結合される第4級炭素を有する(メタ)アクリレートエステル、およびヒドロキシスチレンモノマーが限定されずに含まれる。メタクリル酸(MA)およびアクリル酸(AA)の両方の各モノマーは、表面処理部分としてのカルボキシル基を含有する。ヒドロキシスチレンモノマーは表面処理部分としてのヒドロキシル基を含有する。好ましいヒドロキシ置換(メタ)アクリレートエステルモノマーは、アルキレングリコール(メタ)アクリレート、およびアルキルラジカル中の1つまたは複数のヒドロキシル基により置換されたヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー、特にヒドロキシル基がアルキルラジカル中のβ位(2位)で見出されるものである。好適なアルキレングリコール(メタ)アクリレートは、一般式HO−(Alk−O)p−C(O)−CHR=CH(式中、Alkはアルキレン基であり、p=1〜100であり、およびR=HまたはCHであり、好ましくはp=1〜25、およびより好ましくはp=1〜10である)を有する。かかるアルキレングリコール(メタ)アクリレートにおいて、アルキレングリコール部分は、典型的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ブチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールに由来する。好ましいアルキレングリコール(メタ)アクリレートには、モノアルキレングリコール(メタ)アクリレート(エチレングリコール(メタ)アクリレートおよびプロピレングリコール(メタ)アクリレート等)に加えて、ポリ(アルキレングリコール)(メタ)アクリレート(ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレンエチレングリコール(メタ)アクリレートおよびトリプロピレンエチレングリコール(メタ)アクリレート等)が含まれる。好ましいヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、ヒドロキシ置換アルキル基が分岐状または非分岐状のC2−6アルキルであるものである。好ましいヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーには、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、1−メチル−2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−プロピルアクリレート、1−メチル−2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレートおよびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。好ましいヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、HEMA、HEA、1−メチル−2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートおよびそれらの混合物である。後者の2つのモノマーの混合物は一般に「ヒドロキシプロピルメタクリレート」(HPMA)と称される。上記のヒドロキシ基含有モノマーのうちのいずれかは、任意の好適な基(上記のもの等)により保護されたそのヒドロキシ基を有することができることは、当業者によって認識されるだろう。エステル基のアルコキシ酸素へ直接結合される第4級炭素を有する好適な(メタ)アクリレートエステル(すなわち保護カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸)には、米国特許第6,136,501号中で開示される保護基のいずれかの(メタ)アクリレートエステル、アダマンチル(メタ)アクリレートエステル、tert−ブチル(メタ)アクリレートおよび同種のものが含まれる。エステル基のアルコキシ酸素へ直接結合される第4級炭素を有する好ましい(メタ)アクリレートエステルには、tert−ブチル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、2,3−ジメチル−2−ブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ペンチル(メタ)アクリレート、2,3,3−トリメチル−3−ブチル(メタ)アクリレート、1,2−ジメチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、2,3,4−トリメチル−3−ペンチル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4−ペンタメチル−3−ペンチル(メタ)アクリレート、およびC1−10アルキルアダマンチルを含むアダマンチル(メタ)アクリレート(メタ)アクリレートが含まれる。
【0019】
表面処理剤の形成において有用な表面処理部分を含有しない好適なモノマーは、アルキル(メタ)アクリレートエステルおよびビニル芳香族モノマーである。好ましいアルキル(メタ)アクリレートモノマーには、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、およびより好ましくは、メチルメタクリレート(MMA)、メチルアクリレート(MA)、エチルメタクリレート(EMA)、n−プロピルメタクリレート(PMA)、n−ブチルメタクリレート(BMA)、ブチルアクリレート(BA)、エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)、エチルヘキシルアクリレート(EHA)、シクロペンチルメタクリレート、およびシクロヘキシルメタクリレートが含まれるが、これらに限定されない。表面処理部分を含有しない好ましいビニル芳香族モノマーは、スチレンおよびC1−12アルキルスチレンであり、より好ましくはスチレンおよびC1−6アルキルスチレンである。例示的なC1−12アルキルスチレンには、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、α−エチルスチレンおよび4−エチルスチレンが含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
本発明のポリマー性表面処理剤は、典型的には、ポリマーの形成に使用したモノマーの全モルに基づいて、≦10mol%、好ましくは≦8mol%、およびより好ましくは≦5mol%の量で、1つまたは複数の表面処理部分を含む1つまたは複数のモノマーを含む。ポリマーの残りは表面処理部分を含まないモノマーからなる。かかるポリマー性表面処理剤は、多様な供給源(Dow Chemical Company、Midland、Michigan等)から商業的に入手可能であるか、または当該技術分野において周知の様々な方法(溶液重合またはエマルジョン重合によって等)に従って作製することができる。かかるポリマーはさらなる精製の有無にかかわらず使用することができる。
【0021】
もう一つの好ましい実施形態において、ポリマー性表面処理剤はセルロースポリマーである。選択される有機溶媒中で可溶性であり、1つまたは複数の表面処理部分(典型的にはヒドロキシル基)を含む任意のセルロース系材料は、本発明において使用することができる。1つまたは複数の表面処理部分を有する例示的なセルロースポリマーには、セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよび同種のものが限定されずに含まれる。かかるセルロース系ポリマーは、多様な商業的供給源から容易に入手可能であり、さらなる精製の有無にかかわらず使用することができる。
【0022】
好適な非ポリマー性表面処理剤は、1、2または3以上のカルボキシル基を有し、6〜50の炭素原子、および好ましくは6〜30の炭素原子を有するカルボン酸を含む。かかるカルボン酸は、脂肪族、環状、分岐状、不飽和、芳香族であり得、および/またはOおよびSから選択される1つまたは複数のヘテロ原子を含有し得る。かかるカルボン酸は1つまたは複数の他の表面活性部分(ヒドロキシル基等)を任意で含有することができる。例示的な非ポリマー性表面処理剤には、アジピン酸、スベリン酸およびヒドロキシヘキサン酸、ヒドロキシデカン酸、2−エチル−2−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ桂皮酸および同種のものが限定されずに含まれる。非ポリマー性表面処理剤は一般的に商業的に入手可能であるか、または当該技術分野において公知の多様な方法によって調製され、さらなる精製の有無にかかわらず使用することができる。
【0023】
表面処理組成物は、1つまたは複数の添加剤(熱酸発生剤、光酸発生剤、抗酸化剤、色素、造影剤および同種のもの等)を任意で含むことができる。表面処理剤が1つまたは複数の保護ヒドロキシル基を含む場合、熱酸発生剤(TAG)または光酸発生剤(PAG)を組成物中で使用することが好ましい。表面処理剤が1つまたは複数の保護カルボキシル基を含む場合、組成物中でのTAGまたはPAGの使用は任意であるが、異なる表面エネルギーの領域を有するパターン形成されたハードマスク表面が所望される特定の適用については、PAGの使用が好ましい。一般に、表面処理組成物中のTAGの量は、0〜10wt%、好ましくは3〜8wt%、およびより好ましくは4〜6wt%である。表面処理組成物中のPAGの量は、典型的には0〜10wt%、好ましくは3〜8wt%、およびより好ましくは4〜6wt%である。
【0024】
TAGは当該技術分野において周知である。一般に、TAGは加熱(≧90℃および好ましくは120〜150℃等)によって活性化されて酸を生成することができ、それは場合に応じて保護基を切断して、非保護のカルボキシルまたはヒドロキシル基を形成することができる。例示的なTAGには、ニトロベンジルトシレート(2−ニトロベンジルトシレート、2,4−ジニトロベンジルトシレート、2,6−ジニトロベンジルトシレートおよび4−ニトロベンジルトシレート等);ベンゼンスルホン酸塩(2−トリフルオロメチル−6−ニトロベンジル4−クロロベンゼンスルホネートおよび2−トリフルオロメチル−6−ニトロベンジル4−ニトロベンゼンスルホネート等);フェノール性スルホン酸エステル(フェニルおよび4−メトキシベンゼンスルホネート等);および有機酸のアミン塩またはアルキルアンモニウム塩(10−カンファースルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、アミンブロックドデシルベンゼンスルホン酸および第4級アンモニウムブロックトリフル酸等)が含まれる。多様な芳香族の(アントラセン、ナフタレンまたはベンゼン誘導体)スルホン酸アミン塩をTAGとして用いることができ、米国特許第3,474,054号、第4,200,729号、第4,251,665号および第5,187,019号中で開示されるものが含まれる。典型的には、TAGは170〜220℃の間の温度で非常に低い揮発性を有するだろう。TAGの例には、NACURE(商標)、CDX(商標)およびK−PURE(商標)の名称下でKing Industries、Norwalk、Connecticut、USAによって販売されるものが含まれる。
【0025】
PAGは当該技術分野において周知であり、光の特定の波長(g線、h線もしくはi線、248nm、193nmまたは他の好適な波長等)への露光に際してまたは電子ビーム(eビーム)への露光に際して活性化されて酸を生成し、それは場合に応じて保護基を切断して、非保護のカルボキシルまたはヒドロキシル基を形成することができる。好適なPAGは化学増幅型フォトレジストの当該技術分野において公知であり、例えば、オニウム塩(例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホンイウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート);ニトロベンジル誘導体(例えば2−ニトロベンジルp−トルエンスルホネート、2,6−ジニトロベンジルp−トルエンスルホネート、および2,4−ジニトロベンジルp−トルエンスルホネート);スルホン酸エステル(例えば1,2,3−トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼン)、および1,2,3−トリス(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン);ジアゾメタン誘導体(例えばビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン);グリオキシム誘導体(例えばビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、およびビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム);N−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体(例えばN−ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル);およびハロゲン含有トリアジン化合物(例えば2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン誘導体、および2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン誘導体)が含まれる。1つまたは複数のかかるPAGを使用することができる。好適なPAGは、多様な供給源から(IRGACURE(商標)ブランド下のBASF(Ludwigshafen、ドイツ)から等)入手可能である。
【0026】
本表面処理組成物は、単一相の液体組成物をもたらす任意の順序で、表面処理剤、有機溶媒および任意のオプションの添加剤(TAGまたはPAG)を組み合わせることによって調製することができる。組成物中の表面処理剤の濃度が幅広い範囲にわたって変動され得ること、およびスピンオン技法によって堆積させた任意のフィルムの厚みが組成物中の表面処理剤の濃度に依存することは当業者によって認識されるだろう。好ましくは、表面処理剤は、表面処理組成物の全重量に基づいて、0.1〜5wt%、好ましくは0.5〜3wt%、およびより好ましくは1〜3wt%の量で組成物中に存在する。より高い量またはより低い量の表面処理剤を本表面処理組成物中で使用できることは当業者によって認識されるだろう。
【0027】
本発明に従って処理することができるハードマスクは、オキシ金属リンケージを有する無機ドメインを含む任意のハードマスク層を含み、オキシ金属リンケージおよび他の金属リンケージ(金属窒化物リンケージ等)を含む合金ハードマスクが含まれる。かかるハードマスクは3族〜14族から選択される1つまたは複数の金属を含み、メタロイドシリコンを含むことができる。オキシ金属ハードマスク層は、典型的には(−M−O−)リンケージ(式中、Mは3族〜14族の金属であり、nは>1の整数である)を有する多数の無機ドメインを含む。異なる金属の混合物を使用してハードマスク層を調製することができる。本明細書において使用される時、Mはメタロイドシリコンを含む。好ましくは、Mは、1つまたは複数の4、5、6および13族から、ならびにより好ましくは4、5および6族から選択される金属である。Mは、1つたは複数のチタン、ジルコニウム、ハフニウム、タングステン、タンタル、モリブデン、およびアルミニウムから選択されることが好ましく、より好ましくは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タングステン、タンタルおよびモリブデンであり、さらにより好ましくは、ジルコニウム、ハフニウムおよびタングステンおよびタンタルである。好ましくは、n>2、より好ましくはn>5、およびなおより好ましくはn>10である。ハードマスク層はフィルムを硬化させて金属−酸素ドメインのネットワークを提供することによって典型的には調製されるので、nの値に対する実際的な上限はない。ハードマスク層は、−M−OH、−M−O−C−または−M−O−X−リンケージ(式中、Mは上で定義された通りであり、XはH、CまたはM以外の元素であり得る)を有する少数のドメインも含むことができる。
【0028】
オキシ金属ハードマスク層は、典型的には、基板表面上のオキシ金属ハードマスク前駆体(有機−金属化合物)上に配置することによって、基板(電子装置基板等)上に形成される。多様な方法がオキシ金属ハードマスク層の形成について公知である。例えば、米国特許第,364,832号は、式(1)の金属−酸素ポリマー
【化1】
(式中、各Xは、光減衰部分、ジケトン、C2−20ポリオールおよびC1−20アルコキシドから独立して選択され;Mは3族〜14族の金属である)を含有する組成物の層を基板上に堆積させることによって得られる湿式現像可能な保護層を開示する。一実施形態において、少なくとも1つのXは、構造R−C(O)−CH−C(O)−R(式中、各Rは、水素;C1−12アルキル、C6−20アリール、C1−12アルコキシおよびC6−10フェノキシから独立して選択される)のジケトンであることが好ましく、より好ましくは両方のX置換基はジケトンである。Rについての例示的な基には、C1−6アルキル、ベンジル、フェネチル、ナフチル;フェノキシ、メチルフェノキシ、ジメチルフェノキシ、エチルフェノキシおよびフェニルオキシ−メチルが含まれる。金属−酸素オリゴマーの好ましい構造は、式(1a)
【化2】
(式中、M、XおよびRは上記の通りである)を有する。米国特許第7,364,832号中でかかる金属−酸素オリゴマーが開示される。金属ハードマスク層を形成する他の方法は、米国特許第6,303,270号;第6,740,469号;第7,457,507号、米国特許出願公報第2012/0223418号中で見出される。硬化後に、かかる金属ハードマスクは、(−M−O−)リンケージ(式中、n>1、好ましくはn>2、より好ましくはn>5、なおより好ましくはn>10、およびさらにより好ましくはn>25)を有する多数のドメインから構成される。
【0029】
あるいは、オキシ金属ハードマスク層は米国特許出願第13/624,946号中の手順に従って形成することができ、この特許は、有機金属のオリゴマーの層を電子装置基板上に配置すること;および有機金属のオリゴマーを硬化させて電子装置基板上に金属酸化物層を形成することによって、電子装置基板上にハードマスクを形成し;有機金属のオリゴマーは、(i)金属含有ペンダント基を含むオリゴマー;(ii)式
【化3】
(式中、R=(C−C)アルキル;Mは3族〜14族の金属であり;R=(C−C)アルキレン−X−または(C−C)アルキリデン−X−であり;各XはOおよびSから独立して選択され;zは1〜5の整数であり;Lはリガンドであり;mはリガンドの数を指し、1〜4の整数であり;p=2〜25の整数である)のオリゴマー;および(iii)それらの混合物から選択されることを開示する。なおもう一つの代替の実施形態において、米国特許出願第61/607,035号は、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つのモノマーを重合形態で含むポリマーと;Ti、Zr、Hf、Co、Mn、Znまたはその組み合わせから選択される少なくとも1つの金属を含む有機金属化合物とを含み、有機金属化合物が組成物の全重量に基づいて5重量パーセントを超える量で存在する組成物の層を配置し、続いて層を硬化させることによって、金属ハードマスクを基板上に形成することを開示する。
【0030】
多様な電子装置基板は、パッケージング基板(マルチチップモジュール等);平面パネルディスプレー基板;集積回路基板、発光ダイオード(LED)用の基板、半導体ウェーハ、多結晶シリコン基板および同種のものを限定されずに含む、金属ハードマスク層を含有することができる。かかる基板は、典型的には、1つまたは複数のシリコン、ポリシリコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、シリコンゲルマニウム、砒化ガリウム、アルミニウム、サファイア、タングステン、チタン、チタン−タングステン、ニッケル、銅および金からなる。好適な基板は、ウエハ(集積回路、光学センサー、平面パネルディスプレー、光集積回路およびLEDの製造において使用されるもの等)の形態であり得る。本明細書において使用される時、「半導体ウエハ」という用語は、「電子デバイス基板」、「半導体基板」、「半導体装置」、および様々なレベルの相互連結のための様々なパッケージ(シングルチップウエハ、マルチプルチップウエハ、様々なレベルのためのパッケージ、またははんだ連結を要求する他のアセンブリを含む)を包含することが意図される。オキシ金属ハードマスク層に特に好適な基板は、パターン形成されたウエハ(パターン形成されたシリコンウエハ、パターン形成されたサファイアウエハおよびパターン形成された砒化ガリウムウエハ等)である。かかるウエハは任意の好適なサイズであり得る。より小さな直径およびより大きな直径を有するウエハを本発明に従って好適に用いることができるが、好ましいウエハ直径は200mm〜300mmである。本明細書において使用される時、「半導体基板」という用語には、半導体装置のアクティブポーションまたは作動可能なポーションを含む、1つまたは複数の半導体の層または構造を有する任意の基板が含まれる。「半導体基板」という用語は、バルク半導体材料(単独でまたは他の材料をその上に含むアセンブリでのいずれかの半導体ウエハ、および単独でまたは他の材料を含むアセンブリでのいずれかの半導体材料層)を含むがこれらに限定されない半導体材料を含む、任意の構築物を意味すると定義される。半導体装置とは、少なくとも1つのマイクロ電子装置がバッチ製造されていたかまたはバッチ製造されている半導体基板を指す。
【0031】
ハードマスク層の表面は、任意の好適な手段によって(スピンコーティング、ドクターブレーディング、カーテンコーティング、ローラーコーティング、噴霧コーティング、浸漬コーティングおよび同種のもの等によって)本表面処理組成物と接触させることができる。スピンコーティングが好ましい。典型的なスピンコーティング法において、本表面処理組成物を500〜4000rpmの速さで回転しているハードマスク表面へ15〜90秒の期間適用して、ハードマスク表面上に表面処理組成物の所望された層を得る。表面処理組成物層の厚みを回転スピードの変化によって調整できることは、当業者によって認識されるだろう。
【0032】
表面処理組成物との接触および任意のオプションの溶媒除去工程に続いて、表面処理剤をオキシ金属ハードマスク表面と相互作用させる。かかる相互作用は周囲温度で起こり得るか、または熱によって促進され得る。一実施形態において、オキシ金属ハードマスク層は、ハードマスク表面への表面処理剤の少なくとも一部(すなわち表面処理部分)の結合を引き起こすのに十分な所望される温度および時間の期間で任意で加熱される。好ましくは、ハードマスク層は加熱される。理論に束縛されることは意図しないが、この加熱工程の結果として、表面処理部分はオキシ金属ハードマスクの表面へ結合し、それによって表面エネルギーおよびしたがって静水接触角を修飾すると考えられる。典型的には、オキシ金属ハードマスク層は、≧100℃、好ましくは≧120℃およびより好ましくは≧150℃の温度で加熱される。オキシ金属ハードマスク層の加熱のための温度の好適な範囲は、100〜350℃、好ましくは125〜325℃、より好ましくは150〜300℃、およびさらにより好ましくは200〜300℃である。かかる加熱は10秒〜5時間であり得、典型的には30秒〜2時間、および好ましくは30秒〜30分である。表面処理剤をハードマスク表面と相互作用(例えば結合)させた後(オプションの加熱工程等の後)、任意の未反応(または非結合)表面処理剤は、任意で好適な有機溶媒によるリンスによって除去され、好ましくはリンスによって除去される。表面処理組成物の形成のために有用な任意の上記の有機溶媒をこのリンス工程において使用できる。
【0033】
表面処理組成物がオプションのTAGを含む場合、TAGを活性化し、酸を生成するのに十分な温度まで、ハードマスク層を加熱すべきである。この加熱工程は、生成された酸の存在下において任意の表面活性部分(カルボキシルおよび/またはヒドロキシル等)を脱保護することに加えて、ハードマスク表面への表面処理剤の任意の結合を促進することにも十分であるべきである。表面処理組成物がオプションのPAGを含む場合、ハードマスク層上の表面処理組成物は、酸を活性化する適切な波長の光へ露光される。一旦十分な酸が生成されれば、酸は任意の表面活性部分(カルボキシルおよび/またはヒドロキシル等)を脱保護するだろう。光への露光は、オプションの加熱工程の前、その間、またはその前および間の両方のいずれかで起こり得る。代替の実施形態において、PAGを含む表面処理組成物は、オプションの加熱工程なしに酸を活性化する適切な波長の光へ露光される。表面処理組成物がエステル基のアルコキシ酸素へ直接結合される第4級炭素を有するエステルの形態で保護カルボキシル基を含む場合、ハードマスク層は、カルボキシル基を脱保護し、対応するカルボン酸を生成する十分な温度へ加熱することができる。しかしながら、一旦表面処理部分が保護基から遊離されれば、表面処理剤のハードマスク表面への任意の結合を促進するために、ハードマスク層を好ましくは上記のように加熱する。次に、典型的にはリンス工程を使用して、任意の非結合表面処理剤を除去する。理論に束縛されることは意図しないが、かかるリンス後に、表面処理剤の単層が金属ハードマスク層の表面上にとどまると考えられている。
【0034】
本表面処理組成物は、オキシ金属ハードマスク層の表面に加えて、他のハードマスク材料(シルセスキオキサン含有ハードマスク、金属窒化物ハードマスクおよび窒化ケイ素ハードマスク、または酸化ケイ素、金属窒化物もしくは窒化ケイ素から主としてなるフィルムを形成する有機金属のポリマー材料のコーティングの熱処理によって形成されたハードマスク等)の表面を処理するのに有用である。本表面処理は、表面をその後に適用される有機層(フォトレジスト等)とより適合性があるようにするように、オキシ金属ハードマスク層の表面エネルギーを変化(低下)させる(水接触角を高める)。表面エネルギーを測定することは多くの場合難しいので、典型的には代理測定(水接触角等)を使用する。水接触角の決定は周知であり、好ましい方法は、脱イオン化(「DI」)水および2.5μL液滴サイズを使用するKruss液滴形状分析器モデル100の使用を使用する。処理の前に、(−M−O−)リンケージ(式中、Mは金属であり、n>1である)を備えた多数の無機ドメインを有するオキシ金属ハードマスク層は、典型的には、≦50°(35〜45°等)の水接触角を有する。本組成物による処理に後に、ハードマスク表面は、典型的には、≧55°および好ましくは≧60°の水接触角を有する。処理されたハードマスク表面は、典型的には、55〜70°、および好ましくは60〜70°の水接触角を有する。表面処理組成物との接触前に、オキシハードマスク表面は第1の水接触角を有し、かかる接触後に第2の水接触角を有し、第2の水接触角は第1の水接触角より大きい。好ましくは、第1の水接触角は≦50°である。好ましくは、第2の水接触角は、≧55°、より好ましくは55〜70°、およびなおより好ましくは60〜70°である。本組成物による処理に後に、ハードマスク表面は、続いて適用される有機層の表面エネルギーに実質的にマッチする表面エネルギーを有する(すなわち、処理されたハードマスク層の表面エネルギーは、続いて適用される有機層の表面エネルギーの20%、および好ましくは10%内であるべきである)。
【0035】
オキシ金属ハードマスク層は、典型的には、エッチング選択性を提供し、特に電子装置の製造において、下層反射防止コーティング(BARC)スタックの一部として使用される。本組成物によるオキシ金属ハードマスクの処理に続いて、有機コーティング層は典型的には処理されたハードマスク表面上に堆積される。好適な有機層は、反射防止コーティング、フォトレジスト、誘電体コーティング、永久接着剤、一時的接着剤および同種のものを限定されずに含む。好ましくは、後続する有機コーティング層は、1つまたは複数の反射防止コーティング、フォトレジストおよび誘電体コーティングから、ならびにより好ましくは反射防止コーティングおよびフォトレジストから選択される。典型的には、フォトレジスト層は60〜70°の静水接触角を有する。好適な有機コーティングの任意の種類を、任意の好適な方法(表面処理組成物のための上記のもの等)によって、処理されたハードマスク層へ適用することができる。スピンコーティングは好ましい方法である。例示的な反射防止コーティングには、Brewer ScienceからのARCブランド下で入手可能なもの、およびAR(商標)ブランド下で入手可能なもの(Dow Electronic Materials(Marlborough、Massachusetts)から入手可能なAR(商標)137反射防止剤等)が含まれる。幅広い種類のフォトレジストは好適であり、例えば193nmリソグラフィーにおいて使用されるもの(Dow Electronic Materialsから入手可能なEPIC(商標)ブランド下で販売されるもの等)である。好適なフォトレジストはポジティブトーン現像レジストまたはネガティブトーン現像レジストのいずれかであり得る。1つの好ましい実施形態において、フォトレジスト層は処理されたハードマスク層上に配置される。第2の好ましい実施形態において、反射防止コーティング層は処理されたハードマスク層上に配置され、フォトレジスト層は反射防止コーティング層上に配置される。処理されたハードマスク層上のコーティングに続いて、有機コーティング層に後続する加工を行なうことができる。例えば、フォトレジスト層は次いでパターン形成された化学線照射を使用してイメージング(露光)され、次いで露光されたフォトレジスト層を適切な現像液を使用して現像してパターン形成されたフォトレジスト層を提供する。パターンは、次に、当該技術分野において公知の適切なエッチング技法によって(プラズマエッチング等によって)、フォトレジスト層から下にあるハードマスク層および基板へ移される。エッチングに続いて、フォトレジスト層、任意の存在する反射防止コーティング材料層、およびハードマスク層は、従来の技法を使用して除去される。次いで電子装置基板は従来の手段に従って加工される。
【0036】
本発明は、所望される限界寸法(CD)およびピッチの形成のために自己組織化したジ−ブロックコポリマーの成長をガイドする異なる表面エネルギーの領域を有するパターン形成されたオキシ金属ハードマスク層も提供する。特に、本発明は、オキシ金属ハードマスク層を有する基板を提供することと;有機溶媒ならびに保護ヒドロキシルおよび保護カルボキシルから選択される表面処理部分を含む表面処理剤を含む表面処理組成物によりハードマスク表面をコーティングすることと;比較的より低い表面エネルギーの第1の領域および比較的より高い表面エネルギーの第2の領域のパターンを有するハードマスク層を形成するのに十分な条件へ表面処理組成物コーティングをさらすこととを含む、パターン形成されたハードマスクを形成するプロセスを提供する。好ましくは、本出願において使用される表面処理組成物は1つまたは複数のTAGおよびPAGをさらに含み、好ましくは1つまたは複数のPAGを含む。静水接触角によって測定されるように、かかるパターン形成されたオキシ金属ハードマスク層は、比較的より低い表面エネルギーの第1の領域および比較的より高い表面エネルギーの第2の領域を有する。異なる表面エネルギーのかかる領域は、表面処理剤の表面処理部分とオキシ金属ハードマスク表面のエリアを選択的に相互作用(または結合)させ、一方、ハードマスク表面の他のエリアと表面処理剤は相互作用(または結合)しないことによって得ることができる。例えば、電子線を使用してハードマスク表面の特定の領域中の表面処理部分を脱保護することができ、その後、かかる領域は、電子線へ露光されないハードマスクフィルムの領域と比較して、比較的より低い表面エネルギーを有するだろう。同様に、レーザーを使用してハードマスク表面の特定の領域を選択的に加熱してそれらの領域中の表面処理部分を脱保護することができ、その後、かかる領域は、レーザーへ露光されないハードマスクフィルムの領域と比較して、比較的より低い表面エネルギーを有するだろう。電子線またはレーザーが使用される場合、表面処理組成物は任意でTAGまたはPAGを含むことができる。
【0037】
PAGが本組成物中で使用される場合、適切なパターン形成された化学線照射へのハードマスク表面上の表面処理組成物コーティングの露光は、光へ露光されたエリアにおける酸形成をもたらし、効果的に使用してパターン形成されたオキシ金属ハードマスク表面を提供することができるだろう。露光後のベーク工程により光へ露光された領域中の酸触媒性脱保護を活性化して、利用可能なヒドロキシルおよび/またはカルボキシル表面処理部分(官能基)を備えた表面処理剤(ブラシポリマー)にする。露光後のベーク工程の間に、生成されたヒドロキシルまたはカルボキシル基はオキシ金属ドメインと反応して、フィルムの露光された領域中のオキシ金属ハードマスク上に表面処理剤(ブラシポリマー)をアンカー(または結合)させる。後続するリンス工程は任意の過剰な表面処理剤(ブラシポリマー)を除去し、露光された領域中の表面処理剤(ブラシポリマー)の単層を残し、ハードマスクフィルムの非露光領域中の表面処理剤(ブラシポリマー)を完全に除去する。このプロセスは、60〜70°の水接触角を有する等の比較的より低い表面エネルギーの第1の領域(光へ露光された領域中)、および≦50°の水接触角を有する等の比較的より高い表面エネルギーを有する第2の領域(光へ露光されない領域中)を有するオキシ金属ハードマスク表面上のイメージ形成されたブラシパターンを提供する。かかるパターン形成されたハードマスク表面を使用して、その後に適用される有機材料(誘導自己組織化プロセスにおいて使用されるブロックコポリマー等)を配列することができる。かかるブロックコポリマーは、類似していないモノマーの少なくとも2つの領域(またはブロック)を含有する。1つのブロックが、オキシ金属ハードマスク表面の領域の1つの表面エネルギーに実質的にマッチする表面エネルギーを有するように、これらのブロックコポリマーを選択することができる。結果として、ブロックコポリマーはハードマスク表面上のパターンに自然に揃うだろう。パターン形成されたオキシ金属ハードマスク層上のかかるパターンの有機材料を使用して、多様な電子装置を生産することができる。
【0038】
実施例1:ヒドロキシル基含有ポリマー(97/3のMMA/HEMAコポリマー)表面処理剤は、以下のように調製された。モノマー/開始剤供給溶液は、58.2gのメチルメタクリレート(MMA)、1.80gの2−ヒドロキシルエチルメタクリレート(HEMA)および30.0gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテー卜(PGMEA)をガラスバイアルへ添加することによって調製された。バイアルを穏やかに振盪してその含有物を混合し、次いで氷浴中に設置して氷浴により温度平衡を達成する。次に、1.80gのジメチル2,2’−アゾビス(2−プロピオン酸メチル)開始剤(Wako Pure Chemical Industries,Ltd.から商品名V−106下で入手可能)を、バイアルへ添加し、続いて振盪して開始剤を完全に溶解した。次いでバイアルを必要とされるまで氷浴中に戻した。
【0039】
磁性撹拌子を含有し、サーモカップル、冷却水循環のないコンデンサー、およびモノマー/開始剤供給ラインを装備した250mLの三つ首丸底フラスコを、加熱マントル中にセットアップした。加熱マントルはサーモカップルを介する熱制御によって制御された。PGMEA(60g)をフラスコへ添加し、適切な撹拌により温度を99℃まで導いた。モノマー/開始剤溶液をHamiltonのデュアルシリンジポンプを使用して250μL/13sec.の率でフラスコへ供給し、その間撹拌しながらリアクター温度を99℃で維持した。モノマー/開始剤溶液の添加の完了に際して、フラスコを99℃で追加の2時間維持した。次いで熱を除去し、反応混合物(ポリマー溶液)を室温まで冷却させた。次いでポリマー溶液はさらなる精製なしにそのままで使用された。MMA/HEMAの重量比は97/3であった。
【0040】
ポリマー溶液中のポリマー含有量は、ca.110℃で熱オーブン中でca.15min.間、重量損失法を使用して決定された。この試験において、0.103gのポリマー溶液は、風袋重量が前もって決定されたアルミニウムパンの中で秤量された。ポリマー含有量は40.3%であることが見出された。次いでポリマー溶液をPGMEAにより1wt%へ希釈して、表面処理組成物を形成する。
【0041】
実施例2:モノマー/開始剤供給溶液が、28.5gのMMA、1.5gの1−エチルシクロペンチルメタクリレート、15gのPGMEAおよび0.90gのジメチル2,2’−アゾビス(2−プロピオン酸メチル)開始剤をガラスバイアルへ添加することによって調製された以外は、実施例1の手順に従って、保護カルボキシル含有ポリマー(95/5のMMA/ECPMAコポリマー)表面処理剤を調製した。250mLの丸底フラスコは30gのPGMEAを含有していた。モノマー/開始剤供給溶液を250μL/26sec.の率で丸底フラスコへ添加した。MMA/ECPMAの重量比は95/5であり、ポリマー含有量は41.5%であることが見出された。
【0042】
実施例3−Hf(OBu)アセチル−ジエチレングリコールコポリマーの調製。500mLの三つ首フラスコは、還流コンデンサー、機械的スターラーおよび添加漏斗を装備していた。このリアクターへ、100g(0.21mol)のHf(OBu)(Gelest Inc.から入手可能)を添加した。この強く撹拌された材料へ、ペンタン−2,4−ジオン(42.5g、0.42mol)を非常にゆっくりと6時間にわたって添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応の間に生産されたN−ブタノールを真空下で除去し、次いで800mLの酢酸エチルを添加し、反応フラスコを室温で30min.間強く撹拌した。この溶液は任意の不溶性産物を除去する細かいフリットを介して濾過した。残りの溶媒を真空下で除去し、淡白色固体を得た(100.4g、90%の収率)。この産物(Hf(OBu)(acac))をさらなる精製なしに使用した。
【0043】
還流コンデンサー、撹拌子および熱メーターを装備した1Lの三つ首フラスコへ、上記の産物(100.4g、0.19mol)およびエチレンジグリコール(19.4g、0.18mol)の酢酸エチル(500mL)溶液を添加した。反応混合物を80℃で24時間還流した。反応混合物を細かいフリットを介して濾過し、次いで真空下で乾燥した。茶色〜白色の固体をヘプタン(3×1L)により洗浄し、次いで2時間強真空下で乾燥し、所望されるHf(OBu)アセチル−ジエチレングリコールコポリマーを白色紛体(67g)として得た。得られた産物は以下の構造を有していた。
【化4】
【0044】
実施例4−Ti(OR)アセチル−ジエチレングリコールコポリマーの調製。Dean−Starkトラップを装備したフラスコへ、50gのTi(OR)(acac)(R=エチルまたはイソプロピル、Tyzor AA−105、DuPontから入手可能)および等モル量のジエチレングリコールを室温で添加した。混合物を125℃まで加熱し、1〜2日間撹拌し、蒸留液を回収した。次いで混合物を冷却し、ヘプタン(500mL)中でクエンチした。生じた沈殿物を回収し、真空中で乾燥して、以下の式で示される構造を有する35gの所望の産物を得た。
【化5】
【0045】
実施例5−Zr(OBu)アセチル−ジエチレングリコールコポリマーの調製。トルエン/ブタノール中の25wt%のジルコニウムビス(アセチルアセトン)−ビス(n−ブトキシド(またはZr(acac)(OBu))をGelest Inc.から得て、さらなる精製なしに使用した。200gのZr(acac)(OBu)から溶媒を除去し、残留物を250mLの酢酸エチルにより希釈した。この混合物へ、等モル量のジエチレングリコールを室温で添加し、次いで混合物を80℃で18時間還流した。次に、反応混合物を冷却し、濾過して白色沈殿物を除去した。回転蒸発装置を使用して濾液はを小体積へ濃縮し、残留物をヘプタン中でクエンチした。次いで沈殿物を回収し、真空中で乾燥して20.8gの所望の産物を得、その構造は以下の式によって示される。
【化6】
【0046】
実施例6−表面処理:実施例3〜5の各有機金属化合物の溶液を4wt%で2−メチル−1−ブタノール中で調製した。各溶液を使用して有機金属層をベアシリコンウエハ上に1500rpmでスピンコーティングし、続いて60sec.間200、250または350℃で硬化して金属ハードマスクフィルムを形成した。
【0047】
1wt%のポリ(メチルメタクリレート)の表面処理組成物(PGMEA中の1つの端部(PMMA−OH)上にヒドロキシル末端を有する)を調製した。PMMA−OHはca.11,000の重量平均分子量(Mw)を有し、Sigma−Aldrich(St.Louis、Missouri)から得た。次いで表面処理組成物を各金属ハードマスクフィルム上に1500rpmでスピンコーティングし、次いで250℃で8min.間硬化した。次いでコーティングしたウエハの表面を60sec.間PGMEAによりリンスして、任意の非結合PMMA−OH材料を除去した。表面処理前後の金属ハードマスク層の表面接触角は、DI水および2.5μL液滴サイズを使用するKruss液滴形状分析器モデル100を使用して決定された。結果を表1中で報告する。
【表1】
【0048】
上記のデーターから、表面処理前のハードマスクサンプルの中では水接触角の大きな差があったが、すべてのハードマスクフィルムは処理後実質的に同じ水接触角(ca.65°)を有していたことが理解できる。
【0049】
実施例7:表面処理剤は、表2中に示されるモノマーおよび量を使用して、実質的に実施例1の手順に従って調製される。表2中の略称は以下の意味を有する。t−BuMA=第3級−ブチルメタクリレート;およびDMBMA=2,3−ジメチル−2−ブチルメタクリレート。
【表2】
【0050】
実施例8:2メチル−1−ブタノール中の実施例3からの有機金属化合物の4wt%溶液を使用して、有機ハフニウム層をベアシリコンウエハ上に1500rpmでスピンコーティングし、続いて60sec.間350℃で硬化して、酸化ハフニウム含有ハードマスクフィルムを形成した。ハードマスクフィルムの水接触角は、実施例6中で記載される手順に従って48.6°であると決定された。次に、各ウエハを実施例1からの表面処理組成物により1500rpmでスピンコーティングし、続いて150、200または250℃で60または120秒間加熱し、各サンプルを加熱工程に続いてリンスした。処理後に、各酸化ハフニウム含有ハードマスクフィルムの水接触角を決定し、結果を以下の表3中で報告する。
【表3】
【0051】
実施例9:2メチル−1−ブタノール中の実施例5からの有機ジルコニウムの4wt%溶液を使用して、有機ジルコニウム層をベアシリコンウエハ上に1500rpmでスピンコーティングする。次いで有機ジルコニウム層を350℃で10min.間硬化して、酸化ジルコニウム含有ハードマスクフィルムを形成する。次に、ハードマスクフィルムの表面を、PGME中にヒドロキシプロピルセルロース(1.5wt%)を含有する表面処理組成物によりスピンコーティングする。コーティングしたハードマスク層を200℃で60〜120sec.間加熱する。
【0052】
実施例10−リソグラフィー試験:シリコンウエハ基板上にBARC層を堆積させることによって、基板を調製する。BARC層は970Åのフィルム厚みを有し、ARTM 40A下層反射防止剤(Dow Electronic Materialsから)をシリコンウエハ上にスピンコーティングし、続いて205℃で60sec.間硬化させることによって調製された。実施例3の有機ハフニウム化合物を使用して、2−メチル−1−ブタノール中でそれを溶解することによって、有機ハフニウム溶液を調製して、3.6wt%の溶液を形成し、それは共溶媒として5wt%のγ−ブチロラクトンも含有していた。ハフニウムハードマスク層は、有機ハフニウム化合物の125Å厚層を各基板上のBARC層の表面上にスピンコーティングすることによって調製された。ハフニウムハードマスク層は有機ハフニウム化合物層を350℃で60sec.間硬化させることによって形成された。1つのハフニウムハードマスクサンプルはさらなる処理なしに使用し(比較のサンプル)、1つのハフニウムハードマスクサンプルは本発明の組成物を以下のように使用して処理した(発明のサンプル)。
【0053】
実施例1からのポリマー溶液のPGMEAによる希釈によって表面処理組成物を調製して、1wt%の固体を含有する溶液を得た。この材料を使用して1500rpmでスピンコーティングし、続いて200℃で60sec.間ベークすることによって本発明サンプルの表面を処理した。次いで、表面を溶媒混合物(70/30w/wのPGME/PGMEA)により50sec.間リンスして、ハフニウムハードマスク表面へ結合されなかった任意の過剰な表面処理剤を除去した。
【0054】
次いで、フォトレジスト層(Dow Electronic MaterialsからのEPICTM 2096フォトレジスト)を、950Åの厚みに比較のサンプルおよび発明のサンプルの各々の上にスピンコーティングし、120℃の温度で60sec.間ベークした。次に、浸漬トップコート材料(Dow Electronic MaterialsからのOC(商標)2000)の314Å厚のフィルムをフォトレジスト層の表面上にスピンコーティングし、続いて90℃で60sec.間ベークした。次いで、フォトレジストは、ASML 1900iスキャナを使用して、40nmのラインスペースを有するマスクを介して以下の露光条件で露光された。1.35NA、ダイポール−35、0.98/0.86。露光に続いて、サンプルを95℃で60sec.間ベークし、次いで市販の現像液(MF(商標)CD−26)を使用して現像した。表面処理による金属ハードマスク(発明のサンプル)およびかかる表面処理のない金属ハードマスク(比較のサンプル)についての結果は、用量イメージvs限界寸法(CD)を示す図1中で観察される。図1中で理解できるように、表面処理したオキシハフニウムハードマスク(発明)についてのパターン崩壊マージンは31.5nmであるが、処理のないオキシハフニウムハードマスク(比較)についてのパターンマージン崩壊は39.8nmである。したがって、かかる表面処理のないハードマスクサンプルと比較して、パターン崩壊の前のライン/スペースの解像度の改善が観察されるように、本ハードマスク表面処理は、続いて適用される有機コーティング(フォトレジスト等)の接着の改善を提供する。
【0055】
実施例11:ポリマー溶液は、19.04gのPGMEAと実施例2からの0.960gのポリマー溶液を組み合わせることによって調製した。PAGストック溶液は、10gのPGMEAと0.10gの(4−(2−(tert−ブトキシ)−2−オキソエトキシ)フェニル)ジフェニルスルホンイウムパーフルオロブチルスルホネート(tBuAcPDPS PFBuS)を組み合わせて調製した。表面処理組成物は、10gのポリマー溶液、1gのPAGストック溶液および9gのPGMEAを組み合わせることによって調製した。
【0056】
実施例12:実施例3の有機ハフニウム化合物および実施例5の有機ジルコニウム化合物の各溶液は、0.57gのそれぞれの有機金属化合物、0.75gのγ−ブチロラクトンおよび13.68gの2−メチル−1−ブタノールを組み合わせることによって調製した。各溶液を0.2μmポリテトラフルオロエチレンシリンジフィルターを通して複数回濾過し、その後ベアシリコンウエハ上に1500rpmでスピンコーティングした。次いで有機金属層を350℃で60sec.間硬化させた。
【0057】
次に、実施例11からの表面処理組成物を各有機金属層上にスピンコーティングした(1500rpm)。次いでコーティングした各ウエハを90℃で60sec.間ベーク(ソフトベーク)し、続いてパターン形成された照射(193nm、1〜100mJ/cmのフラッド露光)へ露光し、次いで120℃で60sec.間再びベークし(露光後ベーク)、次いでPGMEAによりストリップした(60sec.間シングルパドル)。
【0058】
水接触角は実施例6中の手順に従って測定された。接触角は、非露光領域および露光エネルギーが30〜50mJ/cmの範囲中の領域の両方において測定された。Hf含有ハードマスクについては、非露光領域中の水接触角は49.8〜51.3°にわたり、露光領域において水接触角は65.9°であることが見出された。Zr含有ハードマスクについては、非露光領域中の水接触角は49.7からであり、露光領域において水接触角は65.3°であることが見出された。
図1