(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1端子に前記誘導性素子の一端が接続され、前記誘導性素子の他端と前記電流制限回路の電流路の一端との間に前記複数のランプが直列接続され、前記電流制限回路の電流路の他端に前記第2端子が接続され、前記電流制限回路の電流路の一端に前記整流素子の陽極が接続され、前記整流素子の陰極に前記第1端子が接続された、請求項1又は2に記載の車両用ランプ駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(構成の説明)
図1に、本発明の実施形態による車両用ランプ駆動装置1の構成例を示す。
本実施形態による車両用ランプ駆動装置1は、直流電圧Voutが印加される端子T1と端子T2との間に直列接続された第1ランプED1及び第2ランプED2(複数のランプ)を駆動するためのものであり、バッテリBA、コイルL1,L2(誘導性素子)、n型MOSトランジスタM1,M2(スイッチング素子)、抵抗R1,R2,R3およびシャント抵抗R4(電流検出素子)、ダイオードD1,D2(整流素子)、コンデンサC1,C2、スイッチSW、制御部100を備えている。また、制御部100は、昇圧制御部110、電流制御部120、補助回路130、端子TM1〜TM8を備える。昇圧制御部110は、スイッチング制御部111、ドライバ112、電圧検出部113、過電流検出部114を備え、電流制御部120は、スイッチング制御部121、ドライバ122、ピーク電流検出部123を備える。本実施形態では、電流制御部120、n型MOSトランジスタM2およびシャント抵抗R4は、定電流回路として機能する電流制限回路LMTを構成する。なお、本実施形態では、「端子」なる用語は、字句通りの端子を意味するほか、単なる接続点を含む概念を指す。
【0011】
ここで、概略的には、コイルL2、スイッチSW、電流制限回路LMTは、本実施形態に特徴的な構成要素の一部をなす。このうち、コイルL2は、スイッチSWが閉状態になったときにランプに流れ込む突入電流のピーク値を抑制するためのものであり、本実施形態では、スイッチSWの電流路と直列に接続されている。突入電流を抑制することができることを限度として、コイルL2として任意の誘導性素子を用いることができる。突入電流を抑制する必用のない用途では、コイルL2を省略することもできる。スイッチSWは、第1ランプED1および第2ランプED2(複数のランプ)の何れかの電流路と並列接続され、上記電流路を有するランプの点灯状態を切り替えるためのものである。本実施形態では、スイッチSWは、第1ランプED1の電流路と並列接続され、第1ランプED1の点灯状態を切り替える。ただし、スイッチSWは、第2ランプED2と並列接続されてもよい。本実施形態では、車両の運転者等による操作に応答してランプの点灯状態を切り替えることができることを限度として、スイッチSWとして、例えばn型MOSトランジスタやメカニカルスイッチ等、任意のスイッチを用いることができる。また、電流制限回路LMTは、端子T1と端子T2との間に第1ランプED1及び第2ランプED2と直列接続された電流路を有し、第1ランプED1、第2ランプED2、およびスイッチSWからなる回路網を流れる電流を制限するためのものであり、定電流回路として機能する。
【0012】
詳細に説明する。
図1において、バッテリBAの負極は、本車両用ランプ駆動装置1が搭載された車両の車体SHに接続され、バッテリBAの正極には、昇圧用のコイルL1の一端が接続されている。コイルL1の他端には、コイルL1を駆動するためのn型MOSトランジスタM1のドレインが接続されている。n型MOSトランジスタM1のゲートには、制御部100の端子TM2に接続され、n型MOSトランジスタM1を駆動するための制御信号SM1が制御部100から供給される。
【0013】
n型MOSトランジスタM1のソースと端子T2(第2端子)との間には、nMOSトランジスタM1を流れる電流を検出するための抵抗R1が接続されている。端子T2は車体SHに接続されている。本実施形態では、端子T2には、制御部100のグランド端子である端子TM7が接続されている。これにより、本車両用ランプ駆動装置1は、車両の車体SHの電位を基準として動作するものとなっている。
【0014】
また、n型MOSトランジスタM1のドレインには、整流用のダイオードD1のアノードが接続され、ダイオードD1のカソードは、端子T1(第1端子)に接続されている。端子T1には、ダイオードD1により整流された直流電圧Voutが供給される。端子T1と端子T2との間には、直流電圧Voutを分圧して検出するための抵抗R2と抵抗R3とが直列接続されている。また、端子T1と端子T2との間には、コンデンサC1が接続されている。
【0015】
上述のコイルL1、n型MOSトランジスタM1、ダイオードD1、コンデンサC1は、昇圧チョッパ回路CHPを構成する。本実施形態では、制御部100の制御の下、上記昇圧チョッパ回路CHPが、バッテリBAから供給される直流電圧Vinを所望の直流電圧Voutに昇圧し、端子T1と端子T2との間に供給する。コンデンサC1は、昇圧チョッパ回路CHPから出力される直流電圧Voutを平滑化する。
【0016】
端子T1と端子T2との間には、コイルL2、ハイビーム用の第1ランプED1、ロービーム用の第2ランプED2、n型MOSトランジスタM2、シャント抵抗R4が直列接続されている。具体的には、端子T1には、コイルL2の一端が接続され、コイルL2の他端には、第1ランプL1の電流路の一端(陽極)が接続されている。第1ランプED1の電流路の他端(陰極)には、第2ランプED2の電流路の一端(陽極)が接続されている。即ち、コイルL2の他端と電流制限回路LMTの電流路の一端との間に第1ランプED1及び第2ランプED2が直列接続され、電流制限回路LMTの電流路の他端に端子T2が接続されている。
【0017】
第2ランプED2の電流路の他端(陰極)には、第1ランプED1および第2ランプED2を流れる電流を一定に制御するためのn型MOSトランジスタM2のドレインが接続されている。これにより、端子T1と端子T2との間には、電流路が第1ランプED1及び第2ランプED2と直列接続されたn型MOSトランジスタM2が接続されている。本実施形態では、n型MOSトランジスタM2を用いて電流制限回路LMTの電流路を形成するが、この例に限定されず、第1ランプED1および第2ランプED2に流れる電流を調整することができることを限度として任意のスイッチング素子を用いることができる。また、端子T1と端子T2との間には、n型MOSトランジスタM2の電流路と直列接続されたシャント抵抗R4が接続されている。本実施形態では、シャント抵抗R4は、n型MOSトランジスタM2のソースと端子T2との間に接続され、n型MOSトランジスタM2を流れる電流Ifを検出する。電流Ifは、第1ランプED1、第2ランプED2、スイッチSWからなる回路網を流れる電流に相当する。電流Ifを検出することができることを限度として、シャント抵抗R4として、ホール素子等、任意の電流検出素子を用いることができる。本実施形態では、n型MOSトランジスタM2とシャント抵抗R4は、電流制限回路LMTの電流路を形成する。
【0018】
また、本実施形態では、上述したように、第1ランプED1の電流路と並列にスイッチSWが接続されているが、スイッチSWは、コイルL2に対しては直列接続されている。スイッチSWが開状態にある場合、第1ランプED1の陽極と陰極との間に電位差が生じ、端子T1からコイルL2を通じて第1ランプED1に電流が流れ込み、第1ランプED1が点灯状態になる。これに対し、スイッチSWが閉状態にある場合、第1ランプED1の陽極と陰極とが短絡される。この場合、第1ランプED1の陽極と陰極との間の電位差が消失し、第1ランプED1に電流が流れ込まなくなるため、第1ランプED1は消灯状態になる。
【0019】
第1ランプED1は、直列接続された3個の発光ダイオードED11,ED12,ED13から構成され、第2ランプED2も同様に、直列接続された3個の発光ダイオードED21,ED22,ED23から構成される。本実施形態では、ハイビーム用の第1ランプED1の点灯状態をスイッチSWにより制御する必要上、第1ランプED1に対してスイッチSWを並列接続しているが、用途に応じて、スイッチSWを第2ランプED2と並列接続してもよい。また、ランプの個数は任意であり、スイッチの個数も任意である。
【0020】
第2ランプED2の電流路の出力端(陰極)と端子T1との間には、n型MOSトランジスタM2がオフした際にコイルL2に蓄積されていたエネルギーが放出されることにより発生する電流を回生させるためのフライホイールダイオードD2(回生用の整流素子)が接続されている。具体的には、第2ランプED2の電流路の出力端、即ち、上記電流制限回路の電流路の一端にはフライホイールダイオードD2のアノードが接続され、フライホイールダイオードD2のカソードには端子T1が接続されている。
【0021】
制御部100は、昇圧制御部110、電流制御部120、補助回路部130、端子TM1〜TM8を備えている。このうち、昇圧制御部110は、上記昇圧チョッパ回路を制御するためのものであり、スイッチング制御部111、ドライバ112、電圧検出部113、過電流検出部114から構成される。電圧検出部113の入力部は、端子TM3を介して、抵抗R2と抵抗R3との間の接続部に接続されている。電圧検出部113は、抵抗R2と抵抗R3とにより直流電圧Voutを分圧して得られる電圧から昇圧チョッパ回路CHPの出力電圧である直流電圧Voutを検出する。
【0022】
過電流検出部114の入力部は、端子TM4を介して、n型MOSトランジスタM1と抵抗R1との間の接続部に接続されている。過電流検出部114は、n型MOSトランジスタM1を過電流から保護するために、抵抗R1での電圧降下量からn型MOSトランジスタM1を流れる電流を検出する。過電流検出部114が検出した電流値に基づいて、後述のスイッチング制御部111がn型MOSトランジスタM1のスイッチングのタイミングを調整することにより、n型MOSトランジスタM1を過電流から保護する。スイッチング制御部111には、電圧検出部113および過電流検出部114の各検出結果が入力される。
【0023】
スイッチング制御部111は、電圧検出部113により検出された直流電圧Voutが所望電圧になるように、ドライバ112を通じてn型MOSトランジスタM1をスイッチング駆動する。具体的には、スイッチング制御部111は、直流電圧Voutが規定電圧以上であれば、直流電圧Voutを低下させるようにn型MOSトランジスタM1のスイッチングを制御し、逆に直流電圧Voutが規定電圧未満であれば、直流電圧Voutを上昇させるようにn型MOSトランジスタM1のスイッチングを制御する。また、スイッチング制御部111は、過電流検出部114により過電流が検出された場合、n型MOSトランジスタM1をオフさせて、n型MOSトランジスタM1を過電流から保護する。ここで、通常、n型MOSトランジスタM1を流れる電流は、ランプ側に流れる電流(負荷電流)の約2倍のピーク値を有している。このため、ランプ(負荷)の短絡等により負荷電流が大きくなると、n型MOSトランジスタM1に過電流が発生する場合が起こり得る。このため、n型MOSトランジスタM1を流れる電流を監視し、n型MOSトランジスタM1を過電流から保護する必要がある。そこで、スイッチング制御部111は、過電流検出部114により検出された電流値が、過電流を判定するための規定電流以上であれば、n型MOSトランジスタM1をオフさせ、n型MOSトランジスタM1を過電流から保護する。逆に、過電流検出部114により検出された電流値が上記規定電流未満であれば、電圧検出部113の検出結果に基づいて、直流電圧Voutが所望の規定電圧になるようにn型MOSトランジスタM1のスイッチングを制御する。ドライバ112は、スイッチング制御部111の出力信号に基づいて制御信号SM1をn型MOSトランジスタM1のゲートに出力することにより、端子TM2を通じてn型MOSトランジスタM1を駆動する。
【0024】
電流制御部120は、第1ランプED1及び第2ランプED2を流れる電流(以下、ランプ電流と称す。)を一定に制御するためのものであり、スイッチング制御部121、ドライバ122、ピーク電流検出部123から構成される。ピーク電流検出部123の入力部には、端子TM6を介して、n型MOSトランジスタM2とシャント抵抗R4との間の接続点が接続されている。ピーク電流検出部123は、n型MOSトランジスタM2の電流Ifとして観測される上記ランプ電流を検出するためのものであり、ランプ電流のピークが規定値を超えた場合、その旨の検出結果を出力する。スイッチング制御部121には、ピーク電流検出部123の検出結果が入力される。
【0025】
スイッチング制御部121は、n型MOSトランジスタM2を流れる電流Ifが規定値となるように、電流検出素子としてのシャント抵抗R4の検出結果であるシャント抵抗R4の電圧降下量に基づき、n型MOSトランジスタM2の導通を制御するものである。即ち、スイッチング制御部121は、上記ピーク電流検出部123の検出結果に基づいて、上記ランプ電流が規定値を超えないように、ドライバ122を通じてn型MOSトランジスタM2の導通を制御する。ドライバ122は、スイッチング制御部121の出力信号に基づいて制御信号SM2をn型MOSトランジスタM2のゲートに出力することにより、端子TM5を通じてn型MOSトランジスタM1を駆動する。
【0026】
補助回路130は、内部電源電圧Vccを発生させる内部電源機能と、上記昇圧制御部110および電流制御部120で必要とされる基準電圧を発生させる基準電圧発生機能と、バッテリBAの電圧が規定値以下の場合に昇圧チョッパ回路CHPの昇圧動作を停止させる低電圧ロックアウト機能(ULVO)と、装置の過熱を防止するための過熱保護機能とを有している。端子TM8には、内部電源電圧Vccを安定化させるためのコンデンサC2が接続されている。
【0027】
なお、端子TM1は、制御部100を構成する回路の電源端子である。端子TM1には、バッテリBAの正電極が接続され、端子TM1を介して補助回路130にはバッテリMAの直流電圧Vinが供給されている。補助回路130は、その内部電源機能により、バッテリBAの直流電圧Vinを内部電源電圧Vccに変換して、制御部100を構成する回路に供給する。また、端子TM7は、制御部100を構成する回路のグランド端子である。端子TM7は端子T2を介して車体SHに接続されている。従って、本車両用ランプ駆動装置1は、車体SHの電位を基準とした電圧で動作するものとなっている。
【0028】
(動作の説明)
次に、本発明の実施形態による車両用ランプ駆動装置1の動作を説明する。
図2は、本車両用ランプ駆動装置1の昇圧動作を説明するための波形図である。
制御部100の昇圧制御部110は、制御信号SM1によりn型MOSトランジスタM1をスイッチング駆動する。ここで、制御信号SM1がハイレベルの期間では、n型MOSトランジスタM1がオン状態となり、コイルL1に流れる電流Iaが上昇する。逆に、制御信号SM1がローレベルの期間では、n型MOSトランジスタM1がオフ状態となり、コイルL1に流れる電流Iaが下降する。
【0029】
また、制御信号SM1がハイレベルの期間(例えば、
図2の時刻t1から時刻t2の期間)では、n型MOSトランジスタM1がオン状態となるため、n型MOSトランジスタM1には、コイルL1に流れる電流Iaに対応した電流Ibが流れる。また、制御信号SM1がローレベルの期間(例えば、
図2の時刻t2から時刻t3の期間)では、n型MOSトランジスタM1がオフ状態となるため、n型MOSトランジスタM1の電流Ibは概ねゼロになる。これに対し、制御信号SM1がハイレベルの期間では、ダイオードD1が逆バイアス状態になるため、ダイオードD1の電流Icは概ねゼロになる。また、制御信号SM1がローレベルの期間では、ダイオードD1が順バイアス状態となるため、ダイオードD1には、コイルL1に流れる電流Iaに対応した電流Icが流れる。
【0030】
上述のダイオードD1を流れる電流IcによりコンデンサC1が充電される。これにより、コンデンサC1が接続された端子T1と端子T2との間の直流電圧Voutが徐々に上昇して、所望電圧付近で安定する。端子T1と端子T2との間の第1ランプED1および第2ランプED2が点灯/消灯することにより負荷が変動すると、制御部100は、直流電圧Voutを一定に保つように、n型MOSトランジスタM1のスイッチングをフィードバック制御し、直流電圧Voutを安定化させる。
【0031】
ここで、スイッチSWが開状態に操作されている場合、端子T1と端子T2との間に第1ランプED1と第2ランプT2が電気的に直列接続された状態となる。この場合、端子T1と端子T2との間の直流電圧Voutが、第1ランプED1と第2ランプT2との直列回路に印加され、これらランプにコイルL2を通じて電流Idが流れる。このため、ハイビーム用の第1ランプED1と、ロービーム用の第2ランプED2が共に点灯状態になる。本実施形態では、ハイビーム用の第1ランプED1と、ロービーム用の第2ランプED2の両方が点灯した状態をハイビームとする。
【0032】
第1ランプED1と第2ランプED2を流れる電流Idは、n型MOSトランジスタM2の電流Ifを形成し、電流Ifはシャント抵抗R4を流れる。制御部100は、このときのシャント抵抗R4の電圧降下量から電流If(=Id)を検出し、第1ランプED1と第2ランプED2を流れる電流Ifが規定値を超えないように、n型MOSトランジスタM2の導通を制御する。この結果、第1ランプED1と第2ランプED2とを流れる電流Idが概ね一定に制御され、第1ランプED1および第2ランプED2は、それぞれ、規定の輝度で点灯する。
【0033】
続いて、例えば車両の運転者がスイッチSWを開状態から閉状態に操作すると、第1ランプED1の電流路の一端(陽極)と他端(陰極)とがスイッチSWを介して短絡される。このため、第1ランプED1の電流路の両端間の電位差が消失し、第1ランプED1に電流Idが流れ込まなくなる。この結果、第1ランプED1が消灯状態になる。これに対し、第2ランプED2には、コイルL2を通じて供給される電流IdがスイッチSWを流れる電流Isとなって供給される。このため、スイッチSWが閉じられた後もロービーム用の第2ランプED2の点灯状態は維持される。本実施形態では、ハイビーム用の第1ランプED1が消灯し、ロービーム用の第2ランプED2のみが点灯した状態をロービームとする。
【0034】
ここで、スイッチSWが開状態から閉状態になり、第1ランプED1が消灯すると、第2ランプED2に突入電流が流れ込む。
図3は、本発明の実施形態による車両用ランプ駆動装置1の詳細動作を説明するための波形図であり、突入電流の発生を説明するための図である。
図3において、最上段の波形は、制御部100からn型MOSトランジスタM2のゲートに供給される制御信号SM2の波形を示している。
【0035】
例えば車両の運転者がスイッチSWを開状態から閉状態に操作すると、それまで第1ランプED1で消費されていた電力が消費されなくなり、余剰電力としてスイッチSWを介して第2ランプED2に供給される。このため、スイッチSWが閉状態になったときに、一時的に第2ランプEDに電流Isとして供給される電流Idが上昇する。この結果、
図3の波形W1に示すように、突入電流Irush1が発生する。この例に示す波形W1は、突入電流Irush1に対する対策をとらない場合の仮想的な電流Idを示しており、この場合の突入電流Irush1は許容値ITHを超えている。
【0036】
本実施形態では、次に説明するように、突入電流を抑制する。
(1)コイルL2,n型MOSトランジスタM2,抵抗R4による突入電流の抑制
本実施形態では、端子T1と端子T2との間に、スイッチSWに対して直列にコイルL2が接続されている。このため、スイッチSWが開状態から閉状態に切り替えられて、スイッチSWに電流icが流れると、それまで第1ランプED1で消費されていた電力による余剰電流が電流icとなってスイッチSWを通じて第2ランプED2に流れ込む。
【0037】
この場合、
図3の波形W2に示すように、見かけ上、コイルL2の電流Idに突入電流Irush2の成分が重畳し、電流idが瞬時的に上昇するが、このときの電流Idの変化がコイルL2により抑制され、電流Idのピーク値が許容値ITH以下に抑制される。また、突入電流Irush2は、電流Ifとなってn型MOSトランジスタM2およびシャント抵抗R4のそれぞれを流れる過程でも抑制される。この結果、第2ランプED2には、許容値ITHを超える突入電流は流れ込まない。従って、突入電流から第2ランプED2を保護することができる。また、スイッチSWが閉状態の場合、第1ランプED1には電流は流れ込まないので、第1ランプED1は突入電流の影響を受けない。
ここで、電流制御部120は、ランプ電流を一定に維持するように機能するので、この機能により、或る程度、突入電流を抑制する効果を期待することはできるが、突入電流が発生してから電流制御部120がランプ電流を一定に維持するための制御動作を開始するまでにタイムラグが存在する。このため、電流制御部120による突入電流の抑制効果を期待できない場合もある。この点について、本実施形態によれば、突入電流が発生した時点でコイルL2により突入電流のピーク値が抑制されるので、即座に突入電流を抑制することができる。従って、ランプ電流が大きくなる前に、電流制御部120によりランプ電流を一定に制御することが可能になる。
【0038】
(2)n型MOSトランジスタM2による突入電流の抑制
上述のコイルL2によっても突入電流を有効に抑制することができず、
図3の波形W3に示すように、許容値ITHを超える突入電流Irush3が発生するような状況では、次に説明するように、制御部100の制御の下、n型MOSトランジスタM2がオフ状態に制御され、突入電流はフライホイールダイオードD2を通じて回生電流として端子T1に戻される。
【0039】
図4は、本発明の実施形態による車両用ランプ駆動装置1の詳細動作を説明するための波形図であり、突入電流の回生を説明するための図である。
図4において、時刻t11でn型MOSトランジスタM2がオン状態になるとコイルL2を流れる電流Idが上昇し、時刻t12でn型MOSトランジスタM2がオフすると、コイルL2を流れる電流Idが下降する。ここで、n型MOSトランジスタM2がオフ状態になる時刻t12で、例えば車両の運転者によりスイッチSWが開状態から閉状態に切り替えられると、許容値ITHを超える突入電流Irushが発生する。これにより、n型MOSトランジスタM2を流れる電流Ifが上昇する。
【0040】
本実施形態では、
図4において、時刻t12aで突入電流Irushが許容値ITHを超え、時刻t12aで電流Ifが所定値ITFに到達すると、制御部100は、n型MOSトランジスタM2をオフ状態に制御する。この結果、スイッチSWを通じて第2ランプED2に流れ込んだ電流Isは電流IeとなってフライホイールダイオードD2を通じて端子T1に戻される。この場合、電流の流れに着目すれば、“端子T1〜コイルL2〜スイッチSW〜第2ランプED2〜フライホイールダイオードD2〜端子T1”なる閉ループが形成される。
【0041】
突入電流Irushによるエネルギーは、上記閉ループ内を循環する過程で消費され、これにより突入電流が抑制される。従って、突入電流Irushが発生した初期にコイルL2で突入電流Irushを十分に抑制することができない状況が起こり得ても、n型MOSトランジスタM2をオフ状態に制御することにより、第1ランプED1及び第2ランプED2に加えて、n型MOSトランジスタM2も突入電流から保護することが可能になる。
【0042】
上述した本実施形態によれば、第1ランプED1と第2ランプED2とを直列接続し、これらに対して電流制限回路LMT(n型MOSトランジスタM2、シャント抵抗R4)を直列接続したので、各ランプに対して駆動回路を個別に備える必要がない。このため、ハイビームとロービームの切り替えを可能としつつ、部品点数を削減し、装置構成を簡略化することができる。
また、上述した本実施形態によれば、ハイビーム用の第1ランプED1と並列接続されたスイッチSWと直列にコイルL2を接続したので、スイッチSWを通じた際に流れる突入電流をコイルL2により抑制することができる。
また、上述した本実施形態によれば、コイルL2により突入電流を十分に抑制できない状況となっても、n型MOSトランジスタM2をオフ状態に制御し、フライホイールダイオードD2を含む閉ループ内で突入電流を循環させることにより、突入電流を抑制することができる。
また、上述の本実施形態によれば、グランド電位(GND)を基準として第1ランプED1および第2ランプED2を駆動して点灯させるため、各ランプの電圧を平滑化するためのコンデンサが不要になる。従って、装置構成を更に簡略化することができる。
【0043】
<変形例>
図5は、本発明の実施形態による車両用ランプ駆動装置の変形例を示す回路図である。
図5(A)は第1の変形例を示し、
図5(B)は第2の変形例を示す。
上述の
図1の構成では、端子T1と第1ランプED1の電流路の一端(陽極)との間にコイルL2を接続したが、第1の変形例では、
図5(A)に示すように、ダイオードD2とコイルL2に代えて、端子T1とスイッチSWとの間にコイルL2Aを備えると共に、コイルL2Aに対して並列接続された整流素子としてフライホイールダイオードD2Aを備える。なお、突入電流の程度によっては、フライホイールダイオードD2Aを省略することも可能である。
【0044】
具体的には、第1ランプED1の陽極は端子T1に接続される。また、端子T1には、コイルL2Aの一端が接続され、コイルL2Aの他端にはスイッチSWの電流路の一端が接続される。コイルL2Aの電流路の他端は、
図1と同様に、第1ランプED1と第2ランプED2との間の接続点に接続される。即ち、第1ランプED1の電流路に対して、コイルL2AとスイッチSWの直列回路が並列接続される。コイルL2AとスイッチSWとが入れ替えられてもよい。また、端子T1に接続されたコイルL2Aの一端には、フライホイールダイオードD2Aのカソードが接続され、フライホイールダイオードD2Aのアノードは、コイルL2AとスイッチSWとの間の接続点に接続される。その他の構成は
図1に示す構成と同様である。本変形例によっても、スイッチSWが閉状態に操作されたときに第2ランプED2に流れ込む突入電流をコイルL2Aによって抑制することができる。スイッチSWが開状態に操作された場合には、コイルL2Aを流れる電流はフライホイールダイオードD2Aを通じて端子T1に戻される。
【0045】
また、
図5(B)に示すように、第2の変形例では、
図1の構成において、スイッチSWを省略している。その他の構成は
図1に示す構成と同様である。この第2の変形例では、端子T1に流れ込む任意の突入電流をコイルL2によって抑制することができる。
図5(B)の例では、フライホイールダイオードD2を備えているが、必要に応じて、フライホイールダイオードD2を省略することも可能である。また、第1ランプED1および第2ランプED2を一つのランプとしてもよく、端子T1と端子T2との間に接続されるランプの構成は任意である。
また、他の変形例として、
図1または
図5(B)の構成において、フライホイールダイオードD2,D2Aのアノードを、第1ランプED1と第2ランプED2との間の接続点に接続してもよい。この変形例によっても、突入電流を回生させることができる。
【0046】
図5(B)に示す第2の変形例による車両用ランプ駆動装置は、次のように表現することができる。即ち、第2の変形例による車両用ランプ駆動装置は、直流電圧が印加される第1端子T1と第2端子T2との間に直列接続された1または2以上のランプ(ED1,ED2)を駆動する車両用ランプ駆動装置であって、前記第1端子T1と前記第2端子T2との間に前記1または2以上のランプと直列接続されたコイル(誘導性素子)L2と、前記第1端子T1と前記第2端子T2との間に前記1または2以上のランプと直列接続された電流路を有し、前記1または2以上のランプと前記誘導性素子とからなる回路網を流れる電流を制限するための電流制限回路LMTと、を備えた車両用ランプ駆動装置として表現することができる。
【0047】
上述した本発明の実施形態および変形例では、本発明を車両用ランプ駆動装置1として表現したが、本発明は、車両用ランプ駆動方法として表現することもできる。この場合、本発明による車両用ランプ駆動方法は、直流電圧が印加される第1端子T1と第2端子T2との間に直列接続された複数のランプED1,ED2を駆動する車両用ランプ駆動方法であって、前記複数のランプED1,ED2の何れかの電流路と並列接続されたスイッチSWが、前記電流路を有するランプED1,ED2の点灯状態を切り替える段階と、前記第1端子T1と前記第2端子T2との間に前記複数のランプED1,ED2と直列接続された電流路を有する電流制限回路LMTが、前記複数のランプED1,ED2と前記スイッチSWとからなる回路網を流れる電流を制限する段階と、を含む車両用ランプ駆動方法として表現することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、上述の実施形態では、本発明を車両のハイビームとロービームを切り替える場合を例として説明したが、本発明は、ランプの照度を切り替える場合にも適用することができる。また、本発明は、任意の照明器具に適用することも可能である。
また、上述の実施形態では、バッテリBAの直流電圧Vinを昇圧チョッパ回路により昇圧して直流電圧Voutとして端子T1と端子T2との間に供給するものとしたが、バッテリBAが、第1ランプED1および第2ランプED2の点灯に必要な電圧を供給することができるものである場合には、コイルL1等からなる昇圧チョッパ回路を備えることなく、バッテリBAの正電極に端子T1を接続してもよい。