(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リチウム塩(A)が、ジフルオロリン酸リチウム及びモノフルオロリン酸リチウムからなる群より選ばれる1種以上のリチウム塩を、含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の電解液。
前記正極活物質が、式(5)で表される酸化物、式(6)で表される酸化物、式(7)で表される複合酸化物、式(8)で表される化合物、式(9)で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項8又は9に記載のリチウムイオン二次電池。
LiMn2-xMaxO4 (5)
(上記式(5)中、Maは遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示し、xは0.2≦x≦0.7である。)
LiMn1-uMeuO2 (6)
(上記式(6)中、MeはMnを除く遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示し、uは0.1≦u≦0.9である。)
zLi2McO3−(1−z)LiMdO2 (7)
(上記式(7)中、Mc及びMdは、各々独立に、遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示し、zは0.1≦z≦0.9である。)
LiMb1-yFeyPO4 (8)
(上記式(8)中、Mbは、Mn及びCoからなる群より選ばれる1種以上を示し、yは0≦y≦0.9である。)
Li2MfPO4F (9)
(上記式(9)中、Mfは遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示す。)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。なお、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0013】
〔電解液〕
本実施形態の電解液は、
非水溶媒と、
リチウム塩(A)と、
下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、並びに、下記式(3a)で表される構成単位と下記式(3b)で表される構成単位とを有する化合物からなる群より選ばれる一種以上の化合物(B)と、
を含有する。
【化5】
(上記式(1)中、Xは、Li原子又は水素原子を示し、Mは、P原子又はB原子を示し、MがB原子のときnは0の整数を示し、MがP原子のときnは0又は1の整数を示し、R
1及びR
2は、各々独立に、OH基、OLi基、置換されていてもよい炭素数1から10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1から10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数6から10のアリール基、置換されていてもよい炭素数6から10のアリールオキシ基、及び炭素数3から10のシロキシ基からなる群より選ばれる基を示す。)
【化6】
(上記式(2)中、Xは、Li原子又は水素原子を示し、R
3は、置換されていてもよい炭素数1から20の炭化水素基を示す。)
【化7】
(上記式(3a)中、R
4は、各々独立に、OH基、OLi基、置換されていてもよい炭素数1から10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1から10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数6から10のアリール基、置換されていてもよい炭素数6から10のアリールオキシ基、及び炭素数3から10のシロキシ基からなる群より選ばれる基を示し、上記式(3b)中、Xは、Li原子又は水素原子を示す。)
【0014】
〔非水溶媒〕
本実施形態の電解液は、非水溶媒を含有する。非水溶媒としては、特に限定されないが、例えば、非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。非プロトン性極性溶媒としては、特に限定されないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及び4,5−ジフルオロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート;γ−ブチロラクトン及びγ−バレロラクトンなどのラクトン;スルホランなどの環状スルホン;テトラヒドロフラン及びジオキサンなどの環状エーテル;エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート及びメチルトリフルオロエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;アセトニトリルなどのニトリル;ジメチルエーテルなどの鎖状エーテル;プロピオン酸メチルなどの鎖状カルボン酸エステル;ジメトキシエタンなどの鎖状ジエーテルが挙げられる。
【0015】
(カーボネート)
非水溶媒としては、特に限定されないが、例えば、環状カーボネート、鎖状カーボネートなどのカーボネート系溶媒を用いることがより好ましい。また、カーボネート系溶媒として、環状カーボネートと鎖状カーボネートを組合せて用いることがさらに好ましい。このようなカーボネートを含むことにより、イオン伝導性により優れる傾向にある。
【0016】
(環状カーボネート)
環状カーボネートとしては、特に限定されないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、及び4,5−ジフルオロエチレンカーボネートが挙げられる。このなかでも、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。このような環状カーボネートを含むことにより、電解液のイオン伝導性により向上する傾向にある。
【0017】
(鎖状カーボネート)
鎖状カーボネートとしては、特に限定されないが、例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート及びメチルトリフルオロエチルカーボネートが挙げられる。このなかでも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。このような鎖状カーボネートを含むことにより、電解液のイオン伝導性により向上する傾向にある。
【0018】
カーボネート系溶媒として、環状カーボネートと鎖状カーボネートを組合せて含む場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合比は、体積比で、好ましくは1:10〜5:1であり、より好ましくは1:5〜3:1であり、さらに好ましくは1:5〜1:1である。環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合比が上記範囲内であることにより、得られるリチウムイオン二次電池のイオン伝導性がより向上する傾向にある。
【0019】
カーボネート系溶媒を用いる場合、必要に応じて、アセトニトリル、スルホラン等の別の非水溶媒をさらに併用することができる。このような非水溶媒を用いることにより、リチウムイオン二次電池の電池物性がより改善する傾向にある。
【0020】
非水溶媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
〔リチウム塩(A)〕
本実施形態の電解液は、リチウム塩(A)を含有する。リチウム塩(A)の含有量は、電解液100質量%に対して、好ましくは1.0質量%以上であり、より好ましくは5.0質量%以上であり、さらに好ましくは7.0質量%以上である。リチウム塩(A)の含有量が1.0質量%以上であることにより、リチウムイオン二次電池のイオン伝導性がより向上する傾向にある。また、リチウム塩(A)の含有量は、電解液100質量%に対して、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。リチウム塩(A)の含有量が40質量%以下であることにより、リチウム塩(A)の低温における溶解性がより向上する傾向にある。リチウム塩(A)の電解液中の含有量は、
19F−NMR、
31P−NMRなどのNMR測定により確認することができる。また、リチウムイオン二次電池中の電解液中のリチウム塩(A)の含有量も、上記と同様に、
19F−NMR、
31P−NMRなどのNMR測定により確認することができる。
【0022】
リチウム塩(A)としては、特に限定されないが、例えば、LiPF
6、LiClO
4、LiAsF
6、Li
2SiF
6、LiOSO
2C
kF
2k+1〔kは1〜8の整数〕、LiN(SO
2C
kF
2k+1)
2〔kは1〜8の整数〕、LiPF
n(C
kF
2k+1)
6-n[nは1〜5の整数、kは1〜8の整数〕、LiPF
4(C
2O
2)、及びLiPF
2(C
2O
2)
2が挙げられる。このなかでも、LiPF
6、LiOSO
2C
kF
2k+1〔kは1〜8の整数〕、LiN(SO
2C
kF
2k+1)
2〔kは1〜8の整数〕、LiPF
n(C
kF
2k+1)
6-n[nは1〜5の整数、kは1〜8の整数〕、LiPF
4(C
2O
2)、及びLiPF
2(C
2O
2)
2が好ましい。さらに、リチウム塩(A)は、LiPF
6を含むことがより好ましい。このようなリチウム塩(A)を用いることにより、リチウムイオン二次電池のイオン伝導性により優れる傾向にある。
【0023】
リチウム塩(A)は、上記リチウム塩に加えて、又は代えて、後述するホウ素原子を有するリチウム塩(C)、及び/又は、ジフルオロリン酸リチウム及びモノフルオロリン酸リチウムを含んでもよい。
【0024】
〔ホウ素原子を有するリチウム塩(C)〕
リチウム塩(A)は、式(3)で表されるホウ素原子を有するリチウム塩(C)を含有することが好ましい。このようなリチウム塩を含むことにより、リチウムイオン二次電池のサイクル寿命がより向上する傾向にある。この理由としては明らかではないが、化合物(B)とホウ素原子を有するリチウム塩(C)が協働して正極又は負極、或いは両方に作用し、リチウムイオン二次電池内での電解液の酸化分解を抑制するためと推察される。ホウ素原子を有するリチウム塩(C)は、イオン伝導性を担う電解質としての機能もあるが、主に、サイクル寿命を改善させる効果を目的とした添加剤として機能しうる。
【化8】
(上記式(4)中、Xは、各々独立に、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子からなる群より選ばれるハロゲン原子を示し、R
6は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数1から10の炭化水素基を示し、aは0又は1の整数を示し、nは0〜2の整数を示す。)
【0025】
式(4)で表されるホウ素原子を有するリチウム塩(C)において、Xはフッ素原子、塩素原子、及び臭素原子からなる群より選ばれるハロゲン原子を示し、このなかでもフッ素原子を示すことが好ましい。Xがフッ素原子であることにより、リチウムイオン二次電池中におけるリチウム塩の化学的耐久性がより向上する傾向にある。
【0026】
また、R
6は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数1から10の炭化水素基を示す。炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素基;及びフェニル基などの芳香族炭化水素基;水素原子がフッ素原子に置換されたジフルオロメチレン基などのフッ素置換炭化水素基が挙げられる。なお、炭化水素基は、必要に応じて、官能基を有していてもよい。このような官能基としては、特に限定されないが、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子や、ニトリル基(−CN)、エーテル基(−O−)、カーボネート基(−OCO
2−)、エステル基(−CO
2−)、カルボニル基(−CO−)スルフィド基(−S−)、スルホキシド基(−SO−)、スルホン基(−SO
2−)、ウレタン基(−NHCO
2−)等が挙げられる。
【0027】
R
6の炭素数は、1〜10であり、好ましくは1〜8であり、より好ましくは1〜6である。炭素数が上記範囲内であることにより、非水溶媒との混和性により優れる傾向にある。
【0028】
R
6の好ましい例としては、特に限定されないが、例えば、メチレン基、エチレン基、1−メチルエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、1,2−ジメチルエチレン基、1,2−ジ(トリフルオロメチル)エチレン基、フルオロエチレン基などの脂肪族炭化水素基;フェニル基、ニトリル置換フェニル基、フルオロ化フェニル基などの芳香族炭化水素基が挙げられる。上記のなかでも、メチレン基、エチレン基、1−メチルエチレン基、プロピレン基、1,2−ジメチルエチレン基、1,2−ジ(トリフルオロメチル)エチレン基、フルオロエチレン基がより好ましい。R
6がこのような炭化水素基であることにより、リチウムイオン二次電池のイオン伝導性により優れる傾向にある。
【0029】
また、式(4)中、aは0又は1の整数を示し、aは0であることが好ましい。aは0であることにより、安定性により優れる傾向にある。aが0の場合、式(4)中の右側の構造はシュウ酸構造となる。また、式(4)中、nは0〜2の整数を示す。
【0030】
リチウムイオン二次電池中での化学的耐久性の観点から、式(4)で表されるホウ素原子を有するリチウム塩(C)としては、以下の式(4−1)〜式(4−7)で表される化合物が好ましい。また、このなかでも、式(4−1)で表される化合物、式(4−2)で表される化合物、及び式(4−3)で表される化合物がより好ましく、式(4−1)で表される化合物、及び式(4−2)で表される化合物がさらに好ましい。
【化9】
【0031】
ホウ素原子を有するリチウム塩(C)の含有量は、電解液100質量%に対して、好ましくは0.010質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.050質量%以上5.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.10質量%以上5.0質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.20質量%以上3.0質量%以下であり、さらにより好ましくは0.40質量%以上2.0質量%以下である。ホウ素原子を有するリチウム塩(C)の含有量が0.010質量%以上であることにより、リチウムイオン二次電池のサイクル寿命がより向上する傾向にある。また、ホウ素原子を有するリチウム塩(C)の含有量が10質量%以下であることにより、電池出力がより向上する傾向にある。また、上述のとおり、ホウ素原子を有するリチウム塩(C)は、主に、上記サイクル寿命を改善させる効果を目的とした添加剤として機能しうるという観点から、その電解液中の含有量が0.010質量%以上10質量%以下と少量であっても十分な効果を発揮し得る。ホウ素原子を有するリチウム塩(C)の電解液中の含有量は、
11B−NMR、
19F−NMRなどのNMR測定により確認することができる。また、リチウムイオン二次電池中の電解液中のホウ素原子を有するリチウム塩(C)の含有量も、上記と同様に、
11B−NMR、
19F−NMRなどのNMR測定により確認することができる。
【0032】
また、リチウム塩(A)が、ホウ素原子を有するリチウム塩(C)及びホウ素原子を有しないリチウム塩を含む場合、ホウ素原子を有するリチウム塩(C)の含有量は、リチウム塩(A)の総量に対して、好ましくは0.50質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以上40質量%以下であり、さらに好ましくは2.0質量%以上30質量%以下であり、よりさらに好ましくは5.0質量%以上20質量%以下である。ホウ素原子を有するリチウム塩(C)の含有量がリチウム塩(A)の総量に対して0.50質量%以上であることにより、リチウムイオン二次電池のサイクル寿命がより向上する傾向にある。また、ホウ素原子を有するリチウム塩(C)の含有量がリチウム塩(A)の総量に対して50質量%以下であることにより、電池出力がより向上する傾向にある。リチウムイオン二次電池中の電解液中のホウ素原子を有するリチウム塩(C)の含有量も、上記と同様に、
11B−NMR、
19F−NMRなどのNMR測定により確認することができる。
【0033】
(ジフルオロリン酸リチウム及びモノフルオロリン酸リチウム)
リチウム塩(A)は、ジフルオロリン酸リチウム及びモノフルオロリン酸リチウムからなる群より選ばれる1種以上のリチウム塩(以下、化合物(F)ともいう。)を含有することが好ましい。このようなリチウム塩を含むことにより、リチウムイオン二次電池のサイクル性能がより向上する傾向にある。
【0034】
ジフルオロリン酸リチウム及びモノフルオロリン酸リチウムの含有量は、それぞれ、電解液100質量%に対して、好ましくは0.0010質量%以上3.0質量%以下であり、より好ましくは0.0050質量%以上2.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.020質量%以上1.0質量%以下である。ジフルオロリン酸リチウム及びモノフルオロリン酸リチウムの含有量が0.0010質量%以上であることにより、リチウムイオン二次電池のサイクル寿命がより向上する傾向にある。また、ジフルオロリン酸リチウム及びモノフルオロリン酸リチウムの含有量が3.0質量%以下であることにより、リチウムイオン二次電池のイオン電導性がより向上する傾向にある。ジフルオロリン酸リチウム及びモノフルオロリン酸リチウムの電解液中の含有量は、
19F−NMR、
31P−NMRなどのNMR測定により確認することができる。また、リチウムイオン二次電池中の電解液中のジフルオロリン酸リチウム及びモノフルオロリン酸リチウムの含有量も、上記と同様に、
19F−NMR、
31P−NMRなどのNMR測定により確認することができる。
【0035】
また、リチウム塩(A)が、化合物(F)、並びに、化合物(F)以外のリチウム塩を含む場合、化合物(F)の含有量は、リチウム塩(A)の総量に対して、好ましくは0.50質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以上40質量%以下であり、さらに好ましくは2.0質量%以上30質量%以下であり、よりさらに好ましくは5.0質量%以上20質量%以下である。化合物(F)の含有量がリチウム塩(A)の総量に対して0.50質量%以上であることにより、リチウムイオン二次電池のサイクル寿命がより向上する傾向にある。また、化合物(F)の含有量がリチウム塩(A)の総量に対して50質量%以下であることにより、リチウムイオン二次電池のイオン電導性がより向上する傾向にある。
【0036】
〔化合物(B)〕
本実施形態の電解液は、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、並びに、下記式(3a)で表される構成単位と下記式(3b)で表される構成単位とを有する化合物からなる群より選ばれる一種以上の化合物(B)を含有する。
【化10】
(上記式(1)中、Xは、Li原子又は水素原子を示し、Mは、P原子又はB原子を示し、MがB原子のときnは0の整数を示し、MがP原子のときnは0又は1の整数を示し、R
1及びR
2は、各々独立に、OH基、OLi基、置換されていてもよい炭素数1から10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1から10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数6から10のアリール基、置換されていてもよい炭素数6から10のアリールオキシ基、及び炭素数3から10のシロキシ基からなる群より選ばれる基を示す。)
【化11】
(上記式(2)中、Xは、Li原子又は水素原子を示し、R
3は、置換されていてもよい炭素数1から20の炭化水素基を示す。)
【化12】
(上記式(3)中、Xは、Li原子又は水素原子を示し、R
4及びR
5は、各々独立に、OH基、OLi基、置換されていてもよい炭素数1から10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1から10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数6から10のアリール基、置換されていてもよい炭素数6から10のアリールオキシ基、及び炭素数3から10のシロキシ基からなる群より選ばれる基を示す。)
【0037】
ここで、化合物(B)の含有量は、電解液100質量%に対して、好ましくは0.010質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.010質量%以上5.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.010質量%以上5.0質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.050質量%以上3.0質量%以下であり、さらにより好ましくは0.10質量%以上3.0質量%以下であり、特に好ましくは0.20質量%以上3.0質量%以下である。化合物(B)の含有量が0.010質量%以上であることにより、リチウムイオン二次電池のサイクル寿命がより向上する傾向にある。また、化合物(B)の含有量が5.0質量%以下であることにより、リチウムイオン二次電池の入出力性能がより向上する傾向にある。化合物(B)の電解液中の含有量は、
1H−NMR、
13C−NMR、
11B−NMR、
19F−NMR、
31P−NMRなどのNMR測定により確認することができる。また、リチウムイオン二次電池中の電解液中の化合物(B)の含有量も、上記と同様に、
1H−NMR、
13C−NMR、
11B−NMR、
19F−NMR、
31P−NMRなどのNMR測定により確認することができる。
【0038】
また、化合物(B)は、電解液中に含有されていればよく、電解液調製時に添加してもよく、また電解液中で反応により生成させてもよい。
【0039】
(式(1)で表される化合物(B))
式(1)で表される化合物(B)において、XはLi原子又は水素原子を示す。このなかでも、Li原子が好ましい。Li原子であることにより、電池容量がより向上する傾向にある。また、MはP原子又はB原子を示し、MがB原子のときnは0であり、MがP原子のときnは0又は1の整数を示す。
【0040】
式(1)で表される化合物(B)において、R
1及びR
2は、各々独立に、OH基、OLi基、置換されていてもよい炭素数1から10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1から10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数6から10のアリール基、置換されていてもよい炭素数6から10のアリールオキシ基、及び炭素数3から10のシロキシ基からなる群より選ばれる基を示す。
【0041】
置換されていてもよい炭素数1から10のアルキル基としては、炭素原子が直接M原子に結合した構造を示すものであれば特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素基;及び水素原子がフッ素原子に置換されたジフルオロメチレン基又はトリフルオロメチル基などのフッ素置換炭化水素基が挙げられる。なお、アルキル基は、必要に応じて、官能基を有していてもよい。このような官能基としては、特に限定されないが、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子や、ニトリル基(−CN)、エーテル基(−O−)、カーボネート基(−OCO
2−)、エステル基(−CO
2−)、カルボニル基(−CO−)スルフィド基(−S−)、スルホキシド基(−SO−)、スルホン基(−SO
2−)、ウレタン基(−NHCO
2−)が挙げられる。
【0042】
R
1及びR
2のアルキル基の好ましい例としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基(allyl)、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フルオロヘキシル基などの脂肪族アルキル基が挙げられる。このなかでも、メチル基、エチル基、アリル基(allyl)、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フルオロヘキシル基がより好ましい。R
1及びR
2としてこのようなアルキル基を用いることにより、化学的安定性がより向上する傾向にある。
【0043】
アルキル基の炭素数は、1から10であり、好ましくは2から10であり、より好ましくは3から8である。炭素数が1以上であることにより、電池性能がより向上する傾向にある。また、炭素数が10以下であることにより、電解液との親和性がより向上する傾向にある。
【0044】
置換されていてもよい炭素数1から10のアルコキシ基としては、炭素原子が酸素原子を介してM原子に結合した構造を示すものであれば特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素オキシ基;及び水素原子がフッ素原子に置換されたアルコキシ基中の水素原子がフッ素置換されたトリフルオロエチルオキシ基やヘキサフルオロイソプロピルオキシ基などのフッ素置換炭化水素オキシ基が挙げられる。なお、アルコキシ基は、必要に応じて、官能基を有していてもよい。このような官能基としては、特に限定されないが、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子や、ニトリル基(−CN)、エーテル基(−O−)、カーボネート基(−OCO
2−)、エステル基(−CO
2−)、カルボニル基(−CO−)スルフィド基(−S−)、スルホキシド基(−SO−)、スルホン基(−SO
2−)、ウレタン基(−NHCO
2−)が挙げられる。
【0045】
R
1及びR
2のアルコキシ基の好ましい例としては、特に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ビニロキシ基、アリロキシ基(allyloxy)、プロポキシ基、ブトキシ基、シアノヒドロキシ基、フルオロエトキシ基、フルオロプロポキシ基などの脂肪族アルコキシ基が挙げられる。このなかでも、メトキシ基、エトキシ基、ビニロキシ基、アリロキシ基(allyloxy)、プロポキシ基、ブトキシ基、シアノヒドロキシ基、フルオロエトキシ基、フルオロプロポキシ基がより好ましい。R
1及びR
2としてこのようなアルコキシ基を用いることにより、化学的安定性により優れる傾向にある。
【0046】
アルコキシ基の炭素数は、1以上10以下であり、好ましくは1以上8以下であり、より好ましくは2以上8以下である。炭素数が1以上であることにより、電池性能がより向上する傾向にある。また、炭素数が10以下であることにより、電解液との親和性がより向上する傾向にある。
【0047】
置換されていてもよい炭素数6から10のアリール基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基又はベンジル基などの芳香族炭化水素基が挙げられる。なお、アリール基は、必要に応じて、官能基を有していてもよい。このような官能基としては、特に限定されないが、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子や、ニトリル基(−CN)、エーテル基(−O−)、カーボネート基(−OCO
2−)、エステル基(−CO
2−)、カルボニル基(−CO−)スルフィド基(−S−)、スルホキシド基(−SO−)、スルホン基(−SO
2−)、ウレタン基(−NHCO
2−)が挙げられる。
【0048】
R
1及びR
2のアリール基の好ましい例としては、特に限定されないが、例えば、ベンジル基、フェニル基、ニトリル置換フェニル基、フルオロ化フェニル基、ニトリル置換ベンジル基、フルオロ化ベンジル基などの芳香族アルキル基が挙げられる。このなかでも、ベンジル基、フェニル基がより好ましい。R
1及びR
2としてこのようなアリール基を用いることにより、化学的安定性がより向上する傾向にある。
【0049】
アリール基の炭素数は、6から10であり、好ましくは6から8である。炭素数が6以上であることにより、電池性能がより向上する傾向にある。また、炭素数が10以下であることにより、電解液との親和性がより向上する傾向にある。
【0050】
置換されていてもよい炭素数6から10のアリールオキシ基としては、特に限定されないが、例えば、フェノキシ基、ベンジルアルコキシ基などの芳香族炭化水素オキシ基が挙げられる。なお、アリールオキシ基は、必要に応じて、官能基を有していてもよい。このような官能基としては、特に限定されないが、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子や、ニトリル基(−CN)、エーテル基(−O−)、カーボネート基(−OCO
2−)、エステル基(−CO
2−)、カルボニル基(−CO−)スルフィド基(−S−)、スルホキシド基(−SO−)、スルホン基(−SO
2−)、ウレタン基(−NHCO
2−)が挙げられる。
【0051】
R
1及びR
2のアリールオキシ基の好ましい例としては、特に限定されないが、例えば、フェノキシ基、ベンジルアルコキシ基、ニトリル置換フェノキシ基、フルオロ化フェノキシ基、ニトリル置換ベンジルアルコキシ基、フルオロ化ベンジルアルコキシ基などの芳香族アルコキシ基が挙げられる。このなかでも、フェノキシ基、ベンジルアルコキシ基、がより好ましい。R
1及びR
2としてこのようなアリールオキシ基を用いることにより、化学的安定性がより向上する傾向にある。
【0052】
アリールオキシ基の炭素数は、6から10であり、好ましくは6から8である。炭素数が6以上であることにより、電池性能がより向上する傾向にある。また、炭素数が10以下であることにより、電解液との親和性がより向上する傾向にある。
【0053】
炭素数3から10のシロキシ基としては、ケイ素原子が酸素原子を介してM原子に結合した構造を示すものであれば特に限定されないが、例えば、シロキシ基はSi−O−Si−といったシロキサン構造を含んでいてもよい。
【0054】
シロキシ基としては、特に限定されないが、例えば、化学的安定性の観点から、トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基、ジメチルエチルシロキシ基、ジエチルメチルシロキシ基などが好ましく挙げられる。このなかでも、より好ましくは、トリメチルシロキシ基である。
【0055】
シロキシ基の炭素数は、3以下10以下であり、好ましくは3以上8以下であり、より好ましくは3以上6以下である。シロキシ基の炭素数が1以上であることにより、電池性能がより向上する傾向にある。また、シロキシ基の炭素数が10以下であることにより、化学的安定性がより向上する傾向にある。
【0056】
また、シロキシ基中のケイ素数は特に制限されないが、好ましくは1以上4以下であり、より好ましくは1以上3以下であり、さらに好ましくは1以上2以下であり、よりさらに好ましくは1である。シロキシ基中のケイ素数が上記範囲内であることにより、化学的安定性及び電池性能がより向上する傾向にある。
【0057】
このなかでも、R
1及びR
2は、置換されていてもよい炭素数1から10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1から10のアルコキシ基、炭素数3から10のシロキシ基であることが好ましい。R
1及びR
2がこのような基であることにより、電解液への溶解性がより向上する傾向にある。また、化合物(A)のR
1及びR
2の少なくともいずれか1つが、置換されていてもよい炭素数1から10のアルコキシ基及び炭素数3から10のシロキシ基からなる群より選ばれる官能基であることがより好ましい。このような基を有することにより、化学的安定性及び電池性能がより向上する傾向にある。
【0058】
式(1)で表される化合物(B)としては、特に限定されないが、例えば、式(15)で表される化合物が好ましい。このような化合物を用いることにより、高電圧で作動し、かつ、より高いサイクル寿命を有するリチウムイオン二次電池を得ることができる。
【化13】
(上記式(15)中、Xは、Li原子もしくは水素原子を示し、R
1及びR
2は、各々独立に、OH基、OLi基、置換されていてもよい炭素数1から10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1から10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数6から10のアリール基、置換されていてもよい炭素数6から10のアリールオキシ基、及び炭素数3から10のシロキシ基からなる群より選ばれる基を示す。)
【0059】
(式(2)で表される化合物(B))
式(2)で表される化合物(B)において、XはLi原子、もしくは水素原子を示す。このなかでも、Li原子が好ましい。XがLi原子であることにより、電池容量がより向上する傾向にある。
【0060】
式(2)で表される化合物(B)において、R
3は置換されていてもよい炭素数1から20の炭化水素基を示す。炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素基;フェニル基などの芳香族炭化水素基;及び炭化水素基中の水素原子がすべてフッ素原子に置換されたトリフルオロメチル基などのフッ素置換炭化水素基が挙げられる。また、炭化水素基は必要に応じて、官能基を有していてもよい。官能基としては、特に限定されないが、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子や、ニトリル基(−CN)、エーテル基(−O−)、カーボネート基(−OCO
2−)、エステル基(−CO
2−)、カルボニル基(−CO−)スルフィド基(−S−)、スルホキシド基(−SO−)、スルホン基(−SO
2−)、ウレタン基(−NHCO
2−)が挙げられる。
【0061】
また、R
3は、下記式(16)及び/又は下記式(17)で示すような構造を有することが好ましい。この場合、化合物(B)に基本骨格は、ジカルボン酸誘導体構造となる。このような構造を有することにより、電池性能がより優れる傾向にある。
【化14】
(式(16)中、Yは、Li原子又は水素原子を示し、R
4は、置換されていてもよい炭素数1から19の炭化水素基を示す。)
【化15】
(式(17)中、R
5は、置換されていてもよい炭素数1から13の炭化水素基を示し、R
6は、置換されていてもよい炭素数1から6の炭化水素基、又は、置換されもよい炭素数3から6のトリアルキルシリル基を示す。)
【0062】
式(16)中、R
4としては、特に限定されないが、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられる。R
4がこのような官能基であることにより、化合物(A)の化学的安定性がより向上する傾向にある。
【0063】
式(17)中、R
5としては、特に限定されないが、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられる。R
5がこのような官能基であることにより、化合物(A)の化学的安定性がより向上する傾向にある。
【0064】
式(17)中、R
6としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、トリメチルシリル基が挙げられる。R
6がこのような官能基であることにより、化合物(A)の化学的安定性がより向上する傾向にある。
【0065】
R
3の炭素数は、1から20であり、好ましくは1以上16以下であり、より好ましくは1以上14以下である。R
3の炭素数が上記範囲内であることにより、化合物(B)の溶解性がより優れる傾向にある。
【0066】
(式(3a)で表される構成単位と式(3b)で表される構成単位とを有する化合物)
下記式(3a)で表される構成単位と下記式(3b)で表される構成単位とを有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、式(1)で表される化合物(MがPである場合)がポリマー化したものが挙げられる。
【0067】
下記式(3a)で表される構成単位と下記式(3b)で表される構成単位とを有する化合物において、XはLi原子、もしくは水素原子を示す。このなかでも、Li原子が好ましい。XがLi原子であることにより、電池容量がより向上する傾向にある。
【0068】
式(3a)で表される構成単位と式(3b)で表される構成単位とを有する化合物(B)において、R
4は、各々独立に、OH基、OLi基、置換されていてもよい炭素数1から10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1から10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数6から10のアリール基、置換されていてもよい炭素数6から10のアリールオキシ基、及び炭素数3から10のシロキシ基からなる群より選ばれる基を示す。
【0069】
置換されていてもよい炭素数1から10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1から10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数6から10のアリール基、置換されていてもよい炭素数6から10のアリールオキシ基、及び炭素数3から10のシロキシ基としては、特に限定されないが、例えば、式(1)で例示したものと同様の基が挙げられる。
【0070】
式(3a)で表される構成単位と式(3b)で表される構成単位とを有する化合物(B)としては、特に限定されないが、例えば、式(18)で表される化合物、式(19)で表される化合物、及び式(20)で表される化合物のうち、−OTMS基の少なくとも一つが、−PF
5Li基で置換された化合物が好ましい。このような化合物を用いることにより、高電圧で作動し、かつ、より高いサイクル寿命を有するリチウムイオン二次電池を得ることができる。
【化16】
【0071】
なお、式(3a)で表される構成単位と式(3b)で表される構成単位とを有する化合物の有するリン酸原子の原子数は、好ましくは2〜16であり、より好ましくは2〜8であり、さらに好ましくは2〜4である。リン酸原子の原子数が上記範囲内であることにより、高電圧で作動し、かつ、より高いサイクル寿命を有するリチウムイオン二次電池を得ることができる。
【0072】
上記の中でも、化合物(B)としては、特に限定されないが、例えば、以下の構造を有するものが好ましい。このような化合物を用いることにより、高電圧で作動し、かつ、より高いサイクル寿命を有するリチウムイオン二次電池を得ることができる。
【化17】
【化18】
【0073】
〔その他の添加剤〕
本実施形態の電解液は、上記以外の添加剤を、必要に応じて、含有することができる。このような添加剤としては、特に限定されないが、例えば、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、エチレンスルファイト、プロパンスルトン、スクシノニトリルなどが挙げられる。このような添加剤を含むことにより、リチウムイオン二次電池のサイクル特性がより向上する傾向にある。
【0074】
本実施形態の電解液は、非水蓄電デバイス用電解液として好適に用いられる。ここで、「非水蓄電デバイス」とは、蓄電デバイス中の電解液に水溶液を用いない蓄電デバイスであり、一例として、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、カルシウムイオン二次電池及びリチウムイオンキャパシタが挙げられる。このなかでも、実用性及び耐久性の観点から、非水蓄電デバイスとしてはリチウムイオン二次電池及びリチウムイオンキャパシタが好ましく、より好ましくはリチウムイオン二次電池である。
【0075】
〔リチウムイオン二次電池〕
本実施形態のリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」ともいう。)は、上記電解液と、正極活物質を含有する正極と、負極活物質を含有する負極とを備える。この電池は、上述の電解液を備える以外は、従来のリチウムイオン二次電池と同様の構成を有していてもよい。
【0076】
〔正極〕
正極は、リチウムイオン二次電池の正極として作用するものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。正極は、正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
【0077】
(正極活物質)
本実施形態の電池は、より高い電圧を実現する観点から、4.4V(vsLi/Li
+)以上の電位で10mAh/g以上の放電容量を有する正極活物質を含有する正極を備えることがより好ましい。かかる正極を備えた場合であっても、本実施形態の電池は、高電圧で作動し、かつ、リサイクル寿命の向上を可能にする点で有用である。ここで、4.4V(vsLi/Li
+)以上の電位で10mAh/g以上の放電容量を有する正極活物質とは、4.4V(vsLi/Li
+)以上の電位でリチウムイオン二次電池の正極として充電及び放電反応を起こし得る正極活物質であり、0.1Cの定電流放電時の放電容量が活物質の質量1gに対して10mAh以上であるものである。よって、正極活物質が、4.4V(vsLi/Li
+)以上の電位で10mAh/g以上の放電容量を有していればよく、4.4V(vsLi/Li
+)以下の電位において放電容量を有していても何ら差支えない。
【0078】
本実施形態で用いる正極活物質の放電容量は、4.4V(vsLi/Li
+)以上の電位において、好ましくは10mAh/g以上であり、より好ましくは15mAh/g以上であり、さらに好ましくは20mAh/g以上である。正極活物質の放電容量が上記範囲内であることにより、高電圧で駆動することで高いエネルギー密度を達成することができる傾向にある。4.4V(vsLi/Li
+)以上の電位における正極活物質の放電容量の上限は、特に限定されないが、400mAh/g以下が好ましい。なお、正極活物質の放電容量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0079】
上記4.4V(vsLi/Li
+)以上の電位で10mAh/g以上の放電容量を有する正極活物質は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、正極活物質として、4.4V(vsLi/Li
+)以上の電位で10mAh/g以上の放電容量を有する正極活物質と、4.4V(vsLi/Li
+)以上の電位で10mAh/g以上の放電容量を有しない正極活物質とを組み合わせて用いることもできる。4.4V(vsLi/Li
+)以上の電位で10mAh/g以上の放電容量を有しない正極活物質としては、特に限定されないが、例えば、LiFePO
4が挙げられる。
【0080】
このような正極活物質としては、特に限定されないが、例えば、式(5)で表される酸化物、式(6)で表される酸化物、式(7)で表される複合酸化物、式(8)で表される化合物、及び式(9)で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。このような正極活物質を用いることにより、正極活物質の構造安定性がより優れる傾向にある。
LiMn
2-xMa
xO
4 (5)
(上記式(5)中、Maは遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示し、xは0.2≦x≦0.7である。)
LiMn
1-uMe
uO
2 (6)
(上記式(6)中、MeはMnを除く遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示し、uは0.1≦u≦0.9である。)
zLi
2McO
3−(1−z)LiMdO
2 (7)
(上記式(7)中、Mc及びMdは、各々独立に、遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示し、zは0.1≦z≦0.9である。)
LiMb
1-yFe
yPO
4 (8)
(上記式(8)中、Mbは、Mn及びCoからなる群より選ばれる1種以上を示し、yは0≦y≦0.9である。)
Li
2MfPO
4F (9)
(上記式(9)中、Mfは遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示す。)
【0081】
上記式(5)で表される酸化物としては、特に限定されないが、例えば、スピネル型酸化物が好ましく、式(5a)又は式(5b)で表される酸化物がより好ましい。
LiMn
2-xNi
xO
4 (5a)
(上記式(5a)中、xは0.2≦x≦0.7を満たす。)
LiMn
2-xNi
xO
4 (5b)
(上記式(5b)中、xは0.3≦x≦0.6を満たす。)
【0082】
上記式(5a)又は上記式(5b)で表される酸化物としては、特に限定されないが、例えば、LiMn
1.5Ni
0.5O
4及びLiMn
1.6Ni
0.4O
4が挙げられる。このような式(5)で表されるスピネル型酸化物を用いることにより、安定性により優れる傾向にある。
【0083】
ここで、上記式(5)で表される酸化物は、正極活物質の安定性、電子伝導性等の観点から、Mn原子のモル数に対して10モル%以下の範囲で、上記構造以外に、さらに遷移金属又は遷移金属酸化物を含有してもよい。上記式(5)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0084】
上記式(6)で表される酸化物としては、特に限定されないが、例えば、層状酸化物であることが好ましく、下記式(6a)で表される酸化物であることがより好ましい。
LiMn
1-v-wCo
vNi
wO
2 (6a)
(上記式(6a)中、0.1≦v≦0.4、0.1≦w≦0.8である。)
【0085】
上記式(6a)で表される層状酸化物としては、特に限定されないが、例えば、LiMn
1/3Co
1/3Ni
1/3O
2、LiMn
0.1Co
0.1Ni
0.8O
2、LiMn
0.3Co
0.2Ni
0.5O
2などが挙げられる。このような式(6)で表される化合物を用いることにより安定性がより向上する傾向にある。式(6)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0086】
上記式(7)で表される複合酸化物としては、特に限定されないが、例えば、複合層状酸化物であることが好ましく、下記式(7a)で表される複合酸化物であることがより好ましい。
zLi
2MnO
3−(1−z)LiNi
aMn
bCo
cO
2 (7a)
(上記式(7a)中、zは0.3≦z≦0.7を満たし、a、b、及びcは、a+b+c=1、0.2≦a≦0.6、0.2≦b≦0.6、0.05≦c≦0.4を満たす。)
【0087】
このなかでも、上記式(7a)において、0.4≦z≦0.6、a+b+c=1、0.3≦a≦0.4、0.3≦b≦0.4、0.2≦c≦0.3である複合酸化物がより好ましい。このような式(7)で表される複合酸化物を用いることにより、安定性により優れる傾向にある。式(7)で表される複合酸化物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0088】
上記式(8)で表される化合物としては、特に限定されないが、例えば、オリビン型化合物が好ましく、下記式(8a)及び、下記式(8b)で表される化合物がより好ましい。
LiMn
1-yFe
yPO
4 (8a)
(上記式(8a)中、yは0.05≦y≦0.8を満たす。)
LiCo
1-yFe
yPO
4 (8b)
(上記式(8b)中、yは0.05≦y≦0.8を満たす。)
【0089】
このような式(8)で表される化合物を用いることにより、安定性及び電子伝導性により優れる傾向にある。上記式(8)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0090】
上記式(9)で表される化合物であるフッ化オリビン型正極活物質としては、特に限定されないが、例えば、Li
2FePO
4F、Li
2MnPO
4F及びLi
2CoPO
4Fが好ましい。このような式(9)で表される化合物を用いることにより、安定性により優れる傾向にある。式(9)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0091】
(満充電時におけるリチウム基準の正極電位)
本実施形態のリチウムイオン二次電池の満充電時におけるリチウム基準の正極電位は、好ましくは4.4V(vsLi/Li
+)以上であり、より好ましくは4.45V(vsLi/Li
+)以上であり、さらに好ましくは4.5V(vsLi/Li
+)以上である。満充電時における正極電位が4.4V(vsLi/Li
+)以上であることにより、リチウムイオン二次電池の有する正極活物質の充放電容量を効率的に活用できる傾向にある。また、満充電時における正極電位が4.4V(vsLi/Li
+)以上であることにより、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度がより向上する傾向にある。なお、満充電時におけるリチウム基準の正極電位は、満充電時の電池の電圧を制御することにより制御することができる。なお、満充電時における正極電位の上限は、特に限定されないが、5.2V(vsLi/Li
+)以下が好ましい。
【0092】
満充電時におけるリチウム基準の正極電位は、満充電状態のリチウムイオン二次電池をArグローブボックス中で解体し、正極を取り出し、対極に金属リチウムを用いて再度電池を組み、電圧を測定することで容易に測定することができる。また、負極に炭素負極活物質を用いる場合、満充電時の炭素負極活物質の電位が0.05V(vsLi/Li
+)であることから、満充電時におけるリチウムイオン二次電池の電圧(Va)に0.05Vを足すことで、容易に満充電時における正極の電位を算出することができる。例えば、負極に炭素負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池において、満充電時におけるリチウムイオン二次電池の電圧(Va)が4.4Vであった場合、満充電時の正極の電位は、4.4V+0.05V=4.45Vと算出することができる。
【0093】
なお、従来のリチウムイオン二次電池は、満充電時の正極の電位が通常4.2V(vsLi/Li+)から4.3V(vsLi/Li+)以下で設定されているため、満充電時の正極の電位が4.4V(vsLi/Li+)以上のリチウムイオン二次電池は従来のリチウムイオン二次電池と比較して高い電圧を有する。「高電圧リチウムイオン二次電池」とは、4.4V(vsLi/Li
+)以上の電位において10mAh/g以上の放電容量を有する正極活物質を有する正極を備えるリチウムイオン二次電池であって、満充電時における正極電位が4.4V(vsLi/Li
+)以上で使用されるものをいう。このような高電圧リチウムイオン二次電池用途においては、電解液に含まれるカーボネート系溶媒が正極表面にて酸化分解し、電池のサイクル寿命が低下するという課題が生じうる。このような課題は満充電時における正極電位が4.4V(vsLi/Li
+)未満で使用される従来のリチウムイオン二次電池用途では、生じにくい課題である。本実施形態のリチウムイオン二次電池は、上述の構成を有することにより、このような満充電時における正極電位が4.4V(vsLi/Li
+)以上の場合に生じる課題を解決することができるため、高電圧で作動でき、かつ、高いサイクル寿命を有するものとなる。なお、(vsLi/Li
+)はリチウム基準の電位を示す。
【0094】
(正極活物質の製造方法)
正極活物質は、一般的な無機酸化物の製造方法と同様の方法で製造できる。正極活物質の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、所定の割合で金属塩(例えば硫酸塩及び/又は硝酸塩)を混合した混合物を、酸素を含む雰囲気環境下で焼成することで無機酸化物を含む正極活物質を得る方法が挙げられる。あるいは、金属塩を溶解させた液に炭酸塩及び/又は水酸化物塩を作用させて難溶性の金属塩を析出させ、それを抽出分離したものに、リチウム源として炭酸リチウム及び/又は水酸化リチウムを混合した後、酸素を含む雰囲気環境下で焼成することで、無機酸化物を含む正極活物質を得る方法が挙げられる。
【0095】
(正極の製造方法)
ここで、正極の製造方法の一例を以下に示す。まず、上記正極活物質に対して、必要に応じて、導電助剤やバインダー等を加えて混合した正極合剤を溶剤に分散させて正極合剤を含有するペーストを調製する。次いで、このペーストを正極集電体に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、それを必要に応じて加圧し厚さを調整することによって、正極を作製することができる。
【0096】
正極集電体としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム箔、又はステンレス箔などの金属箔により構成されるものが挙げられる。
【0097】
〔負極〕
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、負極を有する。負極は、リチウムイオン二次電池の負極として作用するものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。負極は、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上を含有することが好ましい。このような負極活物質としては、特に限定されないが、例えば、炭素負極活物質、ケイ素合金負極活物質及びスズ合金負極活物質に代表されるリチウムと合金形成が可能な元素を含む負極活物質;ケイ素酸化物負極活物質;スズ酸化物負極活物質;及びチタン酸リチウム負極活物質に代表されるリチウム含有化合物からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。これらの負極活物質は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0098】
炭素負極活物質としては、特に限定されないが、例えば、ハードカーボン、ソフトカーボン、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛、熱分解炭素、コークス、ガラス状炭素、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、グラファイト、炭素コロイド及びカーボンブラックが挙げられる。コークスとしては、特に限定されないが、例えば、ピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークスが挙げられる。また、有機高分子化合物の焼成体としては、特に限定されないが、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものが挙げられる。
【0099】
リチウムと合金を形成可能な元素を含む負極活物質としては、特に限定されないが、例えば、金属又は半金属の単体であっても、合金や化合物であってもよく、また、これらの1種又は2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものであってもよい。なお、「合金」には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを有するものも含まれる。また、合金には、全体として金属の性質を有するものであれば非金属元素が含まれていてもよい。
【0100】
金属元素及び半金属元素としては、特に限定されないが、例えば、チタン(Ti)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)及びイットリウム(Y)が挙げられる。これらのなかでも、長周期型周期表における4族又は14族の金属元素及び半金属元素が好ましく、特に好ましくはチタン、ケイ素及びスズである。
【0101】
(負極の製造方法)
負極は、例えば、下記のようにして得られる。まず、上記負極活物質に対して、必要に応じて、導電助剤やバインダー等を加えて混合した負極合剤を溶剤に分散させて負極合剤を含有するペーストを調製する。次いで、このペーストを負極集電体に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成し、それを必要に応じて加圧し厚みを調整することによって、負極を作製することができる。
【0102】
負極集電体は、特に限定されないが、例えば、銅箔、ニッケル箔又はステンレス箔などの金属箔により構成されるものが挙げられる。
【0103】
正極及び負極の作製において、必要に応じて用いられる導電助剤としては、特に限定されないが、例えば、グラファイト、アセチレンブラック及びケッチェンブラックなどのカーボンブラック、並びに炭素繊維が挙げられる。
【0104】
また、正極及び負極の作製において、必要に応じて用いられるバインダーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム及びフッ素ゴムが挙げられる。
【0105】
〔セパレータ〕
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正負極の短絡防止、シャットダウン等の安全性付与の観点から、正極と負極との間にセパレータを備えることが好ましい。セパレータとしては、特に限定されないが、例えば、公知のリチウムイオン二次電池に備えられるものと同様のものを用いることができる。このなかでも、イオン透過性が大きく、機械的強度に優れる絶縁性の薄膜が好ましい。
【0106】
セパレータとしては、特に限定されないが、例えば、織布、不織布、及び合成樹脂製微多孔膜が挙げられ、これらのなかでも、合成樹脂製微多孔膜が好ましい。また、不織布としては、特に限定されないが、例えば、セラミック製、ポリオレフィン製、ポリエステル製、ポリアミド製、液晶ポリエステル製、アラミド製などの耐熱樹脂製の多孔膜が挙げられる。さらに、合成樹脂製微多孔膜としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンを主成分として含有する微多孔膜、又はこれらのポリオレフィンを共に含有する微多孔膜等のポリオレフィン系微多孔膜が挙げられる。セパレータは、1種の微多孔膜を単層又は複数積層したものであってもよく、2種以上の微多孔膜を積層したものであってもよい。
【0107】
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、特に限定されないが、例えば、セパレータと、そのセパレータを両側から挟む正極と負極と、さらにそれらの積層体を挟む正極集電体(正極の外側に配置)と、負極集電体(負極の外側に配置)と、それらを収容する電池外装とを備える。正極とセパレータと負極とを積層した積層体は、本実施形態の電解液に含浸されている。
【0108】
図1は、本実施形態におけるリチウムイオン二次電池の一例を概略断面図で示すものである。
図1に示されるリチウムイオン二次電池100は、セパレータ110と、そのセパレータ110を両側から挟む正極120と負極130と、さらにそれらの積層体を挟む正極集電体140(正極の外側に配置)と、負極集電体150(負極の外側に配置)と、それらを収容する電池外装160とを備える。正極120とセパレータ110と負極130とを積層した積層体は、電解液に含浸されている。
【0109】
〔電解液の調製方法〕
本実施形態の電解液は、各成分を公知の手法により混合することで所定の組成となるよう調製してもよく、また電解液中で反応により所定の組成となるよう調製してもよい。電解液中で反応により調整する場合とは、具体的には、電池中における反応により、電解液が調整されることをいう。
【0110】
〔リチウムイオン二次電池の製造方法〕
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、上述の電解液、正極、負極及び必要に応じてセパレータを用いて、公知の方法により作製することができる。例えば、正極と負極とを、その間にセパレータを介在させた積層状態で巻回して巻回構造の積層体に成形したり、それらを折り曲げや複数層の積層などによって、交互に積層した複数の正極と負極との間にセパレータが介在する積層体に成形し、次いで、電池ケース(外装)内にその積層体を収容して、本実施形態の電解液をケース内部に注液し、上記積層体をその電解液に浸漬して封印することによって、リチウムイオン二次電池を作製することができる。本実施形態におけるリチウムイオン二次電池の形状は、特に限定されず、例えば、円筒形、楕円形、角筒型、ボタン形、コイン形、扁平形及びラミネート形などが好適に採用される。
【実施例】
【0111】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0112】
[実施例1]
<正極活物質の合成>
(LiNi
0.5Mn
1.5O
4の合成)
遷移金属元素のモル比として1:3の割合となる量の硫酸ニッケルと硫酸マンガンとを水に溶解し、金属イオン濃度の総和が2mol/Lになるようにニッケル−マンガン混合水溶液を調製した。次いで、このニッケル−マンガン混合水溶液を、70℃に加温した濃度2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液1650mL中に、12.5mL/minの添加速度で120分間滴下した。なお、滴下中は、攪拌の下、200mL/minの流量の空気を水溶液中にバブリングしながら吹き込んだ。これにより、析出物質が発生し、得られた析出物質を蒸留水で十分洗浄し、乾燥して、ニッケルマンガン化合物を得た。得られたニッケルマンガン化合物と粒径2μmの炭酸リチウムとを、リチウム:ニッケル:マンガンのモル比が1:0.5:1.5になるように秤量し、1時間乾式混合した後、得られた混合物を酸素雰囲気下において1000℃で5時間焼成し、LiNi
0.5Mn
1.5O
4で表される正極活物質を得た。
【0113】
<正極の作製>
上述のようにして得られた正極活物質と、導電助剤としてグラファイトの粉末(TIMCAL社製、商品名「KS−6」)とアセチレンブラックの粉末(電気化学工業社製、商品名「HS−100」)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン溶液(クレハ社製、商品名「L#7208」)とを、80:5:5:10の固形分質量比で混合した。得られた混合物に、分散溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを固形分35質量%となるように投入してさらに混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延した。圧延後のものを直径16mmの円盤状に打ち抜いて正極を得た。
【0114】
なお、上記により得られた正極と金属Liを負極とし、電解液にエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:2で混合した混合溶媒にLiPF
6塩を1mol/L含有させた溶液を用いてハーフセルを作製し、0.02Cで4.85Vまで充電後、0.1Cで放電することにより、4.4V(vsLi/Li
+)以上の電位において111mAh/gの放電容量を有する正極活物質であることを確認した。
【0115】
<負極の作製>
負極活物質としてグラファイト粉末(大阪ガスケミカル社製、商品名「OMAC1.2H/SS」)及び別のグラファイト粉末(TIMCAL社製、商品名「SFG6」)と、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロース水溶液とを、90:10:1.5:1.8の固形分質量比で混合した。得られた混合物を、固形分濃度が45質量%となるように、分散溶媒としての水に添加して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ18μmの銅箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延した。圧延後のものを直径16mmの円盤状に打ち抜いて負極を得た。
【0116】
<O=P(OSi(CH
3)
3)
2(OPF
5Li)の合成>
窒素雰囲気下、アセトニトリル20mLに室温で、リン酸トリメチルシリル(アルドリッチ社製)を3.1g添加し、さらにアセトニトリル5mLに溶解させたLiPF
6(キシダ化学社製)を0.76g添加し、70℃で48時間撹拌した。その後室温減圧条件でアセトニトリルおよび反応副生成物等を除去し、白色固体を得た。得られた白色固体は、NMR(JNM−GSX400G、日本電子株式会社製)によって同定した。白色固体をEC/EMC混合溶媒中に溶解させNMRの内管に投入し、外管に重クロロホルム溶媒を用いNMRを測定した。生成物のケミカルシフトを以下に示す。
1H−NMR
0.49ppm(18H、s)
31P−NMR
−28ppm(1P、s)
−148ppm(1P、sext)
19F−NMR
−62ppm(4F、ddd)
−75ppm(1F、d・quin)
【0117】
以上の結果から、生成物をO=P(OSi(CH
3)
3)
2(OPF
5Li)と同定した。
【0118】
<電解液の調製>
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:2で混合した混合溶媒にLiPF
6塩を1mol/L含有させた溶液(キシダ化学社製、LBG00069)9.99gに、O=P(OSi(CH
3)
3)
2(OPF
5Li)を0.1g含有させ、電解液Aを得た。電解液A中のO=P(OSi(CH
3)
3)
2(OPF
5Li)の含有量は0.1質量%であり、LiPF
6の含有量は13質量%であった。
【0119】
<電池の作製>
上述のようにして作製した正極と負極とをポリプロピレン製の微多孔膜からなるセパレータ(膜厚25μm、空孔率50%、孔径0.1μm〜1μm)の両側に重ね合わせた積層体を、ステンレス製の円盤型電池ケース(外装体)に挿入した。次いで、そこに、上記電解液Aを0.2mL注入し、積層体を電解液Aに浸漬した後、電池ケースを密閉してリチウムイオン二次電池を作製した。
【0120】
<電池性能評価>
得られたリチウムイオン二次電池を、25℃に設定した恒温槽(二葉科学社製、商品名「PLM−73S」)に収容し、充放電装置(アスカ電子(株)製、商品名「ACD−01」)に接続し、20時間静置した。次いで、その電池を0.2Cの定電流で充電し、4.8Vに到達した後、4.8Vの定電圧で8時間充電し、その後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。
【0121】
上記初期充放電後、50℃に設定した恒温槽中で、その電池を1.0Cの定電流で4.8Vまで充電し、1.0Cの定電流で3.0Vまで放電した。この一連の充放電を1サイクルとし、更に29サイクル充放電を繰り返し、全体で30サイクルのサイクル充放電を行った。1サイクル目及び30サイクル目の正極活物質質量当たりの放電容量を確認した。結果、電解液Aを備えるリチウムイオン二次電池の1サイクル目の放電容量は、102mAh/gと高く、30サイクル目の放電容量は、80mAh/gと高く、30サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除した放電容量維持率は、78%と高い値を示した。なお、本実施例のリチウムイオン二次電池を4.8V(満充電)まで充電した後、Arグローブボックス中で解体し、正極を取り出し、対極に金属リチウムを用いて再度電池を組み、正極の電位を測定したところ、満充電時におけるリチウム基準の正極電位は4.85V(vsLi/Li
+)であった。
【0122】
[実施例2]
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:2で混合した混合溶媒にLiPF
6塩を1mol/L含有させた溶液9.95gに、O=P(OSi(CH
3)
3)
2(OPF
5Li)を0.05g含有させ、電解液Bを得た。電解液B中のO=P(OSi(CH
3)
3)
2(OPF
5Li)の含有量は0.5質量%であり、LiPF
6の含有量は13質量%であった。
【0123】
実施例1と同様にして、電解液Bを備えるリチウムイオン二次電池の電池性能評価を行った。結果、電解液Bを備えるリチウムイオン二次電池の1サイクル目の放電容量は、107mAh/gと高く、30サイクル目の放電容量は、89mAh/gと高く、30サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除した放電容量維持率は、83%と高い値を示した。
【0124】
[実施例3]
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:2で混合した混合溶媒にLiPF
6塩を1mol/L含有させた溶液9.90gに、O=P(OSi(CH
3)
3)
2(OPF
5Li)を0.1g含有させ、電解液Cを得た。電解液C中のO=P(OSi(CH
3)
3)
2(OPF
5Li)の含有量は1.0質量%であり、LiPF
6の含有量は13質量%であった。
【0125】
実施例1と同様にして、電解液Cを備えるリチウムイオン二次電池の電池性能評価を行った。結果、電解液Cを備えるリチウムイオン二次電池の1サイクル目の放電容量は、110mAh/gと高く、30サイクル目の放電容量は、88mAh/gと高く、30サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除した放電容量維持率は、80%と高い値を示した。
【0126】
[実施例4]
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:2で混合した混合溶媒にLiPF
6塩を1mol/L含有させた溶液9.60gに、O=P(OSi(CH
3)
3)
2(OPF
5Li)を0.4g含有させ、電解液Dを得た。電解液D中のO=P(OSi(CH
3)
3)
2(OPF
5Li)の含有量は4.0質量%であり、LiPF
6の含有量は13質量%であった。
【0127】
実施例1と同様にして、電解液Dを備えるリチウムイオン二次電池の電池性能評価を行った。結果、電解液Cを備えるリチウムイオン二次電池の1サイクル目の放電容量は、100mAh/gと高く、30サイクル目の放電容量は、81mAh/gと高く、30サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除した放電容量維持率は、81%と高い値を示した。
【0128】
[実施例5]
<(CH
3)
3SiOCOC
4H
8COOPF
5Liの合成>
窒素雰囲気下、アセトニトリル20mLに室温で、アジピン酸ビス(トリメチルシリル)(C
6H
10O
4(Si(CH
3)
3)
2)、Gelest社製)を2.9g添加し、さらにアセトニトリル5mLに溶解させたLiPF
6(キシダ化学社製)を0.76g添加し、70℃で48時間撹拌した。その後室温減圧条件でアセトニトリルおよび反応副生成物等を除去し、白色固体を得た。得られた白色固体は、NMR(JNM−GSX400G、日本電子株式会社製)によって同定した。白色固体をEC/EMC混合溶媒中に溶解させNMRの内管に投入し、外管に重クロロホルム溶媒を用いNMRを測定した。生成物のケミカルシフトを以下に示す。
1H−NMR
0.49ppm(9H、s)
2.2ppm(4H、m)
3.0ppm(4H、m)
31P−NMR
−146ppm(1P、sext)
19F−NMR
−67ppm(4F、ddd)
−76ppm(1F、d・quin)
以上の結果から、生成物を(CH
3)
3SiOCOC
4H
8COOPF
5Liと同定した。
【0129】
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:2で混合した混合溶媒にLiPF
6塩を1mol/L含有させた溶液9.9gに、(CH
3)
3SiOCOC
4H
8COOPF
5Liを0.1g含有させ、電解液Eを得た。電解液E中の(CH
3)
3SiOCOC
4H
8COOPF
5Liの含有量は1質量%であり、LiPF
6の含有量は13質量%であった。
【0130】
実施例1と同様にして、電解液Eを備えるリチウムイオン二次電池の電池性能評価を行った。結果、電解液Eを備えるリチウムイオン二次電池の1サイクル目の放電容量は、111mAh/gと高く、30サイクル目の放電容量は、87mAh/gと高く、30サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除した放電容量維持率は、78%と高い値を示した。
【0131】
[実施例6]
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:2で混合した混合溶媒にLiPF
6塩を1mol/L含有させた溶液9.90gに、O=P(OSi(CH
3)
3)
2(OPF
5Li)を0.05g含有させ、LiB(C
2O
4)
2を0.5g含有させ、電解液Fを得た。電解液F中のO=P(OSi(CH
3)
3)
2(OPF
5Li)の含有量は0.5質量%であり、LiB(C
2O
4)
2の含有量は0.5質量%であり、LiPF
6の含有量は13質量%であった。
【0132】
実施例1と同様にして、電解液Fを備えるリチウムイオン二次電池の電池性能評価を行った。結果、電解液Fを備えるリチウムイオン二次電池の1サイクル目の放電容量は、114mAh/gと高く、30サイクル目の放電容量は、95mAh/gと高く、30サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除した放電容量維持率は、83%と高い値を示した。
【0133】
[実施例7]
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:2で混合した混合溶媒にLiPF
6塩を1mol/L含有させた溶液9.92gに、O=P(OSi(CH
3)
3)
2(OPF
5Li)を0.05g含有させ、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO
2F
2)を0.03g含有させ、電解液Gを得た。電解液G中のO=P(OSi(CH
3)
3)
2(OPF
5Li)の含有量は0.5質量%であり、ジフルオロリン酸リチウムの含有量は0.3質量%であり、LiPF
6の含有量は13質量%であった。
【0134】
実施例1と同様にして、電解液Gを備えるリチウムイオン二次電池の電池性能評価を行った。結果、電解液Gを備えるリチウムイオン二次電池の1サイクル目の放電容量は、109mAh/gと高く、30サイクル目の放電容量は、91mAh/gと高く、30サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除した放電容量維持率は、84%と高い値を示した。
【0135】
[実施例8]
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:2で混合した混合溶媒にLiPF
6塩を1mol/L含有させた溶液9.87gに、O=P(OSi(CH
3)
3)
2(OPF
5Li)を0.05g含有させ、ジフルオロリン酸リチウムを0.03g含有させ、LiB(C
2O
4)
2を0.05g含有させ、電解液Hを得た。電解液H中のO=P(OSi(CH
3)
3)
2(OPF
5Li)の含有量は0.5質量%であり、ジフルオロリン酸リチウムの含有量は0.3質量%であり、LiB(C
2O
4)
2の含有量は0.5質量%であり、LiPF
6の含有量は13質量%であった。
【0136】
実施例1と同様にして、電解液Hを備えるリチウムイオン二次電池の電池性能評価を行った。結果、電解液Hを備えるリチウムイオン二次電池の1サイクル目の放電容量は、115mAh/gと高く、30サイクル目の放電容量は、97mAh/gと高く、30サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除した放電容量維持率は、84%と高い値を示した。
【0137】
[比較例1]
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:2で混合した混合溶媒にLiPF
6塩を1mol/L含有させた溶液を電解液Iとした。電解液I中のLiPF
6の含有量は13質量%であった。
【0138】
実施例1と同様にして、電解液Iを備えるリチウムイオン二次電池の電池性能評価を行った。結果、電解液Iを備えるリチウムイオン二次電池の1サイクル目の放電容量は、96mAh/gであり、30サイクル目の放電容量は、66mAh/gであり、30サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除した放電容量維持率は、69%であった。
【0139】
実施例1から実施例8、および比較例1の結果を表1にまとめる。本結果からわかるように、化合物(B)を含有する電解液を用いることにより、満充電時の電位が4.85V(vsLi/Li
+)もの高電位の正極を用いた場合においても、サイクル寿命を大幅に改善できることがわかる。
【0140】
【表1】
【0141】
[実施例9]
<正極の作製>
正極活物質としてLiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2(日本化学工業社製)と、導電助剤としてアセチレンブラックの粉末(電気化学工業社製)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン溶液(クレハ社製)とを、90:6:4の固形分質量比で混合し、分散溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを固形分40質量%となるように添加して更に混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延して正極とした。圧延後のものを直径16mmの円盤状に打ち抜いて正極を得た。
【0142】
なお、上記により得られた正極と金属Liを負極とし、電解液にエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:2で混合した混合溶媒にLiPF
6塩を1mol/L含有させた溶液を用いてハーフセルを作製し、0.02Cで4.6Vまで充電後、0.1Cで放電することにより、4.4V(vsLi/Li
+)以上の電位において23mAh/gの放電容量を有する正極活物質であることを確認した。
【0143】
<負極の作製>
負極活物質としてグラファイト粉末(大阪ガスケミカル社製、商品名「OMAC1.2H/SS」)及び別のグラファイト粉末(TIMCAL社製、商品名「SFG6」)と、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロース水溶液とを、90:10:1.5:1.8の固形分質量比で混合した。得られた混合物を、固形分濃度が45質量%となるように、分散溶媒としての水に添加して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ18μmの銅箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延した。圧延後のものを直径16mmの円盤状に打ち抜いて負極を得た。
【0144】
<電池の作製>
上述のようにして作製した正極と負極とをポリプロピレン製の微多孔膜からなるセパレータ(膜厚25μm、空孔率50%、孔径0.1μm〜1μm)の両側に重ね合わせた積層体を、ステンレス製の円盤型電池ケース(外装体)に挿入した。次いで、そこに、実施例1で作製した電解液Aを0.2mL注入し、積層体を電解液Aに浸漬した後、電池ケースを密閉してリチウムイオン二次電池を作製した。
【0145】
<電池性能評価>
得られたリチウムイオン二次電池を、25℃に設定した恒温槽(二葉科学社製、商品名「PLM−73S」)に収容し、充放電装置(アスカ電子(株)製、商品名「ACD−01」)に接続し、20時間静置した。次いで、その電池を0.2Cの定電流で充電し、4.4Vに到達した後、4.4Vの定電圧で8時間充電し、その後0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。
【0146】
上記初期充放電後、50℃に設定した恒温槽中で、その電池を1.0Cの定電流で4.4Vまで充電し、1.0Cの定電流で3.0Vまで放電した。この一連の充放電を1サイクルとし、更に99サイクル充放電を繰り返し、全体で100サイクルのサイクル充放電を行った。1サイクル目及び100サイクル目の正極活物質質量当たりの放電容量を確認した。結果、電解液Aを備えるリチウムイオン二次電池の1サイクル目の放電容量は、158mAh/gと高く、100サイクル目の放電容量は、106mAh/gと高く、30サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除した放電容量維持率は、67%と高い値を示した。なお、本実施例のリチウムイオン二次電池を4.4V(満充電)まで充電した後、Arグローブボックス中で解体し、正極を取り出し、対極に金属リチウムを用いて再度電池を組み、正極の電位を測定したところ、満充電時におけるリチウム基準の正極電位は4.45V(vsLi/Li
+)であった。
【0147】
[実施例10]
実施例9と同様にして、電解液に実施例2で得た電解液Bを用いてリチウムイオン二次電池を作製し、電池性能評価を行った。結果、電解液Bを備えるリチウムイオン二次電池の1サイクル目の放電容量は、157mAh/gと高く、100サイクル目の放電容量は、116mAh/gと高く、100サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除した放電容量維持率は、74%と高い値を示した。
【0148】
[実施例11]
実施例9と同様にして、電解液に実施例6で得た電解液Fを用いてリチウムイオン二次電池を作製し、電池性能評価を行った。結果、電解液Fを備えるリチウムイオン二次電池の1サイクル目の放電容量は、161mAh/gと高く、100サイクル目の放電容量は、123mAh/gと高く、100サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除した放電容量維持率は、76%と高い値を示した。
【0149】
[実施例12]
実施例9と同様にして、電解液に実施例7で得た電解液Gを用いてリチウムイオン二次電池を作製し、電池性能評価を行った。結果、電解液Gを備えるリチウムイオン二次電池の1サイクル目の放電容量は、159mAh/gと高く、100サイクル目の放電容量は、119mAh/gと高く、100サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除した放電容量維持率は、75%と高い値を示した。
【0150】
[実施例13]
実施例9と同様にして、電解液に実施例8で得た電解液Hを用いてリチウムイオン二次電池を作製し、電池性能評価を行った。結果、電解液Hを備えるリチウムイオン二次電池の1サイクル目の放電容量は、161mAh/gと高く、100サイクル目の放電容量は、127mAh/gと高く、100サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除した放電容量維持率は、79%と高い値を示した。
【0151】
[比較例2]
実施例9と同様にして、電解液に比較例1で得た電解液Iを用いてリチウムイオン二次電池を作製し、電池性能評価を行った。結果、電解液Iを備えるリチウムイオン二次電池の1サイクル目の放電容量は、157mAh/gであり、100サイクル目の放電容量は、96mAh/gであり、100サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除した放電容量維持率は、61%であった。
【0152】
実施例9から実施例13、および比較例2の結果を表2にまとめる。本結果からわかるように、化合物(B)を含有する電解液を用いることにより、満充電時の電位が4.45V(vsLi/Li
+)もの高電位の正極を用いた場合においても、サイクル寿命を大幅に改善できることがわかる。
【0153】
【表2】
【0154】
以上より、本発明によれば、4.4V(vsLi/Li
+)以上の高電圧で作動する正極活物質を含有する正極を備える場合でも、高いサイクル寿命を有するリチウムイオン二次電池が達成されることが示された。
【0155】
本出願は、2013年10月4日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2013−209015)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。