【文献】
飯野正外3名,塩析によるアセトニトリル−水共沸混合物の分離,工業化学雑誌,1971年,74巻5号,1034−1036頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
塩化ナトリウムを、4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸を含むアセトニトリル/水混合物に添加する工程が、飽和された塩化ナトリウム溶液を前記アセトニトリル/水混合物に添加する工程を含む、請求項1に記載の方法。
塩化ナトリウムを、4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸を含むアセトニトリル/水混合物に添加する工程が、固体の塩化ナトリウムを前記アセトニトリル/水混合物に添加する工程を含む、請求項1に記載の方法。
前記アセトニトリル、水、および4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニルボロン酸の混合物に塩化ナトリウムを添加する工程が、固体の塩化ナトリウムを前記混合物に添加する工程を含む、請求項4に記載の方法。
前記アセトニトリル、水、および4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニルボロン酸の混合物に塩化ナトリウムを添加する工程が、塩化ナトリウムの飽和溶液を前記混合物に添加する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【背景技術】
【0003】
PBAおよび他の4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸は、除草剤として有用である6−(多置換アリール)−4−アミノピコリネート化合物および2−(多置換アリール)−6−アミノ−4−ピリミジンカルボン酸化合物の調製に有用な中間体である。次いでPBAまたは他の4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸は、1,3−プロパンジオールを用いてエステル化されて、(4−クロロ−2−フルオロ−3−置換フェニル)−[1,3,2]−ジオキサボリナン(PBE)を形成し得る。
【0004】
PBAは、2−クロロ−6−フルオロアニソール(2,6−CFA)と、n−ブチルリチウム(n−BuLi)および求電子性ボロン酸誘導体とを反応させることによって合成されてもよい。後続反応の後、PBAは固体として単離される。例えば、PBAは、エチルアセテートを用いて水性相から抽出し、乾燥するまで濃縮できる。あるいは、固体のPBAは、結晶化プロセスによって単離できる。次いで固体のPBAは、6−(4−クロロ−2−フルオロ−3メトキシフェニル)−4−アミノピコリネート化合物または2−(4−クロロ−2−フルオロ−3メトキシフェニル)−6−アミノ−4−ピリミジンカルボン酸化合物を形成するための後続反応において中間体として利用できる。
【0005】
より詳細には、PBAは、2,6−CFAと、n−BuLiおよびトリメチルボレートB(OMe)
3とを反応させ、水性塩基を反応混合物に添加し、反応混合物をアセトニトリル(「MeCN」)で希釈し、反応混合物を塩酸で酸性化することによって合成されてもよい。次いでPBAは、MeCNおよび水性層を分離することによって単離でき、80.3%の収率でPBAを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸、例えばPBAを単離する方法が開示される。4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸は、3−クロロ−1−フルオロ−2−置換ベンゼン化合物をアルキルリチウム化合物と反応させる工程、得られたリチウム化ベンゼンを求電子性ボロン酸誘導体試薬でクエンチする工程、および得られたボロン酸誘導体を加水分解する工程によって合成されてもよい。4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸は、塩をそこに添加することによって水および水混和性有機溶媒の混合物から単離できる。水および水混和性有機溶媒の層を分離した後、4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸の水混和性有機溶媒の溶液が得られる。塩を水および水混和性有機溶媒の混合物に添加することによって、4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸の収率が改善され得る。4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸の溶液は、追加反応、例えばカップリングまたはエステル化反応において、追加の作用、例えば濃縮または単離作用を行うことなく、直接使用されてもよい。4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸を固体として回収することを削減することによって、4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸は、より少ないユニット操作を利用して合成され得る。
【0011】
3−クロロ−1−フルオロ−2−置換ベンゼン化合物、アルキルリチウム化合物、および求電子性試薬から4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸を調製するための反応スキームを以下に示す:
【化1】
式中、XはF,OR
1またはNR
2R
3であり、YはHまたはFであり、R
1、R
2およびR
3のそれぞれは、独立にC
1−C
4アルキル基である。アルキル基は、メチル、エチル、1−メチルエチル、プロピル、シクロプロピル、ブチル、1,1−ジメチルエチル、シクロブチル、1−メチルプロピルまたは2−メチルプロピルを含む直鎖、分岐鎖、または環状基であってもよい。アルキル基はまた、ノルマル(n)、イソ(i)、二級(s)、または三級(t)アルキル基を指す場合がある。反応生成物は、水性塩基と接触させ、続いて水性酸と接触させて、4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸を生成してもよい。
【0012】
1つの実施形態において、PBAは、2,6−CFAをn−BuLiおよびB(OMe)
3と接触させることによって、2,6−CFAから合成される。2,6−CFA、n−BuLi、およびB(OMe)
3からPBAを合成するための反応スキームを以下に示す:
【化2】
本明細書の種々の実施形態では、2,6−CFA、n−BuLi、およびB(OMe)
3からのPBAの合成および単離が記載されているが、他の4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸が、異なる出発材料を利用することによって同様の様式で合成されてもよい。
【0013】
PBAを合成するために、2,6−CFAまたは別の3−クロロ−1−フルオロ−2−置換ベンゼン化合物を、アルキルリチウム化合物、例えばn−BuLiおよび求電子性試薬、例えばB(OMe)
3と、反応容器中で接触させてもよい。2,6−CFAは、本明細書において詳細には記載されない従来の技術によって生成されてもよい。反応は、2,6−CFAが少なくとも部分的に可溶性である不活性有機溶媒中で行われてもよい。不活性な有機溶媒は、C
5−C
8の直鎖、分岐鎖、または環状炭化水素溶媒、例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、イソ−オクタン、エーテル、またはこれらの組み合わせであってもよい。エーテルとしては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、またはグリコールエーテル、例えば1,2−ジメトキシエタン(DME)を挙げることができるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、有機溶媒はDMEである。2,6−CFAは、不活性な有機溶媒中に実質的に可溶性であってもよく、2,6−CFA溶液を形成し、ここで2,6−CFAは不活性な有機溶媒中に実質的に溶解している。PBAを合成する方法は、米国特許第7,611,647B2号明細書に開示されており、この内容は参考として本明細書に組み込まれる。
【0014】
アルキルリチウム化合物としては、MeLi、n−BuLi、またはs−BuLiを挙げることができるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、アルキルリチウム化合物はn−BuLiである。アルキルリチウム化合物は、市販されている。少なくとも1モル当量のアルキルリチウム化合物が、2,6−CFAに対して使用されてもよい。完全な反応を確実にするために、アルキルリチウム化合物が、2,6−CFAに対してわずかに過剰で、例えば2,6−CFAに対して約1%〜約10%モル過剰、または2,6−CFAに対して約2%〜約5%モル過剰で添加されてもよい。
【0015】
アルキルリチウム化合物を用いるリチウム化反応は、無水条件下で行うことができる。リチウム化反応は約−100℃〜約−30℃の温度で行われてもよい。2,6−CFA溶液は、アルキルリチウム化合物の添加前にこの範囲内の温度に冷却され、または維持されてもよい。反応温度はまた、アルキルリチウム化合物の添加の間、この温度範囲内に維持されてもよい。2,6−CFAおよびアルキルリチウム化合物は、この温度範囲内の反応温度を維持しながら、2,6−CFAを脱プロトン化するのに十分な時間反応させてもよい。反応は、脱プロトン化が実質的に完了するまで撹拌しながら進行させてもよい。リチウム化反応は、大気圧以上で行われてもよい。反応は、不活性な雰囲気下、例えば反応中、反応容器に窒素(N
2)または他の不活性ガスを流すことによって、行われてもよい。
【0016】
リチウム化反応は、1−フルオロ置換基に隣接する開放位置にて、3−クロロ−1−フルオロ−2−置換ベンゼン化合物の炭素原子を脱プロトン化できる。リチウムが1−フルオロ置換基に隣接する炭素原子に結合した中間体化合物が形成される。次いでリチウム化3−クロロ−1−フルオロ−2−置換ベンゼン化合物は、求電子性試薬と接触させてもよく、これが3−クロロ−1−フルオロ−2−置換ベンゼン化合物のC6位にて反応する。Z基の供給源として機能する求電子性試薬は、3−クロロ−1−フルオロ−2−置換ベンゼン化合物のC6に結合することになる。求電子性試薬は、トリアルキルボレート、例えばB(OMe)
3であってもよい。1つの実施形態において、求電子性試薬は、B(OMe)
3であり、これは3−クロロ−1−フルオロ−2−置換ベンゼン化合物のC6と反応して、ボロン酸エステルを生成する。リチウム化3−クロロ−1−フルオロ−2−置換ベンゼン化合物を含む反応混合物は、求電子性試薬を添加する前に、例えば約−100℃〜約−30℃に冷却されてもよい。求電子性試薬は、約−65℃以下に反応混合物の温度を維持しながら、徐々に添加されてもよい。反応混合物は、求電子性試薬が、リチウム化3−クロロ−1−フルオロ−2−置換ベンゼン化合物と反応するのに十分な時間反応させてもよい。求電子性試薬との反応の間、反応混合物の温度は、室温(約20℃〜約25℃)に徐々に上昇させてもよい。
【0017】
水性塩基が、室温にて反応混合物に添加されてもよい。水性塩基としては、3−クロロ−1−フルオロ−2−置換ベンゼン化合物、アルキルリチウム化合物および求電子性試薬の反応生成物を加水分解するのに十分な強度を有する塩基を挙げることができる。塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。水性塩基および反応混合物は、塩基が、3−クロロ−1−フルオロ−2−置換ベンゼン、アルキルリチウム化合物、および求電子性試薬の反応生成物を加水分解するのに十分な時間撹拌されてもよい。次いで反応混合物は、有機相および水性相(水性塩基)が区別可能な層に分離される容器に移されてもよく、次いでこれらは分離される。例として、この容器は、分液漏斗であってもよい。有機層は廃棄されてもよいが、3−クロロ−1−フルオロ−2−置換ベンゼン、アルキルリチウム化合物、および求電子性試薬の反応生成物の帯電種を含むDME/水層は、有機溶媒、例えばt−ブチルメチルエーテル(TBME)の少なくとも1体積と接触させて、不要な有機不純物を除去してもよい。
【0018】
3−クロロ−1−フルオロ−2−置換ベンゼン、アルキルリチウム化合物、および求電子性試薬の反応生成物の帯電種を含む水性層は、酸性化され、水混和性有機溶媒で希釈されてもよい。水性層は、酸性化され、次いで水混和性有機溶媒で希釈されてもよく、または水混和性有機溶媒で希釈され、次いで酸性化されてもよい。水性酸は、水性層に添加されてもよく、3−クロロ−1−フルオロ−2−置換ベンゼン、アルキルリチウム化合物、および求電子性試薬の反応生成物の帯電種をプロトン化し、PBAまたは他の4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸を生成する。水性酸の酸は、帯電された種をプロトン化するために十分な強度を有するべきである。1つの実施形態において、酸は、塩酸(HC1)であってもよく、水性酸としては6MのHC1が挙げられる。3−クロロ−1−フルオロ−2−置換ベンゼン、アルキルリチウム化合物および求電子性試薬の反応生成物の帯電種に対して等モル量の酸を使用してもよい。しかし、完全なプロトン化を確実にするために、過剰の酸が使用されてもよい。一旦プロトン化されたら、PBAまたは他の4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸は、水性層中のその可溶性に関して、水混和性有機溶媒中に実質的に可溶性であってもよい。
【0019】
3−クロロ−1−フルオロ−2−置換ベンゼン、アルキルリチウム化合物および求電子性試薬の酸性化反応生成物を含む水性層は、水混和性有機溶媒、例えばMeCNで希釈されてもよい。水混和性有機溶媒はまた、後続反応に対して適合性であってもよく、この反応に4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸を供するので結果として溶媒交換が行われる必要はない。本明細書の実施形態は水混和性有機溶媒をMeCNとして記載するが、他の水混和性有機溶媒が使用されてもよい。MeCNおよび水が実質的に混和性であるので、区別可能な水性層および有機層は形成されない場合がある。しかし、1−フルオロ(フルオロ)−2−置換−3−クロロベンゼン、アルキルリチウム化合物および求電子性試薬の酸性化反応生成物を含有するMeCN/水混合物の塩含有量が十分高い場合、区別可能な水性層およびMeCN層が形成され得る。
【0020】
PBAまたは他の4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸を単離するために、塩がMeCN/水混合物に添加されてもよい。塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、塩化アンモニウム、またはこれらの組み合わせであってもよい。単純化のために、塩の金属は、水性塩基に使用される塩基の金属と同じ金属であってもよい。例として、塩基が水酸化ナトリウムである場合、塩はナトリウム塩であってもよい。同様に、塩基が水酸化カリウムである場合、塩はカリウム塩であってもよい。塩の添加は、MeCN/水混合物に直接固体形態の塩を添加することによって、または水性塩溶液をMeCN/水混合物に添加することによって生じ得る。水性塩溶液は、水中の塩の飽和溶液であってもよい。例として、塩が塩化ナトリウムである場合、水性塩溶液は、ブライン溶液であってもよく、これは約20重量%〜約27重量%の水中の塩化ナトリウム、例えば約25重量%の塩化ナトリウムを含む。ブライン溶液はまた、飽和塩化ナトリウム溶液としても既知であり得る。塩をMeCN/水混合物に添加する際、塩は、水を飽和してもよく、区別可能な水性層および有機層を形成させる。MeCN/水混合物の塩含有量に依存して、2つの区別可能な層は、塩の添加なしに形成されてもよい。しかし、2つの区別可能な層が形成されたとしても、追加の塩を添加して、水が塩で飽和されることを確実にしてもよい。水の塩による飽和を最大限にすることによって、PBAまたは他の4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸のMeCN/水混合物からの回収が最大化され得る。塩の添加によりまた、PBAまたは他の4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸がMeCNに分配され得る。MeCNおよび水性層(水性溶液)は、MeCN中の溶液中のPBAまたは4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸の実質的にすべてと分離されてもよい。水性溶液中に残留するいずれかのPBAまたは4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸を回収するために、水性溶液は、追加の体積のMeCNと接触させてもよい。次いで複数体積のMeCNを合わせてもよく、得られたPBAまたは4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸の収率を増大させる。
【0021】
以下で詳述される反応スキームに示されるように、2,6−CFAは、無水DME中のn−BuLiでリチウム化されてもよく、2,6−CFAのリチウム化誘導体(Li−2,6−CFAを形成する:
【化3】
次いでB(OMe)
3を添加してもよく、反応混合物が室温まで徐々に加温され、Li−2,6−CFAのボロン酸誘導体(PBA−diMe)が形成されてもよい。水酸化ナトリウムの水溶液を室温にてPBA−diMeに添加してもよく、PBA−diMeの帯電したナトリウム誘導体(PBA−Na)が形成される。撹拌後、PBA−Naは、分液漏斗に移してもよく、ここで水性層および有機層を分離させる。水性層は、TBMEで洗浄されて、未反応2,6−CFAが除去されてもよい。PBA−Naを含む水性層を三角フラスコに移し、MeCNで希釈してもよく、混合物を6Mの水性HClの滴下によって酸性化して、PBAを形成してもよい。あるいは、PBA−Naを含む水性層は、6Mの水性HClの滴下によって酸性化され、次いでMeCNで希釈され、PBAを形成してもよい。MeCNは水に混和性であるので、区別可能な水性層および有機層は形成されない場合がある。飽和NaCl溶液またはNaCl固体が添加されて、水性層を塩で飽和することによって、水性層および有機層の形成を補助してもよい。MeCN/水混合物の塩含有量に依存して、2つの区別可能な層は、NaClを添加することなく形成されてもよい。しかし、2つの区別可能な層が形成されたとしても、追加のNaClが添加されて、水性層がNaClで飽和されることを確実にしてもよい。MeCNおよび水性層が分離されてもよく、水性層は追加の体積のMeCNで抽出されてもよい。MeCN中のPBAまたは4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸の収率を決定するために、MeCNが、例えばエバポレーションによって除去されてもよい。得られた白色固体はさらに、真空オーブン中で乾燥されて、PBAまたは4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸の約90%より大きい収率を得ることができる。PBAまたは4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸の純度は、約90%を超え、例えば約95%を超え、または約98%を超えてもよい。比較として、塩を添加することなく、PBAまたは4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸がMeCN/水混合物から単離される場合、得ることができるPBAまたは4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸の純度はより低く、例えば約80%収率である。あるいは、PBAまたは4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸は、MeCN中の溶液に留まることがあり、さらに濃縮または乾燥されることなく、後続反応に直接使用されてもよいので、プロセス全体のユニット操作の数を低減する。この場合のPBAの収率は、内部標準を用いてGCによって決定される。
【0022】
例として、PBAまたは4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸のMeCN中の溶液は、スズキカップリング反応に利用されてもよい。PBAまたは4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸は、MeCN中の1,3−プロパンジオールでエステル化され、(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−[1,3,2]−ジオキサボリナン(PBE)を良好な収率、例えば約95%以上で生成してもよい。MeCN中のPBAはまた、PBEを最初に生成することなく、スズキカップリング反応に直接使用されてもよい。スズキカップリング反応は、当該技術分野において既知であり、そのため本明細書において詳細に記載されない。PBEは、例えば除草剤として有用な6−(4−クロロ−2−フルオロ−3メトキシフェニル)−4−アミノピコリネート化合物または2−(4−クロロ−2−フルオロ−3メトキシフェニル)−6−アミノ−4−ピリミジンカルボン酸化合物の形成における中間体として使用されてもよい。PBEの6−(4−クロロ−2−フルオロ−3メトキシフェニル)−4−アミノピコリネート化合物または2−(4−クロロ−2−フルオロ−3メトキシフェニル)−6−アミノ−4−ピリミジンカルボン酸化合物への転化は、当該技術分野において既知であり、そのため本明細書では詳細には記載しない。
【0023】
飽和塩溶液は、液体/液体抽出に使用されているが、飽和塩溶液は、有機溶媒から水を除去するための初期洗浄液として使用でき、追加の水が、硫酸マグネシウム(MgSO
4)を用いて有機溶媒から除去される。対照的に、本開示の方法に利用される飽和塩溶液は、2つの混和性溶媒、すなわち水性溶液およびMeCNを含む混合物中の区別可能な有機層および水性層を生成するために使用され得る。水およびMeCNは、実質的に混和性であり、液体/液体抽出をこうした混合物に対して行うことは困難である。しかし、塩を添加して混合物の水性層を飽和させることによって、水およびMeCNを区別可能な水性層および有機層に分離でき、次いでこれが容易に分離される。塩を水性層に添加することにより、水性層中のMeCNの溶解性を低下させ、この結果としてMeCN層に分配されるPBAの量が増大し、ひいては回収され得るPBAの量を増大させる。水性および有機層を分離する能力はまた、得ることができるPBAまたは4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニルボロン酸の収率を改善する。
【実施例】
【0024】
以下の実施例は、より詳細に本開示の実施形態を説明するために作用する。これらの実施例は、本発明の範囲について包括的または排他的に解釈されるべきではない。
【0025】
実施例1
PBAのMeCNからの単離 2,6−CFA(10.0g,62.28mmol)を別個のフラスコに計量し、熱電対温度プローブ、撹拌棒、およびN
2入口を備えた3ツ口の500ml丸底フラスコに移した。フラスコを無水DMEですすいだ。追加のDMEを反応フラスコに添加し、106mlのDME総体積を得た。反応をドライアイス/アセトン浴を用いて−78℃に冷却した。反応が−77℃に到達したら、n−BuLi(29ml,71.62mmol,ヘキサン中2.5M)をシリンジポンプを用いて45分間かけて徐々に滴下した。添加中に到達した最も高い温度は、−70.1℃であった。n−BuLiの添加完了後、反応を−74.1℃で1時間撹拌し続けた。1時間後、B(OMe)
3(10.5ml,93.42mmol)をシリンジポンプを用いて22分間かけて滴下した。B(OMe)
3の添加中に到達した最も高い温度は−67.0℃であった。B(OMe)
3の添加完了後、ドライアイス/アセトン浴を取り除き、反応混合物を室温(約23.1℃)まで加温した。反応混合物が室温に到達したら、反応をさらにその温度で1時間撹拌し続けた。添加漏斗を用いて、1NのNaOH(aq)(78ml,77.85mmol)を反応混合物に滴下した。添加完了後、反応混合物を室温で1時間撹拌した。次いで反応混合物を500mlの分液漏斗に移し、層を分離させた。水性層をTBME(2×75ml)で洗浄し、不要な不純物および/または未反応2,6−CFAを除去した。次いで水性層を6NのHCl(aq)(42ml,249.1mmol)で酸性化し、MeCN(3×75ml)で抽出した。MeCNの第1の体積(75ml)を添加する際、水性層および有機層は区別可能に分離した。固体のNaClをMeCN/水混合物に添加して、水性層が塩で飽和されたことを確実にし、区別可能な水性層および有機層を分離した。追加の2体積75mlのMeCNを添加し、区別可能な水性層および有機層を分離した。有機層を合わせ、硫酸マグネシウム(MgSO
4)で乾燥し、500mlの丸底フラスコに濾過した。反応の収率を決定するために、MeCN中のPBA溶液を減圧下で乾燥するまで濃縮した。白色固体を55℃の真空オーブンにてさらに乾燥し、11.4g(90%収率)のPBAを得た。
【0026】
実施例2
MeCNからのPBAの代替単離 2,6−CFA(10.0g,62.28mmol)を別個のフラスコに計量し、熱電対温度プローブ、撹拌棒およびN
2入口を備えた3ツ口の500mlの丸底フラスコに移した。フラスコを無水DMEですすいだ。追加のDME(106mlの総体積)を反応に添加した。反応を、ドライアイス/アセトン浴を用いて−78℃に冷却した。反応が約−77℃に到達したら、n−BuLi(29ml,71.62mmol,ヘキサン中2.5M)をシリンジポンプを用いて45分間にわたって徐々に滴下した。添加中に到達した最も高い温度は、−70.1℃であった。n−BuLiの添加完了後、反応を−72.1℃にて1時間撹拌し続けた。1時間後、B(OMe)
3(10.5ml,93.42mmol)をシリンジポンプを用いて22分間にわたって滴下した。添加中に到達した最も高い温度は−67.0℃であった。B(OMe)
3の添加完了後、ドライアイス/アセトン浴を取り除き、反応混合物を室温まで一晩加温した。次の朝、反応混合物の温度は22.7℃であった。添加漏斗を用いて、1NのNaOH(aq)(78ml,77.85mmol)を反応混合物に滴下した。添加完了後、反応混合物を室温にて1.5時間撹拌した。次いで反応混合物を500mlの分液漏斗に移し、有機層および水性層を分離した。水性層をTBME(2×75ml)で洗浄し、不要な不純物および/または未反応2,6−CFAを除去した。水性層を6Nの水性HCl(42ml,249.1mmol)で酸性化し、次いでMeCN(3×75ml)を添加した。水およびMeCNは混和性であるので、2つの区別可能な層は区別不可能であった。次いで固体のNaClを添加して、水性層を飽和させ、結果として2つの区別可能な層:MeCN層および水性層を形成させ、これらを分離した。有機層を合わせ、MgSO
4で乾燥し、500mlの丸底フラスコに濾過した。反応の収率を決定するために、MeCN中のPBA溶液を減圧下で乾燥するまで濃縮した。白色固体を55℃の真空オーブンにてさらに乾燥し、11.8g(93%収率)のPBAを得た。
【0027】
実施例3
MeCNからのPBAの代替単離 2,6−CFA(10.0g,62.28mmol)を別個のフラスコに計量し、熱電対温度プローブ、撹拌棒およびN
2入口を備えた3ツ口の500ml丸底フラスコに移した。フラスコを無水DMEですすいだ。追加のDME(106mlの総体積)を反応に添加した。反応を、ドライアイス/アセトン浴を用いて−78℃に冷却した。反応が約−72.7℃に到達したら、n−BuLi(29ml,71.62mmol,ヘキサン中2.5M)をシリンジポンプを用いて45分間にわたって徐々に滴下した。添加中に到達した最も高い温度は、−71.5℃であった。n−BuLiの添加完了後、反応を−71.5℃にて1時間撹拌し続けた。1時間後、B(OMe)
3(10.5ml,93.42mmol)をシリンジポンプを用いて22分間にわたって滴下した。添加中の温度は−65℃未満に維持した。B(OMe)
3の添加完了後、ドライアイス/アセトン浴を取り除き、反応混合物を室温まで一晩加温した。次の朝、反応混合物温度は24.9℃であった。添加漏斗を用いて、1NのNaOH(aq)(78ml,77.85mmol)を反応混合物に滴下した。添加完了後、反応混合物を室温にて1.5時間撹拌した。次いで反応混合物を500mlの分液漏斗に移し、層を分離した。水性層をTBME(2×75ml)で洗浄し、未反応2,6−CFAを除去した。水性層を6Nの水性HCl(42ml,249.1mmol)で酸性化した。100mLのMeCNを水性混合物に初期添加し、振とうした。水およびMeCNは混和性であるので、2つの区別可能な層は区別不可能であった。ブライン溶液(水中の約25重量%の塩化ナトリウム)を添加し、水性層を飽和させ、結果として2つの区別可能な層:MeCN層および水性層を形成させ、これらを分離した。水性層をMeCN(2×75mL)で抽出した。有機層を合わせ、MgSO
4で乾燥し、500mlの丸底フラスコに濾過した。反応の収率を決定するために、MeCN中のPBA溶液を減圧下で乾燥するまで濃縮した。白色固体を55℃の真空オーブンにてさらに乾燥し、11.3g(89%収率)のPBAを得た。
【0028】
実施例4
比較例 無水DME(75ml)中の2,6−CFA(9.6g)の溶液を、磁性攪拌機、熱電対温度プローブを有するサーモウェル、ラバーセプタムおよびN
2入口を有する冷却器を備えた100mlの3ツ口フラスコに調製した。溶液を撹拌し、ドライアイス/アセトン浴を用いて−71.0℃に冷却した。n−BuLi(ヘキサン中の31.5mlの2.5Mブチルリチウム)の溶液を、シリンジポンプを用いて1.57時間にわたって徐々に添加し、反応温度を−65℃未満に維持した。反応混合物を−72.0℃〜−73.4℃の温度にて20分間撹拌し、次いでB(OMe)
3(10.5ml)をシリンジポンプを用いて43分間にわたって徐々に添加し、温度を−65℃未満に維持した。B(OMe)
3の添加完了後、反応混合物を周囲温度まで一晩徐々に加温した。KOH水溶液(133mlの5.6%水性KOH,約1M)を室温(約23.1℃)にて反応混合物に17分間にわたって添加漏斗を用いて滴下した。混合物を60分間撹拌し、次いで分液漏斗に移し、ここで有機層および水性層を分離させた。水性層をTBME(2×73ml)で洗浄し、未反応2,6−CFAを除去した。次いで水性層を、250mlの三角フラスコに移し、MeCN(76ml)で抽出し、6Mの水性HC1(40ml)を滴下することによって酸性化した。有機層(27.87g)を分離し、GCアッセイにより5.00gのPBAを含有していることがわかった。水性層を追加のアセトニトリル(2×76ml)で抽出し、2つの追加の有機層(24.88gおよび156.48g)を同様にアッセイした。MeCN中に回収された総生成物は9.85g(80.3%収率)であった。KOH溶液は、この実験において水性塩基として使用され、NaOH溶液を使用した場合にPBAの収率に差はないことがわかった。
【0029】
本発明は種々の改質および代替形態に影響を受ける場合があるが、特定の実施形態が、本明細書において例として詳細に記載されている。しかし、本発明は、開示された特定の形態に限定されることを意図しないことが理解されるべきである。さらに本発明は、以下の添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内にある、すべての改質、等価、および代替、ならびにそれらの法的等価のすべてをカバーする。