(54)【発明の名称】8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体、8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオチド誘導体及びポリヌクレオチド誘導体ならびにプローブ
【文献】
P. Franchetti, L. Messini, L. Cappellacci, M. Grifantini, G. Nocentini, P. Guarracino, M. E. Marongiu, and P. La Colla ,8-Aza derivatives of 3-deazapurine nucleosides. Synthesis and in vitro evaluation of antiviral and antitumor activity,Antiviral Chemistry & Chemotherapy,1993年,Vol. 4, No. 6,pp.341-352
【文献】
Jacqueline C. Bussolari, Kakarla Ramesh, Johanna D. Stoeckler, Shih-Fong Chen, and Raymond P. Panzica,Synthesis and Biological Evaluation of N4-Substituted Imidazo- and v-Triazolo[4,5-d]pyridazine Nucleosides,Journal of Medicinal Chemistry,1993年,Vol. 36,pp.4113-4120
【文献】
Jesse A. May, Jr., and Leroy B. Townsend,Synthesis of v-Triazolo[4,5-c]pyridine Nucleosides and 4-(β-D-Ribofuranosyl)amino-1,2,3-thiadiazolo[5,4-b]pyridine via a Rearrangement,The Journal of Organic Chemistry,1976年,Vol. 41, No. 8,pp.1449-1456
【文献】
Azusa Suzuki, Mio Saito, Ryuzi Katoh and Yoshio Saito,Synthesis of 8-aza-3,7-dideaza-2'-deoxyadenosines possessing a new adenosine skeleton as an environmentally sensitive fluorescent nucleoside for monitoring the DNA minor groove,Organic & Biomolecular Chemistry,2015年,Vol. 13,pp.7459-7468
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体、8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオチド誘導体及びそれらの合成中間体、さらにはそれらのアミダイト体、ポリヌクレオチド誘導体ならびにプローブ等について詳細に説明する。
【0010】
本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体は、下記式(I):
【化15】
[式中、R
1は、水素原子又は水酸基であり、Xは、単結合、炭素−炭素二重結合(−C=C−)又は炭素−炭素三重結合(−C≡C−)であり、R
2は、下記式:
【化16】
で示される縮合環(但し、*は、Xとの結合位置を示す。)である。]
で示される化合物である。
【0011】
本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体において、核酸塩基と結合する五炭糖は、2−デオキシリボースでもリボースでもよく、式(I)中、R
1は、水素原子又は水酸基である。本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体をヌクレオチドに導入してDNA型のプローブとして用いるときは、R
1は水素原子が好ましく、RNA型のプローブとして用いるときは、R
1としては水酸基が好ましい。
【0012】
式(I)中、Xは、単結合、炭素−炭素二重結合(−C=C−)又は炭素−炭素三重結合(−C≡C−)である。Xが、単結合、炭素−炭素二重結合(−C=C−)又は炭素−炭素三重結合(−C≡C−)であると、核酸塩基と蛍光性分子とがXを介してπ共役系を形成することができる。
【0013】
式(I)中、R
2は、下記式:
【化17】
で示される縮合環である。なお、式中、*は、Xとの結合位置を示す。これらの縮合環の中でも、DNAのマイナーグルーブに蛍光色素を導入する際に収まりがよいことから、ナフチル基、キノリル基及びイソキノリル基からなる群から選ばれる縮合環であることが好ましく、下記式で示される1−ナフチル基又は2−ナフチル基が特に好ましい。
【化18】
【0014】
上記のとおり、本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体は、8−アザ−3,7−ジデアザアデニンの3位に単結合、炭素−炭素二重結合(−C=C−)又は炭素−炭素三重結合(−C≡C−)を介して蛍光性分子が導入された構造を有しており、アデニン類縁体である核酸塩基部位と蛍光性分子とが単結合、炭素−炭素二重結合(−C=C−)又は炭素−炭素三重結合(−C≡C−)を介してπ共役系を形成できるように設計されている。8−アザ−3,7−ジデアザアデニンの3位に蛍光性分子が導入されていると、例えば該ヌクレオシド誘導体を含むポリヌクレオチドがDNA二重らせん構造を形成するときに蛍光性分子がDNAのマイナーグルーブ側に位置することができ、より平面構造を形成し易く、π共役系が繋がり易くなる。
本発明の好ましい態様によれば、本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体は、周辺の極性環境等の微細環境の変化に伴って蛍光発光波長を大きく変化させることができる。例えば極性の高い環境下では長波長側に極大をもつブロードな発光が観測され、極性の低い環境下では短波長側に極大を持つ蛍光発光が観測される。
このように本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体は、周辺の極性環境等の微細環境の変化に伴って蛍光発光波長が大きく変化する特徴的な性質を有しており、周辺の微細環境の変化を蛍光発光色の違いによって識別することが可能である。この性質を利用して、本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体を、例えば、生体内における極性環境等の微細環境の変化を検出するためのプローブとして用いることができる。
【0015】
本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体は、パラジウム触媒及び必要に応じて銅触媒を用いたクロスカップリング反応を用いて、化合物(iii)の核酸塩基部位の3位に単結合、炭素−炭素二重結合(−C=C−)又は炭素−炭素三重結合(−C≡C−)を介して所望の縮合環を導入することにより簡便な方法で製造することができる。本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体は、例えば、下記のスキームに従って製造することができる。
【化19】
[式中、Arは、式(I)中、R
2で示される縮合環であり、R
1は、水素原子又は水酸基である。Rは水素原子又はアルキル基である。]
【0016】
例えば、化合物(Ia)は、化合物(iii)に、触媒量のパラジウム試薬及び銅試薬、過剰量の塩基の存在下、エチニル基を有する縮合環をクロスカップリングさせることにより得ることができる。
パラジウム試薬としては、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドなどを用いることができる。
銅試薬としては、ヨウ化銅などを用いることができる。
塩基としては、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなどを用いることができる。
エチニル基を有する縮合環は、化合物(iii)に対して、等モルないしやや過剰で用いることが好ましく、その使用量は、化合物(iii)に対して1.0〜1.2(モル倍量)が好ましい。
パラジウム試薬及び銅試薬は、それぞれ、触媒量で用いればよく、化合物(iii)に対して0.01〜0.1(モル倍量)が好ましい。
塩基は、化合物(iii)に対して5〜10(モル倍量)の範囲で用いることが好ましい。
反応は溶媒中で行うことが好ましく、溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、塩化メチレン、o−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物などを用いることができる。
反応温度は、20〜100℃が好ましく、50〜80℃がより好ましい。また、反応時間は、1〜6時間が好ましく、2〜4時間がより好ましい。
反応終了後は、分液操作を行い、反応物を抽出した有機層を減圧濃縮する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して化合物(Ia)を得ることができる。
【0017】
次に、化合物(Ib)は、化合物(iii)に、触媒量のパラジウム試薬、過剰量の塩基の存在下、ボロン酸又はボロン酸エステルを有する縮合環をクロスカップリングさせることにより得ることができる。
パラジウム試薬としては、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドなどを用いることができる。パラジウム試薬は、触媒量で用いればよく、化合物(iii)に対して0.01〜0.1(モル倍量)が好ましい。
塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどを用いることができる。
塩基は、化合物(iii)に対して5〜10(モル倍量)の範囲で用いることが好ましい。
ボロン酸又はボロン酸エステルを有する縮合環は、化合物(iii)に対して、等モルないしやや過剰で用いることが好ましく、その使用量は、化合物(iii)に対して1.0〜1.2(モル倍量)が好ましい。
反応は溶媒中で行うことが好ましく、溶媒としては、化合物(Ia)の製造方法において例示した溶媒と同じものを使用することができる。
反応温度は、50〜120℃が好ましく、80〜100℃がより好ましい。また、反応時間は、1〜6時間が好ましく、2〜4時間がより好ましい。
反応終了後は、分液操作を行い、反応物を抽出した有機層を減圧濃縮する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して化合物(Ib)を得ることができる。
【0018】
化合物(Ic)は、化合物(iii)に、触媒量のパラジウム試薬、過剰量の塩基の存在下、ビニル基を有する縮合環をクロスカップリングさせることにより得ることができる。
パラジウム試薬としては、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドなどを用いることができる。パラジウム試薬は、触媒量で用いればよく、化合物(iii)に対して0.01〜0.1(モル倍量)が好ましい。
塩基としては、トリエチルアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどを用いることができる。
反応は溶媒中で行うことが好ましく、溶媒としては、化合物(Ia)の製造方法において例示した溶媒と同じものを使用することができる。
反応温度は、50〜120℃が好ましく、80〜100℃がより好ましい。また、反応時間は、1〜6時間が好ましく、2〜4時間がより好ましい。
反応終了後は、分液操作を行い、反応物を抽出した有機層を減圧濃縮する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して化合物(Ic)を得ることができる。
【0019】
化合物(Ia)、(Ib)及び(Ic)の合成中間体である化合物(iii)は、下記のスキームに従って製造することができる。すなわち、8−アザ−3,7−ジデアザアデニンの9位に五炭糖を導入してヌクレオシド(化合物(i))を製造し、得られたヌクレオシドの3位にヨウ素を導入して化合物(iii)を製造することができる。
【化20】
【化21】
[式中、R
1は、水素原子又は水酸基である。]
【0020】
以下、各工程について説明する。
<工程1>
まず、化合物aをアセトニトリルに懸濁させた。これに、水素化ナトリウムを加え、室温〜50℃の油浴中で30分〜1時間反応させる。その後、2−デオキシ−3,5−ジ−O−(p−トルオイル)−α−D−リボフラノシルクロリド又は3,5−ジ−O−(p−トルオイル)−α−D−リボフラノシルクロリドを加え、室温で15分〜30分反応させる。
水素化ナトリウムの使用量は、化合物aに対して1.0〜1.2(モル倍量)が好ましい。
2−デオキシ−3,5−ジ−O−(p−トルオイル)−α−D−リボフラノシルクロリド又は3,5−ジ−O−(p−トルオイル)−α−D−リボフラノシルクロリドは、化合物aに対して、等モルないしやや過剰で用いることが好ましく、その使用量は、化合物aに対して1.0〜1.2(モル倍量)が好ましい。
反応終了後は、必要に応じて、分液操作を行い、反応物を抽出した有機層を減圧濃縮する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して化合物bを得ることができる。
【0021】
<工程2>
次に、化合物bを0.5M ナトリウムメトキシド溶液に溶解させ、室温で30分〜1時間反応させる。反応終了後、希塩酸で反応溶液を中和させ、析出した塩をエタノールで吸引濾過し除去する。必要に応じて、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して化合物cを得ることができる。
【0022】
<工程3>
次に、化合物cをヒドラジン無水物に溶解させ、90〜100℃の油浴中で1〜2時間反応させる。溶媒を留去した後、得られた残渣にエタノールとラネーニッケルを加え、1〜2時間還流させる。反応終了後、ラネーニッケルを吸引濾過により除去し、濾液を減圧濃縮により溶媒を留去する。必要に応じて、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して化合物(i)を得ることができる。
【0023】
続いて、化合物(i)を用いて化合物(iii)を製造する。
【0024】
<工程4>
化合物(i)とイミダゾールを溶媒中に溶解させ、これにtert−ブチルジメチルシリルクロリドを加えて、室温で10〜20時間反応させる。反応終了後、必要に応じて、分液操作を行い、反応物を抽出した有機層を減圧濃縮する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して化合物dを得ることができる。
イミダゾールの使用量は、化合物(i)に対して2.0〜3.0(モル倍量)であることが好ましい。
また、tert−ブチルジメチルシリルクロリドの使用量は、化合物(i)に対して2.0〜3.0(モル倍量)であることが好ましい。
溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、塩化メチレン、o−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物などを用いることができる。
【0025】
<工程5>
次に、化合物dを溶媒中に溶解させ、これにN−ヨードスクシンイミドを加えて、室温で10〜20時間反応させる。必要に応じて、分液操作を行い、反応物を抽出した有機層を減圧濃縮する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して化合物eを得ることができる。
N−ヨードスクシンイミドの使用量は、化合物dに対して1.0〜2.0(モル倍量)であることが好ましい。
溶媒としては、工程4で用いられる溶媒で例示したものと同じものを使用することができる。
【0026】
<工程6>
次に、化合物eを溶媒中に溶解させ、テトラブチルアンモニウムフルオリドを加えて、室温で30分〜1時間反応させる。反応終了後、反応液に酢酸を加えて中和する。溶媒を留去し、必要に応じて、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して化合物(iii)を得ることができる。
テトラブチルアンモニウムフルオリドの使用量は、化合物eに対して2.0〜2.5(モル倍量)であることが好ましい。
溶媒としては、工程4で用いられる溶媒で例示したものと同じものを使用することができる。
【0027】
上記のようにして化合物(i)及び化合物(iii)を得ることができる。化合物(i)及び化合物(iii)は、新規な化合物であり、これらの化合物は、本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体の合成中間体として用いられるが、これらの化合物のアミダイト体は、DNA合成試薬などとして利用することもできる。
【0028】
例えば、化合物(i)を、下記のスキームに従ってアミダイト化し、化合物(ii)を得ることができる。
【化22】
[式中、R
1は、水素原子又は水酸基である。]
【0029】
以下、各工程について説明する。
<工程7>
化合物(i)を溶媒中に溶解させ、これにN,N−ジ−n−ブチルホルムアミドジメチルアセタールを加えて、60〜80℃の油浴中で1〜2時間反応させる。反応終了後、溶媒を留去し、必要に応じて、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して化合物fを得ることができる。
N,N−ジ−n−ブチルホルムアミドジメチルアセタールの使用量は、化合物(i)に対して1.0〜2.0(モル倍量)であることが好ましい。
溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、塩化メチレン、o−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物などを用いることができる。
【0030】
<工程8>
化合物fを無水ピリジンに溶解させ、これに4,4’−ジメトキシトリチルクロリドを加えて、室温で1〜2時間反応させる。反応終了後、必要に応じて、分液操作を行い、反応物を抽出した有機層を減圧濃縮する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して化合物gを得ることができる。
4,4’−ジメトキシトリチルクロリドの使用量は、化合物fに対して1.0〜1.2(モル倍量)であることが好ましい。
【0031】
<工程9>
化合物gをアセトニトリルに溶解させ、これにトリエチルアミンと2−シアノジイソプロピルクロロホスホロアミジトを加えて、室温で30分〜1時間反応させる。反応終了後、必要に応じて、分液操作を行い、反応物を抽出した有機層を減圧濃縮する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物(i)のアミダイト体である化合物(ii)を得ることができる。
【0032】
工程7、8及び9と同様の方法で、化合物(iii)のアミダイト体である化合物(iv)を得ることもできる。
【化23】
[式中、R
1は、水素原子又は水酸基である。]
【0033】
化合物(ii)及び(iv)はそれぞれ、DNA又はRNAの合成試薬として用いることができる。特に(iv)は、オリゴヌクレチド合成後に様々な置換基の導入が可能な試薬となり得る。
【0034】
次に、本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオチド誘導体について述べる。
本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオチド誘導体は、上述した本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体にリン酸がエステル結合してなる化合物であり、
下記式(III):
【化24】
[式中、R
1は、水素原子又は水酸基であり、Xは、単結合、炭素−炭素二重結合(−C=C−)又は炭素−炭素三重結合(−C≡C−)であり、R
2は、下記式:
【化25】
で示される縮合環(但し、*は、Xとの結合位置を示す。)であり、sは、1、2又は3である。]
で示される化合物である。
【0035】
式(III)におけるR
1、R
2及びXは、式(I)におけるR
1、R
2及びXと同義であり、好ましい例も同じである。
sは1、2又は3であるが、1又は3が好ましく、ポリヌクレオチド誘導体に容易に導入できることから3が特に好ましい。
【0036】
本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオチド誘導体(III)の一リン酸体(s=1)は、通常、本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体(I)をトリメチルホスファイトなどの溶媒に溶解し、0℃でオキシ塩化リンを加えて反応させた後に水を加えることで簡単に合成することができる。また、三リン酸体(s=3)は、水を加える前にトリブチルアンモニウムピロリン酸(二リン酸)を加えるステップを加えることを除いて一リン酸体と同様にして合成することができる。
【0037】
また、本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオチド誘導体(III)の三リン酸体は、PCR法を用いてDNAに容易に導入することができ、ポリヌクレオチドにおいて少なくとも1つのヌクレオチドが本発明のヌクレオチド誘導体で置換された本発明のポリヌクレオチド誘導体を得ることができる。
あるいは、本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体に触媒量の4,4’−ジメトキシトリチルクロリドを加えて反応させて得られる化合物を、トリエチルアミンの存在下、更に2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミダイトと反応させて、下記式(II):
【化26】
[式中、R
1は、水素原子又は水酸基であり、Xは、単結合、炭素−炭素二重結合(−C=C−)又は炭素−炭素三重結合(−C≡C−)であり、R
2は、下記式:
【化27】
で示される縮合環(但し、*は、Xとの結合位置を示す。)である。]
で示されるアミダイト体を得、得られたアミダイト体を直接DNA自動合成機にかけることで、本発明のポリヌクレオチド誘導体を得ることができる。
【0038】
より具体的には、下記のスキームに従って、本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体のアミダイト体である化合物(II)を得ることができる。
【化28】
【0039】
以下、各工程について説明する。
<工程10>
化合物(I)を溶媒中に溶解させ、これにN,N−ジ−n−ブチルホルムアミドジメチルアセタールを加えて、60〜80℃の油浴中で1〜2時間反応させる。反応終了後、溶媒を留去し、必要に応じて、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して化合物hを得ることができる。
N,N−ジ−n−ブチルホルムアミドジメチルアセタールの使用量は、化合物(I)に対して1.0〜2.0(モル倍量)であることが好ましい。
溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、塩化メチレン、o−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物などを用いることができる。
【0040】
<工程11>
化合物hを無水ピリジンに溶解させ、これに4,4’−ジメトキシトリチルクロリドを加えて、室温で1〜2時間反応させる。反応終了後、必要に応じて、分液操作を行い、反応物を抽出した有機層を減圧濃縮する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して化合物iを得ることができる。
4,4’−ジメトキシトリチルクロリドの使用量は、化合物hに対して1.0〜1.2(モル倍量)であることが好ましい。
【0041】
<工程12>
化合物iをアセトニトリルに溶解させ、これにトリエチルアミンと2−シアノジイソプロピルクロロホスホロアミジトを加えて、室温で30分〜1時間反応させる。反応終了後、必要に応じて、分液操作を行い、反応物を抽出した有機層を減圧濃縮する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物(I)のアミダイト体である化合物(II)を得ることができる。
【0042】
本発明のポリヌクレオチド誘導体は、前述したとおりポリヌクレオチドにおいて少なくとも一つのヌクレオチドが、本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオチド誘導体で置換されてなるものである。
本発明において、ポリヌクレオチド誘導体はオリゴヌクレオチド誘導体であってもよい。本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオチド誘導体の塩基数は特に制限されなく、例えば2から1000が好ましく、2から200がより好ましく、2から100が特に好ましい。
【0043】
以上のようにして、本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体、8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオチド誘導体及びポリヌクレオチド誘導体を製造することができる。
本発明の好ましい態様によれば、本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体は、周辺の極性環境等の微細環境の変化に応じて蛍光発光色を変化させることができる。この性質を利用して、本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体を、局所的な極性環境等の微細環境の変化を検出するためのプローブとして用いることができる。
本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体は、ヌクレオシド型の化合物であるため、蛍光物質のみの場合と比べて溶解性が良好であり、細胞膜透過性も向上すると考えられることから、それ自体、生体内等における局所的な極性環境等の微細環境の変化を検出するためのプローブとして利用可能である。
また、本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体は、ヌクレオシド型の化合物であるため、ヌクレオチド誘導体を合成し、オリゴヌクレオチド鎖へ容易に導入することが可能である。本発明の好ましい態様によれば、本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体又は8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオチド誘導体をオリゴヌクレオチド鎖へ導入してなるポリヌクレオチド誘導体は、mRNA、タンパク質又は細胞内における局所的な極性環境等の微細環境の調査用プローブとして利用することができる。
また、DNA又はRNAが二重鎖を形成すると、鎖中に含まれるリン酸基の影響により局所的な極性環境が変化することが知られているため、本発明のポリヌクレオチド誘導体を標的DNAやRNAを検出する試薬として利用することもできる。本発明の好ましい態様によれば、本発明のポリヌクレオチド誘導体は、対面塩基のマッチ−ミスマッチの違いに伴って生じる極性環境等の微細環境の変化により蛍光発光波長を変化させることができる。特に、本発明のポリヌクレオチド誘導体は、対面塩基がフルマッチのチミン塩基の場合に蛍光発光波長を変化させることから、対面のチミン塩基の識別に利用することができる。
上記のとおり、本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体、8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオチド誘導体又はポリヌクレオチド誘導体を用いることによって、生体内等における局所的な環境の変化を検出することができる。
【0044】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されない。なお、以下において、%は、質量基準に基づくものである。
【実施例1】
【0045】
8−アザ−3,7−ジデアザ−2’−デオキシアデノシン(化合物4)及びそのホスホロアミダイト体(化合物7)の合成ならびにオリゴヌクレオチドDNAへの導入
下記スキームに従って8−アザ−3,7−ジデアザ−2’−デオキシアデノシン(化合物4)及びそのホスホロアミダイト体(化合物7)を合成し、DNA鎖に導入した。
【化29】
【0046】
化合物2の合成
化合物1(1.00 g, 6.5 mmol)をアセトニトリル(100 ml)中に懸濁させた。これに、水素化ナトリウム(339 mg, 8.5 mmol)を加え、50℃の油浴中で反応させた。1時間後、室温に冷却してから、2−デオキシ−3,5−ジ−O−(p−トルオイル)−α−D−リボフラノシルクロリド(2.66 g, 6.8 mmol)を加え、室温で30分反応させた。反応終了後、懸濁液を吸引濾過により濾塊を除去した。続いて、濾液を減圧濃縮により溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムに吸着させ、酢酸エチルークロロホルムの混合溶液で溶出し、化合物2(1.77 g, 54 %)を得た。
1H-NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 2.41 (s, 3H), 2.44 (s, 3H), 2.75 (m, 1H), 3.59 (m, 1H), 4.44 (dd, J = 6.4, 13.2 Hz, 1H), 4.60-4.65 (complex, 2H), 5.90 (m, 1H), 6.55 (m, 1H), 7.20 (m, 2H), 7.28 (m, 2H), 7.45 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 7.85 (m, 2H), 7.98 (m, 2H), 8.12 (s, 1H), 8.16 (d, J = 6.0 Hz, 1H);
13C-NMR (CDCl
3, 100 MHz) δ 21.7, 21.7, 36.4, 63.8, 75.1, 82.9, 87.3, 104.3, 121.0, 126.0, 126.8, 129.1 (2C), 129.3 (2C), 129.7 (2C), 129.8 (2C), 134.4, 143.9 (2C), 143.9, 144.4, 145.3, 166.0, 166.2
【0047】
化合物3の合成
化合物2(1.18 g, 2.3 mmol)を0.5M ナトリウムメトキシド溶液に溶解させ、室温で30分反応させた。反応終了後、希塩酸で反応溶液を中和させ、析出した塩をエタノールで吸引濾過させ除去した。濾液を減圧濃縮により溶媒を留去し、再度エタノールを加え、析出した塩を取り除く操作を合計3回行なった。残渣をシリカゲルカラムに吸着させ、メタノールークロロホルムの混合溶液で溶出し、化合物3(566 mg, 90 %)を得た。
1H-NMR (DMSO-d
6, 400 MHz) δ 2.33 (ddd, J = 4.4, 6.4, 13.2 Hz, 1H), 2.87 (ddd, J = 6.0, 6.0, 13.2 Hz, 1H), 3.34 (m, 1H), 3.50 (m, 1H), 3.85 (m, 1H), 4.46 (m, 1H), 4.72 (dd, J = 5.2, 5.6 Hz, 1H), 5.32 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 6.63 (dd, J = 6.0, 6.4 Hz, 1H), 7.91 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 8.21 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 8.41 (s, 1H);
13C-NMR (DMSO-d
6, 100 MHz) δ 38.4, 62.1, 70.8, 86.4, 87.9, 105.5, 119.7, 133.7, 143.4, 143.6, 144.0
【0048】
化合物4の合成
化合物3(800 mg, 3.0 mmol)をヒドラジン無水物(8 ml)に溶解させ、90℃の油浴中で2時間反応させた。溶媒を留去した後、得られた残渣をエタノール(50 ml)とラネーニッケルを加え、2時間還流させた。反応終了後、吸引濾過を行い、ラネーニッケルを除去した。続いて、濾液を減圧濃縮により溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムに吸着させ、メタノールークロロホルム(1%アンモニア水含有)の混合溶液で溶出し、化合物4(400 mg, 54 %)を得た。
1H-NMR (DMSO-d
6, 400 MHz) δ 2.24 (ddd, J = 4.4, 6.8, 13.2 Hz, 1H), 2.83 (m, 1H), 3.34 (m, 1H), 3.49 (m, 1H), 3.81 (m, 1H), 4.42 (m, 1H), 4.72 (t, J = 5.6 Hz, 1H), 5.26 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 6.40 (m, 1H), 6.73 (br, 2H), 6.83 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 7.68 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 8.21 (s, 1H);
13C-NMR (DMSO-d
6, 100 MHz) δ 38.3, 62.4, 71.0, 85.6, 87.5, 94.6, 108.1, 133.8, 144.0, 144.4, 154.0
【0049】
化合物5の合成
化合物4(50.0 mg, 0.20 mmol)をDMF(3 ml)に溶解させ、これにN,N−ジ−n−ブチルホルムアミドジメチルアセタール(0.14 ml, 0.60 mmol)を加えて、80℃の油浴中で1時間反応させた。反応後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムに吸着させ、メタノールークロロホルムの混合溶液で溶出し、化合物5(72.9 mg, 93 %)を得た。
1H-NMR (DMSO-d
6, 400 MHz) δ 0.94 (m, 6H), 1.32 (m, 4H), 1.61 (m, 4H), 2.27 (ddd, J = 4.4, 6.4, 12.8 Hz, 1H), 2.86 (m, 1H), 3.30-3.41 (complex, 5H), 3.49 (m, 1H), 3.58 (m, 1H), 3.82 (m, 1H), 4.45 (m, 1H), 4.73 (t, J = 5.6 Hz, 1H), 5.28 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 7.23 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 7.95 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 8.09 (s, 1H), 8.71 (s, 1H);
13C-NMR (DMSO-d
6, 100 MHz) δ 13.6, 13.7, 19.2, 19.6, 28.7, 30.7, 38.3, 44.2, 50.6, 62.4, 71.0, 85.8, 87.5, 99.1, 115.5, 134.4, 143.4, 144.5, 155.5, 157.0
【0050】
化合物6の合成
化合物5(70.0 mg, 0.18 mmol)を無水ピリジン(3 ml)に溶解させ、これに4,4’−ジメトキシトリチルクロリド(73.0 mg, 0.22 mmol)を加えて、室温で1時間反応させた。反応後、溶媒を留去し、得られた残渣に酢酸エチルを加え、炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、飽和食塩水で1回それぞれ分液操作を行い、有機層を硫酸ナトリウム(無水)で乾燥させた。硫酸ナトリウムをろ過後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムに吸着させ、メタノールークロロホルムの混合溶液で溶出し、化合物6(103 mg, 83 %)を得た。
1H-NMR (acetone-d
6, 400 MHz) δ 0.98 (m, 6H), 1.41 (m, 4H), 1.69 (m, 4H), 2.43 (m, 1H), 3.07-3.17 (complex, 3H), 3.47 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 3.66 (m, 2H), 3.72 (s, 3H), 3.74 (s, 3H), 4.09 (m, 1H), 4.46 (m, 1H), 4.77 (m, 1H), 6.52 (dd, J = 4.0, 6.8 Hz, 1H), 6.66-6.75 (complex, 4H), 7.11-7.38 (complex, 10H), 8.00 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 8.04 (s, 1H), 8.80 (s, 1H);
13C-NMR (acetone-d
6, 100 MHz) δ 14.0, 14.2, 20.5, 20.9, 30.4, 32.0, 39.6, 45.6, 52.1, 55.4 (2C), 65.5, 72.6, 86.5, 86.9, 87.1, 100.0, 113.7 (4C), 117.5, 127.3, 128.4 (2C), 129.0 (2C), 130.8 (2C), 131.0 (2C), 135.2, 136.9, 137.0, 144.4, 145.8, 146.4, 156.5, 158.4, 159.4, 159.4
【0051】
化合物7の合成
化合物6(60.0 mg, 8.7×10
-2 mmol)をアセトニトリル(1 ml)に溶解させ、これにトリエリルアミン(0.5 ml)と2−シアノジイソプロピルクロロホスホロアミジト(100 μl,)を加えて、室温で30分反応させた。反応後、反応溶液に酢酸エチルを加え、炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、飽和食塩水で1回それぞれ分液操作を行い、有機層を硫酸ナトリウム(無水)で乾燥させた。硫酸ナトリウムをろ過後、溶媒を留去し、粗生成物である化合物7を得た。
【0052】
DNA合成
得られた化合物7をアセトニトリル600μlに溶解し、DNA自動合成機(製造元:アプライドバイオシステムズ社、型番:3400 DNAシンセサイザー)を用いてDNA鎖へ導入し、オリゴヌクレオチドDNA(ODN1)を得た。
【実施例2】
【0053】
3−ヨード−8−アザ−3,7−ジデアザ−2’−デオキシアデノシン(化合物10)の合成
下記スキームに従って3−ヨード−8−アザ−3,7−ジデアザ−2’−デオキシアデノシン(化合物10)を合成した。
【化30】
【0054】
化合物8の合成
化合物4(170 mg, 0.68 mmol)とイミダゾール(462 mg, 6.8 mmol)をDMF(5 ml)に溶解させ、これにtert−ブチルジメチルシリルクロリド(512 mg, 3.4 mmol)を加えて、室温で一晩中反応させた。反応後、溶媒を留去し、得られた残渣に酢酸エチルを加え、塩化アンモニウム水溶液で2回、飽和食塩水で1回それぞれ分液操作を行い、有機層を硫酸ナトリウム(無水)で乾燥させた。硫酸ナトリウムをろ過後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムに吸着させ、メタノールークロロホルムの混合溶液で溶出し、化合物8(245 mg, 75 %)を得た。
1H-NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ -0.02 (s, 3H), -0.01 (s, 3H), 0.13 (s, 6H), 0.86 (s, 9H), 0.93 (s, 9H), 2.29 (ddd, J = 3.2, 6.4, 13.2 Hz, 1H), 3.05 (m, 1H), 3.65 (complex, 2H), 3.99 (m, 1H), 4.66 (m, 1H), 5.08 (br, 2H), 6.38 (m, 1H), 6.91 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 7.85 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 7.93 (s, 1H);
13C-NMR (CDCl
3, 100 MHz) δ -5.5 (2C), -4.7 (2C), 18.0, 18.4, 25.8 (3C), 25.9 (3C), 38.7, 63.5, 72.8, 86.9, 87.9, 97.0, 109.1, 132.3, 143.5, 144.9, 152.8
【0055】
化合物9の合成
化合物8(230 mg, 0.48 mmol)をDMF(6 ml)に溶解させ、これにN−ヨードスクシンイミド(216 mg, 0.96 mmol)を加えて、室温で一晩中反応させた。反応後、溶媒を留去し、得られた残渣に酢酸エチルを加え、炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、飽和食塩水で1回それぞれ分液操作を行い、有機層を硫酸ナトリウム(無水)で乾燥させた。硫酸ナトリウムをろ過後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムに吸着させ、メタノールークロロホルムの混合溶液で溶出し、化合物9(272 mg, 94 %)を得た。
1H-NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ -0.05 (s, 3H), -0.02 (s, 3H), 0.14 (s, 6H), 0.85 (s, 9H), 0.94 (s, 9H), 2.32 (ddd, J = 4.0, 6.4, 13.2 Hz, 1H), 3.14 (ddd, J = 6.0, 6.0, 13.2 Hz, 1H), 3.58-3.66 (complex, 2H), 4.00 (m, 1H), 4.69 (m, 1H), 5.09 (br, 2H), 7.41 (dd, J = 6.0, 6.4 Hz, 1H), 7.84 (s, 1H), 8.13 (s, 1H);
13C-NMR (CDCl
3, 100 MHz) δ -5.4 (2C), -4.7, -4.6, 18.0, 18.3, 25.8 (3C), 25.9 (3C), 38.5, 57.5, 63.6, 72.8, 84.8, 87.6, 111.3, 132.3, 143.8, 152.5, 152.8
【0056】
化合物10の合成
化合物9(260 mg, 0.43 mmol)をTHF(10 ml)に溶解させ、テトラブチルアンモニウムフルオリド(1M, 0.90 ml, 0.90 mmol)を加えて、室温で1時間反応させた。反応後、反応液に酢酸(51 μl, 0.90 mmol)を加えて中和した。溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムに吸着させ、メタノールークロロホルムの混合溶液で溶出し、化合物10(136 mg, 84 %)を得た。
1H-NMR (DMSO-d
6, 400 MHz) δ 2.29 (ddd, J = 4.4, 6.0, 13.2 Hz, 1H), 2.99 (ddd, J = 6.0, 6.0, 13.2 Hz, 1H), 3.27 (m, 1H), 3.44 (m, 1H), 3.80 (m, 1H), 4.44 (m, 1H), 4.68 (t, J = 5.6 Hz, 1H), 5.25 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 6.96 (br, 2H), 7.27 (t, J = 6.0 Hz, 1H), 7.96 (s, 1H), 8.23 (s, 1H);
13C-NMR (DMSO-d
6, 100 MHz) δ 38.1, 55.4, 62.4, 71.1, 84.2, 87.6, 110.6, 133.9, 143.0, 152.7, 154.0
【実施例3】
【0057】
3位にエチニルナフタレンを連結した8−アザ−3,7−ジデアザ−2’−デオキシアデノシン誘導体(化合物12)の合成
下記スキームに従って3位にエチニルナフタレンを連結した8−アザ−3,7−ジデアザ−2’−デオキシアデノシン誘導体(化合物12)を合成した。
【化31】
【0058】
化合物12の合成
化合物10(61.1 mg, 0.16 mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(9.4 mg, 0.81×10
-2 mmol)、ヨウ化銅(1.5 mg, 0.79×10
-2 mmol)および1−エチニルナフタレン(30.4 mg, 0.20 mmol)をDMF(5 ml)に溶解させた。これにさらにトリエチルアミン(0.3 ml)を加えて、60℃の油浴中で1時間反応させた。反応後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムに吸着させ、メタノールークロロホルムの混合溶液で溶出し、化合物12(62.0 mg, 95 %)を得た。
1H-NMR (DMSO-d
6, 400 MHz) δ 2.33 (ddd, J = 4.0, 6.8, 13.2 Hz, 1H), 3.01 (m, 1H), 3.38 (m, 1H), 3.52 (m, 1H), 3.91 (m, 1H), 4.49 (m, 1H), 4.75 (m, 1H), 5.29 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 7.42 (m, 1H), 7.43 (br, 2H), 7.54-7.72 (complex, 3H), 7.85-8.02 (complex, 3H), 8.18 (s, 1H), 8.39 (s, 1H), 8.47 (m, 1H);
13C-NMR (DMSO-d
6, 100 MHz) δ 38.2, 62.4, 71.1, 85.5, 87.8, 89.9, 90.9, 91.5, 107.6, 120.5, 125.6, 125.8, 126.7, 127.4, 128.4, 128.4, 129.9, 132.0, 132.9, 134.6, 142.2, 150.0, 154.2
【実施例4】
【0059】
実施例3で得られた化合物12について、下記の手順に従い、光学特性を測定した。
【0060】
[1]UVスペクトルの測定
化合物12を、それぞれ、10μMの濃度で各種溶媒(メタノール、エタノール、2−プロパノール、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、エチレングリコール)に溶解し、紫外可視分光光度計UV−2550(株式会社島津製作所)を用いてUVスペクトルを測定した。
【0061】
[2]蛍光スペクトルの測定
化合物12を、10μMの濃度で各種溶媒(メタノール、エタノール、2−プロパノール、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、エチレングリコール)に溶解し、蛍光光度計RF−5300PC(株式会社島津製作所)を用いて蛍光スペクトルを測定した。
【0062】
[3]励起スペクトルの測定
化合物12を、10μMの濃度で各種溶媒(メタノール、エタノール、2−プロパノール、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、エチレングリコール)に溶解し、蛍光光度計RF−5300PC(株式会社島津製作所)を用いて励起スペクトルを測定した。
【0063】
測定結果を
図1に示す。なお、化合物12の各溶媒中における最大吸収波長λ
ab.max(nm)、最大蛍光波長λ
max (nm)及び蛍光量子収率Φ
flは、表1に示したとおりである。
【表1】
【0064】
これらの結果に示されるとおり、本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体である化合物12は、周辺の極性環境の違いによって蛍光発光波長を変化させることがわかった。
【実施例5】
【0065】
ホスホロアミダイト体(化合物15)の合成及びオリゴヌクレオチドDNAへの導入
下記スキームに従って、実施例3で得られた本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体(化合物12)をアミダイト化し、DNA鎖に導入した。
【0066】
【化32】
【0067】
化合物13の合成
化合物12(40.0 mg, 0.10 mmol)をDMF(2 ml)に溶解させ、これにN,N−ジ−n−ブチルホルムアミドジメチルアセタール(72 μl, 0.30 mmol)を加えて、80℃の油浴中で2時間反応させた。反応後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムに吸着させ、メタノールークロロホルムの混合溶液で溶出し、化合物13(42.0 mg, 78 %)を得た。
1H-NMR (DMSO-d
6, 400 MHz) δ 0.95 (m, 6H), 1.34 (m, 4H), 1.62 (m, 4H), 2.36 (ddd, J = 4.0, 6.8, 13.2 Hz, 1H), 3.04 (m, 1H), 3.37 (m, 1H), 3.44-3.55 (complex, 3H), 3.62 (m, 2H), 3.92 (m, 1H), 4.51 (m, 1H), 4.75 (m, 1H), 5.30 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 7.44 (m, 1H), 7.56-7.75 (complex, 3H), 7.91-8.03 (complex, 3H), 8.25 (s, 1H), 8.38 (s, 1H), 8.50 (m, 1H), 8.85 (s, 1H);
13C-NMR (DMSO-d
6, 100 MHz) δ 13.6, 13.7, 19.2, 19.6, 28.7, 30.6, 38.2, 44.5, 50.9, 62.5, 71.1, 85.5, 87.9, 89.5, 93.0, 95.2, 115.2, 120.1, 125.7, 125.8, 126.8, 127.5, 128.4, 128.9, 130.4, 132.0, 132.9, 135.2, 142.5, 149.1, 156.3, 157.2
【0068】
化合物14の合成
化合物13(42.0 mg, 7.8×10
-2 mmol)を無水ピリジン(2 ml)に溶解させ、これに4,4’−ジメトキシトリチルクロリド(31.6 mg, 9.3×10
-2 mmol)を加えて、室温で2時間反応させた。反応後、溶媒を留去し、得られた残渣に酢酸エチルを加え、炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、飽和食塩水で1回それぞれ分液操作を行い、有機層を硫酸ナトリウム(無水)で乾燥させた。硫酸ナトリウムをろ過後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムに吸着させ、エタノールークロロホルムの混合溶液で溶出し、化合物14(64.2 mg, 98 %)を得た。
1H-NMR (acetone-d
6, 400 MHz) δ 1.00 (m, 6H), 1.43 (m, 4H), 1.73 (m, 4H), 2.51 (m, 1H), 3.16 (m, 1H), 3.20-3.28 (complex, 2H), 3.53 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 3.68-3.72 (complex, 8H), 4.21 (m, 1H), 4.46 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 4.86 (m, 1H), 6.70 (m, 4H), 7.09-7.41 (complex, 9H), 7.54 (dd, J = 4.0, 6.8 Hz, 1H), 7.56-7.73 (complex, 3H), 7.97-8.01 (complex, 3H), 8.16 (s, 1H), 8.42 (s, 1H), 8.74 (m, 1H), 8.92 (s, 1H);
13C-NMR (acetone-d
6, 100 MHz) δ 14.0, 14.2, 20.4, 20.8, 30.0, 31.9, 39.7, 45.9, 52.4, 55.4 (2C), 65.6, 72.7, 86.5, 86.9, 87.1, 90.7, 93.7, 97.2, 113.7 (4C), 117.0, 122.0, 126.4, 127.2, 127.2, 127.5, 128.1, 128.3 (2C), 129.0 (2C), 129.2, 129.5, 130.8 (2C), 131.0 (2C), 131.3, 133.7, 134.3, 135.9, 136.9, 137.0, 143.9, 146.4, 150.0, 157.1, 158.5, 159.3, 159.4
【0069】
化合物15の合成
化合物14(64.2 mg, 7.8×10
-2 mmol)をアセトニトリル(1 ml)に溶解させ、これにトリエチルアミン(0.5 ml)と2−シアノジイソプロピルクロロホスホロアミジト(150 μl,)を加えて、室温で30分反応させた。反応後、反応溶液に酢酸エチルを加え、炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、飽和食塩水で1回それぞれ分液操作を行い、有機層を硫酸ナトリウム(無水)で乾燥させた。硫酸ナトリウムをろ過後、溶媒を留去し、粗生成物である化合物15を得た。
【0070】
DNA合成
得られた化合物15をアセトニトリル600μlに溶解し、DNA自動合成機(製造元:アプライドバイオシステムズ社、型番:3400 DNAシンセサイザー)を用いてDNA鎖へ導入し、オリゴヌクレオチドDNA(ODN2)を得た。
【実施例6】
【0071】
実施例5で得られたオリゴヌクレオチドDNA(ODN2)について、下記の手順に従い、各種相補鎖(cODN2)とハイブリダイズした後の光学特性を測定した。
【化33】
【0072】
[1]UV吸収スペクトルの測定
実施例5で得られたオリゴヌクレオチドDNAを、0.1Mの濃度でNaClを含む50mMリン酸バッファーに2.5μMの濃度になるように溶解した。これに相補的な配列を有するターゲットDNA(cODN2)を2.5μMの濃度になるように各種加え、紫外可視分光光度計UV−2550(株式会社島津製作所)にてUV吸収スペクトルを測定した。
【0073】
[2]蛍光スペクトルの測定
実施例5で得られたオリゴヌクレオチドDNAを、0.1Mの濃度でNaClを含む50mMリン酸バッファーに2.5μMの濃度になるように溶解した。これに相補的な配列を有するターゲットDNA(cODN2)を2.5μMの濃度になるように各種加え、蛍光光度計RF−5300PC(株式会社島津製作所)にて蛍光スペクトルを測定した。
【0074】
[3]励起スペクトルの測定
実施例5で得られたオリゴヌクレオチドDNAを、0.1Mの濃度でNaClを含む50mMリン酸バッファーに2.5μMの濃度になるように溶解した。これに相補的な配列を有するターゲットDNA(cODN2)を2.5μMの濃度になるように各種加え、蛍光光度計RF−5300PC(株式会社島津製作所)にて励起スペクトルを測定した。
【0075】
測定結果を
図2に示す。なお、最大吸収波長λ
ab.max (nm)、最大蛍光波長λ
max (nm)及び発光波長変化Δλは、表2に示したとおりである。
【表2】
【0076】
これらの結果に示されるとおり、本発明の8−アザ−3,7−ジデアザアデニンヌクレオシド誘導体である化合物12を導入してなるポリヌクレオチド誘導体は、対面塩基によって蛍光発光波長を変化させることがわかった。特に対面塩基が、フルマッチ配列となるチミン塩基の時には長波長側で発光が観察され、波長変化によりチミン塩基の識別が可能である。
【実施例7】
【0077】
実施例5で得られたオリゴヌクレオチドDNA(ODN2)について、下記の手順に従い、DNA高次構造の熱安定性を評価した。
Tm値(融解温度:melting temperature)は、特定の条件下における固有のDNA高次構造の熱安定性の指標である。実施例5で得られたオリゴヌクレオチドDNA(ODN2)に各種相補鎖(N=T,C,G,A)を加えたときのTm値及びその変化量を次の手順に従って測定し、DNA二重らせん構造の熱安定性を評価した。
濃度2.5μMに調製したDNA溶液を8連マイクロセルに移し、紫外可視分光光度計(製造元:島津製作所、型番:UV−2550)を用いて4〜90℃の範囲で測定を行い、中線法を用いてTm値を算出した。また、天然オリゴヌクレオチドDNAのTm値をもとに、変化量を算出した。結果を表3に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
これらの結果に示されるとおり、対面塩基がフルマッチのチミンの時に最も高いTm値が観察され、チミン塩基とのみ安定な塩基対を形成することが示唆された。
【0080】
なお、本測定に用いたオリゴヌクレオチドDNA及び相補鎖DNAの塩基配列を下表に示す。
【表4】