特許第6491493号(P6491493)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491493
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】直鎖状トリシロキサン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/08 20060101AFI20190318BHJP
   C07F 7/12 20060101ALI20190318BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20190318BHJP
【FI】
   C07F7/08 X
   C07F7/12 D
   !C07B61/00 300
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-27799(P2015-27799)
(22)【出願日】2015年2月16日
(65)【公開番号】特開2016-150906(P2016-150906A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2017年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】田中 陵二
(72)【発明者】
【氏名】布川 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】藤原 清貴
【審査官】 阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−13844(JP,A)
【文献】 特開平11−158188(JP,A)
【文献】 特開昭61−167694(JP,A)
【文献】 特開平11−147956(JP,A)
【文献】 Key Engineering Materials,2011年,Vol.459,pp.43-47
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/08
C07F 7/12
C07B 61/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガス及び/又は水素発生剤、並びにレニウム触媒又は白金族遷移金属触媒の存在下、一般式(1)
【化1】
(式中、Rは、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基、又はハロゲン原子若しくは炭素数1〜2のアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表す。複数のRは、同一又は相異なっていてもよい。また、同一のケイ素原子に結合する二つのRは、一体となって炭素数4〜6のアルカンジイル基を形成してもよい)で示される環状トリシロキサンと、一般式(2)
【化2】
(式中、Rは、水素原子;炭素数1〜8のアルキル基;又は炭素数7〜8のアラルキル基を表す。)で示される化合物とを反応させることを特徴とする、一般式(3)
【化3】
(式中、R及びRは前記と同じ意味を表す。)で示される直鎖状トリシロキサン化合物の製造方法。
【請求項2】
が水素原子である、請求項1に記載の直鎖状トリシロキサンの製造方法。
【請求項3】
レニウム触媒又は白金族遷移金属触媒が、炭素に担持された、レニウム単体又は白金族遷移金属単体である請求項1又は2のいずれかに記載の製造方法
【請求項4】
Rがメチル基である請求項1からのいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン高分子材料の前駆体及びゴムコンパウンド用シリカ分散剤として有用な、末端官能性直鎖状トリシロキサン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリシロキサン高分子は一般的にシリコーンと呼ばれ、その耐熱性及び化学的安定性等の利点から、オイル、ゴム、及びレジン等の形態で、産業的に広く利用されている。汎用のポリシロキサンは、入手の容易なモノシラン類の重合反応により製造するのが一般的であるが、その性質が分子構造に強く影響を受ける。そのため、より構造的に規制された低分子量シロキサンモノマーを原料としたシリコーンの分子構造の制御は、機能性発現の上で重要な課題である。また、分子内に水酸基等の反応性官能基を有する低分子量シロキサンは、ゴムコンパウンド用シリカ分散剤や遷移金属錯体などの配位子等に利用可能である。このような目的に供する直鎖状シロキサン類は、物性制御という点から分子量の定まった低分子量の単分散体の使用が特に望ましい。
【0003】
分子鎖両末端に水酸基やアルコキシ基を有するケイ素数が3以上の直鎖状シロキサンの合成に関して、多くの先行研究がなされている。分子鎖両末端に水酸基を有する低分子量直鎖状シロキサンは、両末端に塩素原子を有する直鎖状ジクロロシロキサンの加水分解、又はジクロロモノシランの加水分解/脱水縮合により合成されている(特許文献1)。しかし、この方法では、生成したジヒドロキシ直鎖状シロキサン類が合成条件下で不安定であるため、さらなる縮合反応を起こし、目的とする低分子量直鎖状シロキサン以外に、より高分子量のポリシロキサンや環状シロキサンが副生し、所望とする分子量の直鎖状シロキサンの収率が低いという問題があった。
【0004】
ジアルコキシシランの加水分解により両末端に水酸基を有する低分子量の直鎖状シロキサンの製造方法が、特許文献2に開示されている。この製造方法では両末端に水酸基を有する低分子量の直鎖状シロキサンが得られるものの、依然分子量分散があり、加水分解が完結しなかった両末端にアルコキシ基を有する直鎖状シロキサンが残ってしまうといった問題があった。
【0005】
また、特許文献3では入手の容易な2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシロキサンを、ギ酸等の酸触媒存在下で水と反応させ、両末端に水酸基を有する低分子量の直鎖状トリシロキサンの製造方法が報告されている。これも、生成した両末端に水酸基を有する直鎖状トリシロキサンの収率は高くなく、酸触媒を蒸留または中和処理で取り除く必要がある。また、反応の停止及び除去の容易な酸触媒として、固体酸であるイオン交換樹脂を触媒に用いる製造方法(特許文献4)も報告されているが、やはり反応の選択性は充分ではない。特許文献3では2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシロキサンをギ酸のような酸触媒存在下又は不在下で、アルコール類と反応させ、1−ヒドロキシ−5−アルコキシトリシロキサンを合成する方法が報告されているが、酸を用いない条件下ではメタノールとのみ還流温度下で反応が進行し、メタノール以外のアルコールとの反応では、これも、酸触媒を使用する必要がある。また特許文献5には、酸化ジルコニウム存在下、1,5−ジメトキシへキサメチルトリシロキサンを加水分解することにより、1,5−ジヒドロキシへキサメチルトリシロキサンを反応収率85.2%で製造する方法が記載されている。しかし、この製法における原料物質である1,5−ジヒドロキシへキサメチルトリシロキサンの入手は容易ではなく、コストが高いという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−233179号公報
【特許文献2】特開平8−113649号公報
【特許文献3】米国特許第4,113,690号明細書
【特許文献4】特開2012−140391号公報
【特許文献5】特開平8−239476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、入手容易な環状トリシロキサンを原料として、分子鎖両末端の一方に水酸基、他方に水酸基又はアルコキシ基を有する直鎖状トリシロキサン化合物を、高収率かつ単工程で製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、水素ガス及び/又は水素発生剤、並びにレニウム触媒又は白金族遷移金属触媒の存在下、種々の環状トリシロキサンが水又はアルコールとを反応させることにより、所望の直鎖状トリシロキサン化合物を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、水素ガス及び/又は水素発生剤、並びにレニウム触媒又は白金族遷移金属触媒の存在下、一般式(1):
【0010】
【化1】
(式中、Rは、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基、又はハロゲン原子若しくは炭素数1〜2のアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表す。複数のRは、同一又は相異なっていてもよい。また、同一のケイ素原子に結合する二つのRは、一体となって炭素数4〜6のアルカンジイル基を形成してもよい)で示される環状トリシロキサンと、一般式(2):
【0011】
【化2】
(式中、Rは、水素原子;炭素数1〜8のアルキル基;又は炭素数7〜8のアラルキル基を表す。)で示される化合物を反応させることを特徴とする、一般式(3):
【0012】
【化3】
(式中、R及びRは前記と同じ意味を表す。)で示される直鎖状トリシロキサン化合物の製造方法(以下、本発明の製造方法と称する)に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、ケイ素数が3の、両末端に水酸基及び/又はアルコキシ基を有する直鎖状トリシロキサンを、温和な条件下で選択的に製造することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を更に具体的に説明する。最初に、一般式(1)及び(3)中のRの定義について説明する。Rで表される炭素数1〜8のアルキル基としては、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、ヘプチル基、2−ノルボルニル基、オクチル基などを例示することが出来る。また、これらのアルキル基はハロゲン原子で置換されていてもよい。該ハロゲン原子としてはフッ素原子又は塩素原子が望ましい。具体的には、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、2−フルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2−クロロエチル基、3−フルオロプロピル基、3,3−ジフルオロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル基、3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,7,7,7−ノナフルオロヘキシル基等を例示することが出来る。また、Rで表される炭素数1〜2のアルキル基で置換されてもよいフェニル基としては、具体的には、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−クロロフェニル基、3―クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基等を例示することが出来る。また、Rで表されるケイ素原子上の二つの有機基は互いに結合して2価のアルカンジイル基を形成することも出来る。形成される二価の有機基としては、1,4−ブタンジイル基、1,5−ペンタンジイル基、1−メチル−1,4−ペンタンジイル基、2−メチル−1,4−ペンタンジイル基等を例示することが出来る。
【0015】
本発明の製造方法においては、入手容易な点で、Rはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、又はフェニル基であることが好ましく、メチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基またはフェニル基であることが更に好ましい。
本発明の製造方法の原料として用いることが出来る環状トリシロキサン(1)として、具体的には、2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6−ヘキサエチルシクロトリシロキサン、2,4,6−トリエチル−2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6−ヘキサプロピルシクロトリシロキサン、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリプロピルシクロトリシロキサン、2,2−ジイソプロピル−4,4,6,6−テトラメチルシクロトリシロキサン、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(クロロメチル)シクロトリシロキサン、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(3,3−ジフルオロプロピル)シクロトリシロキサン、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)シクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6−ヘキサキス(3,3,3−トリフルオロプロピル)シクロトリシロキサン、2−フェニル−2,4,4,6,6−ペンタメチルシクロトリシロキサン、2,2−ジフェニル−4,4,6,6−テトラメチルシクロトリシロキサン、2,4,6−トリブチル−2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6−トリヘキシル−2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6−トリオクチル−2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン等を例示することが出来る。これらは、二つの異なる置換基を同一ケイ素原子上に有する場合は立体異性体が存在することがあるが、純粋な異性体を用いてもよく、異性体混合物を用いてもよい。
【0016】
本発明の製造方法では、原料として市販の環状トリシロキサン(1)を用いて実施することが出来る。また、多くの非特許文献に報告されている製造法に準じて製造した環状トリシロキサン(1)を使用することも出来る。環状トリシロキサン(1)の製造法としては、例えば対応するジハロシラン又はジアルコキシシランの加水分解反応、ジクロロシランと酸化亜鉛との反応、ジクロロシランとジメチルスルホキシドとの反応、ポリシロキサン高分子量体のアルカリ金属水酸化物による分解反応、1,3−ジヒドロキシジシロキサンとジハロシランの脱塩化水素縮合反応、1,3−ジハロジシロキサンとシランジオールの脱塩化水素縮合反応等により、当業者であれば容易に製造を達成し得る。
【0017】
次に、Rの定義について説明する。Rは、水素原子;炭素数1〜8のアルキル基;又は炭素数7〜8のアラルキル基を表す。製造品の収率および純度が高い点で、Rは水素原子が好ましい。Rが水素、すなわち水を用いた製造方法では、イオン交換水、蒸留水、水道水などの形態が利用可能である。特に限定されるわけではないが、不純物のイオン性化合物の混入が影響を及ぼすことがあるため、蒸留水又はイオン交換水が好ましい。環状トリシロキサン(1)に対する水の化学当量としては、1〜10000倍までが好ましく、高分子量生成物の生成を避けるため、及び、有機溶媒との混和性のため、2〜10当量が更に好ましい。また、本発明の製造方法に用いることが出来るアルコール(2)は、炭素数1〜8のアルキル基のアルコールである。R−OHのアルキルアルコールとしては、直鎖構造又は分枝構造のいずれでもよく、具体的には、メタノール、エタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、プロピルアルコール、2−プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール等を例示することが出来る。好ましいアルコールは、炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基を有するアルコールであり、メタノール、エタノール又はプロパノールが更に好ましい。本発明の製造方法において化合物(2)としてアルコールを用いる場合には、脱水処理をしたアルコールを用いるのが好ましい。環状トリシロキサン(1)に対するアルコールの化学当量としては、1〜10000当量の範囲が好ましく、1〜50当量が更に好ましい。
【0018】
本発明の製造方法は、レニウム触媒又は白金族遷移金属触媒の存在下で実施するのが必須である。本発明の製造方法において用いることが出来るレニウム触媒又は白金族遷移金属触媒としては、水素ガス及び/又は水素発生剤の存在下、環状トリシロキサン(1)の開環反応を促進する触媒であればよく、具体的な例としては、担体にレニウム単体または白金族遷移金属単体を担持させた担持系触媒、及び均一系白金族遷移金属錯体触媒が挙げられる。取り扱いが容易な点で、担持系触媒が好ましい。担持系触媒における白金族遷移金属単体としては、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム及びルテニウムを例示することが出来る。該担持系触媒において、担体として具体的には、シリカ、アルミナ、珪藻土、活性白土、活性炭素、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を例示することが出来、活性炭素が好ましい。担持系触媒としては、反応速度、収率及び純度、価格、ろ過による分離及び触媒の回収再利用が可能であるという点から、パラジウム活性炭素が更に好ましい。パラジウム活性炭素を用いる場合、パラジウムを1〜10重量%含有するものが好適である。また、均一系白金族遷移金属錯体触媒としては、オレフィンやホスフィンなどの中性配位子が配位した白金族遷移金属錯体が使用出来る。具体的にはトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(シクロオクタジエン)白金等が例示出来る。本発明の製造方法におけるレニウム触媒又は白金族遷移金属触媒の使用量は、触媒に含まれるレニウム又は白金族遷移金属が環状トリシロキサン(1)1モルに対して通常0.01〜1000ミリモル、好ましくは0.5〜50ミリモルが好ましい。
【0019】
本発明の製造方法は、水素ガス及び/又は水素発生剤存在下で実施することが必須である。水素発生剤の例としては、レニウム触媒又は白金族遷移金属触媒の作用により水素ガスを発生する水素発生剤などを挙げることが出来る。具体的な水素発生剤の例としては、ヒドロシラン類などの水素化物や、シクロヘキサジエンなど環状オレフィンなどの公知の水素発生剤が挙げられ、これらの中から適宜選択して用いることが出来る。化合物(2)として第一級または第二級アルコールを用いる場合には、レニウム触媒又は白金族遷移金属触媒を適宜選択することにより、化合物(2)を水素発生剤として用いることも可能である。用いることが出来るアルコールの例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、sec−ブチルアルコールなどを例示することが出来る。水素発生剤としては、ヒドロシラン類及びシクロヘキサジエンが収率の良い点で好ましく、例えば1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ジヒドロトリシロキサンや1,4−シクロヘキサジエンなどが好適に使用できる。収率や選択性が良く、除去の容易な点から、水素ガス存在下で実施することが好ましい。水素ガス存在下で実施する場合には、必要に応じて窒素ガス、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの不活性ガスで希釈した水素ガスを反応雰囲気として用いることが出来る。水素ガスの圧力は10kPa−100MPaの範囲から選ばれ、好ましくは10kPa−10MPa、より好ましくは大気圧である。反応雰囲気における水素ガスの分率は、0.01−1.0の範囲の中から選ばれ、操作の容易な点では1.0が好ましい。
【0020】
反応温度には特に制限はなく、当業者が水酸基を有するシロキサンを製造するときの一般的な温度条件を用いることが出来る。具体例としては、−10℃から80℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において直鎖状トリシロキサン化合物(3)を収率良く得ることが出来る。収率、安全性及び操作性の点から、0〜30℃の範囲から選ばれる実施温度が好ましい。反応時間は、反応の進行を機器分析により確認することによって適宜選択されるが、10分間から300時間の範囲から適宜選択した反応時間で実施することが好ましい。
【0021】
本発明の製造方法は、収率が良い点で有機溶媒中において実施するのが好ましい。使用可能な有機溶媒は、反応を阻害しないものであれば制限は無く、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類を例示することが出来る。これら有機溶媒は、一種類を単独で用いることも、複数種を任意の割合で混合して用いることも出来る。収率が良く反応時間が短い点で、有機溶媒としてはエーテル類が好ましく、ジエチルエーテル及びTHFが好ましく、THFが更に好ましい。また、環状トリシロキサン(1)とアルコールとの反応による実施の場合、過剰にアルコール化合物を用いれば、有機溶媒を用いずともよい。
【0022】
本発明の製造方法では、環状トリシロキサン(1)と水を用いた場合はRが水素原子、すなわち両末端に水酸基を有するトリシロキサン−1,5−ジオールを製造することが出来、アルコールを用いた場合は1−アルコキシ−5−ヒドロキシトリシロキサンを製造することが出来る。
【0023】
本発明の製造方法で製造可能な直鎖状トリシロキサン化合物(3)として具体的には、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン−1、5−ジオール、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチルトリシロキサン−1、5−ジオール、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリエチルトリシロキサン−1、5−ジオール、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピルトリシロキサン−1、5−ジオール、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリプロピルトリシロキサン−1,5−ジオール、1,1,3,3−テトラメチル−5,5−ジイソプロピルトリシロキサン−1、5−ジオール、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジイソプロピルトリシロキサン−1、5−ジオール、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリス(クロロメチル)トリシロキサン−1、5−ジオール、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリス(3,3−ジフルオロプロピル)トリシロキサン−1、5−ジオール、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリシロキサン−1、5−ジオール、1,1,3,3,5,5−ヘキサキス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリシロキサン−1、5−ジオール、1,1,3,3,5−ペンタメチル−5−フェニルトリシロキサン−1、5−ジオール、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルトリシロキサン−1、5−ジオール、1,1,3,5,5−ペンタメチル−3−フェニルトリシロキサン−1、5−ジオール、1,1,3,3−テトラメチル−5,5−ジフェニルトリシロキサン−1、5−ジオール、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニルトリシロキサン−1、5−ジオール、1,3,5−トリブチル−1,3,5−トリメチルトリシロキサン−1、5−ジオール、1,3,5−トリヘキシル−1,3,5−トリメチルトリシロキサン−1、5−ジオール、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリオクチルトリシロキサン−1、5−ジオール、1−ヒドロキシ−5−メトキシ−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−メトキシ−1,1,3,3,5,5−ヘキサエチルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−メトキシ−1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリエチルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−メトキシ−1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−メトキシ−1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリプロピルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−メトキシ−1,1,3,3−テトラメチル−5,5−ジイソプロピルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−メトキシ−1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジイソプロピルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−メトキシ−1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリス(クロロメチル)トリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−メトキシ−1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリス(3,3−ジフルオロプロピル)トリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−メトキシ−1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−メトキシ−1,1,3,3,5,5−ヘキサキス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−メトキシ−1,1,3,3,5−ペンタメチル−5−フェニルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−メトキシ−1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−メトキシ−1,1,3,5,5−ペンタメチル−3−フェニルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−メトキシ−1,1,3,3−テトラメチル−5,5−ジフェニルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−メトキシ−1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−メトキシ−1,3,5−トリブチル−1,3,5−トリメチルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−メトキシ−1,3,5−トリヘキシル−1,3,5−トリメチルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−メトキシ−1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリオクチルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−エトキシ−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−エトキシ−1,1,3,3,5,5−ヘキサエチルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−エトキシ−1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリエチルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−エトキシ−1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−エトキシ−1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリプロピルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−エトキシ−1,1,3,3−テトラメチル−5,5−ジイソプロピルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−エトキシ−1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジイソプロピルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−エトキシ−1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリス(クロロメチル)トリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−エトキシ−1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリス(3,3−ジフルオロプロピル)トリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−エトキシ−1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−エトキシ−1,1,3,3,5,5−ヘキサキス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−エトキシ−1,1,3,3,5−ペンタメチル−5−フェニルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−エトキシ−1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−エトキシ−1,1,3,5,5−ペンタメチル−3−フェニルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−エトキシ−1,1,3,3−テトラメチル−5,5−ジフェニルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−エトキシ−1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−エトキシ−1,3,5−トリブチル−1,3,5−トリメチルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−エトキシ−1,3,5−トリヘキシル−1,3,5−トリメチルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−エトキシ−1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリオクチルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−プロピルオキシ−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−イソプロピルオキシ−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1−ヒドロキシ−5−ブトキシ−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン等を例示することが出来る。
【0024】
本発明の製造方法では中和工程は不必要であり、ろ過、濃縮及び減圧下で乾燥させる工程を経ることにより、副生物のごく少ない目的物を得ることが出来る。さらに純度を高める必要がある場合は、当業者が水酸基置換シロキサン若しくはアルコキシ基置換シロキサンを精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することが出来る。具体的な精製方法としては、ろ過、抽出、蒸留、昇華、再結晶、順相・逆相液体クロマトグラフィーによる分取などを例示することが出来る。
本発明の製造方法では、複数のRが相異なった有機基の場合、2種以上の幾何異性体混合物として直鎖状シロキサン化合物(3)を生じることがある。これらの幾何異性体は、液体クロマトグラフィー分取などの当業者が通常用いる技術手段によって分離が可能であり、また、特に問題ない場合は異性体混合物のまま使用に供してもよい。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
【実施例1】
【0026】
【化4】
撹拌子及び三方コックを備えた1L3口フラスコに、2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシロキサン(ゲレスト社製)80.0g(360mmol)、パラジウム活性炭素(エヌ・イー・ケムキャット社製、乾燥品、5wt%Pd)16.8g(3.60mmolPd)、THF800mL(関東化学株式会社製、特級、安定剤不含)及び蒸留水64.8g(3.60mol)を収めた。反応装置を穏やかに減圧にした後、風船から供給した水素ガスで置換し、1気圧の水素ガス雰囲気で25℃で4時間撹拌した。反応装置内をアルゴンで置換して、反応混合物中の不溶物をガラスフィルターを用いてろ別した。ろ液をロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、得られた無色油状物を減圧下で2時間乾燥させることにより、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン−1,5−ジオールを、無色の液体として78.1g(収率90.3%)得た。H−NMRより求めた純度は97%であった。
EI−MS(70eV)m/z(%)225(2,[M−Me]),207(100),193(14);H−NMR(400MHz,CDCl)δ0.11(s,6H),0.15(s,12H),4.06(s,2H);13C−NMR(101MHz,CDCl)δ0.35,0.85;29Si−NMR(79MHz,CDCl)δ−19.4、−9.8;IR(neat,cm−1)3265,2964,1257,1016,885,856,794.
【実施例2】
【0027】
【化5】
撹拌子及び三方コックを備えた100mL3口フラスコをアルゴンで置換し、2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシロキサン(ゲレスト社製)2.22g(10.0mmol)、白金/炭素(エヌ・イー・ケムキャット社製、乾燥品、5wt%Pt)390mg(0.1mmolPt)、THF20mL及び蒸留水1.80g(100mmol)を収めた。反応装置を穏やかに減圧にした後、風船から供給した水素ガスで置換し、1気圧の水素ガス雰囲気で25℃で4時間撹拌した。反応装置内をアルゴンで置換して、反応混合物中の不溶物をガラスフィルターを用いてろ別した。ろ液をロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、得られた無色油状物を減圧下で2時間乾燥させることにより、目的とする1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン−1,5−ジオールを、無色の液体として2.16g(収率90.0%)得た。
【実施例3】
【0028】
【化6】
撹拌子及び三方コックを備えた300mL3口フラスコをアルゴンで置換し、2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシロキサン(ゲレスト社製)2.18g(9.79mmol)、レニウム活性炭素(アルドリッチ社製、含水、5wt%Re)411mg(0.100mmolRe)、THF20mL及び蒸留水1.86g(103mmol)を収めた。反応装置を穏やかに減圧にした後、風船から供給した水素ガスで置換し、1気圧の水素ガス雰囲気で25℃で7時間撹拌した。反応装置内をアルゴンで置換して、反応混合物中の不溶物をガラスフィルターを用いてろ別した。ろ液をロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、得られた無色油状物を減圧下で2時間乾燥させることにより、目的とする1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン−1,5−ジオールを、無色の液体として2.15g(収率91.3%)得た。
【実施例4】
【0029】
【化7】
撹拌子及び三方コックを備えた100mL2口フラスコをアルゴンで置換し、2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシロキサン(ゲレスト社製)2.23g(10.0mmol)、ロジウム活性炭素(岩井化学薬品社製、乾燥品、5wt%Rh)214mg(0.100mmolRh)、THF20mL及び蒸留水1.90g(105mmol)を収めた。反応装置を穏やかに減圧にした後、風船から供給した水素ガスで置換し、1気圧の水素ガス雰囲気で25℃で18時間撹拌した。反応装置内をアルゴンで置換して、反応混合物中の不溶物をガラスフィルターを用いて減圧ろ別した。ろ液をロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、得られた無色油状物を減圧下で2時間乾燥させることにより、目的とする1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン−1,5−ジオールを、無色の液体として2.08g(収率86.5%)得た。
【実施例5】
【0030】
【化8】
撹拌子及び三方コックを備えた100mL2口フラスコをアルゴンで置換し、2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシロキサン(ゲレスト社製)2.22g(10.0mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(東京化成株式会社製)229mg(0.500μmol)、THF20mL及び蒸留水1.90g(105mmol)を収めた。反応装置を穏やかに減圧にした後、風船から供給した水素ガスで置換し、1気圧の水素ガス雰囲気で25℃で48時間撹拌した。反応装置内をアルゴンで置換して、反応混合物中の不溶物をセライトを敷いたガラスフィルターを用いて減圧ろ別した。ろ液をロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、得られた無色油状物を減圧下で2時間乾燥させることにより、目的とする1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン−1,5−ジオールを、無色の液体として2.19g(収率91.3%)得た。
【実施例6】
【0031】
【化9】
撹拌子及び三方コックを備えた30mL2口フラスコに、2,2,4,4,6,6−ヘキサエチルシクロトリシロキサン1.02g(3.33mmol)、パラジウム活性炭素(エヌ・イー・ケムキャット社製)347mg(5wt%Pd、3.60mmolPd)、THF20mL及び蒸留水589mg(32.7mmol)を収めた。反応装置を減圧後、風船から供給した水素ガスで置換し、水素ガス雰囲気で25℃で12日間撹拌した。反応装置内をアルゴンで置換して、反応混合物中の不溶物をセライトを敷いたガラスフィルターを用いてろ別した。これを濃縮後減圧下で2時間乾燥させることにより、目的とする1,1,3,3,5,5−ヘキサエチルトリシロキサン−1,5−ジオールを、無色の液体として1.08g(収率91.5%)得た。
MS(EI,70eV)m/z(%)295(19,[M−Et]),277(100),249(96),221(72);H−NMR(400MHz,acetone−d)δ0.544(q,8H,J=8.0Hz),0.548(q,4H,J=8.0Hz),0.975(t,18H,J=8.0Hz),5.133(s,2H);IR(neat,cm−1)3340,2958,2879,1458、1240,1063,1001,850,741,696.
【実施例7】
【0032】
【化10】
撹拌子及び三方コックを備えた100mL3口フラスコに、2,4,6−トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)−2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン0.982g(アズマックス社製,2.13mmol)、パラジウム活性炭素(エヌ・イー・ケムキャット社製)1.25g(5wt%Pd、0.585mmolPd)、THF20mL及び蒸留水420mg(23.3mmol)を収めた。反応装置を減圧後、風船から供給した水素ガスで置換し、水素ガス雰囲気で25℃で6日間撹拌した。反応装置内をアルゴンで置換して、反応混合物中の不溶物をセライトを敷いたガラスフィルターを用いてろ別した。ろ液をロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、得られた無色油状物を減圧下で2時間乾燥させることにより、目的とする1,3,5−トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,3,5−トリメチルトリシロキサン−1,5−ジオールを、無色の液体として0.920g(収率90.2%)得た。これは、2種類のジアステレオマー混合物であった。
MS(EI,70eV)m/z(%)237(100),219(27),215(93),159(45),157(32),137(90),109(35);H−NMR(400MHz,acetone−d)δ0.174(異性体1,Si−Me,s,6H),0.177(異性体2,Si−Me,s,6H),0.213(異性体1+2,Si−Me,s,6H),0.75−0.85(異性体1+2,Si−CH,m,6H),2.15−2.32(異性体1+2,CH,m,6H),4.295(s,2H);IR(neat,cm−1)3278,2972,1369,1315,1263,1205,1122,1063,1022,897,798.
【実施例8】
【0033】
【化11】
撹拌子及び三方コックを備えた200mL3口フラスコをアルゴンで置換し、これに、2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシロキサン(ゲレスト社製)2.24g(10.1mmol)、パラジウム/炭素(エヌ・イー・ケムキャット社製)215mg(5wt%Pd、乾燥品、0.101mmolPd)、THF50mL及び蒸留水1.80g(100mol)を収めた。溶液に、注射器より1,4−ヘキサジエン0.805g(10.1mmol)をゆっくり加え、25℃で24時間撹拌した。反応装置内をアルゴンで置換して、反応混合物中の不溶物をガラスフィルターを用いてろ別した。これを濃縮後、減圧下で2時間乾燥させることにより、目的とする1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン−1,5−ジオールを、無色の液体として1.63g(収率67.1%)得た。
【実施例9】
【0034】
【化12】
撹拌子及び三方コックを備えた200mL3口フラスコをアルゴンで置換し、これに、2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシロキサン(ゲレスト社製)2.23g(10.0mmol)、パラジウム活性炭素(エヌ・イー・ケムキャット社製)223mg(5wt%Pd、乾燥品、0.105mmolPd)、THF50mL及び蒸留水3.60g(200mmol)を収めた。溶液に、注射器より1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン2.21g(10.6mmol)をゆっくり加え、25℃で69時間撹拌した。反応装置内をアルゴンで置換して、反応混合物中の不溶物をガラスフィルターを用いてろ別した。これを濃縮後、減圧下で2時間乾燥させることにより、目的とする1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン−1,5−ジオールを、無色の液体として4.16gを得た。1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ジヒドロトリシロキサン由来の1,1,3,3,5,5−トリシロキサンジオールの生成分を減じて計算した反応の収率は83.9%であった。
【参考例1】
【0035】
【化13】
撹拌子及びジムロ−ト冷却管を備えた500mL2口フラスコをアルゴンで置換し、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン2.72g(東京化成株式会社製、20.2mmol)、ジイソプロピルシランジオール3.00g(20.2mmol)及び脱水ヘキサン300mLを収め、ここにゆっくりとトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン6.8mg(0.686mmol)のトルエン2mL溶液を加えた。反応混合物を25℃で1時間撹拌し、反応終了をガスクロマトグラフィーで確認した。ロ−タリーエバポレーターを用いて減圧下で溶媒を留去し、これをクーゲルロ−ル蒸留装置を用いて減圧蒸留(蒸留温度100℃/3.3kPa)することにより、2,2−ジイソプロピル−4,4,6,6−テトラメチルシクロトリシロキサンを無色液体として4.07g(収率:72%,GC純度:95%)得た。
EI−MS(70eV)m/z(%)278(M,1),263(5),235(96),207(81),193(100);H−NMR(400MHz,CDCl)0.18(s,12H),0.88〜1.00(m,2H),1.01(d,12H,J=7.3Hz);13C−NMR(CDCl)−0.89,12.8,16.6;29Si−NMR(79MHz,CDCl)−11.1、−8.8:IR(cm−1)2960,2868,1466,1257,1003,800,677,631.
【実施例10】
【0036】
【化14】
撹拌子及びジムロ−ト冷却管を備えた100mLの3口フラスコをアルゴンで置換し、2,2−ジイソプロピル−4,4,6,6−テトラメチルシクロトリシロキサン1.02g(3.59mmol)、パラジウム活性炭素(エヌ・イー・ケムキャット社製)759mg(5wt%Pd、乾燥品、0.359mmolPd)及び脱水テトラヒドロフラン10mLを収めた。反応容器を減圧後、1気圧の水素ガスで置換し、25℃で24時間撹拌した。反応装置内をアルゴンで置換して、反応混合物中の不溶物をガラスフィルターを用いてろ別した。これを減圧下で濃縮後、クーゲルロール蒸留装置を用いて減圧下で蒸留(蒸留温度60℃/50Pa)することにより、トリシロキサン留分を無色液体として0.635g(収率:58%)得た。これを核磁気共鳴分光装置により分析したところ、3,3−ジイソプロピル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン−1,5−ジオール及び1,1−ジイソプロピル−3,3,5,5−テトラメチルトリシロキサン−1,5−ジオールの1:2混合物であった。
EI−MS(70eV)m/z(異性体混合物、相対強度)281([M−Me],1.8),263(14),235(64),207(68),193(100);H−NMR(3,3−ジイソプロピル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン−1,5−ジオール,400MHz,CDCl)δ0.130(s,12H),0.78〜0.92(m,2H),0.952(d,12H,J=6.9Hz),3.178(s,2H);13C−NMR(100MHz,CDCl)1.04,13.23,17.13;H−NMR(1,1−ジイソプロピル−3,3,5,5−テトラメチルトリシロキサン−1,5−ジオール,400MHz,CDCl)δ0.094(s,6H),0.110(s,6H),0.78〜0.92(m,2H),0.982(d,6H,J=7.0Hz),0.987(d,6H,J=7.2Hz),3.178(s,2H);13C−NMR(100MHz,CDCl)0.57,0.64,13.14,17.16.
【実施例11】
【0037】
【化15】
撹拌子及びジムロ−ト冷却管を備えた100mLの3口フラスコをアルゴンで置換し、2,2−ジフェニル−4,4,6,6−テトラメチルシクロトリシロキサン1.00g(2.89mmol)、パラジウム活性炭素(エヌ・イー・ケムキャット社製)618mg(5wt%Pd、乾燥品、0.290mmolPd)及び脱水テトラヒドロフラン15mLを収めた。反応容器を減圧後、1気圧の水素ガスで置換し、25℃で22時間撹拌した。反応装置内をアルゴンで置換して、反応混合物中の不溶物をガラスフィルターを用いてろ別した。これを減圧下で濃縮することにより、トリシロキサンを無色液体として1.04g(収率:98%)得た。これを核磁気共鳴分光装置により分析したところ、3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン−1,5−ジオール及び1,1−ジジフェニル−3,3,5,5−テトラメチルトリシロキサン−1,5−ジオールの1:2混合物であった。
EI−MS(70eV)m/z(異性体混合物、相対強度)346(8),287(22),269(36),253(89),193(100);H−NMR(400MHz,CDCl)δ0.077(s,16H),0.15(s,16H)0.17(s,12H)7.40(m,28H),7.65(m,19H);13C−NMR(100MHz,CDCl)0.17,0.33,0.91,0.98,127.8,130.1,134.3;;29Si−NMR(79MHz,CDCl)−37.8,−18.2,−9.6,−8.4,−6.7;IR(neat,cm−1)3176,3070,2960,1429,1259,1007,995,802,698.
【実施例12】
【0038】
【化16】
撹拌子及び三方コックを備えた1L3口フラスコに、2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシロキサン80.0g(0.360mol)、パラジウム活性炭素(エヌ・イー・ケムキャット社製)6.90g(5wt%Pd、乾燥品、3.24mmolPd)、脱水THF(関東化学株式会社製)600mL及び脱水メタノ−ル(関東化学株式会社製)252mL(6.22mol)を収めた。反応装置を減圧後、風船から供給した水素ガスで置換し、水素ガス雰囲気で25℃で24時間撹拌した。装置内をアルゴンで置換し、反応混合物中の不溶物を焼結ガラスフィルターを用いてろ別した。得られたろ液をモレキュラーシーブス3Aを用いて乾燥させた。これを吸引ろ過後、ロータリーエバポレーターで濃縮し、得られた反応混合物をクーゲルロール蒸留装置を用いて減圧蒸留(蒸留温度55℃/70Pa)を行うことにより、1−ヒドロキシ−5−メトキシ−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン及び1,5−ジメトキシ−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサンの約1:1混合物を無色透明液体として40.2g(収率42.6%)得た。
EI−MS(70eV),m/z(%);253([M−CH),223,207([C15Si),193;H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm)0.111([Si−CH]、モノメトキシモノヒドロキシトリシロキサン、ジメトキシトリシロキサンの重なり合ったシグナル),0.118([Si−CH]、ジメトキシトリシロキサン),0.128([Si−CH]、モノメトキシモノヒドロキシトリシロキサン),0.1407([Si−CH]、モノメトキシモノヒドロキシトリシロキサン),3.483([CH−O]、ジメトキシトリシロキサン),3.488([CH−O]、モノメトキシモノヒドロキシトリシロキサン)
【実施例13】
【0039】
【化17】
撹拌子及び三方コックを備えた100mL3口フラスコに、2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシロキサン1.13g(5.06mmol)、パラジウム活性炭素(エヌ・イー・ケムキャット社製)0.107g(5wt%Pd、乾燥品、0.050mmolPd)及びヘキサノール(関東化学株式会社製)5.13g(50.2mmol)を収めた。反応装置を減圧後、風船から供給した水素ガスで置換し、水素ガス雰囲気で25℃で101時間撹拌した。装置内をアルゴンで置換し、反応混合物中の不溶物を焼結ガラスフィルターを用いてろ別した。これを吸引ろ過後、ロータリーエバポレーターで濃縮し、得られた反応混合物をクーゲルロール蒸留装置を用いて減圧下で過剰のアルコールを留去することにより、1−ヒドロキシ−5−ヘキシルオキシ−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン及び1,5−ビス(ヘキシルオキシ)−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサンの約1:1混合物を無色透明液体として0.386g(収率38.9%)得た。
1−ヒドロキシ−5−ヘキシルオキシ−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン:EI−MS(70eV),m/z(%);225(29),207(100),193(7);H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm)0.120(s,6H),0.135(s,6H),0.153(s,6H),0.869-0.903(m,3H),1.26-1.35(m,6H),1.51-1.58(m,2H),3.63-3.67(m,2H);29Si−NMR(79MHz,CDCl)δ−19.9,11.2,10.1;IR(neat,cm−1)3330,2960,2930,1260,1040,890.
1,5−ビス(ヘキシルオキシ)−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン:EI−MS(70eV),m/z(%);307(5),225(100),207(92);H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm)0.097(s,12H),0.102(s,6H),0.869-0.903(m,6H),1.26-1.35(m,12H),1.51-1.58(m,4H),3.63-3.67(m,4H);29Si−NMR(79MHz,CDCl)δ−21.5,−12.8.
【実施例14】
【0040】
【化18】
撹拌子及び三方コックを備えた100mL3口フラスコに、2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシロキサン1.13g(5.06mmol)、パラジウム活性炭素(エヌ・イー・ケムキャット社製)0.106g(5wt%Pd、乾燥品、0.050mmolPd)及びオクタノール(関東化学株式会社製)6.53g(50.1mmol)を収めた。反応装置を減圧後、風船から供給した水素ガスで置換し、水素ガス雰囲気で25℃で97時間撹拌した。装置内をアルゴンで置換し、反応混合物中の不溶物を焼結ガラスフィルターを用いてろ別した。これを吸引ろ過後、ロータリーエバポレーターで濃縮し、得られた反応混合物をクーゲルロール蒸留装置を用いて減圧下で過剰のアルコールを留去することにより、1−ヒドロキシ−5−オクチルオキシ−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン及び1,5−ビス(オクチルオキシ)−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサンの約32:68混合物を無色透明液体として0.798g(収率49.9%)得た。
1−ヒドロキシ−5−オクチルオキシ−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン:EI−MS(70eV),m/z(%);225(41),223(33),207(100).H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.120(s,6H),0.135(s,6H),0.153(s,6H),0.869-0.903(m,3H),1.26-1.35(m,6H),1.51-1.58(m,2H),3.63-3.67(m,2H).29Si−NMR(79MHz,CDCl)δ−19.9,11.2,10.1;IR(neat,cm−1)3330,2960,2930,1260,1040,890.
1,5−ビス(オクチルオキシ)−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン:EI−MS(70eV),m/z(%);449(1),335(8),225(100),207(66),193(12);H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm)0.854-0.888(m,3H),1.27-1.28(m,10H),1.50-1.57(m,2H),3.62-3.66(m,2H);29Si−NMR(79MHz,CDCl)δ−21.5,−12.8.
【実施例15】
【0041】
【化19】
撹拌子及び三方コックを備えた100mL3口フラスコに、2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシロキサン1.12g(5.04mmol)、パラジウム活性炭素(エヌ・イー・ケムキャット社製)0.105g(5wt%Pd、乾燥品、0.050mmolPd)及びデカノール(関東化学株式会社製)7.92g(50.0mmol)を収めた。反応装置を減圧後、風船から供給した水素ガスで置換し、水素ガス雰囲気で25℃で150時間撹拌した。装置内をアルゴンで置換し、反応混合物中の不溶物を焼結ガラスフィルターを用いてろ別した。これを吸引ろ過後、ロータリーエバポレーターで濃縮し、得られた反応混合物をクーゲルロール蒸留装置を用いて減圧下で過剰のアルコールを留去することにより、1−ヒドロキシ−5−デシルオキシ−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン及び1,5−ビス(デシルオキシ)−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサンの約44:55混合物を無色透明液体として0.646g(収率44.8%)得た。
1−ヒドロキシ−5−デシルオキシ−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン:EI−MS(70eV),m/z(%);225(52),207(100),193(19);H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.102(s,6H),0.111(s,6H),0.135(s,6H),0.861-0.895(m,3H),1.26-1.35(m,10H),1.54-1.56(m,2H),3.62-3.65(m,2H).29Si−NMR(79MHz,CDCl)δ−19.9,11.1,10.0;IR(neat,cm−1)3380,2960,2920,1260,1080,1040,800.
1,5−ビス(デシルオキシ)−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン:EI−MS(70eV),m/z(%);505(0.6),363(7),225(100),207(53),193(9);H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm)0.0960(s,18H),0.854-0.888(m,6H),1.27-1.28(m,10H),1.50-1.57(m,2H),3.62-3.66(m,3H);29Si−NMR(79MHz,CDCl)δ-21.5,-12.8.
【実施例16】
【0042】
【化20】
撹拌子及び三方コックを備えた50mL2口フラスコに、2,2,4,4,6,6−ヘキサエチルシクロトリシロキサン0.988g(3.23mol)、パラジウム活性炭素(エヌ・イー・ケムキャット社製)69.3mg(5wt%Pd、乾燥品、0.032mmolPd)及び脱水メタノ−ル(関東化学株式会社製)5.02g(157mmol)を収めた。反応装置を減圧後、風船から供給した水素ガスで置換し、水素ガス雰囲気で25℃で240時間撹拌した。装置内をアルゴンで置換し、反応混合物中の不溶物を焼結ガラスフィルターを用いてろ別した。これをロータリーエバポレーターで濃縮し、得られた反応混合物を減圧下で乾燥させることにより、1−ヒドロキシ−5−メトキシ−1,1,3,3,5,5−ヘキサエチルトリシロキサンを無色透明液体として1.05g(収率96.3%)得た。
EI−MS(70eV),m/z(%);323([M−Et],100),293(21);H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm)0.51−0.64(m,12H),0.94−1.03(m,18H),2.83(s,1H),3.50(s,3H),
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の製造方法は、ゴムコンパウンドを製造する際のシリカ分散剤である両末端にシラノール基を有する直鎖状トリシロキサンを簡便に製造するのに有用である。また、本発明によって得られる末端官能性直鎖トリシロキサンは、他の官能性直鎖又は環状シロキサンを簡便に製造する前駆体として有用である。