特許第6491497号(P6491497)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491497
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20160101AFI20190318BHJP
【FI】
   H02P29/00
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-37228(P2015-37228)
(22)【出願日】2015年2月26日
(65)【公開番号】特開2016-163370(P2016-163370A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2018年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100108394
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100101063
【弁理士】
【氏名又は名称】松丸 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100114546
【弁理士】
【氏名又は名称】頭師 教文
(74)【代理人】
【識別番号】100153903
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100162330
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 幹規
(72)【発明者】
【氏名】大石 潔
(72)【発明者】
【氏名】横倉 勇希
(72)【発明者】
【氏名】関 喜亮
(72)【発明者】
【氏名】井出 勇治
(72)【発明者】
【氏名】倉石 大悟
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】平出 敏雄
【審査官】 田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−299277(JP,A)
【文献】 特開平08−066893(JP,A)
【文献】 特開2009−296752(JP,A)
【文献】 特開平11−285283(JP,A)
【文献】 特開2003−009564(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0265962(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 4/00,6/00−6/34,
21/00−25/03,25/04,
25/08−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータのコギングトルクによるトルク変動に対応するデータを記憶した補償データ記憶部から、モータの位置に応じたコギングトルク推定値を算出し、算出したコギングトルク推定値に基づいて外乱抑圧補償を行う外乱オブザーバを備えたものであって、
前記外乱オブザーバは、
前記補償データ記憶部からコギングトルク推定値を算出するコギングトルク推定値算出部と、
前記コギングトルク推定値算出部により算出されたコギングトルク推定値をノミナルイナーシャにより第1速度を算出する第1速度算出部と、
モータ速度から前記第1速度算出部により算出された前記第1速度を減算して、コギングトルク推定値を除いた第2速度を算出する第2速度算出部と、
前記第2速度算出部により算出された第2速度に基づいて、コギングトルク推定値を除いた外乱トルク推定値を算出する外乱トルク推定値算出部と、
前記外乱トルク推定値算出部により算出された外乱トルク推定値と、前記コギングトルク推定値算出部により算出されたコギングトルク推定値とを加算することにより全外乱トルクを算出する全外乱トルク算出部と、
を備えたことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
前記外乱オブザーバは、下記の式に基づいた等価回路によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
TD^=gd/(s+gd)[Tcmd−Jn{ωm+TR^/(Jn・s)・s}]+TR^
ただし、TD^:全外乱トルク推定値、TR^:コギングトルク推定値、Jn:イナーシャノミナル値、ωm:モータ速度、Tcmd:トルク指令、gd:ローパスフィルタのカットオフ周波数
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの外乱の推定と抑圧を行うモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械では、微細加工などの要求から、さらに加工品質を高める必要があり、モータ駆動の高精度化が求められている。また、サイクルタイムの短縮のために、位置決め時間の短縮が求められている。
【0003】
一方、モータの小型化も求められており、モータを小型化した場合に、モータの構造の制約からコギングトルクが大きくなる場合がある。こういったコギングトルクによるトルクリップルは、工作加工時に外乱として働き、被加工物の表面精度を低下させたり、位置決め時に外乱として働き、位置偏差の変動を生じさせたりしてしまう。この位置偏差の変動は、位置決め時間を遅らせ、機械のサイクルタイムを長くしてしまう。また、機械系には摩擦が存在し、こういった摩擦も加工精度を低下させたり、位置決めを遅らせたりする要因になる。
【0004】
図5は、こうした外乱を抑制する従来の外乱オブザーバの構成図である。従来の外乱オブザーバでは、トルク指令と、モータ速度を元にローパスフィルタを通して負荷トルクを推定している。しかしながら、微分演算によるノイズ除去のために挿入されているローパスフィルタにより推定値の減衰及び位相ずれが生じ、トルクリップルに対する適切な補償が行えないという問題がある。
【0005】
このような外乱オブザーバの高応答化を行った例として特許文献1がある。特許文献1には、外乱トルクを推定するオブザーバと、トルクコマンドを推定した外乱トルクで補正する補正手段とを備えたサーボモータ制御装置であって、上記オブザーバは、時間的に一定な外乱トルクがローパスフィルタを通じてサーボモータに与えられるとして構成され、上記補正手段は上記オブザーバで求められた推定外乱トルクでトルクコマンドを補正することを特徴としたオブザーバによるサーボモータ制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−69082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、実際のエンコーダには分解能の制約があり、量子化誤差が存在している。このため、特許文献1の手法では、オブザーバで推定する外乱トルクの高域のゲインが上がるため、エンコーダの量子化誤差によるリップルが推定外乱トルクに現れ、特にエンコーダの分解能が低い場合に、推定外乱トルクのノイズが大きくなってしまうという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上記事情を鑑みて発明されたものであり、エンコーダの量子化誤差の影響を受けずにモータのコギングトルクを含めた外乱トルクを推定し、外乱抑圧補償を行うことにより、摩擦の影響を抑制し、モータの速度リップル及びトルクリップルを減少することのできるモータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、本発明に係るモータ制御装置は、モータのコギングトルクによるトルク変動に対応するデータを記憶した補償データ記憶部と、補償データ記憶部からコギングトルク推定値を算出し、算出したコギングトルク推定値に基づいて外乱抑圧補償を行う外乱オブザーバを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エンコーダの量子化誤差の影響を受けずにモータのコギングトルクやトルクリップルを含めた外乱トルクを推定することができ、この外乱オブザーバを用いて外乱抑圧補償を行うことにより、摩擦等の影響を抑制し、モータの速度リップル及びトルクリップルを減少することのできるモータ制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のモータ制御装置の構成図の一例を示す図である。
図2】本発明のモータ制御装置が備える外乱オブザーバの構成図の一例を示す図である。
図3】本発明のモータ制御装置が備える外乱オブザーバを適用した速度制御系の構成図の一例を示す図である。
図4】外乱抑圧補償を行った場合のシミュレーション結果を示す図である。
図5】従来の外乱オブザーバの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のモータ制御装置1は、図1に示すように、モータのコギングトルクによるトルク変動を抑制するためのデータとして、モータ2の位置に応じたコギングトルクのデータを記憶した補償データ記憶部11と、モータ2の位置を入力し、補償データ記憶部11に基づいて入力したモータの位置からコギングトルク推定値を算出し、算出したコギングトルク推定値に基づいて外乱抑圧補償を行う外乱オブザーバ10とを備えている。また、モータ制御装置1は、速度制御器4、トルク制御器5、速度算出器13を備えて構成されているが、かかる構成については、図3を用いて後述する。
【0013】
外乱オブザーバ10は、コギングトルク推定値を算出するコギングトルク推定値算出部100と、ノミナルイナーシャにより第1速度を算出する第1速度算出部200と、コギングトルク推定値を除いた第2速度を算出する第2速度算出部300と、コギングトルク推定値を除いた外乱トルク推定値を算出する外乱トルク推定値算出部400と、全外乱トルクを算出する全外乱トルク算出部500とを備えている。
【0014】
コギングトルク推定値算出部100は、補償データ記憶部11を有しており、エンコーダ3で検出したモータ位置を入力し、補償データ記憶部11に基づいて入力したモータ位置からコギングトルク推定値を算出して、算出したコギングトルク推定値を第1速度算出部200及び全外乱トルク算出部500に出力する。
【0015】
第1速度算出部200は、コギングトルク推定値算出部100により算出されたコギングトルク推定値を入力し、入力したコギングトルク推定値をノミナルイナーシャにより第1速度を算出して、算出した第1速度を第2速度算出部300に出力する。
【0016】
第2速度算出部300は、速度算出器13により算出されたモータ速度と第1速度算出部200により算出された第1速度とを入力し、モータ速度から第1速度を減算して、コギングトルク推定値を除いた第2速度を算出し、算出した第2速度を外乱トルク推定値算出部400に出力する。
【0017】
外乱トルク推定値算出部400は、トルク指令と第2速度算出部300により算出された第2速度とを入力し、トルク指令と第2速度に基づいて、コギングトルク推定値を除いた外乱トルク推定値を算出して、算出した外乱トルク推定値を全外乱トルク算出部500に出力する。
【0018】
全外乱トルク算出部500は、外乱トルク推定値算出部400により算出された外乱トルク推定値とコギングトルク推定値算出部100により算出されたコギングトルク推定値とを入力し、外乱トルク推定値とコギングトルク推定値とを加算することにより全外乱トルクを算出して、算出した全外乱トルクをフィードバックしている。
【0019】
なお、本実施形態においては、補償データ記憶部11を外乱オブザーバ10側に配置したが、外乱オブザーバ10がコギングトルク推定値算出部100を備えて構成すればよく、補償データ記憶部11をエンコーダ3側に配置してもよい。
【0020】
次に、補償データ記憶部11と外乱オブザーバ10との具体的な構成の一例について説明していく。
【0021】
まず、モータ制御装置1においては、モータの運動方程式より、
Jnωm・s=Tcmd−TD=Tcmd−TL−TR ・・・(1)
TL=Tcmd−Jn{ωm+TR/(Jn・s)}・s ・・・(2)
である。このため、(2)式において、コギングトルク成分推定値をTR^、その他成分推定値をTL^とすると、全外乱トルク推定値TD^は次式で推定できる。
TD^=TL^+TR^
=gd/(s+gd)[Tcmd−Jnωm+TR^/(Jn・s)・s}]+TR^ ・・(3)
ただし、Jn:イナーシャノミナル値、ωm:モータ速度、Tcmd:トルク指令、gd:ローパスフィルタのカットオフ周波数
【0022】
上記(3)式を用いることにより、補償データ記憶部11と瞬時の外乱推定との両者を補償する外乱オブザーバ10を構成することができることになる。
【0023】
図2は、上記(3)式に基づく、本発明のモータ制御装置1が備える外乱オブザーバ
10の構成図の一例を示す図である。
【0024】
ここで、上述した補償データ記憶部11が記憶しているコギングトルクのデータは、モータ位置に応じたコギングトルクのデータをあらかじめ計測して記憶したものである。
【0025】
図2に示すように、外乱オブザーバ10は、エンコーダ3で検出したモータ位置に基づき、補償データ記憶部11を用いてコギングトルク推定値a1を求め、第1速度算出器12で、ノミナルイナーシャを用いてコギングトルク推定値に基づく第1速度a2を算出する。
【0026】
次に、外乱オブザーバ10は、速度算出器13を用いてモータ位置からモータ速度a3を求め、モータ速度a3からコギングトルク推定値に基づく速度a2を減算し、このコギングトルク推定値を除いた第2速度a4を算出する。
【0027】
そして、外乱オブザーバ10は、トルク指令Tcmdと、コギングトルク推定値を除いた第2速度a4に第1乗算器14を用いてgd・Jn倍した値a5とを加算し、gd/(s+gd)のローパスフィルタ15を通した値a6を算出する。外乱オブザーバ10は、そのローパスフィルタ15を通した値a6から、コギングトルク推定値を除いた第2速度a4に第2乗算器16を用いてgd・Jn倍した値a7を減算することにより、コギングトルク推定値を除いた外乱トルク推定値a8を算出する。
【0028】
最後に、外乱オブザーバ10は、このコギングトルク推定値を除いた外乱トルク推定値a8とコギングトルク推定値a1を加算して全外乱トルクTD推定することになる。
【0029】
なお、外乱オブザーバ10の構成は、上記(3)式に基づいた等価回路によって構成されていればよく、ローパスフィルタを2次などの1次以外のフィルタに構成してもよい。
【0030】
図3は、本発明のモータ制御装置1が備える外乱オブザーバを適用した速度制御系の構成図の一例を示す図である。
【0031】
モータ制御装置1は、エンコーダ3によりモータ位置を検出して、速度算出器13によりモータ位置を微分することによりモータ速度を算出する。
【0032】
次に、モータ制御装置1は、速度指令とモータ速度を比較し(速度指令からモータ速度を減算し)、速度制御器4により速度制御に基づくトルク指令を算出する。
【0033】
そして、モータ制御装置1は、算出した速度制御に基づくトルク指令に、外乱オブザーバ10により推定した全外乱トルク推定値TD^を加算することにより外乱抑圧補償後のトルク指令Tcmdを算出して、トルク制御器5によりモータ2を駆動する。
【0034】
これにより、モータ2のモータ速度を元に、図2に示した外乱オブザーバ10により全外乱トルクTD推定し、その出力を用いて外乱抑圧補償を行うことができる。
【0035】
なお、位置制御の場合は、エンコーダ3で検出した位置を元に位置指令と比較して、位置制御器により速度指令を算出し、図3の速度指令として与えることによりモータの位置を制御すればよい。
【0036】
図4は、外乱抑圧補償を行った場合のシミュレーション結果を示す図である。
【0037】
図4の上段がモータの速度における応答を示し、図4の下段がモータのトルクにおける応答を示している。また、0〜0.5sec は、外乱オブザーバを適用せずに補償なしの場合の応答を示しており、0.5〜1.0sec は、図5に示した従来の外乱オブザーバを適用した場合の応答、1.0〜1.5sec は本発明の外乱オブザーバ10を適用した場合の応答である。
【0038】
図4に示すように、本発明の外乱オブザーバ10を適用することにより、速度リップルやトルクリップルを大幅に低減できることがわかる。
【0039】
このように、本発明のモータ制御装置1は、トルクリップルを補償するための補償データ記憶部11と、瞬時の外乱推定を行う外乱オブザーバ10との両者を組み合わせることにより、適切な瞬時の外乱推定が行われ、その推定値を用いた外乱抑圧補償を適切に行うことができるのである。
【0040】
なお、本実施形態においては、補償データ記憶部11には、モータのコギングトルクによるトルク変動に対応するデータとして、モータ位置に応じたコギングトルクのデータをあらかじめ計測して記憶したが、モータのコギングトルクによるトルク変動に対応するデータとして、m個(mは2以上の自然数)の正弦波の周波数、振幅、位相のデータを記憶して構成してもよい。かかる構成を採用した場合には、外乱オブザーバ10は、補償データ記憶部11に記憶されたm個の周波数、振幅、位相に基づき正弦波をm個作成し、それらを加算して合成正弦波信号を生成することにより、モータ位置に応じたコギングトルク推定値を求めればよい。
【符号の説明】
【0041】
1 モータ制御装置
2 モータ
3 エンコーダ
4 速度制御器
5 トルク制御器
10 外乱オブザーバ
11 補償データ記憶部
12 第1速度算出器
13 速度算出器
14 第1乗算器
15 ローパスフィルタ
16 第2乗算器
100 コギングトルク推定値算出部
200 第1速度算出部
300 第2速度算出部
400 外乱トルク推定値算出部
500 全外乱トルク算出部
図1
図2
図3
図4
図5