特許第6491523号(P6491523)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491523
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】流体圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20190318BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   E02F9/22 K
   F15B11/00 Z
   F15B11/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-83063(P2015-83063)
(22)【出願日】2015年4月15日
(65)【公開番号】特開2016-204826(P2016-204826A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100198579
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 憲一
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 弘毅
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−025770(JP,A)
【文献】 特開平04−312630(JP,A)
【文献】 米国特許第05366202(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00−11/22;21/14
E02F 3/42− 3/43; 3/84− 3/85; 9/20− 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポンプ及び第2ポンプから供給される作動流体によって駆動される複数のアクチュエータを制御する流体圧制御装置であって、
前記第1ポンプに接続され前記アクチュエータを制御する少なくとも一つの第1制御弁を有する第1回路系統と、
前記第2ポンプに接続され前記アクチュエータを制御する少なくとも一つの第2制御弁を有する第2回路系統と、を備え、
前記第1回路系統は、
全ての前記第1制御弁が中立位置にある場合に前記第1ポンプの作動流体をタンクに還流させる第1中立通路と、
前記第1中立通路における前記第1制御弁の下流に設けられ、前記第1中立通路と前記タンクとの接続を連通または遮断する中立カット弁と、
前記第1中立通路における前記第1制御弁の下流であってかつ前記中立カット弁の上流に連通し、前記第1ポンプから吐出された作動流体を外部へ供給可能な外部出力ポートと、を有し、
前記中立カット弁は、収容穴を有するバルブブロックと、前記収容穴に収容され前記第1中立通路と前記タンクとの接続を遮断または連通する弁体と、を備え、
前記外部出力ポートは、前記中立カット弁の前記バルブブロックに形成されるとともに、前記収容穴を通じて前記第1制御弁の下流に連通することを特徴とする流体圧制御装置。
【請求項2】
前記バルブブロックには、前記第1制御弁の下流に連通し、前記第1中立通路の一部を構成するブロック内中立通路が形成され、
前記外部出力ポートは、前記ブロック内中立通路に連通することを特徴とする請求項に記載の流体圧制御装置。
【請求項3】
前記第2回路系統は、前記外部出力ポートを通じて前記第1ポンプから吐出された作動流体を少なくとも一つの前記第2制御弁の上流に合流させる外部入力ポートを有することを特徴とする請求項1または2に記載の流体圧制御装置。
【請求項4】
前記中立カット弁は、少なくとも一つの前記第2制御弁を制御するパイロット圧力に応じて前記第1中立通路と前記タンクとの接続を連通または遮断することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の流体圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に用いられる流体圧制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1ポンプに接続した複数のスプール弁からなる第1回路系統と、第2ポンプに接続した複数のスプール弁からなる第2回路系統と、をバルブブロックに組み込んだ油圧制御装置の発明が記載されている。特許文献1の油圧制御装置では、第1回路系統に中立通路を遮断する合流切換弁を設けている。この合流切換弁を切り換えて中立通路とタンクとの連通を遮断することで、合流切換弁の上流側に設けられた合流通路を通じて、第1回路系統を第2回路系統のアーム用切換弁に合流させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−181008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の油圧制御装置では、合流通路がバルブブロック内に設けられている。このため、第1回路系統からの作動油を第2回路系統の特定のアクチュエータに合流させる以外の用途に使用することができなかった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、第1回路系統からの作動油を第2回路系統の特定のアクチュエータに合流させる以外の用途にも適宜使用できる流体圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、第1ポンプに接続されアクチュエータを制御する少なくとも一つの第1制御弁を有する第1回路系統と、第2ポンプに接続されアクチュエータを制御する少なくとも一つの第2制御弁を有する第2回路系統と、を備え、第1回路系統は、全ての第1制御弁が中立位置にある場合に第1ポンプの作動流体をタンクに還流させる第1中立通路と、第1中立通路における第1制御弁の下流に設けられ、第1中立通路とタンクとの接続を連通または遮断する中立カット弁と、第1中立通路における第1制御弁の下流であってかつ中立カット弁の上流に連通し、第1ポンプから吐出された作動流体を外部へ供給可能な外部出力ポートと、を有し、中立カット弁は、収容穴を有するバルブブロックと、収容穴に収容され第1中立通路とタンクとの接続を遮断または連通する弁体と、を備え、外部出力ポートは、中立カット弁のバルブブロックに形成されるとともに、収容穴を通じて第1制御弁の下流に連通することを特徴とする。
【0007】
第1の発明では、第1回路系統からの作動流体を外部出力ポートを通じて外部に取り出すことができる。また、第1の発明では、外部出力ポートは、中立カット弁のバルブブロックに形成される。中立カット弁のバルブブロックにはシリンダポートなどが存在しないので、外部出力ポートを設けるスペースを容易に確保できるとともに、外部出力ポートの配管作業を容易に行うことができる。さらに、第1の発明では、収容穴が外部出力ポートを第1制御弁の下流に連通させる連通路としても使用される。これにより、外部出力ポートを第1制御弁の下流に連通させる連通路を収容穴とは別に設ける必要がなく、バルブブロックをコンパクト化できる。
【0012】
の発明は、バルブブロックには、第1制御弁の下流に連通し、第1中立通路の一部を構成するブロック内中立通路が形成され、外部出力ポートは、ブロック内中立通路に連通することを特徴とする。
【0013】
の発明では、バルブブロックに形成されたブロック内中立通路と連通する孔を設けるだけで簡単に外部出力ポートを形成することができる。
【0014】
の発明は、第2回路系統は、外部出力ポートを通じて第1ポンプから吐出された作動流体を少なくとも一つの第2制御弁の上流に合流させる外部入力ポートを有することを特徴とする。
【0015】
の発明では、外部入力ポートを設けることにより外部出力ポートを通じて第1ポンプから吐出された作動流体を外部から第2制御弁の上流に合流させることができる。
【0016】
の発明は、中立カット弁は、少なくとも一つの第2制御弁を制御するパイロット圧力に応じて第1中立通路とタンクとの接続を連通または遮断することを特徴とする。
【0017】
の発明では、中立カット弁を第2制御弁を制御するパイロット圧力に応じて制御することができる。したがって、中立カット弁を第2制御弁に応じて制御することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1回路系統からの作動流体を第2回路系統の特定のアクチュエータに合流させる以外の用途にも適宜使用できる流体圧制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る流体圧制御装置を示す回路図である。
図2】本発明の実施形態に係る流体圧制御装置における中立カット弁を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る流体圧制御装置の変形例を示す回路図である。
図4】本発明の実施形態に係る流体圧制御装置の変形例における中立カット弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る流体圧制御装置100について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態における流体圧制御装置100を示す回路図である。
【0022】
流体圧制御装置100は、例えばパワーショベル等の作業機に用いられる。ここでは、作業機がパワーショベルである場合について説明するが、流体圧制御装置100は、ホイールローダ等の他の作業機にも適用可能である。また、流体圧制御装置100では、作動流体として作動油が用いられるが、作動水等の他の流体を作動流体として用いてもよい。
【0023】
図1に示すように、流体圧制御装置100は、第1ポンプP1に接続され第1ポンプP1から作動油が供給される第1回路系統10と、第2ポンプP2に接続され第2ポンプP2から作動油が供給される第2回路系統20と、を備える。
【0024】
第1回路系統10は、第1ポンプP1から供給される作動油をタンクTへ導く第1中立通路11と、第1中立通路11に直列に接続される複数の制御弁121〜125と、制御弁121〜125より上流側の第1中立通路11から分岐する第1パラレル通路13と、を備える。制御弁121〜125は、第1中立通路11によって直列に接続され、第1パラレル通路13によって並列に接続される。
【0025】
第1ポンプP1から吐出された作動油は、上流側から順に、第1走行用制御弁121、予備用制御弁122、旋回用制御弁123、第1ブーム用制御弁124、及び第1アーム用制御弁125に導かれる。第1走行用制御弁121は、パワーショベル(図示せず)の車体の左側に設けられる走行用モータへの作動油の給排を制御する。予備用制御弁122は、バケットの代わりに取り付けられるブレーカやクラッシャ等のアタッチメントを駆動するアクチュエータへの作動油の給排を制御する。旋回用制御弁123は、車体の上部に配置される旋回体を旋回させる旋回モータへの作動油の給排を制御する。第1ブーム用制御弁124は、ブームを駆動するアクチュエータへの作動油の給排を制御する。第1アーム用制御弁125は、アームを駆動するアクチュエータへの作動油の給排を制御する。なお、制御弁121〜125は、第1制御弁に相当する。
【0026】
第1回路系統10では、全ての制御弁121〜125が中立位置にある場合、第1ポンプP1から供給される作動油は第1中立通路11によってタンクTへ還流される。これに対して、制御弁121〜125のうち少なくとも一つが作動位置にある場合、第1中立通路11における第1ポンプP1とタンクTとの接続が遮断される。
【0027】
また、第1回路系統10では、制御弁121〜124のいずれかが作動位置に切り換えられて第1中立通路11における第1ポンプP1とタンクTとの接続が遮断された場合でも、第1ポンプP1から供給される作動油を、第1パラレル通路13を通じて各制御弁122〜125に供給することができる。
【0028】
第1回路系統10は、第1中立通路11における制御弁121〜125の下流に設けられ、第1中立通路11とタンクTとの接続を連通または遮断する中立カット弁40をさらに備える。中立カット弁40は、図1におけるA位置(通常位置)にある場合、第1中立通路11とタンクTとの接続を連通し、B位置(遮断位置)にある場合、第1中立通路11とタンクTとの接続を遮断する。
【0029】
第1回路系統10は、第1中立通路11における第1アーム用制御弁125の下流であってかつ中立カット弁40の上流に連通し、第1ポンプP1から吐出された作動油を外部へ供給可能な分岐通路67をさらに備える。
【0030】
第2回路系統20は、第2ポンプP2から供給される作動油をタンクTへ導く第2中立通路21と、第2中立通路21に直列に接続される複数の制御弁221〜224と、制御弁221〜224より上流側の第2中立通路21から分岐する第2パラレル通路23と、を備える。制御弁221〜224は、第2中立通路21によって直列に接続され、第2パラレル通路23によって並列に接続される。
【0031】
第2ポンプP2から吐出された作動油は、上流側から順に、第2走行用制御弁221、バケット用制御弁222、第2ブーム用制御弁223、及び第2アーム用制御弁224に導かれる。第2走行用制御弁221は、パワーショベル(図示せず)の車体の右側に設けられる走行用モータへの作動油の給排を制御する。バケット用制御弁222は、バケットを駆動するアクチュエータへの作動油の給排を制御する。第2ブーム用制御弁223は、ブームを駆動するアクチュエータへの作動油の給排を制御する。第2アーム用制御弁224は、アームを駆動するアクチュエータへの作動油の給排を制御する。なお、制御弁221〜224は、第2制御弁に相当する。
【0032】
第2回路系統20では、全ての制御弁221〜224が中立位置にある場合、第2ポンプP2から供給される作動油は第2中立通路21によってタンクTへ還流される。これに対して、制御弁221〜224のうち少なくとも一つが作動位置にある場合、第2中立通路21における第2ポンプP2とタンクTとの接続が遮断される。
【0033】
また、第2回路系統20では、制御弁221〜223のいずれかが作動位置に切り換えられて第2中立通路21における第2ポンプP2とタンクTとの接続が遮断された場合でも、第2ポンプP2から供給される作動油を、第2パラレル通路23を通じて各制御弁222〜224に供給することができる。
【0034】
第2回路系統20は、バケット用制御弁222の上流側の第2パラレル通路23に接続する外部入力通路28と、第2中立通路21における第2アーム用制御弁224の下流に設けられ、第2中立通路21とタンクTとの接続を連通または遮断する中立カット弁24と、をさらに備える。外部入力通路28には、流体圧制御装置100の外面に開口する外部入力ポート29が形成される。なお、中立カット弁24は、中立カット弁40と同じ構成のものが用いられる。
【0035】
第2回路系統20は、第2中立通路21における第2アーム用制御弁224の下流であってかつ中立カット弁24の上流に連通し、第2ポンプP2から吐出された作動油を外部へ供給可能な分岐通路27をさらに備える。
【0036】
第2回路系統20は、第2中立通路21における第2パラレル通路23との分岐点より下流であって第2走行用制御弁221より上流に接続される走行直進用制御弁25をさらに備える。走行直進用制御弁25には、第1パラレル通路13が接続される。第1パラレル通路13は、第1ポンプP1と走行直進用制御弁25とを接続する第1パラレル上流側通路13aと、走行直進用制御弁25と制御弁122〜125とを接続する第1パラレル下流側通路13bと、を有する。
【0037】
走行直進用制御弁25は、図1の右側に示す通常位置Cと、図1の左側に示す走行直進位置Dと、の2つの位置に切り換えられる。走行直進用制御弁25は、パイロット室25aに作動油が供給されると走行直進位置Dに切り換えられる。パイロット室25aにパイロット圧が作用していない場合には、走行直進用制御弁25はばね25cの付勢力によって通常位置Cに維持される。
【0038】
通常位置Cでは、第1パラレル通路13の第1パラレル上流側通路13aが第1パラレル通路13の第1パラレル下流側通路13bに接続されるとともに、第2中立通路21が第2ポンプP2に接続される。これにより、第1ポンプP1から吐出された作動油は、第1中立通路11及び第1パラレル通路13を通じて各制御弁121〜125に供給される。また、第2ポンプP2から吐出された作動油は、第2中立通路21及び第2パラレル通路23を通じて各制御弁221〜224に供給される。つまり、走行モータのみを操作する場合は、第1走行用制御弁121には、第1ポンプP1から吐出された作動油が供給され、第2走行用制御弁221には、第2ポンプP2から吐出された作動油が供給される。
【0039】
走行直進位置Dでは、第1パラレル通路13の第1パラレル上流側通路13aが走行直進用制御弁25より下流側の第2中立通路21に接続されるとともに、第1パラレル下流側通路13bが第2ポンプP2に接続される。つまり、走行モータと走行モータ以外のアクチュエータを同時操作した場合は、第1走行用制御弁121及び第2走行用制御弁221には、第1ポンプP1から吐出された作動油が供給され、他の制御弁122〜125及び他の制御弁222〜224には、第2ポンプP2から吐出された作動油が供給される。したがって、走行直進位置Dでは、走行モータと走行モータ以外のアクチュエータを同時操作しても、走行モータ用の回路と走行モータ以外のアクチュエータの回路とが独立することになるので、車体の走行直進性が確保される。
【0040】
次に、流体圧制御装置100及び中立カット弁40の具体的な構造について図1及び図2を参照しながら説明する。なお、図2は、中立カット弁40がA位置(通常位置)にある場合の断面を示す断面図である。
【0041】
流体圧制御装置100は、複数のバルブブロックを積層し、これらをボルトなどで挟み込むようにして締め付けることで本体が形成される。なお、流体圧制御装置100は、1つのバルブブロックによって形成されてもよい。
【0042】
図2に示すように、中立カット弁40は、有底円筒状の収容穴61を有するバルブブロック60と、収容穴61に収容され第1中立通路11とタンクTとの接続を遮断または連通する弁体としてのスプール41と、スプール41の一端と収容穴61の底部との間で区画されタンクTに連通するドレン室48と、スプール41の他端側に設けられバルブブロック60とキャップ部材43とによって形成されたパイロット圧室49と、パイロット圧室49内に設けられ、スプール41を第1中立通路11とタンクTとが連通する方向(図2における左方向)に付勢するリターンスプリング44と、を備える。なお、キャップ部材43には、パイロット圧を給排するためのパイロットポート42が設けられる。
【0043】
スプール41は、収容穴61の内周面に沿って摺動する第1ランド部45及び第2ランド部46と、第1ランド部45と第2ランド部46との間に形成された環状溝47と、を備える。
【0044】
バルブブロック60は、第1アーム用制御弁125の下流に連通する流入部65と、収容穴61にスプール41を取り囲むようにして形成され流入部65と連通する入口ポート部62と、収容穴61にスプール41を取り囲むようにして形成されタンクTに連通する出口ポート部63と、を備える。バルブブロック60内においては、流入部65から入口ポート部62を通じて出口ポート部63に至る流路が、第1中立通路11の第1アーム用制御弁125の下流における一部を構成するブロック内中立通路に相当する。バルブブロック60は、入口ポート部62から分岐し、第1ポンプP1から吐出された作動油を外部へ導く分岐通路67をさらに備える。分岐通路67には、バルブブロック60の外面に開口する外部出力ポート64が形成される。外部出力ポート64には、配管を接続するためのねじ部が形成される。
【0045】
次に、中立カット弁40の動作について説明する。
【0046】
中立カット弁40は、パイロット圧室49内に作動油が供給されていない状態では、スプール41が図2に示す状態、つまり、図1におけるA位置(通常位置)に位置する。この状態では、入口ポート部62と出口ポート部63とがスプール41に形成された環状溝47を通じて連通する。したがって、第1中立通路11における第1アーム用制御弁125の下流に連通する流入部65から入口ポート部62に流入した作動油は、環状溝47及び出口ポート部63を通ってタンクTに還流される。つまり、中立カット弁40をA位置(通常位置)に切り換えることによって、第1中立通路11とタンクTとが連通する。
【0047】
この状態から、パイロット圧室49に作動油が供給されると、スプール41はパイロット圧室49に供給された作動油の圧力によってリターンスプリング44による付勢力に抗して図2の右側に向かって移動する。これにより、入口ポート部62と出口ポート部63とがスプール41の第1ランド部45によって遮断される。つまり、図1におけるB位置(遮断位置)に切り換わる。したがって、第1中立通路11における第1アーム用制御弁125の下流に連通する流入部65から入口ポート部62に流入した作動油は、第1ランド部45によって出口ポート部63へ流入することが阻止される。つまり、中立カット弁40をB位置(遮断位置)に切り換えることによって、第1中立通路11とタンクTとの接続が遮断される。
【0048】
外部出力ポート64は、入口ポート部62を通じて流入部65と常時連通している。しかしながら、中立カット弁40がA位置(通常位置)に位置する状態では、上述のように入口ポート部62とタンクTとが連通するため、外部出力ポート64も入口ポート部62を通じてタンクTに連通する。これにより、第1ポンプP1によって吐出された作動油は、外部出力ポート64に供給されずにタンクTに還流される。これに対して、中立カット弁40がB位置(遮断位置)に位置する状態では、上述のように入口ポート部62とタンクTとの接続が遮断されるため、入口ポート部62から流入した作動油は、分岐通路67及び外部出力ポート64を通じて全量がバルブブロック60の外部へ供給される。
【0049】
このように、流体圧制御装置100では、中立カット弁40をB位置(遮断位置)に切り換えることにより、第1ポンプP1から第1回路系統10に吐出された作動油を外部出力ポート64を通じて外部へ供給することができる。したがって、流体圧制御装置100では、例えば、第1ポンプP1から第1回路系統10に吐出された作動油を外部出力ポート64を通じていずれかのアクチュエータを駆動させる回路に合流させたり、あるいは新たに追加されるアクチュエータを駆動するために用いることができる。
【0050】
ここで、例えば、外部出力ポート64を通じて外部へ供給された作動油をバケットを駆動するシリンダ22の流路に合流させる場合について説明する。
【0051】
まず、外部出力ポート64と外部入力ポート29とをバルブブロック60の外部において配管30により接続する。この状態で、シリンダ22への作動油の給排を制御するバケット用制御弁222のパイロット圧室と、中立カット弁40のパイロット圧室49と、に作動油を供給する。これにより、バケット用制御弁222が操作されると、バケット用制御弁222には第2ポンプP2から吐出された作動油に加えて、第1ポンプP1から吐出された作動油が外部出力ポート64、配管30、外部入力ポート29、及び外部入力通路28を通じて供給される。つまり、外部出力ポート64を通じて第1ポンプP1から吐出された作動油は、外部入力ポート29を通じてバケット用制御弁222の上流に合流する。このようにして、外部出力ポート64を通じて外部へ供給された作動油を、他のアクチュエータを駆動させる回路に合流させることができる。
【0052】
なお、中立カット弁40は、バケット用制御弁222を制御するパイロット圧力Ppに応じて第1中立通路11とタンクTとの接続を連通または遮断するように構成してもよい。この場合には、パイロット圧力Ppが低い状態では中立カット弁40のスプール41を第1中立通路11とタンクTとの接続を連通する状態に維持し、パイロット圧力Ppが高い状態では中立カット弁40が第1中立通路11とタンクTとが遮断する状態に切り換わるようにリターンスプリング44のスプリング荷重を設定すればよい。この構成によれば、バケット用制御弁222の操作量が小さいときには、シリンダ22は第2ポンプP2から吐出された作動油のみで駆動され、バケット用制御弁222の操作量が大きいときには、シリンダ22は第2ポンプP2から吐出された作動油に加えて第1ポンプP1から吐出された作動油によって駆動される。したがって、バケット用制御弁222の操作量を大きくすることでバケットを高速で駆動できる。
【0053】
なお、新たに追加されるアクチュエータを駆動するために用いるためには、単に中立カット弁40をB位置(遮断位置)に切り換えればよい。
【0054】
流体圧制御装置100では、外部出力ポート64及び外部入力ポート29をプラグ50(図3及び図4参照)によって閉塞した場合、つまり、配管30によって外部出力ポート64及び外部入力ポート29を接続しない場合でも、走行直進用制御弁25を変更することで、第1ポンプP1から吐出された作動油をバケットを駆動するシリンダ22に合流して供給することができる。以下に、流体圧制御装置100の変形例を図3及び図4を参照しながら説明する。
【0055】
図3及び図4に示す流体圧制御装置では、外部出力ポート64及び外部入力ポート29がプラグ50によって閉塞されている点、及び、走行直進用制御弁225が、通常位置Cと、図3の左側に示される走行直進位置Dと、図3の右側に示される合流位置Eと、の3つの位置に切り換え可能である点で、図1に示す流体圧制御装置100と相違している。
【0056】
走行直進用制御弁225の位置C、D、Eは、走行直進用制御弁225の両端に設けられるパイロット室225a、225bに供給されるパイロット圧に応じて切り換えられる。パイロット圧がいずれのパイロット室225a、225bにも作用していない場合には、走行直進用制御弁225は走行直進用制御弁225の両側に設けられるばね225cの付勢力によって通常位置Cとなる。パイロット圧がパイロット室225aに供給されると、走行直進用制御弁225は走行直進位置Dに切り換わり、パイロット圧がパイロット室225bに供給されると、走行直進用制御弁225は合流位置Eに切り換わる。なお、走行直進用制御弁225における通常位置C及び走行直進位置Dについては、走行直進用制御弁25と同様に機能するので、説明を省略する。
【0057】
走行直進用制御弁225における合流位置Eでは、走行直進用制御弁225より上流側の第2中立通路21が下流側の第2中立通路21に接続されるとともに、第1パラレル上流側通路13aが走行直進用制御弁225の内部に形成される合流通路226を通じて第2中立通路21に接続される。これにより、第1ポンプP1の作動油と第2ポンプP2の作動油とが合流して第2制御弁に供給され、第2制御弁に接続されるアクチュエータにより多くの作動油を供給することができる。
【0058】
走行直進用制御弁225の内部に形成される合流通路226には、第1パラレル上流側通路13aから第2中立通路21への流れのみを許容する逆止弁227と、合流通路226内の作動油の流れを制限する絞り228とが、上流側からこの順に設けられる。これにより、第2ポンプP2の作動油が第1パラレル上流側通路13a側に流れることを防止できるとともに、第1パラレル上流側通路13aの作動油を制限することで第1制御弁と第2制御弁との複合動作時に第1ポンプP1から第2ポンプP2への合流量を調整して第2中立通路21へ合流させることができる。
【0059】
ここで、例えば、バケットを駆動するシリンダ22の駆動時に、第1ポンプP1から吐出された作動油を第2中立通路21に合流させる場合について説明する。
【0060】
バケットを駆動するシリンダ22への作動油の給排を制御するバケット用制御弁222のパイロット圧室と、中立カット弁40のパイロット圧室49と、走行直進用制御弁225のパイロット室225bと、に作動油を供給する。これにより、バケット用制御弁222が操作されると、第2中立通路21及び第2パラレル通路23には第2ポンプP2から吐出された作動油に加えて、第1ポンプP1から吐出された作動油が走行直進用制御弁225の合流通路226を通じて供給される。これにより、シリンダ22は、第2ポンプP2から吐出された作動油に第1ポンプP1から吐出された作動油が合流した状態で駆動される。したがって、第2ポンプP2から吐出された作動油のみで駆動する場合に比べ、バケットを高速で駆動できる。
【0061】
このように、流体圧制御装置100では、外部出力ポート64を閉塞して用いた場合であっても、走行直進用制御弁25を走行直進用制御弁225に変更するだけで、第1ポンプP1から第1回路系統10に吐出された作動油を第2回路系統20に合流させることができる。なお、流体圧制御装置100が予め走行直進用制御弁225を備えていてもよい。この場合には、走行直進用制御弁225の合流位置を使用しないことで、図1に示した回路と同様の機能を有することになる。これにより、外部出力ポート64を使用して外部から第1ポンプP1から第1回路系統10に吐出された作動油を第2回路系統20に合流させることができる。
【0062】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0063】
流体圧制御装置100では、第1ポンプP1から第1回路系統10の第1中立通路11に吐出された作動油を、外部出力ポート64から外部に取り出すことができる。外部出力ポート64は、配管の接続先を適宜変更できる。これにより、第1回路系統10からの作動油を第2回路系統20の特定のアクチュエータに合流させる以外の用途にも適宜使用できる。
【0064】
また、流体圧制御装置100では、中立カット弁40のバルブブロック60に外部出力ポート64が形成される。中立カット弁40のバルブブロック60にはシリンダポートなどが存在しないので、外部出力ポート64を設けるスペースを容易に確保できるとともに、外部出力ポート64の配管作業を容易に行うことができる。また、複数のバルブブロックにわたって中立カット弁40から外部出力ポート64に至る流路を形成する場合に比べて、シール箇所が不要となるとともに加工を少なくすることができる。
【0065】
流体圧制御装置100では、外部出力ポート64がバルブブロック60の収容穴61にスプール41を取り囲むようにして形成された入口ポート部62を通じて流入部65と連通する。このように、収容穴61の一部を外部出力ポート64と流入部65とを連通させる連通路として利用しているので、この連通路を収容穴61とは別に設ける必要がなく、バルブブロック60をコンパクト化できる。
【0066】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0067】
流体圧制御装置100は、第1ポンプP1に接続されアクチュエータを制御する少なくとも一つの第1制御弁(第1走行用制御弁121、予備用制御弁122、旋回用制御弁123、第1ブーム用制御弁124、第1アーム用制御弁125)を有する第1回路系統10と、第2ポンプP2に接続されアクチュエータを制御する少なくとも一つの第2制御弁(第2走行用制御弁221、バケット用制御弁222、第2ブーム用制御弁223、第2アーム用制御弁224)を有する第2回路系統20と、を備え、第1回路系統10は、全ての第1制御弁(第1走行用制御弁121、予備用制御弁122、旋回用制御弁123、第1ブーム用制御弁124、第1アーム用制御弁125)が中立位置にある場合に第1ポンプP1の作動流体をタンクTに還流させる第1中立通路11と、第1中立通路11における第1制御弁(第1走行用制御弁121、予備用制御弁122、旋回用制御弁123、第1ブーム用制御弁124、第1アーム用制御弁125)の下流に設けられ、第1中立通路11とタンクTとの接続を連通または遮断する中立カット弁40と、第1中立通路11における第1制御弁(第1走行用制御弁121、予備用制御弁122、旋回用制御弁123、第1ブーム用制御弁124、第1アーム用制御弁125)の下流であってかつ中立カット弁40の上流に連通し、第1ポンプP1から吐出された作動流体を外部へ供給可能な外部出力ポート64と、を有することを特徴とする。
【0068】
この構成では、第1ポンプP1から吐出された作動油を外部出力ポート64によって外部に取り出すことができる。
【0069】
また、流体圧制御装置100は、中立カット弁40が、収容穴61を有するバルブブロック60と、収容穴61に収容され第1中立通路11とタンクTとの接続を遮断または連通する弁体(スプール41)と、を備え、外部出力ポート64は、中立カット弁40のバルブブロック60に形成されることを特徴とする。
【0070】
この構成では、外部出力ポート64は、中立カット弁40のバルブブロック60に形成される。中立カット弁40のバルブブロック60にはシリンダポートなどが存在しないので、外部出力ポート64を設けるスペースを容易に確保できるとともに、外部出力ポート64の配管作業を容易に行うことができる。
【0071】
また、流体圧制御装置100は、外部出力ポート64が、収容穴61を通じて第1制御弁(第1アーム用制御弁125)の下流に連通することを特徴とする。
【0072】
この構成では、収容穴61を外部出力ポート64を第1制御弁(第1アーム用制御弁125)の下流に連通させる連通路としても使用する。これにより、外部出力ポート64を第1制御弁(第1アーム用制御弁125)の下流に連通させる連通路を収容穴61とは別に設ける必要がなく、バルブブロック60をコンパクト化できる。
【0073】
また、流体圧制御装置100は、バルブブロック60には、第1制御弁(第1アーム用制御弁125)の下流に連通し、第1中立通路11の一部を構成するブロック内中立通路(流入部65から入口ポート部62を通じて出口ポート部63に至る流路)が形成され、外部出力ポート64は、ブロック内中立通路(流入部65から入口ポート部62を通じて出口ポート部63に至る流路)に連通することを特徴とする。
【0074】
この構成では、バルブブロック60に形成されたブロック内中立通路(流入部65から入口ポート部62を通じて出口ポート部63に至る流路)と連通する孔を設けるだけで簡単に外部出力ポート64を形成することができる。
【0075】
また、流体圧制御装置100は、第2回路系統20は、外部出力ポート64を通じて第1ポンプP1から吐出された作動流体を少なくとも一つの第2制御弁(バケット用制御弁222、第2ブーム用制御弁223、第2アーム用制御弁224)の上流に合流させる外部入力ポート29を有することを特徴とする。
【0076】
この構成では、外部入力ポート29を設けることにより外部出力ポート64を通じて第1ポンプP1から吐出された作動流体を外部から第2制御弁(バケット用制御弁222、第2ブーム用制御弁223、第2アーム用制御弁224)の上流に合流させることができる。
【0077】
また、流体圧制御装置100は、中立カット弁40は、少なくとも一つの第2制御弁(バケット用制御弁222、第2ブーム用制御弁223、第2アーム用制御弁224)を制御するパイロット圧力Ppに応じて第1中立通路11とタンクTとの接続を連通または遮断することを特徴とする。
【0078】
この構成では、中立カット弁40を第2制御弁(バケット用制御弁222、第2ブーム用制御弁223、第2アーム用制御弁224)を制御するパイロット圧力Ppに応じて制御することができる。したがって、中立カット弁40を第2制御弁(バケット用制御弁222、第2ブーム用制御弁223、第2アーム用制御弁224)に応じて制御することができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0080】
例えば、制御弁121〜125及び制御弁221〜224は、それぞれが少なくとも1つ設けられていればよい。また、中立カット弁24を用いて第2回路系統20からの作動油を第1回路系統10に合流させてもよい。
【0081】
外部入力通路28を第2ブーム用制御弁223や第2アーム用制御弁224の上流側に連通するように設けてもよい。また、外部出力ポート64は、第1アーム用制御弁125の下流で、かつスプール41の上流側であればどのような箇所で第1中立通路11に連通させてもよい。例えば、バルブブロック60に、収容穴61と平行に分岐通路67及び外部出力ポート64を形成し、流入部65に連通させる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0082】
100・・・流体圧制御装置、P1・・・第1ポンプ、P2・・・第2ポンプ、10・・・第1回路系統、11・・・第1中立通路、20・・・第2回路系統、21・・・第2中立通路、24、40・・・中立カット弁、29・・・外部入力ポート、30・・・配管、41・・・スプール、60・・・バルブブロック、61・・・収容穴、64・・・外部出力ポート、121・・・第1走行用制御弁(第1制御弁)、122・・・予備用制御弁(第1制御弁)、123・・・旋回用制御弁(第1制御弁)、124・・・第1ブーム用制御弁(第1制御弁)、125・・・第1アーム用制御弁(第1制御弁)、221・・・第2走行用制御弁(第2制御弁)、 222・・・バケット用制御弁(第2制御弁)、223・・・第2ブーム用制御弁(第2制御弁)、224・・・第2アーム用制御弁(第2制御弁)
図1
図2
図3
図4