(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転方向とは逆方向に前記ロックバーを回転させる付勢力を発生させる弾性体の少なくとも一部を、前記壁部材と前記ロックバーの開口端との間に備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のタング。
前記壁部材は、前記ロックバーの第1の先端部側で前記シャフトの第1の中間部分を支持する第1の壁部材と、前記ロックバーの第2の先端部側で前記シャフトの第2の中間部分を支持する第2の壁部材とを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のタング。
請求項1から10のいずれか一項に記載のタングと、前記バックルと、前記シートベルトと、前記シートベルトを巻き取るリトラクタと、前記シートベルトが挿通するショルダーアンカーとを備える、シートベルト装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。なお、「平行」には「略平行」が含まれてもよく、「垂直」には「略垂直」が含まれてもよい。
【0010】
図1は、一実施形態であるシートベルト装置1の一例を示す図である。シートベルト装置1は、シートベルト4と、リトラクタ3と、ショルダーアンカー6と、タング7と、バックル8とを備える。
【0011】
シートベルト4は、車両のシート2に座る乗員を拘束するウェビングの一例であり、リトラクタ3に引き出し可能に巻き取られる帯状部材である。シートベルト4の先端のベルトアンカー5は、車体の床又はシート2に固定される。
【0012】
リトラクタ3は、シートベルト4の巻き取り又は引き出しを可能にする巻き取り装置の一例であり、車両衝突時等の所定値以上の減速度が車両に加わると、シートベルト4がリトラクタ3から引き出されることを制限する。リトラクタ3は、シート2又はシート2の近傍の車体に固定される。
【0013】
ショルダーアンカー6は、シートベルト4が挿通するベルト挿通具の一例であり、リトラクタ3から引き出されたシートベルト4を乗員の肩部の方へガイドする部材である。
【0014】
タング7は、シートベルト4が挿通するベルト挿通具の一例であり、ショルダーアンカー6によりガイドされたシートベルト4にスライド可能に取り付けられる部材である。
【0015】
バックル8は、タング7が着脱可能に係合される部材の一例であり、車体の床又はシート2に固定される。
【0016】
タング7がバックル8に係合された状態で、ショルダーアンカー6とタング7との間のシートベルト4の部分が、乗員の胸部及び肩部を拘束するショルダーベルト部9である。タング7がバックル8に係合された状態で、ベルトアンカー5とタング7との間のシートベルト4の部分が、乗員の腰部を拘束するラップベルト部10である。
【0017】
シートベルト4が乗員に装着されていない非装着時では、タング7はバックル8に係合されず、シートベルト4はその全量(具体的には、リトラクタ3がシートベルト4を何らの支障もなく巻取り可能な量)をリトラクタ3に巻き取られている。一方、シートベルト4が乗員に装着される装着時では、
図1に示されるようにシートベルト4はリトラクタ3から引き出される。そして、タング7がバックル8に係合され、且つ、シートベルト4の弛みが小さくなるようにシートベルト4がリトラクタ3に巻き取られることで、シートベルト4が乗員に装着される。
【0018】
タング7がバックル8に係合されシートベルト4が乗員に装着された状態において、車両衝突時等の所定値以上の減速度が車両に加わらない通常時は、シートベルト4は通常の引き出し速度で自由に引き出し可能である。そして、シートベルト4の引き出し方向の引っ張り力が解放されると、シートベルト4は余分な引き出し量をリトラクタ3に巻き取られる。
【0019】
タング7がバックル8に係合されシートベルト4が乗員に装着された状態において、車両衝突時等の所定値以上の減速度が車両に加わる緊急時は、リトラクタ3は、シートベルト4がリトラクタ3から引き出されることを制限するようにシートベルト4をロック又は巻き取ることによって、シートベルト4の乗員に対する拘束力を強化する。
【0020】
図2は、タング7の内側を示す斜視図である。
図3は、タング7の外側を示す斜視図である。
図2,3では、タング7の隙間91を挿通するシートベルト4の図示が省略されている。
図4は、タング7のプレート20の斜視図である。
【0021】
プレート20は、連結部21と、一対の腕部22,23とを有し、略T字状に形成された平面状の板部材である。プレート20は、例えば、炭素鋼を主成分とする一枚の金属板からプレス加工により成形される。連結部21は、バックル8と連結可能な平面状の板部分である。一対の腕部22,23は、連結部21の長辺31に平行な第1の方向11における連結部21の根元部25から、連結部21の短辺32に平行な第2の方向12に互いに反対向きに突出する平面状の板部分である。一対の腕部22,23は、根元部25の第2の方向12における両側から突出する。長辺31及び短辺32は、連結部21の外縁である。
【0022】
図示の場合、プレート20が平坦なため、連結部21と一対の腕部22,23は、同一平面上に位置する。しかし、連結部21と一対の腕部22,23は、プレート20が曲げ加工されることにより、異なる平面上に位置してもよい。
【0023】
連結部21は、根元部25から第1の方向11に延びる平面状の板部分である。連結部21は、第1の方向11における先端部24と、第1の方向11において先端部24とは反対側の根元部25とを有する。連結部21には、バックル8のラッチ部材とラッチするラッチ孔26が、先端部24と根元部25との間に設けられている。連結部21には、プレート20を軽量化する軽減孔27が先端部24と根元部25との間に設けられてもよいし、プレート20を軽量化する軽減孔28が根元部25に設けられてもよい。
【0024】
一対の腕部22,23は、第2の方向12に延びる平面状の板部分である。第1の腕部22は、第1の腕部22の第2の方向12の先端部に設けられる第1の支持部33を有し、第2の腕部23は、第2の腕部23の第2の方向12の先端部に設けられる第2の支持部34を有する。例えば、第1の支持部33は、第2の方向12に貫通する第1の支持孔35が形成された支持壁であり、第2の支持部34は、第2の方向12に貫通する第2の支持孔36が形成された支持壁である。
【0025】
一対の支持部33,34は、例えば、一対の腕部22,23のそれぞれの第2の方向12の先端部を第3の方向13に折り曲げて形成されたフランジである。第3の方向13は、第1の方向11と第2の方向12とに垂直な方向である。一対の支持部33,34は、プレート20と同一部材から形成されてもよいし、プレート20とは異なる部材から形成されてもよい。
【0026】
図5は、タング7の分解斜視図である。タング7は、プレート20と、ガイド40と、ロックバー60と、シャフト50と、一対の壁部材70,71と、スプリング80と、カバー90とを備える。
【0027】
プレート20は、例えば、根元部25及び一対の腕部22,23が樹脂等でモールド被覆された被覆部37を有する。
【0028】
ガイド40は、ロックバー60に巻き掛けられるシートベルト4が第2の方向12にずれないように、シートベルト4の移動をガイドする部材の一例である。ガイド40は、例えば、樹脂により成形される。
【0029】
ガイド40は、第2の方向12で離隔して対向する一対のガイド部41,42と、一対のガイド部41,42を互いに繋げる梁43とを有する。例えば、第1のガイド部41は、第2の方向12に貫通する第1のガイド孔44が形成されたガイド壁であり、第2のガイド部42は、第2の方向12に貫通する第2のガイド孔45が形成されたガイド壁である。ガイド40は、一対のガイド部41,42がプレート20の一対の支持部33,34の間に位置するように、プレート20の被覆部37に設置される。
【0030】
ロックバー60は、一対の支持部33,34の間を第1の方向11に通るシートベルト4を根元部25との間の位置で挟んでロックする中空のロックバーの一例である。ロックバー60は、第2の方向12を長手方向とする筒状の部材であり、第2の方向12の一端に第1の先端部66を有し、第2の方向12の他端に第2の先端部67を有する。管状のロックバー60は、外周面62と、内周面63と、内周面63によって形成される中空部61と、第1の先端部66側の第1の開口端64と、第2の先端部67側の第2の開口端65とを有する。中空部61は、第2の方向12に第1の開口端64から第2の開口端65まで通ずる空洞である。シートベルト4は、外周面62に巻き掛けられる。
【0031】
ロックバー60は、例えば、炭素鋼を主成分とする一枚の金属板を筒状に引き抜き加工により形成された引き抜き加工品である。引き抜き加工により、中空部61を容易に形成することができる。
【0032】
シャフト50は、中空部61をロックバー60の軸方向(すなわち、第2の方向12に)に貫通する軸棒の一例である。シャフト50は、例えば、炭素鋼を主成分とする金属線材から成形される。
【0033】
シャフト50の第2の方向12の長さは、ロックバー60の第2の方向12の長さよりも長い。よって、中空部61を貫通するシャフト50は、ロックバー60の第1の先端部66側の第1の開口端64から突出する第1のシャフト端部51と、ロックバー60の第2の先端部67側の第2の開口端65から突出する第2のシャフト端部52とを有する。
【0034】
第1のシャフト端部51は、ガイド40の第1のガイド孔44及び第1の支持部33の第1の支持孔35を貫通する。第1のシャフト端部51は、シャフト50の回転が第1の支持孔35で固定されるように、第1の支持孔35に引っ掛かる第1の凹部56を有する。同様に、第2のシャフト端部52は、ガイド40の第2のガイド孔45及び第2の支持部34の第2の支持孔36を貫通する。第2のシャフト端部52は、シャフト50の回転が第2の支持孔36で固定されるように、第2の支持孔36に引っ掛かる第2の凹部57を有する。
【0035】
一対の壁部材70,71は、中空部61内に配置され、シャフト50が貫通する。壁部材70の一部が中空部61内に配置されてもよいし、壁部材70の全部が中空部61内に配置されてもよい。壁部材71も同様である。一対の壁部材70,71は、例えば、炭素鋼を主成分とする金属部材から成形される。
【0036】
ロックバー60は一対の壁部材70,71に回転不能に固定され、一対の壁部材70,71はシャフト50を回転可能に支持し、一対の支持部33,34はシャフト50の両端部を回転不能に固定する。したがって、ロックバー60を回転させる摩擦力が、ロックバー60の外周面62にシートベルト4によって作用すると、ロックバー60は、一対の壁部材70,71と一体となって、シートベルト4をロック可能な回転方向にシャフト50の周りを回転できる。つまり、この場合、シャフト50は、ロックバー60と一対の壁部材70,71とを合わせた一体物の回転支軸となる。
【0037】
例えば、第1の壁部材70は、中空部61に嵌め込まれる第1のブッシュであり、第1のシャフト端部51が貫通する第1の壁孔72を有する。第1の壁部材70は、第2の方向12に対向する第1の外端面76と第1の内端面78とを有し、第1の壁孔72は、第1の外端面76と第1の内端面78との間に形成される。同様に、第2の壁部材71は、中空部61に嵌め込まれる第2のブッシュであり、第2のシャフト端部52が貫通する第2の壁孔73を有する。第2の壁部材71は、第2の方向12に対向する第2の外端面77と第2の内端面79とを有し、第2の壁孔73は、第2の外端面77と第2の内端面79との間に形成される。一対の壁部材70,71が中空部61に嵌め込まれることにより、ロックバー60と一対の壁部材70,71とが互いに相対回転不能に固定される。
【0038】
図6は、ロックバー60とシャフト50との位置関係の一例を示す部分断面図である。
図6は、ロックバー60が第3の方向13に垂直な切断面で切断された状態を示し、カバー90(
図5参照)が取り外された状態を示す。
【0039】
カバー90は、一対の支持部33,34を覆うように、第1の支持孔35から突出する第1のシャフト端部51と、第2の支持孔36から突出する第2のシャフト端部52とに取り付けられる。
【0040】
図6のように、一対の壁部材70,71は、中空部61内に配置される。これにより、シャフト50を支持する壁部材がロックバー60の外側に配置される形態に比べて、タング7全体の小型化が容易になる。
【0041】
第1の壁部材70は、第1の先端部66側でシャフト50の第1の中間部分54を第1の壁孔72で回転可能に支持し、且つ、第2の壁部材71は、第2の先端部67側でシャフト50の第2の中間部分55を第2の壁孔73で回転可能に支持する。これにより、ロックバー60の中空化による軽量化と、一対の壁部材70,71によるシャフト50の支持強度のアップとを両立させることができる。つまり、ロックバー60の中央部付近に中空部61の一部の空間を残すことにより、軽量化の効果を高めることができ、ロックバー60の両方の先端部側でシャフト50が支持されることにより、その支持強度を確保することができる。
【0042】
例えば
図6のように、第1の壁部材70は、ロックバー60の第1の先端部66側で、シャフト50の中空部61内の第1の中間部分54を回転可能に支持した状態で、ロックバー60の内周面63に固定される。同様に、第2の壁部材71は、ロックバー60の第2の先端部67側で、シャフト50の中空部61内の第2の中間部分55を回転可能に支持した状態で、ロックバー60の内周面63に固定される。このような固定形態により、一対の壁部材70,71は、ロックバー60の外周面62に作用するシートベルト4の外力に抗って、ロックバー60の内周面63側からロックバー60を支持できる。その結果、ロックバー60と一対の壁部材70,71との固定強度だけでなく、ロックバー60の剛性を高めることができる。
【0043】
例えば、第1の中間部分54は、シャフト50が回転可能となるように、第1の壁孔72に貫通した状態で支持される。同様に、第2の中間部分55は、シャフト50が回転可能となるように、第2の壁孔73に貫通した状態で支持される。
【0044】
第1の壁部材70は、内周面63に当接する第1の外周側面174を有する環状又は筒状部材であり、第2の壁部材71は、内周面63に当接する第2の外周側面175を有する環状又は筒状部材である。例えば、第1の外周側面174は、第1のクラッシュリブ74が形成され、第1のクラッシュリブ74で内周面63に当接し、第2の外周側面175は、第2のクラッシュリブ75が形成され、第2のクラッシュリブ75で内周面63に当接する。クラッシュリブにより、壁部材とロックバーとの嵌め合い力を高めることができる。
【0045】
第1の支持部33は、ロックバー60がシートベルト4をロック可能な回転方向に回転可能に、シャフト50の第1のシャフト端部51を第1の支持孔35で支持する。第1のシャフト端部51は、第1の凹部56が第1の支持孔35に位置するように第1の支持孔35に挿入される。第2の支持部34は、ロックバー60がシートベルト4をロック可能な回転方向に回転可能に、シャフト50の第2のシャフト端部52を第2の支持孔36で支持する。第2のシャフト端部52は、第2の凹部57が第2の支持孔36に位置するように第2の支持孔36に挿入される。
【0046】
スプリング80は、シートベルト4をロック可能な回転方向とは逆方向にロックバー60を回転させる付勢力を発生させる弾性体の一例であり、例えば、弾性を有する線材で形成された引張コイルばねである。スプリング80は、それぞれ、線材が巻き回された巻線部81と、巻線部81の一方の先端部である第1のスプリング端82と、巻線部81のもう一方の先端部である第2のスプリング端83とを有する。
【0047】
例えば
図6のように、スプリング80の少なくとも一部は、第2の壁部材71の第2の外端面77とロックバー60の第2の開口端65との間の中空部61に配置される。これにより、スプリング80がロックバー60の外側に配置される形態に比べて、タング7全体の小型化が容易になる。
【0048】
図7は、カバー90が取り外されたタング7を示す左側面図を示す。スプリング80の巻線部81の内側には、シャフト50の第2のシャフト端部52が挿入される。そして、第1のスプリング端82がロックバー60の内周面63及び第2の壁部材71の第2の外端面77に当接されるとともに、第2のスプリング端83が第2の支持孔36に挿入されて引っ掛けられる。これにより、スプリング80は、シートベルト4をロック可能な回転方向とは逆方向にロックバー60を回転させる付勢力を発生できる。
【0049】
図8は、ロックバー60とシャフト50との位置関係の一例を示す断面図である。ロックバー60は、回転軸線17を中心に、シャフト50の周りを回転する。回転軸線17は、ロックバー60の軸方向(すなわち、第2の方向12)に延びる仮想直線である。
【0050】
シャフト50は、ロックバー60の最小内径aよりも小さな最大外径cを有する。これにより、ロックバー60の内周面63とシャフト50の外周面53との間に、中空部61の一部の空間が残る。したがって、ロックバー60は、この空間が存在する分、軽くなるので、ロックバー60の最大外径bを確保したままタング7を容易に軽量化することができる。
図8は、回転軸線17に垂直な断面(例えば、上述の第1の壁部材70と第2の壁部材71との間の断面)において、空間が内周面63と外周面53との間に外周面53の全周にわたり形成されていることを示す。
【0051】
例えば
図8のように、ロックバー60の肉厚dは、シャフト50の最大外径c以下である。これにより、中空部61の残る部分が拡大するので、タング7を軽量化する効果を高めることができる。
【0052】
また、例えば
図8のように、ロックバー60の軸方向に垂直なロックバー60の断面は、線対称の形状を有する。これにより、ロックバー60を引き抜き加工により容易に成形することができる。
【0053】
また、シャフトが貫通する側壁部は、ロックバーと共通の一枚の板部材から形成されてもよい。
図9は、側壁部及びロックバーに成形される一枚の板部材の一例を示す平面図である。第1の外縁166と第2の外縁167とが重なるように板面161が折り曲げられることにより、ロックバー60の外周面62に相当する外周面が形成される。そして、第1の壁孔164が設けられた第1の耳部162が第1の折れ線168で折り曲げられることにより、第1の壁部材70に相当する側壁部が形成され、第2の壁孔165が設けられた第2の耳部163が第2の折れ線169で折り曲げられることにより、第2の壁部材71に相当する側壁部が形成される。シャフト50は、
図5の形態の場合、第1の壁孔164及び第2の壁孔165に回転可能に支持され、後述の
図13,14の形態の場合、第1の壁孔164及び第2の壁孔165に回転不能に支持される。このように、ロックバーと側壁部が一枚の板部材から形成されることにより、ロックバーの剛性を高めることができる。
【0054】
図10,11,12は、ロックバー60の動きを説明するための図である。ロックバー60の動きが見えやすくなるように、一部の部材の図示は省略されている。
【0055】
図10は、シートベルト4がロックバー60に巻き掛けられる前のタング7において、ロックバー60の初期位置状態の一例を示す図である。
図10は、シートベルト4が乗員に装着されていない非装着状態を示す。この状態では、シートベルト4は、リトラクタ3に巻き取られ、ロックバー60に巻き掛けられていない。
【0056】
シートベルト4は、タング7で折り返されずに、根元部25とロックバー60との間の隙間91を通ってタング7を直線的に挿通する。シートベルト4が通る直線的な通路が形成されるように、根元部25は被覆部37でモールド被覆され、ロックバー60は根元部25に対して位置決めされる。これにより、タング7は滑らかにシートベルト4に沿って自由落下することができる。
【0057】
また、シートベルト4が隙間91に挿通した状態で連結部21がシートベルト4に対して零よりも大きな角度θを有するように、根元部25は被覆部37でモールド被覆され、ロックバー60は根元部25に対して位置決めされる。これにより、乗員がシートベルト4にぶら下がるタング7を把持することが容易になる。
【0058】
隙間91は、例えば、連結部21の根元部25から第1の方向11に延長した直線方向に位置するように形成される。
【0059】
シートベルト4は、例えば、ストッパ面39とロックバー60との間を直線的に挿通する。ストッパ面39は、根元部25が被覆部37でモールド被覆された一部分であり、スプリング80の付勢力によるロックバー60の回転を止める部分である。
【0060】
図11は、シートベルト4がロックバー60に巻き掛けられた後のタング7において、ロックバー60の初期位置状態の一例を示す図である。
図11は、シートベルト4が乗員に装着された装着状態を示す。
図11に示されるように、シートベルト4は、隙間91を挿通しロックバー60に巻き掛けられた状態で、ショルダーベルト部9とラップベルト部10とでロックバー60を挟むようにロックバー60で折り返される。
【0061】
ラップベルト部10がシートベルト4の引き出し方向への引っ張り力Fpにより引っ張られることによって、ロックバー60を回転方向Daに回転させる摩擦力が、シートベルト4が接するロックバー60の外周面62に作用する。引っ張り力Fpは、シートベルト4がリトラクタ3から引き出される方向にシートベルト4に作用する力である。ロックバー60を回転方向Daに回転させる摩擦力がロックバー60の外周面62に作用することにより、ロックバー60が回転方向Daに回転する。よって、ロックバー60は、スプリング80の付勢力に抗ってスプリング80を引っ張りながら、シャフト50を回転軸として回転方向Daに回転する。
【0062】
一方、ショルダーベルト部9がシートベルト4の巻き取り方向への引っ張り力Frにより引っ張られることによって、ロックバー60を回転方向Dbに回転させる摩擦力がロックバー60の外周面62に作用する。引っ張り力Frは、シートベルト4がリトラクタ3に巻き取られる方向にシートベルト4に作用する力である。回転方向Dbは、回転方向Daとは反対方向である。
【0063】
しかしながら、ロックバー60を回転方向Dbに回転させる摩擦力がロックバー60の外周面62に作用しても、外周面62の一部位がストッパ面39に当接することで、ロックバー60の回転方向Dbへの回転は阻止される。ストッパ面39は、ロックバー60が回転方向Dbに回転(逆転)するときに、その一部位が当接する表面である。
【0064】
図12は、シートベルト4がロックバー60に巻き掛けられた後のタング7において、ロックバー60のロック位置状態の一例を示す図である。
図12に示されるように、引っ張り力Fpの作用が続くと、ロックバー60は、シートベルト4を外周面62の一部位と根元部25に形成されたクランプ面38との間で挟む。これにより、シートベルト4の引き出しがロックバー60によりロックされる。
【0065】
クランプ面38は、根元部25がモールド被覆されることにより形成される。これにより、シートベルト4を外周面62とクランプ面38とで挟んでロックする力を金属の根元部25で受け止めることができるので、引っ張り力Fpに対するタング7の剛性がアップする。クランプ面38は、例えば波形に形成されてもよい。これにより、シートベルト4を外周面62とクランプ面38とで挟んでロックする力を強化することができる。
【0066】
図13は、タング7の構成部品の他の一例を示す分解斜視図である。
図13では、
図5と同じ構成部品の図示は、省略されている。
【0067】
図13の構成では、ロックバー60は一対の壁部材70,71に回転不能に固定され、一対の壁部材70,71はシャフト50を回転不能に固定し、一対の支持部33,34はシャフト50の両端部を回転可能に支持する。したがって、ロックバー60を回転させる摩擦力が、ロックバー60の外周面62にシートベルト4によって作用すると、ロックバー60は、一対の壁部材70,71及びシャフト50と一体となって、シートベルト4をロック可能な回転方向にシャフト50の周りを回転できる。つまり、この場合、シャフト50は、ロックバー60と一対の壁部材70,71とシャフト50とを合わせた一体物の回転支軸となる。
【0068】
一対の壁部材70,71は、ロックバー60とシャフト50とを互いに相対回転不能に固定する。例えば、第1の中間部分54は、第1の壁部材70とシャフト50とが互いに相対回転不能となるように、第1の壁孔72に圧入されて固定される。同様に、第2の中間部分55は、第2の壁部材71とシャフト50とが互いに相対回転不能となるように、第2の壁孔73に圧入されて固定される。
【0069】
例えば、シャフト50は、第1の中間部分54に凸状に形成された第1の圧入ダボ58を有し、第2の中間部分55に凸状に形成された第2の圧入ダボ59を有する。第1の圧入ダボ58及び第2の圧入ダボ59は、外周面53に設けられた一対の突起部である。第1の壁部材70は、第1の圧入ダボ58が第1の壁孔72に当接することでシャフト50に固定され、第2の壁部材71は、第2の圧入ダボ59が第2の壁孔73に当接することでシャフト50に固定される。
【0070】
例えば、第1の圧入ダボ58及び第2の圧入ダボ59の代わりに、第1の壁孔72は、第3の圧入ダボ72aを有し、第2の壁孔73は、第4の圧入ダボ73aを有してもよい。これにより、第1の壁部材70は、第3の圧入ダボ72aが外周面53の第1の中間部分54に当接することでシャフト50に固定され、第2の壁部材71は、第4の圧入ダボ73aが外周面53の第2の中間部分55に当接することでシャフト50に固定される。
【0071】
例えば、一対の支持部33,34がシャフト50の両端部を回転可能に支持するように、シャフト50は丸棒状に形成され、一対の支持孔35,36は円孔状に形成される。
【0072】
図14は、タング7の構成部品の他の一例を示す分解斜視図である。
図14では、
図5と同じ構成部品の図示は、省略されている。
【0073】
図14の構成では、ロックバー60は一対の壁部材70,71の一対の外周側面174,175にスライド可能に当接し、一対の壁部材70,71はシャフト50を回転不能に固定し、一対の支持部33,34はシャフト50の両端部を回転不能に固定する。したがって、ロックバー60を回転させる摩擦力が、ロックバー60の外周面62にシートベルト4によって作用すると、ロックバー60は、一対の外周側面174,175でスライドしながら、シートベルト4をロック可能な回転方向にシャフト50の周りを回転できる。つまり、この場合、シャフト50は、ロックバー60単体の回転支軸となり、シャフト50と一対の壁部材70,71は回転しない。
【0074】
例えば、一対の壁部材70,71とシャフト50とが相対回転不能に固定されるように、シャフト50は角棒状に形成され、一対の壁孔72,73は角孔状に形成される。
【0075】
以上、タング及びシートベルト装置を実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【0076】
例えば
図8において、軽量化できるように中空部61の一部が残るのであれば、ロックバー60の肉厚dは、シャフト50の最大外径cを超えてもよい。また、ロックバー60は、引き抜き加工に限らず、プレス加工や鋳造などの他の製造方法により製造されてもよい。
【0077】
また、スプリング80は、スプリングの付勢力を高めるため、ロックバー60の両側に一対配置されてもよい。例えば
図6において、もう一方のスプリングの少なくとも一部は、第1の壁部材70の第1の外端面76とロックバー60の第1の開口端64との間の中空部61に配置される。
【0078】
また、シャフト50が貫通する壁部材は、一つでもよいし、3つ以上あってもよい。例えば
図6において、軽量化できるように中空部61の一部が残るのであれば、中空部61の第2の方向12の中央部に少なくとも一つ配置されてもよい。